以下では、本発明の一実施形態に係る給湯システム100の説明を行う前に、図1を用いて、給湯システム100に電力を供給する電力供給システム1の構成について説明する。
電力供給システム1は、給湯システム100やその他の電力負荷(負荷H1、負荷H2)に電力を供給するものである。電力供給システム1は、主として蓄電ユニット10を具備する。
蓄電ユニット10は、太陽光を利用して発電された電力を蓄電したり、給湯システム100やその他の電力負荷(負荷H1、負荷H2)へと供給するものである。蓄電ユニット10は、太陽光発電部11、蓄電池12及びハイブリッドパワコン13を具備する。
太陽光発電部11は、太陽光を利用して発電する装置である。太陽光発電部11は、太陽電池パネル等により構成される。太陽光発電部11は、例えば、住宅の屋根の上等の日当たりの良い場所に設置される。
蓄電池12は、電力を充放電可能に構成されるものである。蓄電池12は、例えば、リチウムイオン電池により構成される。蓄電池12は、後述するハイブリッドパワコン13を介して太陽光発電部11と接続される。
ハイブリッドパワコン13は、電力を適宜変換するもの(ハイブリッドパワーコンディショナ)である。ハイブリッドパワコン13は、太陽光発電部11で発電された電力及び蓄電池12から放電された電力を電力負荷(給湯システム100、負荷H1、負荷H2)に出力可能であると共に、太陽光発電部11で発電された電力及び系統電源Kからの電力を蓄電池12に出力可能に構成される。ハイブリッドパワコン13は、系統電源Kから電力負荷(給湯システム100、負荷H1、負荷H2)へと電力を供給する電力経路Lの中途部と接続される。
このように構成される蓄電ユニット10において、太陽光発電部11によって発電された電力は、電力負荷(給湯システム100、負荷H1、負荷H2)によって消費される。太陽光発電部11によって発電された電力が電力負荷(給湯システム100、負荷H1、負荷H2)の消費電力に対して余剰する場合は、蓄電池12に充電されるか、或いは系統電源Kへと逆潮流(売電)される。
次に、図2及び図3を用いて、本発明の一実施形態に係る給湯システム100の構成について説明する。
図2に示す給湯システム100は、系統電源Kからの電力、又は蓄電池12から出力された電力(太陽光発電部11によって発電された電力)を用いて給湯を行うものである。給湯システム100は、ヒートポンプを用いて発生させた熱を蓄えると共に、当該熱を用いて沸かされた湯を供給する。給湯システム100は、住宅その他の建物や施設に適宜設けられる。給湯システム100は、貯湯槽110、ヒートポンプユニット120、給湯機構130及び制御装置140を具備する。なお、図1では給湯システム100と太陽光発電部11とは別の構成要素として示されているが、給湯システム100に、前述の太陽光発電部11も含まれるものとする。
貯湯槽110は、内部に貯溜された熱媒体を介して熱を蓄えるものである。具体的には、貯湯槽110内には、熱媒体として水(湯)が満たされる。
ヒートポンプユニット120は、電力を消費して熱を発生させる(製造する)ものである。ヒートポンプユニット120は、主として第一配管121、圧縮機122、熱交換器123、膨張弁124、蒸発器125、ファン126、第二配管127及びポンプ128を具備する。
第一配管121は、熱媒体(冷媒)が循環するための流路を形成するものである。第一配管121は環状に形成される。第一配管121内には、熱媒体(冷媒)が満たされる。
圧縮機122は、電力を消費して、第一配管121を流通する熱媒体を圧縮するものである。圧縮機122は、第一配管121の中途部に配置される。
熱交換器123は、温度差のある流体間で熱(熱エネルギー)を交換するものである。熱交換器123は、第一配管121の中途部に配置される。より具体的には、熱交換器123は、第一配管121を流通する熱媒体の流通方向において、圧縮機122の下流側に配置される。
膨張弁124は、第一配管121を流通する熱媒体を膨張させるものである。膨張弁124は、第一配管121の中途部に配置される。より具体的には、膨張弁124は、第一配管121を流通する熱媒体の流通方向において、熱交換器123の下流側に配置される。
蒸発器125は、熱媒体を蒸発させるための熱交換器である。蒸発器125は、第一配管121の中途部に配置される。より具体的には、蒸発器125は、第一配管121を流通する熱媒体の流通方向において、膨張弁124の下流側に配置される。
ファン126は、蒸発器125へと風(外気)を送るためのものである。
第二配管127は、熱交換器123と貯湯槽110との間で水が循環するための流路を形成するものである。第二配管127の一端は、貯湯槽110における下部に接続される。第二配管127の中途部は、熱交換器123の内部を通るように配置される。第二配管127の他端は、貯湯槽110における上部に接続される。
ポンプ128は、第二配管127内の水を循環させるものである。ポンプ128は、第二配管127の中途部に配置される。ポンプ128が駆動すると、第二配管127内の水は、当該第二配管127の一端(貯湯槽110の下部側)から他端(貯湯槽110の上部側)に向かって流通する。
このように構成されたヒートポンプユニット120は、貯湯槽110内の湯水を加熱することにより当該湯水を昇温させる沸き上げ運転を行うことができる。具体的には、ヒートポンプユニット120において、圧縮機122によって圧縮された熱媒体は、高温の気体となる。当該高温の熱媒体は、第一配管121を介して熱交換器123を流通する。熱交換器123を流通する熱媒体の熱は、第二配管127を流通する熱媒体(水)に移動する。これによって、熱交換器123を流通する熱媒体の温度は低下し、当該熱媒体は液体になる。熱交換器123を流通した第一配管121内の熱媒体は、膨張弁124において膨張することで、低温の液体(又は気体)になる。膨張弁124を流通した低温の熱媒体は、蒸発器125において外気から熱を受け取って蒸発し、再び気体になる。外気から熱を受け取った熱媒体は、再び圧縮機122へと供給される。
また第二配管127を流通する水は、熱交換器123を通過することで、ヒートポンプユニット120で発生した熱を受け取り、温度が上昇する。こうして温度が上昇した水を貯湯槽110に戻すことで、ヒートポンプユニット120で得られた熱を貯湯槽110に集めることができる。このように沸き上げ運転を行うことで、貯湯槽110に貯溜された水(湯)を昇温させることができる。
ヒートポンプユニット120は、系統電源Kからの電力、又は蓄電池12から出力された電力(太陽光発電部11によって発電された電力)を用いて、圧縮機122、ファン126及びポンプ128等を動作させることができる(図1参照)。
給湯機構130は、貯湯槽110に貯溜された水(湯)を被給湯部へと供給するものである。本実施形態において、被給湯部には浴槽B及び洗面台Wが含まれる。浴槽Bは第一被給湯機器の具体例であり、洗面台Wは第二被給湯機器(第一被給湯機器以外の機器)の具体例である。なお、第二被給湯機器は、洗面台W以外の機器(例えば床暖房)を含んでいてもよい。給湯機構130は、主として注水配管131、第一給湯配管132、混合配管133、第二給湯配管134、第一バルブ135及び第二バルブ136を具備する。
注水配管131は、上水を貯湯槽110へと案内する配管である。注水配管131の一端は、貯湯槽110における下部に接続される。
第一給湯配管132は、貯湯槽110における上部に貯溜された水(湯)を取り出し、浴槽Bへと供給する配管である。第一給湯配管132の一端は、貯湯槽110における上部に接続される。第一給湯配管132の他端は、浴槽Bに接続される。
混合配管133は、第一給湯配管132を流通する水(湯)に上水を混合させるための配管である。混合配管133の一端は、注水配管131の中途部に接続される。混合配管133の他端は、第一給湯配管132の中途部に接続される。
第二給湯配管134は、第一給湯配管132から分岐する配管であり、貯湯槽110における上部に貯溜された水(湯)を洗面台Wへと供給する配管である。第二給湯配管134の一端は、第一給湯配管132の中途部、より詳細には混合配管133との接続部よりも下流側の部分に接続される。第二給湯配管134の他端は、洗面台Wに接続される。
第一バルブ135は、流路の開閉を行うものである。第一バルブ135は、第一給湯配管132の中途部、より詳細には第二給湯配管134との接続部よりも下流側の部分に設けられる。このように設けられた第一バルブ135により、浴槽Bへの水(湯)の供給及び停止を切り替えることができる。
第二バルブ136は、流路の開閉を行うものである。第二バルブ136は、第二給湯配管134の中途部に設けられる。このように設けられた第二バルブ136により、洗面台Wへの水(湯)の供給及び停止を切り替えることができる。
このように構成された給湯機構130は、貯湯槽110内の湯水を浴槽B等(浴槽B及び洗面台W)に給湯することができる。以下、浴槽Bへの給湯(湯はり)について説明する。
浴槽Bから湯が要求されると、図示せぬポンプが駆動され、貯湯槽110から第一給湯配管132を介して取り出された湯(高温水)に、混合配管133を介して供給される上水が混合される。このように、貯湯槽110からの湯(高温水)と上水を適宜混合することで、要求に応じた温度の水(湯)を得ることができる。このように混合された水(湯)が第一給湯配管132を介して浴槽Bへと供給されることで、浴槽Bに湯はりされる。この場合、第一給湯配管132を介して貯湯槽110に貯溜された水(湯)が取り出されると共に、注水配管131を介して上水が貯湯槽110に供給される。このようにして、貯湯槽110内は常に水(湯)で満たされる。
また、給湯機構130は、足し湯を行うことができる。具体的には、貯湯槽110から第一給湯配管132を介して取り出された湯(高温水)に、混合配管133を介して供給される上水を適宜混合することで、要求に応じた温度(足し湯温度)の水(湯)を得ることができる。このように混合された水(湯)は、第一給湯配管132を介して浴槽Bへと供給される。このようにして、浴槽Bに足し湯することができる。この場合、湯はり時と同様に、第一給湯配管132を介して貯湯槽110に貯溜された水(湯)が取り出されると共に、注水配管131を介して上水が貯湯槽110に供給される。このようにして、貯湯槽110内は常に水(湯)で満たされる。なお、足し湯においては、貯湯槽110から第一給湯配管132を介して取り出された湯(高温水)を、上水と混合せずそのまま浴槽Bに供給することもできる。
図3に示す制御装置140は、給湯システム100の動作を制御するものである。制御装置140は、主としてCPU等の演算処理装置、RAMやROM等の記憶装置、I/O等の入出力装置、並びにモニター等の表示装置等により構成される。制御装置140には、給湯システム100の動作を制御するための種々の情報やプログラム等が予め記憶される。制御装置140は、上部温度センサ141、下部温度センサ142及び流量センサ143に接続される。
図2及び図3に示す上部温度センサ141は、貯湯槽110における上部に貯溜された水(高温水)の温度を検出するものである。上部温度センサ141は、貯湯槽110内の上部に配置される。
図2及び図3に示す下部温度センサ142は、貯湯槽110における下部に貯溜された水(低温水)の温度を検出するものである。下部温度センサ142は、貯湯槽110内の下部に配置される。
図2及び図3に示す流量センサ143は、第一給湯配管132を流通する水(湯)の流量を検知するものである。流量センサ143は、第一給湯配管132の中途部に配置される。より詳細には、流量センサ143は、第一給湯配管132を流通する水(湯)の流通方向において、第一給湯配管132と混合配管133との接続部の下流側に配置される。
このように構成された制御装置140は、ヒートポンプユニット120(圧縮機122等)に接続され、当該ヒートポンプユニット120の動作を制御することができる。具体的には、制御装置140は、ヒートポンプユニット120を稼働(運転)又は停止させることができる。
また、制御装置140は、給湯機構130(当該給湯機構130のポンプ等)に接続され、当該給湯機構130の動作を制御することができる。具体的には、制御装置140は、給湯機構130を稼働(運転)又は停止させることができる。
また、制御装置140は、浴槽B等に供給する(湯はり又は足し湯する)湯の温度を制御することができる。
また、制御装置140は、浴槽Bに湯はりされる湯の量(湯はり量)及び足し湯される湯の量(足し湯量)を制御することができる。当該制御は、流量センサ143による第一給湯配管132を流通する湯の流量の検知結果に基づいて行われる。制御装置140は、流量センサ143で検知された流量が設定された湯量となると、浴槽Bへの給湯を停止させる。
また、制御装置140は、ヒートポンプユニット120及び給湯機構130の動作状況(浴槽B及び洗面台Wへの給湯の際の湯量及び湯温、浴槽B及び洗面台Wへの給湯時刻)に関する過去のデータを蓄積している。また、制御装置140は、電力負荷(給湯システム100、負荷H1、負荷H2)の消費電力(電力需要)、及び太陽光発電部11の発電量に関する過去のデータを蓄積している。
次に、図4を用いて浴槽Bへの給湯に係る制御について説明する。
ステップS10において、制御装置140は、給湯需要の予測を行う。ここで、本明細書において、「給湯需要」とは、浴槽Bへの給湯(湯はり及び足し湯)に必要な熱量、及び洗面台Wへの給湯に必要な熱量の合計のことをいう。制御装置140は、ヒートポンプユニット120及び給湯機構130の動作状況に関する過去の蓄積データに基づいて、給湯需要の予測を行う。
制御装置140は、当該ステップS10の処理を行った後、ステップS12に移行する。
ステップS12において、制御装置140は、沸き上げ温度T1の計算を行う。ここで、「沸き上げ温度T1」は、ヒートポンプユニット120による沸き上げ運転後の貯湯槽110内の湯温(沸き上げ運転によって加熱された貯湯槽110内の湯の目標温度)である。沸き上げ温度は、以下の式1によって算出される。
(式1)沸き上げ温度T1=[{(給湯需要+湯切れ防止量)÷比熱}÷貯湯槽容量X1]+水温
ここで、式1中の「給湯需要」は、ステップS10で予測された給湯需要[kJ]である。式1中の「湯切れ防止量」は、湯切れを防止するために余裕をみて設定された所定の熱量[kJ]を示すものである。式1中の「比熱」は、水の比熱[kJ/(L・K)]を示すものである。式1中の「貯湯槽容量X1」は、貯湯槽110の容量(貯湯槽110内に貯溜可能な水(湯)の体積)[L]を示すものである。式1中の「水温」は、貯湯槽110の下部に供給される上水の温度[K]を示すものであり、下部温度センサ142により検知される。
制御装置140は、当該ステップS12の処理を行った後、ステップS14に移行する。
ステップS14において、制御装置140は、沸き上げ温度T1>下限温度であるか否かを判定する。ここで、「沸き上げ温度T1」は、ステップS12で計算された温度である。「下限温度」は、管理基準等により定められた、沸き上げ温度T1の下限値を示すものである。下限温度は例えば65℃に設定される。
制御装置140は、沸き上げ温度T1>下限温度であると判定した場合(ステップS14で「YES」)、ステップS16に移行する。一方、制御装置140は、沸き上げ温度T1>下限温度でないと判定した場合(ステップS14で「NO」)、ステップS18に移行する。
なお、ステップS14で「YES」の場合とは、ステップS10で予測した給湯需要が、沸き上げ温度T1を下限温度にしたときの沸き上げ量(沸き上げ運転によって生成された熱量)よりも大きいことを示している。すなわち、下限温度での1回の沸き上げ運転では、給湯需要を賄うことができないことを示している。一方、ステップS14で「NO」の場合とは、ステップS10で予測した給湯需要が、沸き上げ温度T1を下限温度にしたときの沸き上げ量以下であることを示している。すなわち、下限温度での1回の沸き上げ運転によって、給湯需要を賄うことができることを示している。
ステップS16において、制御装置140は、沸き上げ温度T1の再計算を行う。このステップにおいて、制御装置140は、ステップS12で用いた式1中の「給湯需要」を、当該給湯需要から浴槽Bへの給湯に必要な熱量(給湯熱量)を差し引いたものに置き換えて再計算を行う。すなわち、沸き上げ温度T1は、以下の式2によって再計算される。
(式2)沸き上げ温度T1=[{(給湯需要-給湯熱量+湯切れ防止量)÷比熱}÷貯湯槽容量X1]+水温
ステップS16において再計算された沸き上げ温度T1は、ステップS12において計算された沸き上げ温度T1よりも低くなる。ここで、式2中の「給湯需要」、「湯切れ防止量」、「比熱」、「貯湯槽容量X1」及び「水温」は、式1において定義したとおりである。式2中の「給湯熱量[kJ]」は、以下の式3によって算出される。
(式3)給湯熱量=(浴槽設定温度T2-水温)×比熱×浴槽設定湯量X2
ここで、式3中の「浴槽設定温度T2」は、入浴時刻における浴槽B内の所望の湯温[K]であって、任意に設定されるものである。式3中の「水温」及び「比熱」は、式1において定義したとおりである。式3中の「浴槽設定湯量X2」は、入浴時刻における浴槽B内の所望の湯量[L]であって、任意に設定されるものである。なお、「入浴時刻」とは、住人等が浴槽Bに入浴する時刻、すなわち、浴槽Bが給湯された状態であるべき時刻である。
制御装置140は、当該ステップS16の処理を行った後、ステップS18に移行する。
ステップS18において、制御装置140は、電力需要及び発電量の予測を行う。ここで、「電力需要」は、電力負荷(給湯システム100、負荷H1、負荷H2)が消費する電力を示すものである。「発電量」は、太陽光発電部11によって発電される電力を示すものである。制御装置140は、電力需要及び発電量に関する過去の蓄積データに基づいて、電力需要及び発電量の予測を行う。
制御装置140は、当該ステップS18の処理を行った後、ステップS20に移行する。
ステップS20において、制御装置140は、沸き上げ時間帯の決定を行う。ここで、「沸き上げ時間帯」は、ヒートポンプユニット120による沸き上げ運転を行う時間帯を示すものである。このステップにおいて、制御装置140は、ステップS18で得られた電力需要及び発電量の予測結果に基づいて、太陽光発電部11の発電量が電力需要に対して余剰する時間帯(余剰電力が発生する時間帯)を予測する。そして、制御装置140は、ヒートポンプユニット120の消費電力より余剰電力が大きい時間帯の中から、沸き上げ時間帯を設定する。
また、制御装置140は、予め設定された入浴時刻の前に、沸き上げ時間帯を設定する。すなわち、沸き上げ時間帯は、入浴時刻の前であって、かつ、余剰電力が発生すると予測される時間帯に設定される。
入浴時刻の前であって、かつ、余剰電力が発生すると予測される時間帯の中から、どの時間帯を沸き上げ時間帯とするかは、適宜の方法で決定することができる。余剰電力が発生すると予測される時間帯が不連続に存在する場合、沸き上げ時間帯は、極力連続するように(不連続な各時間帯のうちの1の時間帯に納まるように)決定される。これにより、沸き上げ運転が一度終了した後、再度行われることが抑制される。
制御装置140は、当該ステップS20の処理を行った後、ステップS22に移行する。
ステップS22において、制御装置140は、現在がステップS20で決定した沸き上げ時間帯であるか否かを判定する。制御装置140は、現在が沸き上げ時間帯になっていると判定した場合(ステップS22で「YES」)、ステップS24に移行する。一方、制御装置140は、現在が沸き上げ時間帯になっていないと判定した場合(ステップS22で「NO」)、再びステップS22の処理を行う。
ステップS24において、制御装置140は、沸き上げ運転指示を行う。このステップにおいて、制御装置140は、貯湯槽110内の湯を沸き上げ温度T1まで昇温させるように、ヒートポンプユニット120に沸き上げ運転を実行させる。沸き上げ温度T1は、ステップS12又はS16で計算されたものである。計算された沸き上げ温度T1が下限温度(65℃)以下である場合は、下限温度とされる。
制御装置140は、当該ステップS24の処理を行った後、ステップS26に移行する。
ステップS26において、制御装置140は、給湯需要>沸き上げ量であるか否かを判定する。ここで、「沸き上げ量」は、ヒートポンプユニット120による沸き上げ運転によって生成される熱量[kJ]である。沸き上げ量は、以下の式4によって算出される。
(式4)沸き上げ量=(沸き上げ温度T1-水温)×貯湯槽容量X1×比熱
ここで、式4中の「沸き上げ温度T1」は、沸き上げ運転時(ステップS24)の実際の沸き上げ温度[K]である。式4中の「水温」、「貯湯槽容量X1」及び「比熱」は、式1において定義したとおりである。
制御装置140は、給湯需要>沸き上げ量であると判定した場合(ステップS26で「YES」)、ステップS28に移行する。一方、制御装置140は、給湯需要>沸き上げ量でないと判定した場合(ステップS26で「NO」)、図4に示す制御フローを終了する(後述する湯はり指示(ステップS28)及び高温足し湯指示(ステップS32)を行わない)。
なお、ステップS26で「NO」の場合とは、ヒートポンプユニット120による1回の沸き上げ運転によって、給湯需要を賄うことができることを示している。一方、ステップS26で「YES」の場合とは、ヒートポンプユニット120による1回の沸き上げ運転だけでは、給湯需要を賄うことができないことを示している。
ステップS28において、制御装置140は、湯はり指示を行う。このステップにおいて、制御装置140は、沸き上げ運転中に、給湯機構130に浴槽Bへの湯はりを実行させる。このように、このステップにおいては、未だ入浴時刻になっていなくても前倒しで、浴槽Bへの湯はりを行う。浴槽Bに湯はりされる湯の量(湯はり量X3)は、以下の式5によって算出される。
(式5)湯はり量X3=浴槽設定湯量X2-足し湯量X4
ここで、式5中の「浴槽設定湯量X2」は、式3で定義したとおりである。式5中の「足し湯量X4」は、後述する高温足し湯(ステップS32)において、浴槽Bに足し湯される湯の量[L]である。つまり、湯はり量X3及び足し湯量X4は、湯はり量X3及び足し湯量X4の合計が浴槽設定湯量X2となるように決定される。
また、浴槽Bに湯はりされる湯の温度(湯はり温度T3)は、以下の式6によって算出される。
(式6)湯はり温度T3={(浴槽設定温度T2×湯はり量X3-足し湯温度T4×足し湯量X4)÷(湯はり量X3-足し湯量X4)}+(湯はりまでの時間×湯温低下率)
ここで、式6中の「浴槽設定温度T2」は、式3で定義したとおりである。式6中の「湯はり量X3」は、式5で算出されたものである。式6中の「足し湯温度T4」は、後述する高温足し湯(ステップS28)において、浴槽Bに足し湯される湯の温度である。式6中の「足し湯量X4」は、式5で定義したとおりである。式6中の「湯はりまでの時間」は、沸き上げ運転完了から入浴時刻までの時間[hr]を示すものである。式6中の「湯温低下率」は、時間の経過に対する浴槽B内の湯温の低下の割合(1時間経過ごとに浴槽B内の湯温が何度低下するか)[K/hr]を示すものである。
制御装置140は、当該ステップS28の処理を行った後、ステップS30に移行する。
ステップS30において、制御装置140は、現在が入浴時刻になっているか否かを判定する。制御装置140は、現在が入浴時刻になっていると判定した場合(ステップS30で「YES」)、ステップS32に移行する。一方、制御装置140は、現在が入浴時刻になっていないと判定した場合(ステップS30で「NO」)、再びステップS30の処理を行う。なお、「入浴時刻」は、入浴時刻の直前の所定時刻としてもよい。
ステップS32において、制御装置140は、高温足し湯指示を行う。このステップにおいて、制御装置140は、沸き上げ運転によって加熱された貯湯槽110内の湯を適宜上水と混合して、給湯機構130を介して浴槽Bに供給するように、給湯機構130に足し湯を実行させる。これにより、浴槽B内の湯水を、浴槽設定温度T2(所望の湯温)かつ浴槽設定湯量X2(所望の湯量)とする。足し湯量X4は、上述の式5(湯はり量X3=浴槽設定湯量X2-足し湯量X4)により算出される。湯はり量X3及び足し湯量X4はそれぞれ、上記式5を満たす限りにおいて適宜の値とすることができる。
また、足し湯温度T4は、浴槽設定温度T2よりも高い所定の温度に設定され、例えば沸き上げ温度T1と同じ温度に設定される。これにより、比較的高温の(浴槽設定温度T2よりも高温の)湯を浴槽Bに足し湯(高温足し湯)することができる。
制御装置140は、当該ステップS32の処理を行った後、図4に示す制御フローを終了する。
このように、本発明の一実施形態に係る給湯システム100においては、太陽光発電部11の余剰電力が生じる時間帯に、ヒートポンプユニット120による沸き上げ運転を行う。そして、1回の沸き上げ運転では給湯需要を賄うことができない場合(ステップS22で「NO」)、沸き上げ中に湯はりを実施する(ステップS24)。
これにより、湯はり分の熱量が貯湯槽110から失われても、貯湯槽110内の湯水が沸き上げ温度T1となるまで沸き上げられることで、湯はり分の熱量が貯湯槽110に補填される。つまり、太陽光発電部11の余剰電力を利用して、貯湯槽110に貯溜される熱量を生成するとともに、さらに湯はり分の熱量を生成することができる。したがって、太陽光発電部11の余剰電力の消費率を向上させることができ、ひいては省エネを図ることができる。
以下、本発明の効果を具体例を挙げて説明する。図5は、太陽光発電部11の余剰電力が発生していない深夜に沸き上げ運転を行い、かつ、沸き上げ運転中の湯はり(ステップS28)を行わなかった場合の電力消費量及び給湯需要を示すものである(比較例1)。図6は、給湯需要のピークの直前(太陽光発電部11の余剰電力が発生していない夕方)に沸き上げ運転を行い、かつ、沸き上げ運転中の湯はり(ステップS28)を行わなかった場合の電力消費量及び給湯需要を示すものである(比較例2)。図7は、本実施形態の制御に基づいて、太陽光発電部11の余剰電力が発生している昼間に沸き上げ運転を行い、かつ、沸き上げ運転中の湯はり(ステップS28)を行った場合の電力消費量及び給湯需要を示すものである(実施例1)。なお、「電力消費量」は、住宅の全ての電力負荷(ヒートポンプユニット120及びその他の電力負荷)の消費電力の合計を示すものである。
比較例1(図5参照)においては、電力消費量は24.6kWh、自家消費率(太陽光発電部11によって発電された電力に対する、自家で消費した発電電力の割合)は18%となった。また、比較例2(図6参照)においては、電力消費量は23.5kWh、自家消費率は22%となった。
これに対して、実施例1(図7参照)においては、電力消費量が23.3kWh、自家消費率が40%となった。このように、本発明の一実施形態に係る給湯システム100(実施例1)においては、比較例1及び比較例2と比べて、太陽光発電部11によって発電された電力の自家消費率を顕著に向上させることができる。
また、一般的に、ヒートポンプユニット120は沸き上げ運転開始時に多くの電力を消費するため、複数回沸き上げを行う場合(沸き上げが一度終了した後、再度沸き上げを行う場合)には、沸き上げの際の消費電力量が大きくなってしまう。一方、本発明の一実施形態に係る給湯システム100においては、沸き上げ中に湯はりを実施することで、湯はり分の熱量が貯湯槽110に補填される。このため、湯はり実施後に再び沸き上げ運転を行うこと(沸き上げ運転が2回以上行われること)が抑制される。したがって、ヒートポンプユニット120の消費電力量の抑制を図ることができる。
また、本発明の一実施形態に係る給湯システム100において、沸き上げ運転中に浴槽Bに湯はりする場合(ステップS28)、入浴時刻の直前(足し湯前)には浴槽B内の湯温は湯はり時の温度(湯はり温度T3)から若干低下している。しかし、入浴時刻(の直前)に足し湯を行い(ステップS32)、浴槽B内の湯温を所望の温度(浴槽設定温度T2)に昇温させるため、入浴時刻より前に湯はりを行っても、入浴時刻には所望の温度のお湯を浴槽B内に提供することができる。
また、本発明の一実施形態に係る給湯システム100においては、沸き上げ運転中に浴槽Bに湯はりする場合(ステップS28)、入浴時刻(の直前)に足し湯を行い(ステップS32)、浴槽B内の湯量を所望の湯量(浴槽設定湯量X2)に増加させる。これにより、入浴時刻より前に湯はりを行っても、入浴時刻には所望の量のお湯を浴槽B内に提供することができる。さらに、沸き上げ運転中に行う湯はりの量(湯はり量X3)は、所望の湯量(浴槽設定湯量X2)から足し湯量X4を引いた値とすることにより(式5参照)、所望の湯量(浴槽設定湯量X2)で湯はりした場合と比べて、浴槽B内の湯温の低下による熱損失量を低減することができる。したがって、足し湯によって浴槽Bに供給が必要な熱量を小さくすることができる。
また、本発明の一実施形態に係る給湯システム100において、沸き上げ温度T1を下限温度にしたときの沸き上げ量よりも給湯需要が大きい(すなわち、下限温度での1回の沸き上げ運転では給湯需要を賄うことができない)場合(ステップS14で「YES」)、沸き上げ温度T1の再計算を行う(ステップS16)。この際、給湯需要から給湯熱量を除いて再計算を行う。すなわち、沸き上げ温度T1は、1回の沸き上げ運転(沸き上げ運転中の湯はり(ステップS28)を行わない場合)で生成される熱量により、浴槽B以外の機器(洗面台W)への給湯に必要な熱量を賄うことができる温度に再設定される。
これにより、沸き上げ温度を比較的低い温度とすることができる。そうすると、貯湯槽110内の湯の温度と外気温との差が比較的小さくなり、このため熱損失が小さくなる。よって、貯湯槽110内の湯水の温度が低下し難くなり、ひいては熱効率を向上させることができる。
以上の如く、本実施形態に係る給湯システム100は、自然エネルギーを利用して発電可能な太陽光発電部11(発電部)と、内部に湯水が貯溜された貯湯槽110と、前記太陽光発電部11によって発電された電力を用いて前記貯湯槽110内の湯水を加熱可能であり、加熱により当該湯水を沸き上げ温度T1まで昇温させる沸き上げ運転を実行するヒートポンプユニット120と、前記貯湯槽110内の加熱された湯水を用いて被給湯部に給湯を行う給湯機構130と、を具備し、前記被給湯部は、浴槽B(第一被給湯機器)、及び前記浴槽B以外の洗面台W(第二被給湯機器)を含み、前記ヒートポンプユニット120は、入浴時刻(前記浴槽Bが給湯された状態であるべき給湯必要時刻)の前であって、かつ、前記太陽光発電部11によって発電された電力が電力需要に対して余剰すると予測される時間帯(ステップS20)に、前記沸き上げ運転を実行し(ステップS24)、前記給湯機構130は、給湯需要(前記浴槽Bへの湯はり(給湯)に必要な熱量である第一給湯需要、及び前記洗面台Wへの給湯に必要な熱量である第二給湯需要の合計)が、1回の前記沸き上げ運転で生成される熱量より多い場合(ステップS26で「YES」)、前記沸き上げ運転中に、前記浴槽Bに湯はり(給湯)を行う(ステップS28)ものである。
このように構成することにより、太陽光発電部11の余剰電力の消費率を向上させることができ、ひいては省エネを図ることができる。
また、本実施形態に係る給湯システム100は、前記浴槽B内の湯水の温度が前記入浴時刻において浴槽設定温度T2(目標温度)となるように、前記沸き上げ運転の完了後かつ前記入浴時刻より前に、前記貯湯槽110内の加熱された湯水が有する熱を前記浴槽Bに供給する(ステップS32)給湯機構130(熱供給手段)を具備するものである。
このように構成することにより、入浴時刻より前に湯はりを行っても、目標温度(浴槽設定温度T2)の湯水を浴槽Bに提供することができる。
また、前記第一被給湯機器は浴槽Bであって、前記給湯機構130(熱供給手段)は、前記貯湯槽110内の加熱された湯水を前記浴槽Bに足し湯することにより、前記貯湯槽110内の加熱された湯水が有する熱を前記浴槽Bに供給する(ステップS32)ものである。
このように構成することにより、入浴時刻より前に浴槽Bに湯はりを行っても、目標温度(浴槽設定温度T2)の湯水を浴槽Bに提供することができる。
また、前記給湯機構130は、前記貯湯槽110内の加熱された湯水を前記浴槽Bに足し湯することにより、前記貯湯槽110内の加熱された湯水が有する熱を前記浴槽Bに供給し、前記給湯機構130は、前記沸き上げ運転中に前記浴槽Bに湯はり(給湯)を行う場合、前記浴槽Bへの湯はり量X3(給湯量)を、浴槽設定湯量X2(目標湯量)から前記給湯機構130による足し湯量X4の分差し引いた量に設定する(ステップS28)ものである。
このように構成することにより、所望の湯量(浴槽設定湯量X2)の湯水を浴槽Bに提供することができるとともに、足し湯によって浴槽Bに供給が必要な熱量を小さくすることができる。
また、前記沸き上げ温度T1は、1回の前記沸き上げ運転で生成される熱量により、給湯需要(前記第一給湯需要及び前記第二給湯需要の合計)を賄うことができる第一温度に設定され(ステップS12)、前記第一温度が所定値より高い場合、1回の前記沸き上げ運転で生成される熱量により前記第二給湯需要を賄うことができ、かつ、前記第一温度よりも低い第二温度に再設定される(ステップS16)ものである。
このように構成することにより、沸き上げ温度T1を比較的低い温度とすることができるため、貯湯槽110内の湯水の温度が低下し難くなり、ひいては熱効率を向上させることができる。
なお、本実施形態に係る太陽光発電部11は、発電部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る給湯機構130は、給湯機構及び熱供給手段の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る浴槽Bは、第一被給湯機器の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る洗面台Wは、第二被給湯機器の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る浴槽設定温度T2は、目標温度の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る浴槽設定湯量X2は、目標湯量の実施の一形態である。
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば、本実施形態においては、ステップS32において、浴槽Bに足し湯することにより、貯湯槽110内の加熱された湯水が有する熱を浴槽Bに供給するものとしたが、貯湯槽110内の加熱された湯水を用いて浴槽B内の湯水を追いだきするものとしてもよい。但し、熱効率の観点から、足し湯を行うことが好ましい。
また、本実施形態においては、ステップS32において、浴槽Bに足し湯される湯の量(足し湯量X4)は、浴槽設定温度T2よりも高い所定の温度(例えば沸き上げ温度T1と同じ温度)に設定されるものとしたが、以下の式7によって算出されるものとしてもよい。
(式7)足し湯温度T4={浴槽設定温度T2×湯はり量X3-浴槽湯温T5×(湯はり量X3-足し湯量X4)}÷足し湯量X4
ここで、式7中の「浴槽設定温度T2」は、式3で定義したとおりである。式7中の「湯はり量X3」は、式5で算出されたものである。式7中の「浴槽湯温T5」は、足し湯直前(入浴時刻)における浴槽B内の湯温[K]である。式7中の「足し湯量X4」は、式5で算出されたものである。
この場合、「湯はり温度T3」は、上記式6を用いて算出することはせず、所定の値(例えば浴槽設定温度T2と同じ温度)に設定される。
また、本実施形態においては、第一被給湯機器が浴槽Bであるものとしたが、第一被給湯機器は、給湯された状態であるべき時刻の前に給湯を行うことが可能な機器であればよく、例えば床暖房であってもよい。
また、給湯システム100は、複数の世帯(住宅)間で電力を融通可能に構成された住宅街区(電力融通街区)に適用されるものとすることもできる。このような電力融通街区においては、個々の世帯では余剰電力が発生していない場合でも、街区全体で見れば余剰電力が発生している場合もある。
具体的には、給湯需要が大きく1日の給湯需要を1回の沸き上げ運転では賄えない世帯は、概ね電力需要も大きく余剰電力が少ないと予想される。このため、浴槽Bへの湯はりを前倒しした場合、消費電力が余剰電力を超過する可能性がある。電力融通街区では、このような需要の大きい世帯が存在しても、街区内の他の住宅の太陽光発電を利用することが可能であるため、余剰電力の消費率のさらなる向上を図ることができる。上記観点から、電力融通街区においては、沸き上げ時間帯の決定のステップ(ステップS20)において、給湯需要が大きくヒートポンプユニット120の運転時間の長い世帯から沸き上げ時間帯を決定していくものとする。