JP7081775B2 - インクジェット記録用インクセット - Google Patents
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Description
また、アート紙、コート紙等の低吸水性記録媒体や、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂等の合成樹脂フィルムを用いた商業印刷向けの非吸水性記録媒体への印刷が求められている。
特許文献2には、色の鮮明なインクジェット印刷用の水性顔料配合物として、顔料と、共重合したポリマー性カルボン酸と、ノニオン性またはアニオン性界面活性剤等を含有する顔料配合物が記載されている。そして、実施例でイエローインク及びマゼンタインクに関し、各顔料のインクを単独で用いて印刷したこと、C.I.ピグメント・イエロー74のインクとC.I.ピグメント・レッド122のインクとを用いて印刷したこと、又は、C.I.ピグメント・レッド254のインクとC.I.ピグメント・レッド122のインクとを混合したインクとC.I.ピグメント・イエロー74のインクとを用いて印刷したこと、が記載されている。
特許文献3には、インク吐出精度が向上したインクユニットに用いられるインクとして、水不溶性色材、水溶性有機溶剤、疎水性ブロックの少なくとも1種と親水性ブロックの少なくとも1種とをそれぞれ有するブロック共重合体からなる高分子分散剤、及び水を含有するインクが記載されている。そして、実施例では、各顔料のインクを単独で用いて印刷したことが記載されている。
特許文献1及び2で用いられるC.I.ピグメント・レッド122等のキナクリドン顔料は、耐候性に優れていることが知られている。しかしながら、マゼンタ系顔料であるC.I.ピグメント・レッド122とイエロー顔料とを併用して一つの色相を表す画像領域を形成した際に、両者の顔料を含む画像領域の耐候性が十分でないことがあった。特許文献1~3の技術では、屋外使用においてインクジェット記録物のマゼンタ、レッド及びオレンジといった赤系顔料とイエロー顔料とを含む画像領域の色相変化の抑制の程度が十分でなく、色相変化を抑制する技術が求められている。
本発明は、屋外で使用しても赤系顔料とイエロー顔料とを含む画像領域の色相変化が少ない、耐侯性に優れる記録物を得ることができるインクジェット記録用インクセット、該インクセットを用いるインクジェット記録方法及びインクジェット記録物を提供することを課題とする。
なお、本明細書において、「低吸水性」とは、低吸水性、非吸水性を含む概念であり、記録媒体と純水との接触時間100m秒における該記録媒体の吸水量が0g/m2以上10g/m2以下であることを意味する。
また、「画像を形成する」とは、文字や画像を形成する印刷、印字を含む概念であり、「記録物」とは、文字や画像が形成された印刷物、印字物を含む概念である。
すなわち、本発明は、次の[1]~[3]を提供する。
[1]少なくとも水系インク(I)と水系インク(II)を含むインクジェット記録用インクセットであって、
該インク(I)がバルビツール酸由来の構造を含む顔料(A1)を含有し、
該インク(II)がジケトピロロピロール顔料(A2)を含有する、インクジェット記録用インクセット。
[2]前記[1]に記載のインクジェット記録用インクセットをインクジェット記録装置に装着し、下記工程1及び2を含む方法により、記録媒体に画像を形成する、インクジェット記録方法。
工程1:前記水系インク(I)及び前記水系インク(II)の一方を、記録媒体上に吐出する工程
工程2:工程1で得られた記録媒体上に吐出された一方のインクの上に、更に前記水系インク(I)及び前記水系インク(II)の他方を重ねて吐出する工程
[3]記録媒体上に形成された画像の一つの色相を表す領域にバルビツール酸由来の構造を含む顔料(A1)とジケトピロロピロール顔料(A2)とを含む、インクジェット記録物。
本発明のインクジェット記録用インクセット(以下、単に「インクセット」ともいう)は、少なくとも水系インク(I)(以下、単に「インク(I)」ともいう)と水系インク(II)(以下、単に「インク(II)」ともいう)を含むインクジェット記録用インクセットであって、該インク(I)がバルビツール酸由来の構造を含む顔料(A1)を含有し、該インク(II)がジケトピロロピロール顔料(A2)を含有する。
本発明のインクセットは、バルビツール酸由来の構造を含む顔料(A1)とジケトピロロピロール顔料(A2)とを含み、かつ一つの色相を表す画像領域を含有する画像の形成に用いられる。該インクセットにより形成される画像は、少なくとも一部の領域に、バルビツール酸由来の構造を含む顔料(A1)とジケトピロロピロール顔料(A2)とを含み、かつ一つの色相を表す画像領域を有すればよく、インク(I)のみにより形成されてなる画像領域やインク(II)のみにより形成されてなる画像領域を含有してもよい。さらに該インクセットにより形成される画像は、該インクセットがインク(I)及びインク(II)以外の他の水系インクを含む場合には、他の水系インクのみにより形成されてなる画像領域を含有してもよい。
なお、本明細書において、「水系」とは、インクに含有される媒体中で、水が最大割合を占めていることを意味する。
バルビツール酸由来の構造は六員環の一部にアミド結合を有し、ジケトピロロピロール顔料は五員環の一部にアミド結合を有する。そのため、その構造の類似性及び顔料の分子構造による分子間の水素結合等の静電的な相互作用により、電子状態の安定化が起こり、単独で用いるより組み合わせて用いることで、光、熱、湿度等による色相変化が抑制されると考えられる。
〔顔料(A1)〕
水系インク(I)は、バルビツール酸由来の構造を含む顔料(A1)を含有する。
顔料(A1)は、イエロー顔料であり、具体的には、例えばC.I.ピグメント・イエロー150、C.I.ピグメント・イエロー139、C.I.ピグメント・イエロー185等のカラーインデックスでイエローに分類される黄色顔料である。これらの中でも、耐候性を向上させる観点から、アゾ基との結合部を有するバルビツール酸由来の構造を含む下記一般式(1)で表されるアゾバルビツール酸金属錯体又はその互変異性体が好ましい。バルビツール酸金属錯体の互変異性体とはアゾメチン基を含む構造を有するものである。
なお、顔料(A1)は、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
水系インク(II)は、ジケトピロロピロール顔料(A2)(以下、単に「顔料(A2)」ともいう)を含有する。顔料(A2)は、好ましくは下記一般式(2)で表される化合物である。
前記式(2)中、Y1及びY2の炭化水素基としては、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、脂環式炭化水素基、及び芳香族炭化水素基等が挙げられる。
顔料(A2)は、カラーインデックスでマゼンタ、レッド及びオレンジに分類される赤系顔料であり、具体的には、例えばC.I.ピグメント・レッド254、C.I.ピグメント・レッド255、C.I.ピグメント・レッド264、C.I.ピグメント・オレンジ71、及びC.I.ピグメント・オレンジ73等が挙げられる。これらの中でも、耐候性を向上させる観点から、X1及びX2が塩素原子で、Y1及びY2が水素原子であるC.I.ピグメント・レッド254(以下、単に「PR254」ともいう)が好ましい。
なお、顔料(A2)は、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
インク(I)及びインク(II)のうち少なくとも1種は、顔料を分散する観点及び/又は記録媒体への定着性の観点から、更にポリマー(B)を含有することが好ましい。顔料(A1)及び顔料(A2)のうち少なくとも1種は、インク中、ポリマー(B)で分散されてなることが好ましく、顔料(A1)及び顔料(A2)が、それぞれインク(I)及びインク(II)中で、ポリマー(B)で分散されてなることがより好ましい。
市販のポリマー粒子の分散液としては、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂等からなる粒子の分散液が挙げられる。これらの中でも、アクリル系樹脂、ウレタン樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂、スチレン-アクリル樹脂、又は塩化ビニル系樹脂からなる粒子の分散液が好ましい。その具体例としては、「Neocryl A1127」(DSM NeoResins社製、アニオン性自己架橋水系アクリル樹脂)、「ジョンクリル390」(BASFジャパン株式会社製)等のアクリル樹脂、「WBR-2018」「WBR-2000U」(大成ファインケミカル株式会社製)等のウレタン樹脂、「SR-100」、「SR102」(以上、日本エイアンドエル株式会社製)等のスチレン-ブタジエン樹脂、「ジョンクリル7100」、「ジョンクリル734」、「ジョンクリル538」(以上、BASFジャパン株式会社製)等のスチレン-アクリル樹脂及び「ビニブラン701」(日信化学工業株式会社製)等の塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。
モノマー(b-1)は、耐候性を向上させる観点から、ポリマー(B)のモノマー成分として用いられることが好ましい。モノマー(b-1)としては、好ましくは、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい、炭素数6以上22以下の芳香族基を有するビニルモノマーであり、より好ましくはスチレン系モノマー、芳香族基含有(メタ)アクリル酸エステル及び芳香族基含有マクロモノマーから選ばれる少なくとも1種である。
スチレン系モノマーとしては、スチレン、2-メチルスチレン、α-メチルスチレン及びジビニルベンゼン等が挙げられ、スチレン、α-メチルスチレンが好ましい。
芳香族基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、ベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。モノマー(b-1)は、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる少なくとも1種を意味し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートから選ばれる少なくとも1種を意味する。以下においても同義である。
芳香族基含有マクロモノマーの数平均分子量は1,000以上10,000以下が好ましい。なお、数平均分子量は、溶媒として1mmol/Lのドデシルジメチルアミンを含有するクロロホルムを用いたゲル浸透クロマトグラフィー法により、標準物質として分子量既知の単分散ポリスチレンを用いて測定される。
芳香族基含有マクロモノマーを構成する芳香族基含有モノマーとしては、前述のモノマー(b-1)として用いられるスチレン系モノマー及び芳香族基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられ、スチレン、ベンジル(メタ)アクリレートが好ましく、スチレンがより好ましい。
スチレン系マクロモノマーの具体例としては、AS-6(S)、AN-6(S)、HS-6(S)(東亞合成株式会社の商品名)等が挙げられる。
モノマー(b-2)としては、カチオン性基を有するモノマー、アニオン性基を有するモノマーが挙げられ、顔料の分散性の観点、及び耐侯性を向上させる観点から、アニオン性基を有するモノマーが好ましい。該アニオン性基としては、カルボキシ基(-COOM2)、スルホン酸基(-SO3M2)、リン酸基(-OPO3M2 2)等の解離して水素イオンが放出されることにより酸性を呈する基、又はそれらの解離したイオン形(-COO-、-SO3 -、-OPO3 2-、-OPO3 -M2)等が挙げられる。上記化学式中、M2は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを示す。
カルボキシ基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2-メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。
スルホン酸基を有するモノマーとしては、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、3-スルホプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
リン酸基を有するモノマーとしては、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル-2-アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル-2-メタクリロイルオキシエチルホスフェート等が挙げられる。
モノマー(b-2)は、好ましくはアニオン性基を有するモノマーであり、より好ましくはカルボキシ基を有するモノマーであり、更に好ましくは、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸及び2-メタクリロイルオキシメチルコハク酸から選ばれる少なくとも1種であり、より更に好ましくは(メタ)アクリル酸である。
なお、本明細書において、「(イソ又はターシャリー)」及び「(イソ)」は、これらの接頭辞が存在する場合としない場合の双方を意味し、これらの接頭辞が存在しない場合には、ノルマルを示す。
ポリマー(B)製造時における、モノマー(b-1)及び(b-2)のモノマー混合物中における含有量(未中和量としての含有量。以下同じ)又はポリマー(B)中におけるモノマー(b-1)及び(b-2)に由来する構成単位の含有量は、耐候性を向上させる観点から、次のとおりである。
モノマー(b-1)の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、より更に好ましくは40質量%以上、より更に好ましくは50質量%以上、より更に好ましくは55質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、より更に好ましくは60質量%以下である。
モノマー(b-2)の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、より更に好ましくは40質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、より更に好ましくは60質量%以下、より更に好ましくは50質量%以下、より更に好ましくは45質量%以下である。
モノマー(b-2)に対するモノマー(b-1)の質量比〔(b-1)/(b-2)〕は、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.7以上、更に好ましくは1.0以上、より更に好ましくは1.3以上であり、そして、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.7以下、更に好ましくは1.5以下である。
ポリマー(B)は、モノマー混合物を塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により共重合させることによって製造される。これらの重合法の中では、溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒に制限はないが、炭素数1以上3以下の脂肪族アルコール、ケトン類、エーテル類、エステル類等の極性有機溶媒が好ましく、具体的にはメタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトンが挙げられ、メチルエチルケトンが好ましい。
重合の際には、重合開始剤や重合連鎖移動剤を用いることができるが、重合開始剤としては、アゾ化合物が好ましく、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)がより好ましい。重合連鎖移動剤としては、メルカプタン類が好ましく、2-メルカプトエタノールがより好ましい。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成したポリマーを単離することができる。また、得られたポリマーは、再沈澱、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去することができる。
ポリマー(B)は、後述する顔料含有ポリマー粒子の水分散体の生産性を向上させる観点から、重合反応に用いた溶剤を除去せずに、含有する有機溶媒を後述する工程(i)に用いる有機溶媒として用いるために、そのままポリマー(B)の溶液として用いてもよい。
なお、数平均分子量の測定は実施例に記載の方法により行うことができる。
顔料(A1)及び顔料(A2)のうち少なくとも1種は、それぞれ顔料を含有するポリマー(B)粒子(以下、「顔料含有ポリマー(B)粒子」ともいう)の形態であることが好ましく、顔料(A1)及び顔料(A2)が、それぞれ顔料を含有するポリマー(B)粒子として含有されることがより好ましい。
顔料含有ポリマー(B)粒子は、水分散体として下記の工程(i)及び工程(ii)を有する方法により、効率的に製造することができる。
工程(i):ポリマー(B)、有機溶媒、顔料、及び水を含有する混合物(以下、「顔料混合物」ともいう)を分散処理して、顔料を含有するポリマー(B)粒子の分散液を得る工程
工程(ii):工程(i)で得られた分散液から前記有機溶媒を除去して、顔料を含有するポリマー(B)粒子の水分散体(以下、「顔料水分散体」ともいう)を得る工程
工程(i)は、ポリマー(B)、有機溶媒、顔料、及び水を含有する顔料混合物を分散処理して、顔料含有ポリマー(B)粒子の分散液を得る工程である。まず、ポリマー(B)を有機溶媒に溶解させ、ポリマー(B)の有機溶媒溶液を得た後、顔料、水、及び必要に応じて中和剤、界面活性剤等を該有機溶媒溶液に加えて混合して顔料混合物を得た後、分散処理を行い、水中油型の分散液を得る方法が好ましい。ポリマー(B)の有機溶媒溶液に加える順序に制限はないが、水、中和剤、顔料の順に加えることが好ましい。
ポリマー(B)を溶解させる有機溶媒に制限はないが、炭素数1以上3以下の脂肪族アルコール、ケトン類、エーテル類、エステル類等が好ましく、顔料への濡れ性、ポリマー(B)の溶解性及びポリマー(B)の顔料への吸着性を向上させる観点から、炭素数4以上8以下のケトンがより好ましく、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが更に好ましく、メチルエチルケトンがより更に好ましい。
ポリマー(B)を溶液重合法で合成した場合には、重合で用いた溶媒をそのまま用いてもよい。
ポリマー(B)がアニオン性ポリマーの場合、中和剤を用いてポリマー(B)中のアニオン性基を中和してもよい。
中和剤としては、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、有機アミン等が挙げられる。アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウムが挙げられ、中でも水酸化ナトリウムが好ましい。有機アミンとしては、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
中和剤は、耐候性を向上させる観点から、アルカリ金属の水酸化物、アンモニアが好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。また、ポリマー(B)を予め中和しておいてもよい。
中和剤は、十分かつ均一に中和を促進させる観点から、中和剤水溶液として用いることが好ましい。中和剤水溶液の濃度は、上記の観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
ポリマー(B)のアニオン性基の中和度は、顔料水分散体の分散安定性、及び耐候性を向上させる観点から、好ましくは20モル%以上、より好ましくは25モル%以上、更に好ましくは30モル%以上であり、また、好ましくは300モル%以下、より好ましくは200モル%以下、更に好ましくは100モル%以下、より更に好ましくは70モル%以下、より更に好ましくは50モル%以下である。
ここで中和度とは、中和剤のモル当量数を中和前のポリマー(B)のイオン性官能基のモル当量数で除した値、即ち「中和剤のモル当量数/ポリマー(B)のイオン性官能基のモル当量数」の値である。本来、中和度は100モル%を超えることはないが、本発明では中和剤のモル当量数から計算するため、中和剤を過剰に用いた場合は100モル%を超える。
顔料の顔料混合物中の含有量は、顔料水分散体の分散安定性を向上させる観点、及び耐侯性を向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは23質量%以下である。
ポリマー(B)の顔料混合物中の含有量は、顔料水分散体の分散安定性を向上させる観点、及び耐侯性を向上させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下である。
有機溶媒の顔料混合物中の含有量は、顔料への濡れ性及びポリマー(B)の顔料への吸着性を向上させる観点から、好ましくは2質量%以上、より好ましくは4質量%以上、更に好ましくは6質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
水の顔料混合物中の含有量は、顔料水分散体の分散安定性を向上させる観点、及び生産性を向上させる観点から、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上であり、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。
ポリマー(B)に対する顔料の顔料混合物中の質量比〔顔料/ポリマー(B)〕は、顔料水分散体の分散安定性を向上させる観点、及び耐侯性を向上させる観点から、好ましくは30/70以上、より好ましくは40/60以上、更に好ましくは50/50以上、より更に好ましくは60/40以上、より更に好ましくは70/30以上であり、そして、好ましくは90/10以下、より好ましくは85/15以下、更に好ましくは80/20以下である。
工程(i)においては、前記顔料混合物を分散処理して、顔料含有ポリマー(B)粒子の分散液を得る。分散液を得る分散方法に特に制限はない。剪断応力による分散だけで顔料粒子の平均粒径を所望の粒径となるまで微粒化することもできるが、好ましくは顔料混合物を予備分散させた後、更に剪断応力を加えて本分散を行い、顔料粒子の平均粒径を所望の粒径とするよう制御することが好ましい。
工程(i)の予備分散における温度は、好ましくは0℃以上であり、そして、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下、更に好ましくは25℃以下である。分散時間は好ましくは0.5時間以上、より好ましくは0.8時間以上であり、そして、好ましくは30時間以下、より好ましくは10時間以下、更に好ましくは5時間以下である。
顔料混合物を予備分散させる際には、アンカー翼、ディスパー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置;ペイントシェーカー、ビーズミル等のメディア分散機が挙げられる。これらの中でも、顔料を小粒子径化する観点から、メディア分散機を用いることが好ましい。
メディア分散機の撹拌翼周速は、水分散液の製造効率の観点から、好ましくは5m/s以上、より好ましくは10m/s以上であり、そして、好ましくは25m/s以下、より好ましくは15m/s以下である。
メディア分散機は、循環方式、連続方式のいずれも採用することができるが、生産効率の観点から、循環方式が好ましい。
分散時間は、顔料を十分に微細化する観点から、好ましくは0.3時間以上、より好ましくは1時間以上であり、また、水分散液の製造効率の観点から、好ましくは200時間以下、より好ましくは50時間以下である。
高圧ホモジナイザーを用いて本分散を行う場合、処理圧力やパス回数の制御により、顔料を所望の粒径になるように制御することができる。
処理圧力は、生産性及び経済性の観点から、好ましくは60MPa以上、より好ましくは100MPa以上、更に好ましくは130MPa以上であり、そして、好ましくは200MPa以下、より好ましくは180MPa以下である。
また、パス回数は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、そして、好ましくは30以下、より好ましくは15以下、更に好ましくは10以下、より更に好ましくは
5以下である。
工程(ii)では、工程(i)で得られた分散液から前記有機溶媒を除去して、顔料含有ポリマー(B)粒子の水分散体(顔料水分散体)を得る工程である。該分散液から、公知の方法で有機溶媒を除去することで、顔料水分散体を得ることができる。得られた顔料水分散体中の有機溶媒は実質的に除去されていることが好ましいが、本発明の目的を損なわない限り、残存していてもよい。残留有機溶媒の量は、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下である。
また必要に応じて、有機溶媒を留去する前に分散体を加熱撹拌処理することもできる。
本発明において、耐候性を向上させる観点から、ポリマー(B)は架橋構造を有することが好ましい。
ポリマー(B)を架橋する方法としては、工程(i)及び工程(ii)に加えて、更に下記の工程(iii)を有することが好ましい。これにより、顔料含有ポリマー(B)粒子の水分散体(顔料水分散体)において、顔料含有ポリマー(B)粒子を構成するポリマー(B)に架橋構造を導入することができる。
工程(iii):工程(ii)で得られた水分散体と架橋剤を混合し、架橋処理してなる顔料を含有するポリマー(B)粒子の水分散体を得る工程
架橋剤の好適例としては、分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物、分子中に2以上のオキサゾリン基を有する化合物、分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物等が挙げられ、これらの中でも、好ましくは分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物であり、より好ましくはトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルである。
顔料水分散体中の顔料含有ポリマー(B)粒子の平均粒径は、粗大粒子を低減し、水性インクの連続吐出性を向上させる観点から、好ましくは40nm以上、より好ましくは60nm以上、更に好ましくは80nm以上であり、そして、好ましくは150nm以下、より好ましくは140nm以下、更に好ましくは130nm以下である。
顔料水分散体中の顔料含有ポリマー(B)粒子の平均粒径は、実施例に記載の方法により測定される。
インク(I)及びインク(II)のうち少なくとも1種は、インクの保存安定性を向上させる観点、及び良好な記録物を得る観点から、更に水溶性有機溶媒を含有することが好ましく、インク(I)及びインク(II)のいずれもが更に水溶性有機溶媒を含有することがより好ましい。水溶性有機溶媒の「水溶性」とは、水と任意の割合で混合できる性質を意味する。
水溶性有機溶媒としては、多価アルコール、多価アルコールアルキルエーテル、含窒素複素環化合物等が挙げられる。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
多価アルコールアルキルエーテルとしては、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル等が挙げられる。
含窒素複素環化合物としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、1,3-ジメチルイミダゾリジノン等が挙げられる。
これらの中でも、好ましくは多価アルコールであり、より好ましくはジエチレングリコール、プロピレングリコール及びグリセリンから選ばれる1種以上であり、更に好ましくはプロピレングリコール及びグリセリンから選ばれる1種以上であり、より更に好ましくはプロピレングリコールである。水溶性有機溶媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
インク(I)及びインク(II)のうち少なくとも1種は、更に界面活性剤を含有することが好ましく、インク(I)及びインク(II)のいずれもが更に界面活性剤を含有することがより好ましい。界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはシリコーン系性界面活性剤である。
本発明のインク(I)及びインク(II)の各成分の含有量及びインク物性は以下のとおりである。
(顔料の含有量)
顔料(A1)又は顔料(A2)の含有量は、それぞれインク(I)又はインク(II)中、インクの画像濃度を向上させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上である。また、溶媒揮発時のインクの増粘化を抑制し、インクの保存安定性及び吐出安定性を向上させる観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましく5質量%以下である。
(ポリマー(B)の含有量)
ポリマー(B)の含有量は、それぞれインク(I)又はインク(II)中、インクの保存安定性及び吐出安定性を向上させる観点から、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、そして、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。
インク(I)又はインク(II)中の顔料が顔料含有ポリマー(B)粒子の形態である場合、インク中の顔料含有ポリマー(B)粒子の平均粒径は、粗大粒子を低減し、水系インクの連続吐出性を向上させる観点から、好ましくは40nm以上、より好ましくは60nm以上、更に好ましくは80nm以上であり、そして、好ましくは150nm以下、より好ましくは140nm以下、更に好ましくは130nm以下である。
インク(I)又はインク(II)中の顔料含有ポリマー(B)粒子は、該粒子の膨潤や収縮、該粒子間の凝集が生じないことが好ましく、インク(I)又はインク(II)中の顔料含有ポリマー(B)粒子の平均粒径は、前記顔料水分散体中の平均粒径と同じであることが好ましい。
インク(I)又はインク(II)中の顔料含有ポリマー(B)粒子の平均粒径は、実施例に記載の方法により測定される。
水溶性有機溶媒の含有量は、それぞれインク(I)又はインク(II)中、インクの吐出安定性を向上させる観点から、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは35質量%以上、より更に好ましくは40質量%以上であり、そして、50質量%未満であり、好ましくは48質量%以下である。
(界面活性剤の含有量)
界面活性剤の含有量は、それぞれインク(I)又はインク(II)中、良好な記録物を得る観点から、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.02質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上であり、そして、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
(水の含有量)
水の含有量は、それぞれインク(I)又はインク(II)中、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上であり、そして、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは55質量%以下である。
本発明のインク(I)又はインク(II)には、それぞれ上記成分の他に、通常用いられる粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤等の各種添加剤を添加することができる。
インク(I)及びインク(II)の20℃における静的表面張力は、耐侯性を向上させる観点から、それぞれ、好ましくは22mN/m以上、より好ましくは24mN/m以上、更に好ましくは25mN/m以上であり、そして、好ましくは50mN/m以下、より好ましくは45mN/m以下、更に好ましくは40mN/m以下である。静的表面張力は、実施例に記載の方法により測定される。
インク(I)及びインク(II)の32℃の粘度は、耐侯性を向上させる観点から、それぞれ、好ましくは2.0mPa・s以上、より好ましくは3.0mPa・s以上、更に好ましくは4.0mPa・s以上であり、そして、好ましくは12mPa・s以下、より好ましくは9.0mPa・s以下、更に好ましくは7.0mPa・s以下である。粘度は、実施例に記載の方法により測定される。
本発明のインクジェット記録方法は、前述のインクセットをインクジェット記録装置に装着し、下記工程1及び2を含む方法により、記録媒体に画像を形成する。
工程1:インク(I)及びインク(II)の一方を、記録媒体上に吐出する工程
工程2:工程1で得られた記録媒体上に吐出された一方のインクの上に、更にインク(I)及びインク(II)の他方を重ねて吐出する工程
インク液滴の吐出方式は、ピエゾ方式、サーマル方式のいずれも採用することができるが、耐候性を向上させる観点から、ピエゾ方式が好ましい。ピエゾ方式では、多数のノズルが、各々圧力室に連通しており、この圧力室の壁面をピエゾ素子で振動させることにより、ノズルからインク液滴を吐出させる。
記録ヘッドの印加電圧は、高速印刷の効率性等の観点から、好ましくは5V以上、より好ましくは10V以上、更に好ましくは15V以上であり、そして、好ましくは40V以下、より好ましくは35V以下、更に好ましくは30V以下である。
駆動周波数は、高速印刷の効率性等の観点から、好ましくは10kHz以上、より好ましくは20kHz以上であり、そして、乾燥性の観点から、好ましくは300kHz以下、より好ましくは150kHz以下、更に好ましくは90kHz以下、より更に好ましくは50kHz以下である。
インクの吐出液滴量は、インク液滴の着弾位置の精度を維持する観点及び画質向上の観点から、1滴あたり好ましくは1pL以上、より好ましくは2pL以上、更に好ましくは3pL以上、より更に好ましくは4pL以上であり、そして、好ましくは30pL以下、より好ましくは25pL以下、更に好ましくは20pL以下である。
記録媒体の搬送速度は、耐侯性を向上させる観点から、好ましくは20m/min以上、より好ましくは70m/min以上、更に好ましくは100m/min以上である。記録媒体の搬送速度は、インクを吐出した後の記録物の乾燥負荷を抑制する観点から、好ましくは200m/min以下、より好ましくは150m/min以下、更に好ましくは120m/min以下である。記録媒体の搬送速度とは、記録媒体に画像を形成する際に移動する方向に対して移動する速度のことである。
記録ヘッドがインクを吐出する領域と対面する記録媒体面は、好ましくは28℃以上、より好ましくは30℃以上、更に好ましくは31℃以上であり、そして、好ましくは45℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは38℃以下にすることが好ましい。
アート紙としては、OKウルトラアクアサテン、OK金藤、SA金藤、サテン金藤(以上、王子製紙株式会社製)、ハイパーピレーヌ、シルバーダイア(以上、日本製紙株式会社製)、グリーンユトリロ(大王製紙株式会社製)、パールコート、ニューVマット(以上、三菱製紙株式会社製)等が挙げられる。
コート紙としては、例えば、「OKトップコート+」(王子製紙株式会社製、坪量104.7g/m2、60°光沢度49.0、接触時間100m秒における吸水量(以下の吸水量は同じ)4.9g/m2)、多色フォームグロス紙(王子製紙株式会社製、104.7g/m2、60°光沢度36.8、吸水量5.2g/m2)、UPMFinesse Gloss(UPM社製、115g/m2、60°光沢度27.0、吸水量3.1g/m2)、UPMFinesse Matt(UPM社製、115g/m2、60°光沢度5.6、吸水量4.4g/m2)、TerraPress Silk(Stora Enso社製、80g/m2、60°光沢度6.0、吸水量4.1g/m2)、LumiArt(Stora Enso社製、90g/m2、60°光沢度26.3)等が挙げられる。
合成樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、塩化ビニルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ナイロンフィルム等が挙げられる。これらのフィルムは、必要に応じてコロナ処理等の表面処理を行っていてもよい。
一般的に入手できる合成樹脂フィルムとしては、例えば、ルミラーT60(東レ株式会社製、ポリエチレンテレフタレート、厚み125μm、60°光沢度189.1、吸水量2.3g/m2)、PVC80B P(リンテック株式会社製、塩化ビニル、60°光沢度58.8、吸水量1.4g/m2)、カイナスKEE70CA(リンテック株式会社製、ポリエチレン)、ユポSG90 PAT1(リンテック株式会社製、ポリプロピレン)、ボニールRX(興人フィルム&ケミカルズ株式会社製、ナイロン)等が挙げられる。
本発明のインクジェット記録方法により得られるインクジェット記録物は、記録媒体上に形成された画像の一つの色相を表す領域にバルビツール酸由来の構造を含む顔料(A1)とジケトピロロピロール顔料(A2)とを含む。一つの色相を表す画像領域にバルビツール酸由来の構造を含む顔料(A1)とジケトピロロピロール顔料(A2)とを含むため、バルビツール酸由来の構造は六員環の一部にアミド結合を有し、ジケトピロロピロール顔料は五員環の一部にアミド結合を有するため、その構造の類似性及び顔料の分子構造による分子間の水素結合等の静電的な相互作用により、電子状態の安定化が起こり、屋外で使用しても赤系顔料とイエロー顔料とを含む画像領域の色相変化が少ない、耐侯性に優れる記録物を得ることができる。
N,N-ジメチルホルムアミドに、リン酸及びリチウムブロマイドをそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、ゲル浸透クロマトグラフィー法〔東ソー株式会社製GPC装置(HLC-8120GPC)、東ソー株式会社製カラム(TSK-GEL、α-M×2本)、流速:1mL/min〕により、標準物質として分子量が既知の単分散ポリスチレンを用いて測定した。
30mLの軟膏容器にデシケーター中で恒量化した硫酸ナトリウム10.0gを量り取り、そこへサンプル約1.0gを添加して、混合させた後、正確に秤量し、105℃で2時間維持して、揮発分を除去し、更にデシケーター内で15分間放置し、質量を測定した。揮発分除去後のサンプルの質量を固形分として、添加したサンプルの質量で除して固形分濃度とした。
レーザー粒子解析システム(大塚電子株式会社、型番:ELS-8000、キュムラント解析)を用いて測定されるキュムラント平均粒径を、水分散体又は水系インク中の顔料含有ポリマー(B)粒子の平均粒径とした。測定する粒子の濃度を、約5×10-3%になるよう水で希釈した分散液を用いた。測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力した。
表面張力計(協和界面科学株式会社製、商品名:CBVP-Z)を用いて、白金プレートを5gの水系インクの入った円柱ポリエチレン製容器(直径3.6cm×深さ1.2cm)に浸漬させ、20℃にて水系インクの静的表面張力を測定した。
水系インクをE型粘度計(東機産業株式会社製、RE80L)により、標準ローター(1°34’×R24)を用いて測定温度32℃、測定時間1分の条件で測定した。回転数は測定可能な回転数で最も大きいものを用いた。ただし、最高100rpmを用いた。
水系インクをガラス製密閉容器に充填し、70℃で28日間静置して保存した。この保存後の水系インクを試料とし、前記「(5)水系インクの粘度の測定」と同様の方法で粘度を測定し、「保存後の粘度」とした。下記式にて、粘度変化率を算出した。粘度変化率が100%に近いほど、保存安定性が良好である。
粘度変化率(%)=(保存後の粘度/保存前の粘度)×100
記録媒体と純水との接触時間100m秒における該記録媒体の吸水量は、自動走査吸液計(熊谷理機工業株式会社製、KM500win)を用いて、23℃、相対湿度50%の条件下で、純水の接触時間100m秒における転移量を該吸水量として測定した。測定条件を以下に示す。
「Spiral Method」
Contact Time : 0.010~1.0(sec)
Pitch (mm) : 7
Length Per Sampling (degree) : 86.29
Start Radius (mm) : 20
End Radius (mm) : 60
Min Contact Time (ms) : 10
Max Contact Time (ms) : 1000
Sampling Pattern (1 - 50) : 50
Number of Sampling Points (> 0) : 19
「Square Head」
Slit Span (mm) : 1
Slit Width (mm) : 5
合成例1
スチレン(和光純薬工業株式会社製)108部、α-メチルスチレン(和光純薬工業株式会社製)8部及びアクリル酸(和光純薬工業株式会社製)84部を混合しモノマー混合液を調製した。反応容器内に、メチルエチルケトン(MEK)20部、2-メルカプトエタノール(重合連鎖移動剤)0.3部、及び前記モノマー混合液の10%を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に、行った。
一方、滴下ロートに、モノマー混合液の残りの90%、前記重合連鎖移動剤0.27部、MEK60部及びアゾ系ラジカル重合開始剤〔2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、商品名:V-65、和光純薬工業株式会社製〕2.2部の混合液を入れ、窒素雰囲気下、反応容器内の前記モノマー混合液を撹拌しながら65℃まで昇温し、滴下ロート中の混合液を3時間かけて滴下した。滴下終了から65℃で2時間経過後、前記重合開始剤0.3部をMEK5部に溶解した溶液を加え、更に65℃で2時間、70℃で2時間熟成させ、ポリマー(B1)溶液〔ポリマー(B1)の数平均分子量:10,500、各モノマー由来の構成単位の質量比(スチレン/α-メチルスチレン/アクリル酸)=54/4/42〕を得た。
製造例1-1
(工程(i))
合成例1で得られたポリマー(B1)溶液を減圧乾燥させて得られたポリマー(B1)58.1部をMEK71.5部と混合し、更に5N水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム固形分16.9%、和光純薬工業株式会社製、容量滴定用)23.6部を加え、ポリマー(B1)のカルボキシ基のモル数に対する水酸化ナトリウムのモル数の割合が40モル%になるように中和した(中和度40モル%)。
更にイオン交換水695.1部を加え、その中に顔料(PR254、BASF社製「IRGAZIN RED L 3630」)200gを加え、ディスパー(淺田鉄工株式会社製、ウルトラディスパー:商品名)を用いて、20℃でディスパー翼を7,000rpmで回転させる条件で60分間撹拌し、顔料混合物を得た。
得られた顔料混合物をメディア分散機(寿工業株式会社製「ウルトラ・アペックス・ミル」、形式:UAM-1)を用いて、分散メディア粒子として粒径0.05mmのジルコニアビーズ(株式会社ニッカトー製「YTZボール」、造粒法により作製された分散メディア粒子)を充填し(ビーズ充填率80%)、撹拌翼周速12m/s、循環流量500mL/minの条件で2時間、循環方式による分散処理を行った。
次に、マイクロフルイダイザー(Microfluidics社製、高圧ホモジナイザー)を用いて、150MPaの圧力で3パスの、高圧分散方式での分散処理を行い、顔料(PR254)含有ポリマー(B1)粒子の分散液を得た。
工程(i)で得られた分散液1,000gを2Lナスフラスコに入れ、イオン交換水666.7gを加え(固形分濃度15.0%)、回転式蒸留装置「ロータリーエバポレーター N-1000S」(東京理化器械株式会社製)を用いて、回転数50rpmで、32℃に調整した温浴中、0.09MPaの圧力で3時間保持して、有機溶媒を除去した。更に、温浴を62℃に調整し、圧力を0.07MPaに下げて固形分濃度25.0%になるまで濃縮し、顔料(PR254)含有ポリマー(B1)粒子の水分散体D’1を得た。
工程(ii)で得られた水分散体D’1を500mlアングルローターに投入し、高速冷却遠心機「himac CR22G」(日立工機株式会社製、設定温度20℃)を用いて7,000rpmで20分間遠心分離した後、液層部分を5μmのメンブランフィルター「Minisart」(Sartorius社製)で濾過した。
濾液400g(PR254 76.0g、ポリマー(B1) 22.1g)に、イオン交換水61.61g及びプロキセルLVS(アーチケミカルズジャパン株式会社製:防黴剤、有効分20%)1.08gを添加し、更に架橋剤としてトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、商品名「デナコールEX-321L」)4.86gを添加し、70℃で3時間撹拌して架橋処理を行い、架橋構造を有するポリマー(B1)とした。25℃に冷却後、前記5μmフィルターで濾過し、更に固形分濃度は22.0%になるようにイオン交換水を加えて、架橋処理されてなる顔料(PR254)含有ポリマー(B1)粒子の水分散体D1を得た。得られた水分散体D1中の顔料(PR254)含有ポリマー(B1)粒子の平均粒径は126nmであった。
製造例1-1の顔料(PR254、BASF社製「IRGAZIN RED L 3630」)を表1に示す顔料に変更した以外は、製造例1-1と同様の方法にて、架橋処理されてなる顔料含有ポリマー(B)粒子の水分散体D2~D4を得た。得られた各水分散体中の顔料含有ポリマー(B)粒子の平均粒径を表1に示す。
なお、表1中の各表記は以下のとおりである。
PR122:C.I.ピグメント・レッド122(キナクリドン顔料、大日精化工業株式会社製、商品名「クロモファインレッド6111T」)
PY150:C.I.ピグメント・イエロー150(ランクセス社製、商品名「BAYSCRIPT Yellow 4GF」)
PY74:C.I.ピグメント・イエロー74(モノアゾ顔料、大日精化工業株式会社製、商品名「ファーストイエロー011」)
B1:ポリマー(B1)(各モノマー由来の構成単位の質量比:スチレン/α-メチルスチレン/アクリル酸=54/4/42)
EX-321L:デナコールEX-321L(トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル)
製造例2-1
製造例1-1で得られた架橋処理されてなる顔料(PR254)含有ポリマー(B1)粒子の水分散体D1(固形分濃度22.0%)24.62g、プロピレングリコール(和光純薬工業株式会社製)46.0g、シリコーン系界面活性剤(日信化学工業株式会社製、商品名「シルフェイスSAG005」、主成分:ポリエーテル変性シリコーン、動粘度:170mm2/s、HLB:7)0.05g、合計量が100gとなるようイオン交換水 29.33gを添加し、インク1を製造した。得られたインク1中の顔料含有ポリマー(B)粒子の平均粒径を表2に示す。
なお、20℃における静的表面張力は37mN/m、32℃の粘度は5.75mPa・sであった。
製造例2-1において、製造例1-1で得られた水分散体D1(固形分濃度22.0%)を表2に示す水分散体(固形分濃度22.0%)に変更した以外は製造例2-1と同様にして、インク2~4を製造した。得られた各インク中の顔料含有ポリマー(B)粒子の平均粒径を表2に示す。
実施例1
(工程1)
前記で得られた水系インクを用いて、記録媒体としてコート紙「OKトップコート+」(王子製紙株式会社株式会社製)上に、以下のインクジェット記録条件により画像を形成した。
温度25±1℃、相対湿度30±5%の環境下で、インクジェット記録ヘッド(京セラ株式会社製、「KJ4B-HD06MHG-STDV」、ピエゾ式)を装備した印刷評価装置(株式会社トライテック製)に、インク(I)としてインク3及びインク(II)としてインク1を充填した。以下のインクジェット記録条件を設定し、記録媒体の長手方向と搬送方向が同じになる向きに、前記記録媒体を搬送台に減圧で固定した。
前記印刷評価装置に印刷命令を転送し、インク(II)を記録媒体上に吐出し、10cm×10cmのDuty100%のベタ画像を印刷した。
(インクジェット記録条件)
記録ヘッドの印加電圧:26V
駆動周波数:20kHz
吐出液適量:12pL
記録ヘッド内の温度:32℃
解像度:600dpi
吐出前フラッシング回数:200発
負圧:-4.0kPa
インク(I)とインク(II)の吐出間隔が約5秒となるように、前記印刷評価装置に印刷命令を転送し、工程1で得られた記録媒体上に吐出されたインク(II)の上に、インク(I)を重ねて吐出し、10cm×10cmのDuty100%のベタ画像を印刷し、室温25℃にて1日放置し、インクジェット記録物を得た。
実施例1において、インクセットを表3に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして、インクジェット記録物を得た。
実施例1において、工程1のインク(II)を表3に示すインクに変更し、実施例1の工程2は行わずに工程1のみを実施例1と同様にして行い、室温25℃にて1日放置し、インクジェット記録物を得た。
実施例1において、工程2のインク(I)を表3に示すインクに変更し、実施例1の工程1は行わずに工程2のみを実施例1と同様にして行い、インクジェット記録物を得た。
前記で得られたインクジェット記録物をウエザオメーター(アトラス社製、仕様:Ci3000+F)にて、照度60W、温度40℃、湿度75%、ブラックパネル温度65℃、内部フィルターをソーダライム、外部フィルターをソーダライムの条件で24時間の耐候性促進試験を実施後、光学濃度計SpectroEye(グレタグマクベス社製)を用いて任意の10箇所のL*a*b*を測定し、該試験前後のL*a*b*より色相変化量ΔEを算出した。ΔEが小さいほど耐候性が良好である。結果を表3に示す。
色相変化量ΔE=[(L* 1-L* 2)2+(a* 1-a* 2)2+(b* 1-b* 2)2]1/2
(試験前のL*a*b*値:L* 1、a* 1、b* 1)
(試験後のL*a*b*値:L* 2、a* 2、b* 2)
実施例1は、PY150を含有するインク3とPR254を含有するインク1を単独で用いた参考例1及び3の色相変化量ΔEから算出される相加平均値より色相変化量ΔEが小さく、耐候性が相乗的に改善されている。このことから、インク(I)及びインク(II)に含まれる顔料(A1)と顔料(A2)がその構造の類似性及び顔料の分子構造による分子間の水素結合等による静電的な相互作用により、電子状態の安定化が起こっていると考えられる。
一方、比較例1~3は、顔料(A1)を含有するインク(I)と顔料(A2)を含有するインク(II)を組み合わせて用いていないため、実施例1のインクセットと比べて色相変化量ΔEが大きく、耐侯性が劣っていることが分かる。
参考性2は、PR122を含有するインク2を単独で用いたものであり耐候性は良好である。しかしながら、比較例1及び2は、PY74を含有するインク4又はPY150を含有するインク3と、PR122を含有するインク2とを組み合わせて用いたものであるが、それぞれのインクを単独で用いた参考例2~4と比べて、色相変化量ΔEは相加平均的な数値しか得られなかったことが分かる。
また、PY74を含有するインク4とPR254を含有するインク1を組み合わせて用いた比較例3においても、それぞれのインクを単独で用いた参考例1及び4と比べて、色相変化量ΔEは相加平均的な数値しか得られなかったことが分かる。
Claims (12)
- 少なくとも水系インク(I)と水系インク(II)を含むインクジェット記録用インクセットを用いるインクジェット記録方法であって、
該水系インク(I)がバルビツール酸由来の構造を含む顔料(A1)を含有し、
該水系インク(II)がジケトピロロピロール顔料(A2)を含有し、
該顔料(A1)が、C.I.ピグメント・イエロー150であり、かつ該顔料(A2)がC.I.ピグメント・レッド254であり、
該水系インク(I)及び該水系インク(II)のいずれもが、更に水溶性有機溶媒を含有し、
該水溶性有機溶媒の含有量が、それぞれ該水系インク(I)及び該水系インク(II)中、35質量%以上50質量%未満であり、
該インクジェット記録用インクセットをインクジェット記録装置に装着し、下記工程1及び2を含む方法により、記録媒体に画像を形成する、インクジェット記録方法。
工程1:前記水系インク(II)を記録媒体上に吐出する工程
工程2:工程1で得られた記録媒体上に吐出された前記水系インク(II)の上に、前記水系インク(I)を重ねて吐出する工程 - 前記水溶性有機溶媒が、多価アルコール、多価アルコールアルキルエーテル、及び含窒素複素環化合物から選ばれる1種以上である、請求項1に記載のインクジェット記録方法。
- 前記水系インク(I)及び前記水系インク(II)にそれぞれ含まれる顔料(A1)と顔料(A2)の質量比〔(A1)/(A2)〕が10/90以上90/10以下である、請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
- 前記顔料(A1)及び前記顔料(A2)が、それぞれ前記水系インク(I)及び前記水系インク(II)中、ポリマー(B)で分散されてなる、請求項1~3のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
- 前記ポリマー(B)が、ビニルモノマーの付加重合により得られるビニル系ポリマーである、請求項4に記載のインクジェット記録方法。
- 前記ポリマー(B)が芳香族基含有ポリマーである、請求項4又は5に記載のインクジェット記録方法。
- 前記ポリマー(B)が、芳香族基含有モノマー(b-1)由来の構成単位とイオン性官能基を有するモノマー(b-2)由来の構成単位を含むビニル系ポリマーである、請求項4~6のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
- 前記ポリマー(B)中におけるイオン性官能基を有するモノマー(b-2)由来の構成単位に対する芳香族基含有モノマー(b-1)由来の構成単位の含有量の質量比〔(b-1)/(b-2)〕が、0.5以上1.5以下である、請求項7に記載のインクジェット記録方法。
- 前記ポリマー(B)中の芳香族基含有モノマー(b-1)由来の構成単位及びイオン性官能基を有する(b-2)由来の構成単位の合計含有量が、80質量%以上である、請求項7又は8に記載のインクジェット記録方法。
- 前記水系インク(I)及び前記水系インク(II)中の前記顔料(A1)及び前記顔料(A2)が、それぞれ顔料を含有するポリマー(B)粒子として含有され、該顔料を含有するポリマー(B)粒子を構成するポリマー(B)に架橋構造が導入されてなる、請求項4~9のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
- 前記ポリマー(B)が、架橋剤で架橋されてなる、請求項10に記載のインクジェット記録方法。
- 前記水系インク(I)又は前記水系インク(II)中のポリマー(B)に対する顔料の含有量の質量比〔顔料/ポリマー(B)〕が30/70以上90/10以下である、請求項4~11のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
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