JP3692976B2 - 熱収縮性ポリエステル系フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は熱収縮性ポリエステル系フィルムとその製造方法に関し、さらに詳しくは、ラベル用途に好適な熱収縮性ポリエステル系フィルムとその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
熱収縮性プラスチックフィルムは、加熱によって収縮する性質を利用して、収縮包装、収縮ラベルなどの用途に広く用いられている。なかでも、ポリ塩化ビニル系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ポリエステル系フィルムなどの延伸フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)容器、ポリエチレン容器、ガラス容器などの各種容器において、ラベルやキャップシールあるいは集積包装の目的で使用されている。
【0003】
しかし、ポリ塩化ビニル系フィルムは、耐熱性が低い上に、焼却時に塩化水素ガスを発生したり、ダイオキシンの原因となるなどの問題を抱えている。また、熱収縮性塩化ビニル系樹脂フィルムをPET容器などの収縮ラベルとして用いると、容器をリサイクル利用する際に、ラベルと容器を分離しなければならないという問題がある。
【0004】
一方、ポリスチレン系フィルムは、収縮後の仕上がり外観性が良好な点は評価できるが、耐溶剤性に劣るため、印刷の際に特殊な組成のインキを使用しなければならない。また、ポリスチレン系樹脂は、高温で焼却する必要がある上に、焼却時に多量の黒煙と異臭が発生するという問題がある。
【0005】
これらの問題のないポリエステル系フィルムは、ポリ塩化ビニル系フィルムやポリスチレン系フィルムに代わる収縮ラベルとして非常に期待されており、PET容器の使用量増大に伴って、使用量も増加傾向にある。
【0006】
しかし、従来の熱収縮性ポリエステル系フィルムも、その収縮特性においてはさらなる改良が求められていた。特に、収縮時に、収縮斑やシワが発生して、収縮前のフィルムに印刷した文字や図柄が、PETボトル、ポリエチレンボトル、ガラス瓶などの容器に被覆収縮する際に、収縮後に歪むことがあり、この歪みを可及的に小さくしたいというユーザーサイドの要望があった。
【0007】
また、熱収縮性ポリスチレン系フィルムと比較すると、ポリエステル系フィルムは低温での収縮性に劣ることがあり、必要とする収縮量を得るために高温で収縮させなければならず、ボトル本体の変形や白化が生じることがあった。
【0008】
ところで、熱収縮性フィルムを実際の容器の被覆加工に用いる際には、必要に応じて印刷工程に供した後、ラベル、袋などの形態に加工して、これらのラベルや袋状のものを容器に装着し、スチームを吹きつけて熱収縮させるタイプの収縮トンネル(スチームトンネル)や、熱風を吹きつけて熱収縮させるタイプの収縮トンネル(熱風トンネル)の内部を、ベルトコンベアーなどにのせて通過させ、熱収縮させて容器に密着させている。
【0009】
スチームトンネルは、熱風トンネルよりも伝熱効率が良く、より均一に加熱収縮させることが可能であり、熱風トンネルに比べると良好な収縮仕上がり外観を得ることができるが、従来の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ポリ塩化ビニル系フィルムやポリスチレン系フィルムに比べると、スチームトンネルを通過させた後の収縮仕上がり性の面が余り良くないという問題があった。
【0010】
また、熱収縮の際に温度斑が生じやすい熱風トンネルを使用すると、ポリエステル系フィルムでは、収縮白化、収縮斑、シワ、歪みなどが発生し易く、特に収縮白化が製品外観上問題となっていた。そして、この熱風トンネルを通過させた後の収縮仕上がり性においても、ポリエステル系フィルムは、ポリ塩化ビニル系フィルムやポリスチレン系フィルムよりも劣っているという問題があった。
【0011】
さらに、リサイクルの観点から、有色のPETボトルの使用が制限されるに伴い、ボトル自体の着色に代えて、ボトル側面の大部分を熱収縮性ポリエステル系フィルム製のラベルで覆うといった需要も増大しつつある。ところが、PETボトルの側面形状は様々であり、任意の高さ位置で外径が変化するため、一つのボトルを被覆する一つのラベルでも、要求される収縮の程度はボトルの高さ位置で異なる。このため、従来品以上に良好な収縮特性を備え、複雑な側面形状のボトルの被覆に使用した場合でも、優れた収縮仕上り性を発揮できる熱収縮性ポリエステル系フィルムが求められている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような従来の熱収縮性ポリエステル系フィルムの問題点を解決して、低温から高温までの幅広い温度域で優れた収縮特性を有すると共に、収縮白化、収縮斑、シワ、歪み、タテヒケなどの発生が極めて少なく、ラベル用途に好適な熱収縮性ポリエステル系フィルムとその製造方法を提供することを課題とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルム(以下、単に「フィルム」ということがある)は、多価アルコール成分100モル%中、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分が10〜50モル%であり、10cm×10cmの正方形状に切り取った熱収縮性ポリエステル系フィルムの試料について、下記(A)、(B)および(C)の熱収縮率が、(A):30〜40%、(B):50〜60%、(C):65〜77%であるところに要旨を有する。ここで、
(A):75℃の温水中に10秒浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒浸漬して引き上げたときの最大収縮方向の熱収縮率、
(B):85℃の温水中に10秒浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒浸漬して引き上げたときの最大収縮方向の熱収縮率、
(C):95℃の温水中に10秒浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒浸漬して引き上げたときの最大収縮方向の熱収縮率、
である。
【0014】
特定の組成のポリエステルを利用することによって、低温から高温までの幅広い温度域で優れた収縮特性を有すると共に、収縮白化、収縮斑、シワ、歪み、タテヒケなどの発生が極めて少なく、特に熱風トンネルでの収縮白化のない熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供することができた。
【0015】
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、40℃,160時間の条件での保管前後において、下式(1)で示される前記(A)の熱収縮率の変化量Xが10%以下であることが好ましい。
X(%)=[保管前の熱収縮率(%)]−[保管後の熱収縮率(%)] (1)。
【0016】
上記のような熱収縮率の変化量を示す熱収縮性ポリエステル系フィルムであれば、長期間保管した後であっても、美麗な収縮仕上り性を維持することができる。
【0017】
さらに、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、美麗な収縮仕上り性確保や耐破れ性向上の観点から、極限粘度が0.66dl/g以上であることが好ましく、また、生産性向上の観点から、275℃での溶融比抵抗値が0.70×108Ω・cm以下であることが推奨される。
【0018】
加えて、上記の熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、フィルムの最大収縮方向での厚み変位測定を、長さ50cm、幅5cmの試験片について行ったとき、下式(2)に規定する厚み分布が7%以下であることが好ましい。
厚み分布=[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100 (2)。
【0019】
上記の厚み分布を満たすフィルムであれば、加工性、特に多色の図柄を印刷する際の加工性に優れ、複数の色を重ね合わせる際にズレなどが生じにくく、非常にハンドリング性が良好である。
【0020】
この他、上記の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、フィルムの最大収縮方向についての熱収縮試験を、90℃の熱空気中、試験片幅20mm、チャック間距離100mmの条件で行ったとき、最大熱収縮応力値が3.0MPa以上でことが好ましい。このような特性のフィルムでは、特に収縮仕上り外観が美麗である。
【0021】
このような本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ポリエステル系フィルムを少なくとも一方向に延伸して製造されるが、その際の条件として、該延伸を2段階以上に分けて行い、且つ、最終的な延伸倍率を、未延伸フィルムに対し、3〜6倍とする必要がある。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、公知の多価カルボン酸成分と、多価アルコール成分から形成されるエステルユニットを主たる構成ユニットとする単一の共重合ポリエステル、あるいは2以上のポリエステルの混合物を用いて得られるものである。この多価アルコール成分100モル%中、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分は10〜50モル%含まれていることが必要である。
【0023】
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、10cm×10cmの正方形状に切り取った熱収縮性ポリエステル系フィルムの試料について、上記(A)、(B)および(C)の熱収縮率が、(A):30%以上40%以下、(B):50%以上60%以下、(C):65%以上77%以下でなければならない。通常、熱収縮性フィルム製のラベルを容器などへ被覆収縮させる工程では、上述の熱風トンネルでは、120〜200℃程度、風速5〜20m/秒程度の熱風中を2〜20秒程度で通過させて、また、スチームトンネルでは、75〜95℃程度、圧力0.5〜20MPa程度のスチーム中を2〜20秒程度で通過させて行うが、(A)、(B)および(C)の全ての熱収縮率が、これらの範囲を満足するフィルムは、例えば、複雑な側面形状を有するPETボトルなどの容器に対して、該側面の大部分を覆うためのラベルとして使用したり、側面を覆うラベルに部分的に非常に高い収縮率を要求するような側面形状を有する容器用のラベルとして使用しても、こうした通常行われる収縮条件下で、極めて美麗な収縮仕上がり外観を達成できる。
【0024】
上記(A)、(B)、(C)の熱収縮率の1種以上が上記範囲を下回るフィルムでは、容器などに被覆収縮させる工程において、特に熱風を熱源とした場合に、収縮が不十分で、フィルム端部がギザギザ形状になりやすい傾向にある。他方、上記(A)、(B)、(C)の熱収縮率の1種以上が上記範囲を超えるフィルムでは、上記の被覆収縮させる工程において、特に熱風を熱源とした場合に、フィルムが急激に収縮することにより上方にずれたり、フィルムの上端または下端が斜めに収縮したり、折れ込んだりするといった欠陥が生ずる。また、上記(A)および(B)の熱収縮率が上記範囲内であって、(C)の熱収縮率が上記範囲を下回るフィルムでは、上記の被覆収縮させる工程において、特に熱風を熱源とした場合に、収縮白化が発生し易い傾向にある。
【0025】
上記(A)の熱収縮率の好ましい範囲としては、31%以上、より好ましくは32%であって、39%以下、より好ましくは38%以下である。また、上記(B)の熱収縮率の好ましい範囲としては、51%以上、より好ましくは52%以上であって、59%以下、より好ましくは58%以下である。さらに、上記(C)熱収縮率の好ましい範囲としては、66%以上、より好ましくは67%以上であって、76%以下、より好ましくは75%以下である。
【0026】
なお、上記の「最大収縮方向の熱収縮率」とは、試料の最も多く収縮した方向での熱収縮率の意味であり、最大収縮方向は、正方形の縦方向または横方向(または斜め方向)の長さで決められる。また、熱収縮率(%)は、10cm×10cmの試料を、(A)の熱収縮率では75℃±0.5℃の温水中に、(B)の熱収縮率では85℃±0.5℃の温水中に、(C)の熱収縮率では95℃±0.5℃の温水中に、夫々無荷重状態で10秒間浸漬して熱収縮させた後、直ちに25℃±0.5℃の水中に無荷重状態で10秒間浸漬した後の、フィルムの縦および横方向(または斜め方向)の長さを測定し、下式
熱収縮率=100×(収縮前の長さ−収縮後の長さ)÷(収縮前の長さ)
に従って求めた値である。
【0027】
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、40℃,160時間の条件での保管前後において、下式(1)で示される上記(A)の熱収縮率の変化量Xが、10%以下であることが好ましい。
X(%)=[保管前の熱収縮率(%)]−[保管後の熱収縮率(%)] (1)。
【0028】
熱収縮性ポリエステル系フィルムにおいて、上記Xが大きいということは、該フィルムを40℃,160時間の条件で保管すると、低温域での熱収縮率が低減し易い傾向にあることを意味する。通常、熱収縮性ポリエステル系フィルムは、20〜25℃程度の環境下で保管されるが、上記Xが10%以下のものであれば、このような環境下で長期間保管した後に容器等の被覆に用いても、保管前のものとほとんど変わらない収縮仕上り外観を呈することができる。他方、上記Xが10%を超えるようなフィルムは、常温程度の環境下で長期間保管した後に、容器などに被覆収縮させると、特に熱風を熱源とした場合に、収縮ムラが生じ易く、また収縮白化が発生し易い傾向にある。上記Xは7%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。
【0029】
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、極限粘度が0.66dl/g以上であることが好ましい。この極限粘度は、フィルムを構成するポリエステル(共重合体および/または混合物)の分子量の指標となるものである。
【0030】
フィルムを容器などに被覆収縮させる際に、該フィルムには収縮応力が発生するが、収縮時間に対する収縮応力の低下がほとんどないか、非常に少ないものであれば、収縮初期に発生した収縮ムラなどの収縮欠陥が、該収縮応力によって改善され、美麗な収縮仕上り外観を呈するようになる。しかしながら、極限粘度が0.66dl/gを下回るフィルムでは、フィルムを構成するポリエステルの分子量が低く、収縮応力が時間と共に急激に低下するため、収縮初期の欠陥が改善されず、収縮ムラや収縮白化などが残り、収縮仕上り外観が劣るものとなる。
【0031】
また、本発明では、良好な機械的強度を有していることが好ましく、その目安として、フィルムの最大収縮方向と直交する方向についての引張試験を、複数の熱収縮性ポリエステル系フィルム試験片について、チャック間距離100mm、試験片幅15mm、温度23℃、引張速度200mm/分の条件で行ったとき、上記破断率が10%以下であることが好ましい条件として挙げられる。なお、この試験条件は、JIS K 7127に準じたものである。
【0032】
上記条件は、換言すれば、5%も伸びないうちに破断してしまうフィルムが、全試験片数の10%(1割)以下である、という意味である。本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、主に最大収縮方向にポリエステル分子が配向しているが、こうしたフィルムでは一般に、該配向方向に沿って最も裂けやすい。よって、上記条件を満足し得ないフィルムでは、印刷やスリット、溶剤接着などの工程において、フィルムにかかる張力の変動に基づく破断のトラブルが発生しやすくなるのである。破断伸度5%以下の試験片数は少なければ少ないほど好ましく、0%であれば最も好ましい。
【0033】
しかしながら、極限粘度が0.66dl/gを下回る場合は、フィルムを構成しているポリエステルの分子量が低く、フィルムの機械的強度も劣るため、上記破断率が10%を超える場合がある。極限粘度は0.68dl/g以上がより好ましく、0.70dl/g以上がさらに好ましい。
【0034】
他方、極限粘度があまり高いものでは、フィルム製造工程での製膜性が低下する傾向にあることから、極限粘度の上限は1.5dl/g、好ましくは1.3dl/gとすることが望ましい。なお、本発明で規定する極限粘度は、後述する実施例において用いる方法により測定される値である。
【0035】
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、溶融比抵抗値が0.70×108Ω・cm以下であることが好ましい。本発明のフィルムは、通常、押出機から吐出された溶融フィルムをキャスティングロールに静電密着させ、該ロール上で冷却する工程を経て製造される。しかしながら、溶融比抵抗値が0.7×108Ω・cmを超えるものでは、キャスティングロールへの静電密着性が悪く、溶融フィルム表面−キャスティングロール表面間で局所的に空気をかみ込まれた状態でキャストされ、キャストされたフィルム表面に所謂ピンナーバブルが生ずる。よって、ピンナーバブルの発生を抑制し、フィルム安定に生産するためには、吐出された溶融フィルムがキャスティングロールに十分に密着できる程度にまで生産速度を低下させる必要が生じ、生産コストが増大してしまう。上記溶融比抵抗値は0.65×108Ω・cm以下であることがより好ましく、0.60×108Ω・cm以下であることがさらに好ましい。
【0036】
なお、本発明で規定する溶融比抵抗値は、後述する実施例で用いる方法で測定される値である。
【0037】
また、熱収縮性ポリエステル系フィルムにおいては、厚みが均一であることが好ましく、フィルムの最大収縮方向での厚み変位測定を、長さ50cm、幅5cmの試験片について行ったとき、下式(2)に規定する厚み分布が7%以下であることが推奨される。
厚み分布=[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100 (2)。
【0038】
上記の厚み分布は、長さ50cm、幅5cmで、フィルムの最大収縮方向を長さ方向とする試験片を10本作成し、夫々の試験片について、接触式厚み計(例えば、アンリツ株式会社製「KG60/A」など)を用いて、長さ方向の厚みを連続的に測定してチャートに出力し、該出力結果から、最大厚み、最小厚み、および平均厚みを求め、これらから上式(2)を用いて厚み分布を算出した後、10本の試験片の厚み分布の平均値を求めることで得られる。
【0039】
上記厚み分布が7%を超えるフィルムでは、印刷工程で、特に多色の図柄を印刷する際の印刷性が劣り、複数を色を重ね合わせる際にズレが生し易い。また、本発明のフィルムからラベルを製造するために、溶剤接着してチューブ化加工する場合に、フィルムの接着部分の重ね合わせが困難となる。さらに、上記厚み分布が7%を超えるフィルムでは、フィルム製造工程でロール状に巻き取った際に、部分的な巻き硬度の差が生じ、これに起因するフィルムの弛みやシワが発生して、フィルムとして使用できなくなる。上記の厚み分布は、6%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。
【0040】
フィルムの上記厚み分布を左右する要因の一つとして、フィルム製造工程において、フィルム状溶融ポリエステルのキャスティングロールへの静電密着性が挙げられる。上記静電密着性が悪い場合は、キャストした未延伸フィルムの厚み分布が大きくなり、このような未延伸フィルムを延伸すると、厚みの薄い部分がより引き伸ばされるため、こうした未延伸フィルムから得られる延伸フィルムにおいても、厚み分布がより拡大された状態で残存する。よって、フィルムの上記厚み分布を上述した範囲とするためには、上記の静電密着性が良好であることが好ましく、溶融比抵抗値を上述の範囲内に制御することが推奨される。
【0041】
また、上記の厚み分布は、フィルムの延伸工程でも悪化し得るので、これを防止するためには、予熱温度、延伸温度、延伸倍率などの延伸条件を、後述するような適正な範囲に制御する必要がある。
【0042】
さらに、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、フィルムの最大収縮方向の熱収縮試験を、90℃の熱空気中、試験片幅20mm、チャック間距離100mmの条件で行ったとき、測定される最大熱収縮応力値が3.0MPa以上であることが好ましい。最大熱収縮応力値が3.0MPa未満であると、収縮応力の不足により容器などに被覆収縮させたフィルムが緩んだり、フィルムの機械的強度不足により耐破れ性に劣るといった問題が生ずる。より好ましくは、4.0MPa以上、さらに好ましくは6.0MPa以上である。
【0043】
なお、上記最大熱収縮応力値は、以下のようにして測定する。
(1)熱収縮性フィルムから、最大収縮方向を長さ方向とし、長さ200mm、幅20mmの試験片を切り出す。
(2)熱風式加熱炉を備えた引張試験機(例えば、東洋精機製「テンシロン」)の加熱炉内温度を90℃にする。
(3)送風を止め、加熱炉内に上記試験片を、チャック間距離100mmでセットする。
(4)加熱炉の扉を静かに閉め、送風を再開し、熱収縮応力を検出・測定する。
(5)測定チャートから最大値を読み取り、これを最大熱収縮応力値(MP)とする。
【0044】
ところで、従来の熱収縮性ポリエステル系フィルムにおいては、熱収縮工程でフィルムが加熱されてある温度まで到達した場合、フィルムを構成するポリエステルの組成によっては熱収縮率が飽和してしまい、それ以上高温に加熱しても、それ以上の収縮が得られないことがある。このようなフィルムは、比較的低温で熱収縮することができる利点があるが、上述の熱風トンネルで熱収縮させた場合や、熱収縮前に常温程度以上の雰囲気下で長期間保管した後で熱収縮させた場合に、上述した収縮白化現象が起こり易い。この収縮白化現象は、ポリエステルの分子鎖が部分的に結晶化して、結晶部分の光の屈折率が非晶部分と異なるため、起こるのではないかと考えられる。
【0045】
しかし本発明者等は、多価アルコール成分100モル%中、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を10モル%以上とすることで、上記収縮白化を抑制し得ることを見出した。
【0046】
他方、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分量が50モル%を超えると、フィルムの収縮率が必要以上に高くなり過ぎて、熱収縮工程でラベルの位置ずれや図柄の歪みが発生する恐れがある。また、フィルムの耐溶剤性が低下するため、印刷工程でインキの溶媒(酢酸エチルなど)によってフィルムの白化が起きたり、フィルムの耐破れ性が低下するため好ましくない。
【0047】
また、詳細は後述するが、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、耐破れ性、強度、耐熱性などを発揮させるために、エチレンテレフタレートユニットを主たる構成ユニットとすることが望ましい。これに対し、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分は、フィルムの結晶性を下げて非晶化度合いを高め,より高い熱収縮性を発現するものである。
【0048】
従って、多価アルコール成分100モル%中、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分量が10モル%未満では、エチレンテレフタレートユニットが多くなってフィルムの結晶性が高くなるため、収縮不足や部分的結晶化による白化現象が発生する恐れがある。また、耐溶剤性が高くなり過ぎて、テトラヒドロフランや1,3−ジオキソランなどの溶剤を用いてフィルムをチューブ状体に接着加工する際に、接着不良が発生することがあり好ましくない。多価アルコール成分100モル%中、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分量は、好ましくは12モル%以上、より好ましくは14モル%以上であって、好ましくは45モル%以下、より好ましくは40モル%以下が推奨される。
【0049】
多価アルコール成分を形成するための他の多価アルコール類としては、後述するように、エチレンテレフタレートユニットを形成するため、エチレングリコールが用いられる。その他、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどのアルキレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジエチレングリコール、ダイマージオール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ビスフェノール化合物またはその誘導体のアルキレンオキサイド付加物、なども併用可能である。
【0050】
また、多価アルコール類ではないが、ε−カプロラクトンに代表されるラクトン類も一部使用してもよい。ラクトン類は、開環して両端にエステル結合を有するユニットとなるものであり、1つのラクトン類由来のユニットが、カルボン酸成分であり、かつ、アルコール成分であると考えることができる。よって、ラクトン類を用いる場合、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分量は、多価アルコール成分量に、ラクトン類由来のユニット量を加えた量を100モル%として計算する。また、多価カルボン酸成分の量を計算する際も、多価カルボン酸成分量に、ラクトン類由来のユニット量を加えた量を100モル%として計算する。
【0051】
フィルムの耐破れ性、強度、耐熱性などを考慮すれば、熱収縮性ポリエステル系フィルムの構成ユニット100モル%中、エチレンテレフタレートユニットが50モル%以上となるように選択することが好ましい。従って、多価カルボン酸成分100モル%中、テレフタル酸成分(テレフタル酸またはそのエステルからなる成分)を50モル%以上、多価アルコール成分100モル%中、エチレングリコール成分を50モル%以上、とすることが好ましい。エチレンテレフタレートユニットは、55モル%以上がより好ましく、60モル%以上がさらに好ましい。
【0052】
ただし、本発明では、多価アルコール成分100モル%中、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を10モル%以上とするので、エチレングリコール成分は90モル%以下である。
【0053】
多価カルボン酸成分を形成するための多価カルボン酸類としては、上記のテレフタル酸(およびそのエステル)の他、芳香族ジカルボン酸、それらのエステル形成誘導体、脂肪族ジカルボン酸などが利用可能である。芳香族ジカルボン酸としては、例えばイソフタル酸、ナフタレン−1,4−もしくは−2,6−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などが挙げられる。またこれらの芳香族ジカルボン酸やテレフタル酸のエステル誘導体としてはジアルキルエステル、ジアリールエステルなどの誘導体が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シュウ酸、コハク酸等や、通常ダイマー酸と称される脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。さらに、p−オキシ安息香酸などのオキシカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの多価カルボン酸を、必要に応じて併用してもよい。
【0054】
なお、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムにおいて、上記(A)、(B)および(C)の熱収縮率、上式(1)で規定する(A)の熱収縮率の変化量X、並びに上記の最大熱収縮応力値を、夫々上述した範囲内とするためには、上記成分組成のフィルムとすると共に、後述する条件で延伸を行うことで達成できる。
【0055】
さらに上記(A)、(B)および(C)の熱収縮率制御を容易にするためには、フィルムをエチレンテレフタレートユニット主体とし、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分といずれかの多価カルボン酸成分から形成されるエステルユニット以外に、ガラス転移温度(Tg)を低下させるユニットを、フィルムの全構成ユニット100モル%中、0.5〜30モル%程度導入することが好ましい。なお、上記のTgを低下させるユニットとしては、多価アルコール成分として、1,3−プロパンジオール成分、1,4−ブタンジオール成分、ダイマージオール成分、またはポリオキシテトラメチレングリコール成分を有するエステルユニットや、多価カルボン酸成分として、ダイマー酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸などの脂肪族ジカルボン酸成分を有するエステルユニット、およびε−カプロラクトン由来のユニットが好ましいものとして挙げられ、これらの1種または2種以上を導入すればよい。なお、エステルユニットは、上記した多価アルコール成分のいずれかと多価カルボン酸成分のいずれか同士から形成されるものであってもよい。
【0056】
加えて、上式(1)で規定する(A)の熱収縮率の変化量Xの制御を容易にする点からも、上記のTgを低下させるユニットを、フィルムの全構成ユニット100モル%中、0.5〜30モル%程度導入することが好ましいが、Tgを低下させるユニットとしては、(A)、(B)および(C)の熱収縮率制御の点から好ましい上記のエステルユニットのうち、多価アルコール成分として1,4−ブタンジオール成分、ダイマージオール成分、またはポリオキシテトラメチレングリコール成分を有するエステルユニット、および多価カルボン酸成分としてダイマー酸成分を有するエステルユニットが特に推奨される。
【0057】
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムにおいて、溶融比抵抗値を上述の範囲に制御するには、該フィルム中にアルカリ土類金属化合物とリン含有化合物を含有させればよい。アルカリ土類金属化合物中のアルカリ土類金属原子(M2)は、フィルムの溶融比抵抗値を低下させる作用を有する。アルカリ土類金属化合物は、通常、多価カルボン酸類と多価アルコール類からエステルを生成する際の触媒として使用されるが、触媒としての必要量以上に積極添加することで、溶融比抵抗値低下作用を発揮させることができる。具体的には、アルカリ土類金属化合物の含有量を、M2基準で40ppm(質量基準、以下同じ)以上、好ましくは50ppm以上、さらに好ましくは60ppm以上とすることが推奨される。他方、アルカリ土類金属金属化合物の含有量は、M2基準で400ppm以下、好ましくは350ppm以下、さらに好ましくは300ppm以下とすることが推奨され、これ以上使用しても、その量に見合っただけの効果は得られず、むしろ、この化合物に起因する異物の生成や着色などの弊害が大きくなる。
【0058】
好ましいアルカリ土類金属化合物の具体例としては、アルカリ土類金属の水酸化物、脂肪族ジカルボン酸塩(酢酸塩、酪酸塩など、好ましくは酢酸塩)、芳香族次カルボン酸塩、フェノール性水酸基を有する化合物との塩(フェノールとの塩など)などが挙げられる。また、アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなど(好ましくはマグネシウム)が挙げられる。より具体的には、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウムなどが挙げられ、中でも、酢酸マグネシウムが好ましく使用される。
【0059】
リン含有化合物は、それ自体フィルムの溶融比抵抗値を低下させる作用は有しないが、アルカリ土類金属化合物、および後述するアルカリ金属化合物と組み合わせることにより、溶融比抵抗値の低下に寄与し得る。その理由は明らかではないが、リン含有化合物を含有させることにより、異物の生成を抑制し、電荷担体の量を増大させることができるのではないかと考えられる。リン含有化合物の含有量は、リン原子(P)基準で60ppm(質量基準、以下同じ)以上、好ましくは65ppm以上、さらに好ましくは70ppm以上とすることが推奨される。リン含有化合物の含有量が上記範囲を下回ると、溶融比抵抗値の低下効果が十分でなく、さらに異物生成量が増加する傾向にある。
【0060】
他方、リン含有化合物の含有量は、P基準で500ppm以下、好ましくは450ppm以下、さらに好ましくは400ppm以下とすることが推奨され、これ以上使用しても、その量に見合うだけの効果は得られず、溶融比抵抗値の低下効果が飽和する。さらに、ジエチレングリコールの生成を促進し、フィルムの物性低下を引き起こす。
【0061】
上記のリン含有化合物としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸などのリン酸類およびそのエステル(アルキルエステル、アリールエステルなど)が挙げられる。好ましいリン含有化合物としては、リン酸、リン酸類の脂肪族エステル(リン酸トリメチル、リン酸トリエチルなどのリン酸トリアルキル)、リン酸の芳香族エステル(リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジルなどのリン酸トリアリールなど)などが挙げられ、中でもリン酸の脂肪族エステルが特に好ましい。
【0062】
さらに、アルカリ土類金属化合物とリン含有化合物は、アルカリ土類金属原子(M2)とリン原子(P)の質量比(M2/P)で1.2以上5.0以下でフィルム中に含有させることが好ましい。M2/P値が1.2以下では、溶融比抵抗値の低下効果が著しく減少する。より好ましくは1.3以下、さらに好ましくは1.4以下である。他方、M2/P値が5.0を超えると、溶融比抵抗値の低下効果よりも、異物生成が促進されたり、フィルムが着色するなどの弊害が大きくなり、好ましくない。より好ましくは4.5以下、さらに好ましくは4.0以下である。
【0063】
フィルムの溶融比抵抗値をさらに低下させるためには、アルカリ土類金属化合物およびリン含有化合物に加えて、フィルム中にアルカリ金属化合物を含有させることが好ましい。アルカリ金属化合物自体は、フィルムの溶融比抵抗値を低下させる作用をほとんど有しないが、アルカリ土類金属化合物およびリン含有化合物と組み合わせることによって、フィルムの溶融比抵抗値を著しく低下させる。その理由は明らかではないが、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、およびリン含有化合物の三者で錯体を形成することにより、溶融比抵抗値を低下させているものと考えられる。
【0064】
溶融比抵抗値の低下効果を有効に発揮させるためには、アルカリ金属化合物の含有量を、アルカリ金属(M1)基準で5ppm以上(質量基準、以下同じ)、好ましくは6ppm以上、さらに好ましくは7ppm以上とすることが推奨される。他方、アルカリ金属化合物をあまり多く含有させても、溶融比抵抗値の低下効果は飽和し、むしろ、異物生成が促進されるなどの弊害が生ずる。よって、アルカリ金属化合物の含有量は、M1基準で100ppm以下、好ましくは90ppm以下、さらに好ましくは80ppm以下とすることが推奨される。
【0065】
上記のアルカリ金属化合物としては、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、脂肪族ジカルボン酸塩(酢酸塩、酪酸塩など、好ましくは酢酸塩)、芳香族ジカルボン酸塩(安息香酸塩)、フェノール性水酸基を有する化合物との塩(フェノールとの塩など)などが挙げられる。また、アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなど(好ましくはナトリウム)が挙げられる。より具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどが挙げられ、中でも酢酸ナトリウムが特に好ましい。
【0066】
熱収縮性ポリエステル系フィルムを構成するポリエステルは常法により溶融重合することによって製造できるが、ジカルボン酸類とグリコール類とを直接反応させ得られたオリゴマーを重縮合する、所謂直接重合法、ジカルボン酸のジメチルエステル体とグリコール類とをエステル交換反応させたのちに重縮合する、所謂エステル交換法などが挙げられ、任意の製造法を適用することができる。また、その他の重合方法によって得られるポリエステルであってもよい。なお、ラクトン類由来のユニットの導入は、例えば、上記の重縮合前にラクトン類を添加して重縮合を行う方法や、上記の重縮合により得られたポリマーとラクトン類を共重合する方法などにより達成できる。
【0067】
ポリエステルの重合に際しては、従来公知の重合触媒が使用できる。一般的には、チタン化合物、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、スズ化合物、コバルト化合物、マンガン化合物などの金属化合物が使用されるが、中でも、チタン化合物、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、具体的には、チタニウムテトラブトキシド、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウムが特に好ましい。
【0068】
また、上述のアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、およびリン含有化合物を添加する時期は、ポリエステルの重合工程中であれば特に限定されるものではなく、エステル化反応前、エステル化中、エステル化終了から重合工程開始までの間、重合中、および重合後のいずれの段階でもよいが、好ましくはエステル化終了後の任意の段階、さらに好ましくはエステル化終了から重合工程開始までの間である。エステル化終了後に添加すると、それ以前に添加する場合に比べて、アルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物に起因して生成する異物の量を低減できる。
【0069】
また、必要に応じて、シリカ、二酸化チタン、カオリン、炭酸カルシウムなどの微粒子をフィルム原料に添加してもよく、さらに酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤、抗菌剤などを添加することもできる。
【0070】
ポリエステル系フィルムは、後述する公知の方法で得ることができるが、熱収縮性ポリエステル系フィルムにおいて、複数の成分をフィルム中に含有させる手段としては、共重合を行ってこの共重合ポリエステルを単独使用する方式と、異なる種類のホモポリエステルあるいは共重合ポリエステルをブレンドする方式がある。
【0071】
共重合ポリエステルを単独使用する方式では、上記特定組成の多価アルコール成分を含有する共重合ポリエステルを用いればよい。一方、異なる組成のポリエステルをブレンドする方式では、ブレンド比率を変更するだけでフィルムの特性を容易に変更でき、多品種のフィルムの工業生産にも対応できるため、好ましく採用することができる。
【0072】
具体的なフィルムの製造方法としては、原料ポリエステルチップをホッパドライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥し、押出機を用いて200〜300℃の温度でフィルム状に押し出す。あるいは、未乾燥のポリエステル原料チップをベント式押出機内で水分を除去しながら同様にフィルム状に押し出す。押出しに際してはTダイ法、チューブラ法等、既存のどの方法を採用しても構わない。押出し後は、キャスティングロールで急冷して未延伸フィルムを得る。
【0073】
なお、本発明では、上記押出機とキャスティングロールの間に電極を配設し、電極とキャスティングロールとの間に電圧を印加し、静電気的にフィルムをロールに密着させている。
【0074】
上記未延伸フィルムに対して延伸処理を行う。本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムにおいて、上記(A)、(B)および(C)の熱収縮率、並びに、上式(2)で規定されるフィルムの厚み分布を、夫々上述の範囲とするためには、下記に示す適切な延伸処理条件を選択することも重要である。さらに、上記(A)、(B)および(C)の熱収縮率を満足できる下記延伸処理条件でフィルムを製造すれば、上式(1)で規定される上記(A)の熱収縮率の変化量X、および最大熱収縮応力についても、夫々上述の範囲にできる。
【0075】
ちなみに、最大収縮方向がフィルム横(幅)方向であることが、生産効率上、実用的であるので、以下、最大収縮方向を横方向とする場合の延伸法の例を示す。なお、最大収縮方向をフィルム縦(長手)方向とする場合も、下記方法における延伸方向を90゜変える等、通常の操作に準じて延伸することができる。
【0076】
熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚み分布を均一化させることに着目すれば、テンター等を用いて横方向に延伸する際、延伸工程に先立って予備加熱工程を行う必要があり、この予備加熱工程では、熱伝導係数が0.00544J/cm2・sec・℃(0.0013カロリー/cm2・sec・℃)以下となるように、低風速で、フィルム表面温度がTg+0℃〜Tg+60℃の範囲内のある温度になるまで加熱を行うことが好ましい。
【0077】
横方向の延伸は、Tg−20℃〜Tg+40℃の範囲内の所定温度で行う。なお、(A)、(B)および(C)の熱収縮率を上述の範囲とするためには、延伸を2段階以上、好ましくは3段階以上に分け、最終延伸倍率が未延伸フィルムに対して3〜6倍、好ましくは3.5〜5.5倍となるようにしなければならない。例えば、延伸を3段階に分けて行う場合、第1段階の延伸を1.1〜1.5倍とし、第2段階の延伸を、第1段階の延伸で得られたフィルム幅に対して1.3〜1.7倍とし、さらに第3段階の延伸を、第2段階の延伸で得られたフィルム幅に対して1.5〜2.5倍とし、且つ、最終延伸倍率が上記範囲内となるようにする。
【0078】
なお、第2段階以降の各段階での延伸温度は、上記の温度範囲内で、1つ前の段階の延伸温度と同じにするか、1〜10℃程度低くすることが好ましく、後者の場合、延伸開始時(第1段階)と延伸終了時(最終段階)の温度差を5〜20℃の範囲とすることが推奨される。フィルムの熱収縮率制御の観点からは、延伸の段階数は多い方が好ましいが、あまり段階数が多過ぎる場合、工業生産における延伸設備の設計が困難となるため、6段階以下、好ましくは4段階以下とすることが望ましい。
【0079】
その後、50℃〜110℃の範囲内の所定温度で、0〜15%の伸張あるいは0〜15%の緩和をさせながら熱処理し、必要に応じて40℃〜100℃の範囲内の所定温度でさらに熱処理をして、熱収縮性ポリエステル系フィルムを得る。なお、本熱処理工程において、フィルムを伸張させながら行う場合は、フィルムの最終延伸倍率は、かかる伸張率も含めて計算し、算出される最終延伸倍率が未延伸フィルムに対して上記範囲を満たすようにすればよい。
【0080】
この横延伸工程においては、フィルム表面温度の変動を小さくすることのできる設備を使用することが好ましい。すなわち、延伸工程には、延伸前の予備加熱工程、延伸工程、延伸後の熱処理工程、緩和処理、再延伸処理工程等があるが、特に、予備加熱工程、延伸工程の各段階および延伸後の熱処理工程において、任意ポイントにおいて測定されるフィルムの表面温度の変動幅が、平均温度±1℃以内であることが好ましく、平均温度±0.5℃以内であればさらに好ましい。フィルムの表面温度の変動幅が小さいと、フィルム全長に亘って同一温度で延伸や熱処理されることになって、熱収縮挙動が均一化するためである。
【0081】
延伸の方法としては、テンターでの横1軸延伸ばかりでなく、縦方向に1.0倍〜4.0倍、好ましくは1.1倍〜2.0倍の延伸を施してもよい。このようい2軸延伸を行う場合は、逐次2軸延伸、同時2軸延伸のいずれでもよく、必要に応じて、再延伸を行ってもよい。また、逐次2軸延伸においては、延伸の順序として、縦横、横縦、縦横縦、横縦横等のいずれの方式でもよい。これらの縦延伸工程あるいは2軸延伸工程を採用する場合においても、横延伸と同様に、予備加熱工程、延伸工程等において、フィルム表面温度の変動をできるだけ小さくすることが好ましい。
【0082】
延伸に伴うフィルムの内部発熱を抑制し、幅方向のフィルム温度斑を小さくする点に着目すれば、延伸工程の熱伝達係数は、0.00377J/cm2・sec・℃(0.0009カロリー/cm2・sec・℃)以上とすることが好ましい。0.00544〜0.00837J/cm2・sec・℃(0.0013〜0.0020カロリー/cm2・sec・℃)がより好ましい。
【0083】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚みは特に限定するものではないが、例えばラベル用熱収縮性ポリエステル系フィルムとしては、10〜200μmが好ましく、20〜100μmがさらに好ましい。
【0084】
【実施例】
以下、以下実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施する場合は、本発明に含まれる。なお、実施例および比較例で得られたフィルムの物性の測定方法は、以下の通りである。
【0085】
(1)フィルム組成
フィルムを、クロロホルムD(ユーリソップ社製)とトリフルオロ酢酸D1(ユーリソップ社製)を10:1(体積比)で混合した溶媒に溶解させて、試料溶液を調製し、NMR(「GEMINI−200」;Varian社製)を用いて、温度23℃、積算回数64回の測定条件で試料溶液のプロトンのNMRを測定する。NMR測定では、プロトンのピーク強度に基づいて、フィルムを構成する成分の構成比率を算出する。
【0086】
(2)金属成分
試料(チップまたはフィルム)に含まれるNa,Mg,Pの量を以下に示す方法によって測定する。
【0087】
[Na]
試料2gを白金ルツボに入れ、温度500〜800℃で灰化分解した後、塩酸(濃度:6mol/L)を5mL加えて蒸発乾固する。残渣を1.2mol/Lの塩酸10mLに溶解し、Na濃度を原子吸光分析装置(島津製作所製「AA−640−12」を用いて測定(検量線法)する。
【0088】
[Mg]
試料2gを白金ルツボに入れ、温度500〜800℃で灰化分解した後、塩酸(濃度:6mol/L)を5mL加えて蒸発乾固する。残渣を1.2mol/Lの塩酸10mLに溶解し、Na濃度をICP発光分析装置(島津製作所製「ICPS−200」を用いて測定(検量線法)する。
【0089】
[P]
下記▲1▼〜▲3▼のいすれかの方法により、試料中のリン成分を正リン酸にする。この正リン酸と、モリブデン酸塩とを硫酸(濃度:1mol/L)中で反応させて、リンモリブデン酸とした後、硫酸ヒドラジンを加えて還元する。生ずるヘテロポリ青の濃度を、吸光光度計(島津製作所製「UV−150−02」)を用いて830nmの吸光度を測定することによって求める(検量線法)。
▲1▼試料と炭酸ソーダとを白金ルツボに入れ、乾式灰化分解する。
▲2▼硫酸・硝酸・過塩素酸系における湿式分解。
▲3▼硫酸・過塩素酸系における湿式分解。
【0090】
(2)極限粘度
試料(チップまたはフィルム)0.1gを精秤し、25mlのフェノール/テトラクロロエタン=3/2(質量比)の混合溶媒に溶解した後、オストワルド粘度計で30±0.1℃で測定する。極限粘度[η]は、下式(Huggins式)によって求められる。
【0091】
【数1】
【0092】
ここで、ηsp :比粘度、t0:オストワルド粘度計を用いた溶媒の落下時間、t:オスワルド粘度計を用いたフィルム溶液の落下時間、C:フィルム溶液の濃度である。
【0093】
なお、実際の測定では、Huggins式においてk=0.375とした下記近似式で極限粘度を算出する。
【0094】
【数2】
【0095】
ここで、ηr:相対粘度である。
【0096】
(3)固形物(異物)残存量
試料(チップまたはフィルム)2gを、100mLのフェノール/テトラクロロエタン=3/2(質量比)混合溶液に溶解した後、該溶液をテフロン製のメンブランフィルター(孔径0.1μm)で濾過し、固形物を採取する。この固形物残存量を、下記基準に基づいて目視で評価する。
無:濾過後、メンブランフィルター上に固形物が確認されない。
微小:濾過後、メンブランフィルター上に、局所的に固形物が確認される。
多:濾過後、メンブランフィルター上の全面に固形物が確認される。
【0097】
(4)溶融比抵抗値
温度275℃で溶融した試料(チップまたはフィルム)中に一対の電極板を挿入し、120Vの電圧を印加する。その際の電流を測定し、下式に基づいて溶融比抵抗値Si(Ω・cm)を算出する。
Si=(A/I)×(V/io)
ここで、A:電極の面積(cm2)、I:電極間距離(cm)、V:電圧(V)、io:電流(A)である。
【0098】
(5)キャスト性
押出機のTダイと、表面温度を30℃に制御したキャスティングロールとの間に、タングステンワイヤー製の電極を配設し、電極とキャスティングロール間に7〜10kVの電圧を印加する。上記Tダイから樹脂を温度280℃で溶融押出し、キャスティングロールで冷却することにより厚さ180μmのフィルムを製造する(キャスティングロール速度:30m/分)。得られるフィルムの表面に発生するピンナーバブルを目視で観察し、下記基準にしたがって評価する。
○:ピンナーバブルの発生なし。
△:ピンナーバブルの発生が部分的に認められる。
×:ピンナーバブルの発生大。
【0099】
(6)熱収縮率
フイルムを10cm×10cmの正方形に裁断し、下記(A)、(B)および(C)の温度の温水中に、無荷重状態で10秒間浸漬して熱収縮させた後、25℃±0.5℃の水中に10秒浸漬した後、試料の縦および横方向の長さを測定し、下記式に従って求める。
熱収縮率(%)=100×(収縮前の長さ−収縮後の長さ)÷(収縮前の長さ)
ここで、(A):75℃±0.5℃,(B):85℃±0.5℃,(C):95±0.5℃である。最も収縮率の大きい方向を最大収縮方向とする。また、(A)の温度の温水を用いる熱収縮率測定は、40℃の環境下で160時間保管したフィルムについても行い、上式(1)を用いて熱収縮率の変化量X(%)を算出する。
【0100】
(7)耐破れ性(破断率)
JIS K 7127に準じ、熱収縮前のフィルムの最大収縮方向と直交する方向についての引張試験を行う。試験片数は20とする。試験片長さ200mm、チャック間距離100mm、試験片幅15mm、温度23℃、引張速度200mm/分の条件で行う。伸度5%以下で破断した試験片数を数え、全試験片数(20個)に対する百分率を求め、破断率(%)とする。
【0101】
(8)最大熱収縮応力値
加熱炉付き引張試験機(東洋精機株式会社製「テンシロン」)を用いて測定する。熱収縮前のフィルムから、最大収縮方向の長さが200mmで、幅が20mmの試料を切り出し、予め90℃に加熱しておいた引張試験機の送風を止め、試料をチャック間距離100mmとして取り付けた後、速やかに加熱炉の扉を閉め、送風を開始した時に検出される収縮応力を測定し、測定チャートから得られる最大値を最大熱収縮応力値(MPa)とする。
【0102】
(9)厚み分布
長さ50cm、幅5cmで、フィルムの最大収縮方向を長さ方向とする試験片を10本作成し、夫々の試験片について、接触式厚み計(例えば、アンリツ株式会社製「KG60/A」など)を用いて、長さ方向の厚みを連続的に測定してチャートに出力し、該出力結果から、最大厚み、最小厚み、および平均厚みを求め、これらから上式(2)を用いて厚み分布を算出した後、10本の試験片の厚み分布の平均値を求め、フィルムの厚み分布とする。
【0103】
(10)収縮仕上り性
フィルムをヒートシールにより接着させてチューブを作製し、これを裁断して熱収縮性ポリエステル系フィルムラベルを得る。次いで、容量300mlのガラス瓶にラベルを装着した後、170℃、風速12m/秒の熱風式熱収縮トンネルの中を15秒で通過させて、ラベルを収縮させる。収縮白化、収縮斑、ラベル端部の欠陥(折れ込み、ギザギザ形状)の程度を目視で判断し、収縮仕上がり性を5段階で評価する。基準は、5:仕上がり性最良、4:仕上がり性良、3:収縮白化、収縮斑またはラベル端部の欠陥少し有り(2ヶ所以内)、2:収縮白化、収縮斑またはラベル端部の欠陥有り(3〜5ヶ所)、1:収縮白化、収縮斑またはラベル端部の欠陥多い(6ヶ所以上)として、4以上を合格レベル、3以下のものを不良とする。
【0104】
合成例1
エステル化反応釜に、57036質量部のテレフタル酸、35801質量部のエチレングリコール、および15843質量部の1,4−シクロヘキサンジメタノールを仕込み、圧力:0.25MPa,温度:220〜240℃の条件で120分間エステル化反応を行った。次いで、反応釜内を常圧とし、酢酸コバルト・4水塩(重合触媒)6.34質量部、チタニウムテトラブトキシド(重合触媒)8質量部、酢酸マグネシウム・4水塩(アルカリ土類金属化合物)132.39質量部、トリメチルホスフェート(リン含有化合物)61.5質量部を加え、10分間撹拌後、反応系内を徐々に減圧し、75分間で0.5hPaとすると共に、温度を280℃に昇温した。温度280℃で溶融粘度が7000ポイズとなるまで撹拌を続けて重合反応を行い(約40分間)、その後水中にストランド状に吐出して冷却し、得られたストランドをストランドカッターで切断してポリエステルAのチップを得た。
【0105】
合成例2〜6
合成例1と同様の方法により、表1に示すポリエステルB〜Fのチップを得た。
【0106】
【表1】
【0107】
なお、表1中、無機成分(Na,Mg,P)の含有量は、各原子基準の濃度(単位:ppm;質量基準)である。また、各無機成分の由来は下記の通りである。
Na:主に酢酸ナトリウム(アルカリ金属化合物)に由来する。
Mg:主に酢酸マグネシウム・4水塩に由来する。
P:主にトリメチルホスフェートに由来する。
【0108】
また、表1中、TPAはテレフタル酸成分を、DiAはダイマー酸成分を、EGはエチレングリコール成分を、CHDMは1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を、NPGはネオペンチルグリコール成分を、BDは1,4−ブタンジオール成分を、DEGはジエチレングリコール成分を、ε−CLユニットは、ε−カプロラクトン由来のユニットを夫々意味する。
【0109】
この他、表1中の「多価カルボン酸成分」量は、チップ中の多価カルボン酸成分量とε−カプロラクトン由来のユニット量の合計量100モル%中の量を、「多価アルコール成分」量は、チップ中の多価アルコール成分量とε−カプロラクトン由来のユニットの合計量100モル%中の量を表し、「ε−CLユニット」量は、チップ中のエステルユニットとε−カプロラクトン由来のユニットの合計量100モル%中の量を表す。
【0110】
実施例1
予備乾燥したチップEを280℃で単軸式押出機で溶融押出しし、その後急冷して、厚さ180μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを100℃で10秒間予熱した後、テンターで横方向に延伸した。延伸は、まず、85℃で1.3倍に延伸し(第1段階)、次いで80℃で、第1段階終了時のフィルム幅の1.5倍に延伸し(第2段階)、さらに75℃で、第2段階終了時のフィルム幅の2.0倍に延伸(第3段階)して行った。次いで、75℃で、第3段階終了時のフィルム幅の2%伸張しながら10秒間熱処理を行って、最終延伸倍率(未延伸フィルムに対して)4.0倍、厚さ45μmの熱収縮性ポリエステル系フィルム1を得た。得られたフィルムの組成および物性を表2に示す。
【0111】
実施例2
予備乾燥したチップFを280℃で単軸式押出機で溶融押出しし、その後急冷して、厚さ180μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを100℃で10秒間予熱した後、テンターで横方向に延伸した。延伸は、まず、85℃で1.3倍に延伸し(第1段階)、次いで80℃で、第1段階終了時のフィルム幅の1.5倍に延伸し(第2段階)、さらに75℃で、第2段階終了時のフィルム幅の2.0倍に延伸(第3段階)して行った。次いで、70℃で、第3段階終了時のフィルム幅の2%伸張しながら10秒間熱処理を行って、最終延伸倍率(未延伸フィルムに対して)4.0倍、厚さ45μmの熱収縮性ポリエステル系フィルム2を得た。得られたフィルムの組成および物性を表2に示す。
【0112】
比較例1
夫々別個に予備乾燥したチップBを70質量%、チップCを5質量%、チップDを25質量%の割合で混合し、280℃で単軸式押出機で溶融押出しし、その後急冷して、厚さ180μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを88℃で10秒間予熱した後、テンターで横方向に75℃で4.0倍延伸した。次いで、79℃で10秒間熱処理を行って、厚さ45μmの熱収縮性ポリエステル系フィルム3を得た。得られたフィルムの組成および物性を表2に示す。
【0113】
比較例2
夫々別個に予備乾燥したチップAを25質量%、チップCを49質量%、チップDを26質量%の割合で混合し、280℃で単軸式押出機で溶融押出しし、その後急冷して、厚さ180μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを88℃で10秒間予熱した後、テンターで横方向に73℃で4.0倍延伸した。次いで、72℃で10秒間熱処理を行って、厚さ45μmの熱収縮性ポリエステル系フィルム4を得た。得られたフィルムの組成および物性を表2に示す。
【0114】
【表2】
【0115】
なお、表2中、無機成分(Na,Mg,P)の含有量は、各原子基準の濃度(単位:ppm;質量基準)である。また、表2中、TPAはテレフタル酸成分を、DiAはダイマー酸成分を、EGはエチレングリコール成分を、CHDMは1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を、NPGはネオペンチルグリコール成分を、BDは1,4−ブタンジオール成分を、DEGはジエチレングリコール成分を、ε−CLユニットは、ε−カプロラクトン由来のユニットを夫々意味する。
【0116】
さらに、表2中の「多価カルボン酸成分」量は、フィルム中の多価カルボン酸成分量とε−カプロラクトン由来のユニット量の合計量100モル%中の量を、「多価アルコール成分」量は、フィルム中の多価アルコール成分量とε−カプロラクトン由来のユニットの合計量100モル%中の量を表し、「ε−CLユニット」量は、フィルム中のエステルユニットとε−カプロラクトン由来のユニットの合計量100モル%中の量を表す。
【0117】
【発明の効果】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、収縮時に、収縮白化や収縮斑、シワ、歪み、タテヒケ等の不良の発生が極めて少なく、部分的に高い収縮率が要求される場合であっても、美麗な収縮仕上がり外観を得ることができ、収縮ラベル、キャップシール、収縮包装等の用途に好適に用いることができる。
【0118】
また、本発明の製造方法により、上記のような特性を有する本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの提供が可能となった。
Claims (7)
- 熱収縮性ポリエステル系フィルムにおいて、
多価アルコール成分100モル%中、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分が10〜50モル%であり、
10cm×10cmの正方形状に切り取った熱収縮性ポリエステル系フィルムの試料について、下記(A)、(B)および(C)の熱収縮率が、(A):30〜40%、(B):50〜60%、(C):65〜77%であることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
ここで、
(A):75℃の温水中に10秒浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒浸漬して引き上げたときの最大収縮方向の熱収縮率、
(B):85℃の温水中に10秒浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒浸漬して引き上げたときの最大収縮方向の熱収縮率、
(C):95℃の温水中に10秒浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒浸漬して引き上げたときの最大収縮方向の熱収縮率、
である。 - 40℃,160時間の条件での保管前後の熱収縮性ポリエステル系フィルムについて、下式(1)で示される前記(A)の熱収縮率の変化量Xが10%以下である請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
X(%)=[保管前の熱収縮率(%)]−[保管後の熱収縮率(%)] (1) - 極限粘度が0.66dl/g以上である請求項1または2に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
- 275℃での溶融比抵抗値が0.70×108Ω・cm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
- フィルムの最大収縮方向についての熱収縮試験を、90℃の熱空気中、試験片幅20mm、チャック間距離100mmの条件で行ったとき、最大熱収縮応力値が3.0MPa以上である請求項1〜4のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
- 構成ユニット100モル%中、エチレンテレフタレートユニットが50モル%以上である請求項1〜5のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムから得られたものであることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系ラベル。
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