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JP2022024879A - 画像形成装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 感光ドラム表面に効果的に微粒子を供給することによって、転写効率を向上させる。【解決手段】 トナー粒子及びトナー粒子の表面に付着するキャリア粒子により構成される現像剤を担持する回転可能な現像剤担持体を有し、現像剤担持体を像担持体に押圧する押圧力をF1、トナー粒子と像担持体との間に介在するキャリア粒子の総数をN1、とした場合に、キャリア粒子を単位キャリア粒子当たりの押圧力であるF1/N1でトナー粒子に押圧した際に測定されるキャリア粒子とトナー粒子との間に形成される付着力Ftと、キャリア粒子をF1/N1で像担持体に押圧した際に測定されるキャリア粒子と像担持体との間に形成される付着力Fdr1と、の関係が、Ft≦Fdr1を満たし、現像剤担持体の回転軸線方向において現像剤が担持される現像剤担持体の領域は、像担持体の回転に伴って従動回転する回転部材と像担持体との接触部よりも短い。【選択図】 図14

Description

本発明は、電子写真プロセス等を利用した画像形成装置に関する。
従来から、複写機やレーザープリンターなど、電子写真プロセスを用いて画像形成を行う画像形成装置が知られている。
この画像形成装置は、転写工程として、像担持体としての感光ドラム対向部に配置された転写部材に電圧電源より電圧を印加することで、感光ドラム表面に形成されたトナー像を中間転写体や記録材上に静電転写する。複数色のトナー像を形成する場合は、この転写工程を、複数色のトナー像に関して繰り返し実行することにより、中間転写体や記録材表面に複数色のトナー像を形成する。感光ドラムから中間転写体や記録材に転写されなかった現像剤(トナー)は、クリーニング部材によって感光ドラム上から除去され、クリーニングユニット内の廃トナー収容部に廃トナーとして収容される。
しかし、近年では、装置の小型化を目的として感光ドラム表面のクリーニングシステムを省略したクリーナレスシステムが提案されている。クリーナレスシステムを達成させるためには、感光ドラムから中間転写体へのトナー像の転写効率を向上させ、トナー像を転写部材によって転写した後に、感光ドラム表面に残留する転写残トナーを減らすことが好ましい。
特許文献1には、クリーナレスシステムの達成のために、感光ドラム表面に予め微粒子を付着させ、感光ドラムとトナー像の間に微粒子を介在させて感光ドラムとトナー間の付着力を低減して転写効率を向上させる構成が提案されている。
さらに、特許文献1には、感光ドラム表面に微粒子を付着させる手段として、微粒子を外添したトナーを用いることで、現像装置から感光ドラム上に微粒子を供給する構成が提案されている。
また、感光ドラムにトナー像を形成する上で、高画質化を達成するために、感光ドラムにプロセス部材を当接して画像形成プロセスを実行することが一般的に行われている。
特開平10-63027
しかしながら、特許文献1の構成に、感光ドラムに当接させて回転するプロセス部材を備えた場合、感光ドラムとプロセス部材の間に微粒子が介在することで感光ドラムとプロセス部材の間の摩擦力が低減する。摩擦力が低減すると、プロセス部材の回転が不安定になることがある。プロセス部材の回転が不安定になると、所望のプロセス条件で画像形成プロセスを行うことが出来ないことがあり、結果として、画像弊害を引き起こす場合があった。
そこで、本発明では、転写効率を向上させるために感光ドラム表面に十分な量の微粒子を供給する構成において、感光ドラムに当接して回転するプロセス部材の回転を安定させることで画像弊害の発生を抑制することを目的とする。
そこで、本発明に係る画像形成装置は、回転可能な像担持体と、前記像担持体と接触して接触部を形成し、前記像担持体の回転に伴って従動回転する回転部材と、トナー粒子及び前記トナー粒子の表面に付着するキャリア粒子により構成される現像剤を担持する回転可能な現像剤担持体であって、前記像担持体と接触して現像部を形成し、前記現像部において前記像担持体の表面に前記現像剤を供給する現像剤担持体と、前記像担持体の表面に供給された前記現像剤を被転写体に転写する転写部材と、を有し、前記像担持体が回転した状態で、前記現像部において、前記現像剤担持体の表面に担持された前記キャリア粒子を前記像担持体の表面に供給することが可能な画像形成装置であって、前記現像剤担持体を前記像担持体に押圧する押圧力をF1、前記トナー粒子と前記像担持体との間に介在する前記キャリア粒子の総数をN1、とした場合に、前記キャリア粒子を単位キャリア粒子当たりの押圧力であるF1/N1で前記トナー粒子に押圧した際に測定される前記キャリア粒子と前記トナー粒子との間に形成される付着力Ftと、前記キャリア粒子を前記F1/N1で前記像担持体に押圧した際に測定される前記キャリア粒子と前記像担持体との間に形成される付着力Fdr1と、の関係が、Ft≦Fdr1を満たし、前記現像剤担持体の回転軸線方向において前記現像剤が担持される前記現像剤担持体の領域は、前記回転軸線方向における前記接触部よりも短いことを特徴とする。
以上説明したように、本発明によれば、転写効率を向上させるために感光ドラム表面に十分な量の微粒子を供給する構成において、感光ドラムに当接して回転するプロセス部材の回転を安定させることで画像弊害の発生を抑制することが出来る。
実施例1における画像形成装置の概要である。 実施例1における制御ブロック図である。 実施例1におけるトナー表面の模式図である。 実施例1におけるトナー表面の凸形状の模式図である。 実施例1におけるトナー表面の凸形状の模式図である。 実施例1におけるトナー表面の凸形状の模式図である。 実施例1におけるトナーと転写キャリアの模式図である。 実施例1における転写キャリア供給時の模式図である。 実施例1における一次転写時の模式図である。 実施例1における画像形成動作のタイミングチャートである。 (a)、(b)実施例1における現像部におけるトナーの接触状態を示す図である。 実施例1における現像部におけるトナーと転写キャリア粒子の存在状態を示す図である。 (a)、(b)実施例1における現像部における転写キャリア粒子の状態を示す図である。 実施例1におけるプロセス部材の長手幅を説明する図である。 実施例1における付着力測定結果である。 実施例2における画像形成部の断面図である。 実施例2における付着量と押圧力の関係を示した図である。 実施例2におけるプロセス部材の長手幅を説明する図である。 (a)実施例3におけるプロセス部材の長手幅を説明する図である。(b)実施例3における現像ローラの現像開口部の両端の構成の断面図である。 その他の実施例における画像形成部の断面図である。
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態を例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。従って、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
1.画像形成装置
本発明は特に、像担持体のクリーニング手段を持たない所謂ドラムクリーナレス方式を用いた画像形成装置に関するものである。
図1は、カラー画像形成装置の一例を示す概略図であり、図1を用いて本実施形態の画像形成装置の構成及び動作を説明する。尚、本実施形態の画像形成装置は、a~dの画像形成ステーションを設けている所謂タンデムタイプのプリンタである。第1の画像形成ステーションaはイエロー(Y)、第2の画像形成ステーションbはマゼンタ(M)、第3の画像形成ステーションcはシアン(C)、第4の画像形成ステーションdはブラック(Bk)の各色の画像を形成する。各画像形成ステーションの構成は、収容するトナーの色以外では同じであり、以下、第1の画像形成ステーションaを用いて説明する。また、以下、特に区別を要しない場合は、Y、M、C、Kにおけるa~dは省略して、総括的に説明する。
第1の画像形成ステーションaは、ドラム状の電子写真感光体(以下、感光ドラムという)1aと、帯電手段である帯電ローラ2aと、露光ユニット3aと、現像器4aと、を備える。
感光ドラム1aは矢印の方向に150mm/secの周速度(プロセススピード)で感光ドラム駆動部110によって回転駆動しトナー像を担持する像担持体である。感光ドラム1aは、直径φ20mmのアルミの素管上に感光層と表層を設けたもので、表層はポリアリレートで形成する膜厚20μmの薄膜層を用いた。
コントローラ等の制御部200が画像信号を受信することによって画像形成動作が開始され、感光ドラム1aは回転駆動される。感光ドラム1aは回転過程で、帯電ローラ2aにより所定の極性(本実施形態では正規極性が負極性)で所定の電位に一様に帯電処理され、露光ユニット3aにより画像信号に応じた露光を受ける。これにより、目的のカラー画像のイエロー色成分像に対応した静電潜像が形成される。次いで、その静電潜像は現像位置において現像器(イエロー現像器)4aにより現像され、イエロートナー像として可視化される。
帯電部材としての帯電ローラ2aは、感光ドラム1aの表面に所定の圧接力によって帯電部において当接しており、感光ドラム1a表面との摩擦により感光ドラム1aに対して従動回転する。また、帯電ローラ2aの回転軸には、画像形成動作に応じて帯電電圧電源120から所定の直流電圧が印加される。本実施例では、帯電ローラ2aは、直径φ5.5mmの金属軸上に、厚さが1.5mmで体積固有抵抗率が1×10Ωcm程度の導電性弾性体からなる弾性層を設けたものを使用している。そして、画像形成動作に応じて、制御部200は、帯電ローラ2aの回転軸に帯電電圧として-1050Vの直流電圧を印加して感光ドラム1aの表面を所定の電位である-500Vに帯電している。感光ドラム1aの表面電位の測定はトレック社製の表面電位計Model344で行った。このときの感光ドラム1aの表面電位である-500Vは、非画像形成時の感光ドラム1の表面電位であり、トナー像の現像は行われない暗部電位(Vd)である。また、帯電ローラ2aの表層には多数の凸部が設けられており、平均的な凸部の高さは10μm程度となっている。帯電ローラ2a表層に設けた凸部は、帯電部において帯電ローラ2aと感光ドラム1aとの間でスペーサーとしての役割を有している。後述する一次転写部において転写されずに感光ドラム1a上に残留したトナーである転写残トナーが帯電部に侵入した際に、凸部以外の箇所が転写残トナーに触れて帯電ローラ2aが転写残トナーで汚れることを抑制する役割である。
露光ユニット3aは、レーザドライバ、レーザダイオード、ポリゴンミラー、光学レンズ系等を備えている。図2に示したように、露光ユニット3には、コントローラ202からインターフェース201を介して制御部200に入力し、画像処理された画像情報の時系列電気デジタル画素信号が入力する。本実施例では、露光ユニット3aで露光された後の静電潜像部の感光ドラム1の画像形成電位Vlが-100Vとなるように露光量を調整している。画像形成電位は明部電位ともいう。
現像ユニット4aは、現像部材(現像剤担持体)としての現像ローラ41aと、トナーと後述する転写キャリア粒子から構成される非磁性一成分現像剤を備えている。現像ユニット4aは、静電潜像をトナー像として現像するために、感光ドラム1に現像作用を行う現像手段であり、現像剤を収容する現像剤収容部である。現像ユニット4aと画像形成装置本体100は、図2に示したように現像ローラ41aと感光ドラム1aの当接離間(現像離間)状態を制御する当接離間機構40を備えている。制御部200は、画像形成動作等に応じて現像ローラ41aと感光ドラム1aを当接離間させる。現像ローラ41aと感光ドラム1aの当接時において、現像ローラ41aは200gfの押圧力で当接している。現像ローラ41aと感光ドラム1aとの当接部である現像ニップ部の幅は、感光ドラム1の回転方向における幅が2mm、感光ドラム長手方向における幅が220mmである。現像ローラ41aは、現像ニップ部において表面移動速度(以下、周速度)を感光ドラム1aの周速度と等速になるように、感光ドラム1aの表面移動方向と順方向に現像ローラ駆動部130によって回転駆動される。
除電手段としての前露光ユニット5aは、帯電ローラ2aによって感光ドラム1aの表面が帯電される前の感光ドラム1aの表面を露光することで除電する。感光ドラム1aの表面を除電することによって、感光ドラム1に形成された表面電位を均す役割や、帯電部で生じる放電による放電量を制御する役割を有する。
また、制御部200は、画像形成動作中の現像ローラ41aと感光ドラム1aの当接時に、現像電圧電源140から現像電圧Vdcとして-300Vの直流電圧を現像ローラ41aの芯金に印加するように制御する。画像形成時には、現像電圧Vdc=-300Vと感光ドラム1aの画像形成電位Vl=-100Vの間の電位差により生じる静電気力にて、現像ローラ41a上に担持されたトナーが感光ドラム1aの画像形成電位Vl部に現像される。
ここで、以降の説明においては、電位や印加電圧に関し、負極性側に絶対値が大きい(例えば-500Vに対して-1000V)ことを電位が高いと称し、負極性側に絶対値が小さい(例えば-500Vに対して-300V)ことを電位が低いと称する。これは本実施例における負帯電性を持つトナーを基準として考えるためである。
また、本実施例での電圧は、アース電位(0V)との電位差として表現される。したがって、現像電圧Vdc=-300Vは、アース電位に対して、現像ローラ41aの芯金に印加された現像電圧によって、-300Vの電位差を有したと解釈される。これは、帯電電圧や転写電圧などに関しても同様である。
続いて、制御部200について説明する。図2は、本実施例における画像形成装置100の要部の概略制御態様を示す制御ブロック図である。コントローラ202は、ホスト装置との間で各種の電気的な情報の授受をすると共に、画像形成装置100の画像形成動作を所定の制御プログラムや参照テーブルに従って、インターフェース201を介して制御部202で統括的に制御する。制御部202は、様々な演算処理を行う中心的素子であるCPU155、記憶素子であるROM、RAMなどのメモリ154などを有して構成される。RAMには、センサの検知結果、カウンタのカウント結果、演算結果などが格納され、ROMには制御プログラム、予め実験などにより得られたデータテーブルなどが格納されている。制御部200には、画像形成装置100における各制御対象、センサ、カウンタなどが接続されている。制御部200は、各種の電気的情報信号の授受や、各部の駆動のタイミングなどを制御して、所定の画像形成シーケンスの制御などを行う。例えば、帯電電圧電源120、現像電圧電源140、露光ユニット3、一次転写電圧電源160、二次転写電圧電源150によって印加される電圧や露光量を制御部200によって制御している。その他、感光ドラム駆動部110、現像ローラ駆動部130、現像当接離間機構40の制御も行う。そして、この画像形成装置100は、ホスト装置からコントローラ202に入力される電気的画像信号に基づいて、記録材Pに画像形成を行う。なお、ホスト装置としては、イメージリーダー、パソコン、ファクシミリ、スマートフォン等が挙げられる。
本実施例におけるトナーは、懸濁重合法で製造した負帯電性を有する非磁性のトナーで、体積平均粒径が7.0μmであり、現像ローラ41a上に担持された際に負極性に帯電する。トナーの体積平均粒径はベックマン・コールター株式会社製のレーザ回折式粒度分布測定器LS-230で測定した。トナーに関しては詳細を後述する。
中間転写体としての中間転写ベルト10は、複数の張架部材11、12、13とで張架され、感光ドラム1aと当接した対向部で周方向に移動する向きに、感光ドラム1aに対し等しい周速度で回転駆動される。一次転写部材としての一次転写ローラ14aには、画像形成動作中の一次転写時に一次転写電圧電源160から200Vの直流電圧が印加される。感光ドラム1a上に形成されたイエロートナー像は、感光ドラム1aと中間転写ベルト10を介した一次転写ローラ14aの当接部である一次転写部を通過する過程で、中間転写ベルト10の上に静電転写される。
一次転写ローラ14aはφ6mmの円筒形状の金属ローラであり、素材はニッケルメッキのSUSを用いている。一次転写部材14aは、感光ドラム1aの中心位置に対して、中間転写ベルト10の移動方向下流側に8mmオフセットされた位置に配置されており、中間転写ベルト10は感光ドラム1aに巻きつくような構成になっている。一次転写ローラ14aは、感光ドラム1aへの中間転写ベルト10の巻きつき量を確保することが出来るように、感光ドラム1aと中間転写ベルト10で形成される水平面に対して1mm持ち上げた位置に配置される。そして、中間転写ベルト10を約200gfの力で押圧している。一次転写ローラ14aは中間転写ベルト10の回転に伴い従動して回転する。また、第2画像形成ステーションbに配置される一次転写ローラ14b、第3画像形成ステーションcに配置される一次転写ローラ14c、第4画像形成ステーションdに配置される一次転写ローラ14dについても、一次転写ローラ14aと同様の構成となる。
以下、同様にして、第2、3、4の画像形成ステーションb、c、dによって第2色のマゼンタトナー像、第3色のシアントナー像、第4色のブラックトナー像が形成され、中間転写ベルト10上に順次重ねて転写される。そして、目的のカラー画像に対応した合成カラー画像が得られる。
中間転写ベルト10上の4色のトナー像は、中間転写ベルト10と二次転写部材として二次転写ローラ15が形成する二次転写ニップ部を通過する二次転写工程の過程で、給紙手段50により給紙された記録材Pの表面に一括転写される。二次転写ローラ15は、中間転写ベルト10に対して、50Nの加圧力で当接して二次転写ニップ部を形成している。二次転写ローラ15は中間転写ベルト10に対して従動回転し、また、中間転写ベルト10上のトナーを紙等の記録材Pに二次転写している時には、二次転写電圧電源150より、1500Vの電圧が印加されている。
その後、4色のトナー像を担持した記録材Pは定着器30に導入される。定着器30により加熱および加圧されることにより4色のトナーが溶融混色して記録材Pに固定される。二次転写後に中間転写ベルト10上に残ったトナーは、クリーニング装置17により清掃、除去される。
クリーニング装置17は、中間転写ベルト10の外周面に当接して中間転写ベルト10上に残ったトナーを掻き取り、中間転写ベルトクリーニング装置17内に回収するクリーニングブレードなどを有する。中間転写ベルトクリーニング装置17は、中間転写ベルト10のうち二次転写部よりも中間転写ベルト10の回転方向下流側で、中間転写ベルト10上に付着しているトナーを回収するように配置されている。
以上の動作により、フルカラーのプリント画像が形成される。
2.現像剤、トナー、転写キャリア粒子
次に、本実施例で用いた現像剤、トナー、転写キャリア粒子について詳細を説明する。
本実施例では現像剤としてトナーと転写キャリア粒子である外添剤Aとの混合物を用いた。ここで、転写キャリア粒子とは、感光ドラム1上に現像されたトナー像と感光ドラム1との間に介在することで、トナー像と感光ドラム1との間の付着力を低減して、トナー像の一次転写効率を向上させる役割を有する粒子のことを言う。トナーは、離型剤を含有するトナー母粒子及び該トナー母粒子表面の有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子である。
該有機ケイ素重合体は、R-Si(O1/2で表されるT3単位構造を有し、該Rは、炭素数1以上6以下のアルキル基又はフェニル基を表し、有機ケイ素重合体はトナー母粒子表面に凸部を形成している。
凸部はトナー母粒子表面に面接触していることを特徴としており、面接触することにより、凸部の移動・脱離・埋没に対する抑制効果が顕著に期待出来る。
面接触の程度を、図3、図4、図5、図6に示す凸部の模式図にて説明する。
図3に示す61は、トナー粒子の約1/4程度が分かるトナー粒子の断面画像であり、62はトナー粒子、63はトナー母粒子表面、64が凸部である。トナー粒子の断面は後述する走査透過型電子顕微鏡(以下、STEMともいう)を用いて観察することが出来る。
トナーの断面画像を観察し、トナー母粒子表面の周に沿った線を描く。その周に沿った線を基準に水平画像へ変換を行う。該水平画像において、該凸部と該トナー母粒子とが連続した界面を形成している部分における該周に沿った線の長さを凸幅wとする。
また、該凸幅wの法線方向において該凸部の最大長を凸径Dとし、該凸径Dを形成する線分における該凸部の頂点から該周に沿った線までの長さを凸高さHとする。
図4及び図6において、凸径Dと凸高さHは同じであり、図5において、凸径Dは凸高さHより大きくなる。
また、図6は、中空粒子を潰す・割るなどして得られた、半球粒子の中心部が凹んだ、ボウル形状の粒子に類する粒子の固着状態を模式的に表したものである。
図6において、凸幅Wはトナー母粒子表面と接している有機ケイ素重合体の長さの合計とする。すなわち、図6における凸幅WはW1とW2の合計となる。
凸高さHの個数平均値は、30nm以上300nm以下であり、30nm以上200nm以下であることが好ましい。凸高さHの個数平均値が、30nm以上である場合、トナー母粒子表面と転写部材との間にスペーサー効果が生じ、転写性が顕著に向上する。一方、凸高さHの個数平均値が、300nm以下である場合、移動・脱離・埋没への抑制効果が著しく、長期使用においても高い転写性が維持される。凸高さHが30nm以上300nm以下である凸部において、凸高さHの累積分布をとる。該凸高さHの小さい方から積算して80個数%にあたる該凸高さをH80としたとき、H80は65nm以上120nm以下であることが好ましく、75nm以上100nm以下であることがより好ましい。H80が上記範囲であることで、転写性をより向上させることが出来る。
外添剤Aの一次粒子の個数平均粒径Rは、30nm以上1200nm以下であることが好ましい。Rが30nm以上であることで、転写部材との間にスペーサー効果を発現させ、高い転写性を発揮させる。また、Rが大きいほど、転写性能は向上する傾向にある。一方、Rが1200nmを超える場合、トナーの流動性が低下して画像ムラが生じやすくなる。
外添剤Aの一次粒子の個数平均粒径Rの凸高さHの個数平均値に対する比は、1.00以上4.00以下であることが好ましい。該比[(外添剤Aの一次粒子の個数平均粒径R)/(凸高さHの個数平均値)]が上記範囲である場合、長寿命化に耐えうる優れた転写性と低温定着性の両立が可能である。
凸高さHの個数平均値が最小値である30nmの場合、Rが30nm以上であれば、転写部材との間にスペーサー効果を発現させ、転写性を良化させることが出来る。これは、脱離などの影響より凸部が存在していない場所に、該外添剤Aが置換されて、スペーサー効果を発現していると考えている。つまり、Rが30nm未満であれば、スペーサー効果を発現しにくい。
外添剤Aのトナー粒子表面に対する固着率は、0%以上20%以下であることが好ましく、0%以上10%以下であることがより好ましい。該固着率が上記範囲にあることで、外添剤Aがトナー粒子の表面を動き易くなり、凸部代替作用によって転写性をより向上させることが出来る。トナーを定着部材に定着させる定着工程において、トナー母粒子から、適切量の離型剤が染み出すことによって、定着部材と紙の分離性能を向上させている。
走査電子顕微鏡による該トナーの表面観察によって、該トナー表面の1.5μm四方の反射電子像を取得する。該反射電子像中の有機ケイ素重合体部分が明部となるように二値化処理した画像を得たとき、該画像の全面積に対する該画像の明部面積の面積割合(以下単に、明部面積の面積割合ともいう)は、30.0%以上75.0%以下である。また、該画像の明部面積の面積割合は、35.0%以上70.0%以下であることが好ましい。該明部面積の面積割合が高いほど、有機ケイ素重合体のトナー母粒子表面における存在割合が高いことを示している。該明部面積の面積割合が75.0%より高い場合、トナー母粒子由来の成分のトナー母粒子表面における存在割合が少なく、トナー母粒子からの離型剤の染み出しが生じにくくなり、低温定着時に定着器への薄紙巻き付きが発生し易い。一方、該画像の明部面積の面積割合が30.0%未満の場合、トナー母粒子由来の成分のトナー母粒子表面における存在割合が多い。すなわち、トナー母粒子由来の成分のトナー母粒子表面への露出面積が大きく、使用初期の転写性が低下する。該画像の明部面積の面積割合は、以後、トナー母粒子の表面における有機ケイ素重合体の被覆率ともいう。
外添剤Aは、一次粒子の個数平均粒径Rが30nm以上1000nm以下であるものであれば特段限定されることはなく、各種有機微粒子又は無機微粒子を用いることが出来る。流動性を付与し易く、トナー母粒子と同じく負に帯電し易いという観点から、外添剤Aはシリカ微粒子を含有することが好ましい。外添剤A中のシリカ微粒子の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、外添剤Aがシリカ微粒子であることがより好ましい。トナー中の外添剤Aの含有量は、0.02質量%以上5.00質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上3.00質量%以下であることがより好ましい。
シリカ微粒子以外の有機微粒子又は無機微粒子としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。
(1)流動性付与剤:アルミナ微粒子、酸化チタン微粒子、カーボンブラック及びフッ化カーボン。
(2)研磨剤:金属酸化物の微粒子(チタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、アルミナ、酸化マグネシウム、及び酸化クロムなどの微粒子)、窒化物の微粒子(窒化ケイ素などの微粒子)、炭化物の微粒子(炭化ケイ素などの微粒子)、金属塩の微粒子(硫酸カルシウム、硫酸バリウム、及び炭酸カルシウムなどの微粒子)。
(3)滑剤:フッ素系樹脂の微粒子(フッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどの微粒子)、脂肪酸金属塩の微粒子(ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの微粒子)。
(4)荷電制御性微粒子:金属酸化物の微粒子(酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、及びアルミナなどの微粒子)、カーボンブラック。
シリカ微粒子及び該有機微粒子又は無機微粒子は、トナーの流動性の改善及びトナー粒子の帯電均一化のために疎水化処理が施されたものを用いてもよい。
該疎水化処理のための処理剤としては、未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物、有機チタン化合物が挙げられる。これらの処理剤は単独で又は併用して用いてもよい。
該シリカ微粒子は、公知のシリカの微粒子が使用可能であり、乾式シリカの微粒子、湿式シリカの微粒子のいずれであってもよい。好ましくは、ゾルゲル法により得られる湿式シリカの微粒子(以下、ゾルゲルシリカともいう)であることが好ましい。
図7は本実施例で用いた現像剤の拡大図である。図7に示すように、本実施例の現像剤は有機ケイ素重合体の凸部が多数形成されたトナー表面上に転写キャリア粒子である外添剤Aを配置したものになっている。
図7で示すトナー表面の凸間隔Gと凸高さHは、後述する走査透過型電子顕微鏡(以下、STEMともいう)を用いて測定することが出来る。また、凸間隔Gと凸高さHは走査型プローブ顕微鏡(以下SPM)でも測定することが出来る。走査型プローブ顕微鏡(以下SPM)は、探針,探針を支持するカンチレバー及びカンチレバーの曲がりを検出する変位測定系を備えており、探針と試料との間の原子間力(引力または斥力)を検出して、試料表面の形状観察を行うものである。
凸間隔Gが転写キャリアよりも大きいと転写キャリア粒子が凸部間に配置された場合にトナー母体と接触してしまい、転写キャリア粒子とトナー間の付着力Ftが大きくなりトナーから感光ドラム1へ転写キャリア粒子が転移しづらくなる。そのため、凸間隔Gの個数平均値は転写キャリア粒子の個数平均粒径よりも小さいことが好ましい。
また、凸高さHが転写キャリア粒子の粒径よりも高いと、凸部が転写キャリア粒子よりも先に感光ドラム1に接触してしまい、転写キャリア粒子が感光ドラム1と接触しづらくなり、トナーから感光ドラム1へ転写キャリア粒子が転移しづらくなる。そのため、凸高さHの個数平均値は転写キャリア粒子の個数平均粒径よりも小さいことが好ましい。
ただし、前述したように転写キャリア粒子とトナー間の付着力Ftが転写キャリア粒子と感光ドラム1との間の付着力Fdrよりも小さいことが好ましい。そのため、転写キャリア粒子の材料としては転写キャリア粒子のトナーへの付着力Ftが小さくなるものを選択することが好ましい。例えば、本実施例のように、トナー表面の凸部が有機シリカ重合体などのシリカ系材料で形成されている場合は、転写キャリア粒子の材料としても凸部と材料構成の近いシリカ系の材料を選択することが、凸部と転写キャリア粒子間を低付着力にするため好ましい。
トナーを被覆する転写キャリア粒子の個数は多い方が現像ローラ41から感光ドラム1への転写キャリア粒子の供給の観点からは好ましい。しかし、転写キャリア粒子の添加量が多すぎると画像形成装置100内の部材汚染のリスクが高まるため、所望の一次転写性に合わせて調整することが好ましい。
一次転写性は感光ドラム1上に占める転写キャリア粒子の被覆率の増加に伴って向上し、十分な一次転写性を得るためには感光ドラム1上に占める転写キャリア粒子の被覆率が10%以上であることが好ましい。しかしながら、感光ドラム1上に占める転写キャリア粒子の被覆率が増加するにつれ、一次転写性の向上度合いが鈍化し、転写キャリア粒子による画像形成装置内汚染の各種部材汚染のリスクが高まる。そのため、転写キャリア粒子の感光ドラム1上に占める被覆率は50%以内にしておくことが好ましい。
3.現像剤の物性測定方法
以下、各種測定方法を説明する。
<走査透過型電子顕微鏡(STEM)におけるトナーの断面の観察方法>
走査透過型電子顕微鏡(STEM)で観察されるトナーの断面は以下のようにして作製する。
以下、トナーの断面の作製手順を説明する。なお、トナーに有機微粒子又は無機微粒子が外添されている場合は、下記方法等によって、有機微粒子又は無機微粒子を除去したものを試料として用いる。
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させ、ショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブ(容量50mL)に、上記ショ糖濃厚液を31gと、コンタミノンN(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を6mL入れる。ここにトナー1.0gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。遠心分離用チューブをシェイカー(AS-1N アズワン株式会社より販売)にて300spm(strokes per min)、20分間振とうする。振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機(H-9R 株式会社コクサン製)にて3500rpm、30分間の条件で分離する。この操作により、トナー粒子と外添剤とが分離される。トナー粒子と水溶液が十分に分離されていることを目視で確認し、最上層に分離したトナー粒子をスパチュラ等で採取する。採取したトナー粒子を減圧濾過器で濾過した後、乾燥機で1時間以上乾燥し、測定用試料を得る。この操作を複数回実施して、必要量を確保する。
また、凸部が有機ケイ素重合体を含有するか否かについては、エネルギー分散型X線分析(EDS)による元素分析を組合せて確認する。
カバーガラス(松波硝子社、角カバーグラス;正方形No.1)上にトナーを一層となるように散布し、オスミウム(Os)・プラズマコーター(filgen社、OPC80T)を用いて、保護膜としてトナーにOs膜(5nm)及びナフタレン膜(20nm)を施す。次に、PTFE製のチューブ(外径3mm(内径1.5mm)×3mm)に光硬化性樹脂D800(日本電子社)を充填し、チューブの上に前記カバーガラスをトナーが光硬化性樹脂D800に接するような向きで静かに置く。この状態で光を照射して樹脂を硬化させた後、カバーガラスとチューブを取り除くことで、最表面にトナーが包埋された円柱型の樹脂を形成する。超音波ウルトラミクロトーム(Leica社、UC7)により、切削速度0.6mm/sで、円柱型の樹脂の最表面からトナーの半径(例えば、重量平均粒径(D4)が8.0μmの場合は4.0μm)の長さだけ切削して、トナー中心部の断面を出す。
次に、膜厚100nmとなるように切削し、トナーの断面の薄片サンプルを作製する。このような手法で切削することで、トナー中心部の断面を得ることが出来る。
走査透過型電子顕微鏡(STEM)として、JEOL社製、JEM-2800を用いた。STEMのプローブサイズは1nm、画像サイズ1024×1024ピクセルにて画像を取得する。また、明視野像のDetector ControlパネルのContrastを1425、Brightnessを3750、Image ControlパネルのContrastを0.0、Brightnessを0.5、Gammmaを1.00に調整して、画像を取得する。画像倍率は100,000倍にて行い、図3のようにトナー1粒子中の断面の周のうち4分の1から2分の1程度収まるように画像取得を行う。得られたSTEM画像について、画像処理ソフト(イメージJ(https://imagej.nih.gov/ij/より入手可能))を用いて画像解析を行い、有機ケイ素重合体を含む凸部を計測する。該計測はSTEM画像中から任意に選択した30個の凸部について行う。なお、凸部が有機ケイ素重合体を含有するか否かについては、走査型電子顕微鏡(SEM)及びエネルギー分散型X線分析(EDS)による元素分析の組合せにより確認する。まず、ライン描画ツール(StraghtタブのSegmented lineを選択)にてトナー母粒子の周に沿った線を描く。有機ケイ素重合体の凸部がトナー母粒子に埋没しているような部分は、その埋没はないものとして滑らかに線をつなぐ。その線を基準に水平画像へ変換(EditタブのSelection選択し、propertiesにてline widthを500ピクセルに変更後、EditタブのSelectionを選択しStraghtenerを行う)を行う。該水平画像中、有機ケイ素重合体を含む凸部の一つについて、下記計測を実施する。該凸部と該トナー母粒子とが連続した界面を形成している部分における該周に沿った線の長さを凸幅wとする。該凸幅wの法線方向において該凸部の最大長を凸径Dとし、該凸径Dを形成する線分における該凸部の頂点から該周に沿った線までの長さを凸高さHとする。該計測を、任意に選択した30個の凸部について実施し、各計測値の算術平均値を、凸高さHの個数平均値とする。
<H80の算出方法>
上記走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いたトナーの断面のSTEM画像において、凸高さHが30nm以上300nm以下である凸部において、該凸高さHの累積分布をとる。該凸高さHの小さい方から積算して80個数%にあたる該凸高さをH80(単位:nm)とする。
<トナー表面の1.5μm四方の反射電子像における明部面積の面積割合の算出方法>
明部面積の面積割合は、走査電子顕微鏡を用いて、トナーの表面観察を行う。そして、トナー表面の1.5μm四方の反射電子像を取得する。そして、該反射電子像中の有機ケイ素重合体部分が明部となるように二値化処理した画像を得て、該画像の全面積に対する該画像の明部面積の割合を求める。トナーに有機微粒子又は無機微粒子が外添されているときは、下記方法などによって、有機微粒子又は無機微粒子を除去したものを試料として用いる。
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させ、ショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブ(容量50mL)に、上記ショ糖濃厚液を31gと、コンタミノンN(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を6mL入れる。ここにトナー1.0gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。遠心分離用チューブをシェイカー(AS-1N アズワン株式会社より販売)にて300spm(strokes per min)、20分間振とうする。振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機(H-9R 株式会社コクサン製)にて3500rpm、30分間の条件で分離する。この操作により、トナー粒子と外添剤とが分離される。トナー粒子と水溶液が十分に分離されていることを目視で確認し、最上層に分離したトナー粒子をスパチュラなどで採取する。採取したトナー粒子を減圧濾過器で濾過した後、乾燥機で1時間以上乾燥し、測定用試料を得る。この操作を複数回実施して、必要量を確保する。
また、凸部が有機ケイ素重合体を含有するか否かについては、後述するエネルギー分散型X線分析(EDS)による元素分析を組合せて確認する。
SEMの装置及び観察条件は、下記の通りである。
使用装置:カールツァイスマイクロスコピー株式会社製 ULTRA PLUS
加速電圧:1.0kV
WD:2.0mm
Aperture Size:30.0μm
検出信号:EsB(エネルギー選択式反射電子)
EsB Grid:800V
観察倍率:50,000倍
コントラスト:63.0±5.0%(参考値)
ブライトネス:38.0±5.0%(参考値)
解像度:1024×768
前処理:トナー粒子をカーボンテープに散布(蒸着は行わない)
加速電圧及びEsB Gridは、トナー粒子の最表面の構造情報の取得、未蒸着試料のチャージアップ防止、エネルギーの高い反射電子の選択的検出、といった項目を達成するように設定する。観察視野は、トナー粒子の曲率が最も小さくなる頂点付近を選択する。反射電子像の明部が有機ケイ素重合体由来であることは、走査電子顕微鏡(SEM)で取得出来るエネルギー分散型X線分析(EDS)による元素マッピング像と、前記反射電子像を重ね合わせることで確認した。
SEM/EDSの装置及び観察条件は、下記の通りである。
使用装置(SEM):カールツァイスマイクロスコピー株式会社製 ULTRA PLUS
使用装置(EDS):サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製 NORAN System 7、Ultra Dry EDS Detecter
加速電圧:5.0kV
WD:7.0mm
Aperture Size:30.0μm
検出信号:SE2(二次電子)
観察倍率:50,000倍
モード:Spectral Imaging
前処理:トナー粒子をカーボンテープに散布し、白金スパッタ
本手法で取得したケイ素元素のマッピング像と、前記反射電子像を重ね合わせ、マッピング像のケイ素原子部と反射電子像の明部とが一致することを確認する。
反射電子像の全面積に対する明部面積の面積率の算出は、上記手法で得られたトナー粒子の表面の反射電子像を、画像処理ソフトImageJ(開発元 Wayne Rashand)を用いて解析することで取得した。以下に手順を示す。
まず、ImageメニューのTypeから、反射電子像を8-bitに変換する。次に、ProcessメニューのFiltersから、Median径を2.0ピクセルに設定し、画像ノイズを低減させる。反射電子像下部に表示されている観察条件表示部を除いた上で画像中心を見積もり、ツールバーの長方形ツール(Rectangle Tool)を用いて反射電子像の画像中心から1.5μm四方の範囲を選択する。次に、ImageメニューのAdjustから、Thresholdを選択する。Defaultを選択し、Autoをクリックした後、Applyをクリックして二値化画像を得る。この操作によって、反射電子像の明部が白で表示される。再度、反射電子像下部に表示されている観察条件表示部を除いた上で画像中心を見積もり、ツールバーの長方形ツール(Rectangle Tool)を用いて反射電子像の画像中心から1.5μm四方の範囲を選択する。次に、AnalyzeメニューのHistogramを選択する。新規に開いたHistogramウインドウから、Count値を読み取る(反射電子像の全面積に相当)。また、Listをクリックし、輝度0のときのCount値を読み取る(反射電子像の明部面積に相当)。上記値から、反射電子像の全面積に対する明部面積の面積率を算出する。上記手順を、評価対象のトナー粒子につき10視野について行い、個数平均値を算出して、反射電子像中の有機ケイ素重合体部分が明部となるように二値化処理した画像の、全面積に対する該画像の明部面積の面積割合(%)とする。
<有機ケイ素重合体の同定方法>
有機ケイ素重合体の同定方法は走査型電子顕微鏡(SEM)による観察及びエネルギー分散型X線分析(EDS)による元素分析を組み合わせて行う。
走査型電子顕微鏡「日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡 S-4800」((株)日立ハイテクノロジーズ)を用いて、最大5万倍に拡大した視野において、トナーを観察する。トナー粒子表面にピントを合わせて、表面を観察する。表面に存在する粒子などに対してEDS分析を行い、Si元素ピークの有無から、分析した粒子などが有機ケイ素重合体であるか否かを判断する。トナー粒子表面に、有機ケイ素重合体とシリカ微粒子の両方が含まれている場合には、Si、及びOの元素含有量(atomic%)の比(Si/O比)を標品と比較することで有機ケイ素重合体の同定を行う。有機ケイ素重合体、及びシリカ微粒子それぞれの標品に対して、同条件でEDS分析を行い、Si、及びOそれぞれの元素含有量(atomic%)を得る。有機ケイ素重合体のSi/O比をAとし、シリカ微粒子のSi/O比をBとする。AがBに対して、有意に大きくなる測定条件を選択する。具体的には、標品に対して、同条件で10回の測定を行い、A及びB、それぞれの相加平均値を得る。得られた平均値がA/B>1.1となる測定条件を選択する。判別対象の粒子などのSi/O比が[(A+B)/2]よりもA側にある場合に当該粒子などを有機ケイ素重合体と判断する。
有機ケイ素重合体粒子の標品として、トスパール120A(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社)を、シリカ微粒子の標品として、HDK V15(旭化成)を用いる。
<外添剤の一次粒子の個数平均粒径Rの測定方法>
走査型電子顕微鏡「日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡 S-4800」((株)日立ハイテクノロジーズ)及びエネルギー分散型X線分析(EDS)による元素分析を組み合わせて行う。
最大5万倍に拡大した視野において、上述するEDSによる元素分析手法を併用し、ランダムに外添剤粒子を撮影する。撮影された画像から、ランダムに100個の外添剤粒子を選び出し、対象とする外添剤粒子の一次粒子の長径を測定して、その算術平均値を個数平均粒径Rとする。観察倍率は、外添剤粒子の大きさによって適宜調整する。
<有機ケイ素重合体の構成化合物の組成と比率の同定方法>
トナー中に含まれる有機ケイ素重合体の構成化合物の組成と比率の同定には、NMRを用いる。トナー中に、有機ケイ素重合体以外に、シリカ微粒子などの外添剤が含まれる場合は、以下の操作を行う。
トナー1gをバイアル瓶に入れクロロホルム31gに溶解させ、分散させる。分散には超音波式ホモジナイザーを用いて30分間処理して分散液を作製する。
超音波処理装置:超音波式ホモジナイザーVP-050(タイテック株式会社製)
マイクロチップ:ステップ型マイクロチップ、先端径φ2mm
マイクロチップの先端位置:ガラスバイアルの中央部、且つバイアル底面から5mmの高さ
超音波条件:強度30%、30分
このとき、分散液が昇温しないようにバイアルを氷水で冷却しながら超音波を掛ける。該分散液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機(H-9R;株式会社コクサン社製)にて、58.33S-1、30分間の条件で遠心分離を行う。遠心分離後のガラスチューブ内においては、下層に比重の重い粒子、例えば、シリカ微粒子が含まれる。上層の有機ケイ素重合体を含むクロロホルム溶液を採取して、クロロホルムを真空乾燥(40℃/24時間)にて除去しサンプルを作製する。上記サンプル又は有機ケイ素重合体を用いて、有機ケイ素重合体の構成化合物の存在量比及び、有機ケイ素重合体中のR-Si(O1/2で表されるT3単位構造の割合を、固体29Si-NMRで測定・算出する。
まず、上記Rで表される炭化水素基は、13C-NMRにより確認する。
13C-NMR(固体)の測定条件≫
装置:JEOLRESONANCE製JNM-ECX500II
試料管:3.2mmφ
試料:サンプル又は有機ケイ素重合体
測定温度:室温
パルスモード:CP/MAS
測定核周波数:123.25MHz(13C)
基準物質:アダマンタン(外部標準:29.5ppm)
試料回転数:20kHz
コンタクト時間:2ms
遅延時間:2s
積算回数:1024回
該方法にて、ケイ素原子に結合しているメチル基(Si-CH)、エチル基(Si-C)、プロピル基(Si-C)、ブチル基(Si-C)、ペンチル基(Si-C11)、ヘキシル基(Si-C13)又はフェニル基(Si-C-)などに起因するシグナルの有無により、上記Rで表される炭化水素基を確認する。一方、固体29Si-NMRでは、有機ケイ素重合体の構成化合物のSiに結合する官能基の構造によって、異なるシフト領域にピークが検出される。各ピーク位置は標準サンプルを用いて特定することでSiに結合する構造を特定することが出来る。また、得られたピーク面積から各構成化合物の存在量比を算出することが出来る。全ピーク面積に対してT3単位構造のピーク面積の割合を計算によって求めることが出来る。
固体29Si-NMRの測定条件は、具体的には下記の通りである。
装置:JNM-ECX5002 (JEOL RESONANCE)
温度:室温
測定法:DDMAS法 29Si 45°
試料管:ジルコニア3.2mmφ
試料:試験管に粉末状態で充填
試料回転数:10kHz
relaxation delay :180s
Scan:2000
該測定後に、サンプル又は有機ケイ素重合体の、置換基及び結合基の異なる複数のシラン成分をカーブフィティングにて下記X1構造、X2構造、X3構造、及びX4構造にピーク分離して、それぞれピーク面積を算出する。
なお、下記X3構造がT3単位構造である。
X1構造:(Ri)(Rj)(Rk)SiO1/2 (A1)
X2構造:(Rg)(Rh)Si(O1/2 (A2)
X3構造:RmSi(O1/2 (A3)
X4構造:Si(O1/2 (A4)
Figure 2022024879000002
該式(A1)、(A2)及び(A3)中のRi、Rj、Rk、Rg、Rh、Rmはケイ素に結合している、炭素数1~6の炭化水素基などの有機基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基又はアルコキシ基を示す。なお、構造をさらに詳細に確認する必要がある場合、上記13C-NMR及び29Si-NMRの測定結果と共にH-NMRの測定結果によって同定してもよい。
<トナー中に含まれる有機ケイ素重合体又はシリカ微粒子の定量方法>
トナーを、上記のようにクロロホルムに分散させ、その後に遠心分離を用い、比重の差で有機ケイ素重合体及びシリカ微粒子などの外添剤を分離し、各サンプルを得、有機ケイ素重合体又はシリカ微粒子などの外添剤の含有量を求める。
以下、外添剤がシリカ微粒子の場合について例示する。他の微粒子であっても、同様の手法で定量することが出来る。
まず、プレスしたトナーを蛍光X線で測定し、検量線法又はFP法などの解析処理を行うことでトナー中のケイ素の含有量を求める。次に、有機ケイ素重合体及びシリカ微粒子を形成する各構成化合物について、固体29Si-NMR及び熱分解GC/MSなどを用いて構造を特定し、有機ケイ素重合体中及びシリカ微粒子中のケイ素含有量を求める。蛍光X線で求めたトナー中のケイ素の含有量と、固体29Si-NMR及び熱分解GC/MSで求めた有機ケイ素重合体中及びシリカ微粒子中のケイ素含有量の関係から、計算によってトナー中の有機ケイ素重合体及びシリカ微粒子の含有量を求める。
<有機ケイ素重合体又はシリカ微粒子などの外添剤の水洗法による、トナー母粒子又はトナー粒子に対する固着率の測定方法>
(水洗工程)
50mL容量のバイアルに「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の30質量%水溶液20gを秤量し、トナー1gと混合する。いわき産業(株)製「KM Shaker」(model: V.SX)にセットし、speedを50に設定して120秒間振とうする。これにより、有機ケイ素重合体又はシリカ微粒子の固着状態に依っては、有機ケイ素重合体又はシリカ微粒子などの外添剤が、トナー母粒子又はトナー粒子表面から、分散液側へ移行する。その後、遠心分離機(H-9R;株式会社コクサン社製)(16.67S-1にて5分間)にて、トナーと上澄み液に移行した有機ケイ素重合体又はシリカ微粒子などの外添剤を分離する。沈殿しているトナーは、真空乾燥(40℃/24時間)することで乾固させて、水洗後トナーとする。
次に、日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S-4800((株)日立ハイテクノロジーズ)を用いて、上記水洗工程を行わないトナー(水洗前トナー)、及び、上記水洗工程を経て得られたトナー(水洗後トナー)を撮影する。
また、測定対象の同定は、エネルギー分散型X線分析(EDS)を用いた元素分析により行う。
そして、撮影されたトナー表面画像を、画像解析ソフトImage-Pro Plus ver.5.0((株)日本ローパー)を用いて解析し、被覆率を算出する。
S-4800の画像撮影条件は以下のとおりである。
(1)試料作製
試料台(アルミニウム試料台15mm×6mm)に導電性ペーストを薄く塗り、その上にトナーを吹きつける。さらにエアブローして、余分なトナーを試料台から除去し十分乾燥させる。試料台を試料ホルダにセットし、試料高さゲージにより試料台高さを36mmに調節する。
(2)S-4800観察条件の設定
被覆率の測定に際して、予め、上述したエネルギー分散型X線分析(EDS)による元素分析を行い、トナー表面の有機ケイ素重合体又はシリカ微粒子などの外添剤を区別した上で測定を行う。S-4800の筺体に取り付けられているアンチコンタミネーショントラップに液体窒素を溢れるまで注入し、30分間置く。S-4800の「PC-SEM」を起動し、フラッシング(電子源であるFEチップの清浄化)を行う。画面上のコントロールパネルの加速電圧表示部分をクリックし、[フラッシング]ボタンを押し、フラッシング実行ダイアログを開く。フラッシング強度が2であることを確認し、実行する。フラッシングによるエミッション電流が20~40μAであることを確認する。試料ホルダをS-4800筺体の試料室に挿入する。コントロールパネル上の[原点]を押し試料ホルダを観察位置に移動させる。
加速電圧表示部をクリックしてHV設定ダイアログを開き、加速電圧を[1.1kV]、エミッション電流を[20μA]に設定する。オペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、信号選択を[SE]に設置し、SE検出器を[上(U)]及び[+BSE]を選択し、[+BSE]の右の選択ボックスで[L.A.100]を選択し、反射電子像で観察するモードにする。同じくオペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、電子光学系条件ブロックのプローブ電流を[Normal]に、焦点モードを[UHR]に、WDを[4.5mm]に設定する。コントロールパネルの加速電圧表示部の[ON]ボタンを押し、加速電圧を印加する。
(3)トナーの個数平均粒径(D1)算出
コントロールパネルの倍率表示部内をドラッグして、倍率を5000(5k)倍に設定する。操作パネルのフォーカスつまみ[COARSE]を回転させ、ある程度焦点が合ったところでアパーチャアライメントの調整を行う。コントロールパネルの[Align]をクリックし、アライメントダイアログを表示し、[ビーム]を選択する。操作パネルのSTIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を回転し、表示されるビームを同心円の中心に移動させる。次に[アパーチャ]を選択し、STIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を一つずつ回し、像の動きを止める又は最小の動きになるように合わせる。アパーチャダイアログを閉じ、オートフォーカスで、ピントを合わせる。この操作をさらに2度繰り返し、ピントを合わせる。
その後、トナー300個について粒径を測定して個数平均粒径(D1)を求める。なお、個々の粒子の粒径は、トナーの粒子を観察した際の最大径とする。
(4)焦点調整
(3)で得た、個数平均粒径(D1)の±0.1μmの粒子について、最大径の中点を測定画面の中央に合わせた状態でコントロールパネルの倍率表示部内をドラッグして、倍率を10000(10k)倍に設定する。
操作パネルのフォーカスつまみ[COARSE]を回転させ、ある程度焦点が合ったところでアパーチャアライメントの調整を行う。コントロールパネルの[Align]をクリックし、アライメントダイアログを表示し、[ビーム]を選択する。操作パネルのSTIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を回転し、表示されるビームを同心円の中心に移動させる。次に[アパーチャ]を選択し、STIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を一つずつ回し、像の動きを止める又は最小の動きになるように合わせる。アパーチャダイアログを閉じ、オートフォーカスで、ピントを合わせる。その後、倍率を50,000(50k)倍に設定し、上記と同様にフォーカスつまみ、STIGMA/ALIGNMENTつまみを使用して焦点調整を行い、再度オートフォーカスでピントを合わせる。この操作を再度繰り返し、ピントを合わせる。ここで、観察面の傾斜角度が大きいと被覆率の測定精度が低くなりやすいので、ピント調整の際に観察面全体のピントが同時に合うものを選ぶことで、表面の傾斜が極力無いものを選択して解析する。
(5)画像保存
ABCモードで明るさ合わせを行い、サイズ640×480ピクセルで写真撮影して保存する。この画像ファイルを用いて下記の解析を行う。トナー1つに対して写真を1枚撮影し、トナー粒子について画像を得る。
(6)画像解析
下記解析ソフトを用いて、上述した手法で得た画像を二値化処理することで被覆率を算出する。このとき、上記一画面を正方形で12分割してそれぞれ解析する。画像解析ソフトImage-Pro Plus ver.5.0の解析条件は以下のとおりである。ただし、分割区画内に、粒径が30nm未満及び300nmを超える有機ケイ素重合体、又は、粒径が30nm未満及び1200nmを超えるシリカ微粒子などの外添剤が入る場合はその区画では被覆率の算出を行わないこととする。
画像解析ソフトImage-Pro Plus5.0において、ツールバーの「測定」から「カウント/サイズ」、「オプション」の順に選択し、二値化条件を設定する。オブジェクト抽出オプションの中で8連結を選択し、平滑化を0とする。その他、予め選別、穴を埋める、包括線は選択せず、「境界線を除外」は「なし」とする。ツールバーの「測定」から「測定項目」を選択し、面積の選別レンジに2~10と入力する。
被覆率の計算は、正方形の領域を囲って行う。このとき、領域の面積(C)は24,000~26,000ピクセルになるようにする。「処理」-二値化で自動二値化し、有機ケイ素重合体又はシリカ微粒子などの外添剤の無い領域の面積の総和(D)を算出する。正方形の領域の面積C、有機ケイ素重合体又はシリカ微粒子などの外添剤の無い領域の面積の総和Dから下記式で被覆率が求められる。
被覆率(%)=100-(D/C×100)
得られた全データの算術平均値を被覆率とする。
そして、水洗前トナーと水洗後トナーの、それぞれの被覆率を算出し、
〔水洗後トナーの被覆率〕/〔水洗前トナーの被覆率〕×100を、本発明の「固着率」とする。
4.トナー粒子、外添剤、現像剤の製造方法
次に、本実施例のトナー粒子、外添剤A、現像剤の製造例について説明する。
<トナー粒子の製造例>
(水系媒体1の調製)
撹拌機、温度計、及び還留管を具備した反応容器に、イオン交換水650.0部及びリン酸ナトリウム(ラサ工業社製・12水和物)14.0部を投入し、窒素パージしながら65℃で1.0時間保温した。T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、15000rpmで攪拌しながら、イオン交換水10.0部に9.2部の塩化カルシウム(2水和物)を溶解した塩化カルシウム水溶液を一括投入し、分散安定剤を含む水系媒体を調製した。さらに、水系媒体に10質量%塩酸を投入し、pHを5.0に調整し、水系媒体1を得た。
(重合性単量体組成物の調製)
・スチレン :60.0部
・C.I.ピグメントブルー15:3 : 6.5部
前記材料をアトライタ(三井三池化工機株式会社製)に投入し、さらに直径1.7mmのジルコニア粒子を用いて、220rpmで5.0時間分散させた後、ジルコニア粒子を取り除き、着色剤分散液を調製した。
・スチレン :20.0部
・n-ブチルアクリレート :20.0部
・架橋剤(ジビニルベンゼン) : 0.3部
・飽和ポリエステル樹脂 : 5.0部
(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA(2モル付加物)とテレフタル酸との重縮合物(モル比10:12)、ガラス転移温度(Tg)が68℃、重量平均分子量(Mw)が10000、分子量分布(Mw/Mn)が5.12)
・フィッシャートロプシュワックス(融点78℃) : 7.0部
該材料を上記着色剤分散液に加え、65℃に加熱後、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、500rpmで均一に溶解及び分散し、重合性単量体組成物を調製した。
(造粒工程)
水系媒体1の温度を70℃に調整し、T.K.ホモミクサーの回転数を15000rpmに保ちながら、水系媒体1中に重合性単量体組成物を投入し、重合開始剤であるt-ブチルパーオキシピバレート10.0部を添加した。そのまま、該撹拌装置にて15000rpmを維持しつつ10分間造粒した。
(重合工程及び蒸留工程)
造粒工程の後、攪拌機をプロペラ撹拌羽根に換え150rpmで攪拌しながら70℃を保持して5.0時間重合を行い、さらに、85℃に昇温して2.0時間保持することで重合を行った。その後、反応容器の還留管を冷却管に付け替え、得られたスラリーを100℃まで加熱することで、蒸留を6時間行い、未反応の重合性単量体を留去し、樹脂粒子分散液を得た。
(有機ケイ素重合体の形成工程)
撹拌機、温度計を備えた反応容器に、イオン交換水60.0部を秤量し、10質量%の塩酸を用いてpHを4.0に調整した。これを撹拌しながら加熱し、温度を40℃にした。その後、有機ケイ素化合物であるメチルトリエトキシシラン40.0部を添加して2時間以上撹拌して加水分解を行った。加水分解の終点は目視にて油水が分離せず1層になったことで確認を行い、冷却して有機ケイ素化合物の加水分解液を得た。
上記で得られた樹脂粒子分散液の温度を55℃に調整した後、該有機ケイ素化合物の加水分解液を25.0部(有機ケイ素化合物の添加量は10.0部)添加して、有機ケイ素化合物の重合を開始した。そのまま0.25時間保持した後に、3.0%炭酸水素ナトリウム水溶液で、pHを5.5に調整した。55℃で撹拌を継続したまま、1.0時間保持(縮合反応1)した後、3.0%炭酸水素ナトリウム水溶液を用いてpHを9.5に調整し、さらに4.0時間保持(縮合反応2)してトナー粒子分散液を得た。
(洗浄工程及び乾燥工程)
有機ケイ素重合体の形成工程終了後、トナー粒子分散液を冷却し、トナー粒子分散液に塩酸を加えpHを1.5以下に調整して1.0時間、撹拌しながら放置した。その後、加圧ろ過器で固液分離し、トナーケーキを得た。得られたトナーケーキはイオン交換水でリスラリーして再び分散液とした後に、前述のろ過器で固液分離してトナーケーキを得た。得られたトナーケーキを40℃の恒温槽に移し、72時間かけて乾燥及び分級を行い、トナー粒子を得た。
<外添剤Aの製造例>
外添剤Aは以下のように製造した。攪拌機、滴下ノズル、温度計を具備した1.5Lのガラス製反応容器に5%アンモニア水150部を入れて、アルカリ触媒溶液とした。該アルカリ触媒溶液を50℃に調整した後、攪拌しながらテトラエトキシシラン100部と5%アンモニア水50部とを同時に滴下し、8時間反応させてシリカ微粒子分散液を得た。その後、得られたシリカ微粒子分散液を噴霧乾燥により乾燥し、ピンミルで解砕し、外添剤Aとして一次粒子の個数平均粒径が100nmのシリカ微粒子を得た。
<現像剤の製造例>
ジャケット内に7℃の水を通水したヘンシェルミキサ(日本コークス工業株式会社製 FM10C型)中に100.00部のトナー粒子1、及び、1.00部の外添剤Aを投入した。次に、該ジャケット内の水温が7℃±1℃で安定してから、回転羽根の周速を38m/secとして10分間混合した。該混合において、ヘンシェルミキサの槽内温度が25℃を超えないようジャケット内の通水量を適宜調整した。得られた混合物を目開き75μmのメッシュで篩い現像剤を得た。
現像剤の物性を表1に示す。
Figure 2022024879000003
表中、「X」は、外添剤Aの一次粒子の個数平均粒径Rの凸高さHの個数平均値に対する比を表す。製造した現像剤に対してSEMを用いて観察を実施したところ、トナー粒子の有機ケイ素重合体の凸部上に外添剤Aが転写キャリア粒子として配置されていることが確認でき、トナー粒子一個当たりの外添剤Aの平均被覆個数は500個程度であった。
5.転写キャリアの供給
次に、本実施例の特徴である感光ドラム1上への転写キャリア粒子の供給手段について説明する。転写キャリア粒子とは、上述したように、感光ドラム1上に現像されたトナー像と感光ドラム1との間に介在することで、トナー像と感光ドラム1との間の付着力を低減してトナー像の一次転写効率を向上させる役割を有する粒子のことを言う。
本実施例では、トナー像が現像される前に現像ローラ41に担持されたトナーを用いて、感光ドラム1の表面に予め転写キャリア粒子を供給する。前もって感光ドラム1上を転写キャリア粒子で被膜することで、トナー像と感光ドラム1との間に転写キャリア粒子を介在させる。
図8(a)は、現像ローラ41と感光ドラム1の当接時における現像ニップ部の模式図である。図8(a)に示すように、現像ニップ部では現像ローラ41上に担持されたトナーと感光ドラム1が転写キャリア粒子を介して接触している。図8(b)は、図8(a)で示した現像ローラ41に担持されたトナーと感光ドラム1が現像ニップ部を通過した後の状態を示した模式図である。図8(b)に示すように、現像ニップ部でトナーと感光ドラム1との間に介在していた転写キャリア粒子は、現像ニップ部通過後に現像ローラ41に担持されたトナーの表面上から感光ドラム1の表面に転移することで供給される。
図8(a)に示すように、現像ニップ部でトナーと感光ドラム1との間に介在する転写キャリア粒子とトナー間の付着力Ftが、転写キャリア粒子と感光ドラム1間の付着力Fdr1よりも大きい場合には、転写キャリア粒子は感光ドラム1上に転移しづらい。そのため、FtがFdr1よりも小さいことが好ましい。
図9(a)は、トナー像が感光ドラム1の表面に担持されている場合の一次転写部の模式図である。図9(b)は、図9(a)で示したトナー像の一次転写が終了して感光ドラム1と中間転写ベルト10が分離した状態の模式図である。FtがFdr1よりも小さい場合において、トナー像が感光ドラム1から中間転写ベルト10の表面上に一次転写する際にトナー像のみ中間転写ベルト10上に一次転写し、トナー像と感光ドラム1との間に介在する転写キャリア粒子は感光ドラム1上に残留する。
仮に、トナー像と共にトナー像と感光ドラム1との間に介在する転写キャリア粒子が中間転写ベルト10に一次転写し、感光ドラム1の表面上から転写キャリア粒子が失われた場合を考える。その際には、次に感光ドラム1の表面上に現像するトナー像と感光ドラム1との間に転写キャリア粒子が介在せずトナー像と感光ドラム1との間の付着力が大きいため、一次転写性が低下してしまうこととなる。
したがって、現像ローラ41に担持されたトナー上から感光ドラム1へと転写キャリア粒子を供給し易くなるだけではなく、感光ドラム1上に被膜された転写キャリア粒子を維持する観点からも、FtがFdr1よりも小さいことが好ましい。
図10は、本実施例で用いた画像形成装置100のプリント動作のタイミングチャートである。図10に示すように、本実施例の画像形成装置100は画像形成動作中において、現像ローラ41から感光ドラム1へとトナーの現像を開始する前に、現像ローラ41と感光ドラム1が当接状態で回転駆動する。それにより、現像ローラ41から感光ドラム1へと転写キャリア粒子を供給するタイミング(転写キャリア供給モード)を設けている。
感光ドラム1の表面全体に亘ってトナー像の一次転写効率を向上させるために、トナー像の現像を開始する前までに、感光ドラム1の表面全体を転写キャリア粒子で被膜する。そのために、転写キャリア粒子の供給タイミングの時間は感光ドラム1を1周以上回転させる時間に設定するのが好ましい。そのため、本実施例では、感光ドラム1の表面全体に転写キャリア粒子を被膜出来るように、図10に示す転写キャリア粒子供給タイミングの長さを感光ドラム1が1周する時間と略同じ500msecに設定している。
また、本実施例では、図10に示す転写キャリア粒子供給タイミングにおいて感光ドラム1の表面電位を正規極性に帯電したトナーが現像しない非画像形成電位Vd=-500Vにしている。そのため、本実施例の転写キャリア粒子の供給タイミングでは、正規極性が負極性であるトナーは現像ローラ41から感光ドラム1の表面に現像せず、転写キャリア粒子のみが現像ローラ41から感光ドラム1上へと供給される。
本実施例のように、現像ローラ41と感光ドラム1との間で電位差がある状態で現像ローラ41上のトナーから感光ドラム1に転写キャリア粒子を供給する場合には以下の問題がある。転写キャリア粒子の粒径が大きすぎると、転写キャリア粒子が現像ローラ41と感光ドラム1との間の電位差により生じる静電的な力の影響を受けやすい。そのため、現像ローラ41上のトナーから感光ドラム1への転写キャリア粒子の供給を制御することが難しくなるのである。例えば、本実施例のように、非画像形成電位にて転写キャリア粒子を供給する構成において、転写キャリア粒子が負極性に帯電している場合、現像ローラ41側に転写キャリア粒子が静電力で引き付けられる。したがって、転写キャリア粒子を現像ローラ41上のトナーから感光ドラム1へ供給しづらくなる。ここで、転写キャリア粒子の粒径は、静電的な力の影響を受けづらい1000nm以下にしておくことが好ましい。本実施例では、現像ローラ41と感光ドラム1との間の電位差に関係なく安定して現像ローラ41上のトナーから感光ドラム1の表面に転写キャリア粒子を供給するため、転写キャリア粒子として粒径100nmの粒子を用いている。
本実施例で用いた現像剤は、上述したトナーと転写キャリア粒子の混合物を用いた。本実施例のトナー表面の凸部について測定を行ったところ、トナー表面の凸間隔Gの平均は約30nm、凸高さHの平均は50nmであり、凸間隔Gと凸高さHはともに転写キャリアの粒径100nmよりも小さかった。
本実施例で用いた転写キャリア粒子は、ゾルゲル法で製造した粒径100nmのシリカ粒子である。本実施例では転写キャリア粒子としてシリカを用いたが、転写キャリア粒子の材料はシリカに限るものでなく各種有機又は無機微粉体であってもよい。ただし、前述したように、転写キャリア粒子とトナーとの間の付着力Ftが、転写キャリア粒子と感光ドラム1との間の付着力Fdr1よりも小さいことが好ましい。そのため、転写キャリア粒子の材料としては、転写キャリア粒子のトナーへの付着力Ftが小さくなるものを選択することが好ましい。例えば、本実施例のように、トナー表面の凸部が有機シリカ重合体などのシリカ系材料で形成されている場合は、転写キャリア粒子の材料としても凸部と材料構成の近いシリカ系の材料を選択するとよい。凸部と材料構成の近いシリカ系の材料を選択することは、凸部と転写キャリア粒子間を低付着力にする観点から好ましい。
また、本実施例では、転写キャリア粒子の添加量は転写キャリア粒子のトナー1個当たりに対する被覆個数が500個程度になるように調整した。トナーを被覆する転写キャリア粒子の個数は、多い方が現像ローラ41から感光ドラム1の表面に転写キャリア粒子を行うことが出来る。しかし、上述したように、転写キャリア粒子の添加量が多すぎると、画像形成装置100内の部材汚染のリスクが高まるため、所望の一次転写性に合わせて調整することが好ましい。
6.転写キャリア粒子の効果
次に、本実施例の感光ドラム1への転写キャリア粒子の供給手段の効果を確認するために行った効果確認実験について説明する。
まず、転写キャリア粒子が被膜されていない新品の感光ドラム1をセットした画像形成装置100を用いて、イエローの濃度100%のパッチ画像を画像形成させる。そして、画像形成したイエローのパッチ画像の一次転写が終了した直後に、画像形成装置100を停止させる。その際に、イエローステーションの感光ドラム1aの表面上に残留しているパッチ画像部の転写残トナー濃度を確認した。
転写残トナー濃度の測定は以下の手法で行った。まず、感光ドラム1a表面上のイエローのパッチ画像の転写残トナー部に透明なテープ(ポリエステルテープ 5511 ニチバン)を貼り、転写残トナーを透明テープに捕集した。その後、感光ドラム1aの表面から剥がした転写残トナーを捕集した透明テープと、新品の透明テープをそれぞれ高白色紙上(GFC081 キヤノン)に貼った。そして、転写残トナー捕集部の透明テープの濃度D1と、新品の透明テープ部の濃度D0をそれぞれ反射濃度計(リフレクトメーター モデル TC-6DS 東京電色社製)を用いて測定した。測定により得られる差分「D0-D1」を転写残トナー濃度とした。転写残トナー濃度は、数値が小さいほど転写残トナーが少ないことを意味しており、値が1.0以下であればほぼ転写残トナーが無いと判断することが出来、帯電ローラ2aへの付着などで生じる画像弊害が発生しない。
また、転写残トナー濃度を測定した感光ドラム1a表面の顕微鏡観察を実施し、感光ドラム1aの表面に占める転写キャリア粒子の被膜率を算出した。具体的には、感光ドラム1aの表面におけるレーザ顕微鏡(VK-X200 キーエンス)による倍率3000倍の観察画像に対して以下の手順で被覆率を算出した。転写キャリア粒子の部分とそれ以外の部分とで2値化処理を行い、感光ドラム1の表面に占める転写キャリア粒子の総面積率を、感光ドラム1の表面の転写キャリア粒子の被膜率として算出した。
また、本実施例で用いた転写キャリア粒子とトナーとの付着力を、SPMを用いて測定した。具体的には、レバー先端に転写キャリア粒子を固定したカンチレバーを作成し、カンチレバーを所定の押圧力でトナーに押圧する。その後、カンチレバーをトナーから脱離させるのに必要な力を転写キャリア粒子とトナー間との付着力Ftとして測定した。
付着力測定時のカンチレバーをトナーに押圧する所定の押圧力は、現像ニップ部においてトナーと感光ドラム1との間に介在する転写キャリア粒子がトナーに対して押圧される力に設定することが好ましい。以下に説明する計算方法で押圧力を算出した。ここで、「現像ニップ部においてトナーと感光ドラム1との間に転写キャリアが介在する」とは、転写キャリア粒子がトナーと感光ドラム1の両方に同時に接触している状態のことをいう。
まず、計算を行うにあたり、仮定した条件を図11と図12を用いて説明する。図11(a)は現像ニップ部の模式図であり、現像ニップ部において現像ローラ41と感光ドラム1はトナーを介して接触しているものと仮定した。また、図11(b)は、図11(a)の点線ABにおける感光ドラム1の表面と平行な断面を示したもので、感光ドラム1と接触しているトナーは斜線部に示すように最密充填しているものと仮定した。図12は、図11の点線で囲ったトナーと感光ドラム1の接触部を拡大した模式図である。図12に示すように、トナーと感光ドラム1は転写キャリア粒子を介して接触しているものと仮定した。また、感光ドラム1の表面上には転写キャリア粒子がまだ供給されておらず、感光ドラム1の表面上には予め転写キャリア粒子が存在していない状態とした。
以上のような仮定を行った上で、現像ニップ部にてトナーと感光ドラム1との間に介在する転写キャリア粒子の総数Nを計算で以下のように算出した。算出したNと現像ローラ41と感光ドラム1との当接力Fより、現像部における転写キャリア1個当たりのトナーに対する押圧力であるF/Nを算出し、算出したF/Nを付着力測定時のカンチレバーのトナーに対する所定の押圧力として採用した。
まず、現像ニップ部においてトナーと感光ドラム1との間に介在する転写キャリア粒子の総数Nの計算方法について説明する。
図13(a)は現像部におけるトナー、転写キャリア粒子、感光ドラム1の接触状態を二次元で示した模式図である。図13(b)に示すように、転写キャリア粒子の粒径をrとすると、感光ドラム1とトナー表面との距離がrを超えるとトナー上の転写キャリア粒子は感光ドラム1とほぼ接触しなくなる。従って、トナー円周上に配置された転写キャリア粒子が感光ドラム1と接触可能であるトナー円周部分はAからBを結んだ円弧上になる。実際は、図13(b)のようにトナーを球として考える必要があり、円弧ABを円周方向に積分した表面積(図13(b)の斜線部)がトナー表面積に占める比率を求める必要がある。斜線部の表面積は球冠の表面積として一般的に求めることができ、式(2)のようになる。したがって、トナー表面積に占める比率は式(3)のようになる。トナーの平均粒径R、転写キャリア粒子の粒径rより実際の数値は算出出来る。
Figure 2022024879000004
上記計算により、本実施例の構成における円弧ABがトナー円周部に占める比率は約1.43%と計算される。
したがって、現像ニップ部において転写キャリア粒子がトナーと感光ドラム1間に介在するのはトナー全表面のうちの約1.43%の領域であると考えることが出来る。トナー1個当たりに被覆されている転写キャリア粒子の個数は500個であることから、トナー1個当たりに対するトナーと感光ドラム1との間に介在する転写キャリア粒子の個数Mは「500個×1.43%」で計算され、約7.2個となる。
そして、トナー1個当たりに対するトナーと感光ドラム1との間に介在する転写キャリア粒子の個数7.2個に現像部で感光ドラム1と接触しているトナーの総数を乗算する。すると、現像ニップ部でトナーと感光ドラム1間に介在している転写キャリア粒子の総数Nを算出することが出来る。
現像ニップ部で感光ドラム1と接触しているトナーの総数Lは「現像ニップ部の面積×トナーの充填率)/トナーの最大断面積」で計算出来る。
(現像ニップ部で感光ドラム1と接触しているトナーの総数)
=(220[mm]×2.0[mm]×π/√12)/(π×(7.0/2)
=約10.37×10
(二次元の円の最密充填率であるπ/√12≒0.9069、を用いた。)
したがって、「現像ニップ部においてトナーと感光ドラム1との間に介在している転写キャリアの総数N」は以下のように算出される。「現像ニップ部で感光ドラム1と接触しているトナーの総数」と「トナー1個当たりに対するトナーと感光ドラム1との間に介在する転写キャリア粒子の個数」の乗算より算出され、総数Nは約7.47×10個となる。
本実施例における現像ローラ41の感光ドラム1への押圧力はF=200gfであるため、「現像部における転写キャリア1個当たりのトナーに対する押圧力」であるF/Nは26.3nNと求まる。以上求めたF/Nの値を、SPMによる付着力測定時のカンチレバーをトナーに押圧する所定の押圧力として採用した。また、感光ドラム1に対しても同様の付着力測定を実施し、カンチレバー先に固定した転写キャリア粒子と感光ドラム1との付着力Fdr1を測定した。
7.プロセス部材の長手構成
次に、図14を用いて本実施例の長手幅の関係について説明する。
本実施例では、図14に示すように、現像開口の長手幅Bが画像領域の長手幅Cより長いことで、画像形成領域全体に十分な量の転写キャリア粒子を現像ローラ41から感光ドラム1上に供給することが出来る。ここで、帯電ローラ2は、感光ドラム1との摩擦により従動回転しているため、感光ドラム1上に多量の転写キャリア粒子が存在すると、摩擦が小さくなり、帯電ローラ2の回転が不安定になることがある。つまり、帯電部における感光ドラム1の表面において帯電ローラ2の長手全域で転写キャリア粒子が介在した状態で、帯電ローラ2が従動回転すると、感光ドラム1の回転よりも速くなることがある。そこで、本実施例においては、現像開口の長手幅Bを帯電ローラ2の長手幅Aより短くすることで、現像開口の長手幅Bと帯電ローラ2の長手幅Aの両端部の隙間αには感光ドラム1に転写キャリア粒子を供給しない構成にした。すると、帯電ローラ2は、隙間αの部分で転写キャリア粒子を介さずに感光ドラム1と当接することが出来る。この隙間αでの摩擦力によるトルクをT1、帯電ローラ2の軸受けとの摺動トルクをT2とすると、T1>T2を満たすことで、帯電ローラ2は感光ドラム1に対して滑ることなく従動回転することが出来る。
隙間αでの摩擦力によるトルクT1は、以下の式(4)で表される。μは、感光ドラム1と帯電ローラ2との静止摩擦係数である。S1は、感光ドラム1と帯電ローラ2との長手全域の当接面積である。S2は、隙間αでの感光ドラム1と帯電ローラ2との当接面積である。Ntは、帯電ローラ2にかかる荷重である。dは、帯電ローラ2の回転軸から表面までの距離である。
T1=μ×(Nt/S1)×S2×d (4)
なお、本実施例では、転写キャリア粒子が常に感光ドラム1上に存在しているため、帯電ローラ2と感光ドラム1との間の摩擦力が著しく低くなる。よって、転写キャリア粒子が存在する領域の摩擦力をゼロとし、転写キャリア粒子を供給しない隙間αの摩擦力のみを考慮している。実際には、転写キャリア粒子がある部分の摩擦力も多少はあるが、仮に摩擦力が全くない場合でも確実に従動回転する条件を求める。
以下に、T1のパラメータとT2の測定方法を説明する。
感光ドラム1と帯電ローラ2との静止摩擦係数μは、感光ドラム1と帯電ローラ2の間に荷重Ntをかけ、固定した帯電ローラ2に対して感光ドラム1が滑り始めた時のトルク、を測定し求めることができる。感光ドラム1と帯電ローラ2との当接面積S1は、トナーを全面に付着させた感光ドラム1に、帯電ローラ2を荷重Ntで当接させた時にトナーが帯電ローラ2側に転移した面積を測定する。
また、帯電ローラ2の軸受けとの摺動トルクT2は、帯電ローラ2が従動回転している感光ドラム1のトルクから、感光ドラム1の単独のトルクを引いた値に、帯電ローラ2の直径を感光ドラム1の直径で割った値を積算して求めることができる。
本実施例では、帯電ローラ2には、金属芯金の周囲にNBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)とSBR(スチレン・ブタジエンゴム)を混ぜた弾性層を設け、UV照射処理したものを使用している。表層には、多数の凸部が設けられており、平均的な凸部の高さは10μm程度となっている。また、帯電ローラ2の軸受けには、駆動側は非導電性、非駆動側は導電性のPOM(ポリアセタール樹脂)を使用しており、駆動側には導電グリスを付着させている。
本実施例は、帯電ローラ2の回転軸から表面までの距離dは3.5mm、帯電ローラ2にかかる荷重Ntが600gfである。上記のT1パラメータの測定から、感光ドラム1と帯電ローラ2との静止摩擦係数μは4.8、感光ドラム1と帯電ローラ2の当接領域であるニップ幅は1mmであるため、感光ドラム1と帯電ローラ2との当接面積S1は228mm2、と求めることが出来る。また、T2は150gfmmであった。
以上の値から、本実施例において、T1>T2の関係式を満たすには、隙間αの長手幅の合計が3.4mm以上必要であることが分かった。
本実施例では、帯電ローラ2の長手幅Aが228mm、現像開口の長手幅Bが224mmであり、隙間αを駆動側2mm、非駆動側2mm、合計4mmに設定している。
なお、帯電ローラ2の材質、UV表面処理時間、表層の凸部の個数などを変えた場合は、感光ドラム1と帯電ローラ2との静止摩擦係数μが変わり、約0.5~10の範囲を取りうる。図15は、感光ドラム1と帯電ローラ2との静止摩擦係数μと、T1>T2に必要な隙間αの関係を示したグラフである。図15より、感光ドラム1と帯電ローラ2との静止摩擦係数μが、約0.5~10の範囲を取るとき、隙間αを2mm~35mmに設定すればよい。
8.転写キャリア粒子の長手幅調整の効果
次に、本実施例の効果について説明する。
本実施例では、転写効率の向上に十分な転写キャリア粒子を感光ドラム1上に供給したとき、感光ドラム1の端部にはキャリア粒子を供給しない領域(直接当接領域)を設けた。直接当接領域を設けることによって、感光ドラム1と帯電ローラ2とが端部で直接接触し、帯電ローラ2の従動回転を安定させることを特徴としている。本実施例の効果を確認する目的で、実施例の構成、および比較例の構成の帯電ローラ2の回転安定性について検証を行った。
検証は、新品状態から4000枚通紙した後、帯電ローラ2の微小な回転ムラによるハーフトーン画像の濃淡差の発生有無で行った。本実施例の構成は、隙間αが4mmであり、比較例1の構成は、隙間αが0mmである。
本実施例においては、感光ドラム1の端部には転写キャリア粒子を供給しないため、帯電ローラ2の回転が安定し、画像不良が発生しなかった。一方、比較例1の構成は、感光ドラム1が帯電ローラ2と接触する全領域に転写キャリア粒子が存在するため、帯電ローラ2の回転が不安定になり微小な回転ムラが生じ、画像不良が発生した。
以上の結果から、実施例1の構成は以下のような特徴を有する。
感光ドラム1と接触して帯電部を形成し、感光ドラム1の回転に伴って従動回転する回転部材である帯電ローラ2を有する。現像ローラ41を感光ドラム1に押圧する押圧力をF1、トナー粒子と感光ドラム1との間に介在する転写キャリア粒子の総数をN1、とした場合を考える。転写キャリア粒子を単位転写キャリア粒子当たりの押圧力であるF1/N1でトナー粒子に押圧した際に測定される転写キャリア粒子とトナー粒子との間に形成される付着力Ftとする。転写キャリア粒子をF1/N1で感光ドラム1に押圧した際に測定される転写キャリア粒子と感光ドラム1との間に形成される付着力Fdr1とする。FtとFdr1の関係が、Ft≦Fdr1を満たす。さらに、現像ローラ41の回転軸線方向において現像剤が担持される現像ローラ41の領域は、回転軸線方向における帯電部よりも短くする。
以上、説明した通り、本実施例の構成では、転写効率向上に十分な量の転写キャリア粒子を感光ドラム1上に供給しつつ、感光ドラム1に対して従動で回転する帯電ローラ2の回転を安定させることができる。
なお、本実施例では、現像ローラ41に担持されたトナー上から感光ドラム1へ転写キャリア粒子を供給して、感光ドラム1上を転写キャリア粒子で被膜する状態を作った。しかし、同様の状態を作る方法として、転写キャリア粒子の供給のみを行う供給ローラを別途設けてもよい。また、本実施例において、帯電ローラ2を従動回転させる構成を採用したが、帯電ローラ2を感光ドラム1に対して駆動させて周速差を設ける構成としてもよい。
本実施例で適用する画像形成装置の構成において、前述した実施例1と同一部材には同一符号を付し、説明を省略する。
実施例2について、図16、図17、図18を用いて説明する。
本実施例は、実施例1と異なり、現像開口の長手幅Bより外側の領域の感光ドラム1上の転写キャリア粒子を回収する回収部材を設けることを特徴とする。実施例2の構成においては、現像開口の長手幅Bより長手外側に転写キャリア粒子が付着したとしても回収することが出来るため、帯電ローラ2の回転を安定させることが出来る。
1.転写キャリア粒子の回収部材
以下、転写キャリア粒子の回収手段について説明する。
図16に示すように、本実施例の画像形成装置では感光ドラム1の回転方向に対して帯電ローラ2の上流側で、一次転写部よりも下流側に回収ローラ7を設けている。回収ローラ7は、感光ドラム1上の転写キャリア粒子を回収する機能を有する。回収ローラ7と当接して接触部を形成する掻き取りローラ8は、多孔質の弾性層を有するスポンジローラで、接触部において回収ローラ7とカウンタ方向に回転駆動される。それによって、回収ローラ7上に回収された転写キャリア粒子を掻き取りつつ、多孔質の弾性層内に保持する役割を有する。
回収ローラ7は、金属芯金の両端部にシリコーンゴムからなる基層、ウレタン樹脂からなる表層が順次積層された構成を有するローラである。回収ローラ7は、感光ドラム1に対し200gfで押圧され、感光ドラム1の回転方向と順方向に感光ドラム1に対して140%の周速度で回転駆動される。
また、図18に示すように、回収ローラ7の回収部たる樹脂部は現像開口の長手幅Bより外側の転写キャリア粒子の回収を行うため、駆動側と非駆動側の両端部の転写キャリア粒子を回収するように設置している。本実施例においては、両端部に回収ローラ7の樹脂部を設けたが、片側の端部にのみ設けてもよい。
上述したように、回収ローラ7の表層を形成する材料として、感光ドラム1の表層に用いたポリカーボネートよりも軟らかいウレタン樹脂を用いている。それによって、回収ローラ7の表層が感光ドラム1上の転写キャリア粒子に押圧された際に、回収ローラ7の表層が感光ドラム1表面よりも大きく変形し、回収ローラ7の表層と転写キャリア粒子との接触面積が大きくなる。回収ローラ7の表層と転写キャリア粒子との接触面積が大きくなることで、回収ローラ7の表層と転写キャリア粒子との付着力が増大し、転写キャリア粒子は感光ドラム1上から回収ローラ7の表層へと転移し易くなる。
次に、回収部における回収ローラ7の表面と転写キャリア粒子間の付着力Fr、感光ドラム1の表面と転写キャリア粒子との間の付着力Fdr2の測定について説明する。
測定はSPMで実施し、カンチレバーを所定の押圧力で回収ローラ7の表面と感光ドラム1の表面にそれぞれ押圧した後、カンチレバーを回収ローラ7の表面と感光ドラム1の表面から脱離させるのに必要な力をそれぞれ測定した。
カンチレバーは、表面がシリコンの酸化膜で被覆されたシリコン製のラウンドチップ型の先端径100nmのものを用いた。
カンチレバーの表面材質を転写キャリア粒子と同じSiO2とし、さらに先端径を転写キャリア粒子の個数平均粒径に等しい100nmとすることで、精度良く転写キャリア粒子と各部材間の付着力を再現することが出来る。
図17は、各付着力の測定結果である。図17に示すように、横軸のカンチレバーの押圧力によらず付着力の関係はFr>Fdr2であり、回収部において「回収ローラ7の表面と転写キャリア粒子との間の付着力」>「感光ドラム1の表面と転写キャリア粒子との間の付着力」であることを示している。この関係にすることで、感光ドラム1上の転写キャリア粒子を回収ローラ7に回収させることが出来る。
本実施例の測定では、横軸のカンチレバーの押圧力によらず、付着力の関係は、Fr>Fdr2であるが、回収ローラ7、転写キャリア粒子、感光ドラム1に用いる材料等によっては横軸のカンチレバーの押圧力によって付着力の大小関係が入れ替わる場合がある。そのため、各付着力の大小関係を比較する場合には、実際に、回収ローラ7と感光ドラム1との接触部にて回収ローラ7と感光ドラム1との間に挟持された1個当たりの転写キャリア粒子が受ける押圧力を横軸にとった場合の付着力で比較することが好ましい。
実際に、回収ローラ7と感光ドラム1との間に挟持された1個当たりの転写キャリア粒子が受ける押圧力Fr1は、回収ローラ7と感光ドラム1とが転写キャリア粒子を介して接触していると仮定すると、以下の式(5)で算出することが出来る。
Fr1=「回収ローラ7の感光ドラム1に向けた押圧力」/「回収ローラ7と感光ドラム1との接触部に存在する転写キャリア粒子の個数」・・・式(5)
また、式(5)中の「回収ローラ7と感光ドラム1との接触部に存在する転写キャリア粒子の個数」は、以下の式(6)で算出することが出来る。
「回収ローラ7と感光ドラム1との接触部面積」×「感光ドラム1の表面に占める転写キャリア粒子の被覆率」/「1個当たりの転写キャリア粒子の断面積」・・・式(6)
回収ローラ7の感光ドラム1に向けた押圧力は200gf、接触部は、ニップ幅を2mm、長手幅は駆動側、非駆動側それぞれ20mmで、駆動側と非駆動側の接触面積の合計は80mm2となる。現像開口の長手幅Bより外側の感光ドラム1の表面に占める転写キャリア粒子の被覆率は、以下のように算出する。レーザ顕微鏡(VK-X200 キーエンス)にて、感光ドラム1の表面を倍率3000倍で観察した観察画像を取得する。そして、観察画像中の感光ドラム1の表面を転写キャリア粒子が被覆された部分と転写キャリア粒子が被覆されていない部分で2値化処理を行い、被覆率を算出すると、面積被覆率で1%ほどの転写キャリア粒子が存在した。また、一個当たりの転写キャリア粒子の断面積は転写キャリア粒子の平均粒径から算出できる。
以上の値を式(5)と式(6)に代入することで算出した回収ローラ7と感光ドラム1との接触部にて回収ローラ7と感光ドラム1との間に挟持された一個当たりの転写キャリア粒子が受ける押圧力は19.2(nN)であった。
図17より、横軸が19.2(nN)付近であっても付着力の関係はFr>Fdr2であり、「回収ローラ7と転写キャリア粒子間の付着力」>「感光ドラム1と転写キャリア粒子間の付着力」であることを示している。
したがって、本実施例に開示された材質であれば、回収ローラ7と感光ドラム1との接触部にて、転写キャリア粒子は感光ドラム1上から回収ローラ7表面に回収されるため好ましい。
以上説明した通り、本実施例の構成では、転写効率向上に十分な量の転写キャリア粒子を感光ドラム1上に供給しつつ、現像開口の長手幅Bより外側の領域の転写キャリア粒子は回収ローラ7で回収する。そのため、実施例1に比べ、より感光ドラム1に対して従動で回転する帯電ローラ2の回転を安定させることができる。これにより、カートリッジの長寿命化や帯電ローラ2の材質や、帯電ローラ2の摺動部材の選択肢の幅が広がる、などの利点がある。
本実施例で適用する画像形成装置の構成において、前述した実施例1、2と同一部材には同一符号を付し、説明を省略する。
本実施例は、実施例1、2と異なり、感光ドラム1上の現像開口の長手幅Bより外側の転写キャリア粒子を現像ローラ42で回収する1次回収を行う。そして、現像ローラ42で回収した転写キャリア粒子を、現像ローラ42の現像開口部の両端と接触するように現像容器に取り付けた部材で回収する2次回収を行うことを特徴とする。
本実施例は、現像ローラ42が転写キャリア粒子の供給と回収の両方の機能を、長手位置が異なる領域において行うため、感光ドラム1上の転写キャリア粒子を回収する独立した部材が不要となりカートリッジを小型化することができる。
図19に、本実施例の長手幅の関係を示す。現像ローラ42の現像開口の長手幅Bより内側の領域はトナーがコートされている。そのため、実施例1で説明した、「転写キャリア粒子とトナー間の付着力」<「転写キャリア粒子と感光ドラム1間の付着力」の関係から、現像ローラ42は、感光ドラム1上に転写キャリア粒子を供給する。一方、トナーがコートされていない現像ローラ42の現像開口の長手幅Bより外側の領域には、感光ドラム1上の転写キャリア粒子を回収する機能を有する。
以下、転写キャリア粒子の1次回収手段について説明する。
現像ローラ42の表層は、実施例2の回収ローラ7の表層と同様に、感光ドラム1の表層に用いたポリカーボネートよりも軟らかいウレタン樹脂を用いた。よって、図17より、Fr>Fdr2であることから、「現像ローラ42と転写キャリア粒子間の付着力」>「感光ドラム1と転写キャリア粒子間の付着力」となるようにした。
現像ローラ42の現像開口の長手幅Bより外側の領域と感光ドラム1との間に挟持された一個当たりの転写キャリア粒子が受ける押圧力は、現像開口の長手幅Bより外側の領域と感光ドラム1が転写キャリア粒子を介して接触していると仮定して算出する。すると、式(5)と式(6)の「回収ローラ7」を「現像ローラ42の現像開口の長手幅Bより外側の領域」に置き換えた式から算出することが出来る。
現像ローラ42の現像開口の長手幅Bより外側の領域と感光ドラム1との押圧力は8.5gf、接触部は、ニップ幅2mm、駆動側と非駆動側それぞれの長手幅は5mmで、駆動側と非駆動側の接触面積の合計は20mm2である。また、現像開口の長手幅Bより外側の領域の感光ドラム1の表面に占める転写キャリア粒子の被覆率は、実施例2と同様に算出すると1%であった。また、一個当たりの転写キャリア粒子の断面積は、転写キャリア粒子の平均粒径から算出することが出来る。
以上の値を、実施例2の式(5)と式(6)に代入することで算出した、現像ローラ42の現像開口の長手幅Bより外側と感光ドラム1との間に挟持された一個当たりの転写キャリア粒子が受ける押圧力は、3.3(nN)であった。
図17より、横軸が3.3(nN)付近であっても、付着力の関係はFr>Fdr2であり、「現像開口の長手幅Bより外側の領域と転写キャリア粒子間の付着力」>「感光ドラム1と転写キャリア粒子間の付着力」であることを示している。
したがって、本発明の構成であれば現像開口の長手幅Bより外側の領域と感光ドラム1との接触部にて、転写キャリア粒子は感光ドラム1上から現像ローラ42の表面に回収されるようになる。
次に、転写キャリア粒子の2次回収手段について説明する。
図19(a)に示すように、現像ローラ42の現像開口の長手幅Bの両端に、2次回収部材9を設けている。図19(b)は、現像ローラ42の長手方向端部における断面図である。図19(b)に示すように、2次回収部材9は、現像ローラ42の現像開口の両端の表面に沿うように当接させている。2次回収部材9は、現像ローラ42の現像開口の長手幅Bより外側で回収された転写キャリア粒子の回収を行う機能と、現像容器からのトナー漏れを規制する機能を有する。
2次回収部材9は、基層にウレタンフォームから成る発泡層、表層にフェルトや繊維を織り込んで出来たパイルを使用している。現像ローラ42と当接し、現像ローラ42が回転駆動することで、機械的に現像ローラ42から転写キャリア粒子を回収し、発泡層内で保持する。
以上説明した通り、本実施例の構成では、転写効率向上に十分な量の転写キャリア粒子を感光ドラム1上に供給しつつ、現像開口の長手幅Bより外側の領域の転写キャリア粒子は、現像ローラ42による1次回収と、2次回収部材9による2次回収を行う。そのため、感光ドラム1に対して従動で回転する帯電ローラ2の回転を安定させることが出来る。さらに、現像ローラ42が転写キャリア回収の機能も兼ねているため、カートリッジを小型化することが出来、低コスト化が可能となる。
本実施例では、感光ドラム1の表面はポリカーボネート、現像ローラ42の表面はウレタンの場合について例示した。しかし、前述の付着力の関係を満たせば、同じ材質でも異なる硬度や特性を有する材料の組み合わせや、素材そのものの材質が異なる組み合わせでも適用可能である。
以上の結果から、実施例2および実施例3は以下の特徴を有する。
回収ローラ7を感光ドラム1に押圧する押圧力をF2、回収ローラ7と感光ドラム1が接触する回収部において感光ドラム1もしくは現像ローラ41と回収ローラ7との間に介在するキャリア粒子の総数をN2、とした場合を考える。キャリア粒子を単位キャリア粒子当たりの押圧力であるF2/N2でトナー粒子に押圧した際に測定されるキャリア粒子と回収ローラ7との間に形成される付着力をFrとする。キャリア粒子をF2/N2で回収ローラ7に押圧した際に測定されるキャリア粒子と回収ローラ7との間に形成される付着力をFdr2とする。FrとFdr2の関係が、Fr≧Fdr2を満たす。
以上説明したように、本実施例の構成において、感光ドラム1の表面に、効果的に転写キャリア粒子を供給することによって、転写効率を向上させることが出来る。
なお、本実施例の構成では、中間転写ベルト10を使用する中間転写方式を採用したが、直接記録材Pに転写する直接転写方式を採用してもよい。例えば、転写ベルト上に記録材Pを載せて感光ドラム1から直接転写してもよいし、ベルト構成を用いなくてもよい。
また、感光ドラム1に従動する部材として帯電ローラ2を用いたが、他の従動回転するローラでもよい。例えば、図20に示すように、感光ドラム1の表面から転写残トナーや紙粉などの異物を回収する異物回収ローラ6でもよい。
1 感光ドラム
2 帯電ローラ
3 露光ユニット
4 現像ユニット
14 転写ローラ
41 現像ローラ
62 トナー粒子

Claims (18)

  1. 回転可能な像担持体と、
    前記像担持体と接触して接触部を形成し、前記像担持体の回転に伴って従動回転する回転部材と、
    トナー粒子及び前記トナー粒子の表面に付着するキャリア粒子により構成される現像剤を担持する回転可能な現像剤担持体であって、前記像担持体と接触して現像部を形成し、前記現像部において前記像担持体の表面に前記現像剤を供給する現像剤担持体と、
    前記像担持体の表面に供給された前記現像剤を被転写体に転写する転写部材と、を有し、
    前記像担持体が回転した状態で、前記現像部において、前記現像剤担持体の表面に担持された前記キャリア粒子を前記像担持体の表面に供給することが可能な画像形成装置であって、
    前記現像剤担持体を前記像担持体に押圧する押圧力をF1、前記トナー粒子と前記像担持体との間に介在する前記キャリア粒子の総数をN1、とした場合に、
    前記キャリア粒子を単位キャリア粒子当たりの押圧力であるF1/N1で前記トナー粒子に押圧した際に測定される前記キャリア粒子と前記トナー粒子との間に形成される付着力Ftと、
    前記キャリア粒子を前記F1/N1で前記像担持体に押圧した際に測定される前記キャリア粒子と前記像担持体との間に形成される付着力Fdr1と、の関係が、
    Ft≦Fdr1
    を満たし、
    前記現像剤担持体の回転軸線方向において前記現像剤が担持される前記現像剤担持体の領域は、前記回転軸線方向における前記接触部よりも短いことを特徴とする画像形成装置。
  2. 前記現像剤は、前記トナー粒子の表面に存在する、下記式(1)で示される構造を有する有機ケイ素重合体を含有する微粒子から形成される凸部を有し、前記凸部上に前記キャリア粒子が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
    R-Si(O1/2 (1)
    (前記Rは、炭素数1以上6以下の炭化水素基を示す。)
  3. 被転写体に転写されずに前記像担持体に残った現像剤を前記現像剤担持体によって回収することを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
  4. 前記現像剤は一成分現像剤であることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
  5. 隣接する前記凸部間の最近接距離を凸間隔Gとした場合、前記凸間隔Gの平均が前記キャリア粒子の平均粒径以下であることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
  6. 前記凸部の前記トナー粒子の表面からの高さを凸高さHとした場合、前記凸高さHの平均が前記キャリア粒子の平均粒径以下であることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
  7. 前記キャリア粒子はシリカであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
  8. 前記キャリア粒子は有機シリカ重合体であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
  9. 前記キャリア粒子の平均粒径は30nm以上1000nm以下であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
  10. 前記回転軸線方向における前記像担持体の端部の方が、前記回転軸線方向における前記像担持体の中央部の領域よりも前記像担持体の表面に付着した前記キャリア粒子の量が少ないことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
  11. 前記像担持体の前記端部の領域は、画像形成に使用されない非画像形成領域であることを特徴とする請求項10に記載の画像形成装置。
  12. 前記像担持体の前記端部の領域に付着した前記キャリア粒子を回収部において回収する回収部材を有することを特徴とする請求項10または11に記載の画像形成装置。
  13. 前記回収部材は、前記像担持体と接触して前記回収部を形成するように構成されることを特徴とする請求項12に記載の画像形成装置。
  14. 前記回収部材は、前記現像剤担持体と接触して前記回収部を形成するように構成されることを特徴とする請求項12に記載の画像形成装置。
  15. 前記回収部材を前記像担持体に押圧する押圧力をF2、前記回収部において、前記像担持体もしくは前記現像剤担持体と、前記回収部材と、の間に介在する前記キャリア粒子の総数をN2、とした場合に、
    前記キャリア粒子を単位キャリア粒子当たりの押圧力であるF2/N2で前記トナー粒子に押圧した際に測定される前記キャリア粒子と前記回収部材との間に形成される付着力Frと、
    前記キャリア粒子を前記F2/N2で前記回収部材に押圧した際に測定される前記キャリア粒子と前記回収部材との間に形成される付着力Fdr2と、の関係が、
    Fr≧Fdr2
    を満たすことを特徴とする請求項13または14に記載の画像形成装置。
  16. 前記回転部材を回転可能に支持し、前記回転軸線方向の端部に配置された軸受部材を有し、
    前記像担持体と前記回転部材と、が回転している状態において、前記像担持体と前記回転部材と、の間に生じる摩擦により発生するトルクをT1、前記回転部材と前記軸受部材との間に生じる摺動により発生するトルクをT2とすると、T1>T2を満たすことを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の画像形成装置。
  17. 前記回転部材は、前記像担持体の表面を帯電する帯電部材であることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載の画像形成装置。
  18. 前記回転部材は、前記像担持体の表面から前記現像剤や紙粉などの異物を回収する異物回収部材であることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載の画像形成装置。
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