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JP6753242B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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JP6753242B2
JP6753242B2 JP2016186923A JP2016186923A JP6753242B2 JP 6753242 B2 JP6753242 B2 JP 6753242B2 JP 2016186923 A JP2016186923 A JP 2016186923A JP 2016186923 A JP2016186923 A JP 2016186923A JP 6753242 B2 JP6753242 B2 JP 6753242B2
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Description

本発明は、空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、トレッド部を構成するブロックに立体形状のサイプを設けることで、スノー性能を向上させると共に、乗心地性能を低下させることなく、操縦安定性能を向上させることを可能にした空気入りタイヤに関する。
空気入りタイヤのトレッド部には、溝により複数のブロックが区画されている。このような空気入りタイヤにおいて、サイプの形状を工夫することでブロックの変形を抑制することが試みられている。具体的には、ブロックに少なくとも1本のタイヤ幅方向に貫通する切り込みを設け、該切り込み内の互いに対面する合面の一方に凸部を形成し、他方に該凸部に噛み合うディンプルを形成することにより、制動時に各サブブロックが互いに倒れ込みを規制し合うので、その倒れ込み量を少なくすることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
上述するように切り込み内の合面に互いに嵌合する凸部と凹部を設けた場合、ブロックのせん断方向に対する変形を抑制することができる。しかしながら、ブロックの圧縮方向に対する変形も同時に抑制してしまうことから、乗心地性能が悪化するという欠点がある。
一方、空気入りタイヤにおいて、トレッドパターンに複数本のサイプを設けることにより、スノー性能を発揮させるようにしている。スノートラクションを確保し、スノー性能を向上させるために、サイプ本数を増やしてサイプ密度を高めることが有効である。しかしながら、サイプ密度を高めると、ブロック剛性が低下してドライ路面での操縦安定性が悪化する傾向がある。そのため、ドライ路面での操縦安定性能とスノー性能とを両立することは困難である。
特許3180160号公報
本発明の目的は、トレッド部を構成するブロックに立体形状のサイプを設けることで、スノー性能を向上させると共に、乗心地性能を低下させることなく、操縦安定性能を向上させることを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、トレッド部に、タイヤ周方向に延びる複数本の主溝と、タイヤ幅方向に延びて該主溝に連通する複数本の横溝と、これら主溝及び横溝により区画された複数のブロックと、各ブロックにタイヤ幅方向に延びる複数本のサイプとを備える空気入りタイヤにおいて、前記トレッド部のショルダー領域におけるサイプ密度より前記トレッド部のセンター領域におけるサイプ密度が高く、前記トレッド部を構成する複数のブロックのうち少なくとも前記ショルダー領域の各ブロックに配置された前記サイプが、前記トレッド部の踏面の法線方向に沿って延びる踏面側サイプ部及び底側サイプ部と、これら踏面側サイプ部及び底側サイプ部との間で前記踏面の法線方向に対して傾斜する中間サイプ部とからなる立体サイプを少なくとも1つ含んでおり、前記中間サイプ部は前記踏面側サイプ部及び前記底側サイプ部に比べて拡幅されており、該中間サイプ部に互いに噛み合う少なくとも一対の凸部と凹部が形成されていることを特徴とするものである。
本発明の空気入りタイヤは、トレッド部を構成する複数のブロックのうち少なくともショルダー領域の各ブロックに、トレッド部の踏面の法線方向に沿って延びる踏面側サイプ部及び底側サイプ部と、これら踏面側サイプ部及び底側サイプ部との間で踏面の法線方向に対して傾斜する中間サイプ部とからなる立体サイプを有し、中間サイプ部は踏面側サイプ部及び底側サイプ部に比べて拡幅されていることで、ブロックが圧縮方向へ変形する空間が確保され、ブロックの圧縮方向への変形を抑制しないため、乗心地性能を向上させることが可能となる。また、中間サイプ部に互いに噛み合う少なくとも一対の凸部と凹部が形成されていることで、制駆動及び旋回時におけるブロックのせん断方向の変形を効率よく抑制することができる。その結果、操縦安定性能を向上させることが可能となる。更に、乗心地性能の向上に有効なセンター領域においてサイプ密度が相対的に高くなるため、乗心地性能を向上させることが可能となる。しかも、スノートラクションの向上に有効なセンター領域において、サイプ密度が相対的に高くなるため、スノー性能を向上させることが可能となる。
本発明では、トレッド部のショルダー領域におけるサイプのタイヤ幅方向に対する傾斜角度はトレッド部のセンター領域におけるサイプのタイヤ幅方向に対する傾斜角度より大きいことが好ましい。これにより、サイプのエッジ効果を効果的に得ることができ、その結果、スノー性能を向上させることが可能となる。
本発明では、凸部の頂点から凹部の底面までのサイプ深さ方向の距離h1と中間サイプ部の両壁面同士のサイプ深さ方向の距離h2とはh1≧h2の関係を満たし、中間サイプ部の両壁面同士のサイプ深さ方向の距離h2と立体サイプのサイプ深さHとは0.1≦h2/H≦0.4の関係を満たし、凸部の幅w1と凹部の幅w2とは0.7≦w1/w2<1.0の関係を満たすことが好ましい。これにより、凸部及び凹部において圧縮方向への変形を許容する空間(隙間)を確保することで、ブロックの圧縮方向への変形を効果的に許容することができるため、スノー性能を効果的に改善すると共に、操縦安定性能と乗心地性能の向上を両立させることが可能となる。より好ましくは、0.2≦h2/H≦0.3である。
本発明では、立体サイプの底面から踏面側サイプ部と中間サイプ部との連結部までのサイプ深さ方向の距離kと立体サイプのサイプ深さHとは0.3≦k/H≦0.9の関係を満たすことが好ましい。これにより、ブロックのせん断方向への変形を効果的に抑制することができる。その結果、スノー性能を効果的に改善すると共に、操縦安定性能を向上させることが可能となる。より好ましくは、0.5≦k/H≦0.7である。
本発明では、踏面側サイプ部及び底側サイプ部のサイプ幅方向のずれ量Lと立体サイプのサイプ幅lとは0.05≦l/L≦0.4の関係を満たすことが好ましい。これにより、スノー性能を効果的に改善しながら、操縦安定性能と乗心地性能の向上を両立させることが可能となる。より好ましくは、0.15≦l/L≦0.3である。
本発明では、底側サイプ部と中間サイプ部との連結部から踏面側サイプ部と中間サイプ部との連結部までのサイプ深さ方向の距離h3と立体サイプのサイプ深さHとは0.1≦h3/H≦0.5の関係を満たすことが好ましい。これにより、スノー性能を効果的に改善しながら、操縦安定性能と乗心地性能の向上を両立させることが可能となる。より好ましくは、0.2≦h3/H≦0.4である。
本発明では、凸部の高さaと凸部の幅w1とは0.5≦a/w1≦2.0の関係を満たし、凸部の高さaと立体サイプのサイプ深さHとは0.05≦a/H≦0.25の関係を満たすことが好ましい。これにより、スノー性能を効果的に改善しながら、操縦安定性能と乗心地性能の向上を両立させることが可能となる。より好ましくは、1.0≦a/w1≦1.5である。
本発明では、トレッド部において、タイヤ幅方向最外側に位置する一対の外側主溝の間の領域をセンター領域とし、該外側主溝のタイヤ幅方向外側の領域をショルダー領域とする。各領域におけるサイプ密度は、トレッド部の接地領域におけるサイプ密度であって、溝によって区分された各領域の接地面積(mm2)をA1とし、当該領域に含まれるサイプのタイヤ周方向への投影長さの総和(mm)をA2としたとき、A2/A1(mm/mm2)により求められるものである。なお、サイプとは溝幅が1.5mm以下の細溝であるが、各領域を区分する溝は溝幅が1.5mmを超える溝である。
本発明において、トレッド部の接地領域は、タイヤを正規リムにリム組みして正規内圧を充填した状態で平面上に垂直に置いて正規荷重を加えたときに測定されるタイヤ軸方向のトレッド接地幅に基づいて特定される。接地端は、接地領域のタイヤ軸方向の最外側位置である。「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMAであれば標準リムとする。「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧であるが、タイヤが乗用車である場合には180kPaとする。「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力であるが、タイヤが乗用車である場合には前記荷重の88%に相当する荷重とする。
本発明の実施形態からなる空気入りタイヤのトレッド部の一例を示す平面図である。 図1のトレッド部の一部を示す斜視図である。 図2のトレッド部に形成されたブロックを立体サイプの延在方向に切り開いた状態を示す説明図である。 図2のトレッド部に形成されたブロックの平面図である。 図2のトレッド部に形成されたブロックの側面図である。 図4のX−X矢視断面図である。 図4のY−Y矢視断面図である。 本発明の実施形態からなる空気入りタイヤのトレッド部に形成されたブロックの変形例を立体サイプの延在方向に切り開いた状態を示す説明図である。 本発明の実施形態からなる空気入りタイヤのトレッド部の変形例を示す平面図である。 (a)〜(c)は本発明の空気入りタイヤのブロックにおける凹部及び凸部の変形例を示す断面図である。 (a)〜(f)は本発明の空気入りタイヤのブロックにおける凹部及び凸部の他の変形例を示す断面図である。
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1〜5は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤのトレッド部1を示すものである。なお、図1に示すTcはタイヤ周方向、Twはタイヤ幅方向である。
図1に示すように、この空気入りタイヤはトレッド部1を有しており、このトレッド部1にはタイヤ周方向に延びる3本の主溝11と、タイヤ幅方向に延びる複数本の横溝12とが形成されている。また、トレッド部1には、この主溝11及び横溝12によって区画された陸部である複数のブロック2が形成されている。
主溝11は、タイヤ中心線CL上の内側主溝11Aと、タイヤ幅方向最外側に位置する一対の外側主溝11B,11Bとを含んでいる。トレッド部1において、タイヤ幅方向最外側に位置する一対の外側主溝11B,11Bの間の領域をセンター領域Rcとし、外側主溝11Bのタイヤ幅方向外側の領域をショルダー領域Rsとする。
ブロック2には、タイヤ幅方向に延在する複数本のサイプ13がタイヤ周方向に間隔をおいて形成されている。これらサイプ13は、その両端部が主溝11に対して連通しており、オープンサイプ構造を有している。また、サイプ13は、後述する立体サイプ3と、立体形状を有さずトレッド部1の踏面の法線方向に沿って伸びる通常サイプ5とを含んでいる。図1に示すトレッド部1には、センター領域Rcの各ブロック2に複数本の通常サイプ5が形成され、ショルダー領域Rsの各ブロック2に複数本の立体サイプ3が形成されているが、センター領域Rc又はショルダー領域Rsの各ブロック2において立体サイプ3と通常サイプ5とが混在していても良い。つまり、本発明では、トレッド部1を構成する複数のブロック2のうち少なくともショルダー領域Rsの各ブロック2に配置されたサイプ13が立体サイプ3を少なくとも1つ含んでいることが必要である。
図2に示すように、立体サイプ3は、サイプ深さ方向においてその一部がトレッド部1の踏面の法線方向に対して屈曲した構造を有している。即ち、立体サイプ3は、トレッド部1の踏面の法線方向に沿って延びる踏面側サイプ部3A及び底側サイプ部3Bと、これら踏面側サイプ部3A及び底側サイプ部3Bとの間で踏面の法線方向に対して傾斜する中間サイプ部3Cとを含んでいる。
また、中間サイプ部3Cは、踏面側サイプ部3A及び底側サイプ部3Bに比べてサイプ深さ方向に拡幅されている。即ち、中間サイプ部3Cは、立体サイプ3を構成する踏面側サイプ部3A、底側サイプ部3B及び中間サイプ部3Cのうち最もサイプ幅が広く、踏面側サイプ部3A及び底側サイプ部3Bより幅広な部位をいう。中間サイプ部3Cが踏面側サイプ部3A及び底側サイプ部3Bに比べて拡幅されていることにより、ブロック2が圧縮方向へ変形する空間が確保され、ブロック2の圧縮方向の変形を許容できる。
図3〜5に示すように、立体サイプ3のタイヤ幅方向の中央領域には少なくとも一対の凸部4Aと凹部4Bが形成されている。図4,5に示す点線は、凸部4A及び凹部4Bの形状を示す補助線である。凸部4Aと凹部4Bとは互いに噛み合うように構成されている。図3の態様では、凸部4Aがタイヤ径方向内側に配置されている一方で凹部4Bがタイヤ径方向外側に配置されている例を示したが、図8に示すように凸部4Aをタイヤ径方向外側に配置し、凹部4Bをタイヤ径方向内側に配置するように構成しても良い。図3,8のいずれの場合においても、一対の凸部4Aと凹部4Bとが互いに噛み合う構造を有することにより、制駆動及び旋回時におけるブロック2のせん断方向の変形に対する抑制効果を有する。また、立体サイプ3の長手方向に沿って2対以上の凸部4Aと凹部4Bを配置することもできる。
上記空気入りタイヤにおいて、センター領域Rcにおけるサイプ密度は、ショルダー領域Rsにおけるサイプ密度より高くなるように設定されている。特に、センター領域Rcのサイプ密度はショルダー領域Rsのサイプ密度に対して、1.2倍〜2.0倍であることが好ましい。ここで、センター領域Rc及びショルダー領域Rsのサイプ密度は、トレッド部1の一対の接地端の相互間に規定される接地領域において特定される全てのサイプのサイプ密度(mm/mm2)である。
上述した空気入りタイヤでは、トレッド部1を構成する複数のブロック2のうち少なくともショルダー領域Rsの各ブロック2に、トレッド部1の踏面の法線方向に沿って延びる踏面側サイプ部3A及び底側サイプ部3Bと、これら踏面側サイプ部3A及び底側サイプ部3Bとの間で踏面の法線方向に対して傾斜する中間サイプ部3Cとからなる立体サイプ3を有し、中間サイプ部3Cは踏面側サイプ部3A及び底側サイプ部3Bに比べて拡幅されていることで、ブロック2が圧縮方向へ変形する空間が確保され、ブロック2の圧縮方向への変形を抑制しないため、乗心地性能を向上させることが可能となる。また、中間サイプ部3Cに互いに噛み合う少なくとも一対の凸部4Aと凹部4Bが形成されていることで、制駆動及び旋回時におけるブロック2のせん断方向の変形を効率よく抑制することができる。その結果、操縦安定性能を向上させることが可能となる。更に、乗心地性能の向上に有効なセンター領域Rcにおいてサイプ密度が相対的に高くなるため、乗心地性能を向上させることが可能となる。しかも、スノートラクションの向上に有効なセンター領域Rcにおいて、サイプ密度が相対的に高くなるため、スノー性能を向上させることが可能となる。
図6に示すように、凸部4Aの頂点から凹部4Bの底面までサイプ深さ方向の距離を距離h1とし、中間サイプ部3Cの両壁面同士のサイプ深さ方向の距離を距離h2とする。また、凸部4Aにおいて立体サイプ3が延在する方向の幅を幅w1とし、凹部4Bにおいて立体サイプ3が延在する方向の幅を幅w2とする。このとき、距離h1と距離h2とはh1≧h2の関係を満たし、距離h2と立体サイプ3のサイプ深さHとは0.1≦h2/H≦0.4の関係を満たし、凸部4Aの幅w1と凹部4Bの幅w2とは0.7≦w1/w2<1.0の関係を満たす。特に、0.2≦h2/H≦0.3の関係を満たすように構成すると良い。乗用車用タイヤでは、凸部4Aの幅w1が2.0mm〜4.0mm、凹部4Bの幅w2が2.5mm〜4.5mm、立体サイプ3のサイプ深さHが4.0mm〜8.0mmであることが好ましい。これにより、凸部4A及び凹部4Bにおいて圧縮方向への変形する空間(隙間)を確保することで、ブロック2の圧縮方向への変形を効果的に許容することができるため、スノー性能を効果的に改善すると共に、操縦安定性能と乗心地性能の向上を両立させることが可能となる。
また、凸部4Aのサイプ深さ方向の高さを高さaとする。このとき、凸部4Aの高さaと凸部4Aの幅w1とが0.5≦a/w1≦2.0の関係を満たし、凸部4Aの高さaと立体サイプ3のサイプ深さHとが0.05≦a/H≦0.25の関係を満たす。特に、1.0≦a/w1≦1.5の関係を満たすように構成すると良い。これにより、スノー性能を効果的に改善しながら、操縦安定性能と乗心地性能の向上を両立させることが可能となる。ここで、a/w1が0.5未満であるとブロック2の圧縮方向の変形が抑制されることとなり乗心地性能が悪化し、a/w1が2.0を超えるとブロック2のせん断方向の変形が抑制されることとなり操縦安定性能及びスノー性能が悪化する。
図7に示すように、踏面側サイプ部3Aと中間サイプ部3Cとを連結する部位を連結部PA、底側サイプ部3Bと中間サイプ部3Cとを連結する部位を連結部PBとする。即ち、連結部PAは立体サイプ3における屈曲開始位置である一方で、連結部PBは立体サイプ3における屈曲終了位置である。また、立体サイプ3の底面を基点として連結部PAまでの距離を距離kとする。このとき、距離kと立体サイプ3のサイプ深さHとは0.3≦k/H≦0.9の関係を満たし、より好ましくは0.5≦k/H≦0.7の関係を満たす。このように距離kをサイプ深さHに対して適度に設定することで、ブロック2のせん断方向への変形を効果的に抑制することができる。その結果、スノー性能を効果的に改善すると共に、操縦安定性能を向上させることが可能となる。ここで、k/Hが0.3未満であるとブロック2の上部の変形が大きくブロック2のせん断方向の変形を十分に許容することができず、k/Hが0.9を超えると摩耗時において凸部4Aや凹部4Bの形状を維持することができない。
また、立体サイプ3の幅をサイプ幅l(踏面側サイプ部3Aの幅l)とし、踏面側サイプ部3Aと底側サイプ部3Bとのサイプ幅方向のずれ量をずれ量Lとする。即ち、このずれ量Lは踏面側サイプ部3A及び底側サイプ部3Bのそれぞれの中心線の間のサイプ中心間距離に相当する。このとき、立体サイプ3においてサイプ幅lとずれ量Lとは0.05≦l/L≦0.4の関係を満たし、より好ましくは0.15≦l/L≦0.3の関係を満たす。乗用車用タイヤでは、立体サイプ3のサイプ幅l(踏面側サイプ部3Aの幅l)が1.5mm以下であることが好ましい。このようにサイプ幅lをずれ量Lに対して適度に設定することで、スノー性能を効果的に改善しながら、操縦安定性能と乗心地性能の向上を両立させることが可能となる。ここで、l/Lが0.05未満であると立体サイプ3のせん断方向に対する剛性の低下が大きく操縦安定性能及びスノー性能が悪化し、更にはサイプの型抜け性が悪化する懸念がある。一方、l/Lが0.4を超えると中間サイプ部3Cが小さく、せん断方向の変形を抑制する凸部4A及び凹部4Bの大きさを確保することが難しくなる。
更に、立体サイプ3において連結部PBから連結部PAまでのサイプ深さ方向の距離を距離h3とする。このとき、立体サイプ3の距離h3と立体サイプ3のサイプ深さHとは0.1≦h3/H≦0.5の関係を満たし、より好ましくは0.2≦h3/H≦0.4の関係を満たす。このように距離h3をサイプ深さHに対して適度に設定することで、スノー性能を効果的に改善しながら、操縦安定性能と乗心地性能の向上を両立させることが可能となる。ここで、h3/Hが0.1未満であると中間サイプ部3Cが小さくなり圧縮方向の変形が抑制されることとなり乗心地性能が悪化する。一方、h3/Hが0.5を超えると立体サイプ3のせん断方向に対する剛性の低下が大きく、操縦安定性能及びスノー性能が悪化する。
中間サイプ部3Cはトレッド部1の踏面の法線方向に対して傾斜している。図7に示すように、トレッド部1の踏面の法線方向に対する中間サイプ部3Cの傾斜角度を傾斜角度θ1とする。本発明では、中間サイプ部3Cの傾斜角度θ1が30°〜80°となるように構成すると良い。特に、50°〜60°とすることがより好ましい。また、凸部4A及び凹部4Bのトレッド部1の踏面の法線方向に対する傾斜角度も中間サイプ部3Cの傾斜角度θ1と同様に構成することが好ましい。これにより、型抜け性を良くすることができる。
図9に示すように、トレッド部1のショルダー領域Rsに形成されたサイプ13はタイヤ幅方向に対して傾斜している。このサイプ13のタイヤ幅方向に対する傾斜角度を傾斜角度θ2とする。このとき、トレッド部1のショルダー領域Rsにおけるサイプ13のタイヤ幅方向に対する傾斜角度θ2がトレッド部1のセンター領域Rcにおけるサイプ13のタイヤ幅方向に対する傾斜角度θ2より大きいことが好ましい。特に、ショルダー領域Rsにおけるサイプ13のタイヤ幅方向に対する傾斜角度θ2が10°〜45°の範囲にあることが好ましく、20°〜40°の範囲がより好ましい。このようにショルダー領域Rsにおけるサイプ13の傾斜角度θ2をセンター領域Rcにおけるサイプ13の傾斜角度θ2に対して適度に設定することで、サイプ13のエッジ効果を効果的に得ることができる。その結果、スノー性能を向上させることが可能となる。なお、センター領域Rc又はショルダー領域Rsにおけるサイプ13のタイヤ幅方向に対する傾斜角度θ2は、各領域における平均傾斜角度とする。
立体サイプ3の凸部4Aの形状としては、図6に示す矩形の他に図10(a)に示すように凸部4Aの先端側の底辺が短い台形の場合や、図10(b)に示すように凸部4Aの先端に向かって徐々に細くなり凸部4Aの側面のみが丸みを有している場合、図10(c)に示すように凸部4Aの先端に向かって徐々に細くなり先端部が丸みを有している場合を例示することができる。
また、立体サイプ3の凸部4Aと凹部4Bとの噛み合わせ部分において、図3〜5に示すように形成されている場合の他に、図11(a)に示すように凸部4Aの一部に矩形の切り欠きがある場合や、図11(b)に示すように凸部4Aの一部に三角形の切り欠きがある場合を例示することができる。また、図11(c),(d)に示すように凸部4A及び凹部4Bが階段状に形成された場合、図11(e)に示すように凸部4Aが台形の形状を有する場合、図11(f)に示すように凸部4A及び凹部4Bが円弧状に形成された場合を例示することができる。
タイヤサイズ195/65R15で、トレッド部に、タイヤ周方向に延びる複数本の主溝と、タイヤ幅方向に延びて該主溝に連通する複数本の横溝と、これら主溝及び横溝により区画された複数のブロックと、各ブロックにタイヤ幅方向に延びる複数本のサイプとを備える空気入りタイヤにおいて、サイプにおける屈曲構造の有無、中間サイプ部における拡幅の有無、凸部及び凹部の有無、センター領域Rcのサイプ密度とショルダー領域Rsのサイプ密度との大小、センター領域Rcに配置されたサイプの傾斜角度、ショルダー領域Rsに配置されたサイプの傾斜角度、距離h1と距離h2との大小、凸部の幅w1の凹部の幅w2に対する比(w1/w2)、距離h2のサイプ深さHに対する比(h2/H)、距離kのサイプ深さHに対する比(k/H)、サイプ幅lのずれ量Lに対する比(l/L)、距離h3のサイプ深さHに対する比(h3/H)、凸部の幅w1の凸部の高さaに対する比(a/w1)、凸部の高さaのサイプ深さHに対する比(a/H)を表1及び表2のように設定した従来例、比較例及び実施例1〜14のタイヤを製作した。
なお、表1,2の「サイプにおける屈曲構造の有無」については、トレッド部に形成されたサイプが、トレッド部の踏面の法線方向に沿って延びる踏面側サイプ部及び底側サイプ部と、踏面側サイプ部及び底側サイプ部との間で踏面の法線方向に対して傾斜する中間サイプ部とを有するか否かを意味する。また、「屈曲部における拡幅の有無」については、中間サイプ部が踏面側サイプ部及び底側サイプ部に比べてサイプ深さ方向に拡幅された構造を有するか否かを意味する。
これら試験タイヤについて、パネラーによる操縦安定性能、乗心地性能及びスノー性能に関する官能評価を実施し、その結果を表1及び表2に併せて示した。
操縦安定性能、乗心地性能及びスノー性能に関する官能評価は、各試験タイヤをリムサイズ15×6Jホイールに組み付けて排気量2000ccの前輪駆動車に装着し、空気圧230kPaの条件にて行った。評価結果は、従来例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど操縦安定性能、乗心地性能及びスノー性能が優れていることを意味する。
これら表1及び表2から判るように、従来例との比較においては、トレッド部のショルダー領域におけるサイプ密度よりトレッド部のセンター領域におけるサイプ密度が高く、トレッド部を構成する複数のブロックのうち少なくともショルダー領域の各ブロックに配置されたサイプが、踏面側サイプ部と底側サイプ部と中間サイプ部とからなる立体サイプを少なくとも1つ含んでおり、中間サイプ部は踏面側サイプ部及び底側サイプ部に比べて拡幅されており、中間サイプ部に互いに噛み合う一対の凸部と凹部が形成されていることで、実施例1〜14のタイヤはスノー性能を向上させると共に、乗心地性能を低下させることなく、操縦安定性能が同時に改善されていた。
一方、比較例においては、トレッド部のセンター領域におけるサイプ密度よりトレッド部のショルダー領域におけるサイプ密度が高いため、操縦安定性と乗心地性能の改善効果は得られたものの、スノー性能の改善効果が得られなかった。
1 トレッド部
2 ブロック
3 立体サイプ
3A 踏面側サイプ部
3B 底側サイプ部
3C 中間サイプ部
4A 凸部
4B 凹部
5 通常サイプ
11 主溝
12 横溝
13 サイプ
Rc センター領域
Rs ショルダー領域

Claims (7)

  1. トレッド部に、タイヤ周方向に延びる複数本の主溝と、タイヤ幅方向に延びて該主溝に連通する複数本の横溝と、これら主溝及び横溝により区画された複数のブロックと、各ブロックにタイヤ幅方向に延びる複数本のサイプとを備える空気入りタイヤにおいて、
    前記トレッド部のショルダー領域におけるサイプ密度より前記トレッド部のセンター領域におけるサイプ密度が高く、前記トレッド部を構成する複数のブロックのうち少なくとも前記ショルダー領域の各ブロックに配置された前記サイプが、前記トレッド部の踏面の法線方向に沿って延びる踏面側サイプ部及び底側サイプ部と、これら踏面側サイプ部及び底側サイプ部との間で前記踏面の法線方向に対して傾斜する中間サイプ部とからなる立体サイプを少なくとも1つ含んでおり、前記中間サイプ部は前記踏面側サイプ部及び前記底側サイプ部に比べて拡幅されており、該中間サイプ部に互いに噛み合う少なくとも一対の凸部と凹部が形成されていることを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記トレッド部のショルダー領域における前記サイプのタイヤ幅方向に対する傾斜角度が前記トレッド部のセンター領域における前記サイプのタイヤ幅方向に対する傾斜角度より大きいことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記凸部の頂点から前記凹部の底面までのサイプ深さ方向の距離h1と前記中間サイプ部の両壁面同士のサイプ深さ方向の距離h2とがh1≧h2の関係を満たし、前記中間サイプ部の両壁面同士のサイプ深さ方向の距離h2と前記立体サイプのサイプ深さHとが0.1≦h2/H≦0.4の関係を満たし、前記凸部の幅w1と前記凹部の幅w2とが0.7≦w1/w2<1.0の関係を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記立体サイプの底面から前記踏面側サイプ部と前記中間サイプ部との連結部までのサイプ深さ方向の距離kと前記立体サイプのサイプ深さHとが0.3≦k/H≦0.9の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記踏面側サイプ部及び前記底側サイプ部のサイプ幅方向のずれ量Lと前記立体サイプのサイプ幅lとが0.05≦l/L≦0.4の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  6. 前記底側サイプ部と前記中間サイプ部との連結部から前記踏面側サイプ部と前記中間サイプ部との連結部までのサイプ深さ方向の距離h3と前記立体サイプのサイプ深さHとが0.1≦h3/H≦0.5の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  7. 前記凸部の高さaと前記凸部の幅w1とが0.5≦a/w1≦2.0の関係を満たし、前記凸部の高さaと前記立体サイプのサイプ深さHとが0.05≦a/H≦0.25の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
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