JP2019062673A - 可変磁束型の永久磁石式回転電機 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献1に示す可変磁束型回転電機は、固定子巻線が巻回された固定子と、固定子との間でエアギャップを形成するとともに、少なくとも1つの永久磁石を備えた回転子と、回転子に設けられた少なくとも1つの永久磁石から、隣接する永久磁石へ漏洩する際の経路となる磁束バイパス路とを備えている。そして、この可変磁束型回転電機において、回転子に作用するトルクTrがTr=KT×I(KTはトルク定数、Iは印加電流)で表されるとき、トルク定数KTが印加電流Iの関数KT=KT(I)であり、少なくとも1つの永久磁石は、固定子及び回転子が、固定子と回転子の少なくとも一方のコア材料の磁気飽和以下の領域にて、永久磁石により「d(KT(I))/dI≧0」なる動作特性が得られるように相対的に回転子に対して配置されている。また、磁束バイパス路の磁束流入部及び磁束流出部は、回転子と固定子との間のエアギャップ近傍に配置され、少なくとも1つの永久磁石の一の磁極から出た磁束が、該永久磁石の異極側へ漏洩する磁気抵抗よりも、少なくとも1つの永久磁石と隣接する永久磁石の異極側へ漏洩する磁気抵抗の方が小さくなっている。
この特許文献1に示す可変磁束型回転電機によれば、隣接する磁極間に、固定子の電機子反作用により磁束漏洩量を制御可能な磁束バイパス路を形成することにより、低負荷時の鉄損や高回転時の鉄損及び銅損を抑制することができる。
即ち、磁束バイパス路は、回転子コアの隣接する磁極間に形成された空隙部の外周側の磁極連結部分に形成されている。その一方、永久磁石を挿入固定する磁石スロットと、前記空隙部との間には、永久磁石のN極から出た磁束が、該永久磁石のS極側へ漏洩する磁路が形成されている。そして、永久磁石のN極から出た磁束が、該永久磁石のS極側へ漏洩する磁気抵抗よりも、この永久磁石と隣接する永久磁石のS極側へ漏洩する磁気抵抗の方を小さくするために、磁束バイパス路の幅を、磁石スロットと空隙部との間に形成された磁路の幅よりも大きくしている。このため、磁石スロットと空隙部との間に形成された磁路の幅は必然的に細くなっていた。
従って、本発明はこの従来の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、回転子コアにおいて機械的強度が弱い部分を形成することなく、回転子コアに設けられた所定の永久磁石から周方向両側に隣接する永久磁石へ漏洩する漏れ磁束をq軸電流により制御し、これにより固定子に巻装された電機子巻線に鎖交する永久磁石の磁束を制御する可変磁束型の永久磁石式回転電機を提供することにある。
また、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
先ず、本発明の第1実施形態に係る可変磁束型の永久磁石式回転電機について、図1乃至図4を参照して説明する。
本発明の第1実施形態に係る可変磁束型の永久磁石式回転電機は、図1に示されており、永久磁石式回転電機1は、8極の埋め込み磁石型同期電動機である。なお、本発明は、極数、その他の各部分の寸法などによって何ら制約を受けるものではない。
図1及び図2に示す可変磁束型の永久磁石式回転電機1は、固定子10と、固定子10の固定子鉄心11の内周側にエアギャップGを介して回転自在に配置された回転子20とを備えている。
また、回転子20は、軸孔26を中心に形成した円筒状の回転子コア21と、回転子コア21に設けられた8つの磁極22とを備えている。回転子コア21の外周面21aと固定子鉄心11の内周面11aとの間が前述のエアギャップGとされる。回転子コア21は、積層鉄心で構成される。回転子コア21の軸孔26には回転軸40が嵌挿固定され、回転子20は回転軸40によって回転する。そして、回転子コア21の外周部には、周方向に沿って等間隔に配設された8つの磁石スロット23が形成されている。
ここで、各磁石スロット23は、回転子コア21の軸方向両端にまで貫通する貫通孔で形成され、断面矩形状の永久磁石24を挿入固定するための周方向に細長く延びる断面矩形状の永久磁石挿入部23aと、永久磁石挿入部23aの周方向両端に形成された一対のフラックスバリアとしての空気領域23bとを備えている。各磁石スロット23は、図1及び図2に示すように、d軸に対して左右対称(周方向に対称)に形成されている。各磁石スロット23の永久磁石挿入部23aには、断面矩形状の板状の永久磁石24が挿入固定され、各永久磁石24は、回転子コア21の軸方向両端にまで延びている。
この可変磁束型の永久磁石式回転電機1において、回転子コア21の隣接する磁極22間であって磁石スロット24よりも外周側には、図1及び図2に示すように、非磁性部としての空隙25が形成されている。空隙25は、回転子コア21の外周面21aから内周側に所定距離隔てて形成されている。空隙25は、周方向に細長い断面台形状に形成され、回転子コア21の軸方向両端にまで貫通する貫通孔で形成される。空隙25は、回転子コア21のすべての隣接する磁極22間に形成されている。
図3には、固定子10に巻装された電機子巻線14に電流を通電せずq軸電流が0のときの磁束の流れが示されている。図3に示すように、q軸電流が0の場合には、所定の永久磁石24(N極磁石)から出た磁束の多くは固定子10側へと流れて電機子巻線14と鎖交する磁束Aとなるが、所定の永久磁石(N極磁石)24から出た磁束の一部の漏れ磁束Bは、主に磁束バイパス路27を経由して周方向両側に隣接する永久磁石(S極磁石)24へ漏洩する。図3においては、周方向一方側に隣接する永久磁石(S極磁石)24のみに漏れ磁束Bが漏れ出る様子が示されている。漏れ磁束Bが磁束バイパス路27を介して流れるのは、所定の永久磁石(N極磁石)24を固定する磁石スロット23と空隙25との間の磁束流入部27a及び周方向両側に隣接する永久磁石(S極磁石)24を固定する磁石スロット23と空隙25との間の磁束流出部27bの磁束密度が2.0[T]以上と同程度に高くなっていることからわかる。
更に、q軸電流が更に大きくなる(例えば、最大電流の略70%以上)と、図4に示すように、所定の永久磁石(N極磁石)24から周方向両側に隣接する永久磁石(S極磁石)24に漏れ出る漏れ磁束Bがより減少し、ほとんどその磁束Bは0に近くなる。これは、磁束バイパス路27の磁束流入部27aにおける磁束密度が図4に示すように0.0〜0.5[T]と非常に小さくなっていることで理解される。当該漏れ磁束Bが0に近くなると、所定の永久磁石(N極磁石)24から固定子10側へと流れて電機子巻線14と鎖交する磁束Aが最大となる。
ここで、磁石スロット連結部28の非磁性化処理は、加熱による組織変態、浸炭処理、及び加圧処理などにより行われる。
次に、本発明の第2実施形態に係る可変磁束型の永久磁石式回転電機について、図5を参照して説明する。図5において、図1及び図2に示す部材と同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
図5に示す可変磁束型の永久磁石式回転電機1は、図1及び図2に示す第1実施形態に係る永久磁石式回転電機1と基本構成は同様であるが、非磁性部としての空隙25の配置の仕方が異なっている。
即ち、図1及び図2に示す第1実施形態に係る永久磁石式回転電機1においては、空隙25は、回転子コア21のすべての隣接する磁極22間に形成されているのに対し、図5に示す永久磁石式回転電機1においては、空隙25は、回転子コア21の一個飛びの隣接する磁極22間に形成されている点で相違する。
なお、図5に示す永久磁石式回転電機1における空隙25が、磁石スロット24よりも外周側に形成されている点、及び周方向に細長い断面台形状に形成され、回転子コア21の軸方向両端にまで貫通する貫通孔で形成されている点は図1及び図2に示す第1実施形態に係る永久磁石式回転電機1の空隙25と同様である。
次に、本発明の第3実施形態に係る可変磁束型の永久磁石式回転電機について、図6を参照して説明する。図6において、図1及び図2に示す部材と同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
図6に示す可変磁束型の永久磁石式回転電機1は、図1及び図2に示す第1実施形態に係る永久磁石式回転電機1と基本構成は同様であるが、回転子コア21におけるすべての空隙25の内周側に補助磁石29を配置した点で相違している。
このように、回転子コア21におけるすべての空隙25の内周側に補助磁石29を配置することにより、磁束バイパス路27を流れる、所定の永久磁石24(N極磁石)から周方向両側に隣接する永久磁石24(S極磁石)へ漏洩する漏れ磁束を増加させることができる。
なお、補助磁石29の磁化方向は回転子コア21の周方向であり、補助磁石29は、所定の永久磁石24(N極磁石)に隣接する側がS極の極性を有し、周方向に隣接する永久磁石24(S極磁石)に隣接する側がN極の極性を有する。
次に、本発明の第4実施形態に係る可変磁束型の永久磁石式回転電機について、図7を参照して説明する。図7において、図1及び図2に示す部材と同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
図7に示す可変磁束型の永久磁石式回転電機1は、図1及び図2に示す第1実施形態に係る永久磁石式回転電機1と基本構成は同様であるが、回転子コア21における隣接する磁石スロット23、23を連結する磁石スロット連結部28のそれぞれに穴30を形成した点で相違している。
このように、磁石スロット連結部28に穴30を形成することにより、磁石スロット連結部28を非磁性化した場合と同様に、永久磁石(S極磁石)24の内周側から永久磁石(S極磁石)24の外周側に流れ込む漏れ磁束Cを抑制でき、電機子巻線14に鎖交する磁束Aを増加することができる。
なお、穴30は、回転子コア21の軸方向両端に貫通する貫通丸穴で形成される。
次に、本発明の第5実施形態に係る可変磁束型の永久磁石式回転電機について、図8を参照して説明する。図8において、図1及び図2に示す部材と同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
図8に示す可変磁束型の永久磁石式回転電機1は、図1及び図2に示す第1実施形態に係る永久磁石式回転電機1と基本構成は同様であるが、8つの磁石スロット23の各々が1つの磁極22あたり2つの磁石スロット23A、23Aに分割され、これに伴って8つの永久磁石24の各々が2つに分割されている点で相違している。また、回転子コア21における隣接する磁石スロット23A、23Aを連結する磁石スロット連結部28に、隣接する磁石スロット23A、23A同士を連通させる連通孔31が設けられている点で相違している。
なお、連通孔31は、回転子コア21の軸方向両端に貫通する貫通穴で形成される。
また、8つの磁石スロット23の各々が1つの磁極22あたり2つの磁石スロット23A、23Aに分割されているので、回転子コア21における各磁石スロット23の外周側と内周側とは2つの磁石スロット23A、23A間の部分で連結されており、回転子コア21の機械的強度が問題となることはない。
次に、本発明の第6実施形態に係る可変磁束型の永久磁石式回転電機について、図9を参照して説明する。図9において、図1及び図2に示す部材と同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
図9に示す可変磁束型の永久磁石式回転電機1は、図1及び図2に示す第1実施形態に係る永久磁石式回転電機1と基本構成は同様であるが、回転子コア21の隣接する磁極22間であって磁石スロット24よりも外周側に形成する非磁性部の構成が図1及び図2に示す第1実施形態に係る永久磁石式回転電機1の非磁性部と相違している。
具体的に述べると、図1及び図2に示す永久磁石式回転電機1の非磁性部は、回転子コア21の外周面21aから内周側に所定距離隔てて形成された空隙25で構成されている。これに対して、図9に示す永久磁石式回転電機1の非磁性部は、回転子コア21の外周面から凹む溝32で構成されている。溝32は、回転子コア21の軸方向両端まで貫通する断面矩形状の貫通溝で形成される。
このため、所定の永久磁石(N極磁石)24を固定する磁石スロット23と溝32との間の最小の幅と、周方向両側に隣接する永久磁石(S極磁石)24を固定する磁石スロット23と溝32との間の最小の幅とが、第1実施形態と同様に、広くなっており、所定の永久磁石(N極磁石)24を固定する磁石スロット23と溝32との間の幅及び周方向両側に隣接する永久磁石(S極磁石)24を固定する磁石スロット23と溝32との間の幅の機械的強度が十分に確保され、回転子コア21において機械的強度が弱い部分を形成することはない。
なお、第2〜5実施形態においても、空隙25で構成されている非磁性部を溝32に変更してもよい。
例えば、第1乃至第6実施形態に係る可変磁束型の永久磁石式回転電機1の極数は8極となっているが、8極以外であってもよい。
また、第1乃至第5実施形態に係る永久磁石式回転電機1においては、非磁性部は空隙25で構成され、第6実施形態に係る永久磁石式回転電機1においては、非磁性部は溝32で構成されているが、これら空隙25や溝32に限らず、当該空隙25や溝32を形成した部分の回転子コア21を非磁性化処理したものであってもよい。この非磁性化処理は、加熱による組織変態、浸炭処理、及び加圧処理などにより行われる。
また、第6実施形態に係る永久磁石式回転電機1において、溝32は、断面矩形状に形成されているが、他の断面形状であってもよい。
また、第1乃至第6実施形態に係る永久磁石式回転電機1において、各磁石スロット23は、d軸に対して左右対称(周方向に対称)に形成されているが、d軸に対して左右対称でなくてもよい。
10 固定子
11 固定子鉄心
14 電機子巻線
20 回転子
21 回転子コア
22 磁極
23 磁石スロット
24 永久磁石
25 空隙(非磁性部)
27 磁束バイパス路
28 磁石スロット連結部
29 補助磁石
30 穴
31 連通孔
32 溝(非磁性部)
G エアギャップ
Claims (9)
- 電機子巻線を固定子鉄心に巻装した固定子と、該固定子の前記固定子鉄心の内周側にエアギャップを介して回転自在に配置された回転子であって、複数の磁石スロットを周方向に沿って配設した円筒状の回転子コアと、前記複数の磁石スロットの各々に固定された複数の永久磁石により構成された複数の磁極とを有する回転子とを備え、前記複数の永久磁石のうちの所定の永久磁石から周方向両側に隣接する永久磁石へ漏洩する漏れ磁束をq軸電流により制御し、これにより前記電機子巻線に鎖交する永久磁石の磁束を制御する可変磁束型の永久磁石式回転電機であって、
前記回転子コアの隣接する磁極間であって前記磁石スロットよりも外周側に形成された非磁性部を備え、前記所定の永久磁石から周方向両側に隣接する永久磁石へ漏洩する漏れ磁束の磁束バイパス路が、前記所定の永久磁石を固定する磁石スロットと前記非磁性部との間、前記非磁性部の内周側、及び前記周方向両側に隣接する永久磁石を固定する磁石スロットと前記非磁性部との間に形成されることを特徴とする可変磁束型の永久磁石式回転電機。 - 前記非磁性部は、前記回転子コアのすべての隣接する磁極間に形成されることを特徴とする請求項1に記載の可変磁束型の永久磁石式回転電機。
- 前記非磁性部は、前記回転子コアの一個飛びの隣接する磁極間に形成されることを特徴とする請求項1に記載の可変磁束型の永久磁石式回転電機。
- 前記回転子コアにおける前記非磁性部の内周側に補助磁石を配置したことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の可変磁束型の永久磁石式回転電機。
- 前記回転子コアにおける隣接する磁石スロットを連結する磁石スロット連結部を非磁性化したことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の可変磁束型の永久磁石式回転電機。
- 前記回転子コアにおける隣接する磁石スロットを連結する磁石スロット連結部に穴を形成したことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の可変磁束型の永久磁石式回転電機。
- 前記複数の磁石スロットの各々及び前記複数の永久磁石の各々が、1つの磁極あたり2以上に分割されるとともに、前記回転子コアにおける隣接する磁石スロットを連結する磁石スロット連結部に、前記隣接する磁石スロット同士を連通させる連通孔を設けたことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の可変磁束型の永久磁石式回転電機。
- 前記非磁性部が、前記回転子コアの外周面から内周側に所定距離隔てて形成された空隙で構成されることを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか一項に記載の可変磁束型の永久磁石式回転電機。
- 前記非磁性部が、前記回転子コアの外周面から凹む溝で構成されることを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか一項に記載の可変磁束型の永久磁石式回転電機。
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