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JP7501284B2 - 延伸フィルムの製造方法 - Google Patents

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JP7501284B2
JP7501284B2 JP2020162990A JP2020162990A JP7501284B2 JP 7501284 B2 JP7501284 B2 JP 7501284B2 JP 2020162990 A JP2020162990 A JP 2020162990A JP 2020162990 A JP2020162990 A JP 2020162990A JP 7501284 B2 JP7501284 B2 JP 7501284B2
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Description

本発明は、延伸フィルムの製造方法に関する。
長尺の樹脂フィルムを延伸して長尺の延伸フィルムを製造する場合、テンター延伸機を用いることがある。テンター延伸機を用いた製造方法では、通常、長尺の樹脂フィルムを搬送しながら延伸して、長尺の延伸フィルムを連続的に得る(特許文献1~3参照)。
国際公開第2016/158353号 国際公開第2014/087593号 特許第6199399号公報
延伸フィルムは、光学特性の均一性に優れることが求められる。この光学特性の均一性を評価する方法の一つに、クロスニコル配置された2枚の偏光板を用いる評価方法がある。クロスニコル配置とは、片方の偏光板の透過軸と、もう片方の偏光板の透過軸とが、垂直である配置を表す。この評価方法では、クロスニコル配置された2枚の偏光板をバックライト上に置き、それらの偏光板の間に延伸フィルムを設置する。暗室内にてバックライトを点灯し、バックライトとは反対側から観察して、片方の偏光板、延伸フィルム及びもう片方の偏光板を透過した透過光を見る。延伸フィルムの光学特性が均一であると、透過光が均一な色で見られる。しかし、光学特性が不均一であると、透過光が均一にならず、色ムラが現れる。
従来の方法で製造された長尺の延伸フィルムには、前記の評価方法において、強い色ムラが現れる傾向があった。本発明者が検討したところ、レターデーションの均一性に優れる延伸フィルムであっても前記の強い色ムラが現れていた。よって、本発明者は、前記の色ムラの原因が、延伸フィルムに含まれる重合体分子の配向方向のバラツキにあることを見い出した。しかし、従来の技術では、配向角度のバラツキを抑制できる程度に限界があった。このような事情により、色ムラを更に抑制できる技術の開発が求められている。
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、色ムラを抑制できる延伸フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した。その結果、本発明者は、オーブン内で樹脂フィルムを延伸して延伸フィルムを製造する方法において、樹脂フィルムの延伸と熱固定との間に、樹脂フィルムを特定の要件を満たすオーブン内のニュートラルゾーンに通す場合に、前記の課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記のものを含む。
〔1〕 熱可塑性樹脂で形成された長尺の樹脂フィルムを、オーブンを通過するように搬送しながら、前記樹脂フィルムの両端部を把持した把持子によって前記オーブン内で延伸して、幅方向に対して平均で0°以上85°以下の配向角を有する長尺の延伸フィルムを製造する、延伸フィルムの製造方法であって、
前記オーブンが、延伸ゾーン、ニュートラルゾーン及び熱固定ゾーンを、上流からこの順に有し、
前記製造方法が、
前記樹脂フィルムの両端部が、前記把持子によって把持される工程と、
前記樹脂フィルムが、前記延伸ゾーンを通過しながら延伸される工程と、
前記樹脂フィルムが、前記ニュートラルゾーンを通過する工程と、
前記樹脂フィルムが、前記熱固定ゾーンを通過する工程と、
前記樹脂フィルムの両端部が、前記把持子から開放される工程と、
を含み、
前記延伸ゾーンの下流端温度TSe、及び、前記熱固定ゾーンの上流端温度THfが、下記式(1):
3℃≦TSe-THf≦27℃ (1)
を満たし、
前記ニュートラルゾーンの温度Tが、THf以上、TSe以下の温度範囲に収まり、
前記延伸ゾーンと前記熱固定ゾーンとの間で、前記樹脂フィルムを幅方向に0.1%~5.0%収縮させる、延伸フィルムの製造方法。
〔2〕 前記熱固定ゾーンの前記上流端温度THf、及び、前記樹脂フィルムに含まれる前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgが、下記式(2):
Hf<Tg+5℃ (2)
を満たす、〔1〕に記載の延伸フィルムの製造方法。
〔3〕 延伸フィルムの長さが1000m以上である、〔1〕又は〔2〕に記載の延伸フィルムの製造方法。
〔4〕 延伸フィルムの厚みが、10μm以上、100μm以下である、〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の延伸フィルムの製造方法。
本発明によれば、色ムラを抑制できる延伸フィルムの製造方法を提供できる。
図1は、本発明の第一実施形態に係る延伸フィルムの製造装置を模式的に示す平面図である。 図2は、本発明の第一実施形態に係るテンター装置を模式的に示す平面図である。 図3は、本発明の第二実施形態に係る延伸フィルムの製造装置を模式的に示す平面図である。 図4は、本発明の第二実施形態に係るテンター装置を模式的に示す平面図である。 図5は、色ムラの評価方法におけるサンプルの採り方を説明するため、延伸フィルムを模式的に示す平面図である。
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、少なくとも5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有するフィルムをいい、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。フィルムの幅に対する長さの比の上限は、特に限定されないが、例えば100,000倍以下としうる。
以下の説明において、「上流」及び「下流」とは、別に断らない限り、フィルム搬送方向の上流及び下流を示す。
以下の説明において、フィルムの面内レターデーションは、別に断らない限り、(nx-ny)×dで表される値である。ここで、nxは、フィルムの厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、フィルムの前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。dは、フィルムの厚みを表す。測定波長は、別に断らない限り、590nmである。
以下の説明において、要素の方向が「平行」、「垂直」及び「直交」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±5°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
以下の説明において、長尺のフィルムの斜め方向とは、別に断らない限り、そのフィルムの面内方向であって、そのフィルムの幅方向に平行でもなく垂直でもない方向を示す。
以下の説明において、「偏光板」及び「波長板」とは、別に断らない限り、剛直な部材だけでなく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材も含む。
[1.第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態に係る延伸フィルム20の製造装置10を模式的に示す平面図である。この図1において、テンター装置100では第一把持子110R及び第二把持子110Lの図示は省略している。また、図2は、本発明の第一実施形態に係るテンター装置100を模式的に示す平面図である。
図1に示すように、本発明の第一実施形態に係る延伸フィルム20の製造装置10は、延伸装置としてのテンター装置100、及び、温度調整装置としてのオーブン200を備える。この製造装置10は、繰出しロール30から樹脂フィルム40を繰り出し、繰り出された樹脂フィルム40をテンター装置100を用いてオーブン200内で延伸して、延伸フィルム20を製造しうるように設けられている。本実施形態では、樹脂フィルム40を斜め方向に延伸して、斜め方向に配向した重合体分子を含む延伸フィルム20を得る例を示して説明する。
〔1.1.樹脂フィルム40〕
樹脂フィルム40は、樹脂で形成されたフィルムである。この樹脂としては、通常、熱可塑性樹脂を用いる。熱可塑性樹脂は、正の固有複屈折を有していてもよく、負の固有複屈折を有していてもよい。正の固有複屈折を有する樹脂とは、別に断らない限り、延伸方向の屈折率がそれに垂直な方向の屈折率よりも大きい樹脂を意味する。また、負の固有複屈折を有する樹脂とは、別に断らない限り、延伸方向の屈折率がそれに垂直な方向の屈折率よりも小さい樹脂を意味する。
前記の熱可塑性樹脂は、通常は重合体を含み、必要に応じて更に任意の成分を含みうる。重合体は、結晶性を有する結晶性重合体であってもよく、結晶性を有さない非晶性重合体であってもよい。「結晶性を有する重合体」とは、融点を有する(すなわち、示差走査熱量計(DSC)で融点を観測することができる)重合体を表す。重合体の融点は、窒素雰囲気下で300℃に加熱した重合体を液体窒素で急冷し、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分で昇温して測定できる。
重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリフェニレンサルファイド等のポリアリーレンサルファイド;ポリビニルアルコール;ポリカーボネート;ポリアリレート;セルロースエステル重合体、ポリエーテルスルホン;ポリスルホン;ポリアリルサルホン;ポリ塩化ビニル;ノルボルネン系重合体等の、脂環式構造を含有する重合体;棒状液晶ポリマーなどが挙げられる。重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、重合体は、単独重合体でもよく、共重合体でもよい。これらの中でも、機械特性、耐熱性、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性に優れることから、脂環式構造を含有する重合体が好ましい。脂環式構造を含有する重合体を、以下、適宜「脂環式構造含有重合体」ということがある。
脂環式構造含有重合体は、その重合体の構造単位が脂環式構造を含有する。脂環式構造含有重合体は、主鎖に脂環式構造を有していてもよく、側鎖に脂環式構造を有していてもよい。中でも、機械的強度及び耐熱性の観点から、主鎖に脂環式構造を含有する重合体が好ましい。
脂環式構造としては、例えば、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造などが挙げられる。中でも、機械強度及び耐熱性の観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が特に好ましい。
脂環式構造を構成する炭素原子数は、一つの脂環式構造あたり、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下である。脂環式構造を構成する炭素原子数が前記の数である場合、当該脂環式構造含有重合体を含む樹脂の機械強度、耐熱性、及び成形性が高度にバランスされる。
脂環式構造含有重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択してもよく、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式構造含有重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合がこの範囲にある場合、樹脂の透明性及び耐熱性が良好となる。
脂環式構造含有重合体としては、例えば、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン重合体、環状共役ジエン重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及び、これらの水素添加物等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン系重合体は、透明性と成形性が良好なため、好適である。
ノルボルネン系重合体及びその水素化物の例としては、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体及びその水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体及びその水素化物が挙げられる。また、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の開環単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の開環共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体との開環共重合体が挙げられる。さらに、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の付加単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の付加共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体との付加共重合体が挙げられる。これらの重合体としては、例えば、特開2002-321302号公報等に開示されている重合体が挙げられる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の水素化物は、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性の観点から、特に好適である。
ノルボルネン系重合体及びこれらの水素化物の具体例としては、日本ゼオン社製「ゼオノア」;JSR社製「アートン」;TOPAS ADVANCED POLYMERS社製「TOPAS」が挙げられる。
重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは80,000以下、特に好ましくは50,000以下である。重量平均分子量がこのような範囲にある場合、延伸フィルム20の機械的強度および成型加工性が高度にバランスされる。
重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上、特に好ましくは1.8以上であり、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下、特に好ましくは3.0以下である。分子量分布が前記範囲の下限値以上である場合、重合体の生産性を高め、製造コストを抑制できる。また、上限値以下である場合、低分子成分の量が小さくなるので、高温曝露時の緩和を抑制して、延伸フィルム20の安定性を高めることができる。
重合体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、溶媒としてシクロヘキサンを用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略す。)により、ポリイソプレン換算の値で測定しうる。重合体がシクロヘキサンに溶解しない場合には、溶媒としてトルエンを用いたGPCにより、ポリスチレン換算の値で測定しうる。
樹脂フィルム40を形成する樹脂に含まれる重合体の量は、樹脂フィルムを形成する樹脂100重量%に対して、好ましくは50重量%~100重量%、より好ましくは70重量%~100重量%、更に好ましくは80重量%~100重量%、更に好ましくは90重量%~100重量%、特に好ましくは95重量%~100重量%である。重合体の量が前記範囲にある場合、重合体が有する特性を効果的に発揮できる。
樹脂フィルム40を形成する樹脂は、重合体以外にも任意の成分を含みうる。任意の成分の例を挙げると、顔料、染料等の着色剤;可塑剤;蛍光増白剤;分散剤;熱安定剤;光安定剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;酸化防止剤;微粒子;界面活性剤等の添加剤が挙げられる。これらの成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
樹脂フィルム40を形成する樹脂のガラス転移温度Tgは、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上、特に好ましくは110℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは190℃以下、特に好ましくは180℃以下である。樹脂のガラス転移温度Tgが前記範囲の下限値以上である場合、高温環境下における延伸フィルム20の耐久性を高めることができる。また、樹脂のガラス転移温度Tgが前記範囲の上限値以下である場合、延伸処理を円滑に行える。
樹脂フィルム40を形成する樹脂が結晶性重合体を含む場合、当該樹脂は融点Tmを有しうる。この樹脂の融点Tmは、特に限定はないが、好ましくは200℃以上、より好ましくは230℃以上であり、好ましくは290℃以下である。樹脂の融点Tmが前記範囲の下限値以上である場合、高温環境下における延伸フィルム20の耐久性を高めることができる。また、樹脂の融点Tmが前記範囲の上限値以下である場合、成形性と耐熱性とのバランスに更に優れた延伸フィルム20を得ることができる。
ガラス低温度Tg及び融点Tmは、窒素雰囲気下で300℃に加熱した樹脂を液体窒素で急冷し、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分で昇温して測定できる。
本実施形態では、樹脂フィルム40として、延伸処理を施されていない未延伸フィルムを用いた例を示して説明する。このような未延伸フィルムは、例えば、キャスト成形法、押出成形法、インフレーション成形法などによって得ることができる。これらのうち押出成形法は、残留揮発性成分量が少なく、寸法安定性にも優れるので好ましい。
〔1.2.テンター装置100〕
図1に示すように、テンター装置100は、繰出しロール30から繰り出される樹脂フィルム40を延伸するための装置である。このテンター装置100は、図2に示すように、外側の把持子としての第一把持子110R及び内側の把持子としての第二把持子110Lと、一対のガイドレール120R及び120Lとを備える。第一把持子110R及び第二把持子110Lは、樹脂フィルム40の両端部41及び42をそれぞれ把持しうるように設けられている。また、ガイドレール120R及び120Lは、前記の第一把持子110R及び第二把持子110Lを案内するために、フィルム搬送路の両側に設けられている。
第一把持子110Rは、フィルム搬送路の右側に設けられたガイドレール120Rに沿って走行しうるように設けられている。また、第二把持子110Lは、フィルム搬送路の左側に設けられたガイドレール120Lに沿って走行しうるように設けられている。本実施形態では、「右」及び「左」とは、別に断らない限り、図1~図2に示すように水平に搬送されるフィルムにおいて、フィルム搬送方向の上流から下流を観察した場合における向きを示す。
これらの第一把持子110R及び第二把持子110Lは、それぞれ多数設けられている。また、第一把持子110R及び第二把持子110Lは、前後の第一把持子110R及び第二把持子110Lと一定間隔を保って、一定速度で走行しうるように設けられている。
さらに、第一把持子110R及び第二把持子110Lは、テンター装置100に順次供給される樹脂フィルム40の幅方向の両端部41及び42を、オーブン200より上流に設けられたテンター装置100の入口部130において把持し、オーブン200より下流に設けられたテンター装置100の出口部140で放しうるように設けられている。
ガイドレール120R及び120Lは、第一把持子110R及び第二把持子110Lが所定の軌道を周回しうるように、図1に示すような無端状の連続軌道を有している。このため、テンター装置100は、テンター装置100の出口部140で樹脂フィルム40を放した第一把持子110R及び第二把持子110Lを、順次、入口部130に戻しうる構造を有している。
ガイドレール120R及び120Lは、製造すべき延伸フィルム20の遅相軸の方向及び延伸倍率等の条件に応じた、非対称な形状を有している。本実施形態では、ガイドレール120R及び120Lの形状は、特定の態様に樹脂フィルム40を搬送しうるよう設定される。それによりガイドレール120R及び120Lは、ガイドレール120R及び120Lによって案内される第一把持子110R及び第二把持子110Lが樹脂フィルム40の進行方向を左方向へ曲げるように、樹脂フィルム40を搬送しうる。ここで樹脂フィルム40の進行方向とは、樹脂フィルム40の幅方向の中点の移動方向のことをいう。
具体的には、オーブン200の延伸ゾーン220におけるガイドレール120R及び120Lの形状が、テンター装置100の入口部130において樹脂フィルム40の進行方向に対して垂直な方向に相対していた第一把持子110R及び第二把持子110Lが、オーブン200の延伸ゾーン220より下流において第二把持子110Lが第一把持子110Rよりも先行しうるように、設定されている(図2の破線LD1~LD3参照)。このような形状に設定されたガイドレール120R及び120Lによって案内される第一把持子110R及び第二把持子110Lによれば、樹脂フィルム40を、斜め方向に引っ張るように搬送して、斜め方向へ延伸できる。
さらに、ガイドレール120R及び120Lは、オーブン200の延伸ゾーン220を通過した後のニュートラルゾーン230において、樹脂フィルム40がフィルム幅方向に収縮できる形状を有している。具体的には、ニュートラルゾーン230におけるガイドレール120R及び120Lの形状は、当該ガイドレール120R及び120Lの間のフィルム幅方向の間隔が、下流ほど狭くなるように設定されている。このような形状に設定されたガイドレール120R及び120Lによって案内される第一把持子110R及び第二把持子110Lによれば、樹脂フィルム40を、当該樹脂フィルム40の幅を次第に狭めるように搬送して、幅方向に収縮させることができる。
また、本実施形態に示す例においては、オーブン200の予熱ゾーン210におけるガイドレール120R及び120Lの間のフィルム幅方向の間隔は、一定に設けられている。さらに、本実施形態に示す例においては、オーブン200の熱固定ゾーン240におけるガイドレール120R及び120Lの間のフィルム幅方向の間隔は、一定に設けられている。よって、ここで示す例において、予熱ゾーン210及び熱固定ゾーン240においてガイドレール120R及び120Lにより案内される第一把持子110R及び第二把持子110Lによっては、樹脂フィルム40の延伸及び収縮は行われない。
〔1.3.オーブン200〕
図1に示すように、製造装置10には、フィルム搬送路を覆うようにオーブン200が設けられている。このオーブン200は、当該オーブン200を通って搬送される樹脂フィルム40をテンター装置100によって延伸できるように、テンター装置100を覆うように設けられている。
オーブン200は、予熱ゾーン210、延伸ゾーン220、ニュートラルゾーン230及び熱固定ゾーン240を、フィルム搬送方向の上流からこの順に有する。オーブン200には、予熱ゾーン210、延伸ゾーン220、ニュートラルゾーン230及び熱固定ゾーン240内の温度を独立に調整しうるように、これらの予熱ゾーン210、延伸ゾーン220、ニュートラルゾーン230及び熱固定ゾーン240を隔離しうる隔壁250が設けられている。よって、本実施形態で説明する例において、予熱ゾーン210と延伸ゾーン220との間には他のゾーンは無く、延伸ゾーン220とニュートラルゾーン230との間には他のゾーンは無く、また、ニュートラルゾーン230と熱固定ゾーン240との間には他のゾーンは無い。さらに、隔壁250のフィルム搬送路に相当する部分には、オーブン200内を樹脂フィルム40が通過しうるように、樹脂フィルム40を通すための開口(図示せず)が形成されている。
予熱ゾーン210は、延伸ゾーン220より上流に設けられている。通常、予熱ゾーン210は、オーブン200の入口の直後に設けられる。本実施形態に示す例において、予熱ゾーン210は、樹脂フィルム40の両端部41及び42を把持した第一把持子110R及び第二把持子110Lが一定の間隔D(図2参照。)を保ったまま走行しうるように設けられている。また、本実施形態に示す例において、予熱ゾーン210には、図示しないノズルから加熱空気が供給され、この加熱空気によって予熱ゾーン210の温度が特定の予熱温度範囲に調整されている。
ここで、あるゾーンの温度を測定する際、樹脂フィルム40に温度センサが接触すると、樹脂フィルム40を傷つける可能性がある。そこで、別に断らない限り、そのゾーンを搬送される樹脂フィルム40からの距離5mm以内の空間の温度を測定し、これを当該ゾーンの温度として採用しうる。
延伸ゾーン220は、図1に示すように、樹脂フィルム40の両端部41及び42を把持した第一把持子110Rと第二把持子110Lとの間の間隔が開き始め、当該間隔が最も広くなるまでの区間である。延伸ゾーン220において、ガイドレール120R及び120Lの形状は、下流ほど第一把持子110Rと第二把持子110Lとの間の間隔が広くなるように設定されている。また、前記のように、本実施形態では、ガイドレール120R及び120Lの形状が、樹脂フィルム40の進行方向を左方向へ曲げるように設定されている。そのため、この延伸ゾーン220においては、第一把持子110Rの移動距離は第二把持子110Lの移動距離よりも長く設定されている。さらに、本実施形態に示す例において、延伸ゾーン220には、図示しないノズルから加熱空気が供給され、この加熱空気によって延伸ゾーン220の温度が特定の延伸温度範囲に調整されている。
ニュートラルゾーン230は、図1に示すように、延伸ゾーン220と熱固定ゾーン240との間に設けられている。このニュートラルゾーン230では、第一把持子110Rと第二把持子110Lとの間のフィルム幅方向の間隔が、延伸ゾーン220の下流側の端部220eでフィルム幅方向の間隔以下に設定されている。本実施形態に示す例においては、ニュートラルゾーン230において、ガイドレール120R及び120Lの形状は、下流ほど第一把持子110Rと第二把持子110Lとの間のフィルム幅方向の間隔が狭くなるように設定されている。
また、本実施形態に示す例において、ニュートラルゾーン230には、積極的な温度調整をされていない。よって、ニュートラルゾーン230には、ノズルからの加熱空気の供給は無く、したがって、風速を測定できる程度の空気の流通は無い。しかし、通常は、隔壁250を通した熱伝導、並びに、樹脂フィルム40の搬送によって、熱の移動が生じうる。そのため、延伸ゾーン220とニュートラルゾーン230との間で熱が移動することがありえ、また、ニュートラルゾーン230と熱固定ゾーン240との間で熱が移動することがありえる。したがって、積極的な温度調整を行わない場合でも、ニュートラルゾーン230の温度は、特定の温度範囲に収まりうる。
熱固定ゾーン240は、ニュートラルゾーン230の下流に設けられている。熱固定ゾーン240は、オーブン200の出口の直前に設けられていてもよい。本実施形態に示す例において、熱固定ゾーン240は、樹脂フィルム40の両端部41及び42を把持した第一把持子110R及び第二把持子110Lが一定の間隔D(図2参照。)を保ったまま走行しうるように設けられている。また、本実施形態に示す例において、熱固定ゾーン240には、図示しないノズルから加熱空気が供給され、この加熱空気によって熱固定ゾーン240の温度が特定の熱固定温度範囲に調整されている。
〔1.4.延伸フィルム20の製造方法〕
上述した製造装置10を用いた延伸フィルム20の製造方法では、長尺の樹脂フィルム40の両端部41及び42を把持した第一把持子110R及び第二把持子110Lによって当該樹脂フィルム40をオーブン200内で延伸して、長尺の延伸フィルムを製造する。この製造方法は、
樹脂フィルム40の両端部41及び42が、第一把持子110R及び第二把持子110Lによって把持される工程と;
樹脂フィルム40が、予熱ゾーン210を通過する工程と;
樹脂フィルム40が、延伸ゾーン220を通過しながら延伸される工程と;
樹脂フィルム40が、ニュートラルゾーン230を通過する工程と;
樹脂フィルム40が、熱固定ゾーン240を通過する工程と;
樹脂フィルム40の両端部が、第一把持子110R及び第二把持子110Lから開放される工程と;
を、この順で含む。この製造方法において、前記の各工程は、オーブン200を通過するように樹脂フィルム40を搬送しながら、行われる。具体的には、この製造方法は、以下のようにして行われる。
この製造方法では、図1に示すように、繰出しロール30から長尺の樹脂フィルム40を繰り出し、繰り出された樹脂フィルム40をテンター装置100に連続的に供給する工程を行なう。
テンター装置100に樹脂フィルム40が供給されると、テンター装置100は、図2に示すように、テンター装置100の入口部130において、樹脂フィルム40の両端部41及び42を、第一把持子110R及び第二把持子110Lによって順次把持する工程を行なう。そして、テンター装置100は、樹脂フィルム40の両端部41及び42を第一把持子110R及び第二把持子110Lによって把持した状態でオーブン200を通過するように、樹脂フィルム40を搬送する。
具体的には、樹脂フィルム40の一方の端部41を第一把持子110Rが把持し、樹脂フィルム40の他方の端部42を第二把持子110Lが把持する。そして、端部41及び42を把持された樹脂フィルム40が、第一把持子110R及び第二把持子110Lの走行に伴って搬送され、オーブン200に入る。
オーブン200に樹脂フィルム40が入ると、第一把持子110R及び第二把持子110Lの走行に伴って、樹脂フィルム40はオーブン200の予熱ゾーン210に入り、その予熱ゾーン210を通過するように搬送される。予熱ゾーン210内の温度が特定の予熱温度範囲に調整されているので、樹脂フィルム40の温度は、この予熱ゾーン210において前記の予熱温度範囲に調整される。このように予熱温度範囲に温度が調整された樹脂フィルム40は、延伸ゾーン220において円滑に延伸されることができる。
予熱温度範囲は、通常、常温よりも高い温度であり、具体的には、好ましくは40℃以上、より好ましくは(Tg+5)℃以上、特に好ましくは(Tg+15)℃以上であり、好ましくは(Tg+50)℃以下、より好ましくは(Tg+30)℃以下、特に好ましくは(Tg+20)℃以下である。このような温度で予熱を行なう場合、樹脂フィルム40に含まれる分子を、延伸ゾーン220での延伸によって安定して配向させることができる。
予熱ゾーン210から送出された後、樹脂フィルム40は、オーブン200の延伸ゾーン220に入り、第一把持子110R及び第二把持子110Lの走行に伴って延伸ゾーン220を通過するように搬送される。延伸ゾーン220では、第一把持子110R及び第二把持子110Lの間の間隔は、下流ほど広くなる。そのため、この延伸ゾーン220においては、第一把持子110R及び第二把持子110Lによって樹脂フィルム40を延伸する工程が行われる。
延伸ゾーン220において、第一把持子110R及び第二把持子110Lは、樹脂フィルム40の進行方向が左方向に曲がるように、走行する。そのため、テンター装置100の入口部130において樹脂フィルム40の進行方向に対して垂直な方向に相対していた第一把持子110R及び第二把持子110Lは、延伸ゾーン220において非対称な形状を有するガイドレール120R及び120Lに沿って走行することにより、延伸ゾーン220よりも下流のゾーンにおいて、第二把持子110Lが第一把持子110Rよりも先行する(図2の破線LD1、LD2及びLD3参照)。そのため、延伸ゾーン220において、得られる延伸フィルム20の幅方向に対して斜めの方向へ、延伸が行われる。
このとき、延伸倍率は、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.2倍以上、特に好ましくは1.3倍以上であり、好ましくは10.0倍以下、より好ましくは7.0倍以下、特に好ましくは5.0倍以下である。延伸倍率が前記範囲にある場合に、延伸フィルム20に含まれる重合体分子の配向方向を効果的に均一にできるので、色ムラを効果的に抑制できる。
延伸ゾーン220の延伸温度範囲は、好ましくは(Tg+3)℃以上、より好ましくは(Tg+5)℃以上、特に好ましくは(Tg+8)℃以上であり、好ましくは(Tg+35)℃以下、より好ましくは(Tg+30)℃以下、特に好ましくは(Tg+25)℃以下である。延伸ゾーン220の延伸温度範囲Tが前記範囲にある場合に、延伸フィルム20に含まれる重合体分子の配向方向を効果的に均一にできるので、色ムラを効果的に抑制できる。
図1に示す延伸ゾーン220の下流側の端部220eの温度を、以下、延伸ゾーン220の「下流端温度TSe」ということがある。端部220eは延伸ゾーン220の一部であることから、その下流端温度TSeは、通常、前記の延伸温度範囲に収まる。
延伸ゾーン220から送出された後、樹脂フィルム40は、オーブン200のニュートラルゾーン230に入り、第一把持子110R及び第二把持子110Lの走行に伴ってニュートラルゾーン230を通るように搬送される。
ニュートラルゾーン230は、積極的な温度調整をされていない。しかし、延伸ゾーン220とニュートラルゾーン230との間の熱の移動、及び、ニュートラルゾーン230と熱固定ゾーン240との間の熱の移動の作用により、ニュートラルゾーン230の温度は、通常、特定の温度範囲に収まっている。具体的には、ニュートラルゾーン230の温度Tは、熱固定ゾーン240の上流端温度THf以上、延伸ゾーン220の下流端温度TSe以下の温度範囲に収まっている。熱固定ゾーン240の「上流端温度THf」とは、熱固定ゾーン240の上流側の端部240fの温度を表す。このような温度のニュートラルゾーン230を通過する工程を、延伸工程と熱固定工程との間に行う場合に、製造される延伸フィルム20における色むらを抑制できる。
ニュートラルゾーン230では、フィルム幅方向における第一把持子110R及び第二把持子110Lの間の間隔が、下流ほど狭くなる。そのため、このニュートラルゾーン230においては、樹脂フィルム40を幅方向に収縮させる工程が行われる。この収縮の程度は、延伸ゾーン220と熱固定ゾーン240との間での樹脂フィルム40の幅方向での収縮率によって表すことができる。この収縮率は、下記式(3):
収縮率(%)={(D-D)/D}×100 (3)
で求められる。ここで、「D」は、延伸ゾーン220の下流側の端部220eでのフィルム幅方向における第一把持子110R及び第二把持子110Lの間の間隔を表す。また、「D」は、熱固定ゾーン240の上流側の端部240fでのフィルム幅方向における第一把持子110R及び第二把持子110Lの間の間隔を表す。
前記の収縮率は、通常0.1%以上、より好ましくは0.3%以上、特に好ましくは0.5%以上であり、通常5.0%以下、より好ましくは3.0%以下、特に好ましくは2.0%以下である。延伸ゾーン220と熱固定ゾーン240との間での樹脂フィルム40の幅方向での収縮率が前記範囲にある場合に、延伸フィルム20の色ムラを抑制できる。通常、前記の収縮率は、ニュートラルゾーン230での樹脂フィルム40の幅方向における収縮率に一致する。
ニュートラルゾーン230から送出された後、樹脂フィルム40は、オーブン200の熱固定ゾーン240に入り、第一把持子110R及び第二把持子110Lの走行に伴って熱固定ゾーン240を通るように搬送される。熱固定ゾーン240内の温度が特定の熱固定温度範囲に調整されているので、樹脂フィルム40の温度は、この熱固定ゾーン240において前記の熱固定温度範囲に調整される。そして、この熱固定温度範囲の熱固定ゾーン240を通過する工程を、ニュートラルゾーン230を通過した後に行う場合に、延伸フィルム20の色ムラを抑制できる。
熱固定温度範囲は、熱固定ゾーン240の上流端温度THfが、下記の式(1)で表される要件を満たすように設定される。TSeは、延伸ゾーン220の下流端温度を表す。
3℃≦TSe-THf≦27℃ (1)
式(1)で表される要件について詳細に説明する。延伸ゾーン220の下流端温度TSeと熱固定ゾーン240の上流端温度THfとの差「TSe-THf」は、通常3℃以上、好ましくは4℃以上、特に好ましくは10℃以上であり、通常27℃以下、好ましくは24℃以下、特に好ましくは22℃以下である。熱固定ゾーン240の上流端温度THfが前記式(1)の要件を満たすように熱固定温度範囲が設定された場合に、延伸フィルム20の色ムラを抑制できる。
また、延伸フィルム20の色ムラを効果的に抑制する観点では、熱固定ゾーン240の上流端温度THfだけでなく、上流側の端部240f以外の部分を含む熱固定ゾーン240全体の熱固定温度範囲が、延伸ゾーン220の下流端温度TSeとの間に式(1)で表される関係を満たすことが好ましい。よって、熱固定温度範囲は、好ましくはTSe-27℃以上、より好ましくはTSe-24℃以上、特に好ましくはTSe-22℃以上であり、好ましくはTSe-3℃以下、より好ましくはTSe-4℃以下、特に好ましくはTSe-10℃以下である。
色ムラを効果的に抑制する観点では、熱固定温度範囲は、熱固定ゾーン240の上流端温度THfが、下記の式(2)で表される要件を満たすように設定されることが好ましい。
Hf<Tg+5℃ (2)
式(2)で表される要件について詳細に説明する。熱固定ゾーン240の上流端温度THfは、好ましくはTg+5℃未満であり、好ましくはTg-20℃以上、より好ましくはTg-15℃以上、特に好ましくはTg-10℃以上である。Tgは、樹脂フィルム40に含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度を表す。
延伸フィルム20の色ムラを更に効果的に抑制する観点では、熱固定ゾーン240の上流端温度THfだけでなく、上流側の端部240f以外の部分を含む熱固定ゾーン240全体の熱固定温度範囲が、樹脂フィルム40に含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度との間に式(2)で表される関係を満たすことが好ましい。よって、熱固定温度範囲は、好ましくは好ましくはTg-20℃以上、より好ましくはTg-15℃以上、特に好ましくはTg-10℃以上であり、好ましくはTg+5℃未満である。
樹脂フィルム40が熱固定ゾーン240を通過するのに要する時間としての処理時間は、好ましくは2秒以上、より好ましくは4秒以上、特に好ましくは6秒以上であり、好ましくは50秒以下、より好ましくは40秒以下、特に好ましくは30秒以下である。処理時間が前記範囲の下限値以上である場合に、延伸フィルム20の色ムラを効果的に抑制できる。また、処理時間が前記範囲の上限値以下である場合、延伸フィルム20の平面性を良好にしてシワの発生を抑制できる。
熱固定ゾーン240から送出された後、樹脂フィルム40の両端部41及び42が、第一把持子110R及び第二把持子110Lから開放される。具体的には、第一把持子110R及び第二把持子110Lが樹脂フィルム40を放して、両端部41及び42の開放がなされる。樹脂フィルム40の両端部41及び42の開放は、通常、オーブン200の外で行われる。
前記のように第一把持子110R及び第二把持子110Lから開放されることにより、長尺の延伸フィルム20が得られる。この延伸フィルム20は、図1に示すようにテンター装置100から送り出され、必要に応じて巻き取られてロール50として回収される。
以上のように、本実施形態に係る製造方法によれば、延伸前の樹脂フィルム40と同じ樹脂で形成された、長尺の延伸フィルム20を製造できる。本実施形態では、樹脂フィルム40として未延伸フィルムを用いているので、製造された延伸フィルム20は、幅方向に対して斜めの一方向に延伸された一軸延伸フィルムとなっている。
延伸フィルム20では、当該延伸フィルム20中の分子が、延伸方向に配向している。そのため、延伸フィルム20は、通常、延伸方向である斜め方向に配向した重合体分子を含むことができ、よって延伸方向である斜め方向に対して平行又は垂直な遅相軸を有しうる。延伸フィルム20が正の固有複屈折を有する樹脂で形成されている場合、延伸フィルム20に含まれる重合体分子の配向方向と、延伸フィルム20の遅相軸とは、平行である。他方、延伸フィルム20が負の固有複屈折を有する樹脂で形成されている場合、延伸フィルム20に含まれる重合体分子の配向方向と、延伸フィルム20の遅相軸とは、垂直である。そして、この重合体分子の配向方向を均一にできるので、本実施形態に係る製造方法によれば、色ムラを抑制することができる。
[3.第二実施形態]
上述した第一実施形態においては、樹脂フィルムを斜め方向に延伸して延伸フィルムを製造したが、延伸方向は、幅方向であってもよい。樹脂フィルムを幅方向に延伸する場合、幅方向に配向した重合体分子を含む延伸フィルムを得ることができる。以下、樹脂フィルムを幅方向に延伸して延伸フィルムを得る方法の例を説明する。以下に説明する第二実施形態において、第一実施形態で説明したのと同じ要素は、第一実施形態と同じ符号を付して説明する。
〔3.1.延伸フィルム60の製造装置〕
図3は、本発明の第二実施形態に係る延伸フィルム60の製造装置70を模式的に示す平面図である。この図3において、テンター装置300では第一把持子110R及び第二把持子110Lの図示は省略している。また、図4は、本発明の第二実施形態に係るテンター装置300を模式的に示す平面図である。
図3に示すように、本発明の第二実施形態に係る延伸フィルム60の製造装置70は、延伸装置としてのテンター装置300、及び、温度調整装置としてのオーブン200を備える。この製造装置70は、繰出しロール30から樹脂フィルム40を繰り出し、繰り出された樹脂フィルム40をテンター装置300を用いてオーブン200内で延伸して、延伸フィルム60を製造しうるように設けられている。本実施形態では、樹脂フィルム40を幅方向に延伸して、幅方向に配向した重合体分子を含む延伸フィルム60を得る例を示して説明する。
図3及び図4に示すように、本実施形態に係る延伸フィルム60の製造装置70は、テンター装置300が備えるガイドレール320R及び320Lが、オーブン200の延伸ゾーン220において樹脂フィルム40をフィルム幅方向に延伸することができる形状を有していること以外、第一実施形態に係る製造装置10と同じに設けられている。
具体的は、図4に示すように、第一把持子110Rを案内するためのガイドレール320Rは、フィルム搬送路の右側に設けられている。また、第二把持子110Lを案内するためのガイドレール320Lは、フィルム搬送路の左側に設けられている。そして、これらのガイドレール320R及び320Lは、第一把持子110R及び第二把持子110Lが所定の軌道を周回しうるように、図3に示すような無端状の連続軌道を有している。
ガイドレール320R及び320Lの形状は、ガイドレール320R及び320Lによって案内される第一把持子110R及び第二把持子110Lが樹脂フィルム40を一定の進行方向で搬送できるように設定されている。また、延伸ゾーン230におけるガイドレール320R及び320Lの形状は、当該ガイドレール320R及び320Lの間のフィルム幅方向の間隔が、下流ほど広くなるように設定されている。このような形状に設定されたガイドレール320R及び320Lによって案内される第一把持子110R及び第二把持子110Lによれば、樹脂フィルム40を、当該樹脂フィルム40の幅方向に引っ張るように搬送して、幅方向に延伸することができる。
〔3.2.延伸フィルム60の製造方法〕
上述した製造装置70を用いた延伸フィルム60の製造方法では、第一実施形態に係る製造装置10を用いた延伸フィルム20の製造方法と同じ工程を行うことにより、幅方向に配向した重合体分子を含む延伸フィルム60を製造できる。
すなわち、製造装置70を用いた延伸フィルム60の製造方法では、第一実施形態と同じく、樹脂フィルム40の両端部41及び42が、第一把持子110R及び第二把持子110Lによって把持される工程と;樹脂フィルム40が、予熱ゾーン210を通過する工程と;が、この順で行われる。
予熱ゾーン210から送出された後、樹脂フィルム40は、オーブン200の延伸ゾーン220に入り、第一把持子110R及び第二把持子110Lの走行に伴って延伸ゾーン220を通過するように搬送される。そして、この延伸ゾーン220を通過しながら、樹脂フィルム40が幅方向に延伸される工程が行われる。具体的には、延伸ゾーン220では、第一把持子110R及び第二把持子110Lの間のフィルム幅方向の間隔が、下流ほど広くなる。そのため、この延伸ゾーン220において、第一把持子110R及び第二把持子110Lによって樹脂フィルム40が幅方向に延伸されることができる。延伸ゾーン220において樹脂フィルム40が延伸される工程での条件は、第一実施形態と同じでありうる。
延伸ゾーン220から送出された後、第一実施形態と同じく、樹脂フィルム40が、ニュートラルゾーン230を通過する工程と;樹脂フィルム40が、熱固定ゾーン240を通過する工程と;樹脂フィルム40の両端部が、第一把持子110R及び第二把持子110Lから開放される工程と;がこの順で行われ、長尺の延伸フィルム60が得られる。この延伸フィルム60は、図3に示すようにテンター装置300から送り出され、必要に応じて巻き取られてロール80として回収される。
以上のように、本実施形態に係る製造方法によれば、延伸前の樹脂フィルム40と同じ樹脂で形成された、長尺の延伸フィルム60を製造できる。本実施形態では、樹脂フィルム40として未延伸フィルムを用いているので、製造された延伸フィルム60は、幅方向に延伸された一軸延伸フィルムとなっている。
延伸フィルム60では、当該延伸フィルム60中の分子が、延伸方向としての幅方向に配向している。そのため、延伸フィルム60は、通常、幅方向に配向した重合体分子を含むことができ、よって幅方向に対して平行又は垂直な遅相軸を有しうる。延伸フィルム60が正の固有複屈折を有する樹脂で形成されている場合、延伸フィルム60の遅相軸は、通常、幅方向に平行である。他方、延伸フィルム60が負の固有複屈折を有する樹脂で形成されている場合、延伸フィルム5の遅相軸は、通常、幅方向に垂直である。本実施形態に係る製造方法によれば、第一実施形態と同じく、色ムラを抑制することができる。
[4.変更例]
延伸フィルムの製造方法は、上述した実施形態に限定されず、更に変更して実施してもよい。
例えば、上述した実施形態では、延伸ゾーンにおける延伸として一軸延伸を行った例を示したが、延伸ゾーンにおいて二軸延伸を行ってもよい。具体例を挙げると、第一把持子110R同士の間の間隔及び第二把持子110L同士の間の間隔を広げることによるフィルム長手方向への延伸を行うと同時に、第一把持子110Rと第二把持子110Lとの間の間隔を広げることによるフィルム幅方向への延伸を行う同時二軸延伸を、延伸ゾーンにおいて行ってもよい。別の具体例を挙げると、第一把持子110R同士の間の間隔及び第二把持子110L同士の間の間隔を広げることによるフィルム長手方向への延伸を行った後で、第一把持子110Rと第二把持子110Lとの間の間隔を広げることによるフィルム幅方向への延伸を行う逐次二軸延伸を、延伸ゾーンにおいて行ってもよい。更に別の具体例を挙げると、第一把持子110Rと第二把持子110Lとの間の間隔を広げることによるフィルム幅方向への延伸を行った後で、第一把持子110R同士の間の間隔及び第二把持子110L同士の間の間隔を広げることによるフィルム長手方向への延伸を行う逐次二軸延伸を、延伸ゾーンにおいて行ってもよい。
例えば、オーブン内に、更に任意の区画を設けてもよい。具体例を挙げると、熱固定ゾーンの下流の区画として、オーブンに、任意のニュートラルゾーンを更に設けてもよい。任意のニュートラルゾーンは、積極的な温度調整をされない区間として設けうる。別の具体例を挙げると、任意のニュートラルゾーンの下流の区画として、オーブンに、任意の熱固定ゾーンを更に設けてもよい。任意の熱固定ゾーンは、上述した実施形態で説明した熱固定ゾーンと同じく設けてもよい。ただし、延伸フィルムの色ムラの効果的な抑制のためには、上述した実施形態で説明した延伸ゾーンとニュートラルゾーンとの間には、任意の区画を設けないことが好ましい。また、延伸フィルムの色ムラの効果的な抑制のためには、上述した実施形態で説明したニュートラルゾーンと熱固定ゾーンとの間には、任意の区画を設けないことが好ましい。
例えば、オーブン内において、予熱ゾーンは省略してもよい。
例えば、延伸フィルムの製造方法に供される樹脂フィルムとして、延伸処理を施されていない未延伸フィルムの代わりに、延伸処理を施されたフィルムを用いてもよい。このように、上述した実施形態に係る製造方法に供する前に樹脂フィルム40を延伸する方法としては、例えば、ロール方式、フロート方式の縦延伸法、テンター装置を用いた横延伸法などを用いうる。中でも、厚み及び光学特性の均一性を保つためには、フロート方式の縦延伸法が好適である。
例えば、延伸フィルムの製造方法は、更に任意の工程を含んでいてもよい。例えば、延伸フィルムの製造方法は、延伸フィルムをトリミングする工程を含んでいてもよい。
[5.延伸フィルム]
上述した製造方法によれば、色ムラの抑制された長尺の延伸フィルムを得ることができる。以下、この延伸フィルムについて説明する。
上述した製造方法で製造された延伸フィルムは、延伸前の樹脂フィルムと同じ熱可塑性樹脂で形成された長尺のフィルムであり、特定の方向に平均の配向角θを有する。ここで、フィルムの配向角とは、フィルムに含まれる重合体分子の配向方向が、当該フィルムの幅方向に対してなす角度を表す。また、フィルムの平均の配向角θとは、フィルムの幅方向の複数の地点において測定される配向角の平均値を表す。上述した製造方法で製造された延伸フィルムは、通常、0°以上85°以下の平均の配向角θを有する。
中でも、延伸フィルムの平均の配向角θは、好ましくは0°~10℃、より好ましくは0°~5°、特に好ましくは0°~2℃である。また、延伸フィルムの平均の配向角θは、好ましくは30°以上、より好ましくは35°以上、特に好ましくは40°以上であり、且つ、好ましくは60°以下、より好ましくは55°以下、特に好ましくは50°以下である。
ファイルの配向角は、フィルムの遅相軸から測定できる。具体的には、下記の通りである。通常、正の固有複屈折を有する樹脂で形成されたフィルムが含む重合体分子の配向方向は、そのフィルムの遅相軸と平行である。よって、正の固有複屈折を有する樹脂で形成されたフィルムの幅方向に対する配向角は、そのフィルムの遅相軸が幅方向に対してなす角度として測定しうる。他方、通常、負の固有複屈折を有する樹脂で形成されたフィルムが含む重合体分子の配向方向は、そのフィルムの遅相軸と垂直である。よって、負の固有複屈折を有する樹脂で形成されたフィルムの幅方向に対する配向角は、そのフィルムの遅相軸に対して垂直な方向が幅方向に対してなす角度として測定しうる。遅相軸方向は、偏光顕微鏡(例えば、オリンパス社製「BX51」)を用いて測定できる。
フィルムの平均の配向角は、フィルムを幅方向に50mm間隔の複数の地点で測定し、その平均を計算することによって求めることができる。
延伸フィルムの平均の配向角θの具体的な値は、上述した製造方法における延伸条件によって調整できる。
上述した製造方法で製造された延伸フィルムは、配向角の均一性に優れる。よって、この延伸フィルムは、クロスニコル配置された2枚の偏光板の間に設置して観察した場合に、色ムラを抑制できる。この色ムラは、具体的には、下記の評価方法で評価できる。
図5は、色ムラの評価方法におけるサンプルの採り方を説明するため、延伸フィルム400を模式的に示す平面図である。図5に示すように、延伸フィルム400の幅方向TDの両端及び中央部からA3サイズのフィルムサンプル410を切り出す。同じ操作を、延伸フィルム400の長手方向MDに10m毎に3回繰り返し、計9枚のフィルムサンプル410を採取する。
用意したフィルムサンプルを、バックライト上にクロスニコル配置された2枚の偏光板の間に、延伸フィルムの遅相軸と一方の偏光板の透過軸とがなす角度が90°となるように挿入する。暗室内にて、バックライトを点灯させる。延伸フィルムの正面方向及び傾斜方向から、目視にて観察する。「正面方向」とは、延伸フィルムの主面に対して垂直な方向を表し、「傾斜方向」とは、延伸フィルムの主面に対して平行でなく垂直でもない方向を表す。この観察によれば、バックライトから出て、片方の偏光板、フィルムサンプル及び他方の偏光板をこの順に透過した光が視認される。この視認される光の色に基づいて、色ムラの評価を行う。
上述した製造方法で製造される延伸フィルムでは、前記の評価方法において、正面方向及び傾斜方向の少なくとも一方の観察で色ムラが確認されたサンプルの数を、好ましくは5枚未満、より好ましくは2枚以下にできる。
延伸フィルムは、通常、延伸によって発現したレターデーションを有する。延伸フィルムの面内レターデーションは、好ましくは50nm以上、より好ましくは60nm以上、特に好ましくは70nm以上であり、好ましくは300nm以下、より好ましくは290nm以下、特に好ましくは280nm以下である。このような範囲の面内レターデーションを有する延伸フィルムは、多様な用途の光学フィルムとして好適に用いることができる。延伸フィルムの面内レターデーションは、位相差計(例えば、Axometrics社製「AxoScan OPMF-1」)を用いて測定しうる。
延伸フィルムの全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。光線透過率は、JIS K0115に準拠して、分光光度計(日本分光社製、紫外可視近赤外分光光度計「V-570」)を用いて測定しうる。
延伸フィルムのヘイズは、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下であり、理想的には0%である。ここで、ヘイズは、JIS K7361-1997に準拠して、日本電色工業社製「濁度計 NDH-300A」を用いて、5箇所測定し、それから求めた平均値を採用しうる。
延伸フィルムの厚みは、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、特に好ましくは30μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、特に好ましくは60μm以下である。延伸フィルムの厚みがこの範囲に収める場合、長尺化ができる。
延伸フィルムの長さは、好ましくは1000m以上、より好ましくは1500m以上、特に好ましくは2000m以上である。延伸フィルムの長さが前記範囲にある場合、次工程での長尺化ができる。延伸フィルムの長さの上限は、特に制限されず、例えば、10000m以下、8000m以下、6000m以下などでありうる。
延伸フィルムの幅は、好ましくは1000mm以上、より好ましくは1300mm以上、特に好ましくは1330mm以上であり、好ましくは1500mm以下、より好ましくは1490mm以下である。延伸フィルムの幅がこのように広い場合、大型の表示装置(有機EL表示装置等)に延伸フィルムを適用することが可能である。
上述した延伸フィルムの用途に制限は無い。延伸フィルムは、それ単独又は他の部材と組み合わせて、例えば光学フィルムとして用いうる。このような光学フィルムとしては、当該基材フィルム上に任意の層を形成するための基材フィルム;偏光板保護フィルム、液晶表示装置用の視野角補償フィルム、円偏光板に設けられる1/4波長板等の位相差フィルム;などが挙げられる。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温常圧大気中の条件において行った。
[評価方法]
(重合体の水素添加率の測定方法)
重合体の水素添加率は、オルトジクロロベンゼン-dを溶媒として、145℃で、H-NMR測定により測定した。
(樹脂のガラス転移温度Tgの測定方法)
窒素雰囲気下で300℃に加熱した樹脂を液体窒素で急冷し、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分で昇温して樹脂のガラス転移温度Tgを測定した。
(延伸フィルムの平均の配向角の測定方法)
偏光顕微鏡(オリンパス社製「BX51」)を用いて、延伸フィルムの幅方向に50mm間隔の複数の地点で、面内の遅相軸を観察した。下記の実施例及び比較例で用いた樹脂はいずれも正の固有複屈折を有していたので、この遅相軸と延伸フィルムの幅方向とがなす角度を、配向角として測定した。これらの地点での配向角の平均値を計算し、この平均値を当該延伸フィルムの平均の配向角θとした。
(色ムラの評価方法)
図5に示すように、延伸フィルム400の幅方向TDの両端及び中央部からA3サイズの大きさのフィルムサンプル410を切り出した。同様の操作を、延伸フィルム400の長手方向MDに10m毎に3回繰り返し、計9枚のサンプル410を採取した。
用意したサンプルを、バックライト上にクロスニコル配置された2枚の偏光板の間に、延伸フィルムの遅相軸と一方の偏光板の透過軸とがなす角度が90°となるように挿入し、暗室内にてバックライトを点灯させた。延伸フィルムの正面方向及び傾斜方向から目視にて観察し、色ムラの有無を確認した。
観察の結果から、色ムラを下記の基準で評価した。
「優」 正面方向及び傾斜方向の少なくとも一方の観察で色ムラが確認されたサンプルが、2枚以下。
「良」 正面方向及び傾斜方向の少なくとも一方の観察で色ムラが確認されたサンプルが、3枚以上5枚未満。
「不良」 正面方向及び傾斜方向の少なくとも一方の観察で色ムラが確認されたサンプルが、5枚以上。
[製造例1.熱可塑性樹脂の製造]
<開環重合>
窒素で置換した反応器に、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3,7-ジエン(以下、「DCPD」ということがある。)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン(以下、「TCD」ということがある。)、及び、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ-3,5,7,12-テトラエン(以下、「MTF」ということがある。)の混合物(重量比DCPD/TCD/MTF=52/38/10)7部(重合に使用するモノマー全量に対して重量1%)と;シクロヘキサン1600部と;トリ-i-ブチルアルミニウム0.55部と;イソブチルアルコール0.21部と;反応調整剤としてジイソプロピルエーテル0.84部と;分子量調節剤として1-ヘキセン3.24部と;を添加した。ここに、シクロヘキサンに溶解させた0.65%の六塩化タングステン溶液24.1部を添加して、55℃で10分間攪拌した。次いで、反応系を55℃に保持しながら、DCPDとTCDとMTFの混合物(重量比DCPD/TCD/MTF=52/38/10)を693部と、シクロヘキサンに溶解させた0.65%の六塩化タングステン溶液48.9部とを、それぞれ系内に150分かけて連続的に滴下した。その後、30分間反応を継続し重合を終了し、開環重合体を含む反応液を得た。重合終了後、ガスクロマトグラフィーにより測定したモノマーの重合転化率は、重合終了時で100%であった。
<水素添加>
得られた反応液を耐圧性の水素化反応器に移送し、ケイソウ土担持ニッケル触媒(日揮化学社製「T8400RL」、ニッケル担持率57%)1.4部、及び、シクロヘキサン167部を加え、180℃、水素圧4.6MPaで6時間反応させて、開環重合体の水素添加物を含む反応液を得た。この反応液を、ラジオライト#500を濾過床として、圧力0.25MPaで加圧濾過(石川島播磨重工社製「フンダバックフィルター」)して水素化触媒を除去し、無色透明な溶液を得た。次いで、前記水素添加物100部あたり0.5部の酸化防止剤(ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガノックス1010」)を、得られた溶液に添加して溶解させた。次いで、ゼータープラスフィルター30H(キュノーフィルター社製、孔径0.5~1μm)にて順次濾過し、さらに別の金属ファイバー製フィルター(孔径0.4μm、ニチダイ社製)にて濾過して、微小な固形分を除去した。得られた溶液中に含まれる水素添加物の水素添加率は、99.9%であった。
次いで、円筒型濃縮乾燥器(日立製作所社製)を用いて、温度270℃、圧力1kPa以下で、前記の溶液から、溶媒であるシクロヘキサン及びその他の揮発成分を除去し、濃縮機に直結したダイから溶融状態でストランド状に押出し、冷却して、開環重合体の水素添加物を含む熱可塑性樹脂のペレットAを得た。ペレットAに含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgは、126℃であった。
[実施例1]
(1.1.樹脂フィルムの製造)
製造例1で製造した熱可塑性樹脂(ガラス転移温度126℃)のペレットAを、Tダイ式フィルム押出成形機で成形して、幅1350mm、厚さ70μmの長尺の樹脂フィルムを製造し、ロール状に巻き取った。
図1に示すように、第一実施形態で説明した構成を有する延伸フィルム20の製造装置10を用意した。この製造装置10のテンター装置100に、ロール30から引き出した樹脂フィルム40を供給した。
供給された樹脂フィルム40の両端部41及び42を第一把持子110R及び第二把持子110Lによって把持し、オーブン200内の予熱ゾーン210を搬送した。予熱ゾーン210での予熱処理は、延伸ゾーン220での延伸温度程度の温度であった。
その後、樹脂フィルム40を延伸ゾーン220に送り、この延伸ゾーン220内を搬送しながら斜め方向に延伸した。延伸条件は、延伸倍率1.5倍、延伸温度136℃であった。延伸ゾーン220の下流端温度TSeは、前記の延伸温度と同じであった。
その後、樹脂フィルム40をニュートラルゾーン230に送り、このニュートラルゾーン230内を搬送した。ニュートラルゾーン230では、オーブン200による積極的な温度管理を行わなかった。しかし、延伸ゾーン220及び熱固定ゾーン240の熱がニュートラルゾーン230に供給されたので、ニュートラルゾーン230内の温度は、延伸温度から熱固定温度まで範囲に収まっていた。また、ニュートラルゾーン230では、ガイドレール120R及び120Lの間のファイル幅方向の間隔が下流ほど狭くなるように設定されていた。ニュートラルゾーン230の上流側の端部(即ち、延伸ゾーン220の下流側の端部220e)でのフィルム幅方向の把持子間隔100%に対して、ニュートラルゾーン230の下流側の端部(即ち、熱固定ゾーン240の上流側の端部240f)でのフィルム幅方向の把持子間隔は99.5%であり、よってニュートラルゾーン230での樹脂フィルム40の幅方向収縮率は0.5%であった。
その後、樹脂フィルム40を熱固定ゾーン240に送り、この熱固定ゾーン240内を搬送した。熱固定ゾーン240での熱固定温度は121℃であった。熱固定ゾーン240の上流端温度THfは、前記の熱固定温度と同じであった。樹脂フィルム40は、熱固定ゾーン240を通過した後、オーブン200の外に送出された。オーブン200の外で第一把持子110R及び第二把持子110Lを開いて樹脂フィルム40の両端部41及び42を第一把持子110R及び第二把持子110Lから開放し、長尺の延伸フィルム20を得た。
得られた延伸フィルム20の長さ、厚み、及び、平均の配向角θを測定した。また、得られた延伸フィルムの色ムラを、上述した評価方法で評価した。
[実施例2]
ノルボルネン樹脂(日本ゼオン社製「ZEONOR1600」;ガラス転移温度163℃)をTダイ式フィルム押出成形機で成形して、幅1350mm、厚さ145μmの長尺の樹脂フィルムを製造し、ロール状に巻き取った。テンター装置に供給する樹脂フィルムとして、このロールから引き出された樹脂フィルムを用いた。また、延伸温度を187℃に変更した。さらに、熱固定温度を167℃に変更した。また、ニュートラルゾーンの上流側の端部(即ち、延伸ゾーンの下流側の端部)でのフィルム幅方向の把持子間隔100%に対して、ニュートラルゾーンの下流側の端部(即ち、熱固定ゾーンの上流側の端部)でのフィルム幅方向の把持子間隔を95%にすることにより、ニュートラルゾーンでの樹脂フィルムの幅方向収縮率を5%に変更した。以上の事項以外は、実施例1と同じ方法により、延伸フィルムの製造及び評価を行った。
[実施例3]
テンター装置に供給される樹脂フィルムのサイズを幅500mm、厚さ80μmに変更した。また、延伸方向を幅方向に変更し、延伸温度を142℃に変更し、延伸倍率を4.5倍に変更した。さらに、熱固定温度を138℃に変更した。また、ニュートラルゾーンの上流側の端部(即ち、延伸ゾーンの下流側の端部)でのフィルム幅方向の把持子間隔100%に対して、ニュートラルゾーンの下流側の端部(即ち、熱固定ゾーンの上流側の端部)でのフィルム幅方向の把持子間隔を99%にすることにより、ニュートラルゾーンでの樹脂フィルムの幅方向収縮率を1%に変更した。以上の事項以外は、実施例1と同じ方法により、延伸フィルムの製造及び評価を行った。具体的な方法は、下記の通りであった。
製造例1で製造した熱可塑性樹脂(ガラス転移温度126℃)のペレットAを、Tダイ式フィルム押出成形機で成形して、幅500mm、厚さ80μmの長尺の樹脂フィルムを製造し、ロール状に巻き取った。
図3に示すように、第二実施形態で説明した構成を有する延伸フィルム60の製造装置70を用意した。この製造装置70のテンター装置300に、ロール30から引き出した樹脂フィルム40を供給した。
供給された樹脂フィルム40の両端部41及び42を第一把持子110R及び第二把持子110Lによって把持し、オーブン200内の予熱ゾーン210を搬送した。予熱ゾーン210での予熱処理は、延伸ゾーン220での延伸温度程度の温度であった。
その後、樹脂フィルム40を延伸ゾーン220に送り、この延伸ゾーン220内を搬送しながら幅方向に延伸した。延伸条件は、延伸倍率4.5倍、延伸温度142℃であった。延伸ゾーン220の下流端温度TSeは、前記の延伸温度と同じであった。
その後、樹脂フィルム40をニュートラルゾーン230に送り、このニュートラルゾーン230内を搬送した。ニュートラルゾーン230では、オーブン200による積極的な温度管理を行わなかった。しかし、延伸ゾーン220及び熱固定ゾーン240の熱がニュートラルゾーン230に供給されたので、ニュートラルゾーン230内の温度は、延伸温度から熱固定温度まで範囲に収まっていた。また、ニュートラルゾーン230では、ガイドレール320R及び320Lの間の間隔が下流ほど狭くなるように設定されていた。ニュートラルゾーン230の上流側の端部(即ち、延伸ゾーン220の下流側の端部220e)でのフィルム幅方向の把持子間隔100%に対して、ニュートラルゾーン230の下流側の端部(即ち、熱固定ゾーン240の上流側の端部240f)でのフィルム幅方向の把持子間隔は99%であり、よってニュートラルゾーン230での樹脂フィルム40の幅方向収縮率は1%であった。
その後、樹脂フィルム40を熱固定ゾーン240に送り、この熱固定ゾーン240内を搬送した。熱固定ゾーン240での熱固定温度は138℃であった。熱固定ゾーン240の上流端温度THfは、前記の熱固定温度と同じであった。樹脂フィルム40は、熱固定ゾーン240を通過した後、オーブン200の外に送出された。オーブン200の外で第一把持子110R及び第二把持子110Lを開いて樹脂フィルム40の両端部41及び42を第一把持子110R及び第二把持子110Lから開放し、長尺の延伸フィルム60を得た。
得られた延伸フィルム60の長さ、厚み、及び、平均の配向角θを測定した。また、得られた延伸フィルムの色ムラを、上述した評価方法で評価した。
[比較例1]
延伸温度を、139℃に変更した。また、ニュートラルゾーンを設けなかった。以上の事項以外は、実施例1と同じ方法により、樹脂フィルムの製造及び評価を行った。
[比較例2]
延伸温度を、139℃に変更した。また、熱固定温度を、114℃に変更した。以上の事項以外は、実施例1と同じ方法により、樹脂フィルムの製造及び評価を行った。
[比較例3]
延伸温度を、139℃に変更した。また、熱固定温度を、130℃に変更した。以上の事項以外は、実施例1と同じ方法により、樹脂フィルムの製造及び評価を行った。
[比較例4]
ニュートラルゾーンの上流側の端部(即ち、延伸ゾーンの下流側の端部)でのフィルム幅方向の把持子間隔100%に対して、ニュートラルゾーンの下流側の端部(即ち、熱固定ゾーンの上流側の端部)でのフィルム幅方向の把持子間隔を94%にすることにより、ニュートラルゾーンでの樹脂フィルムの幅方向収縮率を6%に変更した。以上の事項以外は、実施例3と同じ方法により、延伸フィルムの製造及び評価を行った。
[結果]
実施例及び比較例の結果を、下記の表に示す。
Figure 0007501284000001
10 延伸フィルムの製造装置
20 延伸フィルム
30 ロール
40 樹脂フィルム
50 ロール
60 延伸フィルム
70 製造装置
80 ロール
100 テンター装置
110R 第一把持子
110L 第二把持子
120R及び120L ガイドレール
130 テンター装置の入口部
140 テンター装置の出口部
200 オーブン
210 予熱ゾーン
220 延伸ゾーン
230 ニュートラルゾーン
240 熱固定ゾーン
250 隔壁
300 テンター装置
320R及び320L ガイドレール

Claims (4)

  1. 熱可塑性樹脂で形成された長尺の樹脂フィルムを、オーブンを通過するように搬送しながら、前記樹脂フィルムの両端部を把持した把持子によって前記オーブン内で延伸して、幅方向に対して平均で0°以上85°以下の配向角を有し且つ80%以上の全光線透過率を有する長尺の延伸フィルムを製造する、延伸フィルムの製造方法であって、
    前記オーブンが、延伸ゾーン、ニュートラルゾーン及び熱固定ゾーンを、上流からこの順に有し、
    前記製造方法が、
    前記樹脂フィルムの両端部が、前記把持子によって把持される工程と、
    前記樹脂フィルムが、前記延伸ゾーンを通過しながら延伸される工程と、
    前記樹脂フィルムが、前記ニュートラルゾーンを通過する工程と、
    前記樹脂フィルムが、前記樹脂フィルムの両端部を把持した前記把持子の間隔を保ったまま前記熱固定ゾーンを通過する工程と、
    前記樹脂フィルムの両端部が、前記把持子から開放される工程と、
    を含み、
    前記延伸ゾーンの下流端温度TSe、及び、前記熱固定ゾーンの上流端温度THfが、下記式(1):
    3℃≦TSe-THf≦27℃ (1)
    を満たし、
    前記ニュートラルゾーンの温度Tが、THf以上、TSe以下の温度範囲に収まり、
    前記延伸ゾーンと前記熱固定ゾーンとの間で、前記樹脂フィルムを幅方向に0.1%~5.0%収縮させる、延伸フィルムの製造方法。
  2. 前記熱固定ゾーンの前記上流端温度THf、及び、前記樹脂フィルムに含まれる前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgが、下記式(2):
    Hf<Tg+5℃ (2)
    を満たす、請求項1に記載の延伸フィルムの製造方法。
  3. 延伸フィルムの長さが1000m以上である、請求項1又は2に記載の延伸フィルムの製造方法。
  4. 延伸フィルムの厚みが、10μm以上、100μm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の延伸フィルムの製造方法。
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