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JP7448468B2 - 冷間圧延鋼板の製造方法 - Google Patents

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JP7448468B2 JP2020208566A JP2020208566A JP7448468B2 JP 7448468 B2 JP7448468 B2 JP 7448468B2 JP 2020208566 A JP2020208566 A JP 2020208566A JP 2020208566 A JP2020208566 A JP 2020208566A JP 7448468 B2 JP7448468 B2 JP 7448468B2
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Description

本発明は、冷間圧延鋼板の製造方法に関する。
熱間圧延鋼板を冷間圧延すると、鋼板の幅方向端部に割れが発生することがある(これを「端部割れ」と称する)。端部割れは、特にMn(マンガン)等の焼入れ性を向上させる元素、すなわちγ鉄からα鉄への変態を遅らせる効果をもつ元素を多く含む鋼板に起こりやすい。端部割れが生じると、冷間圧延工程中またはその後の工程(例えば、焼き鈍し工程、メッキ工程等)において、端部割れを起点とした鋼板の破断が起こるおそれがある。
端部割れは、熱間圧延鋼板の巻取工程後の冷却過程で、熱間圧延鋼板の幅方向端部が急冷されることに起因すると考えられる。熱間圧延鋼板を巻き取ったコイルはその後冷却されるが、幅方向端部は外気に触れているため冷却速度が早くなる。そのため、冷却後の熱間圧延鋼板の幅方向端部は、マルテンサイトを比較的多く含む延性の低い組織となり、その後に実施される冷間圧延において鋼板に端部割れが発生する原因になると推測される。
鋼板の端部割れを低減する手段として、特許文献1には、冷間圧延前に熱間圧延鋼板の幅方向端部(エッジ部)を誘導加熱するための加熱装置と、加熱前の熱間圧延鋼板の蛇行を修正する蛇行修正装置とを備える冷間圧延設備が開示されている。蛇行修正装置を備えることにより、熱間圧延鋼板の蛇行による誘導加熱がばらつくことが抑えられるので、端部割れの発生を低減できるとしている。
また、特許文献2には、鋼板の幅方向両端部を鋼板材料のA1点以下400℃以上の温度に加熱して、幅方向両端部のミクロ組織内のマルテンサイトを焼戻しマルテンサイトにした後に、冷間圧延を行う方法が提案されている。
特開2015-139810号公報 特開2019-141888号公報
鋼板の端部割れを効果的に抑制するためには、冷間圧延前に熱間圧延鋼板の幅方向端部を十分に軟質化することが重要であり、冷間圧延前に幅方向端部を加熱して軟質化(熱処理)を行う際の加熱温度を十分に高くすることが有効である。しかしながら、高い加熱温度での熱処理を実現するためには、高額な設備投資と大きな消費電力が必要となり、鋼板の製造コスト上昇につながる。
製造コスト削減のために、低い加熱温度であっても幅方向端部を十分に軟質化できる方法が望まれているが、特許文献1、2には加熱温度を低くすることについて検討されていない。
そこで、本発明は、冷間圧延前の幅方向端部の軟質化(熱処理)時の加熱温度を低くしつつ、鋼板の端部割れを抑制できる冷間圧延鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の態様1は、
鋼片を熱間圧延する熱間圧延工程と、
前記熱間圧延工程で得られた熱間圧延鋼板を、幅方向端部の金属組織中のマルテンサイト分率が50%以下になるようにコイル状に巻き取る巻取工程と、
巻き取った熱間圧延鋼板をコイルから繰り出す繰出工程と、
繰り出された熱間圧延鋼板の幅方向端部を350~450℃の温度に加熱する加熱工程と、
前記加熱工程後の熱間圧延鋼板を冷間圧延する冷間圧延工程と、
を含む冷間圧延鋼板の製造方法である。
本発明の態様2は、
前記巻取工程は、前記マルテンサイト分率が40%以下になるように巻き取ることを特徴とする態様1に記載の冷間圧延鋼板の製造方法である。
本発明の態様3は、
前記巻取工程は、巻取温度540℃以上で巻き取ることを含む、態様1または2に記載の冷間圧延鋼板の製造方法である。
本発明の態様4は、
前記巻取温度が540℃~640℃である、態様3に記載の冷間圧延鋼板の製造方法である。
本発明の態様5は、
前記加熱工程より後で、前記冷間圧延工程より前に、前記熱間圧延鋼板を酸で洗浄する酸洗工程をさらに含む、態様1~4のいずれか1つに記載の冷間圧延鋼板の製造方法である。
本発明によれば、冷間圧延前の熱処理時の加熱温度を低くしつつ、鋼板の端部割れを抑制することができる。
図1は、実施形態に係る冷間圧延鋼板の製造方法に使用できる冷間圧延装置1の概略図である。 図2は、鋼片を熱間圧延し、コイルに巻き取って冷却するまでを模擬してラボ実験した際の加工状態および温度変化を示すグラフである。 図3は、加熱時間の算出方法を説明するための加熱炉内の温度変化を示すグラフである。
本発明者らは鋭意検討した結果、冷間圧延に用いる熱間圧延鋼板を製造する際に熱間圧延後の鋼板をコイル状に巻き取る巻取工程において、熱間圧延鋼板の幅方向端部の金属組織中のマルテンサイト分率が50%以下になるように制御することにより、冷間圧延の際の熱処理(幅方向端部の加熱)を350~450℃と比較的低い加熱温度で行っても、鋼板の端部割れを効果的に抑制できることを見いだしたて、本発明を完成するに至った。
以下に、本発明の冷間圧延鋼板の製造方法について詳述する。
本発明の実施形態に係る冷間圧延鋼板の製造方法は、鋼片を熱間圧延する熱間圧延工程と、熱間圧延工程で得られた熱間圧延鋼板を巻き取る巻取工程と、熱間圧延鋼板をコイルから繰り出す繰出工程と、繰り出された熱間圧延鋼板の幅方向端部を所定の温度に加熱する加熱工程と、熱間圧延鋼板を冷間圧延する冷間圧延工程とを備える。また、加熱工程より後で、冷間圧延工程より前に、熱間圧延鋼板を酸で洗浄する酸洗工程をさらに含んでもよい。また、冷間圧延後の冷間圧延鋼板をコイル状に巻き取る第2の巻取工程をさらに含んでもよい。
熱間圧延工程および巻取工程は、熱間圧延装置(図示せず)で連続して行うことができる。熱間圧延装置では、熱間圧延用の圧延機と、熱間圧延鋼板を巻き取るためのリールを備えることができる。
繰出工程、加熱工程、酸洗工程、冷間圧延工程および第2の巻取工程は、冷間圧延装置1(図1)で連続して行うことができる。図1の冷間圧延装置1では、熱間圧延鋼板2のコイル3を繰り出すためのリールと、熱間圧延鋼板の幅方向端部の加熱を行うための加熱装置5と、酸洗用の酸洗槽6と、冷間圧延用の連続圧延機10と、冷延鋼板を巻き取ってコイル11を形成するためのリールが、この順に配置されている。
[熱間圧延工程]
熱間圧延鋼板は、熱間圧延工程が施された帯状の鋼板である。この熱間圧延工程では、鋼片(スラブ)を加熱し、圧延機で圧延することで熱間圧延鋼板を形成する。具体例としては、これに限定されないが、まず加熱炉を用いてスラブを900℃以上1300℃以下の範囲で加熱し、このとき発生する1次スケールをデスケーラーで除去する。次に、この加熱したスラブを900℃以上1300℃以下の温度範囲で粗圧延した後、表面に発生する2次スケールをデスケーラーで除去する。さらに、粗圧延したスラブを800℃以上1100℃以下で仕上げ圧延を行って熱間圧延鋼板を得る。
熱間圧延鋼板の成分組成は特に限定されないが、例えば炭素、ケイ素、マンガン、アルミニウム、チタン、ニオブ、クロム、ニッケル、モリブデン及び銅、並びに残部が鉄及び不可避的不純物である成分組成を有する。なお、リン、硫黄は不可避的不純物として含まれ得る。成分組成の好ましい範囲は以下の通りである。
C:0.1~0.5質量%
Si:0.4~2.5質量%
Mn:1.2~3.0質量%
Al:0~1.6質量%
Ti:0~0.2質量%
Nb:0~0.2質量%
Mo:0~1.0質量%
Cr:0~1.0質量%
Ni:0~1.0質量%
Cu:0~1.0質量%
残部:鉄および不可避的不純物
また、下記式(1)によって示される焼入性倍数Fが20以上であるような成分組成を有する熱間圧延鋼板は、冷間圧延時に端部割れが生じやすいため、Fが20以上の鋼板を製造する場合は、端部割れを抑制できる本発明の製造方法が好適である。
なお、下記式(1)中、C、Si、Mn、P、S、Cr、Ni、Mo及びCuは、それぞれ鋼板における炭素元素、ケイ素元素、マンガン元素、リン元素、硫黄元素、クロム元素、ニッケル元素、モリブデン元素及び銅元素の含有量(質量%)を意味する。

F=(1+1.5×(0.9-C))×(1+0.64×Si)×(1+4.1×Mn)
×(1+2.83×P)×(1-0.62×S)×(1+2.33×Cr)×(1+0.52×Ni)×(1+3.14×Mo)×(1+0.27×Cu)・・・(1)
熱間圧延工程では、熱間圧延鋼板の厚み(仕上げ厚み)が所望厚みとなるようにスラブを圧延する。例えば、所定の厚さ(例えば230mm)のスラブを、仕上げ厚みが1.2mm以上6.0mm以下となるよう圧延することができる。仕上げ厚みの上限としては、4.5mmがより好ましい。また、仕上げ厚みの下限としては、2.0mmがより好ましい。
[巻取工程]
巻取工程では、リールにより熱間圧延鋼板をコイル状に巻き取る。本発明の実施形態に適した熱間圧延鋼板については後述する。
本発明では、幅方向端部の金属組織中のマルテンサイト分率が50%以下になるように巻き取ることが重要である。幅方向端部のマルテンサイト分率を低くすることにより幅方向端部の延性をある程度確保できるので、冷間圧延前に行う加熱工程における加熱温度を低く設定しても、幅方向端部の延性を十分に高くすることができ、冷間圧延による端部割れの発生を抑制できる。
幅方向端部の金属組織中のマルテンサイト分率は、好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下とする。
幅方向端部のマルテンサイト分率は、鋼の成分組成と、巻取温度と、巻き取ったコイルの冷却速度によって制御することができる。例えば、上述した成分組成を有するの鋼の場合、巻取温度540℃以上で巻き取ることで、マルテンサイト分率を50%以下にすることができる。なお、巻き取ったコイルの冷却速度は、おおむね2.4℃/分となる。
巻取温度は、好ましくは550℃以上、さらに好ましくは560℃以上である。巻取温度の上限は特に限定されないが、高すぎると冷却時間が長くなり生産性が低下することから、例えば640℃以下とする。
マルテンサイト分率の測定は、コイルに巻き取って冷却した後の熱間圧延鋼板を用いて行う。
熱間圧延鋼板の幅方向端部の一部を切り出した試験片を、圧延方向と垂直な断面で切断する。その切断面を研磨してナイタール腐食した後、幅方向端部から幅方向に1mm、厚さ方向に1/4t(tは板厚)の位置を、走査型電子顕微鏡(SEM)にて倍率1000倍で観察する。観察面における金属組織は、腐食されずに残った領域をマルテンサイト、腐食された領域をフェライトおよびパーライトと定義する。SEM像中の任意の一視野(1視野のサイズは90μm×120μm)に、縦方向に10本、横方向に10本の線を等間隔に引き、それらの網目状に引いた線の交点のうちマルテンサイト組織上に位置する交点の数を数えて、全交点の数(100交点)で割ることにより、マルテンサイト組織の面積率を求める。この面積率をマルテンサイト分率とする。
本明細書において、巻取温度(本明細書では「T4」と記載することがある)は、巻取り直後のコイルの端部の温度のことであり、例えば、放射温度計等の非接触型温度計を用いて測定する。
冷却速度は、コイル端部の温度が、巻取り直後の巻取温度T4(℃)から400℃まで冷却されるのに要する時間X(分)と、それらの温度差(T4-400(℃))とから求めた平均冷却温度である。つまり、冷却速度は下式で求める。

冷却速度(℃/分)=(T4-400(℃))/X(分)
[繰出工程]
図1は、巻き取ったコイルを冷間圧延するための冷間圧延装置1の概略図である。冷間圧延装置1では、リールに巻き取られて冷却された熱間圧延鋼板2をコイル3から繰り出して、連続圧延機10を通過後の冷間圧延鋼板を他方のリールに巻き取る。これにより、コイル3から繰り出された熱間圧延鋼板2は、通板方向Rに走行する。
繰出工程では、冷却後のコイル3から、熱間圧延鋼板2を通板方向Rに繰り出す。
[加熱工程]
加熱工程では、繰出工程でコイル3から繰り出された熱間圧延鋼板2の幅方向端部を、加熱装置5で加熱する。熱間圧延鋼板2の幅方向端部を加熱することで、熱間圧延鋼板2の幅方向端部に適度な延性を付与し、その後の冷間圧延工程において端部割れを抑制できる。
本発明では、巻取工程において熱間圧延鋼板の幅方向端部の金属組織中におけるマルテンサイト分率を50%以下に調整しているため、加熱工程前の段階でも、幅方向端部はある程度の延性を有している。そのため、加熱工程において求められる延性の改善の程度は、従来に比べて低い。つまり、加熱工程における加熱温度は、従来より低くすることができる。本発明の加熱工程では、熱間圧延鋼板の幅方向端部を350~450℃の温度に加熱する。この温度範囲で加熱であれば冷間圧延で端部割れを抑制するのに十分な延性を付与することができる。
特に、350℃以上400℃未満の加熱温度の場合には、従来より加熱温度が低いので、廉価な加熱装置を用いることができ、かつ加熱時に消費される電力を抑えることができる点で有利である。一方、400~450℃の加熱温度の場合には、従来に比べて短時間で処理を終えることができるので、加熱時の消費電力を抑えることができる。
加熱温度は、好ましくは380℃以上であり、さらに好ましくは400℃以上である。また、加熱温度は、好ましくは430℃以下である。
加熱温度は、加熱装置5の内部において、熱間圧延鋼板2の端部で測定する。温度測定には、例えば、放射温度計等の非接触型温度計を用いる。加熱温度は、加熱装置5内の出側近傍(加熱帯の出側)に設置した温度計で測定した温度を指す。測定された加熱温度は、熱間圧延鋼板2の端部の温度履歴における最高温度となる。
加熱時間は、幅方向端部の延性が十分に付与される時間とすればよく、好ましい加熱時間は、0.0001秒~20分である。なお、生産性の観点では、加熱温度が長時間となると生産性が低下するため、5分以下であるのが好ましい。
加熱時間は、熱間圧延鋼板2の端部の温度が(目標加熱温度-10(℃))以上で保持されている時間のことをいう。
加熱時間は、以下の仮定i)~ii)に基づく温度履歴のシミュレーションから概算できる。これらの仮定に基づいた圧延鋼板の温度変化のグラフを、図3に示す。

i) 熱間圧延鋼板2の端部の温度は、加熱装置5の加熱帯内部でのみ上昇し、加熱帯に入る温度(室温Troom)から、加熱帯の出側で測定した温度(出側温度計の計測温度Tout)に到達するまで、線形に温度上昇する。
ii) 加熱帯から出ると直ちに冷却されて、室温Troomとなる。
図3のグラフにおいて、2つの相似な三角形を想定する。第1の三角形は、加熱帯の通過時間Lheat/Vline(加熱帯の長さLheatとライン速度Vlineから算出)を底辺とし、室温Troomと出側温度計の計測温度Toutとの差(Tout-Troom)を高さとした大きい直角三角形であり、第2の三角形は、加熱時間theatを底辺とし、(目標温度Ttarget-10℃)と出側温度計の計測温度Toutとの差(Tout-(Ttarget-10℃))を高さとした小さい直角三角形である。2つの相似形の三角形の関係式を整理すると、図3に示す加熱温度theatの算出式を導くことができる。この式を用いて、加熱時間を算出できる。
加熱工程において幅方向端部を加熱する際は、少なくとも当該端部の端面が加熱できれば十分であるが、端部割れを抑制する観点から、熱間圧延鋼板2の幅方向の端面(側端面)から、ある程度の幅の範囲(これを「加熱幅」と称する)まで加熱することが好ましい。例えば、加熱幅を1mm以上にすると、端部割れの抑制効果が顕著になる。加熱幅は、好ましくは100mm以下、より好ましくは50mm以下であり、加熱幅の拡張による加熱コストを不必要に増加させずに、端部割れの抑制効果を十分に発揮することができる。
加熱装置5は、熱間圧延鋼板2の幅方向端部のみを加熱可能であれば特に限定されず、バーナ、誘導加熱装置等が用いられる。
加熱工程後は、熱間圧延鋼板2の冷却を行う。冷却手段は特に限定されず、空冷、エアブロー等、公知の手段を用いることができる。
[酸洗工程]
加熱工程より後で、冷間圧延工程より前に、熱間圧延鋼板2を酸で洗浄する酸洗工程をさらに含んでもよい。
酸洗工程では、加熱工程後の熱間圧延鋼板2を酸洗槽6を通過させて、酸洗槽6内に保持した酸によって洗浄する。酸洗工程を行うことで、加熱工程で形成された熱間圧延鋼板2の表面の酸化皮膜を、酸で溶解して除去する。よって、この後の冷間圧延工程において、連続圧延機10の圧延ロールが酸化膜等で汚染するのを防ぐことができる。
また、加熱工程では、幅方向端部のみを加熱するために鋼板幅方向に温度が不均一となるが、酸洗槽6を通過することにより温度を均一にすることができる。酸洗工程を行うことで、鋼板幅方向の温度不均一による不均一な変形抵抗が解消されるので、冷間圧延工程に不均一な変形抵抗に起因する形状不良を抑制することができる。
[冷間圧延工程]
冷間圧延工程では、熱間圧延鋼板2を冷間圧延する。冷間圧延には、図1に示すように熱間圧延鋼板2の通板方向Rに複数対の冷間圧延ロールを配置させた連続圧延機10を用いてもよく、または1基のミルで繰り返し圧延するリバース圧延機などの公知の圧延機を用いてもよい。図1の例では、熱間圧延鋼板2は、通板中に連続圧延機10の圧延ロールに挟まれて圧下されことで、冷間圧延が行われる。
冷間圧延工程では、熱間圧延鋼板2を任意の圧下率で冷間圧延する。例えば、圧下率は好ましくは20%以上であり、より好ましくは30%以上である。また、圧下率は、好ましくは70%以下、より好ましくは60%である。本発明の製造方法では、冷間圧延工程より前に、熱間圧延鋼板2の幅方向端部の延性が十分担保されているため、冷間圧延工程における圧下率が上記範囲内であれば鋼板の端部割れは発生し難い。
ここで「圧下率」とは、冷間圧延前の板厚をh0、冷間圧延後(2段階以上の圧下を行う場合には最終段階)の板厚をh1としたとき、(h0-h1)/h0で表される板厚の変化率を意味する。圧下率の数値が大きいほど、冷間圧延による板厚の変化率が大きいことを示している。
また、上記冷間圧延工程における真ひずみは、好ましくは0.20以上、より好ましくは0.35以上である。また、真ひずみの上限としては、好ましくは1.30以下であり、より好ましくは1.10以下である。
ここで真ひずみは下式で求めることができる。

真ひずみ= -ln(h1/h0)
[第2の巻取工程(冷間圧延工程後の巻取工程)]
冷間圧延工程後の冷間圧延鋼板を、第2の巻取工程によって巻き取ってもよい。図1では、冷間圧延鋼板がリールに巻き取られて冷間圧延鋼板のコイル11が形成される。
本明細書に開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
上記実施形態においては、加熱工程と、酸洗工程と、冷間圧延工程が1つの冷間圧延装置1内で連続して行われていたが、酸洗工程後の熱間圧延鋼板を巻き取ってコイルとし、そのコイルを別に用意した冷間圧延装置に運んで冷間圧延工程を実施してもよい。
1.巻取温度とマルテンサイト分率との関係
表1に示す成分組成を有する鋼材から、以下の手順でφ8mm×H12mmの加工フォーマスタサンプルを2本作製した。厚さ30mmの熱延スラブから、厚さ方向と平行にφ12mm×H30mmの円柱サンプルを切り出した後、H方向の上端面および下端面から表層1mmを除去し、さらにH方向の中心部から4mmを除去して2分割することにより、φ12mm×H12mmの加工フォーマスタサンプルを2本得た。
2本のサンプル(サンプルNo.1、No.2)を、図2および表2に示すような熱間圧延を模擬した条件で加工および熱処理を施した。熱間圧延の模試には、加工フォーマスタ試験機を用い、熱処理時の温度は、加工フォーマスタサンプルの表面に熱電対を接触させて、サンプル表面温度を測定した。なお、表2の「圧縮1」および「圧縮2」は熱間圧延に相当し、「冷却3」の「停止温度(T4)」(℃)は、巻取工程の巻取温度に相当し、「冷却4」の「速度」は、巻取工程におけるコイルの冷却速度に相当する。サンプルNo.1とNo.2は、「冷却3」の「停止温度(T4)」のみが異なり、その他の加工および熱処理条件は同一とした。
熱間圧延を模試し、さらに室温まで冷却した後の加工フォーマスタサンプル(以下「熱間圧延サンプル」と称することがある)中の金属組織を走査型電子顕微鏡で観察し、点算法(JIS G0555 付属書1)によってマルテンサイト分率を測定した。詳しい測定手順は以下の通りであった。
円柱状の熱間圧延サンプルを、上面(円形)の直径を通り、かつ円柱の高さ方向と平行な切断面で切断した。切断面は、縦が高さH、横が直径の長方形であった。長方形の切断面を研磨してナイタール腐食した後、縦方向(高さ方向)に1/2H(Hは熱間圧延サンプルの高さ)で、幅方向(直径方向)の端部から1/4D(Dは熱間圧延サンプルの上面(円形)の直径)の位置で、走査型電子顕微鏡(SEM)にて1000倍で観察を行った。観察面における金属組織は、腐食されずに残った領域をマルテンサイト、腐食された領域をフェライトおよびパーライトと定義した。SEM像中の任意の一視野(1視野のサイズは90μm×120μm)に、縦方向に10本、横方向に10本の線を等間隔に引き、それらの網目状に引いた線の交点のうちマルテンサイト組織上に位置する交点の数を数えて、全交点の数(100交点)で割ることにより、マルテンサイト組織の面積率を求めた。この面積率を、マルテンサイト分率として表2に示す。
表2から分かるとおり、冷却3の冷却停止温度(T4)(巻取温度に相当)を540℃以上としたサンプルNo.1では、マルテンサイト分率が50%以下となっているのに対し、T4を540℃未満としたサンプルNo.2では、マルテンサイト分率が50%を超えていた。
2.マルテンサイト分率と端部割れの関係
表1に示す成分組成を有する熱間圧延鋼板(厚さ2.3mm)の幅方向端部から、長さ(圧延方向と一致)300mm×幅60mm×厚さ2.3mmの鋼片を4枚ずつ切り出しした。2枚の鋼片を、900℃のソルトバスに10分間浸漬した後、600℃のソルトバスに8分浸漬し、その後空冷することにより、マルテンサイト分率が39%の鋼片を2枚作製した。また、残りの2枚の鋼片を、900℃のソルトバスに10分間浸漬した後、600℃のソルトバスに20分浸漬時間し、その後空冷することによりマルテンサイト分率が73%の鋼片を2枚作製した。
マルテンサイト分率が異なる複数の鋼片について、熱処理として、幅方向端部から10mmまでの範囲のみソルトバスに浸漬した。1枚の鋼片において、2つの端部の各々で熱処理温度を異ならせて2つの試験を行うことにより、4枚の鋼片を用いて8つの試験(表3お試験No.1~8)を行った。つまり、マルテンサイト分率が39%の2枚の鋼片を用いて試験No.2、4、6および8を行い、マルテンサイト分率が73%の2枚の鋼片を用いて試験No.1、3、5および7を行った。
熱処理では、幅方向端部に熱電対を接触させた状態で幅方向端部をソルトバスに浸漬し、測定温度が所定の熱処理温度に到達したら、鋼片をソルトバスから取り出して空冷した。熱処理温度を表3に示す。なお、試験No.1、No.2は熱処理を行わなかった。
端部を熱処理した鋼片を、鋼片の長手方向に1パス当たり圧下率約0.25で、厚さ0.9mmまで冷間圧延した。冷間圧延後に、熱処理を行った幅方向端部を目視観察し、端部割れの有無を確認した。
圧延面の幅方向端面近傍を観察し、0.5mm以上の端部割れが発生している場合に、端部割れが「あり」と判断した。0.5mm未満の端部割れのみであった場合、または端部割れが確認できなかった場合に、端部割れが「なし」と判断した。生産性は、熱処理温度から判断した。熱処理温度が450℃以下を生産性が「良」、450℃超を「不良」とした。450℃超の加熱が必要な場合、高額な設備投資と大きな消費電力が必要となり、鋼板の製造コスト上昇につながるためである。
表3に、端部割れおよび生産性の評価結果を示す。
表3の結果から分かるとおり、試験No.4は、マルテンサイト分率が50%以下であり、かつ、幅方向端部の熱処理温度が350~450℃であったため、端部割れが生じず(つまり、耐エッジ割れ性が良好)、かつ生産性が高かった。
試験No.1、2は、幅方向端部を熱処理しなかったので、端部割れが生じていた(つまり、耐エッジ割れ性が悪い)。
試験No.3は、マルテンサイト分率が50%を超えていたため、端部割れが生じていた(つまり、耐エッジ割れ性が悪い)。
試験No.5~8は、熱処理温度(焼戻し温度)が500℃以上と高かったため端部割れは生じなかったものの(つまり、耐エッジ割れ性が良好)、熱処理温度が高いため、生産性が悪かった。
1 冷間圧延装置
2 熱間圧延鋼板
3 熱間圧延鋼板のコイル
5 加熱装置
6 酸洗槽
10 連続圧延機
11 冷間圧延鋼板のコイル

Claims (5)

  1. 鋼片を熱間圧延する熱間圧延工程と、
    前記熱間圧延工程で得られた熱間圧延鋼板を、幅方向端部の金属組織中のマルテンサイト分率が50%以下になるようにコイル状に巻き取る巻取工程と、
    巻き取った熱間圧延鋼板をコイルから繰り出す繰出工程と、
    繰り出された熱間圧延鋼板の幅方向端部を350~450℃の温度に加熱する加熱工程と、
    前記加熱工程後の熱間圧延鋼板を冷間圧延する冷間圧延工程と、
    を含む冷間圧延鋼板の製造方法。
  2. 前記巻取工程は、前記マルテンサイト分率が40%以下になるように巻き取ることを特徴とする請求項1に記載の冷間圧延鋼板の製造方法。
  3. 前記巻取工程は、巻取温度540℃以上で巻き取ることを含む、請求項1または2に記載の冷間圧延鋼板の製造方法。
  4. 前記加熱工程において、前記熱間圧延鋼板の幅方向端部を加熱する温度が350℃以上400℃未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載の冷間圧延鋼板の製造方法。
  5. 前記加熱工程より後で、前記冷間圧延工程より前に、前記熱間圧延鋼板を酸で洗浄する酸洗工程をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の冷間圧延鋼板の製造方法。
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