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JP2021021797A - プロセスカートリッジおよび画像形成装置 - Google Patents

プロセスカートリッジおよび画像形成装置 Download PDF

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JP2021021797A
JP2021021797A JP2019137265A JP2019137265A JP2021021797A JP 2021021797 A JP2021021797 A JP 2021021797A JP 2019137265 A JP2019137265 A JP 2019137265A JP 2019137265 A JP2019137265 A JP 2019137265A JP 2021021797 A JP2021021797 A JP 2021021797A
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啓 佐々木
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Takashi Sato
俊 佐藤
宏一郎 増井
Koichiro Masui
宏一郎 増井
健太郎 河田
Kentaro Kawada
健太郎 河田
考平 松田
Kohei Matsuda
考平 松田
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Yasushi Katsuta
恭史 勝田
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Kazunori Hashimoto
和則 橋本
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Katsuhiro Kojima
勝広 小島
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Abstract

【課題】トナーのチャージアップを抑制し、現像ローラ上からのトナー剥ぎ取り、トナー層厚の規制および感光ドラム上のトナー除去を安定的に行えるプロセスカートリッジ、画像形成装置を提供する。【解決手段】現像剤を担持する回転体と、前記回転体に当接する当接部材と、を備えるプロセスカートリッジであって、前記現像剤は、結着樹脂を含有するトナー粒子を有し、前記トナー粒子の表面が、多価酸と、第4族元素を含む化合物と、の反応物を有することを特徴とする。【選択図】図3

Description

本発明は、像担持体上に形成された静電潜像を現像する画像形成装置と、これに着脱可能なプロセスカートリッジ、およびこれらに用いる現像剤に関する。
ここで、プロセスカートリッジとは、像担持体と、像担持体に作用する現像装置とを一体的にカートリッジ化したものである。
従来、電子写真方式の画像形成装置においては、像担持体(以下、感光ドラムと称す)を帯電した後に画像情報に応じて露光して静電潜像を形成する。そして、この静電潜像に応じて現像手段により現像剤(以下、トナーと称す)を感光ドラムに供給してトナー像(現像剤像)とする。そして、このトナー像を転写手段によって記録材、例えば、記録用紙、OHPシートなどに転写した後、定着手段によってトナー像を記録材に定着して記録画像を得ている。
近年、この画像形成装置には、印字濃度の低い画像を多数枚印刷した時の画像安定性を達成するために、帯電量が上がり続ける現象(チャージアップ)が抑制されたトナーが求められている。この性能を達成するために数々の検討が行われてきた。特許文献1には、リン酸カルシウム系化合物粒子とシリカ粒子を併用することで、長期にわたり帯電性が安定したトナーが開示されている。特許文献2では、樹脂帯電制御剤と疎水性酸化チタンを併用することで、帯電量を安定的に制御できるトナーが開示されている。
特開2012−208409号公報 特開2006−072199号公報
特許文献1のトナーは、リン酸カルシウム系化合物粒子を用いることにより、帯電性を向上させている。
しかし、本発明者らの検討では、リン酸カルシウム系化合物の吸湿性のために、高湿環境下で帯電性が低下する場合があった。
特許文献2に記載されたトナーは、スルホン酸塩基含有モノマーと電子吸引基を有する芳香族モノマー並びにアクリル酸エステルモノマー及び/又はメタアクリル酸エステルモノマーを併用した帯電制御樹脂を用いている。該帯電制御樹脂により、帯電性を確保しつつ、環境安定性を向上させている。また、同時に、水可溶性成分量0.2重量%以上ある酸化チタン微粒子を疎水化処理したものを用いることにより、チャージアップを抑制している。
しかし、本発明者らの検討では、高湿環境下で帯電量が低下する場合があった。
これは、帯電制御樹脂のスルホン酸塩基の吸湿性を完全に制御できなかったと同時に、酸化チタン微粒子の水可溶性成分の吸湿性によるものと考えている。
特に、酸化チタン微粒子の水可溶性成分は酸化チタンの抵抗を低く設定するために必須の成分である。そのため、抵抗を低くすることにより達成されるチャージアップの抑制と、水可溶性成分の吸湿による高湿環境下での帯電量の低下は、トレードオフの関係にあり、両立は困難であると推測される。
環境安定性を優先させるために、水可溶性成分量を減らして疎水化処理した酸化チタン
微粒子を用いると、チャージアップ抑制効果が低減してトナーの帯電量が上がり続けてしまう。この結果、トナーの鏡像力が大きくなり、トナーが現像手段を構成する現像剤担持体(以下、現像ローラと称す)に強く付着してしまう。これにより、現像ローラ上から現像後のトナーを剥ぎ取る現像剤剥ぎ取り部材(以下、剥ぎ取りローラと称す)でもトナーを剥ぎ取りきれない可能性がある。トナー剥ぎ取りが十分でないと、ゴースト画像が生じやすくなることがある。このゴースト画像とは、現像ローラの前周回に現像した像の履歴が次周回以降に、均一な中間調画像中に現像ローラ周期の位相差をもって濃度ムラとして現れる現象である。また、トナーの鏡像力が大きくなると、現像ローラ上のトナーコート量を一定の層厚に規制する現像剤規制部材(以下、規制ブレードと称す)でもトナーを規制しきれない可能性もある。トナーの規制が十分でないと、トナーコート量が増加してしまい、現像ローラがトナーを担持しにくくなることがある。また同様に、トナーの鏡像力が大きくなると、トナーが感光ドラムに強く付着してしまい、転写後の感光ドラムを清掃するクリーニング部材でもトナーを除去しきれない可能性もある。
以上を鑑み、本発明の目的は、印刷環境に寄らずにトナーのチャージアップを抑制し、現像ローラ上からのトナー剥ぎ取り、トナー層厚の規制および感光ドラム上のトナー除去を安定的に行えるプロセスカートリッジ、画像形成装置を提供することである。
上記目的を達成するために、本発明におけるプロセスカートリッジは、
現像剤を担持する回転体と、前記回転体に当接する当接部材と、を備えるプロセスカートリッジであって、
前記現像剤は、結着樹脂を含有するトナー粒子を有し、
前記トナー粒子の表面が、多価酸と、第4族元素を含む化合物と、の反応物を有することを特徴とする。
また、上記目的を達成するために、本発明における画像形成装置は、
記録材に画像を形成する画像形成装置であって、
装置本体と、
前記装置本体に着脱可能な上記のプロセスカートリッジを備えることを特徴とする。
以上説明したように、本発明によれば、印刷環境に寄らずにトナーのチャージアップが抑制され、現像ローラ上からのトナー剥ぎ取り、トナー層厚の規制および感光ドラム上のトナー除去を安定的に行えるプロセスカートリッジ、画像形成装置を提供できる。
本実施例に係るトナーの模式的断面図 本実施例に係る画像形成装置の概略構成図 本実施例に係るプロセスカートリッジの模式的断面図 本実施例に係る現像装置の模式的断面図 本実施例に係るトナーに作用する鏡像力の説明図 本実施例に係る規制ブレードの別形態の断面図 本実施例に係るトナー粒子の断面図
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のもので
はない。また、以下の説明で一度説明した部材についての材質、形状などは、特に改めて記載しない限り、後の説明においても初めの説明と同様のものである。
(実施例)
<画像形成装置>
図2及び図3を参照して、画像形成装置全体の構成について説明する。図2は本発明の実施例に係る画像形成装置の概略構成を断面的に示したものである。なお、図2においては、各構成については簡略的に示している。図3は本発明の実施例に係るプロセスカートリッジの模式的断面図である。
本実施例に係る画像形成装置100は、装置本体に対して着脱可能に構成される4つのプロセスカートリッジ10a,10b,10c,10d(以下、適宜、カートリッジ10と称する)を備えている。なお、カートリッジ10aはイエローカートリッジであり、カートリッジ10bはマゼンタカートリッジであり、カートリッジ10cはシアンカートリッジであり、カートリッジ10dはブラックカートリッジである。各カートリッジ10は、図3に示すように、それぞれ回転体の一例として感光ドラム11(像担持体)を備えている。この感光ドラム11の周囲には、感光ドラム11の表面を帯電するための帯電ローラ12、及び感光ドラム11の表面に当接する当接部材であり、感光ドラム11の表面をクリーニングするためのクリーニング部材14が設けられている。また、感光ドラム11の表面に形成された静電潜像をトナーにより現像する現像装置20も設けられている。なお、感光ドラム11の表面に照射される露光装置101からのレーザー光の通り道を確保するために開口部13も設けられている。
<画像形成プロセス>
次に画像形成のプロセスについて説明する。画像形成が始まると、感光ドラム11は図3中矢印A方向に回転し、帯電ローラ12は感光ドラム11の回転に従動して、矢印B方向に回転する。そして、感光ドラム11の表面は帯電ローラ12により一様に帯電される。その後、感光ドラム11の表面には、露光装置101からレーザー光が照射されて、静電潜像が形成される。一方、現像装置20においては、感光ドラム11の回転開始後に、感光ドラム11から離間していた現像ローラ23が、感光ドラム11と当接する方向に移動する。続いて、現像ローラ23は図3中矢印C方向に、剥ぎ取りローラ24は矢印D方向にそれぞれ回転を始める。そして、感光ドラム11上に形成された静電潜像は現像装置20で現像される。現像されたトナー像は、1次転写ローラ103との電位差により、トナー像と当接している中間転写体104に1次転写される。
以上のプロセスが、カートリッジ10a、カートリッジ10b、カートリッジ10c、カートリッジ10dにより順次行われ、中間転写体104上に全てのトナー像が重ね合わされる。その後、トナー像は、2次転写ローラ105との電位差により紙などの記録媒体(記録材)に転写される。トナー像が転写された記録媒体は、定着装置106に搬送されて、加熱かつ加圧される。これにより、記録媒体上にトナー像が定着される。その後、記録媒体は画像形成装置100の外部に排出される。なお、中間転写体104を通過した後、転写されずに感光ドラム11上に残ったトナーは、クリーニング部材14によって、剥ぎ取られる。その後、再び、上記のプロセスが繰り返される。
クリーニング部材14は、ゴム部14aと板金部14bで構成され、ゴム部14aが感光ドラム11の表面と当接する。
<現像装置>
図4を参照して、現像装置20について、より詳細に説明する。現像装置20は、感光ドラム11との対向位置に開口部を有する現像容器21を備えている。この現像容器21には、現像剤であるトナーが収容されている。また、現像装置20は、前述の感光ドラム11とは、別の回転体の一例である現像ローラ23と、現像ローラ23に当接する当接部
材である剥ぎ取りローラ24とを備えている。現像ローラ23は、現像剤担持体として感光ドラム11上の静電潜像までトナーを担持しながら搬送する役割を担っている。剥ぎ取りローラ24は、現像ローラ23の表面に摺動する発泡材からなる表層24bを有している。そして、この剥ぎ取りローラ24は、現像されずに現像容器21内に回収された現像ローラ23上のトナーを剥ぎ取る現像剤剥ぎ取り部材としての役割を担っている。一方で、この剥ぎ取りローラ24は、現像ローラ23に現像容器21内のトナーを供給する役割も担っている。また、現像装置20は、現像ローラ23に付着したトナーを現像前に規制して、トナーコート量を一定の層厚に規制するとともにトナーとの摺擦によってトナーに電荷を付与する役割を担う規制ブレード25(現像剤規制部材)も備えている。この規制ブレード25は、現像ローラ23に当接して、現像ローラ23の表面に担持するトナーコート量を一定の層厚に規制するので、前述の剥ぎ取りローラ24とは別の当接部材といえる。すなわち、本実施例における現像装置20には、現像剤担持体である現像ローラ23に対して、剥ぎ取りローラ24と規制ブレード25の2つの当接部材が備わっている。
現像ローラ23は、導電性支持体である直径6mmの芯金23aと、この芯金23aの外周に設けられる弾性体層23bとから構成される。本実施例における弾性体層23bは、芯金23aの外周に設けられる厚さ2.75mmのシリコンゴム層と、このシリコンゴム層の外周に設けられる厚さ10μmのウレタン樹脂層とから構成される。また、ローラ全体の直径は11.5mmである。
剥ぎ取りローラ24は、導電性支持体である直径5mmの芯金24aと、この芯金24aの外周に設けられる発泡材からなる表層24bとから構成される。本実施例における表層24bはウレタンフォームにより構成される。このウレタンフォームの発泡セルは、ウレタン内部へトナーが出入りできるよう連泡となっており、ウレタンフォームを含むローラ全体の直径は13mmである。剥ぎ取りローラ24の軸中心は、現像ローラ23から11.05mm離れた位置にある。そのため、剥ぎ取りローラ24は、現像ローラ23との当接部において現像ローラ23に沿って最大1.2mm圧縮変形をしながら、現像ローラ23の回転方向(矢印C)と同一方向(矢印D)に回転する。つまり、両ローラの当接部では互いに逆方向の速度をもち、摩擦が起きている。そのため、剥ぎ取りローラ24は、現像ローラ23との当接部で現像ローラ23の表面のトナーを剥ぎ取り、かつ現像ローラ23との当接時にウレタンフォームが圧縮されることで現像ローラ23に向かってトナーを吐き出して供給する役割を担っている。
規制ブレード25は、厚さ1mmのSUS板をL字曲げ加工した支持板金25aと、支持板金25aにレーザー溶接で接合される厚さ100μmのSUS板からなるブレード25bとから構成される。
<トナー>
本発明において用いる現像剤としてのトナーは、結着樹脂を含有するトナー粒子を有するトナーであって、該トナー粒子の表面が、図7に示すような多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物を有することを特徴とする。発明者らは、印刷環境に依らずにトナーのチャージアップを抑制し、現像ローラ上からのトナー剥ぎ取り、トナー層厚の規制および感光ドラム上のトナー除去を安定的に行えるプロセスカートリッジ、画像形成装置を提供することを鋭意検討した。その中で、トナーとして、結着樹脂を含有するトナー粒子を有するトナーであって、該トナー粒子の表面が、多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物を有するトナーを用いる。このようにすることで、帯電の立ち上がり性、環境安定性、及びチャージアップ抑制性能が向上することを見出した。
そのメカニズムは明確ではないが、本発明者らは以下の様に推察している。
該多価酸は電子対を受け取り、負に帯電しやすい。そのため、多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物も、負に帯電しやすく、帯電性に優れている。さらに、第4族元素は
、酸化数が+4の状態が最も安定である。そのため、多価酸と架橋構造を作り、その架橋構造により電子の移動を促進し、帯電の立ち上がり性の向上と、チャージアップの抑制を達成することができる。また、多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物は、該架橋構造により水分子をブロックすることで、環境安定性が良好になる。
以上の様に、多価酸と第4族元素を含む化合物とが、反応物になることで初めて他の多価酸を含む化合物や、他の第4族元素を含む化合物をそれぞれ用いただけでは達成できない性能を達成することができる。
一方、従来から用いられている酸化チタン(TiO)は極めて安定な化合物であるため、多価酸と反応物を作ることができず、帯電性が低い。また、チャージアップ抑制も不十分である。また、第4族元素以外の多価酸塩、例えば、アルカリ土類金属の多価酸塩では、水分の吸着の抑制が不十分であった。
以下、本発明において用いるトナーの具体的な構成について説明する。
該多価酸は、2価以上の酸であればどのようなものでも構わない。具体例としては、以下のものがあげられる。
リン酸、炭酸、硫酸などの無機酸;ジカルボン酸、トリカルボン酸などの有機酸。有機酸の具体例としては、以下のものがあげられる。
シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などのジカルボン酸。クエン酸、アコニット酸、無水トリメリト酸などのトリカルボン酸。
そのなかでも、多価酸が、炭酸、硫酸、及びリン酸からなる群より選ばれた少なくとも1つを含有することが、第4族元素と強固に反応し、吸湿しにくいことから好ましい。より好ましくは、多価酸が、リン酸を含有することである。
該多価酸は、多価酸をそのまま用いてもよいし、多価酸とナトリウム、カリウム、リチウムなどとのアルカリ金属塩;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどとのアルカリ土類金属塩;又は、多価酸のアンモニウム塩として用いてもよい。
第4族元素を含む化合物は、第4族元素を含む化合物であれば、特段限定されず、どのようなものでも構わない。
第4族元素としては、チタン、ジルコニウム、ハフニウムなどが挙げられる。
そのなかでも、第4族元素は、チタン及びジルコニウムの少なくとも一方を含有することが好ましい。
チタンを含む化合物の具体例としては、以下のものが挙げられる。
テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネートなどのチタンアルコキシド。
チタンジイソプロポキシビスアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムジ−2−エチルヘキソキシビス2−エチル−3−ヒドロキシヘキソキシド、チタンジイソプロポキシビスエチルアセトアセテート、チタンラクテート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンジイソプロポキシビストリエタノールアミネート、チタンイソステアレート、チタンアミノエチルアミノエタノレート、チタントリエタノールアミネートなどのチタンキレート。
中でもチタンキレートは多価酸と反応しやすいため好ましい。また、チタンラクテート、チタンラクテートアンモニウム塩がより好ましい。
ジルコニウムを含む化合物の具体例としては、以下のものが挙げられる。
ジルコニウムテトラプロポキシド、ジルコニウムテトラブトキシドなどのジルコニウムア
ルコキシド。
ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムラクテートアンモニウム塩などのジルコニウムキレート。
中でもジルコニウムキレートは多価酸と反応しやすいため好ましい。また、ジルコニウムラクテート、及び、ジルコニウムラクテートアンモニウム塩がより好ましい。
ハフニウムを含む化合物の具体例としては、以下のものが挙げられる。
ハフニウムラクテート、ハフニウムラクテートアンモニウム塩などのハフニウムキレート。
トナー粒子の表面が、多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物を有するとはどういう状態を指すかと言うと、例えば、トナー粒子の表面に、多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物が存在している状態が挙げられる。
トナー粒子の表面に、多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物を存在させる方法としては、従来公知の様々な方法を用いることができるが、例えば下記方法がある。
トナー母粒子の分散液中で、多価酸と第4族元素を含む化合物を反応させて、得られた反応物をトナー母粒子の表面に付着させてトナー粒子を得る方法。
例えば、トナー母粒子の分散液に、多価酸及び第4族元素を含む化合物を添加及び混合することで、多価酸と第4族元素を含む化合物とを反応させ、反応物を得る。それと同時に、分散液を撹拌しておくことで、トナー母粒子の表面に付着させてトナー粒子を得る方法が挙げられる。
また、例えば、多価酸と第4族元素を含む化合物とを反応させ、反応物を含有する微粒子を作成し、トナー母粒子と混合することでトナー母粒子の表面に該反応物を含有する微粒子を付着させてトナー粒子を得る方法が挙げられる。
具体的には、FMミキサ、メカノハイブリッド(日本コークス社製)、スーパーミキサー、ノビルタ(ホソカワミクロン社製)など、せん断力を与える高速撹拌機を用いて、トナー母粒子と該反応物の微粒子を混合するとよい。
なお、多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物は、溶媒中で多価酸及び第4族元素を含む化合物を反応させることで得ることができる。該溶媒としては、どのようなものでも構わない。該溶媒の具体例としては、以下のものが挙げられる。
ヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、クロロホルム、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、1−ブタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、メタノール、エタノール、水。
多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物の種類については、特に限定されない。しかしながら、多数枚印刷時の画像劣化抑制の観点から、硫酸チタン、炭酸チタン、リン酸チタン、硫酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、及びリン酸ジルコニウムからなる群より選ばれた少なくとも一つを含有することが好ましい。より好ましくは、リン酸チタン及びリン酸ジルコニウムの少なくとも一方を含有することである。
多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物を含有する微粒子の個数平均粒径は、1nm以上400nm以下であることが好ましく、1nm以上200nm以下であることがより好ましく、1nm以上60nm以下であることがさらに好ましい。該微粒子の個数平均粒径を上記範囲にすることで、該微粒子の脱離による部材汚染を抑制することができる。
該微粒子の個数平均粒径を上記範囲に調整する手法は、該微粒子の原料である多価酸と第4族元素を含む化合物の添加量や、それらが反応するときのpH、反応時の温度などが
挙げられる。トナー粒子中の多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物の含有量は、0.01質量%以上5.00質量%以下であることが好ましく、0.02質量%以上3.00質量%以下であることがより好ましい。
本実施例におけるトナーは、多価酸と共に金属塩を用いる場合において、金属塩に含まれる金属元素を金属元素Mとする。そして、トナーのX線光電子分光分析によって得られたスペクトルから求めるトナー表面の構成元素比率における、金属元素Mの比率をM1(at%)としたときに、M1が1.0(at%)以上10.0(at%)以下であることが好ましい。
また、本実施例におけるトナー1g(現像剤1g)を61.5%のショ糖水溶液31gと、非イオン性界面活性剤と陰イオン界面活性剤からなる10%の精密測定器洗浄用中性洗剤水溶液6gからなる混合水溶液に分散させる。次に、シェーカーを用いて1分間に300回振とうする処理(a)を施して得たトナーをトナー(a)とする。そして、トナー(a)のX線光電子分光分析によって得られたスペクトルから求めるトナー表面の構成元素比率における、金属元素Mの比率をM2(at%)とする。このとき、M1とM2がともに1.0以上10.0以下であり、M1およびM2が以下の関係式(ME−1)を満たすことが好ましい。
0.90≦M2/M1 (ME−1)
上記処理(a)では、トナー表面に弱く付着している多価酸金属塩を取り除くことができる。具体的には、トナー母粒子に対し、乾式法で付着させた多価酸金属塩は上記処理(a)によって取り除かれやすい。このように、上記処理(a)によってトナー表面に存在する多価酸金属塩を評価することが可能である。上記処理(a)による各パラメータの変化が小さいほど、多価酸金属塩がトナー母粒子に強く固着していることを示す。
上記M1およびM2は各処理の前後における、多価酸金属塩によるトナー表面の被覆状態を表す。そして、多価酸金属塩によるトナー表面の被覆状態は帯電性および電荷の移動性に寄与する。
上記M1およびM2は1.0(at%)以上、10.0(at%)以下であることが好ましい。上記M1およびM2が上記範囲であると、トナーの負帯電性および電荷の移動性が更に良好になる。
上記M1およびM2は1.0(at%)以上、7.0(at%)以下であるとより好ましく、1.5(at%)以上、5.0(at%)以下であるとさらに好ましい。
上記式(ME−1)は、上記処理(a)において多価酸金属塩がトナー表面から剥離せず、残存している比率を意味している。上記式(ME−1)が0.90以上となる場合、トナー表面に多価酸金属塩が強く固着しているため、トナーから部材への多価酸金属塩の移行が抑制される。よって、長期にわたる使用時にも安定し、耐久性に優れたトナーを得ることができる。
トナー母粒子の分散液中で、多価酸と第4族元素を含む化合物とを反応させ、得られた反応物をトナー母粒子表面に付着させてトナー粒子を得る場合、下記式(1)で示される有機ケイ素化合物を併用することが好ましい。該有機ケイ素化合物を併用することで、得られた反応物が、該有機ケイ素化合物の重合によって生成した有機ケイ素重合体により強固にトナー粒子に固着し、かつ、多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物が疎水化され、環境安定性がさらに向上する。
具体的には、まず、下記式(1)で示される有機ケイ素化合物を事前に加水分解するか、トナー母粒子の分散液中で加水分解する。その後、得られた有機ケイ素化合物の加水分解物を縮合させ、縮合物とする。該縮合物はトナー粒子表面に移行する。該縮合物は粘性があるため、多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物を、トナー粒子の表面に密着さ
せ、該反応物をより強固にトナー粒子に固着することができる。
また、該反応物の表面にも該縮合物は移行し、該反応物を疎水化し、環境安定性をさらに向上させることができる。
Ra(n)−Si−Rb(4−n) (1)
式(1)中、Raは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基又はアルコキシ基を示し、Rbは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アシル基又はメタクリロキシアルキル基を示す。nは2〜4の整数を示す。ただし、Ra及びRbが複数存在する場合、複数のRa、複数のRbの置換基は、それぞれ、同一でも異なってもよい。
以降、式(1)中のRaを官能基、Rbを置換基と呼称する。式(1)で示される有機ケイ素化合物としては、特段の制限なく、公知の有機ケイ素化合物を用いることができる。具体的には、以下の、官能基を二つ有する二官能シラン化合物、官能基を三つ有する三官能シラン化合物、官能基を四つ有する四官能シラン化合物が挙げられる。
二官能シラン化合物として、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランなどが挙げられる。
三官能シラン化合物として、以下のものが挙げられる。
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシメトキシシラン、メチルエトキシジメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシランなどの置換基としてアルキル基を有する三官能シラン化合物;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシランなどの置換基としてアルケニル基を有する三官能シラン化合物;
フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどの置換基としてアリール基を有する三官能シラン化合物;
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジエトキシメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルエトキシジメトキシシランなどの置換基としてメタクリロキシアルキル基を有する三官能シラン化合物など。
四官能シラン化合物として、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどが挙げられる。
該有機ケイ素重合体としては、特段の制限なく従来公知の有機ケイ素重合体を用いることができる。中でも、下記式(I)で表される構造を有する有機ケイ素重合体を用いることが好ましい。
R−SiO3/2 式(I)
式(I)中、Rは、(好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜6の)アルキル基、(好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜4の)アルケニル基、(好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜4の)アシル基、(好ましくは炭素数6〜14、より好ましくは炭素数6〜10の)アリール基又はメタクリロキシアルキル基を示す。
式(I)は、有機ケイ素重合体が有機基と、ケイ素重合体部を有することを表している。このことにより、式(I)で表される構造を含む有機ケイ素重合体において、有機基がトナー母粒子又はトナー粒子との親和性を有することでトナー母粒子又はトナー粒子と強く固着し、ケイ素重合体部が多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物との親和性を有
することで多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物と強く固着する。
このように、有機ケイ素重合体が、トナー粒子と、多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物とを固着させる働きを有することで、有機ケイ素重合体を介して、より強固に多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物をトナー粒子に固着させることができる。
また、式(I)は有機ケイ素重合体が架橋していることを表している。有機ケイ素重合体が架橋構造を有することで、有機ケイ素重合体の強度が増すとともに、残存するシラノール基が少なくなることで疎水性が増す。よって、さらに耐久性に優れ、高湿環境下でも安定して性能を発揮するトナーを得ることができる。
式(I)中、Rがメチル基、プロピル基、ノルマルヘキシル基などの炭素数1以上6以下のアルキル基、ビニル基、フェニル基、メタクリロキシプロピル基であることが好ましく、炭素数1以上6以下のアルキル基又はビニル基であることがより好ましい。
上記構造を有する有機ケイ素重合体は、有機基の分子運動性が制御されることで硬さと柔軟性を併せ持つため、長期にわたって使用された場合においてもトナーの劣化が抑制され、優れた性能を示す。
トナー粒子中の、式(1)で示される有機ケイ素化合物からなる群より選択される少なくとも1つの有機ケイ素化合物を重合して得られる有機ケイ素重合体の含有量は、0.1質量%以上20.0質量%以下であることが好ましい。さらには、0.5質量%以上15.0質量%以下であることがより好ましい。
該トナー母粒子の製造方法は、特に限定されることはなく、公知の懸濁重合法、溶解懸濁法、乳化凝集法、及び粉砕法などを用いることができる。
トナー粒子の表面に、多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物を存在させる場合、水系媒体中でトナー母粒子を製造した場合は、そのまま、トナー母粒子の分散液として用いてもよい。また、洗浄やろ過、乾燥を行った後、水系媒体中に再分散させて、トナー母粒子の分散液としてもよい。
一方、乾式でトナー母粒子を製造した場合は、公知の方法によって水系媒体に分散させて、トナー母粒子の分散液としてもよい。トナー母粒子を水系媒体中に分散させるために、水系媒体が分散安定剤を含有していることが好ましい。
以下、懸濁重合法を用いた、トナー母粒子の製造例を具体的に述べる。
まず、結着樹脂を生成しうる重合性単量体、及び必要に応じて各種添加物を混合し、分散機を用いて、該材料を溶解又は分散させた重合性単量体組成物を調製する。各種添加物として、着色剤、ワックス、荷電制御剤、重合開始剤、連鎖移動剤などが挙げられる。分散機としては、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、又は超音波分散機が挙げられる。
次いで、重合性単量体組成物を、難水溶性の無機微粒子を含有する水系媒体中に投入し、高速攪拌機又は超音波分散機などの高速分散機を用いて、重合性単量体組成物の液滴を調製する(造粒工程)。
その後、該液滴中の重合性単量体を重合してトナー母粒子を得る(重合工程)。重合開始剤は、重合性単量体組成物を調製する際に混合してもよく、水系媒体中に液滴を形成させる直前に重合性単量体組成物中に混合してもよい。
また、液滴の造粒中や造粒完了後、すなわち重合反応を開始する直前に、必要に応じて重合性単量体や他の溶媒に溶解した状態で加えることもできる。重合性単量体を重合して樹脂粒子を得たあと、必要に応じて脱溶剤処理を行い、トナー母粒子の分散液を得るとよい。
該結着樹脂としては、以下の樹脂又は重合体が例示できる。
ビニル系樹脂;ポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;フラン樹脂;エポキシ樹脂;キシレン樹脂;シリコーン樹脂。
これらの中でも、ビニル系樹脂が好ましい。なお、ビニル系樹脂としては、下記単量体
の重合体又はそれらの共重合体が挙げられる。中でも、スチレン系単量体と不飽和カルボン酸エステルとの共重合体が好ましい。
スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどの不飽和カルボン酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸;マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸;マレイン酸無水物などの不飽和ジカルボン酸無水物;アクリロニトリルなどのニトリル系ビニル単量体;塩化ビニルなどのハロゲン含有ビニル単量体;ニトロスチレンなどのニトロ系ビニル単量体。
着色剤として、以下に挙げるブラック顔料、イエロー顔料、マゼンタ顔料、シアン顔料などが用いられる。
ブラック顔料としては、カーボンブラックなどが挙げられる。
イエロー顔料としては、モノアゾ化合物;ジスアゾ化合物;縮合アゾ化合物;イソインドリノン化合物;イソインドリン化合物;ベンズイミダゾロン化合物;アントラキノン化合物;アゾ金属錯体;メチン化合物;アリルアミド化合物が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー74、93、95、109、111、128、155、174、180、185などが挙げられる。
マゼンタ顔料としては、モノアゾ化合物;縮合アゾ化合物;ジケトピロロピロール化合物;アントラキノン化合物;キナクリドン化合物;塩基染料レーキ化合物;ナフトール化合物:ベンズイミダゾロン化合物;チオインジゴ化合物;ペリレン化合物が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、238、254、269、C.I.ピグメントバイオレッド19などが挙げられる。
シアン顔料としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体;アントラキノン化合物;塩基染料レ−キ化合物が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が挙げられる。
また、顔料とともに、着色剤として従来知られている種々の染料を併用してもよい。着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1.0質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
トナーは、磁性体を含有させて磁性トナーとすることも可能である。この場合、磁性体は着色剤の役割を兼ねることもできる。磁性体としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライトなどに代表される酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルなどに代表される金属又はこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムなどの金属との合金及びその混合物などが挙げられる。
ワックスを以下に例示する。
ベヘン酸ベヘニル、ステアリン酸ステアリル、パルミチン酸パルミチルなどの1価のアルコールと脂肪族モノカルボン酸エステル、又は、1価のカルボン酸と脂肪族モノアルコールのエステル;セバシン酸ジベヘニル、ヘキサンジオールジベヘネートなどの2価のアルコールと脂肪族モノカルボン酸エステル、又は、2価のカルボン酸と脂肪族モノアルコールのエステル;グリセリントリベヘネートなどの3価のアルコールと脂肪族モノカルボン酸エステル、又は、3価のカルボン酸と脂肪族モノアルコールのエステル;ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラパルミテートなどの4価のアルコールと脂肪族モノカルボン酸エステル、又は、4価のカルボン酸と脂肪族モノアルコールのエステル;ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミテートなどの6価のアルコールと脂肪族モノカルボン酸エステル、又は、6
価のカルボン酸と脂肪族モノアルコールのエステル;ポリグリセリンベヘネートなどの多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸エステル、又は、多価カルボン酸と脂肪族モノアルコールのエステル;カルナバワックス、ライスワックスなどの天然エステルワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムなどの石油系ワックス及びその誘導体;フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス及びその誘導体;高級脂肪族アルコール;ステアリン酸、パルミチン酸などの脂肪酸;酸アミドワックスが挙げられる。
ワックスの含有量は、結着樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
トナーは、特性又は効果を損なわない程度に、トナー粒子に各種有機又は無機微粒子を外添してもよい。有機又は無機微粒子としては、例えば、以下のようなものが用いられる。
(1)流動性付与剤:シリカ、アルミナ、酸化チタン、カーボンブラック及びフッ化カーボン。
(2)研磨剤:金属酸化物(例えば、チタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化クロム)、窒化物(例えば、窒化ケイ素)、炭化物(例えば、炭化ケイ素)、金属塩(例えば、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム)。
(3)滑剤:フッ素系樹脂微粒子(例えば、フッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン)、脂肪酸金属塩(例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム)。
(4)荷電制御性粒子:金属酸化物(例えば、酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ)、カーボンブラック。
有機又は無機微粒子は疎水化処理することもできる。有機又は無機微粒子の疎水化処理の処理剤としては、未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物、有機チタン化合物が挙げられる。これらの処理剤は単独で又は併用して用いられてもよい。
以下に、本実施例におけるトナーの各物性値の測定方法を記載する。
<トナー粒子の重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)の測定方法>
トナー粒子の重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)は、以下のようにして算出する。
測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター(株)製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター(株)製)を用いる。なお、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が1.0%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター(株)製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行う。
専用ソフトの「標準測定方法(SOMME)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50,000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて得られた値を設定する。
「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1,600μAに、ゲインを2に、電解水溶液をISOTON I
Iに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下のとおりである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに前記電解水溶液200.0mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに前記電解水溶液30.0mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10%水溶液、和光純薬工業(株)製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を0.3mL加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetra150」(日科機バイオス(株)製)を準備する。超音波分散器の水槽内に3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを2.0mL添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー粒子10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナー粒子を分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50,000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)を算出する。なお、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)を指している。また、前記専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)を指している。
<トナー粒子のガラス転移温度(Tg)の測定方法>
トナー粒子のガラス転移温度(Tg)は示差走査型熱量計(以下「DSC」とも表記する。)を用いて測定する。
DSCによるガラス転移温度の測定はJIS K 7121(国際規格はASTM D3418−82)に準拠して行う。
本測定では、「Q1000」(TA Instruments社製)を用い、装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
測定は、測定試料10mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用いる。
第1の昇温過程では測定試料を20℃から200℃まで10℃/分で昇温しながら測定を行う。その後、200℃で10分間保持した後に200℃から20℃まで10℃/分で冷却する冷却過程を行う。
さらに、20℃で10分間保持した後に、第2の昇温過程では再び20℃から200℃まで10℃/分で昇温を行う。ガラス転移温度は中間点ガラス転移温度である。前述の測
定条件によって得られる第2の昇温過程におけるDSC曲線において、次のように定義する。すなわち、ガラス転移温度の階段状変化の低温側及び高温側の各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度をガラス転移温度(Tg)とする。
なお、水系媒体中などでトナー粒子を作製している場合などは、一部をサンプリングしてトナー粒子以外を洗浄後に乾燥してからDSCの測定を行う。
<X線光電子分光法を用いた金属元素Mの比率M1およびM2の算出方法>
・処理(a)
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学(株)製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させ、61.5%のショ糖水溶液を調製する。遠心分離用チューブに上記ショ糖濃厚液を31.0gと、コンタミノンN(商品名)(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業(株)製)を6g入れ分散液を作製する。この分散液にトナー1.0gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。遠心分離用チューブをシェーカーにて300spm(strokes per min)、20分で振とうする。振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機にて3500rpm、30分の条件で分離する。トナーと水溶液が十分に分離されていることを目視で確認し、最上層に分離したトナーをスパチュラ等で採取する。採取したトナーを減圧濾過器で濾過した後、乾燥機で1時間以上乾燥させる。乾燥品をスパチュラで解砕してトナー(a)を得る。
本実施例におけるトナー、上記トナー(a)について、X線光電子分光法を用いて、以下の通りに測定を行い、上記M1およびM2を算出する。
金属元素Mの比率M1およびM2の比率は、トナーを以下の条件で測定し、算出する。
・測定装置:X線光電子分光装置:Quantum2000(アルバックファイ株式会社製)
・X線源:モノクロAl Kα
・Xray Setting:100μmφ(25W(15KV))
・光電子取りだし角:45度
・中和条件:中和銃とイオン銃の併用
・分析領域:300×200μm
・Pass Energy:58.70eV
・ステップサイズ:0.1.25eV
・解析ソフト:Maltipak(PHI社)
ここで、例えばTi原子の定量値の算出には、Ti 2p(B.E.452〜468eV)のピークを使用する。ここで得られたTi元素の定量値をM1(at%)とする。
上記方法を用いて、本実施例におけるトナーおよび上記トナー(a)を測定し、各トナーの金属元素Mの比率をそれぞれ、M1(at%)およびM2(at%)とする。
<多価酸金属塩の検出方法>
飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて、トナー表面の多価酸金属塩を以下の方法により検出する。
トナーサンプルをTOF−SIMS(TRIFTIV:アルバック・ファイ社製)を用いて以下の条件で分析する。
・一次イオン種: 金イオン (Au
・一次イオン電流値: 2pA
・分析面積: 300×300μm
・画素数: 256×256pixel
・分析時間: 3min
・繰り返し周波数: 8.2kHz
・帯電中和: ON
・二次イオン極性: Positive
・二次イオン質量範囲: m/z 0.5〜1850
・試料基板:インジウム
上記条件で分析を行い、金属イオンと多価酸イオンとを含む二次イオン(例えばリン酸チタンの場合はTiPO(m/z 127)、TiP(m/z 207)等)に由来するピークが検出される場合、トナー表面に多価酸金属塩が存在するものとする。
以下にトナーおよびトナーの製造方法について記載する。実施例中および比較例中の「部」および「%」は特に断りがない場合、全て質量基準である。
<トナー母粒子分散液の製造例>
(水系媒体の製造例)
イオン交換水390.0部を入れた反応容器に、リン酸ナトリウム(12水和物)11.2部を投入し、窒素パージしながら65℃で1.0時間保温した。T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、12,000rpmにて撹拌した。撹拌を維持しながら、イオン交換水10.0部に7.4部の塩化カルシウム(2水和物)を溶解した塩化カルシウム水溶液を反応容器に一括投入し、分散安定剤を含む水系媒体を調製した。さらに、反応容器内の水系媒体に1.0mol/Lの塩酸を投入し、pHを6.0に調整し、水系媒体を調製した。
(重合性単量体組成物の調製)
・スチレン 60.0部
・C.I.Pigment Blue15:3 6.3部
上記材料をアトライタ(日本コークス工業株式会社製)に投入し、さらに直径1.7mmのジルコニア粒子を用いて、220rpmで5.0時間分散させて、顔料が分散された着色剤分散液を調製した。
次いで、該着色剤分散液に下記材料を加えた。
・スチレン 10.0部
・アクリル酸n−ブチル 30.0部
・ポリエステル樹脂 5.0部
(テレフタル酸と、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物との縮重合物、重量平均分子量Mw=10,000、酸価:8.2mgKOH/g)
・HNP9(融点:76℃、日本精蝋社製) 6.0部
上記材料を65℃に保温し、T.K.ホモミクサーを用いて、500rpmにて均一に溶解、分散し、重合性単量体組成物を調製した。
(造粒工程)
水系媒体の温度を70℃、撹拌装置の回転数を12,000rpmに保ちながら、水系媒体中に重合性単量体組成物を投入し、重合開始剤であるt−ブチルパーオキシピバレート8.0部を添加した。そのまま撹拌装置にて12,000rpmを維持しつつ10分間造粒した。
(重合工程)
高速撹拌装置からプロペラ撹拌羽根を備えた撹拌機に変更し、200rpmで撹拌しながら70℃を保持して5.0時間重合を行い、さらに85℃に昇温して2.0時間加熱することで重合反応を行った。さらに、98℃に昇温して3.0時間加熱することで残留モノマーを除去し、イオン交換水を加えて分散液中のトナー母粒子濃度が30.0%になるように調整し、トナー母粒子が分散したトナー母粒子分散液を得た。
トナー母粒子の個数平均粒径(D1)は6.1μm、重量平均粒径(D4)は6.6μmであった。
<有機ケイ素化合物液の製造例>
・イオン交換水 70.0部
・メチルトリエトキシシラン 30.0部
上記材料を200mLのビーカーに秤量し、10%塩酸でpHを3.5に調整した。その後、ウォーターバスで60℃に加熱しながら1.0時間撹拌し、有機ケイ素化合物液を作製した。
<多価酸と4族元素を含む化合物の反応物の製造例>
・イオン交換水 100.0部
・リン酸ナトリウム(12水和物) 8.5部
以上を混合したのち、室温で、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、10,000rpmにて撹拌する。撹拌と同時に、ジルコニウムラクテートアンモニウム塩(ZC−300、マツモトファインケミカル株式会社)60.0部(ジルコニウムラクテートアンモニウム塩として7.2部相当)を添加した。1.0mol/Lの塩酸を加えpHを7.0に調整した。温度を25℃に調整し、撹拌を維持しながら1時間反応を行った。
その後、遠心分離で固形分を取り出した。続いて、イオン交換水に再度分散、遠心分離で固形分を取り出すという工程を3回繰り返し、ナトリウムなどのイオンを除去した。再度、イオン交換水に分散させ、スプレードライで乾燥し、個数平均粒径が124nmの多価酸と4族元素を含む化合物の反応物であるリン酸ジルコニウムを含む、リン酸ジルコニウム化合物微粒子を得た。
<トナー粒子の製造例>
<トナー粒子1>
(多価酸金属塩付着工程)
反応容器内に下記サンプルを秤量し、プロペラ撹拌翼を用いて混合した。
・トナー母粒子分散液 500.0部
・チタンラクテート44%水溶液(TC−310:マツモトファインケミカル社製)
3.2部(チタンラクテートとして1.4部相当)
・有機ケイ素化合物液 10.0部
次に、1.0mol/LのNaOH水溶液を用いて、得られた混合液のpHを9.5に調整し、5.0時間保持した。温度を25℃に下げたのち、1.0mol/Lの塩酸でpHを1.5に調整して1.0時間撹拌後、イオン交換水で洗浄しながら、ろ過した。得られた粉体を恒温槽で乾燥した後、風力式分級機で分級することにより、トナー粒子1を得た。トナー粒子1の個数平均粒径(D1)は6.2μm、重量平均粒径(D4)は6.9μmであった。トナー粒子1をTOF−SIMS分析することでリン酸チタン由来のイオンが検出された。
なお、リン酸チタン化合物は、チタンラクテートと、水系媒体中のリン酸ナトリウム、またはリン酸カルシウム由来のリン酸イオンとの反応物である。
<トナー粒子2>
トナー粒子2の製造方法は、次の2点を除きトナー粒子1と同様である。1つ目は、チタンラクテート44%水溶液(TC−310:マツモトファインケミカル社製)3.2部に替えた点である。2つ目は、ジルコニウムラクテートアンモニウム塩(ZC−300、マツモトファインケミカル株式会社)11.7部(ジルコニウムラクテートアンモニウム塩として1.4部相当)を添加した点である。トナー粒子2の個数平均粒径(D1)は6.2μm、重量平均粒径(D4)は6.9μmであった。トナー粒子2をTOF−SIM
S分析することでリン酸ジルコニウム由来のイオンが検出された。なお、リン酸ジルコニウム化合物は、ジルコニウムラクテートアンモニウム塩と、水系媒体中のリン酸ナトリウム、またはリン酸カルシウム由来のリン酸イオンとの反応物である。
<トナー粒子3>
反応容器内に下記サンプルを秤量し、プロペラ撹拌翼を用いて混合した。
・トナー母粒子分散液 500.0部
次に、温度を25℃に保持しながら、1.0mol/Lの塩酸でpHを1.5に調整して1.0時間撹拌後、イオン交換水で洗浄しながら、ろ過した。得られた粉体を恒温槽で乾燥した後、風力式分級機で分級することにより、トナー粒子3を得た。
<トナーの製造方法>
<トナー1、2>
トナー粒子1、2をトナー1、2として用いた。
<トナー3>
・トナー粒子3 100.0部
・疎水性シリカ微粒子(ヘキサメチルジシラザン処理:個数平均粒径12nm) 1.0部
・リン酸ジルコニウム化合物微粒子 2.0部
上記材料をSUPERMIXER PICCOLO SMP−2(株式会社カワタ製)に投入して、3,000rpmで20分間混合を行った。その後、目開き150μmのメッシュで篩い、トナー3を得た。トナー3の個数平均粒径(D1)は6.2μm、重量平均粒径(D4)は6.9μmであった。トナー3をTOF−SIMS分析したところ、リン酸ジルコニウム由来のイオンが検出された。
<トナー4>
トナー3の製造例において、リン酸ジルコニウム化合物微粒子に替えて、個数平均粒径が28nmの酸化チタン微粒子を2.0部、FMミキサ(日本コークス工業株式会社製)で混合することでトナー4を得た。トナー4をTOF−SIMS分析したところ、多価酸金属塩由来のイオンは検出されなかった。
<トナー5>
トナー3の製造例において、リン酸ジルコニウム化合物微粒子に替えて、個数平均粒径が482nmのリン酸三カルシウム微粒子を2.0部、FMミキサ(日本コークス工業株式会社製)で混合することでトナー5を得た。トナー5をTOF−SIMS分析したところ、リン酸三カルシウム由来のイオンが検出された。
トナー1〜5の物性値を表1に示す。
Figure 2021021797
<トナー表面の電荷保持メカニズム>
図1を参照して、トナー3の電荷保持メカニズムの推察について説明する。図1(a)はトナー3の断面であり、表面上に電荷が保持された状態を示している。規制ブレード25にて電荷を付与されたトナー3は、その表面上に電荷を保持した状態で現像ローラ23上や感光ドラム11上に担持される。ここで、トナー3の表面は、図7に示すように多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物3bを有し、その構造は架橋構造となっている。この架橋構造は、反応物同士が互いに連続的なつながりを持ってトナー3のトナー母粒子3aの表面を覆っているため、電荷の担い手である電子32がトナー3の表面上を移動しやすくなっている。トナー3の表面上を移動しやすくなった電荷は、その極性が同じであるため、互いの斥力によって電荷間の距離を等しく保とうとする。よって、図1(a)で示すように、規制ブレード25から付与される電荷は、トナー1の表面上に偏在することなく、ほぼ均一に配置しやすい。
本メカニズムは、トナー表面上に多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物を有し、その構造が架橋構造となっているトナー1、トナー2においても同様と考えられる。
一方、比較例として、本実施例のような架橋構造を表面に持たないトナー4の場合について、図1(b)を用いて説明する。図1(b)はトナー4の断面であり、表面上に電荷が保持された状態を示している。規制ブレード25から付与される電荷は、トナー4と規制ブレード25との接触機会や接触強度のばらつきにより、電荷がトナー4の表面上に偏在した状態となる。このとき、トナー表面に多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物が無く、架橋構造を持たないトナー4は、電荷の担い手である電子32が移動しにくいため、電荷が偏在した状態が解消されにくい。
同様に、トナー表面上に多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物が無く、架橋構造を持たないトナー5においても、電荷の偏在した状態が解消されにくい。
<鏡像力抑制のメカニズム>
図5を参照して、トナー表面の電荷保持状態による鏡像力抑制メカニズムの推察について説明する。トナーに働く鏡像力は電荷量の2乗に比例するため、トナー表面の電荷密度が大きい部位に対してより強く作用する。このため、電荷密度の大きい部位が、現像ローラ23や感光ドラム11の表面に接触した状態で担持されやすい。また、トナーに働く鏡像力は距離の2乗に反比例するため、接触部の電荷密度が大きいと更に強く作用する。
トナーが現像ローラ23に担持された状態を、本発明のトナー3と、比較例のトナー4とで、それぞれ図5(a)、図5(b)に示す。トナー3は表面電荷密度がほぼ均一となるため、電荷密度の大きい部位が現像ローラ23と接触することがない。一方、トナー4は表面電荷密度の大きい部位が生じやすいため、この部位が現像ローラ23と接触する。よって、トナー3に作用する鏡像力Fm1と、トナー4に作用する鏡像力Fm2を比較した場合、Fm1<Fm2となり、トナー3の方が鏡像力を抑制できる。
本メカニズムは、トナー表面の構造が架橋構造となっているトナー1、トナー2においても同様と考えられる。特に、電荷の移動性が良好で、トナーから部材への多価酸金属塩の移行が抑制されたトナー1、トナー2では、電荷の偏在がより起こりにくくなるため、より鏡像力を抑制できる。
<剥ぎ取りローラのトナー剥ぎ取り効果>
図4を参照して、本発明のトナー3を用いた剥ぎ取りローラ24のトナー剥ぎ取り効果について説明する。現像されずに現像容器21内に回収された現像ローラ23上のトナー3は、現像ローラ23に対する鏡像力によって担持された状態で剥ぎ取りローラ24と接触する。このとき、トナー3に作用する鏡像力は、前述の「トナー表面の電荷保持メカニズム」「鏡像力抑制のメカニズム」で述べたように小さく抑えられているため、剥ぎ取りローラ24にて十分な剥ぎ取りができる。
ここで、トナー1〜5を用いて比較検討を行った結果について説明する。比較に当たっては、各トナーが収納された現像装置20を用意した。それぞれの現像装置20を画像形成装置100に装着し、画像評価試験を行った。評価に用いた画像は、現像ローラ23の1周分の長さで1cm角のベタ黒パッチを印字後に、中間調濃度の縦帯を印字したものである。画像評価結果を表2に示す。ゴーストの評価は、ゴースト画像を出力し、目視によって以下の基準により判定した。
A:現像ローラの回転2周目にパッチの影がほぼ見えない
B:現像ローラの回転2周目にパッチの影がわずかに見える
C:現像ローラの回転2周目にパッチの影がはっきり見える
Figure 2021021797
剥ぎ取りローラ24は、現像ローラ23にトナー3を供給する役割も担っている。このため、トナー供給量を増加させたい場合、図示されない電圧印加装置により剥ぎ取りローラ24から現像ローラ23へ向かってトナー3が移動する方向の電界を作用させることがある。電界を作用させると、鏡像力に加えてクーロン力も作用するため、よりトナーが剥ぎ取りにくくなるが、本発明のトナー3は鏡像力を抑制できるため、電界を作用させた場合であっても十分な剥ぎ取りができる。
以上説明したように、本発明のトナーは、多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物が架橋構造を作るため、高湿環境下で帯電性が低下することなくトナーのチャージアップを抑制できるので、現像ローラ23上からのトナー剥ぎ取りが安定して行える。
<規制ブレードのトナー規制効果>
図4を参照して、本発明のトナー3を用いた規制ブレード25のトナー規制効果について説明する。剥ぎ取りローラ24から現像ローラ23上に供給されたトナー3は、現像ローラ23に対する鏡像力によって担持された状態で規制ブレード25と接触する。このとき、トナー3に作用する鏡像力は、前述の「トナー表面の電荷保持メカニズム」「鏡像力抑制のメカニズム」で述べたように小さく抑えられている。これにより、規制ブレード25が過剰にトナー3を取り込むことを抑制でき、トナーコート量を一定の層厚に規制できる。
ここで、トナー1〜5を用いて比較検討を行った結果について説明する。比較に当たっては、各トナーが収納された現像装置20を用意した。それぞれの現像装置20を画像形成装置1000に装着し、トナーコート量評価試験を行った。評価結果を表3に示す。トナーコート量の評価は、1000枚の通紙を行った後の現像ローラ23上の一定面積に担持されるトナー重量の変化を調べ、以下の基準により判定した。
A:通紙1枚目と1000枚目で、トナー重量変化5%未満
B:通紙1枚目と1000枚目で、トナー重量変化5%以上10%未満
C:通紙1枚目と1000枚目で、トナー重量変化10%以上
Figure 2021021797
本実施例のトナー1〜3は、トナーコート量を一定の層厚に規制でき、特にトナー1、2において、より効果があった。一方、トナー4、5においては、トナーコート量を一定の層厚に規制できなかった。
規制ブレード25のブレード25bの形状は、図4で示すような平板状に限定されるものではなく、図6で示すような先端が矩形断面を持つものでもよい。以上説明したように、本発明のトナーは、多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物が架橋構造を作るため、高湿環境下で帯電性が低下することなくトナーのチャージアップを抑制できるので、現像ローラ23上のトナー層厚の規制が安定して行える。
<クリーニング部材のトナー剥ぎ取り効果>
図3を参照して、本発明のトナー3を用いたクリーニング部材14のトナー剥ぎ取り効果について説明する。転写されずに感光ドラム11上に残ったトナー3は、感光ドラム11に対する鏡像力によって担持された状態で、クリーニング部材14のゴム部14aと接触する。このとき、トナー3の鏡像力は、前述の「トナー表面の電荷保持メカニズム」「鏡像力抑制のメカニズム」で述べたように小さく抑えられているため、クリーニング部材14にて十分な剥ぎ取りができる。
ここで、トナー1〜5を用いて比較検討を行った結果について説明する。比較に当たっては、各トナーが収納された現像装置20を用意した。それぞれの現像装置20を画像形成装置100に装着し、画像評価試験を行った。評価に用いた画像にはベタ白画像である。画像評価結果を表4に示す。クリーニングの評価は、1000枚の通紙を行った後のベタ白画像の目視によって、クリーニング不良に伴う縦スジの有無により判定した。
A:画像上に縦スジがほぼ見えない
B:画像上に縦スジがわずかに見える
C:画像上に縦スジがはっきり見える
Figure 2021021797
本実施例のトナー1〜3は、クリーニング部材14にて十分な剥ぎ取りができた。一方、トナー4、5においては、剥ぎ取りが十分できなかった。以上説明したように、本発明のトナーは、多価酸と第4族元素を含む化合物との反応物が架橋構造を作るため、高湿環
境下で帯電性が低下することなくトナーのチャージアップを抑制できるので、感光ドラム11上のトナー除去を安定して行える。
10…プロセスカートリッジ、11…感光ドラム、14…クリーニング部材、23…現像ローラ、25…規制ブレード、3…トナー

Claims (8)

  1. 現像剤を担持する回転体と、前記回転体に当接する当接部材と、を備えるプロセスカートリッジであって、
    前記現像剤は、結着樹脂を含有するトナー粒子を有し、
    前記トナー粒子の表面が、多価酸と、第4族元素を含む化合物と、の反応物を有することを特徴とするプロセスカートリッジ。
  2. 前記反応物に、前記多価酸と共に金属塩を用いる場合において、
    前記金属塩に含まれる金属元素を金属元素Mとしたとき、
    前記現像剤のX線光電子分光分析によって得られたスペクトルから求められる前記トナー粒子の表面が有する前記反応物の構成元素比率における、前記金属元素Mの比率M1が1.0(at%)以上10.0(at%)以下であることを特徴とする請求項1に記載のプロセスカートリッジ。
  3. 前記現像剤1gを、61.5%のショ糖水溶液31gと、非イオン性界面活性剤と陰イオン界面活性剤からなる10%の精密測定器洗浄用中性洗剤水溶液6gからなる混合水溶液に分散させ、シェーカーを用いて1分間に300回振とうする処理(a)を施して得た前記現像剤をトナー(a)とし、
    前記トナー(a)のX線光電子分光分析によって得られたスペクトルから求められる前記トナー(a)を構成するトナー粒子の表面が有する前記反応物の構成元素比率における、前記金属元素Mの比率をM2(at%)とし、
    前記M1と前記M2がともに1.0以上10.0以下であり、
    前記M1およびM2が以下の関係式(ME−1)を満たすことを特徴とする請求項2に記載のプロセスカートリッジ。

    0.90≦M2/M1 (ME−1)
  4. 前記現像剤は、結着樹脂を含有する前記トナー粒子の表面に有機ケイ素重合体を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジ。
  5. 前記回転体が現像剤担持体であり、前記当接部材が現像剤剥ぎ取り部材であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジ。
  6. 前記回転体が現像剤担持体であり、前記当接部材が現像剤規制部材であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジ。
  7. 前記回転体が像担持体であり、前記当接部材がクリーニング部材であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジ。
  8. 記録材に画像を形成する画像形成装置であって、
    装置本体と、
    前記装置本体に着脱可能な請求項1〜7のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジを備えることを特徴とする画像形成装置。
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