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JP7336293B2 - トナー - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真方式の画像形成装置に用いるトナーに関する。
電子写真方式の画像形成装置では、トナー像を記録材の一方の面に転写、定着した後に、記録材をスイッチバックさせて記録材の他方の面にトナー像を形成することで両面画像を得ることのできるものがある。(例えば、特許文献1)。
特開2005-272022号公報
例えば、記録材の一方の面(一面目)に、図4(a)のようにトナーが載っている領域401と載っていない領域402とがある画像が形成されると、一般的に使われるトナーは高抵抗のためこの記録材のトナーが載っている領域401は載っていない領域402に対して高抵抗になる。
この状態で図4(b)のような画像をこの記録材の他方の面(二面目)に転写しようとすると、一面目のトナーによって高抵抗になっている領域401に対しても二面目の画像が適切に転写されるように転写電圧が設定される。そのため、一面目の抵抗の低い領域402に対応した二面目の領域に対しては転写電圧が過大になる。
転写電圧が過大であると、トナーの移動を伴わないで、転写電流が流れてしまう「突き抜け」と呼ばれる現象が起きてしまい、二面目の画像は本来、図4(b)のようになるべきところ、図4(c)のように一面目の画像に対応した部分が薄くなってしまう。なお、二面目の画像形成は一面目の記録材をスイッチバックして給紙するため、一面目の画像に対応する位置は二面目では上下逆になっている。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、記録材の両面に印字が可能な画像形成装置において、一面目の画像の影響を受けず、転写不良が発生しない二面目画像を得ることが可能となるトナーを提供する。
結着樹脂を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
前記トナー粒子の表面が、多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物及び有機ケイ素重合体を有し、
該トナーを用いてトナー載り量0.4mg/cmでベタ画像を形成した記録材における未定着時の該ベタ画像の体積抵抗率Ω・cmをTvとし、
該記録材を加熱及び加圧して定着した後の該ベタ画像の体積抵抗率Ω・cmをFvとしたとき、
Tv/Fv≧8
を満たすことを特徴とするトナー。
本発明によれば、記録材の両面に印字が可能な画像形成装置において、一面目の画像の影響を受けず適切に二面目の画像を形成することが可能となるトナーを提供することができる。
画像形成装置の概略構成図 ローラ部材の抵抗測定方法を説明する図 「突き抜け」画像のレベルを判定するための画像を示す図 「突き抜け」現象を説明する図
数値範囲を表す「XX以上YY以下」や「XX~YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
以下、図面を用いて画像形成装置について説明する。なお、以下は特許請求の範囲の発明を限定するものではなく、以下で説明されている特徴の組合せの全てが課題の解決手段に必須のものとは限らない。
[画像形成装置の構成と動作]
図1は、トナーを用いる電子写真方式の画像形成装置の一例としての画像形成装置100の概略断面図である。画像形成装置100は、ホストコンピュータなどの外部装置(不図示)より入力される画像情報に応じた画像を記録材Pに形成する。
画像形成装置100は、像担持体としてのドラム型(円筒形状)の電子写真感光体である感光ドラム1を有する。外部装置からプリント指令が入力されると、感光ドラム1は、図中矢印R1方向に所定の速度(プロセススピード)で回転駆動される。例えば、感光ドラム1としては、直径30mmのアルミニウムシリンダの外周面に、有機光導電体層(OPC感光体)が塗布されて構成されたものを用いることができる。
また、感光ドラム1は、その長手方向(回転軸線方向)の両端部を支持部材によって回転自在に支持されており、一方の端部に駆動手段としての駆動モータ(不図示)からの駆動力が伝達されることにより回転駆動される。例えば、感光ドラム1の帯電極性は負極性である。
回転する感光ドラム1の外周面(表面)は、帯電手段としてのローラ状の帯電部材である帯電ローラ2により、所定の極性の所定の電位に一様に帯電させられる。帯電ローラ2は、導電性ローラで構成されており、感光ドラム1の表面に当接して配置され、所定の圧力で感光ドラム1に向けて付勢(押圧)されている。帯電ローラ2は、感光ドラム1の回転に伴って従動して回転する。そして、帯電ローラ2には、不図示の帯電電源(高圧電源)から、所定の負極性の帯電電圧(帯電バイアス)が印加されて、感光ドラム1は所定の電位Vdに帯電される。
帯電された感光ドラム1の表面に対して、レーザから発せられた光を多面鏡によって走査させるスキャナユニットから構成される露光手段である露光装置(レーザスキャナ)3により、画像情報の書き込みが行われる。露光装置3は、外部装置から画像形成装置100に入力される画像情報の時系列電気デジタル画素信号に応じて変調されたレーザ光Lを出力する。
また、露光装置3は、レーザ光Lにより、帯電した感光ドラム1の表面を選択的に走査露光する。これにより、感光ドラム1の露光された部分(画像部)の電位の絶対値が低下して明部電位Vlとなり、感光ドラム1上に画像情報に応じた静電潜像(静電像)が形成される。露光手段としての露光装置3は、帯電手段により帯電させられた感光ドラム1に静電像を形成する像形成手段の一例である。
感光ドラム1上に形成された静電潜像は、現像手段としての現像装置4により、現像剤としてのトナーを用いてトナー像として現像(可視化)される。現像装置4は、現像剤担持体としての現像ローラ4aと、現像ローラ4aに供給するトナーを収納する現像容器4bと、を有する。
例えば、現像ローラ4aとしては、金属からなる直径20mmのローラ表面に、EPDM(エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体)などの高分子弾性体がコーティングさ
れて構成されたものを用いることができる。現像ローラ4aには、不図示の現像電源(高圧電源)から、所定の直流の現像電圧(現像バイアス)が印加される。現像容器4bから現像ローラ4aに供給されたトナーは、現像ローラ4aと感光ドラム1とが対向する現像位置で現像ローラ4aと感光ドラム1との間に形成された電界により、静電潜像のパターンに応じて選択的に感光ドラム1の表面に付着する。
例えば、一様に帯電処理された後に露光されて電位の絶対値が低下した感光ドラム1上の露光部に、感光ドラム1の帯電極性と同極性に帯電したトナーが付着して、トナー像が形成される(反転現像)。
感光ドラム1に対向して、転写手段としてのローラ状の転写部材である転写ローラ5が配置されている。転写ローラ5は、感光ドラム1の表面に当接して配置され、所定の圧力で感光ドラム1に向けて付勢(押圧)されている。これにより、感光ドラム1の表面と転写ローラ5の外周面(表面)との間に、ニップ部(転写ニップ)である転写部Nが形成される。
例えば、転写ローラ5は、電気抵抗が10~10Ω程度の導電性弾性体(NBRヒドリンゴム)を、ステンレスなどの金属からなる外径6mmのシャフトの周囲に、外径17mmとなるように設けた導電性ローラを用いることができる。
なお、抵抗値Rの測定は、23℃、50%RHの環境下で図2に示すような方法で測定する。すなわち、測定するローラ201をφ30のアルミシリンダ202に総圧9.8N(1kgf)で当接させ、30rpmで回転させ、電源203から、1000Vの電圧を印加した時の電流を測定する。電流は、100Ωの抵抗204の端子間電圧Vrを電圧計205で測定して求める。そしてローラ抵抗Rは、下記式で求められる。
ローラ抵抗R=印加電圧×100/Vr
転写ローラ5には、不図示の転写電源(高圧電源)から、現像時のトナーの帯電極性(正規の帯電極性)とは逆極性である正極性の所定の転写電圧(転写バイアス)が印加される。これにより、転写部Nに送られた感光ドラム1上のトナー像は、記録材P上に転写される。
一方、給送カセット8のシート積載台8a上に積載されている記録材Pは、所定の制御タイミングで駆動される給送ローラ9により一枚ずつピックアップされ、搬送ローラ10と搬送コロ11とによりレジスト部へと送られる。レジスト部では、記録材Pの先端をレジストローラ12とレジストコロ13との間のニップ部で一旦受け止めて記録材Pの斜行矯正を行い、所定の搬送タイミングでその記録材Pを転写部Nへと給送する。
すなわち、レジスト部では、感光ドラム1の表面のトナー像の先端部位が転写部Nに到達したとき、記録材Pの先端部位も転写部Nに到達するように、記録材Pの搬送タイミングが制御される。レジスト部を通過した記録材Pは、転写入口ガイド14に沿って搬送され、転写部Nに送られる。
転写部Nに給送された記録材Pは、感光ドラム1と転写ローラ5とにより挟持されて搬送されながら、その上にトナー像が転写される。
転写ローラ5は雰囲気温湿度や耐久状況によって抵抗が変動する。さらに記録材も種類や、雰囲気温湿度によって抵抗が変わったり、二面目の画像形成時は一面目のトナーの載り具合によっても抵抗が変わったりする。そこで、転写ローラ5と感光ドラム1との間に所定の転写電流が流れるように転写ローラ5に印可する電圧値を制御する、ATVC(Active Transfer Voltage Control)と呼ばれる制御が行われる。このATVC制御により決定された転写電圧によって感光ドラム1上のトナー像が記録材P上に転写される。
その後、記録材Pは、感光ドラム1の表面から分離されて、定着手段としての定着装置15へと搬送される。記録材Pが分離された後の感光ドラム1の表面は、クリーニング手
段としてのクリーナ6により転写残トナーが除去され、繰り返して作像に供される。クリーナ6は、クリーニング部材としてのクリーニングブレード6aと、回転する感光ドラム1の表面からクリーニングブレード6aによって掻き取られた転写残トナーを収容する回収容器6bと、を有する。
定着装置15は、定着回転体(定着部材)としての熱源を備えた定着ローラ15aと、定着ローラ15aに圧接する加圧回転体(加圧部材)としての加圧ローラ15bと、を有する。定着ローラ15aと加圧ローラ15bとが接触して、ニップ部(定着ニップ)である定着部(加熱部)Tが形成される。定着装置15は、未定着のトナー像を担持した記録材Pに、定着部Tで熱と圧力を付与することにより、未定着のトナー像を記録材Pに定着(固着)させる。
定着装置15は、感光ドラム1から分離された記録材を加熱部において加熱する加熱手段、特に加熱部において記録材に接触して記録材を加熱しながら回転する回転体を有する加熱手段の一例である。定着装置15から排出された記録材Pは、中間排出ローラ16により搬送される。
ここで、画像形成装置100は、記録材Pの片面にトナー像を定着させて出力する片面画像形成(片面プリント)と、記録材Pの一面目(表面)と二面目(裏面)の両面にトナー像を定着させて出力する両面画像形成(両面プリント)と、を実行可能である。
片面画像形成を行う場合は、記録材Pは、中間排出ローラ16を経由して排出ローラ17に搬送され、排出トレイ18上に排出される。一方、両面画像形成を行う場合は、記録材Pは、一旦中間排出ローラ16によって途中まで搬送された後、中間排出ローラ16が逆回転することによりスイッチバックされ、反転フラッパ19が切り換えられることによって両面搬送路20に送られる。両面搬送路20に送られた記録材Pは、両面搬送ローラ21によって移送され、搬送ローラ10と搬送コロ11とにより再度レジスト部へと送られる。
その後、一面目(表側)の画像形成と同様の工程で二面目(裏側)の画像形成が行われる。二面目の画像形成後は、記録材Pは中間排出ローラ16を経由して排出ローラ17に搬送され、排出トレイ18上に排出される。
なお、上記画像形成装置は、感光ドラム1と、感光ドラム1に作用するプロセス手段としての帯電ローラ2、現像装置4及びクリーナ6と、が一体化されて、プロセスカートリッジ7が構成されている。プロセスカートリッジ7は、画像形成装置100の筐体を構成する装置本体110に対して取り外し可能に装着される。
次に、トナーについて詳細に説明する。
[トナー]
本発明者らは、記録材の両面に印字が可能な画像形成装置において、一面目の画像の影響を受けず、転写不良が発生しない二面目画像を得ることが可能となるトナーについて鋭意検討した。
その結果、トナーを用いてトナー載り量0.4mg/cmでベタ画像を形成した記録材における未定着時のベタ画像の体積抵抗率Ω・cmをTvとし、
該記録材を加熱及び加圧して定着した後のベタ画像の体積抵抗率Ω・cmをFvとしたとき、Tv/Fv≧8を満たすことで、上記課題が解決できることを見出した。
さらに、トナー粒子の表面が、多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物を有することが好ましい。
Tv/Fv≧8を満たすことは、定着により画像の体積抵抗率を大きく低減できることを意味している。このようなトナーを用いることで、二面目の転写バイアスの電圧値を下げることができるため「突き抜け」などの転写不良の発生が抑えられる。
Tv/Fvは、12以上であることが好ましく、80以上であることがより好ましい。一方、上限は特に制限されないが、5000以下であることが好ましく、1000以下であることがより好ましい。
Tv/Fvは、後述のM1の数値等により制御できる。
Tvは、1×10Ω・cm~1×1014Ω・cmであることが好ましく、1×10Ω・cm~1×1013Ω・cmであることがより好ましい。
Fvは、1×10Ω・cm~1×1013Ω・cmであることが好ましく、1×10Ω・cm~1×1012Ω・cmであることがより好ましい。
多価酸は、2価以上の酸であればどのようなものでも構わない。具体例としては、以下のものがあげられる。
リン酸、炭酸、硫酸などの無機酸;ジカルボン酸、トリカルボン酸などの有機酸。
有機酸の具体例としては、以下のものがあげられる。
シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などのジカルボン酸。
クエン酸、アコニット酸、無水トリメリット酸などのトリカルボン酸。
そのなかでも、多価酸が、炭酸、硫酸、及びリン酸からなる群より選ばれた少なくとも一つを含有することが、第4族元素と強固に反応し、吸湿しにくいことから好ましい。より好ましくは、多価酸が、リン酸を含有することである。
多価酸は、多価酸をそのまま用いてもよいし、多価酸とナトリウム、カリウム、リチウムなどとのアルカリ金属塩;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどとのアルカリ土類金属塩;又は、多価酸のアンモニウム塩として用いてもよい。
第4族元素を含む化合物は、第4族元素を含む化合物であれば、特段限定されず、どのようなものでも構わない。
第4族元素としては、チタン、ジルコニウム、ハフニウムなどが挙げられる。そのなかでも、第4族元素は、チタン及びジルコニウムの少なくとも一方を含有することが好ましい。
チタンを含む化合物の具体例としては、以下のものが挙げられる。
テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネートなどのチタンアルコキシド。
チタンジイソプロポキシビスアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムジ-2-エチルヘキソキシビス2-エチル-3-ヒドロキシヘキソキシド、チタンジイソプロポキシビスエチルアセトアセテート、チタンラクテート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンジイソプロポキシビストリエタノールアミネート、チタンイソステアレート、チタンアミノエチルアミノエタノレート、チタントリエタノールアミネートなどのチタンキレート。
中でもチタンキレートは多価酸と反応しやすいため好ましい。また、チタンラクテート、チタンラクテートアンモニウム塩がより好ましい。
ジルコニウムを含む化合物の具体例としては、以下のものが挙げられる。
ジルコニウムテトラプロポキシド、ジルコニウムテトラブトキシドなどのジルコニウムアルコキシド。
ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムラクテートアンモニウム塩などのジルコニウムキレート。
中でもジルコニウムキレートは多価酸と反応しやすいため好ましい。また、ジルコニウムラクテート、及び、ジルコニウムラクテートアンモニウム塩がより好ましい。
ハフニウムを含む化合物の具体例としては、以下のものが挙げられる。
ハフニウムラクテート、ハフニウムラクテートアンモニウム塩などのハフニウムキレート。
トナー粒子の表面が、多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物を有するとは、例えば、トナー粒子の表面に、多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物が存在している状態が挙げられる。
トナー粒子の表面に、多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物を存在させる方法としては、従来公知の様々な方法を用いることができるが、例えば下記方法がある。
トナー母粒子の分散液中で、多価酸と第4族元素を含む化合物を反応させて、得られた反応物をトナー母粒子の表面に付着させてトナー粒子を得る方法。
例えば、トナー母粒子の分散液に、多価酸及び第4族元素を含む化合物を添加及び混合することで、多価酸と第4族元素を含む化合物とを反応させ、反応物を得ると同時に、分散液を撹拌しておくことで、トナー母粒子の表面に反応物を付着させてトナー粒子を得る方法が挙げられる。
また、例えば、多価酸と第4族元素を含む化合物とを反応させ、反応物を含有する微粒子を作製し、トナー母粒子と混合することでトナー母粒子の表面にこの反応物を含有する微粒子を付着させてトナー粒子を得る方法が挙げられる。
具体的には、FMミキサ、メカノハイブリッド(日本コークス社製)、スーパーミキサー、ノビルタ(ホソカワミクロン社製)など、せん断力を与える高速撹拌機を用いて、トナー母粒子とこの反応物の微粒子を混合するとよい。
多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物は、溶媒中で多価酸及び第4族元素を含む化合物を反応させることで得ることができる。
この溶媒としては、どのようなものでも構わない。
該溶媒の具体例としては、以下のものが挙げられる。
ヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、クロロホルム、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、1-ブタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、メタノール、エタノール、水。
多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物は、特に限定されない。多価酸及び第4族元素の塩(以下、多価酸金属塩ともいう)が好ましい。体積抵抗率の低減の観点から、硫酸チタン、炭酸チタン、リン酸チタン、硫酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、及びリン酸ジルコニウムからなる群より選ばれた少なくとも一つを含有することが好ましい。
より好ましくは、リン酸チタン及びリン酸ジルコニウムの少なくとも一方を含有することである。
多価酸は電子対を受け取り、負に帯電しやすい。そのため、多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物も、負に帯電しやすく、帯電性に優れている。
さらに、第4族元素は、酸化数が+4の状態が最も安定である。そのため、多価酸と架橋構造を作り、その架橋構造により電子の移動を促進する。
多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物は、多価酸と金属元素とが構成する架橋構造を有することで、電荷を移動させやすい特性を有する。したがって、トナー表面に付与された電荷は、上記架橋構造を伝って全面に伝搬しやすい。
定着によってトナーが加熱及び加圧されると、トナー粒子表面の多価酸と第4族元素を
含む化合物との反応物は、溶融したトナー粒子と混ざり合う。これにより、トナー粒子内部に電荷を移動させやすい特性が発現する。結果として、未定着時に比べて、定着後の体積抵抗値は低下する。
一方、表面に多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物を有さない、例えば抵抗調整剤として酸化チタンを含有するトナーは、接触によって付与された電荷が表面を移動しにくく、表面(の接触部)に電荷が局在化しやすい。また、酸化チタンを含有するトナーは、トナー同士の接触によっても、多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物を有するトナーと比べて電荷移動しにくい。
さらに、定着によってトナーが加熱及び加圧されても、酸化チタンを含有するトナーは、トナー粒子内部に電荷を移動する特性が発現しない。結果として、定着後の体積抵抗率と未定着時の体積抵抗率とに有意差が無く、本発明のトナーのような効果を生み出さなかったと考えている。
多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物を含有する微粒子の個数平均粒径は、1nm以上400nm以下であることが好ましく、1nm以上200nm以下であることがより好ましく、1nm以上60nm以下であることがさらに好ましい。
該微粒子の個数平均粒径を上記範囲にすることで、該微粒子の脱離による部材汚染を抑制することができる。
該微粒子の個数平均粒径を上記範囲に調整する手法は、この微粒子の原料である多価酸と第4族元素を含む化合物の添加量や、それらが反応するときのpH、反応時の温度などが挙げられる。
トナー粒子中の多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物の含有量は、0.01質量%以上5.00質量%以下であることが好ましく、0.02質量%以上3.00質量%以下であることがより好ましい。
多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物は、多価酸金属塩であることが好ましい。
多価酸金属塩に含まれる金属元素を金属元素Mとし、トナーのX線光電子分光分析によって得られたスペクトルから求められる、トナー表面の構成元素における金属元素Mの比率をM1(atomic%)としたときに、M1が1.0atomic%以上10.0atomic%以下であることが好ましい。
また、トナー1.0gを61.5質量%のショ糖水溶液31.0gと、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤及び有機ビルダーからなる10質量%の精密測定器洗浄用中性洗剤水溶液6.0gからなる混合水溶液に分散させ、シェーカーを用いて1分間に300回の振とうを20分行う処理(a)を施して得たトナーをトナー(a)とし、
トナー(a)のX線光電子分光分析によって得られたスペクトルから求められる、トナー(a)の表面の構成元素における金属元素Mの比率をM2(atomic%)としたとき、M1とM2がともに1.0以上10.0以下であることが好ましい。
そして、M1及びM2が以下の式(ME-1)を満たすことが好ましい。
0.90≦M2/M1 (ME-1)
M2/M1は0.95以上であることがより好ましい。上限は特に制限されないが、1.00以下であることが好ましい。
処理(a)では、トナー粒子表面に弱く付着している多価酸金属塩を取り除くことができる。具体的には、トナー母粒子に対し、乾式法で付着させた多価酸金属塩は処理(a)によって取り除かれやすい。このように、処理(a)によってトナー表面に存在する多価酸金属塩を評価することが可能である。処理(a)による各パラメータの変化が小さいほど、多価酸金属塩がトナー母粒子に強く固着していることを示す。
M1及びM2は処理(a)の前後における、多価酸金属塩によるトナー母粒子表面の被
覆状態を表す。そして、多価酸金属塩によるトナー母粒子表面の被覆状態は帯電性及び電荷の移動性に寄与する。
M1及びM2は、それぞれ1.0atomic%以上10.0atomic%以下であることが好ましい。M1及びM2が上記範囲であると、トナーの負帯電性及び電荷の移動性が更に良好になる。
M1及びM2は、それぞれ1.0atomic%以上7.0atomic%以下であるとより好ましく、1.5atomic%以上5.0atomic%以下であるとさらに好ましい。
M1は、トナー製造時における多価酸金属塩の付着量及び付着方法や付着条件等により制御できる。
M2/M1は、処理(a)において多価酸金属塩がトナー母粒子表面から剥離せず、残存している比率を意味している。M2/M1が0.90以上となる場合、トナー母粒子表面に多価酸金属塩が強く固着しているため、トナーから部材への多価酸金属塩の移行が抑制される。よって、長期にわたる使用時にも安定し、耐久性に優れたトナーを得ることができる。
M2/M1は、トナー製造時における多価酸金属塩の製造方法や付着方法及び付着条件等により制御できる。
トナー母粒子の分散液中で、多価酸と第4族元素を含む化合物とを反応させ、得られた反応物をトナー母粒子表面に付着させてトナー粒子を得る場合、下記式(2)で示される有機ケイ素化合物を併用することが好ましい。
該有機ケイ素化合物を併用することで、得られた反応物がより強固にトナー粒子に固着し、かつ、多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物が疎水化され、環境安定性がさらに向上する。
具体的には、まず、トナー母粒子の分散液を調整する。そして、下記式(2)で示される有機ケイ素化合物を加水分解する。有機ケイ素化合物は事前に加水分解してもよいし、トナー母粒子の分散液中で加水分解してもよい。
そして、トナー母粒子の分散液中で、多価酸と第4族元素を含む化合物とを反応させ、得られた反応物をトナー母粒子表面に付着させる際に、得られた有機ケイ素化合物の加水分解物を縮合させ、トナー粒子を得る。
得られた縮合物はトナー粒子表面に移行する。該縮合物は粘性があるため、多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物を、トナー粒子の表面に密着させ、該反応物をより強固にトナー粒子に固着することができる。
a(n)-Si-Rb(4-n) (2)
式(2)中、Rは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基又は(好ましくは炭素数1~4、より好ましくは炭素数1~3の)アルコキシ基を示し、Rは、(好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~6の)アルキル基、(好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~4の)アルケニル基、(好ましくは炭素数6~14、より好ましくは6~10の)アリール基、(好ましくは炭素数1~6、より好ましくは1~4の)アシル基又はメタクリロキシアルキル基を示す。nは2~4の整数を示す。ただし、R及びRが複数存在する場合、複数のR、複数のRの置換基は、それぞれ、同一でも異なってもよい。)
以降、式(2)中のRを官能基、Rを置換基と呼称する。
式(2)で示される有機ケイ素化合物としては、特段の制限なく、公知の有機ケイ素化合物を用いることができる。具体的には、以下の、官能基を二つ有する二官能シラン化合
物、官能基を三つ有する三官能シラン化合物、官能基を四つ有する四官能シラン化合物が挙げられる。
二官能シラン化合物として、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランなどが挙げられる。
三官能シラン化合物として、以下のものが挙げられる。
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシメトキシシラン、メチルエトキシジメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシランなどの置換基としてアルキル基を有する三官能シラン化合物;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシランなどの置換基としてアルケニル基を有する三官能シラン化合物;フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどの置換基としてアリール基を有する三官能シラン化合物;
γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルジエトキシメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルエトキシジメトキシシランなどの置換基としてメタクリロキシアルキル基を有する三官能シラン化合物など。
四官能シラン化合物として、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどが挙げられる。
トナー粒子中の、式(2)で示される有機ケイ素化合物からなる群より選択される少なくとも1つの有機ケイ素化合物の縮合物の含有量は、0.1質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上15.0質量%以下であることがより好ましい。
トナー粒子の表面は、有機ケイ素重合体を有することが好ましい。有機ケイ素重合体は、例えば、式(2)で示される有機ケイ素化合物を縮合させて得ることができる。
有機ケイ素重合体は、下記式(II)で表される構造を有することが好ましい。
R-SiO3/2 (II)
(式(II)中、Rは、(好ましくは炭素数1~8、より好ましくは1~6の)アルキル基、(好ましくは炭素数1~6、より好ましくは1~4の)アルケニル基、(好ましくは炭素数1~6、より好ましくは1~4の)アシル基、(好ましくは炭素数6~14、より好ましくは6~10の)アリール基又はメタクリロキシアルキル基を示す。)
式(II)は、有機ケイ素重合体が有機基と、ケイ素重合体部を有することを表している。このことにより、式(II)で表される構造を含む有機ケイ素重合体において、有機基がトナー母粒子との親和性を有することでトナー母粒子と強く固着し、ケイ素重合体部が多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物との親和性を有することで該反応物と強く固着する。
また、式(II)は有機ケイ素重合体が架橋していることを表している。有機ケイ素重合体が架橋構造を有することで、有機ケイ素重合体の強度が増すとともに、残存するシラノール基が少なくなることで疎水性が増す。よって、さらに耐久性に優れる。
式(II)中、Rが、メチル基、プロピル基、ノルマルヘキシル基等の炭素数1以上6以下のアルキル基、ビニル基、フェニル基、又はメタクリロキシプロピル基であることが好ましく、炭素数1以上6以下のアルキル基又はビニル基であることがより好ましい。上記構造を有する有機ケイ素重合体は、有機基の分子運動性が制御されることで硬さと柔軟
性を併せ持つため、長期にわたって使用された場合においてもトナーの劣化が抑制され、優れた性能を示す。
トナー母粒子の製造方法は、特に限定されることはなく、公知の懸濁重合法、溶解懸濁法、乳化凝集法、及び粉砕法などを用いることができる。
水系媒体中でトナー母粒子を製造した場合は、トナー母粒子を含む水系媒体を、そのまま、トナー母粒子の分散液として用いてもよい。また、洗浄やろ過、乾燥を行った後、水系媒体中に再分散させて、トナー母粒子の分散液としてもよい。
一方、乾式でトナー母粒子を製造した場合は、公知の方法によって水系媒体に分散させて、トナー母粒子の分散液としてもよい。トナー母粒子を水系媒体中に分散させるために、水系媒体が分散安定剤を含有していることが好ましい。
以下、懸濁重合法を用いた、トナー母粒子の製造例を具体的に述べる。
まず、結着樹脂を生成しうる重合性単量体、及び必要に応じて各種添加物を混合し、分散機を用いて、これらの材料を溶解又は分散させた重合性単量体組成物を調製する。
各種添加物として、着色剤、ワックス、荷電制御剤、重合開始剤、連鎖移動剤などが挙げられる。
分散機としては、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、又は超音波分散機が挙げられる。
次いで、重合性単量体組成物を、難水溶性の無機微粒子を含有する水系媒体中に投入し、高速攪拌機又は超音波分散機などの高速分散機を用いて、重合性単量体組成物の液滴を調製する(造粒工程)。
その後、該液滴中の重合性単量体を重合してトナー母粒子を得る(重合工程)。
重合開始剤は、重合性単量体組成物を調製する際に混合してもよく、水系媒体中に液滴を形成させる直前に重合性単量体組成物中に混合してもよい。
また、液滴の造粒中や造粒完了後、すなわち重合反応を開始する直前に、必要に応じて重合性単量体や他の溶媒に溶解した状態で加えることもできる。
重合性単量体を重合して樹脂粒子を得たあと、必要に応じて脱溶剤処理を行い、トナー母粒子の分散液を得るとよい。
結着樹脂としては、以下の樹脂又は重合体が例示できる。
ビニル系樹脂;ポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;フラン樹脂;エポキシ樹脂;キシレン樹脂;シリコーン樹脂。
これらの中でも、ビニル系樹脂が好ましい。なお、ビニル系樹脂としては、下記単量体の重合体又はそれらの共重合体が挙げられる。中でも、スチレン系単量体と不飽和カルボン酸エステルとの共重合体が好ましい。
スチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシルなどの不飽和カルボン酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸;マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸;マレイン酸無水物などの不飽和ジカルボン酸無水物;アクリロニトリルなどのニトリル系ビニル単量体;塩化ビニルなどのハロゲン含有ビニル単量体;ニトロスチレンなどのニトロ系ビニル単量体。
着色剤としては、以下に挙げるブラック顔料、イエロー顔料、マゼンタ顔料、シアン顔料などが用いられる。
ブラック顔料としては、カーボンブラックなどが挙げられる。
イエロー顔料としては、モノアゾ化合物;ジスアゾ化合物;縮合アゾ化合物;イソイン
ドリノン化合物;イソインドリン化合物;ベンズイミダゾロン化合物;アントラキノン化合物;アゾ金属錯体;メチン化合物;アリルアミド化合物が挙げられる。
具体的には、C.I.ピグメントイエロー74、93、95、109、111、128、155、174、180、185などが挙げられる。
マゼンタ顔料としては、モノアゾ化合物;縮合アゾ化合物;ジケトピロロピロール化合物;アントラキノン化合物;キナクリドン化合物;塩基染料レーキ化合物;ナフトール化合物:ベンズイミダゾロン化合物;チオインジゴ化合物;ペリレン化合物が挙げられる。
具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、238、254、269、C.I.ピグメントバイオレッド19などが挙げられる。
シアン顔料としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体;アントラキノン化合物;塩基染料レ-キ化合物が挙げられる。
具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が挙げられる。
また、顔料とともに、着色剤として従来知られている種々の染料を併用してもよい。
着色剤の含有量は結着樹脂100質量部に対して、1.0質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
トナーは、磁性体を含有させて磁性トナーとすることも可能である。この場合、磁性体は着色剤の役割を兼ねることもできる。
磁性体としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライトなどに代表される酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルなどに代表される金属又はこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムなどの金属との合金及びその混合物などが挙げられる。
ワックスを以下に例示する。
ベヘン酸ベヘニル、ステアリン酸ステアリル、パルミチン酸パルミチルなどの1価のアルコールと脂肪族モノカルボン酸エステル、又は、1価のカルボン酸と脂肪族モノアルコールのエステル;セバシン酸ジベヘニル、ヘキサンジオールジベヘネートなどの2価のアルコールと脂肪族モノカルボン酸エステル、又は、2価のカルボン酸と脂肪族モノアルコールのエステル;グリセリントリベヘネートなどの3価のアルコールと脂肪族モノカルボン酸エステル、又は、3価のカルボン酸と脂肪族モノアルコールのエステル;ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラパルミテートなどの4価のアルコールと脂肪族モノカルボン酸エステル、又は、4価のカルボン酸と脂肪族モノアルコールのエステル;ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミテートなどの6価のアルコールと脂肪族モノカルボン酸エステル、又は、6価のカルボン酸と脂肪族モノアルコールのエステル;ポリグリセリンベヘネートなどの多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸エステル、又は、多価カルボン酸と脂肪族モノアルコールのエステル;カルナバワックス、ライスワックスなどの天然エステルワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムなどの石油系ワックス及びその誘導体;フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス及びその誘導体;高級脂肪族アルコール;ステアリン酸、パルミチン酸などの脂肪酸;酸アミドワックスが挙げられる。
ワックスの含有量は、結着樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
トナーは、特性又は効果を損なわない程度に、トナー粒子に各種有機又は無機微粒子を外添してもよい。有機又は無機微粒子としては、例えば、以下のようなものが用いられる。
(1)流動性付与剤:シリカ、アルミナ、酸化チタン、カーボンブラック及びフッ化カーボン。
(2)研磨剤:金属酸化物(例えば、チタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化クロム)、窒化物(例えば、窒化ケイ素)、炭化物(例えば、炭化ケイ素)、金属塩(例えば、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム)。
(3)滑剤:フッ素系樹脂微粒子(例えば、フッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン)、脂肪酸金属塩(例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム)。
(4)荷電制御性粒子:金属酸化物(例えば、酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ)、カーボンブラック。
有機又は無機微粒子は疎水化処理することもできる。有機又は無機微粒子の疎水化処理の処理剤としては、未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物、有機チタン化合物が挙げられる。これらの処理剤は単独で又は併用して用いられてもよい。
以下に、各物性値の測定方法を記載する。
<トナー粒子などの重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)の測定方法>
トナー母粒子、トナー粒子又はトナー(測定方法の説明において、以下、単にトナー粒子と記載する)の重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)は、以下のようにして算出する。
測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター(株)製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター(株)製)を用いる。なお、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が1.0%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター(株)製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行う。
専用ソフトの「標準測定方法(SOMME)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50,000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて得られた値を設定する。
「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1,600μAに、ゲインを2に、電解水溶液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下のとおりである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに前記電解水溶液200.0mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに前記電解水溶液30.0mLを入れる。この
中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10%水溶液、和光純薬工業(株)製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を0.3mL加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetra150」(日科機バイオス(株)製)を準備する。超音波分散器の水槽内に3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを2.0mL添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー粒子10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナー粒子を分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50,000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)を算出する。なお、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)であり、前記専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。
<X線光電子分光法を用いた金属元素Mの比率M1及びM2の算出方法>
・処理(a)
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学(株)製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させ、61.5質量%のショ糖水溶液を調製する。遠心分離用チューブ(50ml)に上記ショ糖水溶液を31.0gと、コンタミノンN(商品名)(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤及び有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業(株)製)を6.0g入れ分散液を作製する。
この分散液にトナー1.0gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。遠心分離用チューブを、万能シェーカー用オプション遠心沈殿管ホルダー(アズワン社製)を装着したシェーカー(アズワン社製AS-1N)にて300spm(strokes
per min)、振幅4cm、20分で振とうする。
振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機にて3500rpm、30分の条件で分離する。トナーと水溶液が十分に分離されていることを目視で確認し、最上層に分離したトナーをスパチュラ等で採取する。採取したトナーを減圧濾過器で濾過した後、乾燥機で1時間以上乾燥させる。乾燥品をスパチュラで解砕してトナー(a)を得る。
トナー、及びトナー(a)について、X線光電子分光法を用いて、以下の通りに測定を行い、M1及びM2を算出する。
金属元素Mの比率M1及びM2の比率は、上記各トナーを以下の条件で測定し、算出する。
・測定装置:X線光電子分光装置:Quantum2000(アルバックファイ株式会社製)
・X線源:モノクロAl Kα
・Xray Setting:100μmφ(25W(15KV))
・光電子取りだし角:45度
・中和条件:中和銃とイオン銃の併用
・分析領域:300×200μm
・Pass Energy:58.70eV
・ステップサイズ:0.1.25eV
・解析ソフト:Maltipak(PHI社)
続いて、以下に金属元素としてTiを用いた場合を例に挙げて、金属元素の定量値を解析によって求める方法について説明する。まず炭素1s軌道のC-C結合に由来するピークを285eVに補正する。その後、452~468eVにピークトップが検出されるTi 2p軌道に由来するピーク面積から、アルバック-ファイ社提供の相対感度因子を用いることで、構成元素の総量に対するTi元素に由来するTi量を算出し、その値をトナー表面におけるTi元素の定量値M1(atomic%)とする。
上記方法を用いて、トナー及びトナー(a)を測定し、得られたスペクトルから求められる各トナーの表面における金属元素Mの比率をそれぞれ、M1(atomic%)及びM2(atomic%)とする。
<多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物の検出方法>
飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)を用いて、トナー表面の多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物(好ましくは多価酸金属塩)を以下の方法により検出する。
トナーサンプルをTOF-SIMS(TRIFTIV:アルバック・ファイ社製)を用いて以下の条件で分析する。
・一次イオン種: 金イオン (Au
・一次イオン電流値: 2pA
・分析面積: 300×300μm
・画素数: 256×256pixel
・分析時間: 3min
・繰り返し周波数: 8.2kHz
・帯電中和: ON
・二次イオン極性: Positive
・二次イオン質量範囲: m/z 0.5~1850
・試料基板:インジウム
上記条件で分析を行い、金属イオンと多価酸イオンとを含む二次イオン(例えばリン酸チタンの場合はTiPO(m/z 127)、TiP(m/z 207)等)に由来するピークが検出される場合、トナー表面に多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物が存在するものとする。
<有機ケイ素重合体の確認>
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、トナーの断面を以下の方法により観察する。
まず、常温硬化性のエポキシ樹脂中にトナーを充分分散させた後、40℃の雰囲気下で2日間硬化させる。
得られた硬化物からダイヤモンド刃を備えたミクロトーム(EM UC7:Leica社製)を用い、厚さ50nmの薄片状のサンプルを切り出す。
このサンプルを、TEM(JEM2800型:日本電子社製)を用いて加速電圧200V、電子線プローブサイズ1mmの条件で50万倍の倍率に拡大し、トナーの断面を観察する。この際、前述のトナーの個数平均粒径(D1)の測定法に従い、同トナーを測定した際の個数平均粒径(D1)の0.9倍~1.1倍の最大径を有するトナーの断面を選択する。
続いて、得られたトナーの断面の構成元素を、エネルギー分散型X線分光法(EDX)を利用して解析し、EDXマッピング像(256×256ピクセル(2.2nm/ピクセ
ル)、積算回数200回)を作製する。
作製したEDXマッピング像において、トナー母粒子の表面にケイ素元素に由来するシグナルが観察され、後述の標品との比較によって上記シグナルが有機ケイ素重合体に由来すると確認される場合、上記シグナルを有機ケイ素重合体の像とする。
トナー粒子表面の有機ケイ素重合体は、Si、及びOの元素含有量(atomic%)の比(Si/O比)を標品と比較することで確認する。
有機ケイ素重合体、及びシリカ微粒子それぞれの標品に対して、上記条件でEDX分析
を行い、Si、及びOそれぞれの元素含有量(atomic%)を得る。
有機ケイ素重合体のSi/O比をAとし、シリカ微粒子のSi/O比をBとする。AがBに対して、有意に大きくなる測定条件を選択する。
具体的には、標品に対して、同条件で10回の測定を行い、A及びB、それぞれの相加平均値を得る。得られた平均値がA/B>1.1となる測定条件を選択する。
トナー断面に観察されるケイ素が検出される部分のSi/O比が[(A+B)/2]よりもA側にある場合に当該部分を有機ケイ素重合体と判断する。
有機ケイ素重合体粒子の標品として、トスパール120A(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社)を、シリカ微粒子の標品として、HDK V15(旭化成)を用いる。
本発明を以下に示す実施例により具体的に説明する。しかし、これは本発明をなんら限定するものではない。以下の処方における「部」は特に断りがない場合、全て質量基準である。
[トナーの製造例]
<トナー母粒子分散液の製造例>
イオン交換水390.0部を入れた反応容器に、リン酸ナトリウム(12水和物)11.2部を投入し、窒素パージしながら65℃で1.0時間保温した。T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、12,000rpmにて撹拌した。撹拌を維持しながら、イオン交換水10.0部に7.4部の塩化カルシウム(2水和物)を溶解した塩化カルシウム水溶液を反応容器に一括投入し、分散安定剤を含む水系媒体を調製した。さらに、反応容器内の水系媒体に1.0mol/Lの塩酸を投入し、pHを6.0に調整し、水系媒体を調製した。
(重合性単量体組成物の調製)
・スチレン 60.0部
・カーボンブラック「Nipex35(オリオンエンジニアドカーボンズ社製)」
6.3部
上記材料をアトライタ(日本コークス工業株式会社製)に投入し、さらに直径1.7mmのジルコニア粒子を用いて、220rpmで5.0時間分散させて、顔料が分散された着色剤分散液を調製した。
次いで、この着色剤分散液に下記材料を加えた。
・スチレン 10.0部
・アクリル酸n-ブチル 30.0部
・ポリエステル樹脂 5.0部
(テレフタル酸と、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物との縮重合物、重量平均分子量Mw=10,000、酸価:8.2mgKOH/g)
・HNP9(融点:76℃、日本精蝋社製) 6.0部
上記材料を65℃に保温し、T.K.ホモミクサーを用いて、500rpmにて均一に溶解、分散し、重合性単量体組成物を調製した。
(造粒工程)
水系媒体の温度を70℃、撹拌装置の回転数を12,000rpmに保ちながら、水系媒体中に重合性単量体組成物を投入し、重合開始剤であるt-ブチルパーオキシピバレート8.0部を添加した。そのまま撹拌装置にて12,000rpmを維持しつつ10分間造粒した。
(重合工程)
高速撹拌装置からプロペラ撹拌羽根を備えた撹拌機に変更し、200rpmで撹拌しながら70℃を保持して5.0時間重合を行い、さらに85℃に昇温して2.0時間加熱することで重合反応を行った。
さらに、98℃に昇温して3.0時間加熱することで残留モノマーを除去し、イオン交換水を加えて分散液中のトナー母粒子濃度が30.0質量%になるように調整し、トナー母粒子が分散したトナー母粒子分散液を得た。
トナー母粒子の個数平均粒径(D1)は6.2μm、重量平均粒径(D4)は6.9μmであった。
<有機ケイ素化合物液の製造例>
・イオン交換水 70.0部
・メチルトリエトキシシラン 30.0部
上記材料を200mLのビーカーに秤量し、10%塩酸でpHを3.5に調整した。その後、ウォーターバスで60℃に加熱しながら1.0時間撹拌し、有機ケイ素化合物液を作製した。
<多価酸金属塩微粒子の製造例>
・イオン交換水 100.0部
・リン酸ナトリウム(12水和物) 8.5部
以上を混合したのち、室温で、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、10,000rpmにて撹拌しながら、ジルコニウムラクテートアンモニウム塩(ZC-300、マツモトファインケミカル株式会社)60.0部(ジルコニウムラクテートアンモニウム塩として7.2部相当)を添加した。1.0mol/Lの塩酸を加えpHを7.0に調整した。温度を70℃に調整し、撹拌を維持しながら1時間反応を行った。
その後、遠心分離で固形分を取り出した。続いて、イオン交換水に再度分散、遠心分離で固形分を取り出すという工程を3回繰り返し、ナトリウムなどのイオンを除去した。再度、イオン交換水に分散させ、スプレードライで乾燥し、個数平均粒径が22nmのリン酸ジルコニウム化合物微粒子を得た。
<トナー1>
(多価酸金属塩付着工程)
反応容器内に下記サンプルを秤量し、プロペラ撹拌翼を用いて混合した。
・トナー母粒子分散液 500.0部
・チタンラクテート44%水溶液(TC-310:マツモトファインケミカル社製)
4.3部(チタンラクテートとして1.9部相当)・有機ケイ素化合物液 10.0部
次に、1.0mol/LのNaOH水溶液を用いて、得られた混合液のpHを9.5に調整し、5.0時間保持した。温度を25℃に下げたのち、1.0mol/Lの塩酸でpHを1.5に調整して1.0時間撹拌後、イオン交換水で洗浄しながら、ろ過した。得られた粉体を恒温槽で乾燥した後、風力式分級機で分級することにより、トナー粒子1を得た。
トナー粒子1の個数平均粒径(D1)は6.2μm、重量平均粒径(D4)は6.9μ
mであった。トナー粒子1をTOF-SIMS分析することでリン酸チタン由来のイオンが検出された。
なお、前記リン酸チタン化合物は、チタンラクテートと、水系媒体中のリン酸ナトリウム、またはリン酸カルシウム由来のリン酸イオンとの反応物である。
トナー粒子1をそのままトナー1として用いた。
<トナー2>
トナー1の製造例において、チタンラクテート44%水溶液(TC-310:マツモトファインケミカル社製)4.3部を、3.2部(チタンラクテートとして1.4部相当)にした以外はトナー1の製造例と同様にしてトナー粒子2を得た。トナー粒子2の個数平均粒径(D1)は6.2μm、重量平均粒径(D4)は6.9μmであった。
トナー粒子2をTOF-SIMS分析することでリン酸チタン由来のイオンが検出された。トナー粒子2をそのままトナー2として用いた。
<トナー3>
トナー1の製造例において、チタンラクテート44%水溶液(TC-310:マツモトファインケミカル社製)4.3部を、2.1部(チタンラクテートとして0.9部相当)にした以外はトナー1の製造例と同様にしてトナー粒子3を得た。トナー粒子3の個数平均粒径(D1)は6.2μm、重量平均粒径(D4)は6.9μmであった。
トナー粒子3をTOF-SIMS分析することでリン酸チタン由来のイオンが検出された。トナー粒子3をそのままトナー3として用いた。
<トナー4>
トナー1の製造例において、チタンラクテート44%水溶液(TC-310:マツモトファインケミカル社製)4.3部を、ジルコニウムラクテートアンモニウム塩(ZC-300、マツモトファインケミカル株式会社)11.7部(ジルコニウムラクテートアンモニウム塩として1.4部相当)に変更した以外はトナー1の製造例と同様にしてトナー粒子4を得た。トナー粒子4の個数平均粒径(D1)は6.2μm、重量平均粒径(D4)は6.9μmであった。
トナー粒子4をTOF-SIMS分析することでリン酸ジルコニウム由来のイオンが検出された。なお、前記リン酸ジルコニウム化合物は、ジルコニウムラクテートアンモニウム塩と、水系媒体中のリン酸ナトリウム、又はリン酸カルシウム由来のリン酸イオンとの反応物である。
トナー粒子4をそのままトナー4として用いた。
<トナー5>
反応容器内に下記サンプルを秤量し、プロペラ撹拌翼を用いて混合した。
・トナー母粒子分散液 500.0部
次に、温度を25℃に保持しながら、1.0mol/Lの塩酸でpHを1.5に調整して1.0時間撹拌後、イオン交換水で洗浄しながら、ろ過した。得られた粉体を恒温槽で乾燥した後、風力式分級機で分級することにより、トナー粒子5を得た。
・トナー粒子5 100.0部
・疎水性シリカ微粒子(ヘキサメチルジシラザン処理:個数平均粒径12nm)
1.0部
・リン酸ジルコニウム化合物微粒子 1.5部
上記材料をSUPERMIXER PICCOLO SMP-2(株式会社カワタ製)に投入して、3,000rpmで20分間混合を行った。その後、目開き150μmのメッシュで篩い、トナー5を得た。トナー5の個数平均粒径(D1)は6.2μm、重量平均粒径(D4)は6.9μmであった。
トナー5をTOF-SIMS分析したところ、リン酸ジルコニウム由来のイオンが検出された。尚、トナー5は参考例として評価を行った。
<トナー6>
トナー5の製造例において、リン酸ジルコニウム化合物微粒子に替えて、個数平均粒径が28nmの酸化チタン微粒子を1.5部用い、SUPERMIXER PICCOLO
SMP-2(株式会社カワタ製)に投入して、3,000rpmで20分間混合を行った。その後、目開き150μmのメッシュで篩い、トナー6を得た。トナー6をTOF-SIMS分析したところ、多価酸金属塩由来のイオンは検出されなかった。
得られたトナー1~6の物性を表1に示す。
Figure 0007336293000001

表中、有機ケイ素重合体の列は、TEM-EDX観察によるトナー表面の有機ケイ素重合体の有無を表し、Yは有機ケイ素重合体が存在することを示し、Nは有機ケイ素重合体が存在しないことを示す。
[トナーの効果確認]
1.電気抵抗特性
まず、トナーの特性を確認するために、トナー1及びトナー6を、画像形成装置としてキヤノン株式会社製LBP7600Cを用い、記録材としてXerox社製Vitality Multipurpose Paper、Letterサイズ、坪量75g/m
を用いて評価した。記録材にそれぞれトナー載り量0.4mg/cmのベタ黒画像(20cm×27cm)を形成し、未定着のままのサンプルと、定着後のサンプルを作製した。なお、定着は、定着ローラ表面温度160℃、総圧196.13N(20kgf)で行った。
そして、上記のサンプルを(株)ダイアインスツルメンツ製高抵抗計ハイレスタUP
MCP-HT450型および同社製測定プローブURSを用い、23℃、50%RHの環境下でプローブ押圧力10.8N(1.1kgf)、印加電圧100V、印加時間10秒の条件で体積抵抗率(Ω・cm)を測定した。
未定着画像の体積抵抗率をTv、定着後の画像の体積抵抗率をFvとする。なお、定着直後のサンプルは抵抗変動が大きいため同環境下に6時間放置した後に測定を行った。測定結果は表2の通りである。
Figure 0007336293000002

トナー6は定着後の体積抵抗率は未定着時と有意差が無いのに対し、トナー1は定着により明らかに体積抵抗率が低下している。同様にして測定したトナー2~5のTv/Fvの結果は、表3に示す。
2.「突き抜け」レベル
次にトナーの「突き抜け」画像に対する効果の確認を行った。トナー1~6を評価した。
確認方法としては一面目の画像として図3(a)のようなベタ黒画像301とベタ白画像302とからなる画像を形成し、二面目の画像として図3(b)のようなベタ黒画像を形成する。「突き抜け」が発生する時は図3(c)の303の領域に発生する。
そこで、領域303と、それ以外の領域である例えば白枠内304の濃度をX-rite社製の濃度計504を用い、測定条件Status-A、バッキング白で測定し、その濃度差ΔDを使って以下のランクで「突き抜け」のレベルを判定した。
A:ΔD≦0.1
B:0.1<ΔD≦0.15
C:0.15<ΔD≦0.2
D:0.2<ΔD
ランクA、B、Cを「突き抜け」が抑制できていると判断した。各トナーの判定結果を表3に示す。転写バイアスはATVCで選ばれた転写電圧の平均値を示す。
Figure 0007336293000003
体積抵抗率比は、電気抵抗特性で説明した手順で測定した各トナーの未定着画像の体積抵抗率Tvと定着後画像の体積抵抗率Fvとの比である。
本発明のトナーを用いることにより、二面目の転写バイアスの電圧値を下げることができるため「突き抜け」の発生が抑えられていることがわかる。
「突き抜け」レベルは体積抵抗率比(Tv/Fv)と相関があり、Tv/Fvが8以上で突き抜けが抑制できたと判断できる画像を得ることができた。
1・・・感光ドラム、2・・・帯電ローラ、4・・・現像装置、5・・・転写ローラ、6・・・クリーナ、15・・・定着装置、19・・・反転フラッパ

Claims (5)

  1. 結着樹脂を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
    前記トナー粒子の表面が、多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物及び有機ケイ素重合体を有し、
    該トナーを用いてトナー載り量0.4mg/cmでベタ画像を形成した記録材における未定着時の該ベタ画像の体積抵抗率Ω・cmをTvとし、
    該記録材を加熱及び加圧して定着した後の該ベタ画像の体積抵抗率Ω・cmをFvとしたとき、
    Tv/Fv≧8
    を満たすことを特徴とするトナー。
  2. 前記多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物が、多価酸金属塩であり、
    該多価酸金属塩に含まれる金属元素を金属元素Mとし、前記トナーのX線光電子分光分析によって得られたスペクトルから求められる、前記トナー表面の構成元素における該金属元素Mの比率をM1(atomic%)とし、
    前記トナー1.0gを61.5質量%のショ糖水溶液31.0gと、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤及び有機ビルダーからなる10質量%の精密測定器洗浄用中性洗剤水溶液6.0gからなる混合水溶液に分散させ、シェーカーを用いて1分間に300回の振とうを20分行う処理(a)を施して得たトナーをトナー(a)とし、
    該トナー(a)のX線光電子分光分析によって得られたスペクトルから求められる、該トナー(a)の表面の構成元素における該金属元素Mの比率をM2(atomic%)としたとき、下記式(ME-1)を満たす請求項に記載のトナー。
    0.90≦M2/M1 (ME-1)
  3. 前記多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物が、硫酸チタン、炭酸チタン、リン酸チタン、硫酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、及びリン酸ジルコニウムからなる群より選ばれた少なくとも一つを含有する請求項又はに記載のトナー。
  4. 前記有機ケイ素重合体が、下記式(II)で表される構造を有する請求項1~3のいずれか1項に記載のトナー。
    R-SiO3/2 (II)
    (式(II)中、Rは、アルキル基、アルケニル基、アシル基、アリール基又はメタクリロキシアルキル基を示す。)
  5. 前記Rが、炭素数1以上6以下のアルキル基、ビニル基、フェニル基、又はメタクリロキシプロピル基である請求項に記載のトナー。
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