JP5985350B2 - インクセット及び印刷物 - Google Patents
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Description
特許文献1、特許文献2に記載のインクジェット印刷用インク組成物は、メタルハライドランプ等の高いエネルギーの光(短波長)を照射する汎用タイプの光源を使用して硬化させるように設計されている。高いエネルギーの光を使用した場合、インクジェット印刷用インク組成物を硬化させる能力が高いため、インクジェット印刷用インク組成物の硬化性については、その高い能力に応じた設計で足りると言える。
そうすると、今度は、インクジェット印刷用インク組成物に対して、低エネルギーの光でも充分な硬化性や印刷性能(密着性、コックリングの改善等)が要求される。また、往々にして、光硬化性の向上は使用するモノマーの低分子量化につながるため、より低い温度で大気中への拡散性が高まる懸念から、消防(引火点)と衛生(皮膚刺激性等)の両面で安全性が求められる。
そこで、これらに対応できる光硬化型インクジェット印刷用インク組成物が種々提案されている。
このようなインクジェットプリンターの利用を実現させるために、インクジェット印刷用インク組成物の性状面からみた場合、低粘度であることが必要となる。何故なら、まず、インクジェット印刷用インク組成物をノズル内に充填し、ヘッドの内圧によってノズル外へ吐出するインクジェット記録方式では、インクジェット印刷用インク組成物をノズル内に充填完了するまでの時間は印字速度に、吐出に必要な内圧の大きさは駆動エネルギーに、それぞれ直結する。
そして、このノズル内の充填にかかる時間や吐出に必要な内圧の大きさは、インクジェット印刷用インク組成物の粘度に大きく支配される。すなわち、インクジェット印刷用インク組成物が低粘度であると、充填時間は短くなり、また、内圧も低く抑えることができる。更にノズルの微細化を図ると、充填により長い時間がかかるために、インクジェット印刷用インク組成物が低粘度であることが極めて重要となる。
また、特許文献3〜6に記載の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、光重合開始剤として、チオキサントン化合物を使用しており、低いエネルギーのLED光を用いて硬化した場合、印刷物は黄変するという問題があった。さらに、光重合性化合物としてN−ビニルカプロラクタム等のアミノ基含有の光重合性化合物が用いられている場合は、一旦、黄変した印刷物が退色して、印刷物のカラーバランスがとれなくなるという問題もあった。
上記各インク組成物の光重合性化合物における単官能モノマーの合計含有量の割合が45質量%以上であることが好ましい。
また、本発明は、本発明のインクセットを利用してポリ塩化ビニル系シートに印刷されてなることを特徴とする印刷物でもある。
以下、本発明を詳細に説明する。
上記インク組成物の引火点が70℃以上であることで、該インクをGHS(Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)にいう引火性液体区分4に相当するレベルとすることができ、低引火性といった安全性に優れたものとなる。
また、上記インク組成物の25℃における粘度が、5mPa・s以下であることで、常温(25℃)において、省エネルギーや高速・高精細対応のインクジェットヘッドを使用しても、インクの吐出安定性が良好となる。なお、上記インク組成物の粘度とは、E型粘度計(商品名:RE100L型粘度計、東機産業社製)を用いて、25℃、50rpmの条件で測定した粘度である。
以下、本発明のインクセットを構成する各インク組成物について、詳細に説明する。
本発明のインクセットにおいて、クリアーインク組成物を除くインク組成物は、顔料を含有する。
上記顔料としては、通常の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物で従来から使用されている顔料を特に制限なく使用できるが、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物としたときに良好に分散(微細な分散状態を長期にわたり維持)でき、耐光性の優れた有機顔料又は無機顔料が好ましい。
上記有機顔料としては、例えば、染料レーキ顔料、アゾ系、ベンズイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジコ系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリノン系、ニトロ系、ニトロソ系、アンスラキノン系、フラバンスロン系、キノフタロン系、ピランスロン系、インダンスロン系の顔料等が挙げられる。上記無機顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、ベンガラ、黒鉛、鉄黒、酸化クロムグリーン、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
上記各色の顔料の具体例としては以下のものが挙げられる。
上記インク組成物は、光重合性化合物を含有する。
具体的には、上記インク組成物は、上記光重合性化合物として、ビニロキシエトキシエチルアクリレート、及び、ベンジルアクリレートを含有し、更に、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物、ブラックインク組成物、及び、クリアーインク組成物は、N−ビニルカプロラクタムを更に含有する。
上記イソボルニルアクリレートの含有量は、上記各インク組成物の全量の5〜30質量%が好ましい。上記イソボルニルアクリレートの含有量が5質量%未満であると、顔料分散性の向上効果が期待できず、また、タック性が強く発現するインク組成物の場合、タック性を抑制する効果が薄れることがある。一方、30質量%を超えると、ポリ塩化ビニルシートへの密着性が低下する。上記イソボルニルアクリレートの含有量のより好ましい下限は10質量%、より好ましい上限は20質量%である。
なお、本発明において、各インク組成物の粘度、引火点、印刷物の耐溶剤性、ポリ塩化ビニル樹脂シートに対する密着性の点から、上記光重合性化合物としては、ビニロキシエトキシエチルアクリレートと上記単官能モノマーとからなるもので、好ましくは、上記光重合性化合物として上記単官能モノマーの合計含有量がインク組成物の全量に対して45質量%以上になるものである。
このような他の光重合性化合物としては、例えば、エチレン性二重結合含有化合物であれば、単官能モノマー、多官能モノマー、プレポリマー、オリゴマー等、特に制限なく使用できる。
上記他の光重合性化合物としては、具体的には、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、トリ(2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート)トリ(メタ)アクリレート、プロポキシレートグリセリルトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールオリゴ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンオリゴ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールオリゴ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシートリエチレングリコール(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メチルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート及びこれらがエチレンオキサイド(EO)又はプロピレンオキサイド(PO)で変性されたもの等が挙げられる。これら他の光重合性化合物は、一種又は必要に応じて二種以上用いてもよい。また、これらの中でも、低臭気、低皮膚刺激性のものを使用することが安全性の面から好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートを意味する。
本発明において、上記インク組成物は、光重合開始剤としてアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を含有し、また、チオキサントン系光重合開始剤をインク組成物の色相により使い分けるようにする。
上記アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤は、450〜300nmの波長にわたって光吸収特性を有し、その範囲の波長の光により硬化反応(ラジカル重合)の開始剤機能が発現する。このような光重合開始剤を用いることで、本発明のインクセットを構成するインク組成物に、LEDランプを用いて効率的に照射できる光による硬化性を付与することができる。
しかしながら、上記チオキサントン系光重合開始剤を使用すると、光重合性化合物を黄色に変色させる傾向があるため、インク組成物は、顔料に基づく色(本来の色相)より黄味がかった色相になる。さらに光重合性化合物として、N−ビニルカプロラクタムを利用していると、一旦、黄色に変色した後に、経時で退色する傾向があるため、経時で黄味が弱まるといった現象が見られる。
そこで、このような色味の変化の影響を受けやすいマゼンタインク組成物、シアンインク組成物、ホワイトインク組成物及びクリアーインク組成物では、光重合開始剤として、上記アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を含むが、上記チオキサントン系光重合開始剤は含まないようにする。
なお、上記イエローインク組成物は、光重合開始剤として、上記アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を含み、さらに上記チオキサントン系光重合開始剤を含んでも、もともと黄色の色相で、黄味が変化してもほとんど影響しないので、含む又は含まないは任意である。
また、上記ブラックインク組成物は、上記のような変色、退色があっても色相に影響しないのと、光重合性が他の色相より乏しいことから、光重合開始剤として、上記アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤と反応性の向上のために上記チオキサントン系光重合開始剤の両方を含む。
また、上記チオキサントン系光重合開始剤の具体例としては、例えば、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、クロロ−4−プロポキシチオキサントン等で、DETX、ITX、CPTX(LAMBSON社製)等が例示できる。
さらに、本発明に係わる光硬化型インクジェット印刷用インク組成物には、上記光重合開始剤に加えて、上記以外の公知の光重合開始剤、増感剤を加えることも可能である。
本発明における上記各インク組成物において、顔料を含有するものでは、顔料を分散させるために顔料分散剤を使用することができる。
上記顔料分散剤は、顔料分散工程において顔料をより微細に分散させたり、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物となった後、顔料の凝集や沈降の防止によるインクの保存安定性を向上させたりするために使用するものである。
そして、上記顔料分散剤としては、従来から使用されている顔料分散剤が特に制限なく使用できるが、その中でも高分子タイプのものを使用することが好ましい。このような顔料分散剤としては、カルボジイミド系分散剤、ポリエステルアミン系分散剤、脂肪酸アミン系分散剤、変性ポリアクリレート系分散剤、変性ポリウレタン系分散剤、多鎖型高分子非イオン系分散剤、高分子イオン活性剤等が挙げられる。これら顔料分散剤は単独で又は2種以上を混合して使用できる。
本発明において、上記インク組成物には、必要に応じて種々の機能性を発現させるため、各種の添加剤を添加することができる。具体的には、光安定化剤、表面処理剤、界面活性剤、粘度低下剤、酸化防止剤、老化防止剤、架橋促進剤、重合禁止剤、可塑剤、防腐剤、pH調整剤、消泡剤、保湿剤等が挙げられる。
なお、上記光硬化型インクジェット印刷用インクを構成するインク組成物の組み合わせとしては特に限定されないが、上述した6色のインク組成物からなる群より必要に応じて2種以上を選択すればよく、全てのインク組成物を含んでいてもよい。
そして、特に光源としてLEDランプを用いた場合、長波長側の低エネルギーの紫外線が多く照射されるために、オゾンを発生させることなく、また、装置としても大掛かりでなく、電力消費量も低く抑えることができる。また、上記の理由から、LEDによる光は、波長ピークが420〜365nmの範囲内にある活性エネルギー線であることが好ましい。本発明のインクセットを用いてこのようにして得られる印刷物もまた、本発明の一つである。
なお、本発明のインクセットにおいて、インク組成物が光硬化性を有するからといって、必ずしも光によって硬化反応を起こさせなければならないというものではなく、例えば、電子線を利用しても良い。上記電子線はラジカル重合を起こさせる能力が極めて高く、濃色の顔料が多く含まれていても、上記インク塗膜全体にわたって高い硬化性が得られるという特徴がある。
<顔料分散剤>
アジスパー(登録商標)PB821(味の素株式会社製)
ソルスパース56000(日本ルーブリゾール社製)
<光重合性化合物>
VEEA:ビニロキシエトキシエチルアクリレート(日本触媒社製)
V#160:ベンジルアクリレート(大阪有機化学工業社製)
V−CAP:N−ビニルカプロラクタム(ISPジャパン社製)
IBXA:イソボルニルアクリレート(大阪有機化学工業社製)
CN371:(REACTIVE AMINE COINITIATOR、SARTOMER社製、アミン価137、アミノ基2個とアクリロイル基2個含有)
HDDA:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(ダイセルサイテック社製)
<光重合開始剤>
TPO:2,4,6−trimethylbenzoyl diphenyl phosphine oxide(LAMBERTI社製)
DETX:2,4−ジエチルチオキサントン(Lambson社製)
ITX:2−イソプロピルチオキサントン(Lambson社製)
CPTX:クロロ−4−プロポキシチオキサントン(Lambson社製)
<添加剤>
BYK−315(シリコーン添加剤、BYK Chemie社製)
<光硬化型インクジェット印刷用インクの調製>
<ブラックインク組成物>
顔料(ピグメントブラック7)と顔料分散剤(アジスパーPB821)と光重合性化合物(IBXA)とを配合比率(質量比)が20/8/72となるように配合した混合物を、アイガーミル(メディアとして直径0.5mmのジルコニアビーズを使用)を用いて分散させてコンクベースを得た。
得られたコンクベースを用いて、表1の配合組成(質量%)となるように各成分を配合し、実施例1〜6、比較例1、6、12、18に係るブラックインク組成物を得た。
顔料(ピグメントイエロー150)と顔料分散剤(ソルスパース56000、日本ルーブリゾール社製)と光重合性化合物(IBXA)とを配合比率(質量比)が16/6.4/77.6となるように配合した混合物を、アイガーミル(メディアとして直径0.5mmのジルコニアビーズを使用)を用いて分散させてコンクベースを得た。
得られたコンクベースを用いて、表1の配合組成(質量%)となるように各成分を配合し、実施例7〜9及び比較例7、13に係るイエローインク組成物を得た。
顔料(ピグメントブルー15:4)と顔料分散剤(ソルスパース56000、日本ルーブリゾール社製)と光重合性化合物(IBXA)とを配合比率(質量比)が20/8/72となるように配合した混合物を、アイガーミル(メディアとして直径0.5mmのジルコニアビーズを使用)を用いて分散させてコンクベースを得た。
得られたコンクベースを用いて、表1の配合組成(質量%)となるように各成分を配合し、実施例10、11及び比較例2、8、14に係るシアンインク組成物を得た。
顔料(ピグメントレッド122)と顔料分散剤(ソルスパース56000、日本ルーブリゾール社製)と光重合性化合物(IBXA)とを配合比率(質量比)が16/9.6/74.4となるように配合した混合物を、アイガーミル(メディアとして直径0.5mmのジルコニアビーズを使用)を用いて分散させてコンクベースを得た。
得られたコンクベースを用いて、表1の配合組成(質量%)となるように各成分を配合し、実施例12、13及び比較例3、9、15に係るマゼンタインク組成物を得た。
酸化チタンと顔料分散剤(アジスパーPB821)と光重合性化合物(IBXA)とを配合比率(質量比)が40/4/56となるように配合した混合物を、アペックスミル(メディアとして直径0.5mmのジルコニアビーズを使用)を用いて分散させてコンクベースを得た。
得られたコンクベースを用いて、表1の配合組成(質量%)となるように各成分を配合し、実施例14、15及び比較例4、10、16に係るホワイトインク組成物を得た。
表1の配合組成(質量%)となるように各成分を配合し、実施例16、17及び比較例5、11、17に係るクリアーインク組成物を得た。
実施例1〜17及び比較例1〜18で得られたインク組成物について、E型粘度計(商品名:RE100L型粘度計、東機産業社製)を使用して、温度25℃、50rpmの条件の条件で、粘度を測定した。結果を表2に示す。
実施例1〜17及び比較例1〜18で得られたインク組成物について、JIS K2265に準拠した方法に従って、セタ密閉式引火点測定試験器を使用して、アルミニウムブロックで一定温度に保持し、引火点の測定を行った。結果を表2に示す。
実施例1〜17及び比較例1〜18で得られたインク組成物をポリ塩化ビニルシート(FlontlitGlossy120g、Cooley社製)に#4のバーコーターで塗布した。次いで、ヘレウス社製Z−8ランプ(水銀ランプ)又はフォセオン・テクノロジー社製LEDランプを用いて硬化させた。
下記の方法で、Z−8ランプを利用した時の硬化性、LEDランプを利用した時の硬化性、密着性、耐溶剤性、コックリング性、硬化塗膜の変色を評価した。結果を表2に示す。
ヘレウス社製Z−8ランプ(水銀ランプ)を用いて、出力60W、ランプとインクの塗布面との距離13cm、インクの塗布面を23m/minで移動の時の照射条件(1パス当たりのUV積算光量30mJ/cm2)下で、表面のタックがなくなるまでの照射エネルギーの積算量(30mJ/cm2)にて評価した。
フォセオン・テクノロジー社製LEDランプにて、ランプとインクの塗布面との距離2cm、1回当たりの照射時間1秒の照射条件(1秒間当たりのUV積算光量40mJ/cm2)下で、表面のタックがなくなるまでの照射エネルギーの積算量(30mJ/cm2)にて評価した。
表面のタックがなくなるまで硬化させた各インク組成物の硬化塗膜をカッターナイフでクロスカットし、カットした部分にセロハンテープを貼り、これを引き剥がすことにより硬化塗膜の剥離具合を以下の基準で評価した。
○:硬化塗膜の剥離なし
△:硬化塗膜の剥離があったが剥離面積が20%未満のもの
×:硬化塗膜の剥離面積が20%以上のもの
学振型堅牢度試験機(大栄科学精器製作所製)を用いて、イソプロピルアルコール(IPA)をしみ込ませた晒し布で500gの荷重をかけて、10回インク組成物の硬化塗膜を擦ったときの、硬化塗膜の取られ具合を晒し布の汚染と擦られた硬化塗膜面の状態から以下の基準で評価した。
○:晒し布の汚染、硬化塗膜の損耗が共に認められないもの
△:晒し布が汚染されるが、硬化塗膜の損耗がないもの
×:晒し布が汚染され、硬化塗膜の損耗もあるもの
ポリ塩化ビニルシート(Flontlit Glossy 120g、Cooley社製)に#12のバーコーターにて各インク組成物を塗布し、UV照射して得られた印刷物のコックリングの評価として、印刷物の裏面のたわみを以下の基準で評価した。
○:非塗布部と比較して塗布部にたわみがない状態
×:非塗布部に比べ塗布部にたわみが見られる状態
実施例1〜17及び比較例1〜18で得られたインク組成物をポリ塩化ビニルシート(FlontlitGlossy120g、Cooley社製)に#4のバーコーターで塗布した。次いで、フォセオン・テクノロジー社製LEDランプにて、1秒間40mJ/cm2となる照射条件で完全に硬化した。
得られた各印刷物の印刷直後と印刷後1日後の色(L*a*B*)をエックスライト社製分光光度計SpectroEyeにて測定し、色差(ΔE)により以下の基準で評価した。
○:ΔEが1以下
×:ΔEが1より大きい
25℃の雰囲気温度下に、低粘度インク用のインクジェットノズルを備えたインクジェット記録装置と、実施例1〜17及び比較例1〜18で得られた各インク組成物とを24時間置き、インクジェット記録装置及び各インク組成物の温度を25℃とした。その後25℃の雰囲気温度下で、各インク組成物を用いてポリ塩化ビニルシート(FlontlitGlossy120g、Cooley社製)上へ連続して印字を行い、吐出安定性の評価を行い、以下の基準で評価した。
○:印刷の乱れがなく、安定して吐出できる
×:印刷の乱れがある、又は安定して吐出できない
25℃の雰囲気温度下に、低粘度インクの使用を想定して設計されたプリンターヘッドを備えたインクジェット記録装置と、実施例1〜17で得られた各インク組成物とを24時間おき、インクジェット記録装置及び各インク組成物の温度を25℃とした。その後25℃の雰囲気温度下で、表3の組合せとなるよう実施例1〜17に係るインク組成物をインクジェット記録装置に詰めて、ポリ塩化ビニルシート(FlontlitGlossy120g、Cooley社製)上へ連続して印字を行い、LEDを照射し硬化して風景画の印刷物を得、得られた風景画の印刷物の滲みよりインクセットの評価を行った。結果を表3に示した。また、印刷物の性能評価を上記に記載した方法により評価した。
実施例及び比較例で得られた各インク組成物について、化学品の分類及び表示に関する国際的調和システム(GHS)より、有害情報を判断した。結果を表2に示した。
また、表3に示したように、実施例に係る各インク組成物は、任意の組み合わせでインクセットとしても滲みの発生はなかった。
一方、比較例1に係るブラックインク組成物は、チオキサントン系光重合開始剤を含まないため、LED硬化性に劣っていた。比較例2〜5に係る各インク組成物は、チオキサントン系光重合開始剤を含んでいたため、硬化塗膜の変色の評価に劣っていた。比較例6〜11に係る各インク組成物は、ベンジルアクリレートの含有量が少なく、密着性の評価に劣っていた。比較例12〜17に係る各インク組成物は、ビニロキシエトキシエチルアクリレートの含有量が少なく、耐溶剤性の評価に劣っていた。また、比較例18に係るインク組成物は、引火点が低く、また、粘度が高く吐出安定性の評価に劣っていた。
Claims (3)
- 光硬化型インクジェット印刷用インク組成物として、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物、ブラックインク組成物、ホワイトインク組成物、及び、クリアーインク組成物からなる群より選択される少なくとも2種から構成されるインクセットであって、
前記光硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、JIS K2265に準拠した方法でセタ密閉式引火点測定装置を用いて測定したときの引火点が70℃以上であり、粘度(25℃)が5mPa・s以下であり、
前記イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物、ブラックインク組成物及びホワイトインク組成物は、少なくとも、顔料、光重合性化合物及び光重合開始剤を含有し、
前記クリアーインク組成物は、少なくとも、光重合性化合物及び光重合開始剤を含有し、
前記マゼンタインク組成物、前記シアンインク組成物及び前記クリアーインク組成物は、前記光重合化合物として、ビニロキシエトキシエチルアクリレートを4〜40質量%、ベンジルアクリレートを10〜65質量%及びN−ビニルカプロラクタムを5〜35質量%含有し、前記光重合開始剤として、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を含むが、チオキサントン系光重合開始剤を含まず、
前記イエローインク組成物は、前記光重合化合物として、ビニロキシエトキシエチルアクリレートを4〜40質量%、ベンジルアクリレートを10〜65質量%及びN−ビニルカプロラクタムを5〜35質量%含有し、前記光重合開始剤として、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を含み、
前記ブラックインク組成物は、前記光重合化合物として、ビニロキシエトキシエチルアクリレートを4〜40質量%、ベンジルアクリレートを10〜65質量%及びN−ビニルカプロラクタムを5〜35質量%含有し、前記光重合開始剤として、チオキサントン系光重合開始剤及びアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を含み、
前記ホワイトインク組成物は、ビニロキシエトキシエチルアクリレートを4〜40質量%及びベンジルアクリレートを10〜65質量%含有し、前記光重合開始剤として、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を含むが、チオキサントン系光重合開始剤を含まない、
ことを特徴とするインクセット。 - 各光硬化型インクジェット印刷用インク組成物の光重合化合物における単官能モノマーの合計含有量の割合が45質量%以上である請求項1記載のインクセット。
- 請求項1又は2に記載のインクセットを利用してポリ塩化ビニル系シートに印刷されてなることを特徴とする印刷物。
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