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JP6145349B2 - 酸性ガス分離モジュール - Google Patents

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Description

本発明は、原料ガスから酸性ガスを選択的に分離する、酸性ガス分離モジュールに関する。詳しくは、原料ガスの処理効率を向上できる酸性ガス分離モジュールに関する。
近年、原料ガス(被処理ガス)から、炭酸ガスなどの酸性ガスを選択的に分離する技術の開発が進んでいる。例えば、酸性ガスを選択的に透過する酸性ガス分離膜を用いて、原料ガスから酸性ガスを分離する酸性ガス分離モジュールが開発されている。
一例として、特許文献1には、管壁に貫通孔が形成された、分離した酸性ガスを収集するための中心筒(中心透過物収集管)に、酸性ガス分離膜を含む積層体を多重に巻き付けてなる酸性ガス分離モジュールが開示されている。
この特許文献1に開示される酸性ガス分離モジュールは、酸性ガス分離膜として、いわゆる溶解拡散膜を用いる、溶解拡散型の酸性ガス分離モジュールである。この溶解拡散膜は、膜に対する酸性ガスと分離対象物質との溶解性、および、膜中の拡散性の差を利用して、原料ガスから酸性ガスを分離する。
また、特許文献2には、空間を酸性ガス分離膜で原料室と透過室とに分けて、原料室に原料ガス(CO2、H2およびH2Oからなる混合ガス)を供給し、酸性ガス分離膜で選択的に分離(透過)した酸性ガスを、透過室から取り出す酸性ガス分離モジュール(実験装置)が開示されている。
この特許文献2に開示される酸性ガス分離モジュールは、酸性ガス分離膜として、いわゆる促進輸送膜を用いる、促進輸送型の酸性ガス分離モジュールである。この促進輸送膜は、膜中に酸性ガスと反応するキャリアを有し、このキャリアによって酸性ガスを膜の反対側に輸送することで、原料ガスから酸性ガスを分離する。
このような酸性ガス分離モジュールにおいて、特許文献1に示されるような、酸性ガス分離膜を有する積層体を、分離した酸性ガスを収集する中心筒に巻回してなる(中心筒に巻き付けた)、いわゆるスパイラル型の酸性ガス分離モジュールが知られている。スパイラル型の酸性ガス分離モジュールは、酸性ガス分離膜の面積を大きくできる。そのため、スパイラル型の酸性ガス分離モジュールは、効率の良い処理が可能である。
特開平4−215824号公報 特許第4621295号公報
ところで、特許文献1にも示されるように、このような酸性ガス分離モジュール、特にスパイラル型のモジュールは、一般的に、その内部が原料ガスの流路となる供給ガス流路用部材(供給物スペーサ)、および、その内部が分離した酸性ガスの流路となる透過ガス流路用部材(透過物スペーサ)を用いる場合が多い。このような流路用部材は、通常、メッシュ状のシート状物で構成される。
この場合には、一例として、特許文献1にも示されるように、酸性ガス分離モジュールは、供給ガス流路用部材を酸性ガス分離膜で挟持し、その両面を透過ガス流路用部材で挟持してなる積層体によって、構成される。
酸性ガス分離モジュールでは、原料ガスは、供給ガス流路用部材の内部を流れつつ、酸性ガス分離膜に接触して、酸性ガスが分離される。原料ガスから分離された酸性ガスは、酸性ガス分離膜を透過して、透過ガス流路用部材に流入する。透過ガス流路用部材に流入した酸性ガスは、透過ガス流路用部材の内部を流れて、外部に放出されて、回収される。また、酸性ガスを分離された原料ガスは、そのまま供給ガス流路用部材の内部を流れて、供給ガス流路用部材から外部に放出されて、回収される。
従って、このような酸性ガス分離モジュールでは、原料ガスが酸性ガス分離膜と接触する距離が長いほど、酸性ガスの分離効率を高くすることができる。
本発明の目的は、酸性ガス分離膜を用いる酸性ガス分離モジュールにおいて、供給ガス流路用部材における原料ガスの流路を長くすることにより、原料ガスが酸性ガス分離膜に接触する距離を長くして、これにより、原料ガスの処理効率すなわち酸性ガスの分離効率を向上できる酸性ガス分離モジュールを提供することに有る。
この目的を達成するために、本発明の酸性ガス分離モジュールは、原料ガスから酸性ガスを分離する酸性ガス分離膜を有するシート状の酸性ガス分離層と、酸性ガス分離層に積層されるシート状で、内部が原料ガスの流路となる供給ガス流路用部材とを有し、
さらに、供給ガス流路用部材の内部に、原料ガスの流路を変更する流路変更部材を有することを特徴とする酸性ガス分離モジュールを提供する。
このような本発明の酸性ガス分離モジュールにおいて、原料ガスの供給方向をx方向、このx方向と直交する方向をy方向とした際に、流路変更部材が、供給ガス流路用部材におけるy方向の一方の端部からy方向に向かって延在するのが好ましい。
また、流路変更部材が、x方向に、複数、配置されており、かつ、少なくとも1つの流路変更部材は、供給ガス流路用部材のy方向の一方の端部からy方向に向かって延在し、他の少なくとも1つの流路変更部材は、供給ガス流路用部材のy方向の逆側の端部からy方向に向かって延在するのが好ましい。
また、x方向の最上流に位置する流路変更部材は、x方向およびy方向の両方向に向かう方向に延在するのが好ましい。
また、流路変更部材は、原料ガスの供給方向に対して逆流する方向に向かい、その後、原料ガスの供給方向に向かうように、原料ガスの流路を変更するのが好ましい。
また、流路変更部材は、供給ガス流路用部材の厚さ方向に高さ方向を有し、供給ガス流路用部材の面方向に延在する壁状の部材であり、かつ、この壁の厚さが5〜50mmであるのが好ましい。
また、供給ガス流路用部材の面方向において、流路変更部材の面積が、供給ガス流路用部材の全面積の0.01〜10%であるのが好ましい。
また、供給ガス流路用部材と酸性ガス分離層とを含む積層体を巻回してなるスパイラル型であるのが好ましい。
さらに、酸性ガス分離層によって供給ガス流路用部材を挟持し、さらに、その両面に酸性ガス分離膜が分離した酸性ガスの流路となる、シート状の透過ガス流路腰部材を積層してなる積層体を、少なくとも1つ有するのが好ましい。
本発明の酸性ガス分離モジュールは、供給ガス流路用部材の内部に設けられた流路変更部材によって、供給ガス流路用部材の内部で原料ガスの流路を変更することにより、原料ガスが酸性ガス分離膜に接触する距離を長くできる。
そのため、本発明の酸性ガス分離モジュールによれば、従来の酸性ガス分離モジュールに比して、原料ガスの処理効率すなわち酸性ガスの分離効率を向上できる。
本発明の酸性ガス分離モジュールの一例を一部切り欠いて示す概略斜視図である。 図1に示す酸性ガス分離モジュールの積層体の概略断面図である。 (A)〜(D)は、本発明の酸性ガス分離モジュールに用いられる供給ガス流路用部材の一例を概念的に示す図である。 (A)および(B)は、図1に示す酸性ガス分離モジュールの作製方法を説明するための概念図である。 図1に示す酸性ガス分離モジュールの作製方法を説明するための概念図である。 (A)および(B)は、図1に示す酸性ガス分離モジュールの作製方法を説明するための概念図である。 図1に示す酸性ガス分離モジュールの作製方法を説明するための概念図である。 図1に示す酸性ガス分離モジュールの作製方法を説明するための概念図である。
以下、本発明の酸性ガス分離モジュールについて、添付の図面に示される好適実施例を基に、詳細に説明する。
図1に本発明の酸性ガス分離モジュールの一例の一部切欠き概略斜視図を示す。
図1に示すように、酸性ガス分離モジュール10は、基本的に、中心筒12と、酸性ガス分離膜(促進輸送膜20a)を有する積層体14と、テレスコープ防止板16とを有して構成される。なお、以下の説明では、酸性ガス分離モジュールを、単に、分離モジュールとも言う。
分離モジュール10は、例えば、一酸化炭素、炭酸ガス(CO2)、水(水蒸気)および水素を含有する原料ガスGから、酸性ガスGcとして炭酸ガスを分離するものである。
本発明の分離モジュール10は、いわゆるスパイラル型の分離モジュールである。すなわち、分離モジュール10は、シート状の積層体14を、1層、もしくは、複数積層して、中心筒12に巻回して、積層体14の巻回物の両端面に、中心筒12を挿通してテレスコープ防止板16を設けてなる構成を有する。また、巻回した積層体14の最外周面は、ガス非透過性の被覆層18で覆われている。
なお、以下の説明では、中心筒12に巻回された、複数の積層体14を積層した物の巻回物(すなわち、積層されて巻回された積層体14による略円筒状物)を、便宜的に、スパイラル積層体14aとも言う。
ここで、本発明の分離モジュールは、図示例のようなスパイラル型以外にも、平膜型であってもよい。
例えば、酸性ガス分離膜(酸性ガス分離層)を後述する供給ガス流路用部材で挟持し、その両面を、後述する透過ガス流路用部材で挟持してなる積層体(あるいは、この積層体を積層してなる積層物)を巻回せずに使用する、平膜型の分離モジュールや、中空糸型の分離モジュールであってもよい。
しかしながら、高圧下での使用による欠陥の発生を防止でき、欠陥の発生に起因する分離性能の低下を防止できる等の点で、図示例のスパイラル型の分離モジュール10は好適に利用される。
図1に示す分離モジュール10において、酸性ガスを分離される原料ガスGは、例えば図1中奥手側のテレスコープ防止板16(その開口部16d)を通って、スパイラル積層体14aの端面に供給され、端面から積層体14に流入して、積層体14内を流れつつ、酸性ガスGcを分離される。
また、積層体14によって原料ガスGから分離された酸性ガスGcは、中心筒12から排出される。他方、酸性ガスを分離された原料ガスG(以下、便宜的に残余ガスGrとする)は、スパイラル積層体14a(積層体14)の供給側とは逆側の端面から排出され、テレスコープ防止板16(同前)を通って分離モジュール10の外部に排出される。
中心筒(透過ガス集合管)12は、原料ガスG供給側の端面が閉塞する円筒状の管で、周面(管壁)には複数の貫通孔12aが形成される。
原料ガスGから分離された酸性ガスGcは、後述する透過ガス流路用部材26を通って、貫通孔12aから中心筒12内に至り、中心筒12の開放端12bから排出される。
中心筒12において、後述する接着剤層30で封止される領域における開口率(中心筒12の外周面に占める貫通孔12aの面積率)は、1.5〜80%が好ましく、3〜75%がより好ましく、5〜70%がさらに好ましい。中でも、実用的な観点から、中心筒12の開口率は、5〜25%が、特に好ましい。
中心筒12の開口率を上記範囲とすることにより、効率的に酸性ガスGcを収集することができ、また、中心筒12の強度を高め、加工適性を十分に確保できる。
また、貫通孔12aは、直径0.5〜20mmの円形の孔であるのが好ましい。さらに、貫通孔12aは、中心筒12の周壁に、均一に形成されるのが好ましい。
なお、中心筒12には、必要に応じて、分離した酸性ガスGcを開放端12b側に流すためのガス(スイープガス)を供給する供給口(供給部)を設けてもよい。
積層体14は、酸性ガス分離層20と、供給ガス流路用部材24と、透過ガス流路用部材26とを積層してなるものである。
なお、図1において、符号30は、酸性ガス分離層20と透過ガス流路用部材26とを接着し、かつ、積層体14同士を接着すると共に、透過ガス流路用部材26における酸性ガスGcの流路を、中心筒12側が開口するエンベロープ状にする接着剤層30である。
前述のように、図示例の分離モジュール10は、この積層体14を、複数、積層して、中心筒12に巻回して(巻き付けて)、略円筒状のスパイラル積層体14aを形成してなる構成を有する。
ここで、本発明においては、便宜的に、原料ガスGの供給方向をx方向、x方向と直交する方向をy方向とする。スパイラル型である図示例の分離モジュール10においては、この積層体14の巻回方向はy方向と一致し、従って、積層体14の巻回方向と直交する方向は、原料ガスGの供給方向であるx方向と一致する。
分離モジュール10において、積層体14は1層でもよい。しかしながら、図示例のように、複数の積層体14を積層することにより、酸性ガス分離層20の膜面積を大きくして、1つのモジュールで分離する酸性ガスGcの量を向上できる。
積層体14の積層数は、分離モジュール10に要求される処理速度や処理量、分離モジュール10の大きさ等に応じて、適宜、設定すればよい。ここで、積層する積層体14の数は、50以下が好ましく、45以下がより好ましく、40以下が特に好ましい。積層体14の積層数を、この数とすることで、中心筒12への積層体14の巻回が容易になり、加工性を向上できる。
図2に、積層体14の部分断面図を示す。前述のように、矢印xは原料ガスGの供給方向であり、x方向と直交するy方向は積層体14の巻回方向(以下、巻回方向とも言う)と一致する。
図示例において、積層体14は、二つ折りにした酸性ガス分離層20の間に透過ガス流路用部材24を挟み込んで挟持体36とし(図5参照)、この挟持体36に、透過ガス流路用部材26を積層してなる構成を有する。この構成については、後に詳述する。
前述のように、分離モジュール10において、原料ガスGは、テレスコープ防止板16を通って、スパイラル積層体14aの一方の端面から供給される。すなわち、原料ガスGは、各積層体14の端部(端面)に供給される。
図2に概念的に示すように、積層体14のx方向の端面に供給された原料ガスGは、供給ガス流路用部材24内をx方向に流れる。ここで、本発明の分離モジュール10において、供給ガス流路用部材24は、内部を流れる原料ガスGの流路を変更する流路変更部材(流路壁50aおよび50b)を有する。そのため、供給ガス流路用部材24内における原料ガスGの流路を、長くできる。この点に関しては、後に詳述する。
供給ガス流路用部材24内における流れの中で、酸性ガス分離層20(促進輸送膜20a)に接触した酸性ガスGcは、原料ガスGから分離されて、酸性ガス分離層20を積層体14の積層方向に通過して(促進輸送膜20aのキャリアによって積層方向に輸送されて)、透過ガス流路用部材26に流入する。
透過ガス流路用部材26に流入した酸性ガスGcは、透過ガス流路用部材26を巻回方向(矢印y方向)に流れて、中心筒12に至り、中心通12の貫通孔12aから中心筒12内に流入する。中心筒12内に流入した酸性ガスGcは、中心筒12をx方向に流れて、開放端12bから排出される。
また、酸性ガスGcを除去された残余ガスGrは、供給ガス流路用部材24をx方向に流れて、スパイラル積層体14aの逆側の端面から排出され、テレスコープ防止板16(その開口部16d)を通って、分離モジュール10の外部に排出される。
供給ガス流路用部材24は、x方向の端部から、原料ガスGを供給され、部材内を流れる原料ガスGと、酸性ガス分離層20とを接触させる、シート状の部材である。図示例においては、供給ガス流路用部材24は、一例として、長方形である。また、前述のように、供給ガス流路用部材24は、その内部に、原料ガスGの流路を変更(強制的に変更)する、流路変更部材が設けられる。
このような供給ガス流路用部材24は、前述のように二つ折りされた酸性ガス分離層20のスペーサとして機能して、原料ガスGの流路を構成する。また、供給ガス流路用部材24は、原料ガスGを乱流にするのが好ましい。この点を考慮すると、供給ガス流路用部材24は、メッシュ状(ネット状/網目構造)を有する部材が好ましい。
このような供給ガス流路用部材24の形成材料としては、十分な耐熱性および耐湿性を有するものであれば、各種の材料が利用可能である。
一例として、紙、上質紙、コート紙、キャストコート紙、合成紙などの紙材料、セルロース、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、アラミド、ポリカーボネートなどの樹脂材料、金属、ガラス、セラミックスなどの無機材料等が、好適に例示される。
樹脂材料としては、具体的には、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリスルホン(PSF)、ポリプロピレン(PP)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトンおよびポリフッ化ビニリデン等が、好適に例示される。
供給ガス流路用部材24の厚さは、原料ガスGの供給量や要求される処理能力等に応じて、適宜、決定すれば良い。
具体的には、100〜1000μmが好ましく、150〜950μmがより好ましく、200〜900μmが特に好ましい。
ここで、本発明の分離モジュール10においては、この供給ガス流路用部材24の内部に、原料ガスGの流路を変更する流路変更部材が設けられる。
図3(A)に、巻回を巻き戻して平面状にした状態の供給ガス流路用部材24を概念的に示す。なお、図3(A)〜(D)においては、図面を簡潔にし、構成を明瞭に示すために、供給ガス流路用部材24のメッシュは省略する。
図3(A)に示すように、供給ガス流路用部材24は、内部に、流路規制部材としての流路壁50aおよび50bを有する。流路壁50aおよび50bは、共に、供給ガス流路用部材24の厚さ方向の全域に対応する高さを有し、供給ガス流路用部材24の面方向に延在する、壁状の部材である。
なお、流路壁(流路規制部材)は、供給ガス流路用部材24の厚さ方向の全域よりも低くても良い。しかしながら、より多くの原料ガスGの流路を変更できる等の点で、流路壁は、厚さ方向に供給ガス流路用部材24の全域を閉塞する高さを有するのが好ましい。
図示例において、流路壁50aは、供給ガス流路用部材24内において、y方向(巻回方向)の中心筒12側の端部から、x方向(原料ガス供給方向)に傾斜してy方向に向かって延在する。他方、流路壁50aに対してx方向の下流側(以下、単に上流/下流とも言う)に設けられる流路壁50bは、供給ガス流路用部材24内において、y方向の中心筒12と逆側の端部から、x方向と逆方向に傾斜してy方向に向かって延在する。また、両流路壁は、共に、y方向の全域には至らないように形成される。
なお、以下の説明では、便宜的に、y方向の中心筒12側を基端、同中心筒12と逆側を先端とも言う。
なお、図中の符号52は、供給ガス流路部材24の先端において、x方向の全域に形成される、流路壁50a等と同様の壁状の部材(壁部材52)である。
後述するが、分離モジュール10は、積層体24を、複数、積層して巻回した構成を有するので、基本的に、1つの供給ガス流路用部材24に流入した原料ガスGが、この供給ガス流路用部材24の先端側から排出されることは無い。しかしながら、微量でも、原料ガスGが、この供給ガス流路用部材24の先端側から排出される場合も有るので、図示例のような壁部材52を有することにより、より確実に、原料ガスGが供給ガス流路用部材24の先端側から排出されることを防止して、より効率の良い原料ガスの処理を行うことが可能となる。
このような供給ガス流路用部材24においては、図3(A)に概念的に示すように、x方向の端部から供給ガス流路用部材24に流入した原料ガスGの多くが、まず、上流側の流路壁50aによって、x方向に向かう流路を、先端側(y方向)かつx方向に向かう方向に変更される。次いで、流路壁50aによって流路を変更された原料ガスGは、さらに、下流側の流路壁50bや、供給ガス流路用部材24の先端側端部(壁部材52)や基端側端部等で流路を変更されて、供給ガス流路用部材24の下流側端部に至る。
また、流路壁50aによって流路を変更されなかった原料ガスGも、下流側の流路壁50bによって流路を変更されて、さらに、供給ガス流路用部材24の先端側端部や基端側端部等によって流路を変更されて、供給ガス流路用部材24の下流側端部に至る。
すなわち、図示例の供給ガス流路用部材24においては、流路壁を有さない、原料ガスGの流路がx方向の直線状である通常の供給ガス流路用部材に比して、供給ガス流路用部材24内における原料ガスGの流路が、遥かに長くなる。
前述のように、原料ガスGは、供給ガス流路用部材24内を流れつつ、酸性ガス分離層20(促進輸送膜20a)に接触して、酸性ガスを分離される。従って、供給ガス流路用部材24の内部における流路が長い程、原料ガスGが酸性ガス分離層20に接触する距離が長くなり、原料ガスGの処理効率すなわち酸性ガスの分離効率が向上する。
従って、供給ガス流路用部材24が流路壁50aおよび50b(原料ガスGの流路変更部材)を有する本発明の分離モジュール10によれば、原料ガスGが酸性ガス分離層20に接触する距離を長くして、原料ガスGの処理効率を大幅に向上できる。
図示例の供給ガス流路用部材24は、原料ガスGの供給方向に2つの流路壁を有しているが、本発明の分離モジュールにおいては、流路壁は1つであってもよい。
しかしながら、本発明においては、供給ガス流路部材24が複数の流路壁を複数有した方が、より好適に、供給ガス流路用部材24内における原料ガスGの流路を長くできる。
従って、本発明の分離モジュール10は、例えば図3(B)に概念的に示すように、供給ガス流路用部材24が、その内部に3つの流路壁50c,50dおよび50eを有してもよい。これにより、供給ガス流路用部材24内における原料ガスGの流路を、さらに長くできる。
ここで、供給ガス流路用部材24が複数の流路壁を有する場合には、図3(A)および(B)に示す例のように、基端から先端側(y方向)に向かって延在する流路壁(50a、50cおよび50e)と、先端から基端側(同前)に向かって延在する延在する流路壁(50b、50d)とが、混在するのが好ましい。
このような構成を有することにより、y方向の一方の端部のみ(基端のみ、あるいは、先端のみ)からy方向に向かって延在する流路壁のみ有する場合に比して、供給ガス流路用部材24内における原料ガスGの流路を長くできる。
また、流路壁は、図3(A)および(B)に示すような直線状の形状以外にも、曲線状や、屈折(屈曲)した折れ線状の形状であってもよい。
図3(C)に、その一例を示す。図3(C)に示す例は、上流側の流路壁50fと、下流側の流路壁50gとの2つの流路壁を有する。
上流側の流路壁50fは、供給ガス流路用部材24内において、基端(中心筒12側の端部)からx方向(原料ガス供給方向)に傾斜して先端側に向かって延在する領域と、その下流側端部からx方向に延在する領域と、その下流側端部からx方向と逆方向に傾斜して基端側に向かって延在する領域とを有する。
他方、下流側の流路壁50gは、供給ガス流路用部材24内において、先端(中心筒12と逆側の端部)からx方向と逆方向に傾斜して基端側に向かって延在する領域と、その上流側端部からx方向と逆方向に延在する領域と、その上流側端部からx方向に傾斜して先端側に向かって延在する領域とを有する。
また、流路壁50fおよび流路壁50gは、互いに接触することはなく、y方向に見た際に重複する領域を有し、かつ、下流側の流路壁50gのx方向と逆方向に延在する領域は、上流側の流路壁50fのx方向に延在する領域よりも、基端側に位置する。
このような流路壁50fおよび流路壁50gによれば、供給ガス流路用部材24に流入した原料ガスGは、流路壁50gによって、x方向に対して逆流するように流路を変更され、次いで、流路壁50fによって、x方向に向かうように流路を変更される。
そのため、この流路壁50fおよび流路壁50gによれば、原料ガスGは、供給ガス流路用部材24内で、供給方向と逆方向とを1.5往復するように流路を変更されるので、供給ガス流路用部材24内における原料ガスGの流路を非常に長くして、原料ガスGが酸性ガス分離層20に接触する距離を非常に長くできる。
図3(A)〜(C)に示される例は、最上流に配置される流路壁50a,50cおよび50fが、原料ガスGの流路をx方向およびy方向の両方に向かう方向に変更している。
しかしながら、本発明は、これ以外にも、各種の構成が利用可能である。例えば、図3(D)に示す例のように、流路壁50hおよび50iが、共に、y方向に延在して配置されてもよい。あるいは、最上流の流路壁が、x方向と逆方向に傾斜してy方向に向かって延在するものであってもよい。
しかしながら、原料ガスGの圧損を考慮すると、最上流に配置される流路壁は、図示例のように、原料ガスGの流路をx方向およびy方向の両方に向かう方向に変更するように設けられるのが好ましい。
また、図3に示される例は、いずれも、最上流の流路壁が、供給ガス流路用部材24の基端(中心筒12側の端部)からy方向に延在している。しかしながら、本発明は、これ以外にも、最上流の流路壁が、供給ガス流路用部材24の先端からy方向に延在する構成であってもよい。
ここで、図示例の分離モジュールは、スパイラル型であるので、供給ガス流路用部材24の基端側は、巻回の曲率が高い。そのため、最上流の流路壁は、図示例のように、基端から先端に向けて流路を変更するようにした方が、効率等の点で有利な場合も有る。
本発明の分離モジュール10において、流路壁の厚さLは、供給される原料ガスGの流量や温度、供給ガス流路用部材24の面積等に応じて、適宜、決定すればよい。
ここで、流路壁の厚さLが薄すぎると、流路壁の強度が不十分で使用中に損傷する可能性が有る。また、流路壁が存在する位置は、酸性ガス分離層20(促進輸送膜20a)が有効に使用できないので、流路壁の厚さLが厚すぎると、原料ガスGの処理効率が低くなってしまう。
この点を考慮すると、流路壁の厚さLは、5〜50mmが好ましく、5〜30mmがより好ましく、5〜20mmが特に好ましい。
また、本発明の分離モジュール10において、供給ガス流路用部材24の面方向における流路壁(流路変更部材)の形成面積は、促進輸送膜20aの性能、供給される原料ガスGの流量や温度、供給ガス流路用部材24の面積等に応じて、適宜、決定すればよい。
ここで、流路壁の形成面積が小さ過ぎると、流路壁を形成する効果が十分に得られず、流路壁の形成面積が大き過ぎると、先と同様の理由で、原料ガスGの処理効率が低くなってしまう。
この点を考慮すると、流路壁の形成面積(面積B)は、供給ガス流路部材24の面積(面積A)の0.01〜10%が好ましい(すなわち、『0.01≦((B/A)×100≦10』が好ましい)。
このような流路壁(流路変更部材)は、供給ガス流路部材24におけるy方向(巻回方向)の全域を1個の流路壁で横切る形状で無ければ、各種の形状が利用可能である。
例えば、図3に示す例では、流路変更部材は、供給ガス流路用部材24のy方向の端部から延在する壁状であるが、これ以外にも、各種の形状が利用可能である。例えば、供給ガス流路用部材24のy方向の端部に接触せず、y方向の中央領域のみに存在する壁状であってもよい。また、流路壁(壁状)以外にも、円形や矩形等の島状の流路変更部材を、規則的あるいは不規則に点在させた構成であってもよい。
しかしながら、より好適に原料ガスGの流路を長くして、酸性ガス分離層20(促進輸送膜20a)との接触距離を長く出来る等の点で、流路変更部材は、図示例のような、供給ガス流路用部材24の矢印y方向の端部(基端もしくは先端)から、y方向に向かって延在する壁状が好ましい。
また、壁状の流路変更部材と、島状に点在する流路変更部材とを併用してもよい。
流路壁(流路変更部材)の形成材料は、十分な耐熱性および耐湿性を有し、かつ、メッシュ状の供給ガス流路用部材24の内部に壁状の部材を形成できる、各種の材料が利用可能である。
一例として、接着剤、熱可塑性樹脂、粘着テープ等が例示される。
中でも、流路壁の形成性や利便性、流路壁幅の自由度等の点で、各種の公知の接着剤は好適に利用される。
接着剤としては、一例として、エポキシ樹脂、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が好適に例示される。
中でも、耐熱性および耐湿性の観点から、エポキシ樹脂は、より好適に例示される。
このような供給ガス流路用部材24は、酸性ガス分離層20に挟持される。図示例においては、酸性ガス分離層20は、一例として、長方形のシート状物である。
図示例の分離モジュール10は好ましい態様として、促進輸送型である。そのため、酸性ガス分離層20は、促進輸送膜20aと、多孔質支持体20bとから構成される。
なお、本発明は、促進輸送型の分離モジュールに限定はされず、前述の特許文献1に示されるような、溶解拡散膜を用いる溶解拡散型の分離モジュールであってもよい。
促進輸送膜20aは、少なくとも、供給ガス流路用部材24を流れる原料ガスGに含有される酸性ガスGcと反応するキャリア、および、このキャリアを担持する親水性化合物を含有する。このような促進輸送膜20aは、原料ガスGから酸性ガスGcを選択的に透過させる機能(酸性ガスGcを選択的に輸送する機能)を有している。
促進輸送型の分離モジュールは、高温かつ高湿での使用が必要条件である。従って、促進輸送膜20aは、高温下(例えば、100〜200℃)でも、酸性ガスGcを選択的に透過させる機能を有する。また、原料ガスGが水蒸気を含んでも、水蒸気を親水性化合物が吸湿して促進輸送膜20aが水分を保持することで、さらにキャリアが酸性ガスGcを輸送し易くなるので、溶解拡散膜を用いる場合に比べて分離効率が高まる。
促進輸送膜20aの膜面積は、分離モジュール10の大きさ、分離モジュール10に要求される処理能力等に応じて、適宜、設定すればよい。具体的には、0.01〜1000m2が好ましく、0.02〜750m2がより好ましく、0.025m〜500m2がさらに好ましい。中でも、促進輸送膜20aの膜面積は、実用的な観点から、1〜100m2が、特に好ましい。
促進輸送膜20aの膜面積を上記範囲とすることにより、膜面積に対して効率よく酸性ガスGcを分離でき、また、加工性も良好になる。
促進輸送膜20aの巻回方向の長さ(二つ折りする前の全長)も、分離モジュール10の大きさや分離モジュール10に要求される処理能力等に応じて、適宜、設定すればよい。具体的には、100〜10000mmが好ましく、150〜9000mmがより好ましく、200〜8000mmがさらにより好ましい。中でも、促進輸送膜20aの長さは、実用的な観点から、800〜4000mmが、特に好ましい。
促進輸送膜20aの巻回方向の長さを、上記範囲とすることにより、膜面積に対して効率よく酸性ガスGcを分離することができ、さらに、積層体14を巻回する際の巻きずれの発生が抑制され、加工性が容易となる。
なお、促進輸送膜の幅も、分離モジュール10のx方向のサイズに応じて、適宜、設定すれば良い。
促進輸送膜20aの厚さも、分離モジュール10の大きさや分離モジュール10に要求される処理能力等に応じて、適宜、設定すればよい。具体的には、1〜200μmが好ましく、2〜175μmがより好ましい。
促進輸送膜20aの厚さを、上記範囲にすることにより、十分なガス透過性と分離選択性とを実現できる。
親水性化合物はバインダとして機能するものであり、促進輸送膜20aにおいて、水分を保持して、キャリアによる二酸化炭素等のガスの分離機能を発揮させる。また、親水性化合物は、耐熱性の観点から、架橋構造を有するのが好ましい。
このような親水性化合物としては、親水性ポリマーが例示される。
親水性化合物は、水に溶けて塗布液を形成できると共に、促進輸送膜20aが高い親水性(保湿性)を有するのが好ましいという観点から、親水性が高いものが好ましい。
具体的には、親水性化合物は、生理食塩液の吸水量が0.5g/g以上の親水性を有することが好ましく、同1g/g以上の親水性を有することがより好ましく、同5g/g以上の親水性を有することがさらに好ましく、同10g/g以上の親水性を有することが特に好ましく、さらには、同20g/g以上の親水性を有することが最も好ましい。
親水性化合物の重量平均分子量は、安定な膜を形成し得る範囲で、適宜、選択すればよい。具体的には、20,000〜2,000,000が好ましく、25,000〜2,000,000がより好ましく、30,000〜2,000,000が特に好ましい。
親水性化合物の重量平均分子量を20,000以上とすることで、安定して十分な膜強度を有する促進輸送膜20aを得ることができる。
特に、親水性化合物が架橋可能基として−OHを有する場合には、親水性化合物は、重量平均分子量が30,000以上であるのが好ましい。この際には、重量平均分子量は更に好ましくは40,000以上であり、より好ましくは、50,000以上である。また、親水性化合物が架橋可能基として−OHを有する場合には、製造適性の観点から、重量平均分子量は、6,000,000以下であることが好ましい。
また、架橋可能基として−NH2を有する場合には、親水性化合物は、重量平均分子量が10,000以上であるものが好ましい。この際には、親水性化合物の重量平均分子量は、15,000以上であるのがより好ましく、20,000以上であるのが特に好ましい。また、親水性化合物が、架橋可能基として−NH2を有する場合には、製造適性の観点から、重量平均分子量は、1,000,000以下であるのが好ましい。
なお、親水性化合物の重量平均分子量は、例えば、親水性化合物としてPVAを用いる場合には、JIS K 6726に準じて測定した値を用いればよい。また、市販品を用いる場合には、カタログ、仕様書などで公称される分子量を用いればよい。
親水性化合物を形成する架橋可能基としては、耐加水分解性の架橋構造を形成し得るものが、好ましく選択される。
具体的には、ヒドロキシ基(−OH)、アミノ基(−NH2)、塩素原子(−Cl)、シアノ基(−CN)、カルボキシ基(−COOH)、および、エポキシ基等が例示される。これらの中でも、アミノ基およびヒドロキシ基が好ましく例示される。さらに、最も好ましくは、キャリアとの親和性およびキャリア担持効果の観点から、ヒドロキシ基が例示される。
親水性化合物としては、具体的には、単一の架橋可能基を有するものとしては、ポリアリルアミン、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリオルニチン、ポリリジン、ポリエチレンオキサイド、水溶性セルロース、デンプン、アルギン酸、キチン、ポリスルホン酸、ポリヒドロキシメタクリレート、ポリ−N−ビニルアセトアミドなどが例示される。最も好ましくはポリビニルアルコールである。また、親水性化合物としては、これらの共重合体も例示される。
また、複数の架橋可能基を有する親水性化合物としては、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸共重合体が例示される。ポリビニルアルコール−ポリアクリル塩共重合体は、吸水能が高い上に、高吸水時においてもハイドロゲルの強度が大きいため好ましい。
ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸共重合体におけるポリアクリル酸の含有率は、例えば1〜95モル%、好ましくは2〜70モル%、より好ましくは3〜60モル%、特に好ましくは5〜50モル%である。
なお、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸共重合体において、ポリアクリル酸は、塩であってもよい。この際におけるポリアクリル酸塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩の他、アンモニウム塩や有機アンモニウム塩等が例示される。
ポリビニルアルコールは市販品としても入手可能である。具体的には、PVA117(クラレ社製)、ポバール(クラレ製)、ポリビニルアルコール(アルドリッチ社製)、J−ポバール(日本酢ビ・ポバール社製)等が例示される。分子量のグレードは種々存在するが、重量平均分子量が130,000〜300,000のものが好ましい。
ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸塩共重合体(ナトリウム塩)も、市販品として入手可能である。例えば、クラストマーAP20(クラレ社製)が例示される。
なお、本発明の分離モジュール10の促進輸送膜20aにおいて、親水性化合物は、2種以上を混合して使用してもよい。
促進輸送膜20aにおける親水性化合物の含有量は、促進輸送膜20aを形成するためのバインダーとして機能し、かつ、水分を十分に保持できる量を、親水性組成物やキャリアの種類等に応じて、適宜、設定すればよい。
具体的には、0.5〜50質量%が好ましく、0.75〜30質量%がより好ましく、1〜15質量%が特に好ましい。親水性化合物の含有量を、この範囲とすることにより、上述のバインダとしての機能および水分保持機能を、安定して、好適に発現できる。
親水性化合物における架橋構造は、熱架橋、紫外線架橋、電子線架橋、放射線架橋、光架橋等、従来公知の手法により形成できる。
好ましくは光架橋もしくは熱架橋であり、最も好ましくは熱架橋である。
また、促進輸送膜20aの形成には、親水性化合物と共に、架橋剤を用いるのが好ましい。すなわち、塗布法によって促進輸送膜20aを形成する際には、架橋剤を含む塗布組成物を用いるのが好ましい。
架橋剤としては、親水性化合物と反応し、熱架橋や光架橋等の架橋をし得る官能基を2以上有する架橋剤を含むものが選択される。また、形成された架橋構造は、耐加水分解性の架橋構造となるのが好ましい。
このような観点から、促進輸送膜20aの形成に利用される架橋剤としては、エポキシ架橋剤、多価グリシジルエーテル、多価アルコール、多価イソシアネート、多価アジリジン、ハロエポキシ化合物、多価アルデヒド、多価アミン、有機金属系架橋剤などが好適に例示される。より好ましくは多価アルデヒド、有機金属系架橋剤およびエポキシ架橋剤であり、中でも、アルデヒド基を2以上有するグルタルアルデヒドやホルムアルデヒドなどの多価アルデヒドが好ましい。
エポキシ架橋剤としては、エポキシ基を2以上有する化合物であり、4以上有する化合物も好ましい。エポキシ架橋剤は市販品としても入手可能であり、例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(共栄社化学株式会社製、エポライト100MF等)、ナガセケムテックス社製EX−411、EX−313、EX−614B、EX−810、EX−811、EX−821、EX−830、日油株式会社製エピオールE400などが例示される。
また、エポキシ架橋剤に類似する化合物として、環状エーテルを有するオキセタン化合物も、また、好ましく使用される。オキセタン化合物としては、官能基を2以上有する多価グリシジルエーテルが好ましく、市販品としては、例えばナガセケムテックス社製EX−411、EX−313、EX−614B、EX−810、EX−811、EX−821、EX−830、などが例示される。
多価グリシジルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等が例示される。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピル、オキシエチエンオキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソビトール等が例示される。
多価イソシアネートとしては、例えば、2,4−トルイレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が例示される。
多価アジリジンとしては、例えば、2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アシリジニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサメチレンジエチレンウレア、ジフェニルメタン−ビス−4,4’−N,N’−ジエチレンウレア等が例示される。
ハロエポキシ化合物としては、例えば、エピクロルヒドリン、α−メチルクロルヒドリン等が例示される。
多価アルデヒドとしては、例えば、グルタルアルデヒド、グリオキサール等が例示される。
多価アミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン等が例示される。
さらに、有機金属系架橋剤としては、例えば、有機チタン架橋剤、有機ジルコニア架橋剤等が例示される。
例えば、親水性化合物として、重量平均分子量が130,000以上のポリビニルアルコールを用いる場合には、この親水性化合物と反応性が良好で、加水分解耐性も優れている架橋構造が形成可能である点から,エポキシ架橋剤やグルタルアルデヒドが好ましく利用される。
また、親水性化合物として、ポリビニールアルコール−ポリアクリル酸共重合体を用いる場合は、エポキシ架橋剤やグルタルアルデヒドが好ましく利用される。
また、親水性化合物として、重量平均分子量が10,000以上のポリアリルアミンを用いる場合には、この親水性化合物と反応性が良好で、加水分解耐性も優れている架橋構造が形成可能である点から、エポキシ架橋剤、グルタルアルデヒド、および、有機金属架橋剤が好ましく利用される。
さらに、親水性化合物として、ポリエチレンイミンやポリアリルアミンを用いる場合には、エポキシ架橋剤が好ましく利用される。
架橋剤の量は、促進輸送膜20aの形成に使用する親水性化合物や架橋剤の種類に応じて、適宜、設定すればよい。
具体的には、親水性化合物が有する架橋可能基量100質量部に対して0.001〜80質量部が好ましく、0.01〜60質量部がより好ましく、0.1〜50質量部が特に好ましい。架橋剤の含有量を上記範囲とすることにより、架橋構造の形成性が良好であり、かつ、形状維持性に優れる促進輸送膜を得ることができる。
また、親水性化合物が有する架橋可能基に着目すれば、架橋構造は、親水性化合物が有する架橋可能基100molに対し、架橋剤0.001〜80molを反応させて形成されたものであるのが好ましい。
前述のように、分離モジュール10の酸性ガス分離層20において、促進輸送膜20aは、このような親水性化合物に加え、キャリアを含有する。
キャリアは、酸性ガス(例えば、炭酸ガス)と親和性を有し、かつ、塩基性を示す各種の水溶性の化合物である。具体的には、アルカリ金属化合物、窒素含有化合物および硫黄酸化物等が例示される。
なお、キャリアは、間接的に酸性ガスと反応するものでも、キャリア自体が、直接、酸性ガスと反応するものでもよい。
前者は、供給ガス中に含まれる他のガスと反応し、塩基性を示し、その塩基性化合物と酸性ガスが反応するものなどが例示される。より具体的には、スチーム(水分)と反応してOH-を放出し、そのOH-がCO2と反応することで、促進輸送膜20a中に選択的にCO2を取り込むことができる化合物であり、例えば、アルカリ金属化合物である。
後者は、キャリア自体が塩基性であるようなもので、例えば、窒素含有化合物や硫黄酸化物である。
アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、および、アルカリ金属水酸化物等が例示される。ここで、アルカリ金属としては、セシウム、ルビジウム、カリウム、リチウム、および、ナトリウムから選ばれたアルカリ金属元素が好ましく用いられる。なお、本発明において、アルカリ金属化合物とは、アルカリ金属そのもののほか、その塩およびそのイオンも含む。
アルカリ金属炭酸塩としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、および、炭酸セシウム等が例示される。
アルカリ金属重炭酸塩としては、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム、および、炭酸水素セシウム等が例示される。
さらに、アルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、および、水酸化セシウム等が例示される。
これらの中でも、アルカリ金属炭酸塩が好ましく、また、酸性ガスとの親和性が良いという観点から、水に対する溶解度の高いカリウム、ルビジウム、および、セシウムを含む化合物が好ましい。
また、キャリアとしてアルカリ金属化合物を用いる際には、2種以上のキャリアを併用してもよい。
促進輸送膜20a中に2種以上のキャリアが存在することにより、膜中で異なるキャリアを距離的に離間させることができる。これにより、複数のキャリアの潮解性の違いによって、促進輸送膜20aの吸湿性に起因して、製造時等に促進輸送膜20a同士や、促進輸送膜20aと他の部材とが貼着すること(ブロッキング)を、好適に抑制できる。
また、ブロッキングの抑制効果を、より好適に得られる等の点で、2種以上のアルカリ金属化合物をキャリアとして用いる場合には、潮解性を有する第1化合物と、第1化合物よりも潮解性が低く比重が小さい第2化合物を含むのが好ましい。一例として、第1化合物としては炭酸セシウムが、第2化合物としては炭酸カリウムが、例示される。
窒素含有化合物としては、グリシン、アラニン、セリン、プロリン、ヒスチジン、タウリン、ジアミノプロピオン酸などのアミノ酸類、ピリジン、ヒスチジン、ピペラジン、イミダゾール、トリアジンなどのヘテロ化合物類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミンなどのアルカノールアミン類、クリプタンド[2.1]、クリプタンド[2.2]などの環状ポリエーテルアミン類、クリプタンド[2.2.1]、クリプタンド[2.2.2]などの双環式ポリエーテルアミン類,ポルフィリン、フタロシアニン、エチレンジアミン四酢酸等が例示される。
さらに、硫黄化合物としては、シスチン、システインなどのアミノ酸類、ポリチオフェン、ドデシルチオール等が例示される。
促進輸送膜20aにおけるキャリアの含有量は、キャリアや親水性化合物の種類等に応じて、適宜、設定すればよい。具体的には、0.3〜30質量%が好ましく、0.5〜25質量%がより好ましく、1〜20質量%が特に好ましい。
促進輸送膜20aにおけるキャリアの含有量を、上記範囲とすることにより、促進輸送膜20aを形成するための組成物(塗料)において、塗布前の塩析を好適に防ぐことができ、さらに、促進輸送膜20aが、酸性ガスの分離機能を確実に発揮できる。
促進輸送膜20a(促進輸送膜20aを形成するための組成物)は、このような親水性化合物、架橋剤およびキャリアに加え、必要に応じて、各種の成分を含有してもよい。
このような成分としては、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)等の酸化防止剤、炭素数3〜20のアルキル基または炭素数3〜20のフッ化アルキル基と親水性基とを有する化合物やシロキサン構造を有する化合物等の特定化合物、オクタン酸ナトリウムや1−ヘキサスルホン酸ナトリウム等の界面活性剤、ポリオレフィン粒子やポリメタクリル酸メチル粒子等のポリマー粒子等が例示される。
その他、必要に応じて、触媒、保湿(吸湿)剤、補助溶剤、膜強度調整剤、欠陥検出剤等を用いてもよい。
促進輸送膜20aは、単層構成でも、複数層から構成されるものでもよい。
ここで、促進輸送膜20aが複数層から構成される場合には、同じ膜を積層してもよく、組成、含有する成分の種類や数、pH、含有する各成分の濃度等が異なる膜を積層してもよい。
酸性ガス分離層20は、このような促進輸送膜20aと、多孔質支持体20bとから構成される。
多孔質支持体20bは、酸性ガス透過性を有し、かつ、促進輸送膜20aを形成するための塗布組成物の塗布が可能(塗膜の支持が可能)であり、さらに、形成された促進輸送膜20aを支持するものである。
多孔質支持体20bの形成材料は、上記機能を発現できる物であれば、公知の各種の物が利用可能である。
ここで、本発明の分離モジュール10において、酸性ガス分離層20を構成する多孔質支持体20bは、単層であってもよいが、多孔質膜と補助支持膜とからなる2層構成であるのが好ましい。このような2構成を有することにより、多孔質支持体20bは、上記酸性ガス透過性、促進輸送膜20aとなる塗布組成物の塗布および促進輸送膜20aの支持という機能を、より確実に発現する。
なお、多孔質支持体20bが単層である場合には、形成材料としては、以下に多孔質膜および補助支持膜で例示する各種の材料が利用可能である。
この2層構成の多孔質支持体20bでは、多孔質膜が促進輸送膜20a側となる。
多孔質膜は、耐熱性を有し、また加水分解性の少ない材料からなることが好ましい。このような多孔質膜としては、具体的には、ポリスルフォン、ポリエーテルスルホン、ポリプロピレン、セルロースなどのメンブレンフィルター膜、ポリアミドやポリイミドの界面重合薄膜、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)や高分子量ポリエチレンの延伸多孔膜等が例示される。
中でも、PTFEや高分子量ポリエチレンの延伸多孔膜は、高い空隙率を有し、酸性ガス(特に炭酸ガス)の拡散阻害が小さく、さらに、強度、製造適性などの観点から好ましい。その中でも、耐熱性を有し、また加水分解性の少ない等の点で、PTFEの延伸多孔膜が、好適に利用される。
多孔質膜は、使用環境下において、水分を含有した促進輸送膜20aが多孔部分に浸み込み易くなり、かつ、膜厚分布や経時での性能劣化を引き起こさないために、疎水性であるのが好ましい。
また、多孔質膜は、孔の最大孔径が1μm以下であるのが好ましい。
さらに、多孔質膜の孔の平均孔径は、0.001〜10μmが好ましく、0.002〜5μmがより好ましく、0.005〜1μmが特に好ましい。多孔質膜の平均孔径をこの範囲とすることにより、後述する接着剤の塗布領域は接着剤を十分に染み込ませ、かつ、多孔質膜が酸性ガスの通過の妨げとなることを好適に防止できる。
補助支持膜は、多孔質膜の補強用に備えられるものである。
この支持膜は、要求される強度、耐延伸性および気体透過性を満たすものであれば、各種の物が利用可能である。例えば、不織布、織布、ネット、および、平均孔径が0.001〜10μmのメッシュなどを、適宜、選択して用いることができる。
補助支持膜も、前述の多孔質膜と同様、耐熱性を有し、また加水分解性の少ない素材からなることが好ましい。
不織布、織布、編布を構成する繊維としては、耐久性や耐熱性に優れる、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、アラミド(商品名)などの改質ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素含有樹脂などからなる繊維が好ましい。メッシュを構成する樹脂材料も同様の素材を用いるのが好ましい。これらの材料のうち、安価で力学的強度の強いPPからなる不織布は、特に好適に例示される。
多孔質支持体20bが補助支持膜を有することにより、力学的強度を向上させることができる。そのため、例えば、後述するロール・トゥ・ロール(以下、RtoRとも言う)を利用する塗布装置においてハンドリングしても、多孔質支持体20bに皺がよることを防止でき、生産性を高めることもできる。
多孔質支持体20bは、薄すぎると強度に難がある。この点を考慮すると、多孔質膜の膜厚は5〜100μm、補助支持膜の膜厚は50〜300μmが好ましい。
また、多孔質支持体20bを単層にする場合には、多孔質支持体20bの厚さは、30〜500μmが好ましい。
このような酸性ガス分離層20は、促進輸送膜20aとなる成分を含む液体状の塗布組成物(塗料/塗布液)を調製して、多孔質支持体20bに塗布して、乾燥する、いわゆる塗布法で作製できる。
すなわち、まず、親水性化合物、キャリア、および、必要に応じて添加するその他の成分を、それぞれ適量で水(常温水または加温水)に添加して、十分、攪拌することで、促進輸送膜20aとなる塗布組成物を調製する。
この塗布組成物の調製では、必要に応じて、攪拌しつつ加熱することで、各成分の溶解を促進させてもよい。また、親水性化合物を水に加えて溶解した後、キャリアを徐々に加えて攪拌することで、親水性化合物の析出(塩析)を効果的に防ぐことができる。
この組成物を多孔質支持体20bに塗布して、乾燥することで、酸性ガス分離層20を作製する。
ここで、組成物の塗布および乾燥は、所定のサイズに切断されたカットシート状の多孔質支持体20bに行う、いわゆる枚葉式で行ってもよい。
好ましくは、酸性ガス分離層20の作製は、いわゆるRtoRによって行う。すなわち、長尺な多孔質支持体20bを巻回してなる送り出しロールから、多孔質支持体20bを送り出して、長手方向に搬送しつつ、調製した塗布組成物を塗布し、次いで、塗布した塗布組成物(塗膜)を乾燥して、多孔質支持体20bの表面に促進輸送膜20aを形成してなる酸性ガス分離層20を作製し、作製した酸性ガス分離層20を巻き取る。
RtoRにおける多孔質支持体20bの搬送速度は、多孔質支持体20bの種類や塗布液の粘度等に応じて、適宜、設定すればよい。
ここで、多孔質支持体20bの搬送速度が速すぎると、塗布組成物の塗膜の膜厚均一性が低下するおそれがあり、遅過ぎると生産性が低下する。この点を考慮すると、多孔質支持体20bの搬送速度は、0.5m/分以上が好ましく、0.75〜200m/分がより好ましく、1〜200m/分が特に好ましい。
塗布組成物の塗布方法は、公知の方法が、各種、利用可能である。
具体的には、カーテンフローコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等が例示される。
塗布組成物の塗膜の乾燥も、公知の方法で行えばよい。一例として、温風による乾燥が例示される。
温風の風速は、ゲル膜反を迅速に乾燥させることができるともにゲル膜反が崩れない速度を、適宜、設定すればよい。具体的には、0.5〜200m/分が好ましく、0.75〜200m/分がより好ましく、1〜200m/分が特に好ましい。
温風の温度は、多孔質支持体20bの変形などが生じず、かつ、ゲル膜反を迅速に乾燥させることができる温度を、適宜、設定すればよい。具体的には、膜面温度で、1〜120℃が好ましく、2〜115℃がより好ましく、3〜110℃が特に好ましい。
また、塗膜の乾燥には、必要に応じて、多孔質支持体20bの加熱を併用してもよい。
積層体14には、さらに、透過ガス流路用部材26が積層される。図示例において、透過ガス流路用部材26は、一例として長方形のシート状物である。
透過ガス流路用部材26は、キャリアと反応して酸性ガス分離層32を透過した酸性ガスGcを、中心筒12の貫通孔12aに流すための部材である。
前述のように、図示例において、積層体14は、酸性ガス分離層20を促進輸送膜20aを内側にして二つ折りにして、供給ガス流路用部材24を挟み込んだ挟持体36を有する。この挟持体36に、透過ガス流路用部材26を積層して、接着剤層30で接着することにより、1つの積層体14が構成される。
透過ガス流路用部材26は、積層体14間でスペーサとして機能して、積層体14の巻回中心(内側)に向かって中心筒12の貫通孔12aに至る、原料ガスGから分離した酸性ガスGcの流路を構成する。また、この酸性ガスGcの流路を適正に形成するために、後述する接着剤層30が浸透する必要が有る。この点を考慮すると、透過ガス流路用部材26は、供給ガス流路用部材24と同様、網目構造(ネット状/メッシュ状)の部材が好ましい。
透過ガス流路用部材26の形成材料は、十分な強度や耐熱性を有するものであれば、各種の材料が利用可能である。具体的には、エポキシ含浸ポリエステルなどポリエステル系の材料、ポリプロピレンなどポリオレフィン系材料、ポリテトラフルオロエチレンなどフッ素系の材料、金属、ガラス、セラミックスなどの無機材料等が、好適に例示される。
透過ガス流路用部材26の厚さは、原料ガスGの供給量や要求される処理能力等に応じて、適宜、決定すれば良い。
具体的には、100〜1000μmが好ましく、150〜950μmがより好ましく、200〜900μmが特に好ましい。
前述のように、透過ガス流路用部材26は、原料ガスGから分離されて酸性ガス分離層20を透過した酸性ガスGcの流路となる。
そのため、透過ガス流路用部材26は、流れるガスに対しての抵抗が少ないのが好ましい。具体的には、空隙率が高く、圧をかけたときの変形が少なく、かつ、圧損が少ないのが好ましい。
透過ガス流路用部材26の空隙率は、30〜99%が好ましく、35〜97.5%がより好ましく、40〜95%が特に好ましい。
また、圧をかけたときの変形は、引張試験を行ったときの伸度で近似できる。具体的には、10N/10mm幅の荷重をかけたときの伸度が5%以内であることが好ましく、4%以内であることがより好ましい。
さらに、圧損は、一定の流量で流した圧縮空気の流量損失で近似できる。具体的には、15cm角の透過ガス流路用部材26に、室温で15L/分の空気を流した際に、流量損失が7.5L/分以内であるのが好ましく、7L/分以内であるのがより好ましい。
以下、積層体14の積層方法、および、積層した積層体14の巻回方法すなわちスパイラル積層体14aの作製方法を説明する。なお、以下の説明に用いる図4〜図7では、図面を簡潔にして構成を明確に示すために、供給ガス流路部材24および透過ガス流路部材26は、端面(端部)のみをネット状で示す。
まず、図4(A)および(B)に概念的に示すように、中心筒12の延在方向と短手方向とを一致して、中心筒12に、カプトンテープや接着剤等の固定手段34を用いて、透過ガス流路用部材26の端部を固定する。
ここで、中心筒12の管壁には、軸方向に沿ってスリット(図示省略)が設けられているのが好ましい。この場合、スリットに、透過ガス流路用部材26の先端部を入れ込み、中心筒12の内周面に固定手段で固定するようにする。この構成によれば、透過ガス流路用部材26を含んだ積層体を中心筒12に巻き付ける際に、テンションをかけながら巻き付けるようにしても、中心筒12の内周面と透過ガス流路用部材26との摩擦で、透過ガス流路用部材26がスリットから抜けることを防止でき、すなわち、透過ガス流路用部材26の固定が維持される。
一方で、図5に概念的に示すように、酸性ガス分離層20を、促進輸送膜20aを内側にして二つ折りにし、間に供給ガス流路用部材24を挟み込む。すなわち、供給ガス流路用部材24を、二つ折りにした酸性ガス分離層20で挟持した挟持体36を作製する。なお、この際には、酸性ガス分離層20は均等に二つ折りにするのではなく、図5に示すように、一方が、若干、長くなるように、二つ折りする。
また、供給ガス流路用部材24による促進輸送膜20aの損傷を防止するために、酸性ガス分離層20を二つ折りにした谷部に、二つ折りにしたシート状の保護部材(例えば、カプトンテープやPTFEテープなど)を配置するのが好ましい。
さらに、二つ折りにした酸性ガス分離層20の短い方の表面(多孔質支持体20bの表面)に、接着剤層30となる接着剤30aを塗布する。
ここで、接着剤30a(すなわち、接着剤層30)は、図5に示すように、x方向の両端部近傍で、y方向の全域に延在して帯状に塗布し、さらに、折り返し部と逆側の端部近傍でx方向の全域に延在して帯状に塗布する。
以下、x方向(原料ガス供給方向)を、幅方向とも言う。また、前述のように、x方向と直交するy方向は、積層体14の巻回方向と一致する。
次いで、図6(A)および(B)に概念的に示すように、接着剤30aを塗布した面を透過ガス流路用部材26に向け、かつ、折り返し側を中心筒12に向けて、挟持体36を、中心筒12に固定した透過ガス流路用部材26に積層し、透過ガス流路用部材26と酸性ガス分離層20(多孔質支持体20b)とを接着する。
さらに、図6に示すように、積層した挟持体36の上面(長い側の多孔質支持体20bの表面)に、接着剤層30となる接着剤30aを塗布する。なお、以下の説明では、最初に固定手段34で中心筒12に固定された透過ガス流路用部材26と逆側の方向を、上側とも言う。
図6に示すように、この面の接着剤30aも、先と同様、幅方向の両端部近傍で、巻回方向の全域に延在して帯状に塗布し、さらに、折り返し部と逆側の端部近傍で幅方向の全域に延在して帯状に塗布する。
次いで、図7に概念的に示すように、接着剤30aを塗布した挟持体36の上に、透過ガス流路用部材26を積層し、酸性ガス分離層20(多孔質支持体20b)と透過ガス流路用部材26とを接着し、積層体14が形成される。
次いで、先と同様、図5に示すように、酸性ガス分離層20で供給ガス流路用部材24を挟み込んだ挟持体36を作製して、接着剤層30となる接着剤30aを塗布して、接着剤を塗布した側を下に向けて、最後に積層した透過ガス流路用部材26と挟持体36とを積層して、接着する。
さらに、先と同様、積層した挟持体36の上面に、図6に示すように接着剤30aを塗布して、次いで、図7に示すように、その上に、透過ガス流路用部材26を積層して、接着し、2層目の積層体14を積層する。
以下、図5〜図7の工程を繰り返して、図8に概念的に示すように、所定数の積層体14を積層する。
なお、この際においては、図8に示すように、積層体14は、上方に行くにしたがって、次第に、巻回方向に中心筒12から離間するように積層するのが好ましい。これにより、中心筒12への積層体14の巻回(巻き付け)を容易に行い、かつ、各透過ガス流路用部材26の中心筒12側の端部もしくは端部近傍が、好適に中心筒12に当接できる。
所定数の積層体14を積層したら、図8に示すように、中心筒12の外周面に接着剤38aを、最初に中心筒38に固定した透過ガス流路用部材26の上面の中心筒12と挟持体36との間に接着剤38bを、それぞれ、塗布する。
次いで、図8に矢印ywで示すように、積層した積層体14を巻き込むようにして、積層体14を中心筒12に巻回する(巻き付ける)。
巻き終わったら、最外周(すなわち、最初に中心筒12に固定した最下層)の透過ガス流路用部材26に、ひき出す方向(巻き絞める方向)の張力を掛けた状態で、所定時間、維持して、接着剤30a等を乾燥させる。
所定時間が経過したら、最外周の透過ガス流路用部材26を1周した位置で超音波融着等によって固定し、固定位置よりも外方の余分な透過ガス流路用部材26を切断して、積層した積層体14を中心筒12に巻回してなるスパイラル積層体14aを完成する。
前述のように、原料ガスGは、供給ガス流路用部材24の端部から供給され、酸性ガスGcは、酸性ガス分離層20を積層方向に通過して(輸送されて)、透過ガス流路用部材26に流入し、透過ガス流路用部材26内を流れて、中心筒12に至る。
ここで、接着剤30aを塗布されるのは、多孔質支持体20bであり、また、接着剤30aによって接着されるのは、網目構造の透過ガス流路用部材26である。従って、接着剤30aは、多孔質支持体20bおよび透過ガス流路用部材26内に浸透(含浸)し、両者の内部に接着剤層30が形成される。
また、接着剤層30(接着剤30a)は、前述のように、幅方向(x方向)の両端部近傍で、巻回方向(y方向)の全域に延在して帯状に形成される。さらに、接着剤層30は、この幅方向両端部近傍の接着剤30を幅方向に横切るように、中心筒12側となる折り返し部と逆側の端部近傍で幅方向の全域に延在して帯状に形成される。すなわち、接着剤層30は、中心筒12側を開放して、透過ガス流路用部材26および多孔質支持体20bの外周を囲むように形成される。また、透過ガス流路用部材26は、促進輸送膜20aによって挟まれた状態となっている。
これにより、積層体14の透過ガス流路用部材26には、中心筒12側が開放するエンベロープ状の流路が形成される。従って、酸性ガス分離層20を透過して透過ガス流路用部材26に流入した酸性ガスGcは、外部に流出することなく、透過ガス流路用部材26内を中心筒12に向かって流れ、貫通孔12aから中心筒12内に流入する。
本発明の分離モジュール10において、接着剤層30(接着剤30a)は、十分な接着力、耐熱性および耐湿性を有するものであれば、各種の公知の接着剤が利用可能である。
一例として、エポキシ樹脂、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が好適に例示される。
なお、接着剤層30となる接着剤30aは、一度塗りでもよいが、好ましくは、最初はアセトン等の有機溶剤で希釈した接着剤を塗布し、その上に、接着剤のみを塗布するのが好ましい。また、この際には、有機溶剤で希釈した接着剤は幅広に塗布し、接着剤は、これよりも狭い幅で塗布するのが好ましい。
これにより、多孔質支持体20bおよび透過ガス流路用部材26に、好適に接着剤層30(接着剤30a)を浸透させることができる。
本発明の分離モジュール10において、このようにして作製されるスパイラル積層体14aの両端部には、テレスコープ防止板(テレスコープ防止部材)16が配置される。
前述のように、テレスコープ防止板16は、スパイラル積層体14aが原料ガスGによって押圧されて、供給側の端面が入れ子状に押し込まれ、逆側の端面が入れ子状に突出する、いわゆるテレスコープ現象を防止するための部材である。
本発明において、テレスコープ防止板16は、スパイラル型の分離モジュールに用いられる公知のものが、各種、利用可能である。
図示例において、テレスコープ防止板は、円環状の外環部16aと、外環部16aの中に中心を一致して配置される円環状の内環部16bと、外環部16aおよび内環部16bを連結して固定するリブ(スポーク)16cとを有して構成される。前述のように、積層体14が巻回される中心筒12は、内環部16bを挿通する。
図示例において、リブ16cは、外環部16aおよび内環部16bの中心から、等角度間隔で放射状に設けられおり、外環部16aと内環部16bとの間で、かつ、各リブ16cの間隙が、原料ガスGもしくは残余ガスGrが通過する開口部16dとなっている。
また、テレスコープ防止板16は、スパイラル積層体14aの端面に接触して配置しても良い。しかしながら、一般的には、スパイラル積層体14aの端面全域を原料ガスの供給や残著ガスGrの排出に使用するために、テレスコープ防止板16とスパイラル積層体14aの端面とは、若干の間隙を有して配置される。
テレスコープ防止板16の形成材料は、十分な強度と、耐熱性および耐湿性を有する、各種の材料が利用可能である。
具体的には、金属材料(例えば、ステンレス(SUS)、アルミニウム、アルミニウム合金、錫、錫合金等)、樹脂材料(例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ナイロン12、ナイロン66、ポリサルフィン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル・ブタジエン・スチレン樹脂、アクリル・エチレン・スチレン樹脂、エポキシ樹脂、ニトリル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等)、およびこれら樹脂の繊維強化プラスチック(例えば繊維としては、ガラス繊維、カーボン繊維、ステンレス繊維、アラミド繊維などで、特に長繊維が好ましい。具体例としては、例えばガラス長繊維強化ポリプロピレン、ガラス長繊維強化ポリフェニレンサルファイドなど)、並びに、セラミックス(例えばゼオライト、アルミナなど)等が好適に例示される。
なお、樹脂を用いる際には、ガラス繊維等で強化した樹脂を用いてもよい。
被覆層18は、スパイラル積層体14aの周面を覆って、この周面すなわちスパイラル積層体14aの端面以外から外部への原料ガスGや残余ガスGrの排出を遮断するためのものである。
被覆層18は、原料ガスG等を遮蔽できる物が、各種、利用可能である。また、被覆層18は、筒状の部材であってもよく、線材やシート状の部材を巻回して構成してもよい。
一例として、FRP製の線材に、前述の接着剤層30に利用される接着剤を含浸して、接着剤を含浸した線材を、隙間無く、必要に応じて多重に、スパイラル積層体14aに巻き付けてなる被覆層18が例示される。
なお、この際においては、必要に応じて、被覆層18とスパイラル積層体14aとの間に、スパイラル積層体14aへの接着剤の染み込みを防止するためのカプトンテープ等のシート状部材を設けてもよい。
以上、本発明の分離モジュール(酸性ガス分離モジュール)について詳細に説明したが、本発明は上述の例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのは、もちろんである。
以下、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明の酸性ガス分離モジュールについて、より詳細に説明する。
[実施例1]
<酸性ガス分離層の作製>
ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸共重合体(クラレ社製 クラストマーAP-20)を3.3質量%、架橋剤(和光純薬社製 25質量%グルタルアルデヒド水溶液)を0.016質量%、含む水溶液を調製した。この水溶液に、1M塩酸を添加して、架橋させた。
架橋後、40%炭酸セシウム水溶液(稀産金属社製)を炭酸セシウム濃度が7.0重量%になるように添加して、脱泡し、塗布組成物を調製した。すなわち、本例では、炭酸セシウムが促進輸送膜20aのキャリアとなる。
次いで、多孔質支持体20b(PP不織布の表面に多孔質のPTFEを積層してなる積層体(GE社製))に塗布組成物を塗布して乾燥することで、促進輸送膜20aと多孔質支持体20bとからなる酸性ガス分離層20を作製した。
なお、促進輸送膜20aの厚さは50μmとした。
<分離モジュールの作製>
側面に中心線方向に延在するスリットを有する中心筒12を用意した。この中心筒12のスリットに、透過ガス流路用部材26(トリコット編みのエポキシ含浸ポリエステル)を挟み込むようにして固定して、図4に示すような状態とした。なお、中心筒12は、内部に仕切りが付いている。
一方、作製した酸性ガス分離層20を促進輸送膜20aを内側にして二つ折りした。二つ折りは、図5に示すように、一方の酸性ガス分離層20が、若干、長くなるように行った。二つ折りした酸性ガス分離層20の谷部にカプトンテープを貼り、供給ガス流路用部材24の端部が促進輸送膜20aの谷部を傷つけないように補強した。
次いで、二つ折りした酸性ガス分離層20に、供給ガス流路用部材24(厚さ0.44mmのポリプロピレン製ネット)を挟み込んで、挟持体36を作製した。
なお、この供給ガス流路用部材24には、内部に、原料ガスGの流路変更部材として、図3(A)に概念的に示すような、流路壁50aおよび50bが形成されている。
流路壁50aおよび50bは、エポキシ系接着剤で形成した。流路壁50aおよび50bの厚さLは8mmとした。さらに、供給ガス流路用部材24の面積に対する流路壁50aおよび50bの面積(面積比)は0.53%とした。
この挟持体36の酸性ガス分離層20が短い方の多孔質支持体20b側に、図5に示すように、幅方向(x方向)の両端部近傍に、巻回方向(y方向)の全域に延在し、かつ、巻回方向の折り返し部と逆側の端部近傍に、幅方向の全域に延在して、高粘度(約40Pa・s)のエポキシ系樹脂からなる接着剤30a(ヘンケルジャパン社製 E120HP)を塗布した。
次いで、接着剤30aを塗布した側を下方に向けて、図6に示すように、挟持体36と中心筒12に固定した透過ガス流路用部材26とを積層し、接着した。
次いで、透過ガス流路用部材26に積層した挟持体36の酸性ガス分離層20の上面に、図6に示すように、幅方向の両端部近傍に、巻回方向の全域に延在し、かつ、巻回方向の折り返し部と逆側の端部近傍に、幅方向の全域に延在して、接着剤30aを塗布した。さらに、接着剤30aを塗布した酸性ガス分離層20の上に、図7に示すように、透過ガス流路用部材26を積層して、接着することにより、1層目の積層体14を形成した。
先と同様にして、図5に示す挟持体36を、もう一つ作製し、同様に、短い側の酸性ガス分離層20の多孔質支持体20b側に、同様に接着剤30aを塗布した。次いで、図6と同様に、接着剤30aを塗布した側を先に形成した1層目の積層体14(その透過ガス流路用部材26)に向けて、挟持体36を、1層目の積層体14(透過ガス流路用部材26)の上に積層し、接着した。さらに、この挟持体36の上面に、図6と同様に接着剤30aを塗布し、その上に、図7と同様に透過ガス流路用部材26を積層して、接着することにより、2層目の積層体14を形成した。
さらに、上記2層目と同様にして、2層目の積層体14の上に、3層目の積層体14を形成した。
中心筒12に固定した透過ガス流路用部材26の上に、3層の積層体14を積層した後、図8に示すように、中心筒12の周面に接着剤38aを塗布し、さらに、中心筒12と最下層の積層体14との間の透過ガス流路用部材26上に、接着剤38bを塗布した。接着剤38aおよび38bは、接着剤30aと同じ物を用いた。
次いで、図8の矢印yx方向に中心筒12を回転することで、積層した3層の積層体14を巻き込むようにして中心筒12に多重に巻き付け、積層体14を牽引する方向に張力を掛けてスパイラル積層体14aとした。
さらに、スパイラル積層体14aの両端部に、内環部16bに中心筒12を挿通して、図8に示される形状の、ガラス繊維を40%含むPPS製のテレスコープ防止板16を取り付けた。
さらに、テレスコープ防止板16の周面およびスパイラル積層体14aの周面に、FRP加工を行うことで被覆層18を形成して、分離モジュール10を作成した。
作成した分離モジュール10の膜面積は、3層の合計で1.2m2である(設計値)。
[実施例2]
流路壁50aおよび50bの厚さLを26mmとし、供給ガス流路用部材24の面積に対する流路壁50aおよび50bの面積(面積比)を1.81%とした以外は、実施例1と同様にして分離モジュール10を作製した。
[実施例3]
積層体14の積層数を20とした以外は、実施例1と同様にして分離モジュール10を作製した。作成した分離モジュール10の膜面積は、20層の合計で30m2である(設計値)。
[実施例4]
供給ガス流路用部材24に形成する流路壁を、流路壁50aおよび50bに変えて、図3(B)に示すような流路壁50c、50dおよび50eにした以外は、実施例1と同様にして分離モジュール10を作製した。
本例においては、供給ガス流路用部材24の面積に対する流路壁50c、50dおよび50eの面積(面積比)は0.82%である。
[実施例5]
供給ガス流路用部材24に形成する流路壁を、流路壁50aおよび50bに変えて、図3(D)に示すような流路壁50hおよび50iにした以外は、実施例1と同様にして分離モジュール10を作製した。
本例においては、供給ガス流路用部材24の面積に対する流路壁50hおよび50iの面積(面積比)は0.47%である。
[実施例6]
供給ガス流路用部材24に形成する流路壁を、流路壁50aおよび50bに変えて、図3(C)に示すような流路壁50fおよび50gにし、かつ、流路壁の厚さLを13mmとした以外は、実施例1と同様にして分離モジュール10を作製した。
本例においては、供給ガス流路用部材24の面積に対する流路壁50fおよび50gの面積(面積比)は1.2%である。
[比較例1]
供給ガス流路用部材24が流路壁50aおよび50bを有さない以外は、実施例1と同様に分離モジュールを作成した。
<モジュールファクタ>
作製した各実施例および比較例の分離モジュールのモジュールファクタを、分離モジュールと、分離モジュールに用いた多孔質支持体20b上の促進輸送膜20a自体との、それぞれの分離係数を測定することで、算出した。
なお、本例では、CO2/H2分離係数およびCO2/N2分離係数を測定し、各分離係数毎に、モジュールファクタを算出した。
(分離モジュールの分離係数測定)
CO2/H2分離係数; H2:CO2:H2O=45:5:50(分圧比)の原料ガスG(流量2.2L(リットル)/min)を温度130℃、全圧301.3kPaで、各分離モジュールに供給し、透過側にArガス(流量0.9L/min)をフローさせた。透過してきたガスをガスクロマトグラフで分析し、CO2/H2分離係数(α)を算出した。
CO2/N2分離係数; N2:CO2:H2O=66:21:13(分圧比)の原料ガスG(流量1.72L/min)を温度130℃、全圧2001.3kPaで、各分離モジュールに供給した。透過してきたガスをガスクロマトグラフで分析し、CO2/N2分離係数(α)を算出した。
(多孔質支持体20b上の促進輸送膜20a自体の分離係数測定)
CO2/H2分離係数; H2:CO2:H2O=45:5:50(分圧比)の原料ガスG(流量0.32L/min)を温度130℃、全圧301.3kPaで、促進輸送膜20aに供給し、透過側にArガス(流量0.04L/min)をフローさせた。透過してきたガスをガスクロマトグラフで分析し、CO2/H2分離係数(α)を算出した。
CO2/N2分離係数; N2:CO2:H2O=66:21:13(分圧比)の原料ガスG(流量0.32L/min)を温度130℃、全圧2001.3kPaで、促進輸送膜20aに供給した。透過してきたガスをガスクロマトグラフで分析し、CO2/N2分離係数(α)を算出した。
以上のように測定したCO2/H2分離係数(α)およびCO2/N2分離係数(α)を用いて、下記式によってモジュールファクタを算出した。
モジュールファクタ=分離モジュールの(α)/促進輸送膜20aの(α)
結果を下記表に示す。
上記表に示されるように、供給ガス流路用部材24に流路壁を有する本発明の分離モジュールは、流路壁を有さない比較例の分離モジュールよりも、高いモジュールファクタを示しており、優れた分離性能を有している。なお、実施例3は、膜面積が大きいために、モジュールファクタが出にくかったと考えられる。
特に、供給方向に対して原料ガスGを逆流させ、次いで、供給方向に向かうように流路壁を形成した実施例6の分離モジュールは、優れた分離性能を示している。
以上の結果より、本発明の効果は明らかである。
水素ガスの製造や天然ガスの精製等に好適に利用可能である。
10 (酸性ガス)分離モジュール
12 中心筒
14 積層体
14a スパイラル積層体
16 テレスコープ防止板
16a 外環部
16b 内環部
16c リブ
16d 開口部
18 被覆層
20 酸性ガス分離層
20a 促進輸送膜
20b 多孔質支持体
24 供給ガス流路用部材
26 透過ガス流路用部材
30 接着剤層
30a 接着剤
34 固定手段
36 挟持体
40 接着部材
50a,50b,50c,50d,50e,50f,50g,50h,50i 流路壁

Claims (7)

  1. 原料ガスから酸性ガスを分離する酸性ガス分離膜を有するシート状の酸性ガス分離層と、前記酸性ガス分離層に積層されるシート状で、内部が前記原料ガスの流路となる供給ガス流路用部材とを有し、
    さらに、前記供給ガス流路用部材の内部に、前記原料ガスの流路を変更する流路変更部材を有し、
    前記原料ガスの供給方向をx方向、このx方向と直交する方向をy方向とした際に、前記流路変更部材が、前記x方向に、複数、配置されており、かつ、少なくとも1つの流路変更部材は、前記供給ガス流路用部材のy方向の一方の端部からy方向に向かって延在し、他の少なくとも1つの流路変更部材は、前記供給ガス流路用部材のy方向の逆側の端部からy方向に向かって延在するものであり、
    さらに、前記x方向の最上流に位置する前記流路変更部である最上流流路変更部材は、前記供給ガス流路用部材のy方向の一方の端部からy方向に向かって延在し、かつ、前記y方向の一方の端部から前記x方向の下流側に向かうように、前記y方向に対して傾斜するものであり、
    前記最上流流路変更部材の前記x方向の直下流に位置する前記流路変更部材は、前記供給ガス流路用部材の前記最上流流路変更部材とは逆側の前記y方向の端部からy方向に向かって延在し、かつ、前記逆側のy方向の端部から前記x方向の上流側に向かうように、前記y方向に対して傾斜するものであることを特徴とする酸性ガス分離モジュール。
  2. 前記流路変更部材は、前記原料ガスの供給方向に対して逆流する方向に向かい、その後、前記原料ガスの供給方向に向かうように、前記原料ガスの流路を変更する請求項1に記載の酸性ガス分離モジュール。
  3. 前記流路変更部材は、前記供給ガス流路用部材の厚さ方向に高さ方向を有し、前記供給ガス流路用部材の面方向に延在する壁状の部材であり、
    かつ、この壁の厚さが5〜50mmである請求項1または2に記載の酸性ガス分離モジュール。
  4. 前記供給ガス流路用部材の面方向において、前記流路変更部材の面積が、前記供給ガス流路用部材の全面積の0.01〜10%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸性ガス分離モジュール。
  5. 前記供給ガス流路用部材と酸性ガス分離層とを含む積層体を巻回してなるスパイラル型である請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸性ガス分離モジュール。
  6. 前記酸性ガス分離層によって供給ガス流路用部材を挟持し、さらに、その両面に前記酸性ガス分離膜が分離した酸性ガスの流路となる、シート状の透過ガス流路用部材を積層してなる積層体を、少なくとも1つ有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の酸性ガス分離モジュール。
  7. さらに、島状の流路変更部材を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の酸性ガス分離モジュール。
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