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JP2007245450A - 熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法および成形体 - Google Patents

熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法および成形体 Download PDF

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JP2007245450A JP2006070373A JP2006070373A JP2007245450A JP 2007245450 A JP2007245450 A JP 2007245450A JP 2006070373 A JP2006070373 A JP 2006070373A JP 2006070373 A JP2006070373 A JP 2006070373A JP 2007245450 A JP2007245450 A JP 2007245450A
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亮二 中山
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Abstract

【課題】立壁部を有する形状の成形体の成形において、薄肉射出充填が可能で高発泡倍率で軽量性に優れ、かつ成形体全体でボイドや凹みのない、剛性、表面平滑性に優れた、特に箱形状の発泡成形体を容易に得られる製造方法を提供すること。
【解決手段】熱可塑性樹脂と発泡剤からなる溶融混合物7を金型に射出して発泡成形体を製造する方法において、その一部を型開き方向および型開き方向以外の方向に摺動可能な構造を有する金型を用いて、該摺動部をキャビティクリアランスt0に調整した状態で金型内に溶融混合物7を2秒以内で射出充填したのちに、金型の一部を型開き方向および型開き方向以外の方向に後退させ、表面に片側の厚みが100μm以上、両側の厚みの合計がt0×0.8mm以下の非発泡層を形成させる。
【選択図】図3

Description

本発明は、熱可塑性樹脂射出発泡成形体の製造方法および該製法から得られる成形体に関する。
熱可塑性樹脂の射出成形において、軽量化、コストダウン、成形体の反り・ヒケ防止を目的に発泡を行ういわゆる射出発泡成形が従来から行われてきた。熱可塑性樹脂を高発泡化させる技術としては、型開き可能に保持された金型の空間内に発泡剤を含む樹脂を射出成形した後、金型を開くことにより前記空間を拡大して樹脂を発泡させるいわゆるコアバック法(Moving Cavity法)がある(例えば特許文献1、2)。これらは型開き方向への発泡に限定されるため、例えば外周部に立壁部を有する箱形状の成形体を発泡成形しようとする場合には、立壁部を高倍率に発泡させることが困難であった。
これに対して、外周部に立壁部を有する箱形状の成形体などにおいて、立壁部を摺動可能な構造とし底面部と同様に立壁部もコアバックにより発泡させる方法がある(特許文献3,4)。
一般的に射出成形において、溶融樹脂は金型内に射出されるとその部位から冷却が進行し始めるため、初期に充填される部位(ゲート付近)と後半に充填される部位(充填末端)とで温度差が生じる傾向にある。特に単なる板状の成形体でなく立壁部を有するような成形体を成形するための金型においては、基本的には立壁部へのゲート配置は困難であり、ゲートから充填末端までの距離が長くなる傾向にあり、板状成形体を成形するための金型に比べて、射出完了時の温度分布が大きくなりやすい。さらにこれは、ゲート点数が少ない、成形体形状が大きい、立壁部の型開き方向への寸法が大きくなるなどの影響で射出開始から射出完了までの時間、いわゆる射出充填時間が長くなるとその傾向は顕著になる。このような温度分布が大きな状態からコアバックによる発泡化を実施すると、部分的に表面が凹み平滑性の悪いものとなりやすい傾向にあり、また各部位でセル径などの発泡状態が不均一になり易くひどい場合にはボイドが生成することがある。
さらに成形体の軽量化を行うためには発泡前の段階での成形体厚みを薄くする必要があるが、発泡前の成形体厚みが薄いと金型内での冷却も進行し易く、部位別での冷却状況の差が発泡に与える影響が大きくなる。
特許文献3においては、非発泡層が厚いためにボイドが発生して発泡体全体としての剛性が低下することを、溶融樹脂として絡み合い繊維を含有する樹脂を用いることによって解決したものである。
また特許文献4には、不活性ガスが高圧で含浸されてなるポリプロピレン系樹脂を比較的薄いキャビティクリアランスの金型内に射出し、充填完了後、所定時間(3秒)経過後、コアバックを行い射出発泡成形体を得る方法が開示されている。この様な方法で得られた射出発泡成形体は、発泡前の成形体厚みが薄いにもかかわらず成形体表面に形成される非発泡層の片側の厚みが厚い。従って、このような成形体を成形しようとすると発泡可能な層の厚みが極端に薄くなってしまうため、内部はボイドが存在するもしくは空洞状態の成形体となり、曲げ剛性が得られ難いという問題があった。さらに化学発泡剤を用いる成形方法においては、一般的に2〜10重量部の範囲内で使用され、不活性ガスに比べて、発泡力が無いため、このように発泡前の成形体厚みが薄くかつ充填完了後からコアバックまでの間に所定時間放置するなどした非発泡層厚みが厚くなる条件では、発泡層内部への冷却も進行していると想定され、全体的に発泡倍率が高くできないもしくは部分的に発泡し難く表面に凹みが発生し易いなどの問題が生じ易い傾向にある。
材料としてポリプロピレン系樹脂を使用する場合、通常のポリプロピレン系樹脂は結晶性でメルトテンション(溶融張力)が低く、また発泡に好適な粘弾性が得られる温度領域が狭いことから、金型内で温度差が生じると全体を発泡に適正な粘弾性領域に調整することが困難となり、内部にボイドが発生し易い傾向となり、全体で均一なボイドの無い高発泡成形体を得ることは困難である。
一方、射出発泡成形において軽量化および高発泡化を達成するために発泡性と流動性を有するポリプロピレン系樹脂が開示されている(特許文献5)。この樹脂を使用すれば確かに、軽量化および高発泡化が可能であり、例えば、特許文献3記載の方法で発泡成形することで底面部および立壁部も高発泡化された成形体が得られやすくなるが、この場合においても、射出充填時間が長い場合や、非発泡層の厚みが必要以上に厚い場合で特に発泡前の段階での成形体厚みを薄くする場合には、ボイドが無く高発泡化されかつ表面平滑性および剛性に優れた発泡成形体を得難いことが予想される。
特公昭39−22213号公報 特公昭51−8424号公報 特開平11−309739公報 特開2001−105447公報 特開2005−224963公報
本発明の目的は、軽量性に優れ、かつ、剛性低下がなく、表面平滑性に優れた発泡成形体を容易に得られる製法を提供することである。
本発明者らは、熱可塑性樹脂と発泡剤の溶融混合物を、射出発泡成形する製造方法において、特に型開き方向へのコアバックのみでは高発泡化が困難な立壁部を有する成形体、例えば、底面の外周に立壁部を有する箱形状の成形体においても、射出充填時間を2秒以内とし、形成される成形体の非発泡層を特定の厚みに制御することで、高倍率で軽量性、剛性、表面平滑性に優れた発泡成形体を容易に得られることを見出し本発明の完成に至った。
すなわち本発の第1は、熱可塑性樹脂と発泡剤からなる溶融混合物を金型キャビティ内に射出して発泡成形体を製造する方法において、金型の一部を型開き方向および型開き方向以外の方向に摺動可能な構造を有する金型内に、発泡前の成形体厚みがt0となるように溶融混合物を2秒以内で射出充填したのちに、金型の一部を型開き方向および型開き方向以外の方向に後退させ、表面に片側の厚みが100μm以上、両側の厚みの合計がt0×0.8(mm)以下の非発泡層を有する熱可塑性樹脂発泡成形体を得ることを特徴とする熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法に関する。
好ましい実施態様としては、
(1)前記発泡前の成形体厚みt0が0.5mm以上、2.5mm以下であること、
(2)前記熱可塑性樹脂がポリプロピレン系樹脂であること、
(3)前記ポリプロピレン系樹脂が、メルトフローレートが10g/10分以上50g/10分以下、メルトテンションが2cN以上で、かつ歪硬化性を示すこと、
を特徴とする前記記載の熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法に関する。
本発明の第2は、発泡倍率が2倍以上10倍以下であることを特徴とする前記記載の製造方法により製造される熱可塑性樹脂発泡成形体に関し、好ましい実施態様としては、前記発泡成形体が底面とその周囲に存在する立壁部からなる箱物形状であることを特徴とする熱可塑性樹脂発泡成形体に関する。
本発明の射出発泡成形体の製法によれば、例えば、底面部の外周に立壁部を有する箱形状の成形体においても、底面だけでなく立壁部も高発泡倍率とすることが出来る為、成形体全体が高発泡倍率で軽量性であるにもかかわらず高剛性の熱可塑性樹脂射出発泡成形体が得られ、更には表面平滑性に優れた発泡成形体が容易に製造できる。
本発明の熱可塑性樹脂射出発泡成形体の製造方法の特徴の一つは、熱可塑性樹脂と発泡剤からなる溶融混合物を金型キャビティ内に射出して発泡成形体を製造する方法において、金型の一部が型開き方向および型開き方向以外の方向に摺動可能な構造を有している金型内に、発泡前の成形体厚みt0となるように、金型内に溶融混合物を2秒以内で射出充填したのちに、金型の一部を型開き方向に、該摺動部を型開き方向以外の方向に後退させることにある。
射出充填時間は、キャビティの大きさ(すなわち樹脂がキャビティ内を流動する長さ)、金型温度や金型内に射出充填される時の溶融混合物の温度などによっても変わるが、発泡前の成形体内での温度分布を少なくするという観点から、2秒以内であり、1.5秒以内であることが好ましい。この範囲内に有ることで通常の想定される範囲内で上記成形条件が変動したとしても概ね良好な発泡成形体が得られる。なお射出充填時間は、一般的には溶融混合物を金型内に射出する時の射出速度を速く設定することで調整することが出来る。
本発明の熱可塑性樹脂射出発泡成形体の製造方法の特徴の他の一つは、成形体表面に形成される非発泡層の厚みを、片側の厚みが100μm以上、両側の厚みの合計がt0×0.8(mm)以下の射出発泡成形体が得られることである。
表面の強度や剛性および表面平滑性や転写性を得易いという観点から非発泡層厚みは片側が100μm以上で、かつ適正な発泡層厚みを確保しボイドの無い射出発泡成形体が得られ易いという観点から両側の非発泡層厚みの合計がt0×0.8(mm)以下である。好ましくは、片側の非発泡層厚みは120μm以上、両側の非発泡層厚みの合計はt0×0.7(mm)以下であり、さらには片側の非発泡層厚みは150μm以上、両側の非発泡層厚みの合計はt0×0.6以下であることが好ましい。本発明にいうボイドとは内部の気泡が連通化するなどして生じる粗大な気泡で、実質その径が1.5mmを越える気泡のことを言う。なお、非発泡層厚みは、金型温度や金型内に射出充填される際の樹脂温度、充填完了後金型を開くまでの時間等で調整される。一概には定義しがたいが、使用する樹脂がポリプロピレン系樹脂の場合、金型温度20〜80℃、樹脂を溶融混連する成形機シリンダの温度190〜230℃、充填完了後金型を開くまでの時間は0〜2秒程度とすること、特にはシリンダ温度が190〜210℃の場合は、金型温度を50℃を超える温度にするか、充填完了後金型を開くまでの時間を0.5秒未満にすること、また、シリンダ温度が210〜230℃の場合は、金型温度を50℃以下に設定するか、0.5〜2秒程度とすることで、比較的安定的に非発泡層の厚みを片側が100μm以上で、両側の非発泡層厚みの合計がt0×0.8(mm)以下とすることが可能である。
ここで、発泡前の成形体厚みt0は0.5mm以上2.5mm以下であることが好ましく、さらには1.0mm以上2.0mm以下であることが好ましい。発泡前の成形体厚みt0が小さすぎると、表面強度や剛性を維持したボイドの無い高発泡倍率の成形体を得ることが困難となる傾向にあり、t0が大きすぎると軽量化が得られ難いという問題がある。
次いで図を用いて本発明の一態様を説明する。
図1に底面の周囲に立壁部を有する箱形状の成形体を成形するための金型で、底面部は型開き方向に、立壁部は型開き方向以外の方向に摺動可能な金型の一例を示す。
本金型は成形キャビティ周囲に存在する固定型3の立壁部にスライド駒4とクサビ可動駒5からなる摺動部を有している。可動型2は成形機の型開き機構により型開き方向に摺動させることができる。クサビ可動駒5は図示しない駆動手段、例えば油圧シリンダ等により前後に駆動させられる。スライド駒4はこのクサビ駒5と連動し型開き方向以外の方向に摺動し、キャビティに対して前進、後退可能な構造となっている。なお本発明において、型開き方向以外の方向とは、略儀的に型開き方向に対して45度以上の角度を有する方向を意味する。
図2に射出充填開始時の金型の構造を示す。射出充填開始時のキャビティクリアランスtCは、底面と立壁部で別々に設定することが可能であり、それぞれ底面部のキャビティクリアランスをtCa、立壁部のキャビティクリアランスをtCbとする。これらtCa、tCbは同じ値でも異なる値でも良いが射出充填を均等に行うという観点からは同じ値に設定することが好ましい。また、キャビティクリアランスtCと発泡前の成形体厚みt0は通常同じ値であることが多いが、tCはt0より大きい値でもよく、小さい値でも良い。ここで、キャビティクリアランスtCは射出充填開始時の金型の樹脂流動部の厚み方向寸法を表し、発泡前の成形体厚みは、充填完了後の成形体の厚みを表す。なお発泡前の成形体厚みt0は発泡成形体を得るための成形条件において、型開きおよびスライド駒4を後退させずに、すなわち発泡させずにそのまま冷却を実施し、得られた成形体の厚みを測ることで知ることができる。すなわちtCがt0より大きい値の場合は、キャビティクリアランスtCの金型内に射出充填を開始し、溶融樹脂を充填しながらもしくは充填完了した後に、キャビティクリアランスを小さくする方向に金型もしくはスライド駒を摺動させ、発泡前の成形体厚みt0に調整することを意味し、tCがt0より小さい値の場合は、キャビティクリアランスtCの金型内に射出充填を開始し、溶融樹脂を充填しながらもしくは充填完了した後に、キャビティクリアランスを大きくする方向に金型もしくはスライド駒を摺動させ、発泡前の成形体厚みt0に調整することを意味する。
図2に示すようなキャビティクリアランスをtCに調整された金型に溶融混合物を2秒以内で射出充填し、図3の様に発泡前の成形体厚みt0に調整された状態で充填完了する。発泡前の成形体厚みt0は、底面と立壁部で別々に設定することが可能であり、それぞれ底面部の発泡前成形体厚みをt0a、立壁部の発泡前成形体厚みをt0bとする。これらt0a、t0bは全体で均一な品質の成形体を得るという観点からは同じ値に調整することが好ましいが意図的に品質に差を設ける場合には必要に応じて異なる値に設定することも可能である。
充填が完了した後に、図4に示すように可動型2を底面の最終製品厚みtFaが得られる位置まで開き、図示しない駆動手段によりクサビ可動駒5を後退させこれと連動しているスライド駒4を最終製品厚みtFbが得られる位置まで後退させる。こうすることで底面部および立壁部が発泡した成形体が得られる。ここで、均一な発泡倍率或いは強度を有する成形体を得るという観点からtFaおよびtFbは同じ値で有ることが望ましいが、意図的に品質に差を設ける場合や意匠性の観点から必要に応じて異なる値に設定することも可能である。
スライド駒4のキャビティを構成する面は、軽量化という観点から構造上許される範囲内で成形体の立壁部を構成する面の全面に近いことが好ましい。
可動型およびスライド駒4を摺動させる条件として、摺動開始時期は成形体表面の非発泡層が前記範囲内に入るように調整されれば良く、また摺動速度は成形体表面が金型に追従する範囲でかつ高い発泡倍率が得られる様に適宜調整されればよいが、一般的には摺動開始時期は射出充填完了時から0〜5秒後、摺動速度は5〜100mm/秒が好ましい。また摺動に関しては一段で実施してもよく、何段かに分割して多段階で実施しても良い。多段階で実施する場合には各段階で摺動速度を適宜調整してもよく、各摺動動作の間に停止時間を設けても良い。
各摺動部位は型開き方向および型開き方向以外の方向に摺動させる動作(摺動時期、摺動速度)については、均一な成形体を得るという観点からは、すべて同様に制御することが好ましいが、意図的に部位毎にセル径や発泡倍率、非発泡層厚みを変えたい場合には適宜調整することも可能である。
本発明において使用できる金型は、図1のように型開き方向への摺動が成形機の型開き機構によるものでも良いが、図5のようにクサビ可動駒10と連動して型開き方向に摺動可能なスライド駒9を有するもので、このスライド駒9を型開き方向に摺動させることでキャビティクリアランスが調整可能な金型を用いることも可能である。
本発明で使用される熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂など、公知の熱可塑性樹脂が主成分であれば特に制限なく使用できるが、その効果が顕著に発揮できると言う観点からポリオレフィン系樹脂、特にはポリプロピレン系樹脂で有ることが好ましい。
本発明で使用するポリプロピレン系樹脂としては、成形性と発泡性を両立するために、メルトフローレートが好ましくは10g/10分以上50g/10分以下、さらに好ましくは15g/10分以上40g/10分以下であり、メルトテンションが好ましくは2cN以上、さらに好ましくは5cN以上で、かつ歪硬化性を示すことが好ましい。
ここで、メルトフローレートとは、ASTM D−1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重下で測定したものを言い、メルトテンションとは、メルトテンション測定用アタッチメントを付けたキャピログラフ(東洋精機製作所製)を使用して、230℃でφ1mm、長さ10mmの孔を有するダイスから、ピストン降下速度10mm/分で降下させたストランドを1m/分で引き取り、安定後に40m/分2で引き取り速度を増加させたとき、破断したときのロードセル付きプーリーの引き取り荷重を言う。
ここでいう歪硬化性は、溶融物の延伸歪みの増加に伴い粘度が上昇することとして定義され、通常は特開昭62−121704号公報に記載の方法、すなわち市販のレオメーターにより測定した伸長粘度と時間の関係をプロットすることで判定することができる。また、例えばメルトテンション測定時の溶融ストランドの破断挙動からも歪硬化性を判定できる。すなわち、引き取り速度を増加させたときに急激にメルトテンションが増加し、切断に至るときは歪硬化性を示す場合である。
前記メルトフローレートが10g/10分以上50g/10分以下の範囲であると、射出発泡成形体を製造する際に、金型キャビティのクリアランスが1〜2mm程度の薄肉部分を有する成形においてもショートショットになりにくく、連続して安定した成形が行いやすい傾向がある。
前記メルトテンションが2cN以上で、かつ歪硬化性を示す場合には、2倍以上の均一微細な気泡の発泡成形体が得られ、射出成形時の溶融樹脂流動先端部で破泡しやすくなることによっておこるシルバーストリークあるいはスワールマークが出難くなる傾向があるので表面外観に優れた発泡成形体が得られ易い傾向にあるので好ましい。
このようなポリプロピレン系樹脂としては、例えば線状ポリプロピレン系樹脂に放射線を照射するか、または線状ポリプロピレン系樹脂、ラジカル重合開始剤、共役ジエン化合物を溶融混合する方法などにより得られる、分岐構造あるいは高分子量成分を含有する改質ポリプロピレン系樹脂が挙げられる。これらの中では、線状ポリプロピレン樹脂、ラジカル重合開始剤および共役ジエン化合物を溶融混合して得られる改質ポリプロピレン系樹脂が、高価な設備を必要とせず安価に製造できる点から好ましい。
前記線状ポリプロピレン系樹脂は、線状の分子構造を有しているポリプロピレン系樹脂であり、通常の重合方法、例えば担体に担持させた遷移金属化合物と有機金属化合物から得られる触媒系(例えば、チーグラー・ナッタ触媒)の存在下の重合で得られる。具体的には、プロピレンの単独重合体、ブロック共重合体およびランダム共重合体であって、結晶性の重合体があげられる。プロピレンの共重合体としては、プロピレンを75重量%以上含有しているものが、ポリプロピレン系樹脂の特徴である結晶性、剛性、耐薬品性などが保持されている点で好ましい。共重合可能なα−オレフィンは、エチレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3,4−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、3−メチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンなどの炭素数2または4〜12のα−オレフィン、シクロペンテン、ノルボルネン、テトラシクロ[6,2,11,8,13,6]−4−ドデセンなどの環状オレフィン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエンなどのジエン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどのビニル単量体などが挙げられる。これらのうち、エチレン、1−ブテンが耐寒脆性向上、安価等という点で好ましい。
前記共役ジエン化合物としては、例えばブタジエン、イソプレン、1,3−ヘプタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2,5−ジメチル−2,4−ヘキサジエンなどがあげられるが、これらを単独または組み合わせ使用してもよい。これらの中では、ブタジエン、イソプレンが安価で取り扱いやすく、反応が均一に進みやすい点からとくに好ましい。
前記共役ジエン化合物の添加量としては、線状ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上20重量部以下が好ましく、0.05重量部以上5重量部以下がさらに好ましい。0.01重量部未満では改質の効果が得られにくい場合があり、また20重量部を越える添加量においては効果が飽和してしまい、経済的でない場合がある。
前記共役ジエン化合物と共重合可能な単量体、たとえば塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸金属塩、メタクリル酸金属塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリルなどのメタクリル酸エステルなどを併用してもよい。
ラジカル重合開始剤としては、一般に過酸化物、アゾ化合物などが挙げられるが、ポリプロピレン系樹脂や前記共役ジエン化合物からの水素引き抜き能を有するものが好ましく、一般にケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステルなどの有機過酸化物が挙げられる。これらのうち、とくに水素引き抜き能が高いものが好ましく、たとえば1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシンなどのジアルキルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレートなどのパーオキシエステルなどの1種または2種以上が挙げられる。
ラジカル重合開始剤の添加量としては、線状ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上10重量部以下が好ましく、0.05重量部以上2重量部以下がさらに好ましい。0.01重量部未満では改質の効果が得られにくい場合があり、また10重量部を越える添加量では、改質の効果が飽和してしまい経済的でない場合がある。
線状ポリプロピレン系樹脂、共役ジエン化合物、およびラジカル重合開始剤を反応させるための装置としては、ロール、コニーダー、バンバリーミキサー、ブラベンダー、単軸押出機、2軸押出機などの混練機、2軸表面更新機、2軸多円板装置などの横型撹拌機、ダブルヘリカルリボン撹拌機などの縦型撹拌機、などが挙げられる。これらのうち、混練機を使用することが好ましく、とくに押出機が生産性の点から好ましい。
線状ポリプロピレン系樹脂、共役ジエン化合物、およびラジカル重合開始剤を混合、混練(撹拌)する順序、方法にはとくに制限はない。線状ポリプロピレン系樹脂、共役ジエン化合物、およびラジカル重合開始剤を混合したのち溶融混練(撹拌)してもよいし、ポリプロピレン系樹脂を溶融混練(撹拌)したのち、共役ジエン化合物あるいはラジカル開始剤を同時にあるいは別々に、一括してあるいは分割して混合してもよい。混練(撹拌)機の温度は130〜300℃が、線状ポリプロピレン系樹脂が溶融し、かつ熱分解しないという点で好ましい。またその時間は一般に1〜60分が好ましい。
このようにして、本発明に用いるポリプロピレン系樹脂を製造することができる。該ポリプロピレン系樹脂の形状、大きさに制限はなく、ペレット状でもよい。
また、前記ポリプロピレン系樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、前記線状ポリプロピレン系樹脂と同じものを混合することができる。混合方法は特に限定はなく、公知の方法で行うことが出来、例えば、ペレット状の樹脂をブレンダー、ミキサー等を用いてドライブレンドする、溶融混合する、溶剤に熔解して混合する等の方法が挙げられる。本発明においてはドライブレンドした上で射出発泡成形に供する方法が、熱履歴が少なくて済み、メルトテンションの低下が少なくなる為、好ましい。
本発明で使用できる発泡剤は化学発泡剤、物理発泡剤など射出発泡成形に通常使用できるものであればとくに制限はない。化学発泡剤は、前記樹脂組成物と予め混合してから射出成形機に供給され、シリンダ内で分解して炭酸ガス等の気体を発生するものである。
化学発泡剤としては、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等の無機系化学発泡剤や、アゾジカルボンアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等の有機系化学発泡剤があげられる。これらのうち、通常、着色し難い、分解残渣が少ない、気泡が微細化しやすい等の理由から無機系化学発泡剤が好ましい。これらの無機系化学発泡剤には、発泡成形体の気泡を安定的に均一微細にするために必要に応じて、例えばクエン酸のような有機酸等の発泡助剤やタルク、炭酸リチウムのような無機微粒子等の造核剤を添加してもよい。なお上記無機系化学発泡剤を使用する場合は、通常、取扱性、貯蔵安定性、熱可塑性樹脂への分散性の点から、10〜50重量%濃度のポリオレフィン系樹脂のマスターバッチとして使用されるのが好ましい。これら無機系化学発泡剤の添加量は種類、マスターバッチ中の濃度によって異なるが、一般に本発明の熱可塑性樹脂100重量部に対して好ましくは、0.1重量部以上20重量部以下、更に好ましくは0.5重量部以上10重量部以下の範囲で使用される。
物理発泡剤は、成形機のシリンダ内の溶融樹脂にガス状または超臨界流体として注入され、分散または溶解されるもので、金型内に射出後、圧力開放されることによって発泡剤として機能するものである。
物理発泡剤としては、プロパン、ブタン等の脂肪族炭化水素類、シクロブタン、シクロペンタン等の脂環式炭化水素類、クロロジフルオロメタン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類、窒素、炭酸ガス、空気等の無機ガスがあげられる。これらのうち、安価で取り扱いが容易であるという点から、無機ガス、特に窒素、炭酸ガスが好ましい。これら各種発泡剤は単独または2種以上混合して使用してよい。物理発泡剤の使用量は発泡剤の種類および所望の発泡倍率によって異なるが、一般に本発明の熱可塑性樹脂に対しては好ましくは0.05重量%以上10重量%以下、さらに好ましくは0.1重量%以上5重量%以下、特に好ましくは0.2重量%以上3重量%以下の範囲で使用される。
本発明において好適に使用することの出来るポリプロピレン系樹脂の場合には、化学発泡剤および物理発泡剤をそれぞれ上記の範囲で使用することにより、経済的に発泡倍率が2倍以上、且つ均一微細気泡の発泡成形体が得られ易いばかりか、必要以上に多量の発泡剤を使用しないためシルバーストリークの発生を最小限に抑制することができる。
さらに必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、金属不活性剤、燐系加工安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、蛍光増白剤、金属石鹸、制酸吸着剤などの安定剤、架橋剤、連鎖移動剤、核剤、滑剤、可塑剤、充填材、強化材、顔料、染料、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤を併用してもよい。必要に応じて用いられるこれらの添加剤は、本発明の効果を損なわない範囲で使用されるのはもちろんであるが、本発明の熱可塑性樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01重量部以上10重量部以下使用される。
その他の成形条件は、使用する熱可塑性樹脂の種類、MFR、発泡剤の種類、成形機の種類あるいは金型の形状によって適宜調整すればよい。通常、樹脂温度170〜250℃、金型温度10〜100℃、成形サイクル1〜120分、射出速度10〜300mm/秒、射出圧力10〜200MPa、等の条件で行われる。
このようにして得られる本発明の発泡成形体の発泡倍率は、好ましくは2倍以上10倍以下、更に好ましくは3倍以上6倍以下であることが好ましい。倍率がこの範囲にあることで剛性の低下が顕著でなくかつ軽量性に優れた発泡成形体が得られ易い。発泡倍率は、発泡前の成形体厚みt0と最終製品厚みtFとを用いて下記式より求められる。
発泡倍率=tF/t0
以下に実施例によって本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。
実施例および比較例において、各種の評価方法に用いられた試験法および判定基準は次の通りである。
(1)メルトフローレート:ASTM1238に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgで測定した。
(2)メルトテンション:メルトテンション測定用アタッチメントを付けたキャピログラフ(東洋精機製作所製)を使用した。230℃でφ1mm、長さ10mmの孔を有するダイスから、ピストン降下速度10mm/分で降下させたストランドを1m/分で引き取り、安定後に40m/分2で引き取り速度を増加させたとき、破断したときのロードセル付きプーリーの引き取り荷重をメルトテンションとした。
(3)歪硬化性:上記メルトテンション測定時、引き取り速度を増加させたときに急激に引き取り荷重が増加し、破断に至った場合を「歪硬化性を示す」、そうでない場合を「歪硬化性を示さない」とした。
(4)表面平滑性:発泡成形体の表面凹凸の程度を次の3段階で評価した。
表面凹凸のほとんどないもの・・・○
表面凹凸が若干あるもの・・・・・△
表面凹凸が多いもの・・・・・・・×
(5)発泡倍率:発泡前の成形体厚みt0と最終製品厚みtFとを用いて下記式より求めた。
底面の発泡倍率=tFa/t0a
立壁の発泡倍率=tFb/t0b
(6)非発泡層厚み:発泡成形体を厚み方向に切断した断面の顕微鏡写真より、底面部あるいは立壁部の固定側、稼動側各々の表層部の気泡の観察されない層の厚みを測定した。
(7)内部ボイド:発泡成形体を厚み方向に切断した断面を観察し、発泡層中の大きさ1.5mm以上のボイドの有無をしらべた。
内部ボイドがほとんどないもの・・・・・○
有るもの・・・・・・・・・・・・・・・×
(8)剛性:JIS−K6911に準拠して試片の長手方向が射出樹脂流れ方向に直角になるように、発泡成形体の底面部から10mm巾に切り出した試片について測定した曲げ弾性率(E)と断面二次モーメント(I)から、次式を用いて曲げ剛性(G)を求めた。
G = EI
ここで断面二次モーメント(I)は、試片の巾(b)および厚み(h)から次式で表される。
I=bh3/12
別途作製した肉厚3mmの非発泡成形体(参考例1)から切り出した試片から求めた曲げ剛性との比較から次の2段階で剛性を評価した。
非発泡成形体と同等以上のもの・・・・○
非発泡成形体より劣るもの・・・・・・×
本実施例、比較例においては、メルトフローレート50g/10分のポリプロピレンホモポリマー100重量部とラジカル重合開始剤としてt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.7重量部の混合物を、ホッパーから50kg/時で45mmφ二軸押出機(L/D=40)に供給してシリンダ温度200℃で溶融混練し、途中に設けた圧入部よりイソプレンモノマーを定量ポンプを用いて0.5kg/時の速度で供給し、ストランドを水冷、細断することにより得た、改質ポリプロピレン系樹脂(メルトフローレート14g/10分、メルトテンション5cN、歪硬化性を示す)を使用した。
(実施例1)
改質ポリプロピレン系樹脂に、発泡剤として、無機系化学発泡剤マスターバッチ(分解ガス量40ml/g)をドライブレンドした射出発泡成形用樹脂組成物を、シリンダ先端にシャットオフノズル機構を有した型締め力350tのシリンダ温度を200℃に調整された電動射出成形機に供給し溶融混練した後、温度が40℃に設定された底面が縦250mm×横250mmで高さ100mmの立壁を有し、図1に示すような型開き方向への摺動を成形機の型開き機構を利用して行う構造の箱形状の金型であって、底面および立壁部のキャビティクリアランスがともに1.5mmに調整された金型内に射出充填時間0.7秒で射出充填した。射出充填完了直後に金型を開くと同時にスライド駒4を後退させてキャビティ内の溶融混錬物を発泡させた。発泡完了後60秒間冷却してから発泡成形体を取り出した。
(実施例2)
金型温度を20℃とし、射出充填時間を1.5秒とした以外は、実施例1と同様にして、発泡成形体を得た。
(実施例3)
シリンダ温度を220℃、キャビティクリアランスを2.0mm、射出充填時間を1.2秒とし、射出充填完了後の0.5秒後に金型を開くと同時にスライド駒4を後退させた以外は実施例1と同様にして、発泡成形体を得た。
(実施例4)
キャビティクリアランスを1.0mmとし、射出充填時間を0.6秒とした以外は実施例1と同様にして、発泡成形体を得た。
(実施例5)
シリンダ温度を220℃とし、金型温度を80℃とした以外は実施例1と同様にして、発泡成形体を得た。
このような成形方法による発泡前の成形体厚み、射出充填時間非発泡層厚み、成形体厚みをそれぞれ表1に示す。
このような成形方法によって得られた箱形状の発泡成形体は、表面凹凸がほとんどなく表面平滑性に優れたものであり、底面部と立壁部は均一で発泡倍率3〜4倍と高発泡倍率のものであり、成形体内部のボイドもほとんどなかった。
(参考例)
実施例において、改質ポリプロピレン系樹脂の代わりにメルトフローレート30g/10分のプロピレン・エチレン・ブロックコポリマーを使用し、キャビティクリアランスを3.0mmに調整した金型内に射出充填した後、50MPaの保圧工程を10秒実施した後、45秒間冷却して厚さ3.0mmの非発泡成形体を取り出した。
(比較例1)
射出充填時間を2.2秒とした以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。このときの発泡前の成形体厚み、非発泡層厚み、成形体厚みを表1に示す。このようにして得られた箱形状の発泡成形体は成形体の一部に凹みがあり表面平滑性に劣るものであった。
(比較例2)
射出充填完了後の3秒後に金型を開くと同時にスライド駒4を後退させた以外は実施例1と同様にして、発泡成形体を得た。このときの発泡前の成形体厚み、非発泡層厚み、成形体厚みを表1に示す。このようにして得られた箱形状の発泡成形体は内部にボイドが存在しかつ剛性に劣るものであった。
(比較例3)
射出充填時間を2.2秒とし、射出充填完了後の3秒後に金型を開くと同時にスライド駒4を後退させた以外は実施例1と同様にして、発泡成形体を得た。このときの発泡前の成形体厚み、非発泡層厚み、成形体厚みを表1に示す。このようにして得られた箱形状の発泡成形体は成形体の一部に凹みがあり表面平滑性に劣り、内部にボイドが存在しかつ剛性に劣るものであった。
(比較例4)
シリンダ温度を220℃とし、金型温度を80℃とした以外は実施例4と同様にして、発泡成形体を得た。このときの発泡前の成形体厚み、非発泡層厚み、成形体厚みを表1に示す。このようにして得られた箱形状の発泡成形体はスキン層が薄く剛性に劣るものであり、また表面平滑性に劣るものであった。
表1に示すように、発泡前の成形体厚みt0、射出充填時間、非発泡層厚み、成形体厚みに調整した以外は、実施例と同様にして発泡成形体を得た。
このようにして得られた箱形状の発泡成形体は、表1に示すように、ボイドが存在したり、表面平滑性や曲げ剛性に問題のあるものであった。
Figure 2007245450
本発明の成形方法に用いられる金型の一実施態様を示す概略構造図である。 図1に示す金型で射出充填開始時の状態の一例を示す概略図である。 図1に示す金型内に樹脂を射出充填した直後の状態の一例を示す概略図である。 図1に示す金型内に樹脂を射出充填した後に、所定の成形体厚みとなるように金型を開くとともにスライド駒を後退させた状態の一例を示す概略図である。 クサビ可動駒と連動して型開き方向に摺動可能なスライド駒を有する金型の例を示す概略図である。
符号の説明
1 射出装置
2 可動型
3 固定型
4 スライド駒
5 クサビ可動駒
6 キャビティ
7 溶融混合物
8 発泡成形体
9 スライド駒
10 クサビ可動駒

Claims (6)

  1. 熱可塑性樹脂と発泡剤からなる溶融混合物を金型キャビティ内に射出して発泡成形体を製造する方法において、金型の一部を型開き方向および型開き方向以外の方向に摺動可能な構造を有する金型内に、発泡前の成形体厚みがt0となるように溶融混合物を2秒以内で射出充填したのちに、金型の一部を型開き方向および型開き方向以外の方向に後退させ、表面に片側の厚みが100μm以上、両側の厚みの合計がt0×0.8(mm)以下の非発泡層を有する熱可塑性樹脂発泡成形体を得ることを特徴とする熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法。
  2. 前記発泡前の成形体厚みt0が0.5mm以上、2.5mm以下であることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法。
  3. 前記熱可塑性樹脂がポリプロピレン系樹脂であることを特徴とする請求項1および2記載の熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法。
  4. 前記ポリプロピレン系樹脂が、メルトフローレートが10g/10分以上50g/10分以下、メルトテンションが2cN以上で、かつ歪硬化性を示すことを特徴とする請求項1〜3記載の熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法。
  5. 発泡倍率が2倍以上10倍以下であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の製造方法により製造される熱可塑性樹脂発泡成形体。
  6. 前記発泡成形体が底面とその周囲に存在する立壁部からなる箱物形状であることを特徴とする、請求項5記載の熱可塑性樹脂発泡成形体。
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