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JP2019075320A - リチウムイオン二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】負極活物質として易黒鉛化炭素を用い、電解液として非水系電解液を用いるリチウムイオン二次電池において、充放電サイクルに伴う容量低下や内部抵抗の増加を抑制し、電池の長寿命化を実現する。【解決手段】正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、電解液と、を有するリチウムイオン二次電池であって、負極活物質は、易黒鉛化炭素を含み、電解液は、非水系電解液であって添加剤として1,3,2−ジオキサチオラン2,2−ジオキシド(DTD)等を含む。【選択図】図2

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池に関する。
電子機器の電源として小型化・軽量化が期待される二次電池の1つにリチウムイオン二次電池がある。リチウムイオン二次電池の負極活物質としては、黒鉛(人造黒鉛、天然黒鉛)や非晶質炭素に代表される炭素系材料や、珪素やスズなどを主成分とする合金材料などが検討され、実用化が進められている。
しかしながら、近年、電気自動車等の大型製品へ応用するために、電池の高入出力特性への要求が高まるにつれ、充放電サイクルに伴う放電容量の低下と電池の内部抵抗の上昇とを抑制する技術が求められている。
特許文献1には、優れた初回の放電容量と、低温における十分な放電容量と、を両立するリチウムイオン二次電池を作製するために、電解液として、環状カーボネート及び鎖状カーボネートを含み、1,3,2−ジオキサチオラン2,2−ジオキシド(DTD)等のグリコールサルフェート誘導体と、フルオロエチレンカーボネートとを含有するものを用いること、実施例の負極活物質として人造黒鉛を用いたこと等が開示されている。
特許文献2には、リチウムイオン二次電池を高温(85℃)で保存した際のガス発生を抑制するために、非水溶媒と、電解質として、Li1212−x(Zは水素、塩素、臭素のいずれかであり、xは10〜12のいずれかの自然数である。)を1〜15質量%含み、1,3,2−ジオキサチオラン2,2−ジオキシド(DTD)等のエチレングリコールサルフェート誘導体を0.5〜6質量%含む、非水電解液を用いること、実施例の負極活物質として人造黒鉛を用いたこと等が開示されている。
特許文献3には、リチウムイオン二次電池を高温(60℃)で保存した際の容量維持率を向上させるために、セパレータとして、基材の表面に、アルミナ等の無機粒子を含む耐熱多孔質層を設け、1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド(DTD)を含有する非水電解液を用いること、実施例の負極活物質として人造黒鉛を用いたこと等が開示されている。
特開2013−229307号公報 特開2014−103066号公報 特開2016−71998号公報
特許文献1〜3において負極活物質として用いられている人造黒鉛については、グラファイトを主成分として含む材料であると思われるが、その物性等が十分に明確には記載されていない。
本発明者が実験的に検討した結果、通常の人造黒鉛を負極活物質として用い、電解液に1,3,2−ジオキサチオラン2,2−ジオキシド(DTD)を添加した場合、放電容量が低下し、直流抵抗が大きくなることがわかった。
本発明の目的は、負極活物質として易黒鉛化炭素を用い、電解液として非水系電解液を用いるリチウムイオン二次電池において、充放電サイクルに伴う容量低下や内部抵抗の増加を抑制し、電池の長寿命化を実現することにある。
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、電解液と、を有し、負極活物質は、易黒鉛化炭素を含み、電解液は、非水系電解液であって添加剤として1,3,2−ジオキサチオラン2,2−ジオキシド(DTD)等を含む。
本発明によれば、負極活物質として易黒鉛化炭素を用い、電解液として非水系電解液を用いるリチウムイオン二次電池において、充放電サイクルに伴う容量低下や内部抵抗の増加を抑制し、入出力特性に優れかつ長寿命とすることができる。
本発明を適用した18650型電池を示す模式断面図である。 実施例1〜7及び比較例1〜5の充放電サイクル後の放電容量を示すグラフである。 実施例1〜7及び比較例1〜5の充放電サイクル後の直流抵抗を示すグラフである。
本発明は、寿命特性に優れたリチウムイオン二次電池に関する。
本発明のリチウムイオン二次電池においては、負極活物質として易黒鉛化炭素を用い、電解液としては、非水系電解液に、下記化学式(1)で表される添加剤を混合したものを用いる。
Figure 2019075320
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子及び炭素数1〜5の炭化水素基からなる群から選択される官能基を表す。)
以下、本発明の実施形態について説明する。以下の説明は、本発明に関する具体的な例を示すものであり、本発明の内容がこれらの説明に限定されるものではない。
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、後述の実施例として説明する図1に示す構成を有するものが挙げられる。
リチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、これらの間に挟み込まれたセパレータと、を含む。そして、正極、負極及びセパレータは、電池缶(電池容器)に電解液とともに封入されている。
1)正極
本実施形態の正極は、高容量でかつ高入出力であるリチウムイオン二次電池(以下単に「電池」ともいう。)に適用可能なものである。正極は、集電体と、その両面に付設された正極合材と、で構成されている。正極合材は、正極活物質を含むものである。
正極活物質は、層状結晶構造であるリチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物(以下「NMC材」と略記する。)である。NMC材は、スピネル構造であるマンガン酸リチウムと比較して高容量な材料である。正極合材中におけるNMC材の含有量は、電池の高容量化の観点から、正極合材全量に対して80〜98質量%であることが望ましい。
NMC材としては、次の組成式で表記されるものを用いることが望ましい。
Li(1+a)MnNiCo(1−x−y−z) …組成式
この組成式において、(1+a)はLi(リチウム)の組成比、xはMn(マンガン)の組成比、yはNi(ニッケル)の組成比、(1−x−y−z)はCo(コバルト)の組成比を示す。zは元素Mの組成比を示す。O(酸素)の組成比は2である。−0.15<a<0.15、0.1<x≦0.5、0.6<x+y+z≦1.0、0≦z≦0.1である。元素Mは、これを含む場合、Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)、Nb(ニオブ)、Mo(モリブテン)、W(タングステン)、Al(アルミニウム)、Si(シリコン)、Ga(ガリウム)、Ge(ゲルマニウム)およびSn(スズ)からなる群から選択される1種以上の元素を選択することができる。
後述の実施例においては、z=0であるLiMn1/3Ni1/3Co1/3を用いた。
以下に、正極合材および集電体について詳細に説明する。
正極合材は、正極活物質、結着材等を有し、集電体の両面に付設される。付設の手法について制限はないが、正極活物質、結着材、導電材等を溶媒中で分散させてスラリーを作製し、これを集電体に塗布して乾燥させる方法などが適用できる。
NMC材粒子のメジアン粒子径(d50)(一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合は、二次粒子のメジアン径)は、以下の範囲で調整が可能である。充填性や他の材料との混合性の観点から、3〜25μmが望ましく、5〜15μmが更に望ましい。ここで表記しているメジアン径(d50)は、レーザー回折・散乱法により求めた、粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。例えば、粒度分布の測定装置(例えば株式会社島津製作所製、SALD−3000)を用いて、d50として測定される値である。以下では、粒径について特に記載しない場合は、上記のように定義されたメジアン径で表している。
NMC材の粒子のBET比表面積の範囲は、0.2〜4.0m/gが望ましい。BET比表面積がこの範囲である場合、結着材および導電材などとの混合性が良好であり、電極としての充填密度が高くすることができる。BET比表面積は、BET法により求められた単位質量当たりの表面積である。
正極用の導電材としては、グラファイトや無定形炭素等の材料を用いることが可能である。なお、これらの材料1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。正極合材の質量に対する導電材の含有量は、0.01〜15質量%とすることが望ましい。0.01質量%以上あれば十分高い導電性を得ることができ、15質量%以下であれば電池容量の低下を抑制することができる。
正極活物質の結着材としては、特に限定されることはなく、塗布法により正極合材を付設する場合には、分散溶媒に対する溶解性または分散性が良好な材料が選択される。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド等の樹脂系高分子;SBR(スチレン−ブタジエンゴム)等のゴム状高分子、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系高分子などが挙げられる。
正極合材に対する結着材の含有量の範囲(質量基準)は、次のとおりである。
正極合材に対する結着材の含有量は、0.1〜15質量%であることが望ましい。結着材の含有量が0.1質量%以上であれば、正極活物質を十分に結着することが可能であり、15質量%以下であれば、十分高い電池容量を得ることができる。
正極用の集電体の材質は、特に制限はないが、金属材料、特にアルミニウムが好ましい。
2)負極
負極は、集電体と、その両面に付設された負極合材と、で構成されている。負極合材の作製方法は、特に限定されないが、正極合材と同様の手法が適用できる。上記の負極合材は、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質を含有する。
上記の負極活物質としては、易黒鉛化炭素が好適である。易黒鉛化炭素は、X線回折法により得られるC軸方向の面間隔d002値が0.34nm以上0.36nm未満である。また、易黒鉛化炭素は、800℃以上の熱処理によって黒鉛化する易黒鉛化性を有するものであり、完全には黒鉛化していない材料である。これに対して、難黒鉛化炭素は、2800℃以上の熱処理によっても黒鉛化が進みにくいという特徴を有する。これは、易黒鉛化炭素が、層状構造を形成しやすい原子配列構造であり、難黒鉛化炭素と比較して、比較的低温の熱処理によって容易に黒鉛構造に変化する特性を有するためである。難黒鉛化炭素も、完全には黒鉛化していない材料である。
なお、易黒鉛化炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化炭素(ハードカーボン)及びグラファイトは、概略、次のように区別される。
易黒鉛化炭素は、原料の有機物に由来する官能基が比較的多く残存している。このため、炭素の格子面間隔(d002)が大きく、SEI(Solid Electrolyte Interface)を生じやすく、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートが炭素の格子面間に出入りしやすい、という性質を有する。
難黒鉛化炭素は、隣り合う炭素の格子面が平行でない部分の存在確率が高く、炭素の格子面間隔(d002)が小さくなっている。また、官能基は、易黒鉛化炭素に比べて少なく、材料全体に占める炭素の割合が多くなっている。このため、SEIを生じにくく、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートが炭素の格子面間に出入りしにくい、という性質を有する。
グラファイトは、隣り合う炭素の格子面が平行であり、炭素の格子面間隔(d002)が小さくなっている。また、グラファイトの場合、リチウムイオンの出入りによる体積変化が大きいという問題点も有している。なお、グラファイトには、採掘により得られる天然黒鉛、工業的に製造される人造黒鉛等がある。
このように、易黒鉛化炭素は、難黒鉛化炭素又はグラファイトと比較して、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとの組み合わせにおいて、SEIを生じやすく、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートが炭素の格子面間に出入りしやすく、リチウムイオンの出入りによる体積変化が小さい、という点で、望ましい材料と言うことができる。
リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートは、電解液に混合する添加剤の1つであり、下記化学式(2)で表されるものである。
Figure 2019075320
以下、易黒鉛化炭素について更に具体的に説明する。
ここで用いる易黒鉛化炭素は、熱重量分析(TG)により求められる空気気流中における質量割合が、25℃における質量(初期質量)に対して、550℃では75%以上であり、かつ、650℃では20%以下であるという特性を有するものである。
電池性能の観点から、上記の質量割合は、550℃では85%以上であり、かつ、650℃では10%以下であることが望ましい。そして、550℃では95%以上であり、かつ、650℃では5%以下であることが更に望ましい。
上記の質量割合が550℃で75%未満の場合、入出力性能が低下する。また、上記の質量割合が650℃で20%を越えると、寿命特性が低下する。
なお、TGのための装置としては、例えば、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製のTG/DTA6200を用いることができる。測定条件は、10mgの試料を採取し、乾燥空気を300ml/分の流通下で、酸化アルミニウム(アルミナ)を比較対象として、1℃/分の昇温速度で測定することができる。
具体的には、易黒鉛化性を示す材料は、例えば、800℃以上の不活性雰囲気炉で焼成し、これを既知の方法(振動ミルやジェットミル等)で粉砕し、メジアン径を5〜30μmに調整することにより、上記の易黒鉛化炭素を得ることができる。
上記の易黒鉛化性を示す材料としては、特に制限はないが、例えば、熱可塑性樹脂、ナフタレン、アントラセン、フェナントロレン、コールタール、タールピッチ等が挙げられ、好ましくは、石炭系コールタールや石油系タールである。
ここで、易黒鉛化炭素は、X線回折法により得られるC軸方向の面間隔d002値が0.34nm以上0.36nm未満であることが望ましく、0.341nm以上0.355nm以下であることがより好ましく、0.342nm以上0.350nm以下であることが更に望ましい。
上記の易黒鉛化炭素は、そのまま用いることも可能であるが、粉砕条件によっては比表面積が大きくなり、所望の特性が発現しない場合がある。そのために、上記易黒鉛化炭素の表面に炭素被覆層を形成させることが望ましい。
上記の炭素被覆層は、例えば、熱処理により炭素質を残す有機化合物(炭素前駆体)を上記の易黒鉛化炭素の表面に付着させた後に焼成することで形成することができる。易黒鉛化炭素の表面に有機化合物を付着させる手法としては、特に制限はないが、例えば、有機化合物を溶媒に溶解させた溶液に、核となる易黒鉛化炭素を分散・混合した後、溶媒を除去する湿式法が均一性の観点から望ましい。
炭素を被覆する際の焼成条件は、非酸化性雰囲気下、700〜1400℃で熱処理することが望ましい。焼成温度が700℃より低いと、初回の不可逆容量が大きくなる傾向があり、1400℃を超えて加熱した場合、電気化学的な性能にあまり変化はなく、処理コストの増加を引き起こす。
導電材としては、天然黒鉛、人造黒鉛等のグラファイト、アセチレンブラック等のカーボンブラック、ニードルコークス等の無定形炭素などを用いることができる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上のものを組み合わせて用いてもよい。導電材を添加することにより、電極の抵抗を低減するなどの効果を奏する。
負極合材の質量に対する導電材の含有量の範囲は、導電性の向上及び不可逆容量低減の観点から、1〜40質量%であることが望ましい。
負極用の集電体の材質・形状としては、特に制限はないが、加工のしやすさ及びコストの観点から、銅箔が好ましい。銅箔には、圧延法により形成された圧延銅箔と、電解法により形成された電解銅箔とがあるが、いずれも集電体として用いることが可能である。
負極活物質の結着材としては、非水系電解液や電極の形成の際に用いる分散溶媒に対して安定な材料であれば特に制限はなく、正極活物質の結着材として用いるものと同様な結着材を用いることができる。
スラリーを形成するための分散溶媒としては、負極活物質、結着材、および必要として用いられる導電材や増粘材などを溶解または分散することが可能であれば、その種類に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。特に、水系溶媒を用いる場合、増粘材を用いることが好ましい。この増粘材に合わせて分散材等を加え、SBR等のラテックスを用いてスラリー化する。
負極合材の質量に対する結着材の含有量は、0.1〜20質量%の範囲であることが好ましい。結着材の含有量が0.1質量%以上であれば、負極活物質を十分に結着でき、十分な負極合材層の機械的強度が得られる。20質量%以下であれば、十分な電池容量および導電性が得られる。
特に、結着材としてSBRに代表されるゴム状高分子を主成分として用いる場合、負極合材の質量に対する結着材の含有量の範囲は、0.1〜5.0質量%であることが好ましい。
また、結着材として、ポリフッ化ビニリデンに代表されるフッ素系高分子を主成分として用いる場合、負極合材の質量に対する結着材の含有量は、0〜15質量%であることが好ましい。
増粘材は、スラリー粘度を調整するために使用される。増粘材としては、特に制限はないが、具体的にはカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等が挙げられる。
増粘材を用いる場合、負極合材の質量に対する増粘材の含有量は、0.1〜5質量%の範囲であることが好ましい。
3)電解液
電解液は、リチウム塩(電解質)と、これを溶解する非水系溶媒と、添加剤と、で構成されている。
リチウム塩は、リチウムイオン二次電池用の電解質として使用可能なリチウム塩であれば特に制限はないが、溶媒に対する溶解性や、電池とした場合の充放電特性等を総合的に判断すると、ヘキサフルオロ燐酸リチウム(LiPF)が好ましい。
電解液中の電解質の濃度については、特に制限はないが、電解質の濃度範囲は、0.5〜2.0mol/Lであることが望ましい。濃度が0.5mol/L未満であると十分な電解液のイオン導電性が得られず、2.0mol/Lより高くなると、粘度が高くなり、注液などの工程管理が困難となる危険性がある。
非水系溶媒としては、リチウムイオン二次電池用の電解質溶媒として使用可能な非水系溶媒であれば特に制限はないが、次に示す環状カーボネート、鎖状カーボネート、鎖状エステル、環状エーテル、鎖状エーテル等が挙げられる。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジアルキルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、酢酸メチル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等が挙げられる。
これらは単独で用いても、2種類以上を併用してもよいが、2種類以上の化合物を併用した混合溶媒を用いることが好ましく、環状カーボネート類の高誘電率溶媒と、鎖状カーボネート類や鎖状エステル等の低粘度溶媒と、を併用するのが好ましい。
4)セパレータ
セパレータは、正極と負極との間を電子的には絶縁しつつもイオン透過性を有し、かつ、正極側における酸化性および負極における還元性に対する耐久性を備えるものであれば特に制限はない。このような特性を満たすセパレータの材質としては、樹脂、無機物、ガラス繊維等が用いられる。
樹脂としては、オレフィン系ポリマー、フッ素系ポリマー、セルロース系ポリマー、ポリイミド、ナイロン等が用いられる。電解液に対して安定で、保液性の優れた材料の中から選ぶことが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを原料とする多孔性シートまたは不織布等を用いることが好ましい。
以下、実施例を用いて説明する。ただし、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
正極の作製は、以下のように行った。
正極活物質としては、層状結晶構造のリチウム・ニッケル・マンガン・コバルト複合酸化物(NMC)を用いた。本実施例においては、組成式LiNi1/3Mn1/3Co1/3で表される正極活物質を用いた。この正極活物質は、BET比表面積が0.4m/g、メジアン径が6.5μmのものである。
上記の正極活物質に、導電材として燐片状黒鉛(平均粒径:20μm)及びアセチレンブラック(商品名:HS−100、平均粒径48nm(電気化学工業社カタログ値)、電気化学工業株式会社)を、結着材としてポリフッ化ビニリデンを順次添加し、混合することにより、正極合材を得た。質量比は、活物質:導電材:結着材=90:5:5とした。
さらに、上記混合物に対し、分散溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を添加し、混練することにより、スラリーを作製した。このスラリーを、正極用の集電体である厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に均等かつ均質に塗布した。その後、乾燥処理を施し、所定の密度までプレスにより圧密化した。正極合材の密度は2.8g/cmとし、正極合材の片面塗布量は140g/mとした。
負極の作製は、以下のように行った。
負極活物質としては、表面が2%の炭素で被覆された易黒鉛化炭素を用いた。ここで、表面の炭素の割合(2%)は、この炭素を含む負極活物質全体の質量を100%として算出したものである。
易黒鉛化炭素を炭素で被覆する際の焼成温度は、900℃である。焼成後、炭素で被覆した易黒鉛化炭素について、空気気流中にて熱重量分析(TG)を行った結果、25℃における質量(初期質量)に対する質量割合は、550℃では95%であり、650℃では5%であった。
作製した負極活物質は、BET法により計測された比表面積が3.1m/gであり、平均粒径が15μmであった。
この負極活物質に結着材としてポリフッ化ビニリデンを添加した。質量比は、活物質:結着材=92:8とした。これに、分散溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を添加し、混練することによりスラリーを作製した。このスラリーを、負極用集電体である厚さ10μmの圧延銅箔の両面に均等かつ均質に塗布した。負極の合剤密度は、プレスにより、1.15g/cmに厚密化し、負極合材の片面塗布量は73g/mとした。
電池の作製は、上記の正極と負極とを、これらが直接接しないように、厚さ30μmのポリエチレン製セパレータを挟んで捲回した。この際、正極のタブリード片と負極のタブリード片とが、それぞれ捲回群の互いに反対側の両端面に位置するようにした。また、正極、負極及びセパレータの長さを調整し、捲回群の直径は17.8±0.1mmとした。
図1は、上記の捲回群を用いて作製した電池の概略構成を示したものである。
本図においては、電池1は、正極2と、負極3と、これらの間に挟み込まれたセパレータ4と、を電池缶5に封入した構成を有する。正極2は、正極タブリード6により電池蓋8に電気的に接続されている。負極3は、負極タブリード7により電池缶5に電気的に接続されている。
上述のようにして作製した捲回群(正極2、負極3及びセパレータ4を含む。)は、次のようにして、電池1に組み込んだ。
本図に示すように、負極3から導出されている負極タブリード7は、ポリプロピレン製の絶縁リング10の切込みから電池缶5の底部に溶接した。その後、正極2から導出されている正極タブリード6を絶縁リング10の切込みから上方へ引き出した。その後、ポリプロピレン製のガスケット9を電池缶5の開口部へ設置し、正極タブリード6を電池蓋8に溶接した。その後、電池缶5の上部より所定量の電解液を注入し、かしめ機により電池缶5の上端部を折り曲げることで、18650型電池を完成させた。
電解液としては、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとを、それぞれの体積比2:3:2で混合した溶液中に、六フッ化燐酸リチウム(LiPF)を1.2mol/L溶解し、1,3,2−ジオキサチオラン2,2−ジオキシド(DTD)を0.2質量%添加したものを用いた。ここで、DTDは、上記化学式(1)で表される添加剤のうち、R及びRのすべてを水素原子としたものである。
電池特性の評価は、以下に示す手法で実施した。放電容量の評価は、25℃の環境下において、定電流定電圧(CC−CV)充電方式を用いた測定を行った(以下「CC−CV充電」と略記する)。CC−CV充電とは、一定の電流値(定電流)で充電を行い、規定の電圧値に達した時点で、定電圧充電に切り替えて所定時間充電を継続する手法である。
次に、電池の初期化条件を示す。
まず、注液後の電池を25℃で10時間静置し、電解液をセパレータや電極(正極および負極)となじませる。その後、0.2CAの電流値で充電を開始し、4.1Vに達した時点で、4.1Vを維持するように5時間充電を継続した後に終了した。充電後には30分間の休止を入れた後に、0.2CAの定電流放電を行い、2.7Vに達した時点で終了した。これを3サイクル実施した後に、0.2CAの定電流で3.7Vまで充電を行った。その後、25℃環境下で5日間のエージング処理を行った。
電池の容量特性及び直流抵抗(以下「DCR」と略記する。)の評価方法を以下に示す。
まず、0.2CAの電流値で充電を開始し、4.1Vに達した時点で、4.1Vを維持するように5時間充電を継続した後に終了した。充電後には30分間の休止を入れた後に、0.2CAの定電流放電を行い、2.7Vに達した時点で終了した。これを3サイクル実施した後に、4.1VまでCC−CV充電を実施する。その後30分間の休止を行った。ここで、3サイクル目の放電容量を電池の容量とする。
そして、その後に、0.1CAの電流値で10秒の放電を実施して10秒目の電池電圧を計測する。その後、4.1Vまで再度CC−CV充電を行い、0.2CAの電流値で10秒の放電を実施して10秒目の電池電圧を計測する。さらに、同様の手法で4.1VまでCC−CV充電を行った後に、0.5CAの電流値で10秒の放電を行い10秒目の電圧を計測する。そして、各電流値(0.1CA、0.2CA、0.5CA)における放電開始前の電圧と10秒目の電圧差と電流値を用いた電流−電圧グラフの傾きより、DCRを算出した。
電池のサイクル試験は、以下に示す手法で行った。
25℃の恒温槽内において、充電条件としては0.5CAのCC−CV充電を行い、4.1Vに達した後3時間充電を継続した後に終了した。その後、30分間の休止を行い、2.7Vまで0.5CAの定電流放電を行い、30分間の休止を行った。このような充電−放電を1サイクルとし、任意のサイクル数で、前述した直流抵抗を評価して、サイクル特性(放電容量及びDCR)の評価を行った。
電解液に添加する1,3,2−ジオキサチオラン2,2−ジオキシド(DTD)の量を0.5質量%としたこと以外は、実施例1に準じて電池の評価を実施した。
電解液に添加する1,3,2−ジオキサチオラン2,2−ジオキシド(DTD)の量を1.0質量%としたこと以外は、実施例1に準じて電池の評価を実施した。
電解液に添加する1,3,2−ジオキサチオラン2,2−ジオキシド(DTD)の量を1.5質量%としたこと以外は、実施例1に準じて電池の評価を実施した。
電解液に添加する1,3,2−ジオキサチオラン2,2−ジオキシド(DTD)の量を2.0質量%としたこと以外は、実施例1に準じて電池の評価を実施した。
電解液に添加する1,3,2−ジオキサチオラン2,2−ジオキシド(DTD)の量を0.5質量%、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LDFOB)の量を1.0質量%としたこと以外は、実施例1に準じて電池の評価を実施した。
電解液に添加する1,3,2−ジオキサチオラン2,2−ジオキシド(DTD)の量を1.0質量%、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LDFOB)の量を0.5質量%としたこと以外は、実施例1に準じて電池の評価を実施した。
(比較例1)
電解液に添加剤を用いなかったこと以外は、実施例1に準じて電池の評価を実施した。
(比較例2)
電解液にビニレンカーボネート(VC)を1質量%のみを添加したこと以外は、実施例1に準じて電池の評価を実施した。
(比較例3)
電解液に添加する1,3,2−ジオキサチオラン2,2−ジオキシド(DTD)の量を0.1質量%としたこと以外は、実施例1に準じて電池の評価を実施した。
(比較例4)
用いた負極活物質を人造黒鉛とし、電解液に添加する1,3,2−ジオキサチオラン2,2−ジオキシド(DTD)の量を0.5質量%としたこと以外は、実施例1に準じて電池の評価を実施した。
(比較例5)
電解液に添加する1,3,2−ジオキサチオラン2,2−ジオキシド(DTD)の量を2.5質量%としたこと以外は、実施例1に準じて電池の評価を実施した。
表1は、実施例1〜7及び比較例1〜5の添加剤についてまとめて示したものである。
Figure 2019075320
(電池の初期特性評価)
表2は、充放電サイクルを実施する前に電池容量及び直流抵抗を測定した結果を示したものである。
本表より、サイクル前の放電容量は、実施例1〜7においては0.535Ah以上となっていること、及び比較例1〜5においては0.530Ah以下となっていることがわかる。また、サイクル前のDCRは、実施例1〜7においては41.8mΩ以下となっていること、及び比較例1〜5においては42.6mΩ以上となっていることがわかる。
Figure 2019075320
(充放電サイクル寿命の評価)
図2は、実施例1〜7及び比較例1〜5の電池について、300サイクルの充放電を実施した後の放電容量を示したものである。横軸にDTD添加量、縦軸に放電容量をとっている。
本図から、実施例1〜7の電池は、比較例1〜5の電池に比べ、充放電サイクル後においても放電容量が高く維持されていることがわかる。
図3は、実施例1〜7及び比較例1〜5の電池について、300サイクルの充放電を実施した後の直流抵抗(DCR)を示したものである。横軸にDTD添加量、縦軸に直流抵抗をとっている。
本図から、実施例1〜7の電池は、比較例1〜5の電池に比べ、充放電サイクル後においても直流抵抗が小さく維持されていることがわかる。
よって、DTDの電解液における濃度は、0.2質量以上2.0質量%以下であることが望ましい。
また、電解液がDTDに加えリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートを含む場合、 これらの添加剤の電解液における合計濃度は、0.2質量%以上2.0質量%以下であることが望ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池は、添加剤の作用により、充放電サイクルに伴う放電容量の低下や直流抵抗の増加を抑制できることから、寿命特性に優れた大型リチウムイオン二次電池を必要とされる、移動体や定置型電力貯蔵の電源に適用することができる。
1:電池、2:正極、3:負極、4:セパレータ、5:電池缶、6:正極タブリード、7:負極タブリード、8:電池蓋、9:ガスケット、10:絶縁リング。

Claims (5)

  1. 正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、電解液と、を有するリチウムイオン二次電池であって、
    前記負極活物質は、易黒鉛化炭素を含み、
    前記電解液は、非水系電解液であって下記化学式(1)で表される添加剤を含む、リチウムイオン二次電池。
    Figure 2019075320
    (式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子及び炭素数1〜5の炭化水素基からなる群から選択される官能基を表す。)
  2. 前記R及び前記Rはすべて、水素原子である、請求項1記載のリチウムイオン二次電池。
  3. 前記化学式(1)で表される前記添加剤の前記電解液における濃度は、0.2質量以上2.0質量%以下である、請求項2記載のリチウムイオン二次電池。
  4. 前記電解液は、下記化学式(2)で表される添加剤を含む、請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池。
    Figure 2019075320
  5. 前記電解液は、下記化学式(2)で表される添加剤を含み、
    前記化学式(1)で表される前記添加剤及び前記化学式(2)で表される前記添加剤の前記電解液における合計濃度は、0.2質量%以上2.0質量%以下である、請求項2記載のリチウムイオン二次電池。
    Figure 2019075320
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