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JP2010053308A - 顔料インク、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、及びインクジェット記録装置 - Google Patents

顔料インク、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、及びインクジェット記録装置 Download PDF

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JP2010053308A
JP2010053308A JP2008222353A JP2008222353A JP2010053308A JP 2010053308 A JP2010053308 A JP 2010053308A JP 2008222353 A JP2008222353 A JP 2008222353A JP 2008222353 A JP2008222353 A JP 2008222353A JP 2010053308 A JP2010053308 A JP 2010053308A
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悠平 清水
Hirobumi Ichinose
博文 一ノ瀬
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Abstract

【課題】色材として無機顔料であるカーボンブラックを用いる場合でも、特定の変性シロキサン化合物と樹脂とを含有させることで、優れた耐擦過性を有する画像を形成できる顔料インクを提供すること。
【解決手段】カーボンブラック、変性シロキサン化合物、及び樹脂を含有する顔料インクであって、カーボンブラックが、カーボンブラック粒子の表面にイオン性基を有してなり、カーボンブラック粒子の表面におけるイオン性基密度が、2.6μmol/m2以上3.5μmol/m2以下であり、変性シロキサン化合物が、式(1)で表される変性シロキサン化合物、式(2)で表される変性シロキサン化合物、及び式(3)で表される変性シロキサン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする顔料インク。
【選択図】なし

Description

本発明は、色材として顔料を用いた、インクジェット用にも好適な顔料インク、並びに、前記顔料インクを用いたインクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、及びインクジェット記録装置に関する。
インクジェット記録用のインクとして、色材としてカーボンブラックを含む顔料インクを用いることが知られている。前記カーボンブラック表面にある一定量以上の表面活性水素又はその塩を導入することで、カーボンブラックを、インクを構成する水性媒体中に分散させることを可能とする、いわゆる自己分散型カーボンブラックに関する提案がある(特許文献1参照)。
自己分散型カーボンブラックを含有する顔料インクを用いて画像を形成すると、顔料を樹脂などの高分子分散剤で分散したいわゆる樹脂分散型顔料を含有する顔料インクで形成した場合と比較して、画像の光学濃度が特に向上する。また、このような自己分散型カーボンブラックを含有する顔料インクでは、分散剤と種々の水溶性有機溶剤などとの相溶性を考慮する必要が低減されるなど、上記色材を用いることによるメリットが大きい。これらの理由から、インクジェット記録用の顔料インク、特にブラックインクの色材として、自己分散型カーボンブラックを用いることは非常に有用である。自己分散型カーボンブラックを含有する顔料インクに関しては、吐出安定性をより向上させることを目的として、カーボンブラック粒子の表面に存在する表面活性水素やその塩の量、すなわちイオン性基密度を規定することに関する提案がある(特許文献2参照)。
また、インクジェット記録用のインクでは、色材として顔料を含む顔料インクが、近年、オフィスやホーム用途として用いられる小型プリンタ用としてだけでなく、ポスターや広告を印刷する用途に用いられる大判プリンタにも広く適用されている。大判プリンタで印刷する際には、A0サイズやA1サイズなどのかなり大きな記録媒体を用いることが多く、画像を形成した記録媒体を持ち運ぶ際には、丸めて筒状にすることが一般的であるため、下記のような問題を生じることがある。
記録媒体を丸める際に、記録媒体の角などの鋭利な部分で画像を擦るような場合があるが、このとき、顔料インクで形成した画像に傷が付き、色材が削れ落ちるという問題が、かなりの頻度で発生する。また、これと同様の課題は、他の状況においても発生する。例えば、顔料インクで形成した画像をポスターとして屋外に貼る際に、画像が爪などの鋭利なもので強く引っ掻かれるような場合である。このときも、上記と同様に、色材が削れ落ちるという問題がかなりの頻度で発生する。以上のように、大判プリンタに用いるインクとして顔料インクを選択した場合には、鋭利なものが画像に触れたとしても、画像の色材が削れ落ちることがないという、従来よりも格段に高いレベルの耐擦過性を実現することが大きな課題となっている。
これに対して、これまでにも、顔料インクで形成した画像の耐擦過性は課題となっていたため、かかる課題を解決するために様々な方法が提案されている。しかし、その多くが、オフィスやホーム用途として用いられる小型プリンタ用を対象として検討が行われているため、従来の技術を用いるだけでは、指で画像に触れて傷がつかない程度の耐擦過性を得るのが精一杯である。つまり、今もなお、格段に高いレベルの耐擦過性の実現といった課題は、解決できていないのである。
無論、上記のような状況においても耐擦過性を満足し得る画像の提供を可能とすべく、より高いレベルの画像の耐擦過性を得るための方法に関する提案はいくつかある。例えば、インクジェット用インクで形成した画像の上に特定の化合物を付与することで、画像の滑り性を高め、画像の耐擦過性を向上させることに関する提案がある(特許文献3及び4参照)。また、特定の樹脂及び特定のポリエーテル変性オルガノシロキサンを含有するインクを用いることで、画像の耐擦過性及び耐スクラッチ性を向上させることに関する提案がある(特許文献5参照)。
特開平05−186704号公報 特開平08−003498号公報 特開2000−108495号公報 特開2004−284362号公報 特開2003−192964号公報
本発明者らは、大判プリンタにも適用可能な、優れた性能を有する顔料インクを提供するために、爪などの鋭利なもので触れた場合でも、できるだけ傷が付かないような画像を形成することができる顔料インクについて検討を行った。その際に、上記で挙げたような特許文献に記載された技術を中心に検討した。その結果、特定の変性シロキサン化合物及び樹脂を含有するインクという構成により、従来のインクよりも優れた耐擦過性を有する画像を形成できる顔料インクとすることができることがわかった。
しかし、本発明者らが、特定の変性シロキサン化合物及び樹脂を含有するインクについてさらに検討を進める過程で、以下のような事実があることがわかった。具体的には、色材として無機顔料であるカーボンブラックを含有するインクで形成した画像の耐擦過性は、色材として有機顔料を含有するインクで形成した画像の耐擦過性のレベルまでには向上し得ない、という課題があることがわかった。
したがって、本発明の目的は、色材として無機顔料であるカーボンブラックを用いる場合でも、有機顔料を含有するインクと同様の高いレベルの耐擦過性を実現した画像を形成できる顔料インクを提供することにある。また、本発明の別の目的は、このような高いレベルの耐擦過性を有する画像が得られるインクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、及びインクジェット記録装置を提供することにある。
上記の目的は、下記の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、少なくとも、カーボンブラック、変性シロキサン化合物、及び樹脂を含有する顔料インクであって、前記カーボンブラックが、カーボンブラック粒子の表面にイオン性基を有してなり、前記カーボンブラック粒子の表面におけるイオン性基密度が、2.6μmol/m2以上3.5μmol/m2以下であり、前記変性シロキサン化合物が、下記式(1)で表される変性シロキサン化合物、下記式(2)で表される変性シロキサン化合物、及び下記式(3)で表される変性シロキサン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする顔料インクである。
Figure 2010053308
(式(1)中、R1は炭素数1以上20以下のアルキレン基であり、R2は水素原子又は炭素数1以上20以下のアルキル基であり、mは1以上250以下の数、nは1以上100以下の数、aは1以上100以下の数、bは0以上100以下の数である。)
Figure 2010053308
(式(2)中、R3はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上20以下のアルキル基であり、R4は炭素数1以上20以下のアルキレン基であり、pは1以上450以下の数、cは1以上250以下の数、dは0以上100以下の数である。)
Figure 2010053308
(式(3)中、R5はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上20以下のアルキル基であり、R6はそれぞれ独立に、炭素数1以上20以下のアルキレン基であり、qは1以上100以下の数、rは1以上100以下の数、eは1以上100以下の数、fは0以上100以下の数である。)
本発明によれば、色材として無機顔料であるカーボンブラックを用いる場合でも、有機顔料を含有するインクと同様の高いレベルの耐擦過性を実現した画像を形成できる顔料インクが提供される。また、本発明の別の実施態様によれば、このような高いレベルの耐擦過性を有する画像が得られるインクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、及びインクジェット記録装置が提供される。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。以下、顔料インクを単に「インク」と呼ぶことがあり、また、カーボンブラック粒子の表面にイオン性基を有してなるカーボンブラックを単に「自己分散型カーボンブラック」と呼ぶことがある。本発明の最大のポイントは、色材として特定のカーボンブラックを用い、さらに、特定の変性シロキサン化合物及び樹脂を併用するというインクの構成により、該インクを用いて形成した画像の表面を滑りやすくしたことにある。画像の表面が滑りやすくなる結果、画像の耐擦過性を従来のインクを用いて形成したものと比較して、格段に向上させることが可能となる。すなわち、本発明は、従来の技術のように、画像を形成する樹脂の造膜性のみを利用して画像の耐擦過性を向上させるという思想とは異なり、画像と、かかる画像と接触する物質との摩擦力にも着目するという新しい発想に基づいてなされたものである。さらに、インクに用いるカーボンブラックとして、特定のカーボンブラックを選択することで、色材として有機顔料を含有する顔料インクに匹敵する耐擦過性を有する画像を形成できるインクを提供することを可能としている。
本発明者らの検討の結果、本発明の目的を達成するために必要となる画像と前記画像と接触する物質(例えば、爪)との摩擦力、すなわち、画像表面の滑りやすさは、動摩擦係数を指標として表すことができることがわかった。動摩擦係数は、耐擦過性試験装置を用いて以下のように測定することができる。図1に、耐擦過性試験を説明するための模式図を示した。
本試験においては、爪による引っ掻き傷と近い状態の傷を発生させる摩擦物2−3として、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)ボールを用いる。そして、表面性試験機(商品名:ヘイドン トライボギア TYPE14DR;新東科学製)を用いて下記のようにして、引っ掻き傷を発生させる。具体的には、図1に示したように、上方から荷重を付加したPMMAボールを画像面に垂直に接触させて、稼動ステージ2−1上のサンプル2−2を所定のスピードで移動させて引っ掻き傷を発生させる。
摩擦物2−3を固定するための金具の質量は天秤機構2−5により除去されている。そして、画像面の耐擦過性は、画像面に付与される垂直荷重(分銅2−4)で評価する。また、ステージ2−1を移動させた際の摩擦物2−3に働く水平方向力は、固定金具と接続したロードセル2−6を通して計測可能である。移動時の水平方向力と垂直荷重力との比から、摩擦物2−3に対する画像面の動摩擦係数を測定することができる。
造膜性能を有する樹脂のみを利用して画像の耐擦過性を向上させる従来のインクを用いた場合、得られる画像の動摩擦係数は0.80程度かそれ以上となる。その一方で、樹脂と特定の変性シロキサン化合物とを含有するインクで画像を形成すると、得られる画像の動摩擦係数は0.70以下となる。
本発明者らの検討の結果、色材として有機顔料を含有するインクで画像を形成する場合、画像の動摩擦係数の値と画像の耐擦過性とが以下のような関係を有するという知見を得た。先ず、画像の動摩擦係数が0.70以下であると、記録媒体の非記録部に傷が付かない程度の軽い圧力を加えて指で画像に触れてもほとんど傷が付かないレベルの耐擦過性となることがわかった。また、画像の動摩擦係数が0.40以下であると、記録媒体の非記録部に傷が付く程の強い圧力を加えて爪などの鋭利なもので画像に触れても、色材が記録媒体からほとんど削れ落ちることのないレベルの耐擦過性となることがわかった。
しかし、検討の過程で本発明者らは、インク中における変性シロキサン化合物の含有量をそれぞれ同じにしても、使用する顔料の種類によっては画像の動摩擦係数が異なるという知見を得た。また、画像の動摩擦係数を同じにしても、顔料の種類によっては画像の耐擦過性のレベルが若干異なるという知見も得た。そこで本発明者らは、上記の知見についてさらに詳細に検討を行った。その結果、インクの色材としてカーボンブラックを用いる場合と、有機顔料を用いる場合とでは、得られる画像の耐擦過性が異なること、またカーボンブラックの方が画像の耐擦過性がやや劣る傾向があることがわかった。特に、カーボンブラックの中でも、カーボンブラック粒子の表面に結合しているイオン性基の密度が少ないほど、画像の耐擦過性が劣る傾向が顕著にあることもわかった。
本発明者らは、このように画像の耐擦過性が、使用する顔料の種類によって異なる理由についての検討を行った。その結果、以下のことがわかった。変性シロキサン化合物は疎水性が高いという特性を有するため、疎水性が低い物質と比較して、疎水性が高い物質への吸着がより起こりやすい。したがって、インク中の変性シロキサン化合物は、有機顔料と比較して、カーボンブラックにより吸着しやすい。このため、カーボンブラックを含有するインク中では、有機顔料を含有するインクと比較して、遊離した変性シロキサン化合物が相対的に減少することになる。これらのことから、カーボンブラックと変性シロキサン化合物を含有するインクを用いた場合に、画像の滑り性を発現するのに十分な量の変性シロキサン化合物が記録媒体上に残らないため、画像の耐擦過性が相対的に低下したものと考えられる。上記の考察から、画像の耐擦過性を同等とするためには、有機顔料を用いたインクの場合に比較して、カーボンブラックを用いたインクでは、例えば、インク中における変性シロキサン化合物の含有量をより多くすることが好ましいことがわかる。
さらに、カーボンブラック粒子の表面に変性シロキサン化合物が吸着することで、カーボンブラック粒子が互いに擦れ合う現象、すなわち、ずり現象が誘発され易くなると推測され、このことも画像の耐擦過性が相対的に低下する原因の一つであると考えられる。この現象は、記録媒体上でカーボンブラックの凝集体を覆う樹脂と、樹脂表面に配向するように存在すると考えられる変性シロキサン化合物とによって画像の動摩擦係数が仮に低くなっていたとしても、画像に営利なもので触れるなどの衝撃を加えることで生じる。そして、カーボンブラックと変性シロキサン化合物とを含有するインクでは、カーボンブラックの凝集体の近傍では上記のずり現象が発生するため、カーボンブラックを用いた場合の画像の耐擦過性が相対的に低くなっていたものと考えられる。
さらに、自己分散型カーボンブラックが他の顔料と比較して、上記の現象をより引き起こしやすい傾向がある理由としては、カーボンブラック粒子の表面に結合しているイオン性基の密度の差も原因していると考えられる。樹脂分散型カーボンブラックとは異なり、自己分散型カーボンブラックが水性媒体中に分散される際には、樹脂などのようにカーボンブラックの分散状態に影響を及ぼす物質が存在しない。このため、カーボンブラック粒子の表面における状態の差が、カーボンブラックに対する変性シロキサン化合物の吸着のレベルの差として顕著に表れやすくなるものと考えられる。特に、イオン性基が高い密度でカーボンブラック粒子の表面に結合している場合は、変性シロキサン化合物はカーボンブラック粒子の表面に吸着しにくくなる。この場合は、変性シロキサン化合物との親和性を有するカーボンブラック粒子の表面の露出面積は小さくなる。さらに、これに加えて、高い密度でカーボンブラック粒子の表面を覆っているイオン性基による立体障害による影響との相乗効果により、変性シロキサン化合物はカーボンブラックに対して吸着しにくくなる。
一方、イオン性基が低い密度でカーボンブラック粒子の表面に結合している場合は、変性シロキサン化合物との親和性を有するカーボンブラック粒子の表面の露出面積は大きなものとなる。この結果、この場合は、変性シロキサン化合物はカーボンブラックに対して吸着しやすくなる。このため、イオン性基が低い密度でカーボンブラック粒子の表面に結合している場合は、有機顔料などに比べて、画像の耐擦過性が劣る傾向となるものと考えられる。
[顔料インク]
以下、本発明のインクを構成する各成分について説明する。
<カーボンブラック>
本発明者らの検討の結果、上述のような変性シロキサン化合物のカーボンブラックに対する吸着を抑制し、画像の耐擦過性を向上させるためには、カーボンブラック粒子の単位表面積当たりのイオン性基密度をより高くすることが好ましいことがわかった。具体的には、カーボンブラック粒子の表面におけるイオン性基密度を2.6μmol/m2以上とすることが必要である。カーボンブラック粒子の表面におけるイオン性基密度を2.6μmol/m2以上にすることで、カーボンブラックに対する吸着を抑制でき、画像の耐擦過性を向上することができる。
一方、カーボンブラック粒子の単位表面積あたりのイオン性基密度が高いとインク中の塩の含有量が高くなることになるので、長期間インクを保存するような場合に、カーボンブラックが塩析などにより凝集し、インクの保存安定性が低下する場合がある。このため、カーボンブラック粒子の表面におけるイオン性基密度は、3.5μmol/m2以下とする。このようにすれば、十分なインクの保存安定性を得ることができる。
これらのことから、本発明のインクを構成するカーボンブラックは、カーボンブラック粒子の表面におけるイオン性基密度が、2.6μmol/m2以上3.5μmol/m2以下のものであることを必須とすることとした。なお、本発明におけるカーボンブラック粒子の表面におけるイオン性基密度とは、顔料分散液又はインクについて、以下のようにして求めた値である。顔料分散液を用いて測定する場合は、以下のようにしてカーボンブラック粒子の表面におけるイオン性基密度を求めることができる。先ず、カーボンブラック(顔料)の濃度を例えば10質量%になるように水を加えて調製した顔料分散液について、必要に応じて顔料分散液中のカーボンブラック粒子の表面におけるイオン性基の対イオンを常法によりナトリウムイオンにイオン交換する。その後、この顔料分散液におけるナトリウムイオン濃度をイオンメーターなどにより測定する。そして、得られたナトリウムイオン濃度の値から、一般的なBET法などにより測定したカーボンブラックの比表面積の値を元に、イオン性基密度に換算して得られた値を、カーボンブラック粒子の表面におけるイオン性基密度とした。
また、カーボンブラックを含有するインクからも、以下のようにしてカーボンブラック粒子の表面におけるイオン性基密度を求めることができる。先ず、必要に応じてインク中のカーボンブラック粒子の表面におけるイオン性基の対イオンを常法によりナトリウムイオンにイオン交換する。その後、インクからイオン性基を有するカーボンブラックをろ過などにより分離して、カーボンブラックを乾燥させる。次に、このカーボンブラックをイオン交換水に添加した液体におけるナトリウムイオン濃度をイオンメーターなどにより測定する。そして、得られたナトリウムイオン濃度の値から、一般的なBET法などにより測定したカーボンブラックの比表面積の値を元に、イオン性基密度に換算して得られた値を、カーボンブラック粒子の表面におけるイオン性基密度とした。後述する実施例では、顔料分散液中のカーボンブラックについて、イオンメーター(東亜DKK製)を用いてイオン濃度を測定したが、本発明はこれに限られるものではない。
本発明のインクを構成するカーボンブラックは、カーボンブラック粒子の表面にイオン性基を有してなり、前記カーボンブラック粒子の表面におけるイオン性基密度が、2.6μmol/m2以上3.5μmol/m2以下であることが必要である。このようなカーボンブラックは、いわゆる自己分散型カーボンブラックであり、インクを構成する水性媒体中にカーボンブラックを分散するための分散剤の添加が不要となる、又は分散剤の添加量を少量とすることができる。本発明に用いることができるカーボンブラックは、上記の条件を満たせば特に限定されるものではなく、以下に挙げるようなものをいずれも用いることができる。具体的には、ジアゾカップリング法によりイオン性基を有する化合物をその表面に結合したカーボンブラックや、次亜塩素酸ソーダ処理や水中オゾン処理などによる表面酸化処理によりイオン性基をその表面に導入したカーボンブラックなどが挙げられる。また、上記の条件を満たすカーボンブラックに加えてさらに、イオン性基を有する分散剤(樹脂分散剤)や、樹脂分散剤などが吸着したカーボンブラックなどを併用することもできる。これらのカーボンブラックは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
このようなカーボンブラックの中でも、カーボンブラック粒子の表面のイオン性基が、カーボンブラック粒子の表面に、直接又は他の原子団(−R−)を介して結合してなるカーボンブラックであることが好ましい。このようなカーボンブラックは、例えば、ジアゾカップリング法を用いて調製することができる。特に本発明においては、−(COOM)n、−SO3M、及び−PO3HM2からなる群から選ばれる少なくともひとつのイオン性基が、カーボンブラック粒子の表面に直接又は他の原子団を介して化学的に結合したカーボンブラックを用いることが好ましい。なお、これらの式中のMは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムであり、nは1以上の数である。さらには、他の原子団(−R−)が、メチレン基、エチレン基、及びプロピレン基などの炭素原子数1乃至12のアルキレン基、置換若しくは未置換のフェニレン基、又は置換若しくは未置換のナフチレン基であることが好ましい。
本発明においては、画像の耐水性を比較的容易に向上できるため、前記したイオン性基の中でも、−(COOM)nがカーボンブラック粒子の表面に直接又は他の原子団(−R−)を介して化学的に結合したものを用いることがより好ましい。特には、カーボンブラック粒子の表面に、−C64−COOM基や−C63−(COOM)2基(式中のMは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムである)が結合したものを用いることが特に好ましい。
本発明のインクに用いることができるカーボンブラックは特に限定されず、いずれのものも用いることができるが、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックなどのカーボンブラックを用いることができる。具体的には、例えば、以下の市販品などを用いることができる。
レイヴァン:1170、1190ULTRA−II、1200、1250、1255、1500、2000、3500、5000ULTRA、5250、5750、7000(以上、コロンビア製)。ブラックパールズL、リーガル:330R、400R、660R、モウグルL、モナク:700、800、880、900、1000、1100、1300、1400、2000、ヴァルカンXC−72R(以上、キャボット製)。カラーブラック:FW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、プリンテックス:35、U、V、140U、140V、スペシャルブラック:6、5、4A、4(以上、デグッサ製)。No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上、三菱化学製)。
また、新たに調製したカーボンブラックを用いることもできる。勿論、本発明はこれらに限定されるものではなく、従来のカーボンブラックをいずれも用いることができる。また、カーボンブラックに限定されず、マグネタイト、フェライトなどの磁性体微粒子や、チタンブラックなどを顔料として用いてもよい。インク中のカーボンブラックの含有量(質量%)は、インク全質量を基準として0.1質量%以上15.0質量%以下、さらには1.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
<変性シロキサン化合物>
本発明のインクを構成する変性シロキサン化合物は、下記式(1)で表される変性シロキサン化合物、下記式(2)で表される変性シロキサン化合物、及び下記式(3)で表される変性シロキサン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
なお、下記の、式(1)、式(2)、及び式(3)で表される変性シロキサン化合物中において、(C24O)はエチレンオキサイドユニット、(C36O)はプロピレンオキサイドユニットをそれぞれ示す。これらの変性シロキサン化合物において、エチレンオキサイドユニットとプロピレンオキサイドユニットとが、その構造中に存在する形態は、ランダムの形態やブロックの形態など、どのような形態であってもよい。しかし、本発明において、これらのユニットは、ランダムの形態又はブロックの形態で存在していることが好ましい。ここで、本発明において、これらのユニットがランダムの形態で存在することとは、エチレンオキサイドユニットとプロピレンオキサイドユニットとが不規則に配列していることを意味している。また、これらのユニットがブロックの形態で存在することとは、エチレンオキサイドユニット又はプロピレンオキサイドユニットのそれぞれの繰り返し構造を単位として構成された各ブロックが規則的に配列していることを意味している。
〔式(1)で表される変性シロキサン化合物〕
Figure 2010053308
(式(1)中、R1は炭素数1以上20以下のアルキレン基であり、R2は水素原子又は炭素数1以上20以下のアルキル基である。また、mは1以上250以下の数、nは1以上100以下の数、aは1以上100以下の数、bは0以上100以下の数である。)
1は、炭素数1以上10以下のアルキレン基であることが好ましく、さらには、エチレン基、プロピレン基、及びブチレン基などが特に好ましい。R2は炭素数1以上20以下のアルキル基であることが好ましく、さらには、エチル基、又はプロピル基が好ましい。mは1以上250以下の数、さらには1以上100以下の数、特には1以上50以下の数であることが好ましい。nは1以上100以下の数、さらには1以上50以下の数であることが好ましい。aは1以上100以下の数、さらには1以上50以下の数であることが好ましい。bは0以上100以下の数、さらには1以上50以下の数であることが好ましい。
本発明で使用できる上記式(1)で表される変性シロキサン化合物は、下記式で表されるような2種の化合物の付加反応で得られる。すなわち、n個のSiに結合したn個の水素原子を有するポリシロキサンと、末端に1のアルケン基と、エチレンオキサイドユニット及び/又はプロピレンオキサイドユニットとをもつ構造の化合物との付加反応で得られる。具体的には、ポリシロキサンの水素原子に、アルケン基が付加することで得られる。これらの式中のmは1以上250以下の数、nは1以上100以下の数、aは1以上100以下の数、bは0以上100以下の数である。Rは、炭素数1以上20以下のアルケン基である。
Figure 2010053308
〔式(2)で表される変性シロキサン化合物〕
Figure 2010053308
(式(2)中、R3はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上20以下のアルキル基であり、R4は炭素数1以上20以下のアルキレン基であり、pは1以上450以下の数、cは1以上250以下の数、dは0以上100以下の数である。)
3は水素原子又は炭素数1以上10以下のアルキル基であることが好ましく、さらには、水素原子、エチル基、又はプロピル基が好ましい。また、R4は、炭素数1以上10以下のアルキレン基であることが好ましく、さらには、エチレン基、プロピレン基、及びブチレン基などが特に好ましい。pは1以上450以下の数、さらには1以上100以下の数、特には1以上50以下の数であることが好ましい。
本発明で使用できる上記式(2)で表される変性シロキサン化合物は、下記式で表されるような2種の化合物の付加反応で得られる。すなわち、両末端のSiに水素原子を有するポリシロキサンと、末端に1のアルケン基と、エチレンオキサイドユニット及び/又はプロピレンオキサイドユニットとをもつ構造の化合物との付加反応で得られる。具体的には、ポリシロキサンの水素原子に、アルケン基が付加することで得られる。これらの式中のpは1以上450以下の数、cは1以上250以下の数、dは0以上100以下の数である。Rは、炭素数1以上20以下のアルケン基である。
Figure 2010053308
〔式(3)で表される変性シロキサン化合物〕
Figure 2010053308
(式(3)中、R5はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上20以下のアルキル基であり、R6はそれぞれ独立に、炭素数1以上20以下のアルキレン基である。qは1以上100以下の数、rは1以上100以下の数、eは1以上100以下の数、fは0以上100以下の数である。)
5は水素原子又は炭素数1以上10以下のアルキル基であることが好ましく、さらには、水素原子、エチル基、又はプロピル基が好ましい。また、R6は、炭素数1以上10以下のアルキレン基であることが好ましく、さらには、エチレン基、プロピレン基、及びブチレン基などが特に好ましい。eは1以上100以下の数、さらには1以上50以下の数であることが好ましい。fは1以上100以下の数、さらには1以上50以下の数であることが好ましい。
本発明で使用できる上記式(3)で表される変性シロキサン化合物は、下記式で表されるような2種の化合物の付加反応で得られる。すなわち、両末端のSiに水素原子を有するポリシロキサンと、両末端のアルケン基と、エチレンオキサイドユニット及び/又はプロピレンオキサイドユニットとをもつ構造の化合物との付加反応で得られる。具体的には、ポリシロキサンの水素原子に、アルケン基が付加することで得られる。これらの式中のqは1以上100以下の数、eは1以上100以下の数、fは0以上100以下の数である。Rは、炭素数1以上20以下のアルケン基である。
Figure 2010053308
本発明では、色材としてカーボンブラックを含有するインクを用いて形成した画像の耐擦過性を、有機顔料を含有するインクを用いて形成した画像と同等とすることを主たる目的としている。したがって、インクに用いる変性シロキサン化合物としては、上記式(1)、式(2)及び式(3)で表される変性シロキサン化合物からなる群、から選ばれる少なくとも1種の変性シロキサン化合物はいずれのものも用いることができる。
本発明者らの検討によれば、本発明のインクを設計する場合、上記式(1)、式(2)及び式(3)で表される変性シロキサン化合物の中でも、下記のような特性を有するものを使用することが好ましい。まず、本発明者らの検討の結果、画像の動摩擦係数が0.40以下であるような、より優れた耐擦過性を有する画像を得るためには、特に、以下の重量平均分子量を有する変性シロキサン化合物を用いることが特に好ましいことがわかった。具体的には、式(1)で表される変性シロキサン化合物の場合は、その重量平均分子量(MW)が8,000以上30,000以下、さらには8,500以上30,000以下であることが特に好ましい。式(2)又は式(3)で表される変性シロキサン化合物の場合は、その重量平均分子量(MW)が8,000以上50,000未満、さらには8,500以上30,000以下であることが特に好ましい。なお、これらの重量平均分子量(MW)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される分子量分布における、ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
上記の結果は、たとえ塗膜表面のスリップ性(滑り性)を向上させる効果を有する変性シロキサン化合物であったとしても、必ずしも本発明の最適な効果が得られない場合があることを意味している。すなわち、例えば、重量平均分子量の値が上記範囲外の変性シロキサン化合物を含有するインクを用いて画像を形成した場合には、変性シロキサン化合物が本来有する特性が充分に得られない場合もある。この理由は明確ではないが、本発明者らは、以下のように推測している。本発明の目的が達成されるメカニズムとして、樹脂と変性シロキサン化合物とが吸着することが考えられることは先にも述べた。しかし、例えば、先に挙げた式(1)で表される変性シロキサン化合物の重量平均分子量が30,000を超える場合、立体障害などの影響から、樹脂と変性シロキサン化合物との吸着が起きにくくなる場合があると考えられる。また、先に挙げた式(2)や式(3)で表される変性シロキサン化合物の重量平均分子量が50,000以上である場合も、立体障害などの影響から樹脂と変性シロキサン化合物との吸着が起きにくくなる場合があると考えられる。その結果、樹脂に吸着しなかった変性シロキサン化合物が記録媒体の内部に浸透してしまい、画像の動摩擦係数を下げることができない場合が生じたものと推測している。この一方で、例えば、式(1)、式(2)及び式(3)で表される変性シロキサン化合物の重量平均分子量が8,000未満であると、画像の表面に配向する変性シロキサン化合物が少なくなるため、画像の動摩擦係数を下げられない場合が生じたと推測している。或いは、重量平均分子量が8,000未満である場合は、変性シロキサン化合物そのものが記録媒体の内部に浸透するため、画像の動摩擦係数を下げられない場合が生じたと推測している。
本発明者らの検討の結果、前記式(1)で表される変性シロキサン化合物をインクの構成成分とする場合、該化合物の中でも、特定のHLB(グリフィン法により算出された値)を有する変性シロキサン化合物を用いることが好ましいことがわかった。すなわち、式(1)で表される変性シロキサン化合物を含んで本発明のインクを設計する場合は、そのHLBが1以上、さらには5以上であるものを適用することが好ましく、また、HLBが11以下であるものを使用することが好ましい。
本発明のインクを、式(1)で表される変性シロキサン化合物を含有してなるものとする場合に、該化合物の重量平均分子量、さらにはHLBを、前記した範囲とすることで下記の効果が得られる。すなわち、このような構成とすれば、インクを記録媒体に付与した場合に、記録媒体内部に浸透する変性シロキサン化合物をより減少させることができ、この結果、上記式(1)で表される変性シロキサン化合物が記録媒体上に残りやすくなる。そのため、インク中の上記式(1)で表される変性シロキサン化合物の含有量が少ない場合であっても、画像の動摩擦係数を効果的に下げることができる。前記条件を満たし、本発明において特に好ましく用いることができる上記式(1)で表される変性シロキサン化合物としては、下記のものが挙げられる。例えば、FZ−2104、FZ−2191、FZ−2130(以上、東レ・ダウコーニング製)、KF−615A(信越化学製)、TSF4452(GE東芝シリコーン製)などである。勿論、本発明はこれらに限られるものではない。
本発明者らの検討の結果、前記式(2)で表される変性シロキサン化合物をインクの構成成分とする場合、該化合物の重量平均分子量を先に述べた範囲とすることで下記の効果が得られる。すなわち、このような構成とすれば、インクを記録媒体に付与した場合に、記録媒体の内部に浸透する前記変性シロキサン化合物がより減少し、この結果、上記式(2)で表される変性シロキサン化合物が記録媒体上に残りやすくなる。そのため、インク中の上記式(2)で表される変性シロキサン化合物の含有量が少ない場合であっても、画像の動摩擦係数を効果的に下げることができる。前記条件を満たし、本発明において特に好ましく用いることができる上記式(2)で表される変性シロキサン化合物としては、例えば、BYK333(ビックケミー製)などが挙げられる。勿論、本発明はこれらに限られるものではない。
本発明者らの検討の結果、前記式(3)で表される変性シロキサン化合物をインクの構成成分とする場合、該化合物の中でも、特定のHLB(グリフィン法により算出された値)を有する変性シロキサン化合物を用いることが好ましいことがわかった。すなわち、上記式(3)で表される変性シロキサン化合物は、そのHLBが1以上7未満であることが好ましい。
本発明のインクを、式(3)で表される変性シロキサン化合物を含有してなるものとする場合に、該化合物の重量平均分子量、さらにはHLBを、前記した範囲とすることで下記の効果が得られる。すなわち、このような構成とすれば、インクを記録媒体に付与した場合に、記録媒体内部に浸透する変性シロキサン化合物をより減少させることができ、この結果、上記式(3)で表される変性シロキサン化合物が記録媒体上に残りやすくなる。そのため、インク中の上記式(3)で表される変性シロキサン化合物の含有量が少ない場合であっても、画像の動摩擦係数を効果的に下げることができる。前記条件を満たし、本発明において特に好ましく用いることができる上記式(3)で表される変性シロキサン化合物としては、下記のものが挙げられる。例えば、FZ−2203、FZ−2207、FZ−2222、FZ−2231(以上、東レ・ダウコーニング製)などが挙げられる。勿論、本発明はこれらに限られるものではない。
先述したように、変性シロキサン化合物の重量平均分子量(MW)は、テトラヒドロフラン(THF)を移動相としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。本発明で使用した測定方法は、以下の通りである。なお、下記で使用した、フィルター、カラム、標準ポリスチレン試料及びその分子量などの測定条件は、下記に限られるものではない。
先ず、測定対象の試料をテトラヒドロフラン(THF)に入れて数時間静置して溶解し、溶液を調製する。その後、ポアサイズ0.45μmの耐溶剤性メンブランフィルター(例えば、商品名:TITAN2 Syringe Filter、PTFE、0.45μm;SUN−SRi製)で前記溶液をろ過して、測定用の試料溶液とする。なお、試料溶液中の試料の濃度は、測定対象の変性シロキサン化合物の含有量が0.1質量%〜0.5質量%の範囲内になるように調整する。
GPCには、RI検出器(Refractive Index Detector)を用いる。また、103乃至2×106の分子量の範囲を正確に測定するために、市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせることが好ましい。例えば、Shodex KF−806M(昭和電工製)を4本組み合わせて用いることや、これに相当するものを用いることができる。40.0℃のヒートチャンバー中で安定化したカラムに移動相としてTHFを流速1mL/minで流し、上記の試料溶液を約0.1mL注入する。
試料の重量平均分子量は、標準ポリスチレン試料で作成した分子量検量線を用いて決定する。標準ポリスチレン試料は、分子量が102乃至107程度のもの(例えば、Polymer Laboratories製)を用い、また、少なくとも10種程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適切である。
インク中の変性シロキサン化合物の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.2質量%以上5.0質量%以下、さらには0.4質量%以上3.0質量%未満であることが好ましい。中でも、先に示した式(2)で表される変性シロキサン化合物を用いる場合は、インク中の該変性シロキサン化合物の含有量(質量%)が、1.0質量%以上3.0質量%未満となるように調製することが特に好ましい。本発明者らの検討によれば、これらの変性シロキサン化合物の含有量が0.2質量%以上、さらには0.4質量%以上であると、変性シロキサン化合物を記録媒体上に十分残すことができ、画像の耐擦過性が特に優れたものとなる。一方、変性シロキサン化合物の含有量が5.0質量%以下、さらには3.0質量%未満であると、インクを長期間保存する場合などにも、変性シロキサン化合物が顔料の分散安定性に与える影響が少ないため、特に好ましい。
<樹脂>
本発明のインクに用いる樹脂は、先に述べたように、インクを記録媒体に付与した後に記録媒体上に残り、ある程度の強度を有する膜を形成することができる樹脂であれば、いずれのものも用いることができる。本発明者らの検討の結果、インクジェット用とした場合に特に問題となる樹脂に起因する吐出口の濡れ現象を抑制するためには、以下のような特性を有する樹脂A及び樹脂Bの少なくとも1種の樹脂を用いることが最適であることがわかった。
樹脂Aは、酸価が90mgKOH/g以上150mgKOH/g以下で、かつ、樹脂を構成するモノマーの溶解度パラメーターより算出される樹脂の水素結合項(δh)が1.0cal0.5/cm1.5以上3.7cal0.5/cm1.5以下のものである。樹脂Bは、酸価が150mgKOH/gを超えて200mgKOH/g以下で、かつ、樹脂を構成するモノマーの溶解度パラメーターより算出される樹脂の水素結合項が1.0cal0.5/cm1.5以上1.5cal0.5/cm1.5以下のものである。
本発明において使用できる樹脂を規定する、「樹脂を構成するモノマーの溶解度パラメーターより算出される樹脂の水素結合項(δh)」について説明する。先ず、溶解度パラメーターについて説明する。溶解度パラメーターは、化合物中の官能基の種類によって影響を受ける。そして、溶解度パラメーターは複数の化合物の溶解性、すなわち、それらの化合物同士の親和性の強さを判断する因子の一つとなるものであり、複数の化合物それぞれの溶解度パラメーターが近いと、これらの化合物同士の溶解性が高くなる傾向がある。溶解度パラメーターは、電子分布の一次的な偏りに起因する分散力項(δd)、双極子モーメントより発生する引斥力に起因する極性項(δp)、活性水素や孤立電子対により発生する水素結合に起因する水素結合項(δh)にわけられる。本発明においては、溶解度パラメーターを樹脂に適用するが、樹脂の水素結合項(δh)の値が大きい程、樹脂と水との親和性は大きくなる。樹脂の水素結合項(δh)は、樹脂を構成するモノマーの溶解度パラメーターから算出することができる。その場合、Krevelenの提案した、有機分子を原子団として取り扱った原子団総和法を利用して求めることができる。(Krevelen、Properties of Polymer 2nd Edition、New York,154(1976)参照。)。この方法は、以下のようなものである。
先ず、有機分子の各原子団の、モルあたりの分散力パラメーターFdi、モルあたりの極性力パラメーターFpi、モルあたりの水素結合力パラメーターFhiを求める。そして、これらの値を用いることで、下記のようにして溶解度パラメーター(δ)を求めることができる。本発明では、後述するように、上記の考え方を利用し、樹脂を構成する各モノマーにおける固有の溶解度パラメーターを用いて樹脂の水素結合項(δh)を算出した。
Figure 2010053308
本発明における、樹脂を構成するモノマーの溶解度パラメーターより算出される樹脂の水素結合項(δh)は、具体的には下記のようにして求めた値である。樹脂を構成する各モノマー固有の溶解度パラメーターより、樹脂を構成する各モノマーの水素結合項(δh)を算出する。そして、樹脂を構成する各モノマーの水素結合項(δh)に、樹脂を構成する各モノマーの組成(質量)比(合計を1とした組成比)をかけた値をそれぞれ求め、得られた値を足し合わせることによって樹脂の水素結合項(δh)を求める。以下、これを単に「樹脂の水素結合項(δh)」と呼ぶ。
本発明のインクを構成する樹脂は、その酸価が90mgKOH/gを下回ると、樹脂をアルカリで溶解できない場合や、インクを長期間保存する際に、樹脂が析出する場合がある。さらに、酸価が90mgKOH/gを下回ると、本発明が目的とする耐擦過性を得るのに充分な含有量の樹脂をインクに含有させ、かかるインクをサーマルタイプのインクジェット方式で吐出すると、十分な吐出安定性を維持するのが困難となる場合がある。このため、樹脂の酸価は90mgKOH/g以上とすることが好ましい。一方、樹脂の酸価が150mgKOH/gを超える場合、樹脂がインク中の水性媒体と共に記録媒体の内部に浸透しやすくなり、本発明が目的とする高いレベルの耐擦過性が得られない場合がある。したがって、樹脂の酸価が150mgKOH/gを超える場合は、樹脂の水素結合項(δh)を1.5cal0.5/cm1.5以下とすることが好ましい。しかし、樹脂の酸価が200mgKOH/gを上回ると、樹脂の水素結合項(δh)をどのように規定しても、本発明が目的とする高いレベルの耐擦過性を得るのに十分な量の樹脂を記録媒体上へ残すことができない場合がある。このため、樹脂の酸価は200mgKOH/g以下とすることが好ましい。
さらに、本発明のインクを構成する樹脂は、樹脂の水素結合項(δh)が1.0J0.5/cm1.5を下回ると、樹脂に起因する吐出口の濡れ現象が顕著となる場合がある。この結果、インク滴の飛行曲がりが起こるなど、吐出安定性が低下する場合がある。このため、樹脂の水素結合項(δh)は1.0J0.5/cm1.5以上とすることが好ましい。一方、樹脂の水素結合項が3.7cal0.5/cm1.5を上回ると、樹脂の酸価をどのように規定しても、樹脂がインク中の水性媒体と共に記録媒体の内部に浸透しやすくなり、本発明が目的とする耐擦過性が得られない場合がある。
これらのことをまとめると、本発明のインクを構成する樹脂A及び樹脂Bの少なくとも1種の樹脂は、以下に述べるような、酸価及び水素結合項(δh)を組み合わせた特性を有することが最適である。樹脂Aは、酸価が90mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であり、かつ、樹脂の水素結合項(δh)が1.0cal0.5/cm1.5以上3.7cal0.5/cm1.5以下のものであることが好ましい。さらには、前記樹脂Aは、樹脂の水素結合項(δh)が1.0cal0.5/cm1.5以上3.2cal0.5/cm1.5以下のものであることが好ましい。特には、前記樹脂Aは、樹脂の水素結合項(δh)が1.2cal0.5/cm1.5以上1.8cal0.5/cm1.5以下のものであることが好ましい。樹脂Bは、酸価が150mgKOH/gを超えて200mgKOH/g以下であり、かつ、樹脂の水素結合項(δh)が1.0cal0.5/cm1.5以上1.5cal0.5/cm1.5以下であることが好ましい。さらには、前記樹脂Bは、樹脂の水素結合項(δh)が1.2cal0.5/cm1.5以上1.5cal0.5/cm1.5以下であることがより好ましい。
本発明のインクに用いる樹脂を構成するモノマーは、得られる樹脂が、上記で述べたような酸価及び樹脂の水素結合項(δh)の特性を有する樹脂とすることができるものであれば、いずれのものも用いることができる。具体的には、本発明のインクを構成する樹脂を作製する場合に使用するモノマーとしては、以下に挙げるモノマーなどを用いることができる。スチレン、α−メチルスチレンなど。エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、ベンジルメタクリレートなど。アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、エタアクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、フマール酸などのカルボキシル基を有するモノマーなど。スチレンスルホン酸、スルホン酸−2−プロピルアクリルアミド、アクリル酸−2−スルホン酸エチル、メタクリル酸−2−スルホン酸エチル、ブチルアクリルアミドスルホン酸などのスルホン酸基を有するモノマーなど。メタクリル酸−2−ホスホン酸エチル、アクリル酸−2−ホスホン酸エチルなどのホスホン酸基を有するモノマーなど。
本発明のインクの組成に、前記した樹脂Aを用いる場合、上記に挙げたモノマーの中でも、スチレン、n−ブチルアクリレート、及びベンジルメタクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーを含むことが好ましい。さらには、樹脂Aを構成するモノマーが、スチレン及びn−ブチルアクリレートを共に有するものであることがより好ましい。このとき、樹脂Aを構成するモノマーの中で、スチレンを基準としたn−ブチルアクリレートの質量比率(n−ブチルアクリレート/スチレン)が、0.2を超えて0.35未満であることが特に好ましい。また、本発明のインクの組成に、前記樹脂Bを用いる場合、上記で挙げたモノマーの中でも、スチレン、及びα−メチルスチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーを含むことが好ましい。さらには、樹脂Bを構成するモノマーが、スチレン及びα−メチルスチレンを共に有することがより好ましい。このとき、樹脂Bを構成するモノマーの中で、スチレンを基準としたα−メチルスチレンの質量比率(α−メチルスチレン/スチレン)が、0.19以下であることが特に好ましい。なお、本発明においては、エチレンオキサイドなどのノニオン性基を有するモノマーを用いると、記録媒体上で形成した膜の強度が小さくなる場合があるため、あまり好ましくない。
本発明のインクを構成する樹脂(樹脂A及び樹脂Bの少なくとも1種の樹脂)の重量平均分子量は、5,000以上15,000以下、さらには6,000以上9,000以下であることが好ましい。重量平均分子量が上記範囲である樹脂は、インクを記録媒体に付与した後に記録媒体上に残りやすく、さらに立体障害の影響を受けにくい。このため、樹脂が、本発明のインクを構成する変性シロキサン化合物と吸着しやすくなり、画像の動摩擦係数を特に効果的に下げることができる。
インク中の樹脂(樹脂A及び樹脂Bの少なくとも1種の樹脂)の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.5質量%以上5.0質量%以下、さらには2.5質量%以上4.0質量%以下であることが好ましい。樹脂の含有量が上記範囲であると、耐擦過性を十分に得ることができる量の樹脂を記録媒体上に残すことができる。さらに、樹脂の含有量が上記範囲であると、樹脂に起因する吐出口の濡れ現象を抑制することができ、インク滴の飛行曲がりなどの、吐出安定性の低下が起こりにくい。
さらに、コート層を有する記録媒体に本発明のインクを付与する場合、インク中の顔料は記録媒体の内部に浸透することなく、記録媒体上で凝集物を形成した状態で存在する。このとき、前記凝集物を包含するのに充分な量の樹脂を記録媒体上に残すことで、画像の耐擦過性を効果的に向上することができる。このため、インク中の樹脂(樹脂A及び樹脂Bの少なくとも1種の樹脂)の含有量(質量%)が、カーボンブラック(顔料)の含有量(質量%)を基準として(樹脂/顔料)1.2倍以上であることが好ましい。特に、インク中のカーボンブラック(顔料)の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として0.1質量%以上、さらには0.3質量%以上、また1.2質量%未満である場合、樹脂の含有量が顔料の含有量を基準として3.0倍以上であることが特に好ましい。また、インク中の樹脂の含有量(質量%)が、カーボンブラック(顔料)の含有量(質量%)を基準として(樹脂/顔料)10.0倍以下であることが好ましい。
<水性媒体>
本発明のインクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を用いることができる。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。
水溶性有機溶剤は、水溶性であれば特に制限はなく、以下に挙げるようなものを1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。具体的には、例えば、以下の水溶性有機溶剤を用いることができる。1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどのアルカンジオール。ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテルなどのグリコールエーテル。エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第2ブタノール、第3ブタノールなどの炭素数1乃至4のアルキルアルコール。N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのカルボン酸アミド。アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オンなどのケトン又はケトアルコール。テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル。グリセリン。エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのエチレングリコール類。1,2−又は1,3−プロピレングリコール、1,2−又は1,4−ブチレングリコール、平均分子量200乃至1,000のポリエチレングリコール、チオジグリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体などのグリコール類。2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルモルホリンなどの複素環類。ジメチルスルホキシドなどの含硫黄化合物など。
水は脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。
<その他の成分>
本発明のインクには、上記成分の他に、尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの保湿性固形分を含有してもよい。インク中の保湿性固形分の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上20.0質量%以下、さらには3.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
さらに、必要に応じて所望の物性値を有するインクとするために、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤などの種々の添加剤を含有してもよい。
[インクジェット記録方法]
本発明のインクは、インクをインクジェット方式で吐出するインクジェット記録方法に適用することが特に好ましい。インクジェット記録方法は、インクに力学的エネルギーを作用させることによりインクを吐出する記録方法や、インクに熱エネルギーを作用させることによりインクを吐出する記録方法などがある。特に、本発明のインクは、熱エネルギーを利用したインクジェット記録方法に特に好ましく適用することができる。
[インクカートリッジ]
本発明のインクカートリッジは、インクを収容してなるインク収容部を備えてなるものであり、前記インク収容部に収容されているインクが、上記本発明のインクであることを特徴とする。
[記録ユニット]
本発明の記録ユニットは、インクを収容してなるインク収容部と、インクを吐出する記録ヘッドとを備えてなる記録ユニットであって、前記インク収容部に収容されているインクが、上記本発明のインクであることを特徴とする。特に、前記記録ヘッドが、インクに熱エネルギーを作用させることによりインクを吐出する記録ユニットであることがより好ましい。
[インクジェット記録装置]
本発明のインクジェット記録装置は、インクを収容してなるインク収容部と、インクを吐出する記録ヘッドとを備えてなるインクジェット記録装置であって、前記インク収容部に収容されているインクが、上記本発明のインクであることを特徴とする。特に、前記記録ヘッドが、インクに熱エネルギーを作用させることによりインクを吐出するインクジェット記録装置であることがより好ましい。
インクジェット記録装置の一例について以下に説明する。先ず、熱エネルギーを利用したインクジェット記録装置の主要部である記録ヘッドの構成の一例を図2及び図3に示す。図2は、インク流路に沿った記録ヘッド13の断面図であり、図3は図2のA−B線での切断面図である。記録ヘッド13はインク流路(ノズル)14を有する部材と発熱素子基板15とで構成される。発熱素子基板15は、保護層16、電極17−1及び17−2、発熱抵抗体層18、蓄熱層19、基板20で構成される。
記録ヘッド13の電極17−1及び17−2にパルス状の電気信号が印加されると、発熱素子基板15のnで示される領域が急速に発熱し、この表面に接しているインク21に気泡が発生する。そして、気泡の圧力でメニスカス23が突出し、インク21はインク滴24として、ノズル14の吐出口22から記録媒体25に向かって吐出される。
図4は、図2に示した記録ヘッドを多数並べたマルチヘッドの一例の外観図である。マルチヘッドは、マルチノズル26を有するガラス板27と、図2と同様の記録ヘッド28で構成される。
図5は、記録ヘッドを組み込んだインクジェット記録装置の一例を示す斜視図である。ブレード61はワイピング部材であり、その一端はブレード保持部材によって保持されており、カンチレバーの形態をなす。ブレード61は記録ヘッド65による記録領域に隣接した位置に配置され、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。
62は記録ヘッド65の吐出口面のキャップであり、ブレード61に隣接するホームポジションに配置され、記録ヘッド65の移動方向と垂直な方向に移動して、インク吐出口面と当接し、キャッピングを行う構成を備える。63はブレード61に隣接して設けられるインク吸収体であり、ブレード61と同様に、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。吐出回復部64は、ブレード61、キャップ62、及びインク吸収体63で構成される。ブレード61及びインク吸収体63によって吐出口面の水分、塵埃などの除去が行われる。
65は、吐出エネルギー発生手段を有し、吐出口を配した吐出口面に対向する記録媒体にインクを吐出して記録を行う記録ヘッド、66は記録ヘッド65を搭載して記録ヘッド65の移動を行うためのキャリッジである。キャリッジ66はガイド軸67と摺動可能に係合し、キャリッジ66の一部はモーター68によって駆動されるベルト69と接続(不図示)している。これによりキャリッジ66はガイド軸67に沿った移動が可能となり、記録ヘッド65による記録領域及びそれに隣接した領域の移動が可能となる。
51は記録媒体を挿入する給紙部、52は不図示のモーターにより駆動される紙送りローラーである。これらの構成により記録ヘッド65の吐出口面と対向する位置へ記録媒体が給紙され、記録の進行につれて排紙ローラー53を有する排紙部へ排紙される。記録ヘッド65による記録が終了して、記録ヘッドがホームポジションへ戻る際に、吐出回復部64のキャップ62は記録ヘッド65の移動経路から退避しているが、ブレード61は移動経路中に突出している。このようにして、記録ヘッド65の吐出口がワイピングされる。
キャップ62が記録ヘッド65の吐出口面に当接してキャッピングを行う際には、キャップ62は記録ヘッドの移動経路中に突出するように移動する。記録ヘッド65がホームポジションから記録開始位置へ移動する際には、キャップ62及びブレード61は、上述のワイピングの際と同一の位置にある。この結果、この移動においても記録ヘッド65の吐出口面がワイピングされる。記録ヘッドのホームポジションへの移動は、記録終了時や吐出回復時ばかりでなく、記録ヘッドが記録のために記録領域を移動する間にも、所定の間隔で記録領域に隣接したホームポジションへ移動し、この移動に伴ってもワイピングが行われる。
図6は、記録ヘッドにインク供給部材、例えば、チューブを介して供給されるインクを収容したインクカートリッジの一例を示す図である。ここで40は供給用インクを収納したインク収容部、例えば、インク袋であり、その先端にはゴム製の栓42が設けられている。この栓42に針(不図示)を挿入することにより、インク袋40中のインクを記録ヘッドに供給可能にする。44は廃インクを受容するインク吸収体である。
記録ヘッドとインクカートリッジとが別体となったものに限らず、図7に示すように、それらが一体になったものも好適に用いることができる。図7において、70は記録ユニットであり、この中にはインクを収容したインク収容部、例えば、インク吸収体が収納されており、インク吸収体中のインクが複数の吐出口を有する記録ヘッド部71からインク滴として吐出される。また、インク吸収体を用いず、インク収容部が内部にバネなどを仕込んだインク袋であるような構造でもよい。72はカートリッジ内部を大気に連通させるための大気連通口である。この記録ユニット70は図5に示す記録ヘッド65に換えて用いられるものであって、キャリッジ66に対して着脱自在になっている。
次に、力学的エネルギーを利用したインクジェット記録装置について説明する。複数のノズルを有するノズル形成基板、圧電材料と導電材料で構成される圧力発生素子、圧力発生素子の周囲を満たすインクを備え、印加電圧により圧力発生素子を変位させ、インク滴を吐出口から吐出する記録ヘッドを有することが特徴である。図8は、記録ヘッドの構成の一例を示す模式図である。記録ヘッドは、インク室に連通するインク流路80、オリフィスプレート81、インクに圧力を作用させる振動板82、振動板82に接合されて電気信号により変位する圧電素子83、オリフィスプレート81や振動板82などを支持固定する基板84で構成される。圧電素子83にパルス状の電圧を与えることで発生した歪み応力は、圧電素子83に接合された振動板を変形させ、インク流路80内のインクを加圧することで、オリフィスプレート81の吐出口85からインク滴を吐出する。このような記録ヘッドは、図5と同様のインクジェット記録装置に組み込んで用いることができる。
以下、実施例、比較例及び参考例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、「部」又は「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
<顔料分散液の調製>
(顔料分散液Aの調製)
5.5gの水に5gの濃塩酸を溶かした溶液に、5℃に冷却した状態でp−アミノ安息香酸1.55gを加えた。次に、この溶液の入った容器をアイスバスに入れて液を撹拌することにより溶液を常に10℃以下に保った状態とし、これに5℃の水9gに亜硝酸ナトリウム1.8gを溶かした溶液を加えた。この溶液をさらに15分間撹拌した後、比表面積が220m2/gでDBP吸油量が105mL/100gであるカーボンブラック6gを撹拌下で加えた。その後、さらに15分間撹拌した。得られたスラリーをろ紙(商品名:標準用濾紙No.2;アドバンテック製)でろ過した後、粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させ、自己分散型カーボンブラックAを調製した。さらに、上記で得られた自己分散型カーボンブラックAに水を加えて顔料濃度が10質量%となるように分散させ、分散液を調製した。上記の方法により、カーボンブラック粒子の表面に−C64−COONa基が導入されてなる自己分散型カーボンブラックAが水中に分散された状態の顔料分散液Aを得た。上記で調製した自己分散型カーボンブラックAのイオン性基密度は、2.6μmol/m2であった。この際に用いたイオン性基密度の測定方法は、下記の通りである。上記で調製した顔料分散液A中のナトリウムイオン濃度をイオンメーター(東亜DKK製)を用いて測定し、その値から自己分散型カーボンブラックAのイオン性基密度に換算した。
(顔料分散液Bの調製)
5.5gの水に5gの濃塩酸を溶かした溶液に、5℃に冷却した状態で4−アミノフタル酸1.5gを加えた。次に、この溶液の入った容器をアイスバスに入れて液を撹拌することにより溶液を常に10℃以下に保った状態とし、これに5℃の水9gに亜硝酸ナトリウム1.8gを溶かした溶液を加えた。この溶液をさらに15分間撹拌した後、比表面積が220m2/gでDBP吸油量が105mL/100gであるカーボンブラック6gを撹拌下で加えた。その後、さらに15分間撹拌した。得られたスラリーをろ紙(商品名:標準用濾紙No.2;アドバンテック製)でろ過した後、粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させ、自己分散型カーボンブラックBを調製した。さらに、上記で得られた自己分散型カーボンブラックBに水を加えて顔料濃度が10質量%となるように分散させ、分散液を調製した。上記の方法により、カーボンブラック粒子の表面に−C63−(COONa)2基が導入されてなる自己分散型カーボンブラックBが水中に分散された状態の顔料分散液Bを得た。上記で調製した自己分散型カーボンブラックBのイオン性基密度を、自己分散型カーボンブラックAの場合と同様の方法で測定したところ、3.1μmol/m2であった。
(顔料分散液Cの調製)
5.5gの水に6.8gの濃塩酸を溶かした溶液に、5℃に冷却した状態でp−アミノ安息香酸2.10gを加えた。次に、この溶液の入った容器をアイスバスに入れて液を撹拌することにより溶液を常に10℃以下に保った状態とし、これに5℃の水9gに亜硝酸ナトリウム2.4gを溶かした溶液を加えた。この溶液をさらに15分間撹拌した後、比表面積が220m2/gでDBP吸油量が105mL/100gであるカーボンブラック5gを撹拌下で加えた。その後、さらに15分間撹拌した。得られたスラリーをろ紙(商品名:標準用濾紙No.2;アドバンテック製)でろ過した後、粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させ、自己分散型カーボンブラックCを調製した。さらに、上記で得られた自己分散型カーボンブラックCに水を加えて顔料濃度が10質量%となるように分散させ、分散液を調製した。上記の方法により、カーボンブラック粒子の表面に−C64−COONa基が導入されてなる自己分散型カーボンブラックCが水中に分散された状態の顔料分散液Cを得た。上記で調製した自己分散型カーボンブラックCのイオン性基密度を、自己分散型カーボンブラックAと同様の方法で測定したところ、3.5μmol/m2であった。
(顔料分散液Dの調製)
5.5gの水に6.7gの濃塩酸を溶かした溶液に、5℃に冷却した状態で4−アミノフタル酸2gを加えた。次に、この溶液の入った容器をアイスバスに入れて液を撹拌することにより溶液を常に10℃以下に保った状態とし、これに5℃の水9gに亜硝酸ナトリウム2.4gを溶かした溶液を加えた。この溶液をさらに15分間撹拌した後、比表面積が220m2/gでDBP吸油量が105mL/100gであるカーボンブラック6.5gを撹拌下で加えた。その後、さらに15分間撹拌した。得られたスラリーをろ紙(商品名:標準用濾紙No.2;アドバンテック製)でろ過した後、粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させ、自己分散型カーボンブラックDを調製した。さらに、上記で得られた自己分散型カーボンブラックDに水を加えて顔料濃度が10質量%となるように分散させ、分散液を調製した。上記の方法により、カーボンブラック粒子の表面に−C63−(COONa)2基が導入されてなる自己分散型カーボンブラックDが水中に分散された状態の顔料分散液Dを得た。上記で調製した自己分散型カーボンブラックDのイオン性基密度を、自己分散型カーボンブラックAと同様の方法で測定したところ、3.6μmol/m2であった。
(顔料分散液Eの調製)
5.5gの水に3.3gの濃塩酸を溶かした溶液に、5℃に冷却した状態で4−アミノフタル酸1.3gを加えた。次に、この溶液の入った容器をアイスバスに入れて液を撹拌することにより溶液を常に10℃以下に保った状態とし、これに5℃の水9gに亜硝酸ナトリウム1.2gを溶かした溶液を加えた。この溶液をさらに15分間撹拌した後、比表面積が220m2/gでDBP吸油量が105mL/100gであるカーボンブラック10gを撹拌下で加えた。その後、さらに15分間撹拌した。得られたスラリーをろ紙(商品名:標準用濾紙No.2;アドバンテック製)でろ過した後、粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させ、自己分散型カーボンブラックEを調製した。さらに、上記で得られた自己分散型カーボンブラックEに水を加えて顔料濃度が10質量%となるように分散させ、分散液を調製した。上記の方法により、カーボンブラック粒子の表面に−C63−(COONa)2基が導入されてなる自己分散型カーボンブラックEが水中に分散された状態の顔料分散液Eを得た。上記で調製した自己分散型カーボンブラックEのイオン性基密度を、自己分散型カーボンブラックAと同様の方法で測定したところ、2.5μmol/m2であった。
<樹脂水溶液の調製>
表1に記載のモノマー及びその組成(質量)比で構成される樹脂A〜Hの各樹脂(各樹脂の重量平均分子量及び酸価は表1に記載)にイオン交換水を加え、各樹脂の固形分濃度が15質量%である樹脂水溶液A〜Hを調製した。なお、各樹脂は、共重合体を10質量%水酸化カリウム水溶液で中和して得られたものを用いた。
Figure 2010053308
<樹脂を構成するモノマーの溶解度パラメーターより算出される樹脂の水素結合項(δh)>
樹脂を構成するモノマーの溶解度パラメーターより算出される樹脂の水素結合項(δh)は、下記のようにして求めた。先ず、対象とする樹脂を構成する各モノマーについて、モノマー固有の溶解度パラメーターより、樹脂を構成する各モノマーの水素結合項(δh)を算出する。そして、上記で得られた樹脂を構成する各モノマーの水素結合項(δh)に、樹脂を構成する各モノマーの組成(質量)比(合計を1とした組成比)をかけた値を求める。次に、これらの値を足し合わせることにより、樹脂を構成するモノマーの溶解度パラメーターより算出される樹脂の水素結合項(δh)を求めることができる。表2に、樹脂水溶液の調製で用いた各樹脂について、樹脂を構成するモノマー固有の溶解度パラメーターより算出された各モノマーの水素結合項(δh)の値を示した。
以下に、スチレン−メチルメタクリレート−アクリル酸(組成(質量)比=56:23:21)の共重合体である樹脂1を例に挙げて、樹脂の水素結合項(δh)の求め方を具体的に説明する。下記表2より、スチレン、メチルメタクリレート、及びアクリル酸の溶解度パラメーターより算出される水素結合項(単位はcal0.5/cm1.5)はそれぞれ、0.00、3.93、及び5.81である。したがって、樹脂1の水素結合項(δh)は下記式のように求められる。
Figure 2010053308
Figure 2010053308
表3に、先に調製した樹脂水溶液中の樹脂について、上記のようにして樹脂を構成するモノマーの溶解度パラメーターより算出した樹脂の水素結合項(δh)の値を示した。また、表3には、樹脂の酸価、及び重量平均分子量の各値を示した。
Figure 2010053308
<変性シロキサン化合物の合成>
下記の合成例にしたがって、変性シロキサン化合物である化合物1〜3をそれぞれ合成した。
(化合物1)
温度計及び撹拌手段を備えたガラス製の容器を用いて、下記のようにして化合物1を合成した。前記容器中で、下記式(A)で表されるポリシロキサン化合物及び下記式(B)で表されるポリオキシエチレン化合物を白金触媒の存在下で付加反応して、化合物1を合成した。得られた化合物1は式(1)で表される変性シロキサン化合物に該当し、重量平均分子量8,400、HLB7(理論値)、水に対する溶解度が1%以下であった。
Figure 2010053308
(化合物2)
温度計及び撹拌手段を備えたガラス製の容器を用いて、下記のようにして化合物2を合成した。前記容器中で、下記式(C)で表されるポリシロキサン化合物及び下記式(D)で表されるポリオキシエチレン化合物を白金触媒の存在下で付加反応して、化合物2を合成した。得られた化合物2は式(2)で表される変性シロキサン化合物に該当し、重量平均分子量7,700、HLB8(理論値)、水に対する溶解度が1%以下であった。
Figure 2010053308
(化合物3)
温度計及び撹拌手段を備えたガラス製の容器を用いて、下記のようにして化合物3を合成した。前記容器中で、下記式(E)で表されるポリシロキサン化合物及び下記式(F)で表されるポリオキシエチレン化合物を白金触媒の存在下で付加反応して、化合物3を合成した。得られた化合物3は式(3)で表される変性シロキサン化合物に該当し、重量平均分子量8,200、HLB4(理論値)、水に対する溶解度が1%以下であった。
Figure 2010053308
上記で得られた各化合物の重量平均分子量は、下記のようにして測定した。測定対象の変性シロキサン化合物をテトラヒドロフラン(THF)中に入れて数時間静置して溶解し、試料の濃度が0.1質量%になるようにして、溶液を調製した。その後、ポアサイズ0.45μmの耐溶剤性メンブランフィルター(商品名:TITAN2 Syringe Filter、PTFE、0.45μm;SUN−SRi製)で前記溶液をろ過して試料溶液とした。この試料溶液を用いて、下記の条件で重量平均分子量の測定を行った。
・装置:Alliance GPC 2695(Waters製)
・カラム:Shodex KF−806Mの4連カラム(昭和電工製)
・移動相:テトラヒドロフラン(特級)
・流速:1.0mL/min
・オーブン温度:40.0℃
・試料溶液の注入量:0.1mL
・検出器:RI(屈折率)
・ポリスチレン標準試料:PS−1及びPS−2(Polymer Laboratories製)
(分子量:7,500,000、2,560,000、841,700、377,400、320,000、210,500、148,000、96,000、59,500、50,400、28,500、20,650、10,850、5,460、2,930、1,300、580の17種。)
<インクの調製>
上記で調製した顔料分散液及び合成した化合物、市販の変性シロキサン化合物を含む下記表4−1〜4−4に示す各成分を表に示した組成で使用して各インクを調製した。具体的には、これらの成分を混合し、十分に撹拌した後、ポアサイズ2.5μmのフィルター(製品名:HDCII;ポール製)にて加圧ろ過を行って各インクを調製した。なお、表4−1〜4−4中、MWとあるのは、重量平均分子量のことである。なお、市販の変性シロキサン化合物は、それぞれ、FZ−2222(東レ・ダウコーニング製)、KF−615A(信越化学製)、BYK33(ビックケミー製)である。
Figure 2010053308
Figure 2010053308
Figure 2010053308
<評価>
(耐擦過性)
上記で得られた各インクを、インクジェット記録装置(商品名:BJF900;キヤノン製)用のインクカートリッジに充填し、このインクジェット記録装置のフォトブラックインクの位置にセットした。三菱フォト光沢紙(三菱製)に、解像度1,200dpi、8パス双方向記録で、記録デューティが100%である画像を形成した。得られた記録物を室温で1日放置した後、画像を、記録媒体の非記録部に傷が付く程の強い圧力を加えて爪で引っ掻いた。この記録物を目視で確認して、耐擦過性の評価を行った。耐擦過性の評価基準は、下記の通りである。結果を表5に示した。
A:画像の表面に爪跡が残るが、記録媒体から色材が削れ落ちなかった。
B:画像の表面に爪跡が残り、かつ、記録媒体から色材がわずかに削れ落ちた。
C:記録媒体の表面が露出することはないが、色材が明らかに削れ落ちた。
D:画像を軽く触れる程度では問題がないレベルであるが、記録媒体の非記録部に傷が付くほどの強い圧力で引っ掻くと、記録媒体の表面が完全に見える程度に色材が削れ落ちた。
(動摩擦係数)
上記で得られた記録物(基準評価画像:吐出量4.5ng、解像度1,200dpi、8パス双方向記録で、記録デューティが100%である画像)の画像領域における動摩擦係数を、下記のようにして測定した。具体的には、この基準評価画像の画像領域における、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)の樹脂ボールに対する動摩擦係数を、表面性試験機(製品名:ヘイドン トライボギア TYPE14DR;新東科学製)を用いて測定した。PMMA樹脂ボールに付加する垂直荷重を50g、移動速度を2mm/secとし、移動時にPMMA樹脂ボールの移動方向へ作用する水平力をロードセルにより計測し、垂直荷重力に対する水平力の比率を動摩擦係数として算出した。得られた動摩擦係数の値を表5に示した。
(保存安定性)
上記で得られた各インクをテフロン(登録商標)製の容器に入れ、温度60℃で1ヶ月保存した。保存前後のインク中の顔料の粒径を、レーザーゼータ電位計(商品名:ELS8000;大塚電子製)でそれぞれ測定し、保存安定性の評価を行った。保存安定性の評価基準は下記の通りである。結果を、表5−1〜5−4に示した。
A:保存後の顔料の粒径が、保存前の顔料の粒径の1.1倍未満であった。
B:保存後の顔料の粒径が、保存前の顔料の粒径の1.1倍以上であった。
C:保存後に、容器内に析出物が発生した。
(吐出安定性)
上記で得られた各インクを、インクジェット記録装置(商品名:PIXUS850i;キヤノン製)用のインクカートリッジに充填し、前記インクジェット記録装置を改造したものにセットした。そして、オフィスプランナー(キヤノン製)に、記録デューティが100%で、18cm×24cmの画像を、デフォルトモードで3枚記録した。その後、PIXUS850iのノズルチェックパターンを記録し、得られたノズルチェックパターンを目視で確認して、吐出安定性の評価を行った。吐出安定性の評価基準は下記の通りである。結果を表5に示した。
A:ノズルチェックパターンに乱れがなく正常に記録できた。
B:ノズルチェックパターンに若干の乱れがあったが、不吐出はなかった。
C:ノズルチェックパターンにはっきりとした不吐出や乱れがあり、正常に記録できなかった。
Figure 2010053308
なお、実施例16及び17における吐出安定性の評価結果は共にBであるが、実施例16の方が、チェックパターンの乱れの状態はやや少なかった。このとき、光学顕微鏡でヒーター上のコゲの状態を観察したところ、実施例16の方が、コゲの発生が少なかった。
耐擦過性試験の概念を示す模式図である。 記録ヘッドの縦断面図である。 記録ヘッドの横断面図である。 図2に示した記録ヘッドをマルチ化した記録ヘッドの斜視図である。 インクジェット記録装置の一例を示す斜視図である。 インクカートリッジの縦断面図である。 記録ユニットの一例を示す斜視図である。 記録ヘッドの構成の一例を示す模式図である
符号の説明
2−1:サンプル固定稼動ステージ
2−2:サンプル
2−3:摩擦物
2−4:分銅
2−5:天秤機構
2−6:ロードセル
13:記録ヘッド
14:ノズル
15:発熱素子基板
16:保護層
17−1、17−2:電極
18:発熱抵抗体層
19:蓄熱層
20:基板
21:インク
22:吐出口
23:メニスカス
24:インク滴
25:記録媒体
26:マルチノズル
27:ガラス板
28:記録ヘッド
40:インク袋
42:栓
44:インク吸収体
45:インクカートリッジ
51:給紙部
52:紙送りローラー
53:排紙ローラー
61:ブレード
62:キャップ
63:インク吸収体
64:吐出回復部
65:記録ヘッド
66:キャリッジ
67:ガイド軸
68:モーター
69:ベルト
70:記録ユニット
71:記録ヘッド
72:大気連通口
80:インク流路
81:オリフィスプレート
82:振動板
83:圧電素子
84:基板
85:吐出口

Claims (9)

  1. 少なくとも、カーボンブラック、変性シロキサン化合物、及び樹脂を含有する顔料インクであって、
    前記カーボンブラックが、カーボンブラック粒子の表面にイオン性基を有してなり、前記カーボンブラック粒子の表面におけるイオン性基密度が、2.6μmol/m2以上3.5μmol/m2以下であり、
    前記変性シロキサン化合物が、下記式(1)で表される変性シロキサン化合物、下記式(2)で表される変性シロキサン化合物、及び下記式(3)で表される変性シロキサン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする顔料インク。
    Figure 2010053308
    (式(1)中、R1は炭素数1以上20以下のアルキレン基であり、R2は水素原子又は炭素数1以上20以下のアルキル基であり、mは1以上250以下の数、nは1以上100以下の数、aは1以上100以下の数、bは0以上100以下の数である。)
    Figure 2010053308
    (式(2)中、R3はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上20以下のアルキル基であり、R4は炭素数1以上20以下のアルキレン基であり、pは1以上450以下の数、cは1以上250以下の数、dは0以上100以下の数である。)
    Figure 2010053308
    (式(3)中、R5はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上20以下のアルキル基であり、R6はそれぞれ独立に、炭素数1以上20以下のアルキレン基であり、qは1以上100以下の数、rは1以上100以下の数、eは1以上100以下の数、fは0以上100以下の数である。)
  2. 前記樹脂は、酸価が90mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であり、かつ、樹脂を構成するモノマーの溶解度パラメーターより算出される樹脂の水素結合項(δh)が1.0cal0.5/cm1.5以上3.7cal0.5/cm1.5以下である樹脂A、及び、酸価が150mgKOH/gを超えて200mgKOH/g以下であり、かつ、樹脂を構成するモノマーの溶解度パラメーターより算出される樹脂の水素結合項(δh)が1.0cal0.5/cm1.5以上1.5cal0.5/cm1.5以下である樹脂B、の少なくとも1種の樹脂を含む請求項1に記載の顔料インク。
  3. インク中における、前記樹脂の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、2.5質量%以上4.0質量%以下である請求項1又は2に記載の顔料インク。
  4. インク中における、前記樹脂のインク全質量を基準とした含有量(質量%)が、前記カーボンブラックのインク全質量を基準とした含有量(質量%)に対して、1.2倍以上である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の顔料インク。
  5. インク中における、前記変性シロキサン化合物の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、0.2質量%以上5.0質量%以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の顔料インク。
  6. インクをインクジェット方法で吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法であって、
    前記インクとして、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の顔料インクを用いることを特徴とするインクジェット記録方法。
  7. インクを収容してなるインク収容部を備えてなるインクカートリッジであって、
    前記インク収容部に収容されているインクが、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の顔料インクであることを特徴とするインクカートリッジ。
  8. インクを収容してなるインク収容部と、インクを吐出する記録ヘッドとを備えてなる記録ユニットであって、
    前記インク収容部に収容されているインクが、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の顔料インクであることを特徴とする記録ユニット。
  9. インクを収容してなるインク収容部と、インクを吐出する記録ヘッドとを備えてなるインクジェット記録装置であって、
    前記インク収容部に収容されているインクが、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の顔料インクであることを特徴とするインクジェット記録装置。
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JP2018031022A (ja) * 2016-04-14 2018-03-01 株式会社リコー インクジェット用インク、インク収容容器、インクジェット記録方法、インクジェット記録装置、及び記録物

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