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JP7463221B2 - 画像形成装置 - Google Patents

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JP7463221B2 JP2020127698A JP2020127698A JP7463221B2 JP 7463221 B2 JP7463221 B2 JP 7463221B2 JP 2020127698 A JP2020127698 A JP 2020127698A JP 2020127698 A JP2020127698 A JP 2020127698A JP 7463221 B2 JP7463221 B2 JP 7463221B2
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Description

本発明は、電子写真プロセス等を利用した画像形成装置に関する。
従来から、複写機やレーザープリンターなど、電子写真プロセスを用いて画像形成を行う画像形成装置が知られている。
この画像形成装置は、転写工程として、像担持体としての感光ドラム対向部に配置された転写部材に電圧電源より電圧を印加することで、感光ドラム表面に形成されたトナー像を中間転写体や記録材上に静電転写する。複数色のトナー像を形成する場合は、この転写工程を、複数色のトナー像に関して繰り返し実行することにより、中間転写体や記録材表面に複数色のトナー像を形成する。感光ドラムから中間転写体や記録材に転写されなかった現像剤(トナー)は、クリーニング部材によって感光ドラム上から除去され、クリーニングユニット内の廃トナー収容部に廃トナーとして収容される。
しかし、近年では、装置の小型化を目的として感光ドラム表面のクリーニングシステムを省略したクリーナレスシステムが提案されている。クリーナレスシステムを達成させるためには、感光ドラムから中間転写体へのトナー像の転写効率を向上させ、トナー像を転写部材によって転写した後に、感光ドラム表面に残留する転写残トナーを減らすことが好ましい。
特許文献1には、クリーナレスシステムの達成のために、感光ドラム表面に予め微粒子を付着させ、感光ドラムとトナー像の間に微粒子を介在させて感光ドラムとトナー間の付着力を低減して転写効率を向上させる構成が提案されている。
さらに、特許文献1には、感光ドラム表面に微粒子を付着させる手段として、微粒子を外添したトナーを用いることで、現像装置から感光ドラム上に微粒子を供給する構成が提案されている。
特開平10-63027
しかしながら、特許文献1のように、転写効率の向上のために、現像装置から感光ドラム上に微粒子を外添したトナーを供給してトナー像を記録材に転写すると、記録材表面に、転写されたトナー像と共に微粒子が移行する。特に、高印字の複数色の転写効率を向上させるためには、より多くの微粒子を感光ドラムの表面に供給する必要がある。すると、記録材表面に、転写されたトナーと共に多量の微粒子が移行してしまうことがある。その結果、記録材にトナーを定着する際に、多量の微粒子がトナーへの熱伝導を阻害して定着性を悪化させる場合があった。
そこで、本発明では、転写効率を向上させるために感光ドラム表面に十分な量の微粒子を供給しつつ、微粒子による画像弊害を抑制することを目的とする。
そこで、本発明に係る画像形成装置は、回転可能な第1の像担持体と、第1のトナー粒子及び前記第1のトナー粒子の表面に付着するキャリア粒子により構成される第1の現像剤を担持する回転可能な第1の現像剤担持体であって、前記第1の像担持体と接触して第1の現像部を形成し、前記第1の現像部において前記第1の像担持体の表面に第1の現像剤像を形成するために前記第1の現像剤を供給する第1の現像剤担持体と、を有する第1の画像形成部と、回転可能な第2の像担持体と、第2のトナー粒子及び前記第2のトナー粒子の表面に付着するキャリア粒子により構成される第2の現像剤を担持する回転可能な第2の現像剤担持体であって、前記第2の像担持体と接触して第2の現像部を形成し、前記第2の現像部において前記第2の像担持体の表面に第2の現像剤像を形成するために前記第2の現像剤を供給する第2の現像剤担持体と、を有する第2の画像形成部と、前記第1の像担持体と接触して第1の当接部を形成し、前記第2の像担持体と接触して第2の当接部を形成する中間転写体であって、前記第1の当接部において前記第1の現像剤像が転写され、前記第2の当接部において前記第2の現像剤像が転写される中間転写体と、前記中間転写体と接触して転写部を形成し、前記転写部において前記中間転写体の表面に形成された前記第1の現像剤像と前記第2の現像剤像とを記録材に転写する転写部材と、を有し、前記第1の像担持体が回転した状態で、前記第1の現像部において、前記第1の現像剤担持体の表面に担持された前記キャリア粒子を前記第1の像担持体の表面に供給することが可能であって、前記第2の像担持体が回転した状態で、前記第2の現像部において、前記第2の現像剤担持体の表面に担持された前記キャリア粒子を前記第2の像担持体の表面に供給することが可能な画像形成装置であって、前記中間転写体の表面は移動可能であって、前記中間転写体の表面の移動方向において、前記転写部の下流であって、前記第2の当接部の上流に前記第1の当接部が形成されるように、前記第1の画像形成部と前記第2の画像形成部と、が配置され、前記第1の現像剤担持体を前記第1の像担持体に押圧する押圧力をF1、前記第1のトナー粒子と前記第1の像担持体との間に介在する前記キャリア粒子の総数をN1、とした場合に、前記キャリア粒子を単位キャリア粒子当たりの押圧力であるF1/N1で前記第1のトナー粒子に押圧した際に測定される前記キャリア粒子と前記第1のトナー粒子との間に形成される付着力Ft1と、前記キャリア粒子を前記F1/N1で前記第1の像担持体に押圧した際に測定される前記キャリア粒子と前記第1の像担持体との間に形成される付着力Fdr1と、の関係が、Ft1≦Fdr1を満たし、前記第2の現像剤担持体を前記第2の像担持体に押圧する押圧力をF2、前記第2のトナー粒子と前記第2の像担持体との間に介在する前記キャリア粒子の総数をN2、とした場合に、前記キャリア粒子を単位キャリア粒子当たりの押圧力であるF2/N2で前記第2のトナー粒子に押圧した際に測定される前記キャリア粒子と前記第2のトナー粒子との間に形成される付着力Ft2と、前記キャリア粒子を前記F2/N2で前記第2の像担持体に押圧した際に測定される前記キャリア粒子と前記第2の像担持体との間に形成される付着力Fdr2と、の関係が、Ft2≦Fdr2を満たし、前記第1の像担持体と前記第1の現像剤担持体、ならびに、前記第2の像担持体と前記第2の現像剤担持体と、がそれぞれ接触した状態で、前記第1の像担持体と前記第2の像担持体とがそれぞれ回転した後において、前記第2の像担持体の表面に付着した前記キャリア粒子の付着面積が、前記第1の像担持体の表面に付着した前記キャリア粒子の付着面積に比べて大きいことを特徴とする。
以上説明したように、本発明によれば、転写効率を向上させるために感光ドラム表面に十分な量の微粒子を供給しつつ、微粒子による画像弊害を抑制することが出来る。
実施例1における転写キャリア供給動作のタイミングチャートである。 実施例1における画像形成装置の概要である。 実施例1における制御ブロック図である。 実施例1における現像カートリッジを説明する図である。 実施例1における現像ブレードの設定を説明する図である。 実施例1における現像ローラと感光ドラムの当接部を説明する図である。 実施例1におけるトナー表面の模式図である。 実施例1におけるトナー表面の凸形状の模式図である。 実施例1におけるトナー表面の凸形状の模式図である。 実施例1におけるトナー表面の凸形状の模式図である。 実施例1におけるトナーと転写キャリアの模式図である。 実施例1における転写キャリア供給時の模式図である。 実施例1における一次転写時の模式図である。 実施例1における画像形成動作のタイミングチャートである。 (a)、(b)実施例1における現像部におけるトナーの接触状態を示す図である。 実施例1における現像部におけるトナーと転写キャリア粒子の存在状態を示す図である。 (a)、(b)実施例1における現像部における転写キャリア粒子の状態を示す図である。 実施例1における転写キャリア粒子の供給動作を説明するタイミングチャートである。 実施例2における転写キャリア粒子の供給動作を説明するタイミングチャートである。 (a)、(b)実施例2における現像部での非画像形成動作における転写キャリアの供給メカニズムを説明する図である。 (a)、(b)実施例2における現像部での画像形成動作における転写キャリアの供給メカニズムを説明する図である。 その他の実施例における転写キャリア供給部材を説明する図である。
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態を例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。従って、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
1.画像形成装置
まず、本発明に係る電子写真画像形成装置(以下、画像形成装置)の全体構成について説明する。図2は、本実施例の画像形成装置100の概略断面図である。図3は画像形成装置100の制御を行う制御部200の構成を示す図である。図2、3を用いて本実施例の画像形成装置100の構成及び動作、制御を説明する。
本実施例の画像形成装置100は、インライン方式、中間転写方式を採用したフルカラーレーザープリンタである。実施例1は、特に、像担持体のクリーニング手段を持たない所謂ドラムクリーナレス方式を用いた画像形成装置に関するものである。
画像形成装置100は、画像情報にしたがって、記録材P(例えば、記録用紙、プラスチックシート)にフルカラー画像を形成することが出来る。画像情報は、画像読み取り装置、或いは、画像形成装置100に通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ等のホスト機器から、画像形成装置100に入力される。
画像形成装置100は、複数の画像形成部として、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を形成するための第1、第2、第3、第4のプロセスカートリッジSa、Sb、Sc、Sdを有する。本実施例では、第1~第4のプロセスカートリッジSa、Sb、Sc、Sdは、鉛直方向と交差する方向に一列に配置されている。なお、本実施例では、第1~第4のプロセスカートリッジSa、Sb、Sc、Sdの構成及び動作は、形成する画像の色が異なることを除いて実質的に同じである。したがって、以下、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用に設けられた要素であることを表すために符号に与えた添え字a、b、c、dは省略して、総括的に説明する。
本実施例では、画像形成装置100は、複数の像担持体として、鉛直方向と交差する方向に並設された4個のドラム型の電子写真感光体、すなわち、感光ドラム1(1a、1b、1c、1d)を有する。感光ドラム1は、感光ドラム駆動部(駆動源)110により回転駆動される。感光ドラム1の周囲には、帯電ローラ2(2a、2b、2c、2d)、スキャナユニット(露光装置)3(3a、3b、3c、3d)、現像ユニット(現像装置)4(4a、4b、4c、4d)、帯電前露光装置5(5a、5b、5c、5d)、が配置されている。帯電ローラ2は、感光ドラム1の表面を均―に帯電する帯電手段である。また、スキャナユニット3は、パーソナルコンピュータ等のホスト機器から入力された画像情報からCPU150で演算された出力に基づき、レーザーを照射して感光ドラム1上に静電像(静電潜像)を形成する露光手段である。現像ユニット4は、静電像をトナー像として現像する現像手段である。帯電前露光装置5は、一次転写後の感光ドラム1の表面電位の不均一さを解消するための露光手段である。そして、感光ドラム1と、感光ドラム1に作用するプロセス手段としての帯電ローラ2、現像ユニット4は一体化され、プロセスカートリッジSを形成している。プロセスカートリッジSは、画像形成装置100に設けられた装着ガイド、位置決め部材などの装着手段を介して、画像形成装置100に着脱可能となっている。
また、4個の感光ドラム1に対向して、感光ドラム1上のトナー像を記録材Pに転写するための中間転写体としての中間転写ベルト10が配置されている。無端状のベルトで形成された中間転写ベルト10は、各感光ドラム1に当接し、図示矢印R3方向(時計方向)に循環移動(回転)する。中間転写ベルト10は、複数の支持部材として、二次転写対向ローラ13、駆動ローラ11、テンションローラ12に掛け渡されている。中間転写ベルト10の表面を移動させるために、駆動ローラ11を図示矢印R2方向に回転駆動させている。
中間転写ベルト10の内周面側には、各感光ドラム1に対向するように、一次転写手段としての、4個の一次転写ローラ14(14a、14b、14c、14d)が並設されている。一次転写ローラ14は、中間転写ベルト10を感光ドラム1に向けて押圧し、中間転写ベルト10と感光ドラム1とが当接する一次転写部を形成する。
また、中間転写ベルト10の外周面側において二次転写対向ローラ13に対向する位置には、二次転写手段としての二次転写ローラ20が配置されている。二次転写ローラ20は、中間転写ベルト10を介して二次転写対向ローラ13に圧接し、中間転写ベルト10と二次転写ローラ13とが当接する二次転写部を形成する。
トナー像が転写された記録材Pは、定着手段としての定着装置30に搬送される。定着装置30において記録材Pに熱及び圧力が加えられることで、記録材Pにトナー像が定着される。
なお、画像形成装置100は、所望の一つの画像形成部のみを用いて、又は、幾つか(全てではない)の画像形成部のみを用いて、単色又は、マルチカラーの画像を形成することも出来るようになっている。
本実施例における画像形成装置100は、プロセススピード148mm/sec、A4サイズ紙対応のプリンターである。
本画像形成装置全体の制御を行う制御部200の構成について図3を参照して説明する。制御部200は、図3に示すように、CPU回路部150、ROM151およびRAM152を内蔵する。CPU回路部150はROM151に格納されている制御プログラムに応じて、一次転写制御部201、二次転写制御部202、現像制御部203、露光制御部204、帯電制御部205を統括的に制御する。環境テーブルや紙厚さ対応テーブルはROM151に格納されておりCPU150が呼び出して反映される。RAM152は、制御データを一時的に保持し、また制御に伴う演算処理の作業領域として用いられる。一次転写制御部201、二次転写制御部202は、それぞれ一次転写電圧電源15と二次転写電圧電源21を制御し、不図示の電流検出回路が検出する電流値に基づいて一次転写電圧電源15と二次転写電圧電源21から出力する電圧を制御している。制御部200は、ホストコンピュータ(不図示)から画像情報と印字命令を受信すると、各制御部(一次転写制御部201、二次転写制御部202、現像制御部203、露光制御部204、帯電制御部205)を制御して印字動作に必要な画像形成動作を実行する。
2.画像形成プロセス
次に、実施例1における画像形成プロセスを説明する。画像形成時には、まず感光ドラム1の表面が、帯電電圧電源132によって-1000Vの帯電電圧を印加された帯電ローラ2によって一様に帯電される。次に、ホスト機器から入力された画像情報からCPU150で演算された出力に基づいてスキャナユニット3から発せられたレーザー光(La、Lb、Lc、Ld)で帯電した感光ドラム1の表面を走査露光する。それによって、感光ドラム1上に画像情報に従った静電像が形成される。次に、感光ドラム1上に形成された静電像は、現像ユニット4によってトナー像として現像される。そして、一次転写ローラ14に、一次転写電圧印加手段としての一次転写電圧電源15(高圧電源)から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の電圧が印加される。これによって、感光ドラム1上のトナー像が中間転写ベルト10上に一次転写される。フルカラー画像の形成時には、上述のプロセスが、第1~第4のプロセスカートリッジSa、Sb、Sc、Sdにおいて順次に行われ、中間転写ベルト10上に各色のトナー像が次に重ね合わせて一次転写される。
一次転写ローラ14は外径φ6mmの円筒形状の金属ローラであり、素材はニッケルメッキのSUSを用いている。一次転写ローラ14は、感光ドラム1の中心位置に対して、中間転写ベルト10の移動方向下流側に8mmオフセットされた位置に配置されており、中間転写ベルト10は感光ドラム1に巻きつくような構成になっている。一次転写ローラ14は、感光ドラム1への中間転写ベルト10の巻きつき量を確保出来るように、感光ドラム1と中間転写ベルト10で形成される水平面に対して1mm持ち上げた位置に配置され、中間転写ベルト10を約200gfの力で押圧している。一次転写ローラ14は中間転写ベルト10の回転に伴い従動して回転する。
その後、中間転写ベルト10の移動と同期が取られて記録材Pが二次転写部へと搬送される。そして、二次転写ローラ20に、二次転写電圧印加手段としての二次転写電圧電源21(高圧電源)から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の電圧が印加される。これによって、中間転写ベルト10上の4色トナー像は、記録材Pを介して中間転写ベルト10に当接している二次転写ローラ20の作用によって、給送手段によって搬送された記録材P上に一括して二次転写される。
二次転写部材としての二次転写ローラ20は、中間転写ベルト10に対して、50Nの加圧力で当接し、二次転写部(二次転写ニップ)を形成している。二次転写ローラ20は中間転写ベルト10に対して従動回転し、また、中間転写ベルト10上のトナーを紙等の記録材Pに二次転写している時には、二次転写電圧電源21より、1500Vの電圧が印加されている。
トナー像が転写された記録材Pは、定着手段としての定着装置30に搬送される。定着装置30において、記録材Pは、熱及び圧力が加えられることで、転写されたトナー像が定着され、画像形成装置100から排出される。
なお、一次転写工程で感光ドラム1の表面に残留した一次転写残トナーは、現像ローラ22(後述)によって回収され、再利用される。一次転写工程で残留した感光ドラム1の表面の転写残トナーは帯電ローラ2を通過するときに正規帯電極性である負極性に帯電される。その後、帯電ローラ2によって形成される感光ドラム1の電位と現像ローラ22に直流電圧を印加されて形成される現像ローラ22(後述)の電位との電位差による電界によって、一次転写残トナーは現像ローラ22に回収され、再利用される。
また、二次転写工程で中間転写ベルト10の表面に残留した二次転写残トナーは、中間転写ベルトクリーニング装置16により清掃、除去される。
3.プロセスカートリッジの構成
次に、本実施例の画像形成装置100に装着されるプロセスカートリッジSの全体構成について説明する。各色用のプロセスカートリッジSは、図示しない識別部等を除き、同一形状を有する。各色用のプロセスカートリッジSの現像ユニット(現像装置)4内には、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナーが収容されている。なお、現像剤収容部である現像ユニット4には、懸濁重合法で製造した負極性の非磁性一成分現像剤(トナー)が収容されている。
プロセスカートリッジSは、感光ドラム1、回転可能な帯電ローラ2を備えた感光体ユニットと、回転可能な現像ローラ22等を備えた現像ユニット4と、を一体化して構成される。
感光ドラム1は、図示しない軸受を介して回転可能に支持されている。感光ドラム1は、感光ドラム駆動部たる感光ドラム駆動手段110(駆動源)の駆動力が感光体ユニットに伝達されることで、画像形成動作に応じて図示矢印R1方向(反時計方向)に回転駆動される構成としている。
感光ドラム1は、外径φ20mmのアルミの素管上に感光層と表層を設けたもので、表層はポリアリレートで形成する膜厚20mmの薄膜層を用いた。
帯電ローラ2は、直径5.5mmの金属軸上に、厚さ1.5mmで体積固有抵抗率が1×10Ωcm程度の導電性ゴムからなる弾性層を設けたローラ部が感光ドラム1に加圧接触し、従動回転する構成とされている。また、帯電ローラ2の表層には多数の凸部が設けられており、平均的な凸部の高さは10μm程度となっている。帯電ローラ2表層に設けた凸部は、帯電部において帯電ローラ2と感光ドラム1との間でスペーサーとしての役割を有している。感光ドラム1上の一次転写残トナーが帯電部に侵入した際に、凸部以外の箇所が一次転写残トナーに触れて帯電ローラ2が転写残トナーで汚れるのを防止する。
一方、現像ユニット4は、図4に示すように、トナーTを担持する現像ローラ22と、現像ブレード23(トナー規制部材)と、トナーTを供給する供給ローラ26と、これらを固定する現像枠体24と、を有している。現像枠体24は、現像ローラ22が配置された現像室24aと、現像室24aから外部へと接続される現像開口(開口部)を封止する吹き出し防止シート24bと、を備えている。
現像ローラ22へのトナーの供給は、現像ローラ22に接触する供給ローラ26により行う。供給ローラ26は現像ローラ22(図示矢印R4方向)に接触して回転(図示矢印R5方向)している。供給ローラ26は、現像室24a内からトナーTを搬送し、現像ローラ22に付着させるとともに、現像ローラ22に残ったトナーTを一旦除去する機能も担う。さらに、供給ローラ26上に付着したトナーTは、現像ローラ22と摺擦することで予備的な摩擦帯電電荷を与えられている。
現像ブレード23の一端は現像枠体24に固定された固定部材25に固定され、現像ブレード23の他端が現像ローラ22に当接させられ、現像ローラ22上のトナーコート量規制と電荷付与が可能な構成とされている。現像ローラ22は現像開口部に配置され、感光ドラム1に当接可能とされている。
現像ローラ22は、図4の通り、例えば金属芯金22aにシリコンからなる基層22b、ウレタンからなる表層22cが順次積層され構成を有するローラである。現像ローラ駆動部たる現像ローラ駆動手段130(駆動源)の駆動力により、同図中の矢印の方向R4へ回転駆動するように配置されている。
本実施例では、現像ローラ22に所定の直流電圧(現像電圧Vdc)を現像電圧電源131より印加し、摩擦帯電によりマイナスに帯電したトナーが感光ドラム1に接触する現像部において、静電潜像を顕像化し、トナー像を形成している。
供給ローラ26は、導電性支持体である外径φ5.5(mm)の芯金電極26aの周囲に、発泡ウレタン層26bが設けられている。発泡ウレタン層26bを含んだ供給ローラ26全体の外径はφ11(mm)である。供給ローラ26に対する現像ローラ22の侵入量は1.2mmである。供給ローラ26は、現像ローラ22との当接部において、お互いが逆方向の速度を持つような方向に回転(図示矢印R5方向)する。発泡ウレタン層26bには、この周囲に存在するトナーTの粉圧が作用し、さらに供給ローラ26が回転することで、トナーTが発泡ウレタン層26b内に取り込まれる。供給ローラ26には所定直流電圧(供給電圧Vrs)を供給電圧電源136より印加する。そして、現像ローラ22に印加する電圧(現像電圧Vdc)との電位差(供給ローラコントラストΔVrs=Vrs-Vdc)を制御することで、トナー供給量と予備的な摩擦帯電量をコントロールしている。
本実施例においては、供給ローラ26に供給電圧Vrs=-500V、現像ローラ22に現像電圧Vdc=-300Vを、それぞれ供給電圧電源136と現像電圧電源131から印加する。それによって、供給ローラ26には現像ローラ22に対して-200Vの電位差がつくように制御部200によって制御し、トナー供給量と予備的な摩擦帯電量を安定化させている。
ここで、以降の説明においては、電位や印加電圧に関し、負極性側に絶対値が大きい(例えば-500Vに対して-1000V)ことを電位が高いと称し、負極性側に絶対値が小さい(例えば-500Vに対して-300V)ことを電位が低いと称する。これは本実施例における負帯電性を持つトナーを基準として考えるためである。
また、本実施例での電圧は、アース電位(0V)との電位差として表現される。したがって、現像電圧Vdc=-300Vは、アース電位に対して、現像ローラ22の芯金に印加された現像電圧によって、-300Vの電位差を有したと解釈される。これは、帯電電圧や転写電圧などに関しても同様である。
現像ブレード23は、図4の通り、現像ローラ22に対してカウンター方向を向くようにして当接しており、トナーのコート量の規制及び電荷付与を行っている。
本実施例では、トナー規制部材である現像ブレード23として、厚さ50~120μmの板バネ状のSUS板の支持部材を用い、支持部材のバネ弾性を利用してブレード部の表面を現像ローラ22に当接させている。具体的には、図5に示すように当接している。なお、現像ローラ22の断面における中心をゼロ点としたとき、図5の通りXY座標軸を定めて、XYの座標(x、y)で当接位置を定義すると、本実施例ではx=3.86mm、y=-0.60mmである。現像ブレード23のブレード部は、短手方向において、一端にブレード部が形成され、他端が現像枠体24に固定されて、支持された構成とされている。一方、ブレード部は、支持部材の表面に導電性のウレタン樹脂からなる薄膜を被覆して形成したものを用いている。さらに、現像ブレード23に現像ブレード電圧電源133から所定直流電圧を印加し(現像ブレード電圧Vb)、現像ローラ22に印加する電圧(現像電圧Vdc)との電位差(現像ブレードコントラストΔVb=Vb-Vdc)を制御する。それによって、トナー帯電量及びトナーコート量をコントロールしている。
本実施例においては、現像ブレード23に現像ブレード電圧Vb=-500V、現像ローラ22に現像電圧Vdc=-300Vを印加する。現像ブレード23には現像ローラ22に対して-200Vの電位差(現像ブレードコントラスト)をつけてトナー帯電量及びトナーコート量を安定化させている。
現像ブレード23により現像ローラ22上に形成されたトナー層は、感光ドラム1と当接する現像部へ搬送され、現像部において、反転現像が行われる。図6に示す当接位置Aにおいて、現像ローラ22端部の不図示のコロによって、現像ローラ22の感光体1への侵入量は40μmに設定される。感光ドラム1に押しつけられることにより現像ローラ22の表面は変形する。それにより、現像ニップを形成し、安定した当接状態により現像を行うことが出来る。本実施例における現像ローラ22の感光ドラム1への押圧力は200gfである。現像ローラ22と感光ドラム1との当接部である現像部(以下、現像ニップ部)の幅は、感光ドラム1の回転方向における幅が2.0mm、感光ドラム1の長手方向における幅が220mmである。
本実施例におけるトナーは、懸濁重合法で製造した負帯電性を有する非磁性のトナーで、体積平均粒径が7.0μmであり、現像ローラ22上に担持された際に負極性に帯電する。トナーの体積平均粒径はベックマン・コールター株式会社製のレーザー回折式粒度分布測定器LS230で測定した。トナーに関しては後述する。
4.一次転写について
画像形成プロセスの項で述べた一次転写工程に関して詳細に説明する。
まず、感光ドラム1の表面は帯電ローラ2によって一様に所定の電位である帯電電位Vdに帯電される。次に、ホスト機器から入力された画像情報からCPU150で演算された出力に基づいてスキャナユニット3から発せられたレーザー光で帯電した感光ドラム1の表面を走査露光し、感光ドラム1上に画像情報に従った静電像が形成される。この時、静電像が形成される電位である露光後電位Vlが形成される。次に、感光ドラム1上に形成された静電像は、現像電圧Vdcと露光後電位Vlとの電位差(現像コントラストΔVcont=Vl-Vdc)によってトナー像として現像される。そして、一次転写ローラ14に、一次転写電圧印加手段としての一次転写電圧電源15(高圧電源)から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の所定直流電圧である一次転写電圧Vtrが印加される。このとき、VtrとVlの電位差(一次転写コントラストΔVtr=Vtr-Vl)が一次転写電界となり、感光ドラム1上のトナー像が中間転写ベルト10上に一次転写される。
本実施例における画像形成動作時の各電位設定は、帯電電位Vd=-500V、現像電圧Vdc=-300V、露光後電位Vl=-100V、一次転写電圧Vtr=200Vである。
なお、感光ドラム1の表面電位の測定は、トレック社製の表面電位計Model344で行った。
5.現像剤、トナー、転写キャリア粒子
次に、本実施例で用いた現像剤、トナー、転写キャリア粒子について詳細を説明する。
本実施例では現像剤としてトナーと転写キャリア粒子である外添剤Aとの混合物を用いた。ここで、転写キャリア粒子とは、感光ドラム1上に現像されたトナー像と感光ドラム1との間に介在することで、トナー像と感光ドラム1との間の付着力を低減して、トナー像の一次転写効率を向上させる役割を有する微粒子のことを言う。トナーは、離型剤を含有するトナー母粒子及び該トナー母粒子表面の有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子である。
該有機ケイ素重合体は、R-Si(O1/2で表されるT3単位構造を有し、該Rは、炭素数1以上6以下のアルキル基又はフェニル基を表し、有機ケイ素重合体はトナー母粒子表面に凸部を形成している。
凸部はトナー母粒子表面に面接触していることを特徴としており、面接触することにより、凸部の移動・脱離・埋没に対する抑制効果が顕著に期待出来る。
面接触の程度を、図7、図8、図9、図10に示す凸部の模式図にて説明する。
図7に示す61は、トナー粒子の約1/4程度が分かるトナー粒子の断面画像であり、62はトナー粒子、63はトナー母粒子表面、64が凸部である。トナー粒子の断面は後述する走査透過型電子顕微鏡(以下、STEMともいう)を用いて観察することが出来る。
トナーの断面画像を観察し、トナー母粒子表面の周に沿った線を描く。その周に沿った線を基準に水平画像へ変換を行う。該水平画像において、該凸部と該トナー母粒子とが連続した界面を形成している部分における該周に沿った線の長さを凸幅wとする。
また、該凸幅wの法線方向において該凸部の最大長を凸径Dとし、該凸径Dを形成する線分における該凸部の頂点から該周に沿った線までの長さを凸高さHとする。
図8及び図10において、凸径Dと凸高さHは同じであり、図9において、凸径Dは凸高さHより大きくなる。
また、図10は、中空粒子を潰す・割るなどして得られた、半球粒子の中心部が凹んだ、ボウル形状の粒子に類する粒子の固着状態を模式的に表したものである。
図10において、凸幅Wはトナー母粒子表面と接している有機ケイ素重合体の長さの合計とする。すなわち、図10における凸幅WはW1とW2の合計となる。
凸高さHの個数平均値は、30nm以上300nm以下であり、30nm以上200nm以下であることが好ましい。凸高さHの個数平均値が、30nm以上である場合、トナー母粒子表面と転写部材との間にスペーサー効果が生じ、転写性が顕著に向上する。一方、凸高さHの個数平均値が、300nm以下である場合、移動・脱離・埋没への抑制効果が著しく、長期使用においても高い転写性が維持される。凸高さHが30nm以上300nm以下である凸部において、凸高さHの累積分布をとる。該凸高さHの小さい方から積算して80個数%にあたる該凸高さをH80としたとき、H80は65nm以上120nm以下であることが好ましく、75nm以上100nm以下であることがより好ましい。H80が上記範囲であることで、転写性をより向上させることが出来る。
外添剤Aの一次粒子の個数平均粒径Rは、30nm以上1200nm以下であることが好ましい。Rが30nm以上であることで、転写部材との間にスペーサー効果を発現させ、高い転写性を発揮させる。また、Rが大きいほど、転写性能は向上する傾向にある。一方、Rが1200nmを超える場合、トナーの流動性が低下して画像ムラが生じやすくなる。
外添剤Aの一次粒子の個数平均粒径Rの凸高さHの個数平均値に対する比は、1.00以上4.00以下であることが好ましい。該比[(外添剤Aの一次粒子の個数平均粒径R)/(凸高さHの個数平均値)]が上記範囲である場合、長寿命化に耐えうる優れた転写性と低温定着性の両立が可能である。
凸高さHの個数平均値が最小値である30nmの場合、Rが30nm以上であれば、転写部材との間にスペーサー効果を発現させ、転写性を良化させることが出来る。これは、脱離などの影響より凸部が存在していない場所に、該外添剤Aが置換されて、スペーサー効果を発現していると考えている。つまり、Rが30nm未満であれば、スペーサー効果を発現しにくい。
外添剤Aのトナー粒子表面に対する固着率は、0%以上20%以下であることが好ましく、0%以上10%以下であることがより好ましい。該固着率が上記範囲にあることで、外添剤Aがトナー粒子の表面を動き易くなり、凸部代替作用によって転写性をより向上させることが出来る。トナーを定着部材に定着させる定着工程において、トナー母粒子から、適切量の離型剤が染み出すことによって、定着部材と紙の分離性能を向上させている。
走査電子顕微鏡による該トナーの表面観察によって、該トナー表面の1.5μm四方の反射電子像を取得する。該反射電子像中の有機ケイ素重合体部分が明部となるように二値化処理した画像を得たとき、該画像の全面積に対する該画像の明部面積の面積割合(以下単に、明部面積の面積割合ともいう)は、30.0%以上75.0%以下である。また、該画像の明部面積の面積割合は、35.0%以上70.0%以下であることが好ましい。該明部面積の面積割合が高いほど、有機ケイ素重合体のトナー母粒子表面における存在割合が高いことを示している。該明部面積の面積割合が75.0%より高い場合、トナー母粒子由来の成分のトナー母粒子表面における存在割合が少なく、トナー母粒子からの離型剤の染み出しが生じにくくなり、低温定着時に定着器への薄紙巻き付きが発生し易い。一方、該画像の明部面積の面積割合が30.0%未満の場合、トナー母粒子由来の成分のトナー母粒子表面における存在割合が多い。すなわち、トナー母粒子由来の成分のトナー母粒子表面への露出面積が大きく、使用初期の転写性が低下する。該画像の明部面積の面積割合は、以後、トナー母粒子の表面における有機ケイ素重合体の被覆率ともいう。
外添剤Aは、一次粒子の個数平均粒径Rが30nm以上1000nm以下であるものであれば特段限定されることはなく、各種有機微粒子又は無機微粒子を用いることが出来る。流動性を付与し易く、トナー母粒子と同じく負に帯電し易いという観点から、外添剤Aはシリカ微粒子を含有することが好ましい。外添剤A中のシリカ微粒子の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、外添剤Aがシリカ微粒子であることがより好ましい。トナー中の外添剤Aの含有量は、0.02質量%以上5.00質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上3.00質量%以下であることがより好ましい。
シリカ微粒子以外の有機微粒子又は無機微粒子としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。
(1)流動性付与剤:アルミナ微粒子、酸化チタン微粒子、カーボンブラック及びフッ化カーボン。
(2)研磨剤:金属酸化物の微粒子(チタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、アルミナ、酸化マグネシウム、及び酸化クロムなどの微粒子)、窒化物の微粒子(窒化ケイ素などの微粒子)、炭化物の微粒子(炭化ケイ素などの微粒子)、金属塩の微粒子(硫酸カルシウム、硫酸バリウム、及び炭酸カルシウムなどの微粒子)。
(3)滑剤:フッ素系樹脂の微粒子(フッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどの微粒子)、脂肪酸金属塩の微粒子(ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの微粒子)。
(4)荷電制御性微粒子:金属酸化物の微粒子(酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、及びアルミナなどの微粒子)、カーボンブラック。
シリカ微粒子及び該有機微粒子又は無機微粒子は、トナーの流動性の改善及びトナー粒子の帯電均一化のために疎水化処理が施されたものを用いてもよい。
該疎水化処理のための処理剤としては、未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物、有機チタン化合物が挙げられる。これらの処理剤は単独で又は併用して用いてもよい。
該シリカ微粒子は、公知のシリカの微粒子が使用可能であり、乾式シリカの微粒子、湿式シリカの微粒子のいずれであってもよい。好ましくは、ゾルゲル法により得られる湿式シリカの微粒子(以下、ゾルゲルシリカともいう)であることが好ましい。
図11は本実施例で用いた現像剤の拡大図である。図11に示すように、本実施例の現像剤は有機ケイ素重合体の凸部が多数形成されたトナー表面上に転写キャリア粒子である外添剤Aを配置したものになっている。
図11で示すトナー表面の凸間隔Gと凸高さHは、後述する走査透過型電子顕微鏡(以下、STEMともいう)を用いて測定することが出来る。また、凸間隔Gと凸高さHは走査型プローブ顕微鏡(以下SPM)でも測定することが出来る。走査型プローブ顕微鏡(以下SPM)は、探針,探針を支持するカンチレバー及びカンチレバーの曲がりを検出する変位測定系を備えており、探針と試料との間の原子間力(引力または斥力)を検出して、試料表面の形状観察を行うものである。
凸間隔Gが転写キャリアよりも大きいと転写キャリア粒子が凸部間に配置された場合にトナー母体と接触してしまい、転写キャリア粒子とトナー間の付着力Ftが大きくなりトナーから感光ドラム1へ転写キャリア粒子が転移しづらくなる。そのため、凸間隔Gの個数平均値は転写キャリア粒子の個数平均粒径よりも小さいことが好ましい。
また、凸高さHが転写キャリア粒子の粒径よりも高いと、凸部が転写キャリア粒子よりも先に感光ドラム1に接触してしまい、転写キャリア粒子が感光ドラム1と接触しづらくなり、トナーから感光ドラム1へ転写キャリア粒子が転移しづらくなる。そのため、凸高さHの個数平均値は転写キャリア粒子の個数平均粒径よりも小さいことが好ましい。
ただし、前述したように転写キャリア粒子とトナー間の付着力Ftが転写キャリア粒子と感光ドラム1との間の付着力Fdrよりも小さいことが好ましい。そのため、転写キャリア粒子の材料としては転写キャリア粒子のトナーへの付着力Ftが小さくなるものを選択することが好ましい。例えば、本実施例のように、トナー表面の凸部が有機シリカ重合体などのシリカ系材料で形成されている場合は、転写キャリア粒子の材料としても凸部と材料構成の近いシリカ系の材料を選択することが、凸部と転写キャリア粒子間を低付着力にするため好ましい。
トナーを被覆する転写キャリア粒子の個数は多い方が現像ローラ22から感光ドラム1への転写キャリア粒子の供給の観点からは好ましい。しかし、転写キャリア粒子の添加量が多すぎると画像形成装置100内の部材汚染のリスクが高まるため、所望の一次転写性に合わせて調整することが好ましい。
一次転写性は感光ドラム1上に占める転写キャリア粒子の被覆率の増加に伴って向上し、十分な一次転写性を得るためには感光ドラム1上に占める転写キャリア粒子の被覆率が10%以上であることが好ましい。しかしながら、感光ドラム1上に占める転写キャリア粒子の被覆率が増加するにつれ、一次転写性の向上度合いが鈍化し、転写キャリア粒子による画像形成装置内汚染の各種部材汚染のリスクが高まる。そのため、転写キャリア粒子の感光ドラム1上に占める被覆率は50%以内にしておくことが好ましい。
6.現像剤の物性測定方法
以下、各種測定方法を説明する。
<走査透過型電子顕微鏡(STEM)におけるトナーの断面の観察方法>
走査透過型電子顕微鏡(STEM)で観察されるトナーの断面は以下のようにして作製する。
以下、トナーの断面の作製手順を説明する。なお、トナーに有機微粒子又は無機微粒子が外添されている場合は、下記方法等によって、有機微粒子又は無機微粒子を除去したものを試料として用いる。
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させ、ショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブ(容量50mL)に、上記ショ糖濃厚液を31gと、コンタミノンN(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を6mL入れる。ここにトナー1.0gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。遠心分離用チューブをシェイカー(AS-1N アズワン株式会社より販売)にて300spm(strokes per min)、20分間振とうする。振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機(H-9R 株式会社コクサン製)にて3500rpm、30分間の条件で分離する。この操作により、トナー粒子と外添剤とが分離される。トナー粒子と水溶液が十分に分離されていることを目視で確認し、最上層に分離したトナー粒子をスパチュラ等で採取する。採取したトナー粒子を減圧濾過器で濾過した後、乾燥機で1時間以上乾燥し、測定用試料を得る。この操作を複数回実施して、必要量を確保する。
また、凸部が有機ケイ素重合体を含有するか否かについては、エネルギー分散型X線分析(EDS)による元素分析を組合せて確認する。
カバーガラス(松波硝子社、角カバーグラス;正方形No.1)上にトナーを一層となるように散布し、オスミウム(Os)・プラズマコーター(filgen社、OPC80T)を用いて、保護膜としてトナーにOs膜(5nm)及びナフタレン膜(20nm)を施す。次に、PTFE製のチューブ(外径3mm(内径1.5mm)×3mm)に光硬化性樹脂D800(日本電子社)を充填し、チューブの上に前記カバーガラスをトナーが光硬化性樹脂D800に接するような向きで静かに置く。この状態で光を照射して樹脂を硬化させた後、カバーガラスとチューブを取り除くことで、最表面にトナーが包埋された円柱型の樹脂を形成する。超音波ウルトラミクロトーム(Leica社、UC7)により、切削速度0.6mm/sで、円柱型の樹脂の最表面からトナーの半径(例えば、重量平均粒径(D4)が8.0μmの場合は4.0μm)の長さだけ切削して、トナー中心部の断面を出す。
次に、膜厚100nmとなるように切削し、トナーの断面の薄片サンプルを作製する。このような手法で切削することで、トナー中心部の断面を得ることが出来る。
走査透過型電子顕微鏡(STEM)として、JEOL社製、JEM-2800を用いた。STEMのプローブサイズは1nm、画像サイズ1024×1024ピクセルにて画像を取得する。また、明視野像のDetector ControlパネルのContrastを1425、Brightnessを3750、Image ControlパネルのContrastを0.0、Brightnessを0.5、Gammmaを1.00に調整して、画像を取得する。画像倍率は100,000倍にて行い、図11のようにトナー1粒子中の断面の周のうち4分の1から2分の1程度収まるように画像取得を行う。得られたSTEM画像について、画像処理ソフト(イメージJ(https://imagej.nih.gov/ij/より入手可能))を用いて画像解析を行い、有機ケイ素重合体を含む凸部を計測する。該計測はSTEM画像中から任意に選択した30個の凸部について行う。なお、凸部が有機ケイ素重合体を含有するか否かについては、走査型電子顕微鏡(SEM)及びエネルギー分散型X線分析(EDS)による元素分析の組合せにより確認する。まず、ライン描画ツール(StraghtタブのSegmented lineを選択)にてトナー母粒子の周に沿った線を描く。有機ケイ素重合体の凸部がトナー母粒子に埋没しているような部分は、その埋没はないものとして滑らかに線をつなぐ。その線を基準に水平画像へ変換(EditタブのSelection選択し、propertiesにてline widthを500ピクセルに変更後、EditタブのSelectionを選択しStraghtenerを行う)を行う。該水平画像中、有機ケイ素重合体を含む凸部の一つについて、下記計測を実施する。該凸部と該トナー母粒子とが連続した界面を形成している部分における該周に沿った線の長さを凸幅wとする。該凸幅wの法線方向において該凸部の最大長を凸径Dとし、該凸径Dを形成する線分における該凸部の頂点から該周に沿った線までの長さを凸高さHとする。該計測を、任意に選択した30個の凸部について実施し、各計測値の算術平均値を、凸高さHの個数平均値とする。
<H80の算出方法>
上記走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いたトナーの断面のSTEM画像において、凸高さHが30nm以上300nm以下である凸部において、該凸高さHの累積分布をとる。該凸高さHの小さい方から積算して80個数%にあたる該凸高さをH80(単位:nm)とする。
<トナー表面の1.5μm四方の反射電子像における明部面積の面積割合の算出方法>
明部面積の面積割合は、走査電子顕微鏡を用いて、トナーの表面観察を行う。そして、トナー表面の1.5μm四方の反射電子像を取得する。そして、該反射電子像中の有機ケイ素重合体部分が明部となるように二値化処理した画像を得て、該画像の全面積に対する該画像の明部面積の割合を求める。トナーに有機微粒子又は無機微粒子が外添されているときは、下記方法などによって、有機微粒子又は無機微粒子を除去したものを試料として用いる。
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させ、ショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブ(容量50mL)に、上記ショ糖濃厚液を31gと、コンタミノンN(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を6mL入れる。ここにトナー1.0gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。遠心分離用チューブをシェイカー(AS-1N アズワン株式会社より販売)にて300spm(strokes per min)、20分間振とうする。振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機(H-9R 株式会社コクサン製)にて3500rpm、30分間の条件で分離する。この操作により、トナー粒子と外添剤とが分離される。トナー粒子と水溶液が十分に分離されていることを目視で確認し、最上層に分離したトナー粒子をスパチュラなどで採取する。採取したトナー粒子を減圧濾過器で濾過した後、乾燥機で1時間以上乾燥し、測定用試料を得る。この操作を複数回実施して、必要量を確保する。
また、凸部が有機ケイ素重合体を含有するか否かについては、後述するエネルギー分散型X線分析(EDS)による元素分析を組合せて確認する。
SEMの装置及び観察条件は、下記の通りである。
使用装置:カールツァイスマイクロスコピー株式会社製 ULTRA PLUS
加速電圧:1.0kV
WD:2.0mm
Aperture Size:30.0μm
検出信号:EsB(エネルギー選択式反射電子)
EsB Grid:800V
観察倍率:50,000倍
コントラスト:63.0±5.0%(参考値)
ブライトネス:38.0±5.0%(参考値)
解像度:1024×768
前処理:トナー粒子をカーボンテープに散布(蒸着は行わない)
加速電圧及びEsB Gridは、トナー粒子の最表面の構造情報の取得、未蒸着試料のチャージアップ防止、エネルギーの高い反射電子の選択的検出、といった項目を達成するように設定する。観察視野は、トナー粒子の曲率が最も小さくなる頂点付近を選択する。反射電子像の明部が有機ケイ素重合体由来であることは、走査電子顕微鏡(SEM)で取得出来るエネルギー分散型X線分析(EDS)による元素マッピング像と、前記反射電子像を重ね合わせることで確認した。
SEM/EDSの装置及び観察条件は、下記の通りである。
使用装置(SEM):カールツァイスマイクロスコピー株式会社製 ULTRA PLUS
使用装置(EDS):サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製 NORAN System 7、Ultra Dry EDS Detecter
加速電圧:5.0kV
WD:7.0mm
Aperture Size:30.0μm
検出信号:SE2(二次電子)
観察倍率:50,000倍
モード:Spectral Imaging
前処理:トナー粒子をカーボンテープに散布し、白金スパッタ
本手法で取得したケイ素元素のマッピング像と、前記反射電子像を重ね合わせ、マッピング像のケイ素原子部と反射電子像の明部とが一致することを確認する。
反射電子像の全面積に対する明部面積の面積率の算出は、上記手法で得られたトナー粒子の表面の反射電子像を、画像処理ソフトImageJ(開発元 Wayne Rashand)を用いて解析することで取得した。以下に手順を示す。
まず、ImageメニューのTypeから、反射電子像を8-bitに変換する。次に、ProcessメニューのFiltersから、Median径を2.0ピクセルに設定し、画像ノイズを低減させる。反射電子像下部に表示されている観察条件表示部を除いた上で画像中心を見積もり、ツールバーの長方形ツール(Rectangle Tool)を用いて反射電子像の画像中心から1.5μm四方の範囲を選択する。次に、ImageメニューのAdjustから、Thresholdを選択する。Defaultを選択し、Autoをクリックした後、Applyをクリックして二値化画像を得る。この操作によって、反射電子像の明部が白で表示される。再度、反射電子像下部に表示されている観察条件表示部を除いた上で画像中心を見積もり、ツールバーの長方形ツール(Rectangle Tool)を用いて反射電子像の画像中心から1.5μm四方の範囲を選択する。次に、AnalyzeメニューのHistogramを選択する。新規に開いたHistogramウインドウから、Count値を読み取る(反射電子像の全面積に相当)。また、Listをクリックし、輝度0のときのCount値を読み取る(反射電子像の明部面積に相当)。上記値から、反射電子像の全面積に対する明部面積の面積率を算出する。上記手順を、評価対象のトナー粒子につき10視野について行い、個数平均値を算出して、反射電子像中の有機ケイ素重合体部分が明部となるように二値化処理した画像の、全面積に対する該画像の明部面積の面積割合(%)とする。
<有機ケイ素重合体の同定方法>
有機ケイ素重合体の同定方法は走査型電子顕微鏡(SEM)による観察及びエネルギー分散型X線分析(EDS)による元素分析を組み合わせて行う。
走査型電子顕微鏡「日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡 S-4800」((株)日立ハイテクノロジーズ)を用いて、最大5万倍に拡大した視野において、トナーを観察する。トナー粒子表面にピントを合わせて、表面を観察する。表面に存在する粒子などに対してEDS分析を行い、Si元素ピークの有無から、分析した粒子などが有機ケイ素重合体であるか否かを判断する。トナー粒子表面に、有機ケイ素重合体とシリカ微粒子の両方が含まれている場合には、Si、及びOの元素含有量(atomic%)の比(Si/O比)を標品と比較することで有機ケイ素重合体の同定を行う。有機ケイ素重合体、及びシリカ微粒子それぞれの標品に対して、同条件でEDS分析を行い、Si、及びOそれぞれの元素含有量(atomic%)を得る。有機ケイ素重合体のSi/O比をAとし、シリカ微粒子のSi/O比をBとする。AがBに対して、有意に大きくなる測定条件を選択する。具体的には、標品に対して、同条件で10回の測定を行い、A及びB、それぞれの相加平均値を得る。得られた平均値がA/B>1.1となる測定条件を選択する。判別対象の粒子などのSi/O比が[(A+B)/2]よりもA側にある場合に当該粒子などを有機ケイ素重合体と判断する。
有機ケイ素重合体粒子の標品として、トスパール120A(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社)を、シリカ微粒子の標品として、HDK V15(旭化成)を用いる。
<外添剤の一次粒子の個数平均粒径Rの測定方法>
走査型電子顕微鏡「日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡 S-4800」((株)日立ハイテクノロジーズ)及びエネルギー分散型X線分析(EDS)による元素分析を組み合わせて行う。
最大5万倍に拡大した視野において、上述するEDSによる元素分析手法を併用し、ランダムに外添剤粒子を撮影する。撮影された画像から、ランダムに100個の外添剤粒子を選び出し、対象とする外添剤粒子の一次粒子の長径を測定して、その算術平均値を個数平均粒径Rとする。観察倍率は、外添剤粒子の大きさによって適宜調整する。
<有機ケイ素重合体の構成化合物の組成と比率の同定方法>
トナー中に含まれる有機ケイ素重合体の構成化合物の組成と比率の同定には、NMRを用いる。トナー中に、有機ケイ素重合体以外に、シリカ微粒子などの外添剤が含まれる場合は、以下の操作を行う。
トナー1gをバイアル瓶に入れクロロホルム31gに溶解させ、分散させる。分散には超音波式ホモジナイザーを用いて30分間処理して分散液を作製する。
超音波処理装置:超音波式ホモジナイザーVP-050(タイテック株式会社製)
マイクロチップ:ステップ型マイクロチップ、先端径φ2mm
マイクロチップの先端位置:ガラスバイアルの中央部、且つバイアル底面から5mmの高さ
超音波条件:強度30%、30分
このとき、分散液が昇温しないようにバイアルを氷水で冷却しながら超音波を掛ける。該分散液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機(H-9R;株式会社コクサン社製)にて、58.33S-1、30分間の条件で遠心分離を行う。遠心分離後のガラスチューブ内においては、下層に比重の重い粒子、例えば、シリカ微粒子が含まれる。上層の有機ケイ素重合体を含むクロロホルム溶液を採取して、クロロホルムを真空乾燥(40℃/24時間)にて除去しサンプルを作製する。上記サンプル又は有機ケイ素重合体を用いて、有機ケイ素重合体の構成化合物の存在量比及び、有機ケイ素重合体中のR-Si(O1/2で表されるT3単位構造の割合を、固体29Si-NMRで測定・算出する。
まず、上記Rで表される炭化水素基は、13C-NMRにより確認する。
13C-NMR(固体)の測定条件≫
装置:JEOLRESONANCE製JNM-ECX500II
試料管:3.2mmφ
試料:サンプル又は有機ケイ素重合体
測定温度:室温
パルスモード:CP/MAS
測定核周波数:123.25MHz(13C)
基準物質:アダマンタン(外部標準:29.5ppm)
試料回転数:20kHz
コンタクト時間:2ms
遅延時間:2s
積算回数:1024回
該方法にて、ケイ素原子に結合しているメチル基(Si-CH)、エチル基(Si-C)、プロピル基(Si-C)、ブチル基(Si-C)、ペンチル基(Si-C11)、ヘキシル基(Si-C13)又はフェニル基(Si-C-)などに起因するシグナルの有無により、上記Rで表される炭化水素基を確認する。一方、固体29Si-NMRでは、有機ケイ素重合体の構成化合物のSiに結合する官能基の構造によって、異なるシフト領域にピークが検出される。各ピーク位置は標準サンプルを用いて特定することでSiに結合する構造を特定することが出来る。また、得られたピーク面積から各構成化合物の存在量比を算出することが出来る。全ピーク面積に対してT3単位構造のピーク面積の割合を計算によって求めることが出来る。
固体29Si-NMRの測定条件は、具体的には下記の通りである。
装置:JNM-ECX5002 (JEOL RESONANCE)
温度:室温
測定法:DDMAS法 29Si 45°
試料管:ジルコニア3.2mmφ
試料:試験管に粉末状態で充填
試料回転数:10kHz
relaxation delay :180s
Scan:2000
該測定後に、サンプル又は有機ケイ素重合体の、置換基及び結合基の異なる複数のシラン成分をカーブフィティングにて下記X1構造、X2構造、X3構造、及びX4構造にピーク分離して、それぞれピーク面積を算出する。
なお、下記X3構造がT3単位構造である。
X1構造:(Ri)(Rj)(Rk)SiO1/2 (A1)
X2構造:(Rg)(Rh)Si(O1/2 (A2)
X3構造:RmSi(O1/2 (A3)
X4構造:Si(O1/2 (A4)
Figure 0007463221000001
該式(A1)、(A2)及び(A3)中のRi、Rj、Rk、Rg、Rh、Rmはケイ素に結合している、炭素数1~6の炭化水素基などの有機基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基又はアルコキシ基を示す。なお、構造をさらに詳細に確認する必要がある場合、上記13C-NMR及び29Si-NMRの測定結果と共にH-NMRの測定結果によって同定してもよい。
<トナー中に含まれる有機ケイ素重合体又はシリカ微粒子の定量方法>
トナーを、上記のようにクロロホルムに分散させ、その後に遠心分離を用い、比重の差で有機ケイ素重合体及びシリカ微粒子などの外添剤を分離し、各サンプルを得、有機ケイ素重合体又はシリカ微粒子などの外添剤の含有量を求める。
以下、外添剤がシリカ微粒子の場合について例示する。他の微粒子であっても、同様の手法で定量することが出来る。
まず、プレスしたトナーを蛍光X線で測定し、検量線法又はFP法などの解析処理を行うことでトナー中のケイ素の含有量を求める。次に、有機ケイ素重合体及びシリカ微粒子を形成する各構成化合物について、固体29Si-NMR及び熱分解GC/MSなどを用いて構造を特定し、有機ケイ素重合体中及びシリカ微粒子中のケイ素含有量を求める。蛍光X線で求めたトナー中のケイ素の含有量と、固体29Si-NMR及び熱分解GC/MSで求めた有機ケイ素重合体中及びシリカ微粒子中のケイ素含有量の関係から、計算によってトナー中の有機ケイ素重合体及びシリカ微粒子の含有量を求める。
<有機ケイ素重合体又はシリカ微粒子などの外添剤の水洗法による、トナー母粒子又はトナー粒子に対する固着率の測定方法>
(水洗工程)
50mL容量のバイアルに「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の30質量%水溶液20gを秤量し、トナー1gと混合する。いわき産業(株)製「KM Shaker」(model: V.SX)にセットし、speedを50に設定して120秒間振とうする。これにより、有機ケイ素重合体又はシリカ微粒子の固着状態に依っては、有機ケイ素重合体又はシリカ微粒子などの外添剤が、トナー母粒子又はトナー粒子表面から、分散液側へ移行する。その後、遠心分離機(H-9R;株式会社コクサン社製)(16.67S-1にて5分間)にて、トナーと上澄み液に移行した有機ケイ素重合体又はシリカ微粒子などの外添剤を分離する。沈殿しているトナーは、真空乾燥(40℃/24時間)することで乾固させて、水洗後トナーとする。
次に、日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S-4800((株)日立ハイテクノロジーズ)を用いて、上記水洗工程を行わないトナー(水洗前トナー)、及び、上記水洗工程を経て得られたトナー(水洗後トナー)を撮影する。
また、測定対象の同定は、エネルギー分散型X線分析(EDS)を用いた元素分析により行う。
そして、撮影されたトナー表面画像を、画像解析ソフトImage-Pro Plus ver.5.0((株)日本ローパー)を用いて解析し、被覆率を算出する。
S-4800の画像撮影条件は以下のとおりである。
(1)試料作製
試料台(アルミニウム試料台15mm×6mm)に導電性ペーストを薄く塗り、その上にトナーを吹きつける。さらにエアブローして、余分なトナーを試料台から除去し十分乾燥させる。試料台を試料ホルダにセットし、試料高さゲージにより試料台高さを36mmに調節する。
(2)S-4800観察条件の設定
被覆率の測定に際して、予め、上述したエネルギー分散型X線分析(EDS)による元素分析を行い、トナー表面の有機ケイ素重合体又はシリカ微粒子などの外添剤を区別した上で測定を行う。S-4800の筺体に取り付けられているアンチコンタミネーショントラップに液体窒素を溢れるまで注入し、30分間置く。S-4800の「PC-SEM」を起動し、フラッシング(電子源であるFEチップの清浄化)を行う。画面上のコントロールパネルの加速電圧表示部分をクリックし、[フラッシング]ボタンを押し、フラッシング実行ダイアログを開く。フラッシング強度が2であることを確認し、実行する。フラッシングによるエミッション電流が20~40μAであることを確認する。試料ホルダをS-4800筺体の試料室に挿入する。コントロールパネル上の[原点]を押し試料ホルダを観察位置に移動させる。
加速電圧表示部をクリックしてHV設定ダイアログを開き、加速電圧を[1.1kV]、エミッション電流を[20μA]に設定する。オペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、信号選択を[SE]に設置し、SE検出器を[上(U)]及び[+BSE]を選択し、[+BSE]の右の選択ボックスで[L.A.100]を選択し、反射電子像で観察するモードにする。同じくオペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、電子光学系条件ブロックのプローブ電流を[Normal]に、焦点モードを[UHR]に、WDを[4.5mm]に設定する。コントロールパネルの加速電圧表示部の[ON]ボタンを押し、加速電圧を印加する。
(3)トナーの個数平均粒径(D1)算出
コントロールパネルの倍率表示部内をドラッグして、倍率を5000(5k)倍に設定する。操作パネルのフォーカスつまみ[COARSE]を回転させ、ある程度焦点が合ったところでアパーチャアライメントの調整を行う。コントロールパネルの[Align]をクリックし、アライメントダイアログを表示し、[ビーム]を選択する。操作パネルのSTIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を回転し、表示されるビームを同心円の中心に移動させる。次に[アパーチャ]を選択し、STIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を一つずつ回し、像の動きを止める又は最小の動きになるように合わせる。アパーチャダイアログを閉じ、オートフォーカスで、ピントを合わせる。この操作をさらに2度繰り返し、ピントを合わせる。
その後、トナー300個について粒径を測定して個数平均粒径(D1)を求める。なお、個々の粒子の粒径は、トナーの粒子を観察した際の最大径とする。
(4)焦点調整
(3)で得た、個数平均粒径(D1)の±0.1μmの粒子について、最大径の中点を測定画面の中央に合わせた状態でコントロールパネルの倍率表示部内をドラッグして、倍率を10000(10k)倍に設定する。
操作パネルのフォーカスつまみ[COARSE]を回転させ、ある程度焦点が合ったところでアパーチャアライメントの調整を行う。コントロールパネルの[Align]をクリックし、アライメントダイアログを表示し、[ビーム]を選択する。操作パネルのSTIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を回転し、表示されるビームを同心円の中心に移動させる。次に[アパーチャ]を選択し、STIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を一つずつ回し、像の動きを止める又は最小の動きになるように合わせる。アパーチャダイアログを閉じ、オートフォーカスで、ピントを合わせる。その後、倍率を50,000(50k)倍に設定し、上記と同様にフォーカスつまみ、STIGMA/ALIGNMENTつまみを使用して焦点調整を行い、再度オートフォーカスでピントを合わせる。この操作を再度繰り返し、ピントを合わせる。ここで、観察面の傾斜角度が大きいと被覆率の測定精度が低くなりやすいので、ピント調整の際に観察面全体のピントが同時に合うものを選ぶことで、表面の傾斜が極力無いものを選択して解析する。
(5)画像保存
ABCモードで明るさ合わせを行い、サイズ640×480ピクセルで写真撮影して保存する。この画像ファイルを用いて下記の解析を行う。トナー1つに対して写真を1枚撮影し、トナー粒子について画像を得る。
(6)画像解析
下記解析ソフトを用いて、上述した手法で得た画像を二値化処理することで被覆率を算出する。このとき、上記一画面を正方形で12分割してそれぞれ解析する。画像解析ソフトImage-Pro Plus ver.5.0の解析条件は以下のとおりである。ただし、分割区画内に、粒径が30nm未満及び300nmを超える有機ケイ素重合体、又は、粒径が30nm未満及び1200nmを超えるシリカ微粒子などの外添剤が入る場合はその区画では被覆率の算出を行わないこととする。
画像解析ソフトImage-Pro Plus5.0において、ツールバーの「測定」から「カウント/サイズ」、「オプション」の順に選択し、二値化条件を設定する。オブジェクト抽出オプションの中で8連結を選択し、平滑化を0とする。その他、予め選別、穴を埋める、包括線は選択せず、「境界線を除外」は「なし」とする。ツールバーの「測定」から「測定項目」を選択し、面積の選別レンジに2~10と入力する。
被覆率の計算は、正方形の領域を囲って行う。このとき、領域の面積(C)は24,000~26,000ピクセルになるようにする。「処理」-二値化で自動二値化し、有機ケイ素重合体又はシリカ微粒子などの外添剤の無い領域の面積の総和(D)を算出する。正方形の領域の面積C、有機ケイ素重合体又はシリカ微粒子などの外添剤の無い領域の面積の総和Dから下記式で被覆率が求められる。
被覆率(%)=100-(D/C×100)
得られた全データの算術平均値を被覆率とする。
そして、水洗前トナーと水洗後トナーの、それぞれの被覆率を算出し、
〔水洗後トナーの被覆率〕/〔水洗前トナーの被覆率〕×100を、本発明の「固着率」とする。
7.トナー粒子、外添剤、現像剤の製造方法
次に、本実施例のトナー粒子、外添剤A、現像剤の製造例について説明する。
<トナー粒子の製造例>
(水系媒体1の調製)
撹拌機、温度計、及び還留管を具備した反応容器に、イオン交換水650.0部及びリン酸ナトリウム(ラサ工業社製・12水和物)14.0部を投入し、窒素パージしながら65℃で1.0時間保温した。T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、15000rpmで攪拌しながら、イオン交換水10.0部に9.2部の塩化カルシウム(2水和物)を溶解した塩化カルシウム水溶液を一括投入し、分散安定剤を含む水系媒体を調製した。さらに、水系媒体に10質量%塩酸を投入し、pHを5.0に調整し、水系媒体1を得た。
(重合性単量体組成物の調製)
・スチレン :60.0部
・C.I.ピグメントブルー15:3 : 6.5部
前記材料をアトライタ(三井三池化工機株式会社製)に投入し、さらに直径1.7mmのジルコニア粒子を用いて、220rpmで5.0時間分散させた後、ジルコニア粒子を取り除き、着色剤分散液を調製した。
・スチレン :20.0部
・n-ブチルアクリレート :20.0部
・架橋剤(ジビニルベンゼン) : 0.3部
・飽和ポリエステル樹脂 : 5.0部
(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA(2モル付加物)とテレフタル酸との重縮合物(モル比10:12)、ガラス転移温度(Tg)が68℃、重量平均分子量(Mw)が10000、分子量分布(Mw/Mn)が5.12)
・フィッシャートロプシュワックス(融点78℃) : 7.0部
該材料を上記着色剤分散液に加え、65℃に加熱後、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、500rpmで均一に溶解及び分散し、重合性単量体組成物を調製した。
(造粒工程)
水系媒体1の温度を70℃に調整し、T.K.ホモミクサーの回転数を15000rpmに保ちながら、水系媒体1中に重合性単量体組成物を投入し、重合開始剤であるt-ブチルパーオキシピバレート10.0部を添加した。そのまま、該撹拌装置にて15000rpmを維持しつつ10分間造粒した。
(重合工程及び蒸留工程)
造粒工程の後、攪拌機をプロペラ撹拌羽根に換え150rpmで攪拌しながら70℃を保持して5.0時間重合を行い、さらに、85℃に昇温して2.0時間保持することで重合を行った。その後、反応容器の還留管を冷却管に付け替え、得られたスラリーを100℃まで加熱することで、蒸留を6時間行い、未反応の重合性単量体を留去し、樹脂粒子分散液を得た。
(有機ケイ素重合体の形成工程)
撹拌機、温度計を備えた反応容器に、イオン交換水60.0部を秤量し、10質量%の塩酸を用いてpHを4.0に調整した。これを撹拌しながら加熱し、温度を40℃にした。その後、有機ケイ素化合物であるメチルトリエトキシシラン40.0部を添加して2時間以上撹拌して加水分解を行った。加水分解の終点は目視にて油水が分離せず1層になったことで確認を行い、冷却して有機ケイ素化合物の加水分解液を得た。
上記で得られた樹脂粒子分散液の温度を55℃に調整した後、該有機ケイ素化合物の加水分解液を25.0部(有機ケイ素化合物の添加量は10.0部)添加して、有機ケイ素化合物の重合を開始した。そのまま0.25時間保持した後に、3.0%炭酸水素ナトリウム水溶液で、pHを5.5に調整した。55℃で撹拌を継続したまま、1.0時間保持(縮合反応1)した後、3.0%炭酸水素ナトリウム水溶液を用いてpHを9.5に調整し、さらに4.0時間保持(縮合反応2)してトナー粒子分散液を得た。
(洗浄工程及び乾燥工程)
有機ケイ素重合体の形成工程終了後、トナー粒子分散液を冷却し、トナー粒子分散液に塩酸を加えpHを1.5以下に調整して1.0時間、撹拌しながら放置した。その後、加圧ろ過器で固液分離し、トナーケーキを得た。得られたトナーケーキはイオン交換水でリスラリーして再び分散液とした後に、前述のろ過器で固液分離してトナーケーキを得た。得られたトナーケーキを40℃の恒温槽に移し、72時間かけて乾燥及び分級を行い、トナー粒子を得た。
<外添剤Aの製造例>
外添剤Aは以下のように製造した。攪拌機、滴下ノズル、温度計を具備した1.5Lのガラス製反応容器に5%アンモニア水150部を入れて、アルカリ触媒溶液とした。該アルカリ触媒溶液を50℃に調整した後、攪拌しながらテトラエトキシシラン100部と5%アンモニア水50部とを同時に滴下し、8時間反応させてシリカ微粒子分散液を得た。その後、得られたシリカ微粒子分散液を噴霧乾燥により乾燥し、ピンミルで解砕し、外添剤Aとして一次粒子の個数平均粒径が100nmのシリカ微粒子を得た。
<現像剤の製造例>
ジャケット内に7℃の水を通水したヘンシェルミキサ(日本コークス工業株式会社製 FM10C型)中に100.00部のトナー粒子1、及び、1.00部の外添剤Aを投入した。次に、該ジャケット内の水温が7℃±1℃で安定してから、回転羽根の周速を38m/secとして10分間混合した。該混合において、ヘンシェルミキサの槽内温度が25℃を超えないようジャケット内の通水量を適宜調整した。得られた混合物を目開き75μmのメッシュで篩い現像剤を得た。
現像剤の物性を表1に示す。
Figure 0007463221000002
表中、「X」は、外添剤Aの一次粒子の個数平均粒径Rの凸高さHの個数平均値に対する比を表す。製造した現像剤に対してSEMを用いて観察を実施したところ、トナー粒子の有機ケイ素重合体の凸部上に外添剤Aが転写キャリア粒子として配置されていることが確認でき、トナー粒子一個当たりの外添剤Aの平均被覆個数は500個程度であった。
本実施例で用いた現像剤は、上述したように、トナーと転写キャリア粒子の混合物を用いた。一次転写性は感光ドラム1の表面を占める転写キャリア粒子の被覆率の増加に伴ってある程度向上する。しかし、感光ドラム1の表面を占める転写キャリア粒子の被覆率が増加するにつれ、一次転写性の向上度合いが鈍化し、転写キャリア粒子による画像形成装置内汚染の各種部材汚染のリスクが高まる。そのため、転写キャリア粒子の感光ドラム1の表面を占める被覆率は80%以内にしておくことが好ましい。
8.転写キャリアの供給について
次に、感光ドラム1上への転写キャリア粒子の供給手段について説明する。
転写キャリア粒子とは、上述したように、感光ドラム1上に現像されたトナー像と感光ドラム1との間に介在することで、トナー像と感光ドラム1との間の付着力を低減してトナー像の一次転写効率を向上させる役割を有する粒子のことを言う。
本実施例では、トナー像が現像される前に現像ローラ22に担持されたトナーを用いて、感光ドラム1の表面に予め転写キャリア粒子を供給する。前もって感光ドラム1上を転写キャリア粒子で被膜することで、トナー像と感光ドラム1との間に転写キャリア粒子を介在させる。
図12(a)は、現像ローラ22と感光ドラム1の当接時における現像ニップ部の模式図である。図12(a)に示すように、現像ニップ部では現像ローラ22上に担持されたトナーと感光ドラム1が転写キャリア粒子を介して接触している。図12(b)は、図12(a)で示した現像ローラ22に担持されたトナーと感光ドラム1が現像ニップ部を通過した後の状態を示した模式図である。図12(b)に示すように、現像ニップ部でトナーと感光ドラム1との間に介在していた転写キャリア粒子は、現像ニップ部通過後に現像ローラ22に担持されたトナーの表面上から感光ドラム1の表面に転移することで供給される。
図12(a)に示すように、現像ニップ部でトナーと感光ドラム1との間に介在する転写キャリア粒子とトナー間の付着力Ftが、転写キャリア粒子と感光ドラム1間の付着力Fdrよりも大きい場合には、転写キャリア粒子は感光ドラム1上に転移しづらい。そのため、FtがFdrよりも小さいことが好ましい。
図13(a)は、トナー像が感光ドラム1の表面に担持されている場合の一次転写部の模式図である。図13(b)は、図13(a)で示したトナー像の一次転写が終了して感光ドラム1と中間転写ベルト10が分離した状態の模式図である。FtがFdrよりも小さい場合、トナー像が感光ドラム1から中間転写ベルト10の表面上に一次転写する際に、トナー像のみ中間転写ベルト10上に一次転写し、トナー像と感光ドラム1との間に介在する転写キャリア粒子は感光ドラム1上に残留する。
仮に、トナー像と共にトナー像と感光ドラム1との間に介在する転写キャリア粒子が中間転写ベルト10に一次転写し、感光ドラム1の表面上から転写キャリア粒子が失われた場合を考える。その際には、次に感光ドラム1の表面上に現像するトナー像と感光ドラム1との間に転写キャリア粒子が介在せずトナー像と感光ドラム1との間の付着力が大きいため、一次転写性が低下してしまうこととなる。
したがって、現像ローラ22に担持されたトナー上から感光ドラム1へと転写キャリア粒子を供給し易くなるだけではなく、感光ドラム1上に被膜された転写キャリア粒子を維持する観点からも、FtがFdrよりも小さいことが好ましい。
図14は、本実施例で用いた画像形成装置100のプリント動作のタイミングチャートである。図14に示すように、本実施例の画像形成装置100は画像形成動作中において、現像ローラ22から感光ドラム1へとトナーの現像を開始する前に、現像ローラ22と感光ドラム1が当接状態で回転駆動する。それにより、現像ローラ22から感光ドラム1へと転写キャリア粒子を供給するタイミング(転写キャリア供給モード)を設けている。転写キャリア供給モードは、画像形成のタイミング以外で実行されればよく、例えば、画像形成動作の前に行われる前回転動作や、画像形成動作の後に行われる後回転動作で実行される。
感光ドラム1の表面全体に亘ってトナー像の一次転写効率を向上させるために、トナー像の現像を開始する前までに、感光ドラム1の表面全体を転写キャリア粒子で被膜する。そのために、転写キャリア粒子の供給タイミングの時間は感光ドラム1を1周以上回転させる時間に設定するのが好ましい。そのため、本実施例では、感光ドラム1の表面全体に転写キャリア粒子を被膜出来るように、図14に示す転写キャリア粒子供給タイミングの長さを感光ドラム1が1周する時間と略同じ500msecに設定している。
また、本実施例では、図14に示す転写キャリア粒子供給タイミングにおいて感光ドラム1の表面電位を正規極性に帯電したトナーが現像しない非画像形成電位Vd=-500Vにしている。そのため、本実施例の転写キャリア粒子の供給タイミングでは、正規極性が負極性であるトナーは現像ローラ22から感光ドラム1の表面に現像せず、転写キャリア粒子のみが現像ローラ22から感光ドラム1上へと供給される。
本実施例のように、現像ローラ22と感光ドラム1との間で電位差がある状態で現像ローラ22上のトナーから感光ドラム1に転写キャリア粒子を供給する場合には以下の問題がある。転写キャリア粒子の粒径が大きすぎると、転写キャリア粒子が現像ローラ22と感光ドラム1との間の電位差により生じる静電的な力の影響を受けやすい。そのため、現像ローラ22上のトナーから感光ドラム1への転写キャリア粒子の供給を制御することが難しくなる。例えば、本実施例のように、非画像形成電位にて転写キャリア粒子を供給する構成において、転写キャリア粒子が負極性に帯電している場合、現像ローラ22側に転写キャリア粒子が静電力で引き付けられる。したがって、転写キャリア粒子を現像ローラ22上のトナーから感光ドラム1へ供給しづらくなる。ここで、転写キャリア粒子の粒径は、静電的な力の影響を受けづらい1000nm以下にしておくことが好ましい。本実施例では、現像ローラ22と感光ドラム1との間の電位差に関係なく安定して現像ローラ22上のトナーから感光ドラム1の表面に転写キャリア粒子を供給するため、転写キャリア粒子として粒径100nmの粒子を用いている。
9.特徴及び作用効果
次に、本実施例の特徴について以下に述べる。転写キャリア粒子とトナーとの間の付着力であるFtと、転写キャリア粒子と感光ドラム1との間の付着力Fdrとにおいて、Ft<Fdrとする。そして、上記関係による転写キャリア粒子の感光ドラム1への供給量を、以下のように制御する。少なくとも二つのプロセスカートリッジ間で、中間転写体10の搬送方向に対して上流のプロセスカートリッジよりも下流のプロセスカートリッジにおける転写キャリア粒子の供給量を多くする。実施例1は、画像形成装置100の起動に伴う準備動作時の現像ローラ22と感光ドラム1との当接時間をプロセスカートリッジごとに変えることが特徴である。転写キャリア粒子を感光ドラム1の表面に供給する動作を、転写キャリア供給動作と呼ぶ。
感光ドラム1を被覆する転写キャリア粒子は、多い方がトナーと感光ドラム1との直接の接触数が少なくなるため一次転写性の向上の観点から好ましい。特に、高印字の複数色の一次転写効率を向上させるためには、多量の転写キャリア粒子が感光ドラム1上に付着している状態が好ましい。本実施例の現像剤を用いることによって、一次転写工程において、多くの転写キャリア粒子は感光ドラム1上にFt<Fdrの関係によって概ね残留する。しかし、感光ドラム1の表面にさらに多量の転写キャリア粒子が付着している場合には、感光ドラム1との付着力の関係ではなく、転写キャリア同士の付着力で転写キャリア粒子の行き先が決まってしまう。つまり、一部はFtとFdrの関係が、見かけ上Ft≧Fdrとなり、トナーと共に一次転写、二次転写されて記録材P上に移行することがある。また、先述の式(1)で表される部分構造を有する有機ケイ素重合体を含有する凸部と凸部の間のトナー母体と転写キャリア粒子が接触する場合は、Ft≧Fdrになる場合がある。すると、転写キャリア粒子が一部トナーと共に一次転写、二次転写され、記録材P上に移行する。特に、感光ドラム1上の転写キャリア粒子が多い場合、トナー母体と接触する機会が増加するため、より多く記録材P上に移行する。その結果、記録材上の高印字の複数色トナーを定着する際に転写キャリア粒子がトナーへの熱伝導を阻害して定着性を悪化させる課題が発生する。
そこで、本実施例では、転写キャリア粒子の感光ドラム1への供給量(すなわち付着量)を、プロセスカートリッジ間で中間転写体10の搬送方向に対して上流のプロセスカートリッジよりも下流のプロセスカートリッジを多くする。それにより、記録材P上に移行する転写キャリア粒子の量を抑えて定着性への影響を少なくし、かつ各プロセスカートリッジに必要な一次転写性を満足させることが出来る。下流のプロセスカートリッジは上流のプロセスカートリッジで印字した中間転写ベルト10上のトナー層の上にトナーを転写する必要があるため、上流のプロセスカートリッジに比べて転写しづらくなる。したがって、下流のプロセスカートリッジほど一次転写性を向上させるために転写キャリア粒子が必要になる。その必要な転写性に合わせて転写キャリア粒子を供給すれば、一次転写性と定着性の両立を図ることが可能になる。
本実施例では、上記の感光ドラム1の表面状態を実現するために、以下の制御を行う。画像形成装置100の起動時の準備動作である前回転動作時において、中間転写体10の搬送方向に対して上流のプロセスカートリッジよりも下流のプロセスカートリッジの現像ローラ22の感光ドラム1への当接時間を長くする。図1を用いて詳細に説明する。
図1は、画像形成装置100の起動に伴う準備動作時における各プロセスカートリッジの現像ローラ22の回転駆動および現像当接のタイミングチャートになっており、現像ローラ22の当接時間はT前多で表している。
まず、各プロセスカートリッジに共通する内容について説明する。いずれのプロセスカートリッジも画像形成装置100の起動後に現像ローラ22の回転が始まる。回転駆動の立ち上げ中は、感光ドラム駆動部110、現像駆動部130たるモータの回転速度が不安定であるため、モータの回転及び現像ローラ22の回転が安定した後に、現像ローラ22を感光ドラム1へ当接させている。この現像当接時間T前多に、現像ローラ22上のトナー層の安定化を行っている。その後、現像ローラ22を感光ドラム1から離間して、現像ローラ22の回転駆動を終了する。
この現像ローラ22の当接時間T前多を、Sa、Sb、Scに対してSdの現像ローラ22の当接時間を長くする。それによって、感光ドラム1上の転写キャリア粒子の付着面積(量)を、中間転写ベルト10の搬送方向において上流に比べて下流の方が多くすることが出来る。転写キャリア粒子の供給タイミングの時間は、感光ドラム1が1周する以上の時間に設定するのが好ましい。本実施例では、T前多がSa、Sb、Scは500ms(感光ドラム1が1周以上)、Sdは1000ms(感光ドラム1が2周以上)の時間当接させることで転写キャリア粒子を供給している。
本実施例では、転写キャリア粒子供給タイミングである画像形成装置100の前回転動作時において、現像当接時間T前多中に正規帯電極性に帯電したトナーが現像しないように、感光ドラム1の表面電位を調整している。転写キャリア供給動作における感光ドラム1の表面電位を非画像形成電位Vd=-500V、現像ローラ22に印加する現像電圧Vdc=-300Vにしている。そのため、本実施例の転写キャリア供給動作においては、現像ローラ22から感光ドラム1へとトナーは現像せず、転写キャリア粒子のみが現像ローラ22から感光ドラム1上へと供給される。
本実施例では、感光ドラム1の表面全周に転写キャリア粒子が付着している場合を100%とした際に、以下の付着面積率としている。転写キャリア供給動作により、Sa、Sb、Scにおける感光ドラム1上に占める転写キャリア粒子の付着面積率は15~25%に制御され、Sdの付着面積率は45%程度に制御している。
以上、感光ドラム1上に占める転写キャリア粒子の付着面積率について述べた。ここで、転写キャリア粒子は感光ドラム1上に略均一に付着していることが望ましい。仮に、付着面積率自体は先述の値の範囲であっても、局所的に付着している場合などは所望の一次転写性を満足できない部分が発生してしまうため、略均一な付着状態である必要がある。そこで、本実施例においては付着状態の数値化としてクラーク・エバンス指数(CEI)で評価を行っている。本実施例におけるクラーク・エバンス指数はいずれのステーションでも0.80から1.30の範囲に収まっていた。
CEIが1より小さい場合は集中分布(凝集度合いが大きい)、CEIが1に等しい場合はポアソン分布(ランダム分布)、CEIが1より大きい場合は規則分布(一定間隔に分布している)となる。CEIの限界値は2.1程度である。
なお、感光ドラム1上のいずれの箇所でも所望の一次転写性を満足させるためには、クラーク・エバンス指数としては0.60以上であることが好ましい。それ以下の場合、局所的な付着状態になるため、一部での一次転写性が低下してしまい好ましくない。
付着面積率、付着状態(クラークエバンス指数)、付着力の測定方法および付着力の検証結果については後述する。
10.各種パラメータの測定、検証方法
次に、パラメータの測定、検証方法について説明する。
(1) 感光ドラム1上の転写キャリア粒子の付着面積率
感光ドラム1の表面を顕微鏡で観察し、感光ドラム1の表面に占める転写キャリア粒子の被膜率を算出した。具体的には、感光ドラム1の表面をレーザー顕微鏡(VK-X200 キーエンス)によって、倍率3000倍で観察する。観察する画像に対し、転写キャリア粒子の部分とそれ以外の部分とで明確に差が出るコントラストで二値化処理を行い、感光ドラム1表面に占める転写キャリア粒子の総面積率を、感光ドラム1の表面の転写キャリア粒子の被膜率として算出した。
(2) 感光ドラム1上の転写キャリア粒子の付着状態(クラークエバンス指数)
感光ドラム1の表面を顕微鏡で観察し、感光ドラム1の表面における転写キャリア粒子の付着状態(クラーク・エバンス指数)を算出した。具体的には、(1)と同様に、感光ドラム1の表面をレーザー顕微鏡(VK-X200 キーエンス)によって、倍率3000倍で観察する。観察する画像に対し、転写キャリア粒子の部分とそれ以外の部分とで明確に差が出るコントラストで二値化処理を行う。二値化処理を行った画像の各粒子に対して、座標を算出したのち、全粒子の最近接重心間距離の平均rを計算する。クラーク・エバンス指数(CEI)は、ポアソン分布をしている粒子の最近接重心間距離の期待値をE(r)としたとき、CEI=r/E(r)で定義され、その値をクラーク・エバンス指数として算出した。
(3) 付着力測定方法
本実施例で用いた転写キャリア粒子とトナーとの付着力を、SPMを用いて測定した。具体的には、レバー先端に転写キャリア粒子を固定したカンチレバーを作成し、カンチレバーを所定の押圧力でトナーに押圧する。その後、カンチレバーをトナーから脱離させるのに必要な力を転写キャリア粒子とトナー間との付着力Ftとして測定した。
付着力測定時のカンチレバーをトナーに押圧する所定の押圧力は、現像ニップ部においてトナーと感光ドラム1との間に介在する転写キャリア粒子がトナーに対して押圧される力に設定することが好ましい。以下に説明する計算方法で押圧力を算出した。ここで、「現像ニップ部においてトナーと感光ドラム1との間に転写キャリアが介在する」とは、転写キャリア粒子がトナーと感光ドラム1の両方に同時に接触している状態のことをいう。
まず、計算を行うにあたり、仮定した条件を図15と図16を用いて説明する。図15(a)は現像ニップ部の模式図であり、現像ニップ部において現像ローラ22と感光ドラム1はトナーを介して接触しているものと仮定した。また、図15(b)は、図15(a)の点線ABにおける感光ドラム1の表面と平行な断面を示したもので、感光ドラム1と接触しているトナーは斜線部に示すように最密充填しているものと仮定した。図16は、図15の点線で囲ったトナーと感光ドラム1の接触部を拡大した模式図である。図16に示すように、トナーと感光ドラム1は転写キャリア粒子を介して接触しているものと仮定した。また、感光ドラム1の表面上には転写キャリア粒子がまだ供給されておらず、感光ドラム1の表面上には予め転写キャリア粒子が存在していない状態とした。
以上のような仮定を行った上で、現像ニップ部にてトナーと感光ドラム1との間に介在する転写キャリア粒子の総数Nを計算で以下のように算出した。算出したNと現像ローラ22と感光ドラム1との当接力Fより、現像部における転写キャリア1個当たりのトナーに対する押圧力であるF/Nを算出し、算出したF/Nを付着力測定時のカンチレバーのトナーに対する所定の押圧力として採用した。
まず、現像ニップ部においてトナーと感光ドラム1との間に介在する転写キャリア粒子の総数Nの計算方法について説明する。
図17(a)は現像部におけるトナー、転写キャリア粒子、感光ドラム1の接触状態を二次元で示した模式図である。図17(b)に示すように、転写キャリア粒子の粒径をrとすると、感光ドラム1とトナー表面との距離がrを超えるとトナー上の転写キャリア粒子は感光ドラム1とほぼ接触しなくなる。従って、トナー円周上に配置された転写キャリア粒子が感光ドラム1と接触可能であるトナー円周部分はAからBを結んだ円弧上になる。実際は、図17(b)のようにトナーを球として考える必要があり、円弧ABを円周方向に積分した表面積(図17(b)の斜線部)がトナー表面積に占める比率を求める必要がある。斜線部の表面積は球冠の表面積として一般的に求めることができ、式(2)のようになる。したがって、トナー表面積に占める比率は式(3)のようになる。トナーの平均粒径R、転写キャリア粒子の粒径rより実際の数値は算出出来る。
Figure 0007463221000003
上記計算により、本実施例の構成における円弧ABがトナー円周部に占める比率は約1.43%と計算される。
従って、現像ニップ部において転写キャリア粒子がトナーと感光ドラム1との間に介在するのはトナー全表面のうちの約1.43%の領域であるとすることが出来る。そして、トナー1個当たりに被覆されている転写キャリア粒子の個数は500個である。以上から、トナー1個当たりに対するトナーと感光ドラム1間に介在する転写キャリア粒子の個数Mは「500個×1.43%」で計算され、約7.2個となる。
そして、トナー1個当たりに対するトナーと感光ドラム1との間に介在する転写キャリア粒子の個数7.2個に現像部で感光ドラム1と接触しているトナーの総数を乗算する。すると、現像ニップ部でトナーと感光ドラム1との間に介在している転写キャリア粒子の総数Nを算出することが出来る。
現像ニップ部で感光ドラム1と接触しているトナーの総数Lは「現像ニップ部の面積×トナーの充填率)/トナーの最大断面積」で計算出来る。
(現像ニップ部で感光ドラム1と接触しているトナーの総数)
=(220[mm]×2.0[mm]×π/√12)/(π×(7.0/2)
=約10.37×10
(二次元の円の最密充填率であるπ/√12≒0.9069、を用いた。)
従って、「現像ニップ部においてトナーと感光ドラム1間に介在している転写キャリアの総数N」は、以下のように算出される。これまで算出した「現像ニップ部で感光ドラム1と接触しているトナーの総数」と「トナー1個当たりに対するトナーと感光ドラム1との間に介在する転写キャリア粒子の個数」の乗算より算出され、総数Nは約7.47×10個となる。
本実施例における現像ローラ22の感光ドラム1への押圧力はF=200gfであるため、「現像部における転写キャリア一個当たりのトナーに対する押圧力」であるF/Nは26.3nNと求まる。以上求めたF/Nの値を、SPMによる付着力測定時のカンチレバーをトナーに押圧する所定の押圧力として採用した。カンチレバーをトナーに押圧する所定圧における転写キャリア粒子とトナーの凸部との間の付着力は32.8(nN)であった。さらに、転写キャリア粒子と感光ドラム1との間の付着力は210.1(nN)、転写キャリア粒子とトナーの母体間の付着力は250.7(nN)であった。すなわち、転写キャリア粒子とトナーの凸部との間の付着力が転写キャリア粒子と感光ドラム1との間の付着力よりも小さく、転写キャリア粒子とトナーの母体間の付着力が転写キャリア粒子と感光ドラム1との間の付着力よりも大きいことが確認出来た。
11.効果確認
本実施例の効果を確認する目的で、以下の条件において、実施例の構成、および比較例1の構成の一次転写性と定着性について検証を行った。画像形成装置100にHP Color LaserJet Pro M452dw(HP社、商品名)を、記録材PにCS-680(キヤノンマーケティングジャパン、商品名)を用いた。
一次転写性の検証は、HP Color LaserJet Pro M452dwに同梱されているプロセスカートリッジのクリーニングブレードを取り外して行った。一次転写残トナーが、現像ローラ22を通過する時に回収しきれずに感光ドラム1の一周後にゴースト画像として顕在化する画像不良(以下、クリーナーレスゴーストとする)の発生有無で評価を行うためである。定着性の検証は、記録材Pへトナーが完璧に定着しきらず、オフセットしてしまう画像不良(以下、コールドオフセットとする)の発生有無で評価を行った。なお、どちらも検証を簡単にするために、シアン(Sc)ステーションとブラック(Sd)ステーションを用いた二次色のベタ黒画像で評価を行った。
実施例1の構成は、先に述べたように、中間転写ベルト10の搬送方向に対して相対的に上流のプロセスカートリッジであるScの感光ドラム1上の転写キャリア粒子の付着面積率を20%としている。そして、下流のプロセスカートリッジであるSdの感光ドラム1上の転写キャリア粒子の付着面積率が45%という構成である。
一方、比較例1の構成は、上流のプロセスカートリッジであるScの感光ドラム1上の転写キャリア粒子の付着面積率が45%、下流のプロセスカートリッジであるSdの感光ドラム1上の転写キャリア粒子の付着面積率が20%という構成である。比較例2は、Sc、Sd共に感光ドラム1上の転写キャリア粒子の付着面積率が45%とした。
表2に、実施例1及び比較例1のクリーナーレスゴースト(一次転写性)の発生有無とコールドオフセット(定着性)の発生有無をまとめた。表中のOKは画像不良の発生無し、NGは画像不良の発生を表している。
Figure 0007463221000004
実施例1は、表2にあるように、中間転写ベルト10の搬送方向に対して上流のScの感光ドラム1上の転写キャリア粒子の付着面積率より、下流のSdの感光ドラム1上の転写キャリア粒子の付着面積率を高くしている。上流のプロセスカートリッジScはシアン単色の100%の印字量を一次転写できれば良い。したがって、下流のプロセスカートリッジSdと比較して付着面積率は低くてもクリーナーレスゴーストは発生せず、一次転写性は良好であった。一方、下流のプロセスカートリッジSdは、既に中間転写ベルト10上に形成されたシアンのベタ黒画像の上にブラックのトナーを転写する必要がある。そのため、上流のプロセスカートリッジScに比べて下流のプロセスカートリッジの付着面積率を高くしている。これにより、Scと同様にクリーナーレスゴーストは発生せず、一次転写性は良好であった。また、実施例1においては、定着性に関しても、転写キャリア粒子が転写されることを抑制した構成であるため、コールドオフセットの発生はなかった。
一方、比較例1の構成は、中間転写ベルト10の搬送方向に対して上流のScの感光ドラム1上の転写キャリア粒子の付着面積率より、下流のSdの感光ドラム1上の転写キャリア粒子の付着面積率を低くしている。まず、定着性に関しては、実施例1と付着総量が同様なため、コールドオフセットの発生はなかった。また、転写キャリア粒子の付着面積率の高いScは実施例1よりも付着面積率が高いため、クリーナーレスゴーストは発生せず、一次転写性は良好であった。しかしながら、Sdは実施例1よりも付着面積率が低いため、十分な一次転写性を発揮することが出来ず、クリーナーレスゴーストが発生する結果となった。
また、比較例2の構成においては、中間転写ベルト10の搬送方向に対して上流のScの感光ドラム1上の転写キャリア粒子の付着面積率と、下流のSdの感光ドラム1上の転写キャリア粒子の付着面積率を同じとしている。さらに、付着面積率は共に45%としているため、転写性を高める構成と言える。表2の結果から、比較例2は、転写性の問題は無いが、定着性においてコールドオフセットが発生した。これは、転写キャリア粒子が記録材Pに許容量以上に転写されて定着を阻害したものと考えられる。
実施例1の構成は、以下に記載の特徴を有する。
第1の画像形成部であるイエローステーションは、回転可能な第1の感光ドラム1aと、第1のトナー粒子及び第1のトナー粒子の表面に付着するキャリア粒子により構成される第1の現像剤を担持する回転可能な第1の現像ローラ22aを有する。現像ローラ22aは、第1の感光ドラム1aと接触して第1の現像部を形成し、第1の現像部において第1の感光ドラム1aの表面に第1の現像剤像を形成するために第1の現像剤を供給する。
第2の画像形成部であるマゼンタステーションは、回転可能な第2の感光ドラム1bと、第2のトナー粒子及び第2のトナー粒子の表面に付着するキャリア粒子により構成される第2の現像剤を担持する回転可能な第2の現像ローラ22bを有する。現像ローラ22bは、第2の感光ドラム1bと接触して第2の現像部を形成し、第2の現像部において第2の感光ドラム1bの表面に第2の現像剤像を形成するために第2の現像剤を供給する。
第1の感光ドラム1aと接触して第1の当接部である一次転写部を形成し、第2の感光ドラム1bと接触して第2の当接部である一次転写部を形成する中間転写ベルト10を有する。中間転写ベルト10は、第1の当接部において第1の現像剤像が転写され、第2の当接部において第2の現像剤像が転写される。
中間転写ベルト10と接触して二次転写部を形成し、二次転写部において中間転写ベルト10の表面に形成された第1の現像剤像と第2の現像剤像とを記録材に転写する二次転写ローラ20を有する。
第1の感光ドラム1aが回転した状態で、第1の現像部において、第1の現像ローラ22aの表面に担持されたキャリア粒子を第1の感光ドラム1の表面に供給することが可能である。第2の感光ドラム1bが回転した状態で、第2の現像部において、第2の現像ローラ22bの表面に担持されたキャリア粒子を第2の感光ドラム1bの表面に供給することが可能である。
中間転写ベルト10の表面は移動可能であって、中間転写ベルト10の移動方向において、二次転写部の下流であって、第2の当接部の上流に第1の当接部が形成されるように、第1の画像形成部と第2の画像形成部と、が配置される。
現像ローラ22を感光ドラム1に押圧する押圧力をF、トナー粒子と感光ドラム1との間に介在するキャリア粒子の総数をN、とする。
キャリア粒子を単位キャリア粒子当たりの押圧力であるF/Nでトナー粒子に押圧した際に測定されるキャリア粒子とトナー粒子との間に形成される付着力をFtとする。キャリア粒子をF/Nで感光ドラム1に押圧した際に測定されるキャリア粒子と感光ドラム1との間に形成される付着力Fdrとする。本実施例におけるFtとFdrとの関係が、Ft≦Fdrを満たす。
感光ドラム1と現像ローラ22と、がそれぞれ接触した状態で、感光ドラム1が回転した後において、第2の感光ドラム1bの表面に付着したキャリア粒子の付着面積が、第1の感光ドラム1aの表面に付着したキャリア粒子の付着面積に比べて大きい。
また、感光ドラム1と第2の現像ローラ22と、が接触した状態で、感光ドラム1が回転した後におけるキャリア粒子の分布状態は均一であり、クラーク・エバンス指数で0.6以上である。
したがって、上記説明した通り、本実施例の構成において、転写効率を向上させるために感光ドラム1表面に十分な量の微粒子を供給しつつ、微粒子による定着阻害を抑制することが出来る。
本実施例においては、画像形成装置の起動に伴う準備動作時に、現像ローラ22の感光ドラム1への当接時間を中間転写ベルト10の搬送方向の上流に対して下流を長くしたものの、上記実施例に限らない。具体的には、本実施例の(イ)画像形成装置の起動に伴う準備動作(前回転動作)時、に限らず、(ロ)プリント動作時の作像前の回転動作、(ハ)プリント動作時の作像後の回転動作(後回転動作)、において現像当接時間をコントロールしても良い。または、(イ)、(ロ)、(ハ)のすべて、あるいは組み合わせでもよい。
例えば、図18に(ハ)プリント動作時の作像後の回転動作、において現像当接時間をコントロールする場合の回転駆動および現像当接のタイミングチャートを示す。具体的には、プリント動作時のScステーションとSdステーションの現像ローラ22の回転駆動と現像当接のタイミングチャートを示している。いずれのステーションもプリント信号を受け取ってから一定時間後に現像ローラ22の回転駆動が開始する。モータの回転駆動が安定してから現像当接を開始し、作像開始までに現像ローラ22上のトナー層を安定化させる(T)。そのあと、作像を開始し作像を終了させる(T作像)。作像後の現像ローラ22上のトナー層の状態は帯電量、コート量ともに画像パターンによって異なるので、均一な状態に戻すために作像終了後も現像ローラ22を一定時間回転させている(T)。この作像後の回転動作の時間を変えることで、感光ドラム1上の転写キャリア粒子の付着状態をコントロールすればよい。図18では、ScのTを500ms(感光ドラム1の1周以上)、SdのTを1000ms(感光ドラム1の2周以上)と設定している。それによって、中間転写ベルト10の搬送方向に対して上流より下流のほうが、感光ドラム1上の転写キャリア粒子の量を多くしている。このようにして、本実施例と同様の作用効果を得ることが出来る。
本実施例においては、Sa、Sb、Scに比べてSdの転写キャリア粒子の付着面積率を高くしたものの、上記実施例の構成に限らない。各色トナー単体の転写性能に合わせて、Sa~Sdのうち少なくとも2つのプロセスカートリッジの間で(上流のプロセスカートリッジの転写キャリア粒子付着面積率)<(下流のプロセスカートリッジの転写キャリア粒子付着面積率)の関係を満たせばよい。転写キャリア粒子の付着面積率を上流から下流にかけて徐々に増やしてもよく、Sa<Sb<Sc<Sdとしてもよい。
実施例2における構成について、実施例1と共通する部材・部分には同じ符号を付して再度の説明を省略する。
本実施例の特徴は、トナーに付着している転写キャリア粒子の量を各ステーションで変えることである。実施例2の特徴であるトナーに付着している転写キャリアの量をステーションで変えて供給する手段及び、実施例2における特有の作用効果について、以下で詳しく説明する。
1.特徴及び作用効果
実施例2における特徴及び作用効果は3つある。
一つ目の特徴は、実施例1と同様に、「転写キャリア粒子とトナーとの間の付着力Ft」と「転写キャリア粒子と感光ドラム1との間の付着力Fdr」におけるFt<Fdrの関係によって、転写キャリア粒子を感光ドラム1の表面に供給することである。このようにすることで、転写キャリア粒子を感光ドラム1の表面に介在させることができ、トナーを感光ドラム1と接触させないことによりトナーの付着力を下げている。その結果、一次転写工程における一次転写性を向上させる作用効果を得ている。
二つ目の特徴は、転写キャリアの供給量(付着量)を、中間転写ベルト10の搬送方向に対して上流ステーションよりも下流ステーションの方が多くなるように調整することである。高い一次転写性が求められる下流ステーションでは、転写キャリア粒子を上流ステー所に比べて多く供給して一次転写性を向上させる。一方、それほど高い一次転写性が求められない上流ステーションでは、転写キャリア粒子の供給量を少なくしている。その結果、記録材P上のトナー中の転写キャリア粒子の総量を必要最低限にすることが出来、定着性の影響を小さくする作用効果を得ている。
上記二つの特徴及び作用効果は実施例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
三つ目の特徴は、転写キャリア粒子の供給をステーションごとに変える手段が、トナーに付着している転写キャリア粒子の量をステーションごとに変えることである。実施例1では、ステーションによらず転写キャリア粒子の添加量を転写キャリア粒子のトナー1個当たりに対する被覆個数が500個程度になるように調整した。実施例2では、下記の表3のように、Saステーションは300個、Sbステーションは400個、Scステーションは500個、Sdステーションは600個程度になるように、ステーションごとにトナー1個あたりの転写キャリア粒子の添加量を調整した。このとき、実施例1で説明した通り、現像ニップ部において転写キャリア粒子がトナーと感光ドラム1との間に介在するのは、トナー全表面のうちの約1.43%である。そのため、トナー1個当たりに対するトナーと感光ドラム1との間に介在する転写キャリア粒子の個数Mも表3のようになる。それにより、感光ドラム1上への転写キャリア粒子の供給量を、中間転写ベルト10の搬送方向に対して上流ステーションよりも下流ステーションで多くすることが出来ている。
なお、本実施例では、転写キャリア供給動作の実行タイミングは、図19のようにプリント動作時の現像当接時間であり、各ステーションで共通である。
本実施例における、三つ目の特徴に関する作用効果について述べる。
本実施例では、転写キャリア粒子の供給時間をステーションごとに変えることなく、転写キャリア粒子の感光ドラム1上への供給量を、中間転写ベルト10の搬送方向に対して上流ステーションよりも下流ステーションで多くする。そのため、一回のプリント動作の転写キャリア粒子の供給動作時間を最低限にすることが出来る。その結果、1回のプリント動作にかかる時間を低減し、生産性を向上することが可能になる。
Figure 0007463221000005
説明した通り、転写効率を向上させるために感光ドラム1の表面に十分な量の微粒子を供給しつつ、微粒子による定着阻害を抑制することが出来る。
実施例1、2では、現像ローラ22と感光ドラム1との当接時の回転において周速差を設けていないものの、上記実施例に限らず、感光ドラム1の回転に対して現像ローラ22の回転に周速差を設けても良い。このような周速差は、現像するトナー量を安定させる役割や、現像ローラ22上のコートの微小な不均一さを感光ドラム1上では隠して見えづらくさせる役割を有する。また、本実施の転写キャリア粒子の供給においても下記のような作用を有する。
図20(a)は、現像ローラ22と感光ドラム1との間を非画像形成電位関係に設定した場合の現像ニップ部のトナーと転写キャリア粒子の挙動を示す模式図である。図20(a)に示すように、現像ローラ22と感光ドラム1との間に周速度差を設けたことで、以下のような現象が生じる。現像ローラ22と感光ドラム1との間に介在しているトナーが、現像ローラ22から受ける現像ローラ22の回転方向に平行な力をf1とする。現像ローラ22と感光ドラム1との間に介在しているトナーが感光ドラム1から受ける感光ドラム1の回転方向に平行な力f2とする。実施例1、2、3に記載した条件では、f1とf2の釣り合いが取れていたのに対し、実施例1、2、3の構成においてはf1とf2との釣り合いが崩れ、現像ニップ部においてトナーが転動する。そして、トナーが転動することで、感光ドラム1と接触していないトナー上の転写キャリア粒子もトナーの転動に伴って移動する。そのため、感光ドラム1と接触することが出来ることによって、トナー上から感光ドラム1の表面への転写キャリア粒子の供給機会が増加する。したがって、図18(b)に示すように、現像ニップ通過後の感光ドラム1の表面上には、実施例1、2、3と比較してもより多くの転写キャリア粒子を現像ローラ22のトナー上から供給することが出来る。
図21(a)は、現像ローラ22と感光ドラム1との間を画像形成電位関係に設定した場合の現像ニップ部のトナーと転写キャリア粒子の挙動を示す模式図である。図21(a)に示すように、現像ローラ22と感光ドラム1との間を画像形成電位関係に設定した場合でも、現像ローラ22と感光ドラム1との間に周速度差を設けたことにより、以下の現象が生じる。現像ニップ部でトナーが転動し、現像ニップ部内でのトナーの表面上から感光ドラム1の表面上への転写キャリア粒子の供給効率が向上する。そして、図21(b)に示すように、現像ローラ22と感光ドラム1との間を画像形成電位関係に設定しているため、現像ニップ部通過後には、トナーが現像ローラ22から感光ドラム1の表面に現像される。しかし、現像ニップ部通過時のトナーの表面から感光ドラム1の表面への転写キャリア粒子の供給効率が向上したことで、感光ドラム1の表面上に現像したトナーと感光ドラム1との間に転写キャリア粒子を多く介在させることが出来る。
以上から、実施例2においては、感光ドラム1を駆動する第1の駆動部110と、現像ローラ22を駆動する第2の駆動部130と、第1の駆動部と第2の駆動部と、を制御する制御部200と、を有する。制御部200は、現像部において、現像ローラ22の表面移動速度と感光ドラム1の表面移動速度とが異なる表面移動速度を有するように、第1の駆動部と第2の駆動部と、を制御することを特徴とする。
実施例3における構成について、実施例1、2と共通する部材・部分には同じ符号を付して再度の説明を省略する。
本実施例の特徴は、現像周速差を設けつつ、現像ブレード23を通過後の現像ローラ22にコートされているトナー量をステーションごとに変えることである。実施例3において、転写キャリアの供給量を制御することが出来るメカニズム及び、実施例3の作用効果について、以下で詳しく説明する。
1.特徴及び作用効果
実施例3においては、特徴及び作用効果が3つある。
一つ目の特徴は、実施例1と同様に、「転写キャリア粒子とトナーとの間の付着力Ft」と「転写キャリア粒子と感光ドラム1との間の付着力Fdr」におけるFt<Fdrの関係によって、転写キャリア粒子を感光ドラム1の表面に供給することである。このようにすることで、転写キャリア粒子を感光ドラム1の表面に介在させることができ、トナーを感光ドラム1と接触させないことによりトナーの付着力を下げている。その結果、一次転写工程における一次転写性を向上させる作用効果を得ている。
二つ目の特徴は、転写キャリアの供給量(付着量)を、中間転写ベルト10の搬送方向に対して上流ステーションよりも下流ステーションの方が多くなるように調整することである。高い一次転写性が求められる下流ステーションでは、転写キャリア粒子を上流ステー所に比べて多く供給して一次転写性を向上させる。一方、それほど高い一次転写性が求められない上流ステーションでは、転写キャリア粒子の供給量を少なくしている。その結果、記録材P上のトナー中の転写キャリア粒子の総量を必要最低限にすることができ、定着性の影響を小さくする作用効果を得ている。
上記二つの特徴及び作用効果は実施例1、2と同様であるため、詳細な説明は省略する。
3つ目の特徴は、現像周速差を設けつつ、現像ブレード23を通過後の現像ローラ22の表面にコートされているトナー量をステーションごとに変えることである。現像ローラ22の表面にコートされているトナー量を、中間転写ベルト10の搬送方向に対して上流ステーションよりも下流ステーションで多くする。このとき、転写キャリアの供給量(付着量)を中間転写ベルト10の搬送方向に対して、上流ステーションよりも下流ステーションで多くすることが出来る。
実施例2でも述べたように、現像ローラ22と感光ドラム1に周速差を設けると、以下のような現象が生じる。現像ローラ22と感光ドラムとの1間に介在しているトナーが、現像ローラ22から受ける現像ローラ22の回転方向に平行な力をf1とする。現像ローラ22と感光ドラム1との間に介在しているトナーが、感光ドラム1から受ける感光ドラム1の回転方向に平行な力をf2とする。現像周速差によりf1とf2の釣り合いが崩れ、現像ニップ部においてトナーが転動する。そして、トナーが転動することで、感光ドラム1と接触していないトナー上の転写キャリア粒子もトナーの転動に伴って移動し、感光ドラム1と接触することが出来るようになる。したがって、トナー上から感光ドラム1への転写キャリア粒子の供給機会が増加する。転動によって感光ドラム1と接触していないトナー上の転写キャリア粒子の移動は、現像ローラ22上にコートされているトナー量に応じて多くなる。よって、現像ローラ22と感光ドラム1との間に周速差を設けてトナーを転動させつつ、現像ローラ22上にコートされているトナー量を制御することで、転写キャリア粒子の供給量を制御することが出来る。
実施例3においては、表4のように、Sa~Sdまでの現像ローラ22上のトナー量をそれぞれSa:0.28、Sb:0.30、Sc:0.32、Sd:0.34[mg/cm]になるように調整した。なお、調整手段としては、現像ブレード23と現像ローラ22との当接位置を変えることで、現像ブレード23によるトナーを規制する力を調整している。具体的には、表4のように、現像ローラ22の中心からそれぞれ、Sa:0.70、Sb:0.60、Sc:0.50、Sd:0.40[mm]の位置に現像ブレード23の先端が配置されるように調整した。
また、実施例3においては、現像ローラ22は感光ドラム1とその現像ニップ部において、感光体1に対して140%の周速比を持って同方向に回転している。すなわち、現像ローラ22の表面の移動速度が、感光ドラム1の表面の移動速度に対して1.4倍速くなっている。
Figure 0007463221000006
なお、実施例3では、転写キャリア供給動作の実行タイミングは、図14のようにプリント動作時の現像当接時間であり、各ステーションで共通である。また、ステーションによらず、転写キャリア粒子の添加量は、転写キャリア粒子のトナー1個当たりに対する被覆個数が500個程度になるように調整した。
次に、実施例3における作用効果について述べる。
実施例3では、転写キャリア粒子の供給時間をステーションごとに変えることなく、感光ドラム1の表面への転写キャリア粒子の供給を、中間転写ベルト10の搬送方向に対して上流ステーションよりも下流ステーションで多くすることが出来る。そのため、1回のプリント動作の転写キャリア粒子の供給動作時間を最低限に実行することが出来る。その結果、1回のプリント動作にかかる時間を低減して、生産性を向上することが可能になる。なおかつ、転写キャリア粒子の添加量を抑えることが出来るため、転写キャリア粒子が、現像器内の部品(例えば、現像ブレード23や供給ローラ26)へ移行することによる汚染のリスクを低減することが出来る。
説明した通り、転写効率を向上させるために感光ドラム表面に十分な量の微粒子を供給しつつ、微粒子による定着阻害を抑制することが出来る。
また、実施例1、2、3においては、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の四色の場合について述べたものの、上記実施例に限らず、例えば、白色トナーや金属色トナーなどを含んだ4つ以上のステーションの場合であってもよい。この場合も少なくとも2つのプロセスカートリッジの間で(上流のプロセスカートリッジの転写キャリア粒子付着面積率)<(下流のプロセスカートリッジの転写キャリア粒子付着面積率)の関係を満たせば効果がある。
なお、実施例1、2、3においては、転写キャリア粒子の「付着面積率」で特徴を述べたものの、「転写キャリア粒子間の付着力Fc」が「トナーと転写キャリアの間の付着力Ft」よりも小さい場合(Fc<Ft)は、「付着量」でもよい。すなわち(上流のプロセスカートリッジの転写キャリア粒子付着量)<(下流のプロセスカートリッジの転写キャリア粒子付着量)の関係が成立していても良い。Fc<Ftの場合は、感光ドラム1上に供給された転写キャリア粒子の上にさらに転写キャリア粒子が供給されることがない。そのため、感光ドラム1上の転写キャリア粒子は一層になり、「付着面積率」の大小関係は「付着量」の大小関係と同義になるためである。
したがって、感光ドラム1と現像ローラ22が接触した状態で感光ドラム1が回転した後において、第2の感光ドラム1bの表面に付着したキャリア粒子の付着量が、第1の感光ドラム1aの表面に付着したキャリア粒子の付着量に比べて多いということである。
実施例1、2、3では、感光ドラム1上にクリーニング部材を設けていないものの、上記実施例に限らず、感光ドラムクリーニング部材を設けても良い。感光ドラム1上にクリーニング部材を設けると、感光ドラム1上に被膜した転写キャリア粒子が感光ドラム1周毎にクリーニング部材に回収されてしまう。しかし、現像と同時に転写キャリア粒子を供給することが出来るため、現像開始から一次転写までの間の感光ドラム1の転写キャリア粒子の付着面積(あるいは量)を制御すればよい。例えば、中間転写ベルト10の搬送方向に対して上流のプロセスカートリッジより下流のプロセスカートリッジの方が感光ドラム1の回転に対する現像ローラ22の回転の周速差を大きくする。すると、下流のプロセスカートリッジの方が上流のプロセスカートリッジよりも多くのトナーを転動させることが出来る。その結果、中間転写ベルト10の搬送方向下流の感光ドラム1への転写キャリア粒子の供給機会が上流のプロセスカートリッジに比べて増加するため、実施例1、2、3と同様の状態にすることが出来、実施例1、2、3と同様の作用効果を得ることが出来る。
実施例1、2、3では、トナーを介してFt<Fdrの関係によって転写キャリア粒子を感光ドラム1へ供給したものの、上記実施例に限らず、現像ユニット4とは別に転写キャリア粒子供給部材を設けてもよい。その場合は、「転写キャリア粒子と転写キャリア粒子供給部材間の付着力Fs」と「Fdr」との関係を、Fs<Fdrとし、転写キャリア粒子を感光ドラム1へ供給すればよい。転写キャリア粒子供給部材としては、この付着力の関係を満たせばよく、例えば、図22のように、ブラシ部材を転写キャリア供給部材として転写キャリア粒子を感光ドラム1上へ供給してもよい。図22においては、転写キャリア粒子の供給は転写キャリア粒子供給ローラ6を介して行う。転写キャリア粒子供給ローラ6は転写キャリア粒子を感光ドラム1上に供給する役割を有し、表面にブラシ層を設けたブラシローラである。転写キャリア粒子供給ローラ6は、感光ドラム1の回転方向と逆方向に回転駆動され、転写キャリア粒子を搭載する転写キャリア粒子容器からブラシ上に転写キャリアを補給される。そして、転写キャリア粒子供給ローラ6と感光ドラム1との接触部にて、ブラシ上から感光ドラム1上へと転写キャリア粒子を供給している。
実施例1、2、3では、現像ブレード23は支持部材としてSUS板を用いたものの、上記実施例に限らず、例えばリン青銅やアルミニウム等の金属薄板を用いても良い。また、上記実施例においては支持部材の表面に導電性のウレタン樹脂からなる薄膜を被覆して形成したものを用いているものの、上記実施例に限らず、ポリアミドエラストマーやウレタンゴムからなる導電性樹脂からなる薄膜を被覆して形成したものを用いている。あるいは、導電性の支持部材そのものを現像ブレード23として現像ローラ22に当接させてもよい。
実施例1、2、3では、供給ローラ26、および現像ブレード23には現像ローラ22に対して-200Vの電位差を付けてトナー帯電量やトナー供給量、トナーコート量を安定化させているものの、上記実施例に限らない。トナー帯電量やトナー供給量、トナーコート量が電圧によらず安定であれば電位差を設けなくてもよい。その場合は、現像ローラ22と同電位にすることで、高圧電源を削減することが可能になり、装置の小型化・低コスト化を実現することが出来る。
実施例1、2、3では、各ステーションの一次転写性を、転写キャリア粒子の付着状態で制御することが出来る。そのため、各ステーションにおいて一次転写電圧を変える必要がなくなり、一次転写電圧を印加する一次転写電源を各ステーションで共通化することが可能になり、装置の小型化・低コスト化を実現することが出来る。
なお、一次転写電源を各ステーションで個別に持っていたとしても、各ステーションに必要な一次転写性に合わせて最適な一次転写電圧を設定することが出来るようになる。そのため、一次転写部における画像の散りや再転写などを抑制することが出来る。再転写とは、上流ステーションで形成された画像が中間転写ベルト10に転写され、下流ステーションの一次転写部を通過することで放電を受け、下流ステーションの感光ドラム1へ再度転写される現象をいう。
1 感光ドラム(感光体)
2 帯電ローラ
3 露光ユニット
4 現像ユニット
10 中間転写ベルト
14 一次転写ローラ
22 現像ローラ
62 トナー粒子
100 画像形成装置

Claims (19)

  1. 回転可能な第1の像担持体と、第1のトナー粒子及び前記第1のトナー粒子の表面に付着するキャリア粒子により構成される第1の現像剤を担持する回転可能な第1の現像剤担持体であって、前記第1の像担持体と接触して第1の現像部を形成し、前記第1の現像部において前記第1の像担持体の表面に第1の現像剤像を形成するために前記第1の現像剤を供給する第1の現像剤担持体と、を有する第1の画像形成部と、
    回転可能な第2の像担持体と、第2のトナー粒子及び前記第2のトナー粒子の表面に付着するキャリア粒子により構成される第2の現像剤を担持する回転可能な第2の現像剤担持体であって、前記第2の像担持体と接触して第2の現像部を形成し、前記第2の現像部において前記第2の像担持体の表面に第2の現像剤像を形成するために前記第2の現像剤を供給する第2の現像剤担持体と、を有する第2の画像形成部と、
    前記第1の像担持体と接触して第1の当接部を形成し、前記第2の像担持体と接触して第2の当接部を形成する中間転写体であって、前記第1の当接部において前記第1の現像剤像が転写され、前記第2の当接部において前記第2の現像剤像が転写される中間転写体と、
    前記中間転写体と接触して転写部を形成し、前記転写部において前記中間転写体の表面に形成された前記第1の現像剤像と前記第2の現像剤像とを記録材に転写する転写部材と、を有し、
    前記第1の像担持体が回転した状態で、前記第1の現像部において、前記第1の現像剤担持体の表面に担持された前記キャリア粒子を前記第1の像担持体の表面に供給することが可能であって、前記第2の像担持体が回転した状態で、前記第2の現像部において、前記第2の現像剤担持体の表面に担持された前記キャリア粒子を前記第2の像担持体の表面に供給することが可能な画像形成装置であって、
    前記中間転写体の表面は移動可能であって、前記中間転写体の表面の移動方向において、前記転写部の下流であって、前記第2の当接部の上流に前記第1の当接部が形成されるように、前記第1の画像形成部と前記第2の画像形成部と、が配置され、
    前記第1の現像剤担持体を前記第1の像担持体に押圧する押圧力をF1、前記第1のトナー粒子と前記第1の像担持体との間に介在する前記キャリア粒子の総数をN1、とした場合に、
    前記キャリア粒子を単位キャリア粒子当たりの押圧力であるF1/N1で前記第1のトナー粒子に押圧した際に測定される前記キャリア粒子と前記第1のトナー粒子との間に形成される付着力Ft1と、
    前記キャリア粒子を前記F1/N1で前記第1の像担持体に押圧した際に測定される前記キャリア粒子と前記第1の像担持体との間に形成される付着力Fdr1と、の関係が、
    Ft1≦Fdr1
    を満たし、
    前記第2の現像剤担持体を前記第2の像担持体に押圧する押圧力をF2、前記第2のトナー粒子と前記第2の像担持体との間に介在する前記キャリア粒子の総数をN2、とした場合に、
    前記キャリア粒子を単位キャリア粒子当たりの押圧力であるF2/N2で前記第2のトナー粒子に押圧した際に測定される前記キャリア粒子と前記第2のトナー粒子との間に形成される付着力Ft2と、
    前記キャリア粒子を前記F2/N2で前記第2の像担持体に押圧した際に測定される前記キャリア粒子と前記第2の像担持体との間に形成される付着力Fdr2と、の関係が、
    Ft2≦Fdr2
    を満たし、
    前記第1の像担持体と前記第1の現像剤担持体、ならびに、前記第2の像担持体と前記第2の現像剤担持体と、がそれぞれ接触した状態で、前記第1の像担持体と前記第2の像担持体とがそれぞれ回転した後において、前記第2の像担持体の表面に付着した前記キャリア粒子の付着面積が、前記第1の像担持体の表面に付着した前記キャリア粒子の付着面積に比べて大きいことを特徴とする画像形成装置。
  2. 前記第1の現像剤と前記第2の現像剤と、は、前記第1のトナー粒子の表面と前記第2のトナー粒子の表面に共に存在する、下記式(1)で示される構造を有する有機ケイ素重合体を含有する微粒子から形成される凸部を有し、前記凸部上に前記キャリア粒子が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
    R-Si(O1/2 (1)
    (前記Rは、炭素数1以上6以下の炭化水素基を示す。)
  3. 前記中間転写体に転写されずに前記第1の像担持体に残った前記第1の現像剤を前記第1の現像剤担持体によって回収し、前記中間転写体に転写されずに前記第2の像担持体に残った前記第2の現像剤を前記第2の現像剤担持体によって回収することを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
  4. 前記第1の現像剤と前記第2の現像剤と、は一成分現像剤であることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
  5. 前記第1の像担持体と前記第1の現像剤担持体、ならびに、前記第2の像担持体と前記第2の現像剤担持体と、がそれぞれ接触した状態で、前記第1の像担持体と前記第2の像担持体とがそれぞれ回転した後において、前記第1の像担持体の表面に付着した前記キャリア粒子の前記第1の像担持体の表面における第1の分布と、前記第2の像担持体の表面に付着した前記キャリア粒子の前記第2の像担持体の表面における第2の分布と、は共に均一な分布状態にあることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
  6. 前記第1の分布の状態と前記第2の分布の状態と、はクラーク・エバンス指数で0.6以上であることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
  7. 前記第1の像担持体と前記第1の現像剤担持体、ならびに、前記第2の像担持体と前記第2の現像剤担持体と、がそれぞれ接触した状態で、前記第1の像担持体と前記第2の像担持体とがそれぞれ回転した後において、前記第2の像担持体の表面に付着した前記キャリア粒子の付着量が、前記第1の像担持体の表面に付着した前記キャリア粒子の付着量に比べて多いことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
  8. 前記第1の現像剤担持体によって前記第1の現像剤を現像し、前記第2の現像剤担持体によって前記第2の現像剤を現像する画像形成モードと、前記第1の現像剤担持体から前記第1の像担持体に前記キャリア粒子を供給し、前記第2の現像剤担持体から前記第2の像担持体に前記キャリア粒子を供給する供給モードを実行可能な請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
  9. 前記第1の像担持体を駆動する第1の駆動部と、
    前記第1の現像剤担持体を駆動する第2の駆動部と、
    前記第1の駆動部と前記第2の駆動部と、を制御する制御部と、を有し、
    前記制御部は、前記第1の現像部において、前記第1の現像剤担持体の表面移動速度と前記第1の像担持体の表面移動速度とが異なる表面移動速度を有するように、前記第1の駆動部と前記第2の駆動部と、を制御することを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
  10. 前記供給モードにおいて、前記第1の像担持体と前記第2の像担持体と、を1周以上回転させるように前記第1の駆動部を制御することを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
  11. 前記供給モードにおいて、前記第1の像担持体の回転時間よりも前記第2の像担持体の回転時間の方が長くなるように、前記第1の駆動部と前記第2の駆動部と、を制御することを特徴とする請求項9または10に記載の画像形成装置。
  12. 前記供給モードは、前記画像形成モードの前に行われる前回転動作時に行われることを特徴とする請求項8乃至11のいずれか1項に記載の画像形成装置。
  13. 前記供給モードは、前記画像形成モードの後に行われる後回転動作時に行われることを特徴とする請求項8乃至12のいずれか1項に記載の画像形成装置。
  14. 前記第2のトナー粒子の表面に付着するキャリア粒子の量は、前記第1のトナー粒子の表面に付着するキャリア粒子の量よりも多いことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の画像形成装置。
  15. 隣接する前記凸部間の最近接距離を凸間隔Gとした場合、前記凸間隔Gの平均が前記キャリア粒子の平均粒径以下であることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
  16. 前記凸部の前記第1のトナー粒子の表面からの高さを凸高さHとした場合、前記凸高さHの平均が前記キャリア粒子の平均粒径以下であることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
  17. 前記キャリア粒子はシリカであることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載の画像形成装置。
  18. 前記キャリア粒子は有機シリカ重合体であることを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1項に記載の画像形成装置。
  19. 前記キャリア粒子の平均粒径は30nm以上1000nm以下であることを特徴とする請求項1乃至18のいずれか1項に記載の画像形成装置。
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