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JP7288131B1 - 表面性状に優れたs含有ステンレス鋼およびその製造方法 - Google Patents

表面性状に優れたs含有ステンレス鋼およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】酸化物系介在物組成を精緻に制御して酸化物系介在物を無害化させることにより、表面性状に優れたS含有ステンレス鋼を提供する。【解決手段】C:0.30wt%以下、Si:0.2~1.0wt%、Mn:1.0~2.0wt%、Ni:5~10wt%、Cr:15~20wt%、Mo:0.05~0.60wt%、Cu:0.05~0.60wt%、Al:0.005wt%以下、S:0.15~0.25wt%、Ca:0.0001~0.0035wt%、Mg:0.0010wt%以下、O:0.0020~0.0080wt%未満、残部Feおよび不可避的不純物からなり、酸化物系介在物が、CaO-SiO2-MgO-Al2O3-MnO系介在物およびMgO-Al2O3-MnO系介在物の1種または2種からなり、MgO-Al2O3-MnO系介在物は質量%にてMnOを1~15wt%含有することを特徴とするS含有ステンレス鋼。【選択図】なし

Description

本発明は、脱酸方法およびスラグ組成を制御することにより、溶鋼中の酸化物系非金属介在物の組成を制御して酸化物系介在物を無害化し、表面性状の優れたS含有ステンレス鋼に関するものである。さらに本発明では、表面性状の優れたS含有ステンレス鋼に関して、介在物形態を制御しつつ、S濃度も精度よく制御する製造方法も提案する。
SUS303に代表されるS含有ステンレス鋼は、Sを0.15wt%以上と高濃度含有し、MnS粒子を形成することによって、工具による研削時の被削性および切削性を高めた鋼種であり、機械加工精密部品などに広く用いられ、半導体製造設備では表面に小さな疵があると気密性が保たれず大きな問題となる。すなわち、S含有ステンレス鋼は優れた表面性状を要求される。
S含有鋼の精錬方法は、汎用のステンレス鋼(例えばSUS304)の精錬方法とは異なり、溶鋼に投入したSがスラグに移動することを抑制する必要がある。溶鋼中Sとスラグとの反応は式1~3の反応式で表すことができる。式1は溶鋼中のSがスラグ中CaOと反応してCaSになる反応を表し、式2は脱酸材であるSiによる脱酸を表し、式3は式1と式2を総括した式である。式1~3より、Sがスラグに移動することを抑制しS濃度を精度よく制御するためには、スラグのCaO濃度上げない、(CaO)/(SiO)比を下げる、さらに溶鋼中の酸素濃度下げない、溶鋼中のSi濃度上げない精錬方法が行うことが良いことが分かる。
しかしながら、このような精錬方法は、S濃度の制御はしやすく、S歩留は良くなるが、脱酸不足による非金属介在物個数の増加および非金属介在物組成が、高融点のMnO-SiO系介在物になる為、製品の表面に介在物起因のヘゲ疵が発生、表面研削または切断による除去のため、製品歩留を悪くする問題があり、さらに表面性状の要求の厳しい精密機器の部品の用途として使用できない問題がある。
(CaO) + S =(CaS) + O …式1
Si + 2O = (SiO2) …式2
2(CaO) + 2S + Si = 2(CaS) + (SiO2) …式3
上記式で、括弧はスラグ内の成分を表し、下線は溶鋼中の成分を表している。
特許文献1では、硫黄を0.15~0.50%含有し、O濃度を80~200ppmに調整することで、熱間加工または熱間・冷間加工後の硫化物の形状を粒状型に制御して、被削性を高めたオーステナイト系ステンレス鋼が開示されている。この技術では、硫化物中に析出している酸化物をSi-Mn系酸化物にすることが重要であることを示している。しかしながら、O濃度が非常に高く制御しているため、酸化物系介在物個数が非常に多くなり、酸化物系介在物起因の割れやノズル閉塞などの悪影響が懸念される。
また特許文献2では、REM(Rare Earth Metal)を添加することにより、酸化物組成を制御することにより、硫化物の分布を制御し、熱間加工性および切削性の優れたステンレス鋼が開示されている。しかしながら、REMは、いずれも非常に高価な金属であるため、コスト増加につながり、またREMは非常に活性な金属であるため、酸素濃度の高い溶鋼にREMを添加すると、REM酸化物が多数生成し、表面性状の悪化をもたらす。すなわち、特許文献2の開示の技術ではS含有鋼の表面性状の問題は残ったままである。
また、特許文献3では、S含有ステンレス鋼の製造方法に係り、S濃度を精度よく制御する精錬方法も示されている。すなわち、スラグの塩基度CaO/SiOを1~1.5に制御したCaO-SiO系スラグを形成し、Sを0.3wt%~0.6wt%添加することにより、最終的にS濃度を0.15~0.25wt%に制御して、連続鋳造にてスラブを製造する方法である。しかしながら、S添加量が多く、コストが増え、さらに精錬時間が長くなるといった問題があった。さらに酸化物系介在物については、考慮されていない。
このように、被削性あるいは切削性を高めたオーステナイト系ステンレス鋼の化学成分に関する発明や、酸化物制御による硫化物の制御、および熱間加工性を改善する発明などの開示は多数あるが、酸化物系介在物自体がおよぼす影響に着目した発明は少ない。すなわち、S含有鋼の酸化物系介在物による表面性状に関する問題は残ったままと言える。
特開平8-260102号 特開2014-28997号 特開2014-234543号
本発明は、上記問題を鑑み、酸化物系介在物組成を精緻に制御して、酸化物系介在物を無害化させることにより、表面性状に優れたS含有ステンレス鋼を提供することを目的とする。さらに、S含有鋼ステンレス鋼の製造方法に係り、介在物形態を制御しつつ、S濃度を精度よく制御する精錬方法も提案する。
発明者らは、S含有ステンレス鋼に関して、表面欠陥に及ぼす種々の影響について、さまざま操業条件で製造したS含有ステンレス鋼の操業データを基に解析を行った。具体的には、SUS303の連続鋳造時のタンディッシュから採取したサンプルの5μm以上の大きさの介在物組成と介在物個数およびSUS303の板幅1000mm、板厚3.0mmの板の焼鈍酸洗後の外観を評価し、長さ1mm以上の表面欠陥とスラグ組成やメタル組成との関係性、酸化物系介在物組成、精錬方法との関係について解析した。さらに、S歩留やS濃度の制御精度に影響を及ぼす因子についても解析を進めた。
まず、連続鋳造時のタンディッシュから採取したサンプル中の介在物調査したところ、酸素濃度による、酸化物系介在物組成は変わり、酸素濃度が高い場合は、MnO-SiO系介在物、酸素濃度が低い場合は、MgO-Al系介在物、中間的な酸素濃度の場合、CaO-SiO-Al-MgO系介在物であることが判明した。また、酸素濃度が高く、酸化物系介在物がMnO-SiO系介在物の場合、介在物個数が多いことが判明した。
さらに、製品の表面品質を調査した結果、酸化物系介在物のうち、MgO-Al系介在物およびMnO-SiO系介在物が多いほど、表面欠陥が多いことが明らかとなった。これは、これらの酸化物系介在物の融点が高く、連続鋳造の時に使用するイマースノズル耐火物の表面に付着し、焼結により凝集合体しやすく、粗大化後、脱落し、生成した大型の酸化物系介在物が熱間圧延時の表面欠陥の起点になることが明らかとなった。さらに、MnO-SiO系介在物は数が多い為、表面欠陥を増やす要因になっていた。また、CaO-SiO-Al-MgO系介在物は、製品表面で微細な介在物となっており、製品表面で表面欠陥になりづらいことも判明した。
さらに、発明者らは、CaO-SiO-Al-MgO系介在物がMnOを含有することで、表面欠陥が減少することを発見した。これは、CaO-SiO-Al-MgO系介在物にMnOが含有することで、酸化物系介在物の融点が下がり、熱間圧延時の延伸、分断、微細化することで、製品表面での表面欠陥になることを防止する為である。
さらに、発明者らは、MgO-Al系介在物にMnOが含有することで、表面欠陥が減少することを発見した。MgO-Al系介在物は連続鋳造の時に使用するイマースノズル耐火物の表面に付着し、焼結により凝集合体しやすく、粗大化後、脱落し、生成した大型の酸化物系介在物が熱間圧延時の表面欠陥の起点になりやすい酸化物系介在物であるが、MgO-Al系介在物にMnOが含有することで、精錬温度の1600℃でMgO-Al系介在物の周りにMnOを含む低融点の液相酸化物を生成することにより、イマースノズル耐火物の表面に付着した後、焼結により凝集合体することなく、粗大化を軽減する効果があることが分かった。
上記、知見から、S含有鋼の表面性状を向上させるためには、溶鋼中の酸素レベルを制御して、酸化物系介在物をCaO-SiO-Al-MgO-MnO系介在物またはMgO-Al-MnO系介在物に制御することが好ましいことが分かった。特にCaO-SiO-Al-MgO-MnO系介在物が好ましい。制御すべきではない酸化物系介在物はMnO-SiO系介在物およびMgO-Al系介在物である。
しかしながら、CaO-SiO-Al-MgO-MnO系介在物またはAl-MgO-MnO系介在物に制御するために、酸素レベルを下げる必要があり、酸素レベルを下げると添加したSが溶鋼内で式1~3の反応によりスラグに移行するため、Sの歩留が悪く、Sを目標成分までS添加を繰り返す必要があり、精錬時間が長時間になる問題があった。発明者らは、溶鋼とスラグの反応の平衡論的検討、速度論的検討を種々検討して、酸化物系介在物の好ましい組成への制御と、溶鋼中S濃度制御を迅速行うことを両立する精錬方法を開発するに至った。以下に開発した精錬方法について説明する。
開発した精錬方法で最も重要な役割を果たすのは、スラグ中のMgO成分になる。SiまたはSi+Alにて脱酸後、石灰を添加してCaO-SiO-MnO系のスラグを生成するが、さらにMgOを25~45wt%になるようにMgOを添加する。MgOの添加によりスラグはMgO相、MgO-SiO相およびCaO-MgO相からなる固相とCaO-SiO-MnOを主成分とする液相になる。
このスラグへのMgO添加でMgO相、MgO-SiO相およびCaO-MgO相からなる固相が生じることにより、溶鋼中のSと反応する液相スラグ中のCaO量が減少し、溶鋼に添加したSが、溶鋼に歩留やすくなる効果があることが分かった。すなわち式3に示す反応が右方向に進行するが、液相のスラグ中CaO量が少ない為、スラグ中のCaSが飽和して、反応は進行しなくなる。すなわち、MgO添加により、添加したSが溶鋼中に歩留やすくなり、酸素濃度を下げても、S濃度の制御を迅速に精度によく行えることになる。
さらに、スラグへのMgO添加でMgO相、MgO-SiO相およびCaO-MgO相からなる固相が生じることにより、CaOとSiOの一部が固相へ移動し、液相スラブ中のMnO濃度が相対的に上昇し、液相スラグと平衡状態にある溶鋼中に存在する酸化物系介在物のMnO濃度を上昇させる効果があることが分かった。
さらに、本願発明者らは、酸化物介在物の組成制御には脱酸材の添加方法も大きな影響がある事を発見した。本願対象のS含有ステンレス鋼の脱酸材は、Si、Mn、Alが対象になるが、Mnを脱炭後の溶鋼に初めに添加することで、CaO-SiO-Al-MgO-MnO系介在物またはMgO-Al-MnO系介在物にMnOを含有させる効果があることを発見した。Mnを始めに添加する効果を説明する。
脱炭後の酸素濃度が高い溶鋼に、Mnを始めに添加することにより、Mnが酸化することにより溶鋼中にMnO主体の酸化物系介在物が生成し、スラグ中のMnO濃度も高くなる。その後にSi、Alを添加によりMnOが還元されても、酸化物系介在物中のMnOおよびスラグ中のMnOを残るためである。逆に、Si、Alを先に添加した場合、Si、AlはMnより脱酸力が強いため、後から添加したMnはわずかにしか酸化することができず、酸化物系介在物中のMnOは低くなる。
以上のように、S含有鋼の表面性状を向上させるために、溶鋼中の酸素レベルを制御し、酸化物系介在物をCaO-SiO-Al-MgO-MnO系介在物またはAl-MgO-MnO系介在物に制御することと、溶鋼中S濃度制御を迅速行うことを両立する精錬方法を開発するに至った。
次に発明者らは、上記とおり、酸素濃度の適正範囲および適正範囲に制御するための種々の操業条件について、解析をさらに進めた結果、本発明に至った。
すなわち、以下質量%にて、C:0.30以下、Si:0.2~1.0、Mn:1.21.8%、Ni:5~10、Cr:15~20、Mo:0.05~0.60、Cu:0.05~0.60、Al:0.005以下、S:0.15~0.25、Ca:0.0001~0.0010%、Mg:0.0010以下、O:0.0020~0.0080未満、残部Feおよび不可避的不純物からなり、酸化物系介在物が、CaO-SiO-MgO-Al-MnO系介在物およびMgO-Al-MnO系介在物の1種または2種からなり、MgO-Al-MnO系介在物は質量%にてMnOを1~15含有することを特徴とする表面性状に優れたS含有ステンレス鋼である。
さらに、酸化物系介在物のうち、CaO-SiO-MgO-Al-MnO系介在物は質量%にて、MnOを1~15wt%含有していることが好ましい。
さらに、酸化物系介在物のうち、MgO-Al-MnO系介在物の個数が50個数%以下であることが好ましい。
本願発明では、下記の方法で製造するのが好ましい。原料をまず電気炉で溶解した後、AODまたはVODにて脱炭し、Mnを添加後、SiまたはSi+Alを用いてCr還元し、石灰石を投入し、スラグの塩基度CaO/SiOを0.75~1.00未満に制御し、さらにMgO源を投入し、スラグのMgO濃度を25~45wt%に制御したCaO-SiO-MgO-MnO系スラグを形成することを特徴とする表面性状に優優れたステンレス鋼の製造方法である。
本発明のS含有ステンレス鋼板の化学成分限定理由を示す。なお、以下の説明においては、「%」は「mass%」(「質量%」)を意味する。
C:0.30wt%以下
Cは強度を保つために有用な元素であるが、高すぎると鋭敏化を引き起こし、耐食性を低下させる。したがって、0.30wt%以下とした。好ましくは、0.15wt%以下であり、より好ましくは0.07wt%以下である。
Si:0.2~1.0wt%
Siは脱酸に寄与することから本願発明にきわめて重要な元素であるが、1.0wt%を超えて高すぎると酸素濃度を下げるため、式1~3の反応を右に進めることになる。すなわち溶鋼中Sをスラグに移動させてしまう。さらに、溶鋼中の酸素濃度が下がることにより、溶鋼中にMgが過剰に供給され、MgO-Alが生成しやすくなり、表面性状を悪化させる。逆に0.2wt%未満では、酸素濃度が高くなり、介在物個数が増加して、清浄度を悪化させる。そのため、0.2~1.0wt%と規定した。好ましくは、0.4~0.9wt%であり、より好ましくは0.6~0.8wt%である。
Mn:1.0~2.0wt%
MnはSと結合してMnSを形成し、被削性を維持するために重要な元素である。また、介在物を低融点化させるMnOを含ませるのに重要な元素である。その作用効果は1.0wt%未満では、十分発揮されない。しかしながら、2.0wt%より高くなると、熱間加工性を低下させ、さらに酸化物系介在物のMnO含有量が高くなり、そのため、1.0~2.0wt%と規定した。好ましくは、1.1~1.9wt%であり、より好ましくは1.2~1.8wt%である。
Ni:5~10wt%
オーステナイト系ステンレス鋼には必要不可欠な元素で、オーステナイト相を安定させる元素である。低いとδフェライトが急激に増加し、熱間加工性を損ないかつオーステナイト相が安定しないため、下限は5wt%とした。しかし、Niは高価な元素であるため上限は10wt%とした。好ましくは7~9.5wt%であり、より好ましくは、8~9wt%である。
Cr:15~20wt%
Crは、オーステナイト系ステンレス鋼としての耐食性を得る上で必要な元素である。しかし、20wt%を超えるとδ/γ組織のバランスを損ない熱間加工性が低下する。そのため、15~20wt%と規定した。好ましくは17~19wt%であり、より好ましくは18~18.5wt%である。
Mo:0.05~0.60wt%
Moは耐食性を向上する元素である。しかしながら非常に高価な元素であるため、過剰に含有させるとコスト増につながる。さらにMoは、Cr、Feと硬質な金属間化合物であるσ相を生成し、S含有ステンレス鋼の快削性を悪化させる。そのため、0.05~0.60wt%と規定した。好ましくは、0.10~0.58wt%であり、より好ましくは0.20~0.55wt%である。
Cu:0.05~0.60wt%
Cuは、耐酸性を改善する元素であり、その効果は、Cuが0.05wt%以上の場合に有効に働く。しかし、多量に含有させると、熱間加工性を低下させる。そのため、Cu含有量は0.05~0.60wt%と規定した。なお、好ましくは、0.08~0.55wt%であり、より好ましくは、0.10~0.50wt%である。
Al:0.005wt%以下
Alは、強い脱酸材であり溶鋼中の酸素濃度を下げ、清浄度を上げる効果がある。しかしながら、溶鋼中酸素が下がりすぎると、式3の反応が右方向に進み、溶鋼中のSがスラグ相に移行するため、S添加を繰り返すことになる。また、Alが0.005wt%を超えると、表面品質に悪影響を及ぼすMgO-Al介在物を生成しやすくなる。そのため、Al含有量は0.005wt%以下と規定した。好ましくは、0.004wt%以下、より好ましくは、0.003wt%以下である。
S:0.15~0.25wt%
Sはステンレス鋼中のMnと結合し、MnS粒子を形成し、工具による被削性を向上させる元素である。MnS粒子は1μm以下と小さく、S含有ステンレス鋼の凝固過程で生成するため、製品板表面の清浄性には影響しない。その作用効果は、0.15wt%より小さいときは、十分発揮されない。一方、0.25wt%を超えて過剰に添加すると、熱間での割れ感受性を悪化させる。そのため、S含有量は0.15~0.25wt%と定めた。好ましくは、0.155~0.20wt%であり、より好ましくは0.160~0.175wt%である。また、S濃度を精度よく制御には、脱酸反応およびスラグ組成で整理される上述の式1~3の反応式が重要になる。
Ca:0.0001~0.0035wt%
Caは鋼中の非金属介在物の組成を、表面品質の良いCaO-SiO-Al-MgO-MnO系酸化物に制御するために有効な元素である。その効果は、含有量が0.0001wt%未満では得られず、逆に、0.0035wt%を超えて含有させると、熱間圧延時の耳割れが発生する。そのためCa含有量は、0.0001~0.0035wt%と規定した。好ましくは、0.0002~0.0010wt%である。
Caは式4に示すようにスラグ/メタル反応により溶鋼中に混入する成分である。Ca濃度は脱酸レベルと関係があり、Oを0.002~0.008wt%未満およびSi濃度を0.2~1.0wt%に制御することでCa含有量を0.0001~0.0035wt%に制御できる。
2(CaO) + Si = 2Ca + (SiO2) …式4
上記式で、括弧はスラグ内の成分を表し、下線は溶鋼中の成分を表している。
Mg:0.0010wt%以下
Mgは式5に示すように耐火物からの溶損およびスラグ/メタル間反応により不可避的に混入する成分である。表面品質に悪影響を及ぼすMgO-Al系介在物の主要成分であるため、極力下げることが望ましい。そのため、0.0010wt%以下と規定した。好ましくは0.0009wt%以下であり、より好ましくは0.0008wt%以下である。Mg濃度は脱酸レベルと関係があり、Oを0.0080wt%未満およびSi濃度を1.0wt%以下に制御することでMg含有量を0.0010wt%以下に制御できる。
2(MgO) + Si = 2Mg + (SiO2) …式5
上記式で、括弧はスラグまたは耐火物内の成分を表し、下線は溶鋼中の成分を表している。
O:0.0020~0.0080wt%未満
O濃度は本発明において非常に重要な成分である。O濃度が過剰に高いと、酸化物系介在物個数が多くなり、表面欠陥を引き起こす。一方、O濃度が過剰に低いと式1~3の反応式により、鋼中のSがスラグ相へと移行するため、S歩留が悪化し、さらにS濃度調整精度が悪化する。そのため、O濃度は0.0020~0.0080wt%未満と規定した。好ましくは0.0025~0.0075wt%である。より好ましくは0.0030~0.0070wt%である。
酸化物系介在物
本発明では、CaO-SiO-MgO-Al-MnO系介在物およびMgO-Al-MnO系介在物の1種または2種からなり、CaO-SiO-MgO-Al-MnO系介在物は質量%にて、MnOを1~15wt%含有することが好ましく、さらにMgO-Al-MnO系介在物の個数が50個数%以下であることを好ましい態様としている。以下、各酸化物介在物の成分範囲と個数比率限定の根拠を示す。
CaO-SiO -MgO-Al -MnO系介在物
基本的にCaO-SiO-MgO-Al-MnO介在物は、融点が低く、熱間圧延時の延伸、分断、微細化することで、製品表面で介在物起因のヘゲ疵の発生が少なく、制御すべき好ましい酸化物系介在物である。本願では、CaO-SiO-MgO-Al-MnO介在物の各成分範囲は、CaO:15~40wt%、SiO:15~50wt%、Al:5~35wt%、MgO:5~35wt%であり、この成分範囲の酸化物の融点は1300℃以下の組成範囲である。
さらに、MnOは融点を下げる働きを有するため、1wt%以上含有していることが好ましく、好ましくは2wt%以上、より好ましくは3wt%以上含有していることが好ましい。一方、MnOが15wt%以上含有していると、CaO-SiO-MgO-Al-MnO介在物中にMnO-SiO介在物が晶出しやすくなる。MnO-SiO介在物は高融点の介在物で連続鋳造の時に使用するイマースノズル耐火物の表面に付着し、焼結により凝集合体しやすく、粗大化後、脱落し、生成した大型の酸化物系介在物が熱間圧延時の表面欠陥の起点になりやすい酸化物系介在物で避けるべき酸化物介在物になる。そのため上限を15wt%と規定した。
MgO-Al -MnO系介在物
MgO・Alは比較的広い固溶体を持つ化合物である。MgOは10~40wt%、Alは60~90wt%の範囲で固溶体となるので、このように定めた。MgO-Al系介在物は連続鋳造の時に使用するイマースノズル耐火物の表面に付着し、焼結により凝集合体しやすく、粗大化後、脱落し、生成した大型の酸化物系介在物が熱間圧延時の表面欠陥の起点になりやすく、避けるべき酸化物系介在物である。しかしながら、MgO-Al系介在物にMnOが1wt%以上含有することで、精錬温度の1600℃でMgO-Al系介在物の周りにMnOを含む低融点の液相酸化物を生成することにより、イマースノズル耐火物の表面に付着した後、焼結により凝集合体することなく、粗大化を軽減する効果がある。しかしながら、MnOが15wt%を超えて含有すると、MnOとAlが、MnO-Al の化合物を生成し、MgO-Al-MnO系介在物内で晶出する。MnO-Al系酸化物は溶鋼中での挙動はMgO-Alと類似の挙動であり、連続鋳造の時に使用するイマースノズル耐火物の表面に付着し、焼結により凝集合体しやすく、粗大化後、脱落し、生成した大型の酸化物系介在物が熱間圧延時の表面欠陥の起点になる。すなわち、製品の表面性状を良化させるためには、MnO-Al酸化物も避けるべき酸化物系非金属介在物である。上記理由から、MnOは1~15wt%以下と規定した。またCrが10wt%以下含有していても、上記、MgO-Al-MnO系介在物の性情に影響はない。
また、上記理由より、MgO-Al-MnO系介在物の個数が50個数%以下であることが好ましい。
MnO-SiO 系介在物
MnO-SiO系は、本願の酸化物系介在物の対象ではないが、精錬温度の1600℃でMnSiOやMnSiOなどの高融点の化合物の形態をとり、連続鋳造の時に使用するイマースノズル耐火物の表面に付着し、焼結により凝集合体しやすく、粗大化後、脱落し、生成した大型の酸化物系介在物が熱間圧延時の表面欠陥の起点になる。さらに、MnO-SiO系介在物が生成するのは、脱酸が十分に行われていない場合であり、多数の酸化物介在物が溶鋼中に存在している状態である。すなわち、MnO-SiO系は製品の表面性状をよくするためには避けるべき酸化物系介在物である。
製造方法
本願発明では、酸化物系介在物の組成を好ましい組成に制御しながらも、S歩留を高め、かつS濃度を精度よく制御するため製造方法についても提案する。原料をまず電気炉で溶解した後、AODまたはVODにて脱炭し、Mnを添加後、SiまたはSi+Alを用いてCr還元し、石灰石を投入し、スラグの塩基度CaO/SiOを0.75~1.00未満に制御し、さらにMgO源を投入し、スラグのMgO濃度を25~45wt%に制御したCaO-SiO-MgO-MnO系スラグを形成することが好ましい実施様態である。スラグ塩基度、MgO濃度、Mn添加タイミングの限定理由について、以下に記す。
スラグ塩基度:0.75~1.00未満
スラグの塩基度は、式3で示される平衡S濃度に大きな影響を及ぼし、スラグ塩基度が大きいほど、式3の反応は右に進む、すなわち、溶鋼中のSがスラグ相へと移行してしまう。そのため、低いほど、溶鋼中にSを留めることが可能である。しかしながら、0.75未満と低すぎるつまりSiOが高くなると脱酸が不十分となり、酸化物系介在物が多くなる。さらに、Sが過剰に溶鋼に留り、0.25wt%を超えて高くなる恐れがある。一方、スラグ塩基度が1.00以上だと溶鋼中にSが歩留らない。さらには、脱酸を進行させ溶鋼中の酸素濃度をさげる効果もあり、酸素濃度が下がることで介在物個数は減るが、過剰に脱酸が進むと、酸化物系介在物の組成がMgO-Al系酸化物になり、逆に製品表面の清浄性を悪化させる。そのため、本発明では0.75~1.00未満とした。好ましくは0.80~0.98であり、より好ましくは0.85~0.95である。
スラグ中MgO濃度:25~45wt%
スラグ塩基度が0.75~1.00未満にした状態で、スラグのMgO濃度を25wt%以上に制御するとスラグがMgOで飽和状態になり、MgO相、MgO-SiO相およびCaO-MgO相からなる固体が生成する。スラグ中にMgO相、MgO-SiO相およびCaO-MgO相からなる固体が生成することにより、溶鋼中のSと反応する液相スラグ中のCaO量が減少し、溶鋼に添加したSが、溶鋼に歩留やすくなる効果がある。すなわち式3に示す反応が右方向に進行するが、液相のスラグ中CaO量が少ない為、スラグ中のCaSが飽和して、反応は進行しなくなる。すなわち、MgO添加により、添加したSが溶鋼中に歩留やすくなり、酸素濃度を下げても、S濃度の制御を迅速に精度によく行えることになる。
さらに、MgOやMgO-SiO相およびCaO-MgO相が固相として晶出するため、液相中のMnO濃度が相対的に高くなり、その結果、スラグ中のMnOの活量も高くなり、介在物組成を無害であるCaO-SiO-Al-MgO-MnO系介在物へ制御することが可能となる。しかしながら、MgO濃度が45wt%を超えると、CaO-SiO-Al-MgO-MnO系介在物およびMgO-Al-MnO系介在物のMnO含有量が15wt%以上を超える。さらに、式5の反応が右に進み、Mg濃度が0.001wt%を超える。そのため、MgO濃度を25~45wt%とした。好ましくは、26~40wt%であり、より好ましくは27~38wt%である。なお、MgO源はAODまたはVODで投入するのが好ましい。また、特に限定はしないが、MgO源としては、MgO含有の廃レンガを利用するのが良い。例えば、MgO-C、マグクロなどが挙げられる。
また、本発明の酸化物系介在物に適正なMnOを含有させるためには、スラグ中のMnO濃度は0.5~3.0wt%が好ましい。
Mn添加タイミング
本願対象のS含有鋼の脱酸材は、Si、Mn、Alが対象になるが、Mnを脱炭後の溶鋼に初めに添加することで、CaO-SiO-Al-MgO-MnO系介在物またはAl-MgO-MnO系介在物にMnOを含有させる効果がある。脱炭後の酸素濃度が高い溶鋼に、Mnを始めに添加することにより、Mnが酸化することにより溶鋼中にMnO主体の酸化物系介在物が生成し、スラグ中のMnO濃度も高くなり、その後にSi、Alを添加によりMnOが還元されても、酸化物系介在物中のMnOおよびスラグ中のMnOを残るためである。したがって、Mnを添加後、SiまたはSi+Alを用いてCr還元を行うことが好ましい。なお、MnはFe-Mn合金またはメタリックMnを使用し、SiはFe-Si合金またはメタリックSiを使用し、AlはAl粒、Al棒を使用する。
次に実施例を提示して本発明の構成および作用効果をより明らかにするが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。AODまたはVODにおいてCを除去するための酸素吹精(酸化精錬)を行い、Fe-Mn合金、Fe-Si合金添加によるCr還元を行った。その後、石灰石を投入し、スラグ組成の調整を行った。ここでは、成分調整を目的とした精錬を行うと共に、Sを添加した。本操業ではS源としてS純分30wt%のFeSを用いた。AODまたはVODにおける精錬過程の後、取鍋精錬により、Ar攪拌を行いながら、温度の調整を行った。最終的に、連続鋳造によりスラブを製造した。なお、溶鋼重量は50~70トン、スラグ重量は4~6トンであった。
製造したスラブは1000mm幅×154mm厚×6000~8000mm長さのサイズとした。スラブは表面を研削し、1200℃に加熱して熱間圧延を実施し、1000mm幅、厚み3mmの板を製造した。その後、焼鈍、酸洗を行い、表面のスケールを除去した。さらに焼鈍後の板を観察し、外観検査機を用いて、長さ1mm以上の表面欠陥を評価した。
表1に得られたステンレス合金の化学成分、AODまたはVOD精錬終了時のスラグ組成、酸化物系介在物組成、酸化物系金属介在物の個数比率、表面品質およびS濃度制御精度の評価結果を列記する。各評価方法は以下の通りとした。なお、表中に括弧を付した数値は本願請求の範囲を逸脱したものである。発明例の中に括弧を付した数値があるが、これは従属請求項の範囲を満たさないということであり、独立請求項の範囲は満たしている。
1)合金の化学成分およびスラグ組成:蛍光X線分析装置を用いて定量分析を行い、合金の酸素濃度は不活性ガスインパルス融解赤外線吸収法で定量分析を行った。また、スラグが固相と液相になった場合は、鋳造後のスラグを全量粉砕し、均一に混合したスラグからサンプルを採取し、組成を分析した。
2)酸化物系介在物組成: 鋳込み開始直後、タンディッシュにて採取したサンプルを鏡面研磨し、SEM/EDSを用いて、大きさが5μm以上の介在物をランダムに20点測定した。1つの介在物の組成が均一ではなく、2種類以上の相からなる形態であった場合、平均組成で評価している。
3)酸化物系金属介在物の個数比率:上記2)の測定の結果から、全酸化物系介在物個数に対するMgO-Al-MnO系酸化物の個数比率を評価した。
4)表面品質:製品板の表面を観察し、外観検査機にて検出された長さ1mm以上の長さの表面欠陥を測定し、100m当たりの表面欠陥個数で、以下の通り評点を付けた。
◎:100mで表面欠陥1個以下
○:100mで表面欠陥2個以上4個以下
△:100mで表面欠陥5個以上7個以下
×:100mで表面欠陥8個以上
5)S濃度制御精度:S濃度の調整制御に関して、以下の通り評価した。
◎:Sを1回添加し、S濃度を目的の範囲内に制御
○:Sを2回添加して、S濃度を目的の範囲内に制御
△:Sを3回添加して、S濃度を目的の範囲内に制御
×:Sを4回以上添加して、S濃度を目的の範囲内に制御、もしくはSを目的の範囲内に制御できなかった事例
Figure 0007288131000001
Figure 0007288131000002
発明例の1~12は、本発明の範囲を満足していたために、表面欠陥は少なく、またS濃度の制御精度も問題なかった。特に、発明例1~7は、好ましい範囲であったため、表面欠陥評価およびS濃度制御精度は非常に良好であった。
発明例8はC/Sが1.15と高いため、S濃度制御に時間を要した。さらに、脱酸材のAl投入量が多く、Al濃度が0.005wt%と高めになり、酸素濃度も0.0022wt%と低くなり、Al-MgO-MnO介在物の割合が高くなり表面欠陥が発生した。
発明例9は、C/Sが0.74と低く、Siによる脱酸が効かず、O濃度が0.0078wt%と高くなり、結果として、酸化物系介在物の個数も多く表面欠陥が発生した。
発明例10は、スラグ中MgO濃度が45.7wt%と高く、スラグの固相量が多くなったため、スラグ液相中MnO濃度が高くなり、そのため、 CaO-SiO-MgO-Al-MnO系介在物のMnO濃度が16.1wt%と高くなった。また、CaO-SiO-MgO-Al-MnO系介在物内にMnO-SiO系介在物の晶出も観察された。結果として、表面欠陥の判定が△となった。
発明例11は、スラグ中MgO濃度が23.5wt%と低く、精錬中、スラグは完全液相となり、Sの歩留が悪くS濃度制御精度が悪くなった。また、スラグに固相がないため、スラグ中のMnO濃度の濃縮が起こらず、また、脱酸材であるSiを先に入れてからMnを投入したため、CaO-SiO-MgO-Al-MnO系介在物のMnO濃度が0.4wt%と低くなった。結果として、表面欠陥の判定が△となった。
発明例12は、脱酸材のAlの添加量が多く、さらに、スラグへのMgO添加量も多くスラグのMgO濃度は40.4wt%と高めになった。結果としてMgO-Al-MnO介在物の割合が高くなったものであり、酸化物系介在物起因の表面欠陥の判定は△となった。
一方、比較例13~20は、本願発明の範囲を逸脱したものである。以下に、各例について説明する。
比較例13は、スラグ中MgO濃度が、18.5wt%と低く、完全液相となり、スラグのMnO活量が高くならず、さらに、脱酸材のSiとAlを先に投入した後にMnを投入したため、スラグ中のMnO濃度が0.1wt%と低かった。結果として、酸化物系介在物はMnO濃度が0.2wt%のMgO-Al-MnO介在物となり、鋳造中に浸漬ノズル内壁にて、凝集合体し、粗大化し、多量の表面欠陥を引き起こした。表面欠陥の評価は×であった。
比較例14は、脱酸材のAlを多く投入して、Al濃度が0.009wt%高く、精錬末期にMgを添加したため、Mg濃度が0.0018wt%と高くなった。そのため、酸化物系介在物はMnO濃度が0.0wt%のMgO-Al-MnO介在物となり、鋳造中に浸漬ノズル内壁にて、凝集合体し、粗大化し、多量の表面欠陥を引き起こした。表面欠陥の評価は×であった。
比較例15は、Mnを過剰に添加し、Mn濃度が2.12wt%と高くなった。さらにスラグ中MgO濃度が47.0wt%と高く、固相が増え、スラグ液相中のMnO活量が相対的に高くなり、さらにスラグ中のMnO濃度も3.5wt%と高い為、CaO-SiO-MgO-Al-MnO系介在物のMnO濃度が16.4wt%、MgO-Al-MnO介在物のMnO濃度が15.5wt%と高くなった。その結果、CaO-SiO-MgO-Al-MnO系介在物内にはMnO-SiO系介在物も生成し、さらに、MgO-Al-MnO介在物内にはMnO-Al系介在物も観察された。そのため、表面欠陥を評価は×となった。
比較例16は、Siの投入量が少なくSi濃度が0.14wt%と低く、さらにスラグのC/Sが0.72と低く、脱酸が十分効かず、O濃度が0.0092wt%と高く、Caもスラグ/メタル反応により溶鋼中に混入することなく、Ca濃度は0.0000wt%と低くなった。結果、CaO-SiO-MgO-Al-MnO系介在物が生成せず、本願発明の対象ではないが、酸化物系介在物MnO-SiO系になった。これにより酸化物起因の表面欠陥が多く発生し、表面欠陥の判定は×となった。
比較例17は精錬末期にCaを添加したため、Ca濃度が0.0042wt%と高くなった。Ca添加により、CaO-SiO-MgO-Al-MnO系介在物に制御されたが、酸素濃度が高い溶鋼に脱酸能能力の強いCaを添加したため、介在物個数が増加した。さらに、Ca濃度が高い為、熱間圧延時に耳割れが発生した。これにより酸化物起因の表面欠陥が多く発生し、表面欠陥の判定は×となった。
比較例18はSiとAlの添加量が多く、Si濃度が1.10wt%と高く、Al濃度0.007wt%と高く、酸素濃度は0.0015wt%と低くなった。その結果、スラグからCa、Mgが還元され、Ca濃度が0.0036wt%、Mg濃度が0.0012wt%と高くなった。また、スラグのC/Sも1.19と高い為、溶鋼中のSがスラグへの移動が多く、Sの添加を繰り返したが、S濃度は0.141wt%と低くなった。酸化物系介在物は、MnO濃度が0.0wt%のMgO-Al-MnO系介在物になり、連続鋳造の時に使用するイマースノズル耐火物の表面に付着し、凝集合体し、粗大化後、脱落し、生成した大型の酸化物系介在物による表面欠陥が多数発生した。また、Ca濃度が高い為、熱間加工性も悪くなり、熱間加工時に耳割れも発生した。
比較例19は、Mnの投入量が少なく、Mn濃度が0.93wt%と低くなった。さらにスラグ中のMnOも0.1wt%と低くなった。これにより、酸化物系介在物中にMnOが十分に含有されず、CaO-SiO-MgO-Al-MnO系介在物中のMnO濃度は0.1wt%、MgO-Al-MnO系介在物中のMnO濃度は0.2wt%となり、連続鋳造の時に使用するイマースノズル耐火物の表面に付着し、凝集合体し、粗大化後、脱落し、生成した大型の酸化物系介在物による表面欠陥が多数発生した。
比較例20は、Siを過剰に添加し、Si濃度が1.25wt%と高くなった。これにより脱酸が進行し、O濃度が、0.0018wt%と低くなった。Mgが溶鋼に供給が過剰になり、MgO-Al-MnO系介在物中のMnO濃度は0.3wt%となり、連続鋳造の時に使用するイマースノズル耐火物の表面に付着し、凝集合体し、粗大化後、脱落し、生成した大型の酸化物系介在物による表面欠陥が多数発生した。
本発明の技術は、酸化物系介在物組成を精緻に制御して、酸化物系介在物を無害化させることにより、表面性状に優れたS含有ステンレス鋼を提供することができる。

Claims (5)

  1. 以下質量%にて、C:0.30以下、Si:0.2~1.0、Mn:1.21.8%、Ni:5~10、Cr:15~20、Mo:0.05~0.60、Cu:0.05~0.60、Al:0.005以下、S:0.15~0.25、Ca:0.0001~0.0010%、Mg:0.0010以下、O:0.0020~0.0080未満、残部Feおよび不可避的不純物からなり、酸化物系介在物が、CaO-SiO-MgO-Al-MnO系介在物およびMgO-Al-MnO系介在物の1種または2種からなり、MgO-Al-MnO系介在物は質量%にてMnOを1~15含有することを特徴とするS含有ステンレス鋼。
  2. 前記酸化物系介在物のうち、CaO-SiO-MgO-Al-MnO系介在物は質量%にて、MnOを1~15wt%含有することを特徴とする請求項1に記載のS含有ステンレス鋼。
  3. 前記酸化物系介在物のうち、MgO-Al-MnO系介在物の個数が50個数%以下であることを特徴とする請求項1に記載のS含有ステンレス鋼。
  4. 前記酸化物系介在物のうち、MgO-Al-MnO系介在物の個数が50個数%以下であることを特徴とする請求項2に記載のS含有ステンレス鋼。
  5. 請求項1~4のいずれかに記載のS含有ステンレス鋼の精錬にあたり、原料をまず電気炉で溶解した後、AODまたはVODにて脱炭し、Mnを添加後、SiまたはSi+Alを用いてCr還元し、石灰石を投入し、スラグの塩基度CaO/SiOを0.75~1.00未満に制御し、さらにMgO源を投入し、スラグのMgO濃度を25~45wt%に制御したCaO-SiO-MgO-MnO系スラグを形成することを特徴とするS含有ステンレス鋼の製造方法。
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