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JP2015020147A - 酸性ガス分離用スパイラル型モジュール - Google Patents

酸性ガス分離用スパイラル型モジュール Download PDF

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澤田  真
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Abstract

【課題】促進輸送膜を有する酸性ガス分離層を含む積層体を巻回してなるスパイラル型の酸性ガス分離モジュールにおいて、促進輸送膜の欠陥が無い、高品質な酸性ガス分離用スパイラル型モジュールを提供する。【解決手段】原料ガスの流路となる供給ガス流路用部材と、供給ガス流路用部材を流れる原料ガスから酸性ガスを分離する、酸性ガスと反応するキャリアおよびキャリアを担持するための親水性化合物を含有する促進輸送膜を、供給ガス流路用部材側の面に有する酸性ガス分離層と、促進輸送膜を透過した酸性ガスが中心筒まで流れる流路となる透過ガス流路用部材と、供給ガス流路用部材の促進輸送膜側の表面に形成される、フッ素系皮膜およびケイ素系皮膜の少なくとも1つと、を有することにより、この課題を解決する。【選択図】図2

Description

本発明は、原料ガスから酸性ガスを選択的に分離する、酸性ガス分離モジュールに関する。詳しくは、酸性ガス分離膜を有する積層体を巻回してなる、酸性ガス分離用スパイラル型モジュールに関する。
近年、原料ガス(被処理ガス)から、炭酸ガスなどの酸性ガスを選択的に分離する技術の開発が進んでいる。例えば、酸性ガスを選択的に透過する酸性ガス分離膜を用いて、原料ガスから酸性ガスを分離する酸性ガス分離モジュールが開発されている。
具体的には、特許文献1には、管壁に貫通孔が形成された、分離した酸性ガスを収集するための中心筒(中心透過物収集管)に、酸性ガス分離膜を含む積層体を多重に巻き付けてなる酸性ガス分離モジュールが開示されている。
この特許文献1に開示される酸性ガス分離モジュールは、酸性ガス分離膜として、いわゆる溶解拡散膜を用いる、溶解拡散型の酸性ガス分離モジュールである。この溶解拡散膜は、膜に対する酸性ガスと分離対象物質との溶解性、および、膜中の拡散性の差を利用して、原料ガスから酸性ガスを分離する。
また、特許文献2には、空間を酸性ガス分離膜で原料室と透過室とに分けて、原料室に原料ガス(CO2、H2およびH2Oからなる混合ガス)を供給し、酸性ガス分離膜で選択的に分離(透過)した酸性ガスを、透過室から取り出す酸性ガス分離モジュール(実験装置)が開示されている。
この特許文献2に開示される酸性ガス分離モジュールは、酸性ガス分離膜として、いわゆる促進輸送膜を用いる、促進輸送型の酸性ガス分離モジュールである。この促進輸送膜は、膜中に酸性ガスと反応するキャリアを有し、このキャリアによって酸性ガスを膜の反対側に輸送することで、原料ガスから酸性ガスを分離する。
このような酸性ガス分離モジュールにおいて、特許文献1に示されるような、酸性ガス分離膜を有する積層体を、壁面に貫通孔を有する中心筒に巻回してなる(中心筒に巻き付けた)、いわゆるスパイラル型の酸性ガス分離モジュールは、酸性ガス分離膜の面積を非常に大きくできる。そのため、スパイラル型の酸性ガス分離モジュールは、効率の良い処理が可能で、非常に有力である。
特開平4−215824号公報 特許第4621295号公報
スパイラル型の酸性ガスモジュールは、一例として、酸性ガス分離膜および中心筒に加え、酸性ガスを分離される原料ガスの流路となる供給ガス流路用部材、および、酸性ガス分離膜で分離された酸性ガスの流路となる透過ガス流路用部材を有して構成される。
このような部材からなるスパイラル型の酸性ガスモジュールは、酸性ガス分離膜、供給ガス流路用部材および透過ガス流路用部材を積層した積層体を、1つ、もしくは、複数積層して、中心筒に巻き付けた構成を有する。
例えば、前述の特許文献1には、酸性ガス分離膜を二つ折りにして供給ガス流路用部材(供給物スペーサ)を挟持し、二つ折りにした酸性ガス分離膜の一方に透過ガス流路用部材(透過物スペーサ)を積層した積層体を作成し、この積層体を、複数、積層した積層物を中心筒(透過物収集管)に巻き付けた、スパイラル型の酸性ガス分離モジュールが開示されている。
ところが、本発明者の検討によれば、促進輸送膜を利用する酸性ガス分離モジュールでは、このような構成のスパイラル型のモジュールを構成すると、往々にして、目的とする性能を有する酸性ガス分離モジュールが得られない場合が生じた。
すなわち、供給ガス流路用部材は、原料ガスの流路を構成すると共に、自身の中を流れる原料ガスを酸性ガス分離膜に接触させるために、網目構造を有するのが通常である。
他方、一般的に、促進輸送膜を有する酸性ガス分離膜は、促進輸送膜の吸湿性が高いほど、酸性ガスの分離速度(透過速度)が高くなる傾向にある。そのため、促進輸送膜は、超吸水性樹脂などの親水性化合物をバインダとして用い、このバインダにキャリアを分散してなる構成を有するものであり、柔らかい場合が多い。
ここで、スパイラル型の分離モジュールは、前述のような積層体を中心筒に巻き付けてなる構成を有するので、この巻き付けの際に、促進輸送膜と供給ガス流路用部材との位置ズレが生じる。
この位置ズレによって、促進輸送膜と供給ガス流路用部材とが摺接して、促進輸送膜が損傷し、甚だしい場合には、部分的にほぼ全てが除去されて欠陥となってしまう。その結果、促進輸送膜を用いるスパイラル型の酸性ガス分離モジュールでは、この促進輸送膜の損傷に起因して、目的とする性能を有する分離モジュールが得ない場合が生じる。
本発明の目的は、このような従来技術の問題点を解決することにあり、促進輸送膜を有する酸性ガス分離層(分離膜)を用いる、スパイラル状の酸性ガス分離モジュールであって、巻回時における促進輸送膜と供給ガス流路用部材との摺接に起因する促進輸送膜の損傷を防止して、目的とする性能を有するモジュールを安定して得ることができる酸性ガス分離用スパイラル型モジュールを提供することに有る。
この目的を達成するために、本発明は、管壁に貫通孔が形成された中心筒と、原料ガスの流路となる供給ガス流路用部材と、供給ガス流路用部材を流れる原料ガスから酸性ガスを分離する、酸性ガスと反応するキャリアおよびキャリアを担持するための親水性化合物を含有する促進輸送膜を、供給ガス流路用部材側の面に有する酸性ガス分離層と、促進輸送膜を透過した酸性ガスが中心筒まで流れる流路となる透過ガス流路用部材と、供給ガス流路用部材の促進輸送膜側の表面に形成される、フッ素系皮膜およびケイ素系皮膜の少なくとも1つと、を有し、供給ガス流路用部材、酸性ガス分離層および透過ガス流路用部材を有する積層体を、1以上、中心筒に巻回してなる酸性ガス分離用スパイラル型モジュールを提供する。
ここで、供給ガス流路用部材は、織物または不織布であって、繊維径が100〜900μmであり、繊維密度が2〜30mg/cm2であるのが好ましい。
また、促進輸送膜の厚さが5〜150μmであるのが好ましい。
また、フッ素系皮膜およびケイ素系皮膜の少なくとも1つが形成された供給ガス流路用部材の引張弾性係数が、1〜500MPaであるのが好ましい。
また、供給ガス流路用部材が、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトンおよびポリフッ化ビニリデンから選ばれる1種以上の樹脂を含む糸で形成された網目構造を有するのが好ましい。
また、積層体は、促進輸送膜を内側にして二つ折りにした酸性ガス分離層で、供給ガス流路用部材を挟んでなる挟持体に、透過ガス流路用部材を積層してなる構成を有するのが好ましい。
さらに、酸性ガス分離層は、促進輸送膜を多孔質支持体で支持してなる構成を有するのが好ましい。
本発明によれば、促進輸送膜を用いるスパイラル型の酸性ガス分離モジュールにおいて、巻回時に生じる促進輸送膜と供給ガス流路用部材との摺接に起因する促進輸送膜の損傷を好適に防止できる。
そのため、本発明によれば、促進輸送膜の損傷に起因する性能低下を防止した、製品の安定性に優れ、かつ、目的とする性能を発現する酸性ガス分離モジュールを、安定して得ることができる。
本発明の酸性ガス分離モジュールの一例を一部切り欠いて示す概略斜視図である。 図1に示す酸性ガス分離モジュールの積層体の概略断面図である。 (A)および(B)は、図1に示す酸性ガス分離モジュールの作製方法を説明するための概念図である。 図1に示す酸性ガス分離モジュールの作製方法を説明するための概念図である。 (A)および(B)は、図1に示す酸性ガス分離モジュールの作製方法を説明するための概念図である。 図1に示す酸性ガス分離モジュールの作製方法を説明するための概念図である。 図1に示す酸性ガス分離モジュールの作製方法を説明するための概念図である。
以下、本発明の酸性ガス分離用スパイラル型モジュールについて、添付の図面に示される好適実施例を基に、詳細に説明する。
図1に本発明の酸性ガス分離用スパイラル型モジュールの一例の一部切欠き概略斜視図を示す。
図1に示すように、酸性ガス分離用スパイラル型モジュール10は、基本的に、中心筒12と、酸性ガス分離膜(促進輸送膜20a)を有する積層体14と、テレスコープ防止板16とを有して構成される。なお、以下の説明では、酸性ガス分離用スパイラル型モジュールを、単に、分離モジュールとも言う。
分離モジュール10は、例えば、一酸化炭素、炭酸ガス(CO2)、水(水蒸気)および水素を含有する原料ガスGから、酸性ガスGcとして炭酸ガスを分離するものである。
本発明の分離モジュール10は、いわゆるスパイラル型の分離モジュールである。すなわち、分離モジュール10は、シート状の積層体14を、1層、もしくは、複数積層して、中心筒12に巻回して、積層体14の巻回物の両端面に、中心筒12を挿通してテレスコープ防止板16を設けてなる構成を有する。また、巻回した積層体14の最外周面は、ガス非透過性の被覆層18で覆われている。
なお、以下の説明では、中心筒12に巻回された、複数の積層体14を積層した物の巻回物(すなわち、積層されて巻回された積層体14による略円筒状物)を、便宜的に、スパイラル積層体14aとも言う。
このような分離モジュール10において、酸性ガスを分離される原料ガスGは、例えば図1中奥手側のテレスコープ防止板16(その開口部16d)を通って、スパイラル積層体14aの端面に供給され、端面から積層体14に流入して、積層体14内を流れつつ、酸性ガスGcを分離される。
また、積層体14によって原料ガスGから分離された酸性ガスGcは、中心筒12から排出される。他方、酸性ガスを分離された原料ガスG(以下、便宜的に残余ガスGrとする)は、スパイラル積層体14a(積層体14)の供給側とは逆側の端面から排出され、テレスコープ防止板16(同前)を通って分離モジュール10の外部に排出される。
中心筒(透過ガス集合管)12は、原料ガスG供給側の端面が閉塞する円筒状の管で、周面(管壁)には複数の貫通孔12aが形成される。
原料ガスGから分離された酸性ガスGcは、後述する透過ガス流路用部材26を通って、貫通孔12aから中心筒12内に至り、中心筒12の開放端12bから排出される。
中心筒12において、後述する接着剤層30で封止される領域における開口率(中心筒12の外周面に占める貫通孔12aの面積率)は、1.5〜80%が好ましく、3〜75%がより好ましく、5〜70%がさらに好ましい。中でも、実用的な観点から、中心筒12の開口率は、5〜25%が、特に好ましい。
中心筒12の開口率を上記範囲とすることにより、効率的に酸性ガスGcを収集することができ、また、中心筒12の強度を高め、加工適性を十分に確保できる。
また、貫通孔12aは、直径0.5〜20mmの円形の孔であるのが好ましい。さらに、貫通孔12aは、中心筒12の周壁に、均一に形成されるのが好ましい。
なお、中心筒12には、必要に応じて、分離した酸性ガスGcを開放端12b側に流すためのガス(スイープガス)を供給する供給口(供給部)を設けてもよい。
積層体14は、酸性ガス分離層20と、供給ガス流路用部材24と、透過ガス流路用部材26とを積層してなるものである。また、供給ガス流路用部材24の表面には、被膜28が形成されている(図2等参照)。
なお、図1において、符号30は、酸性ガス分離層20と透過ガス流路用部材26とを接着し、かつ、積層体14同士を接着すると共に、透過ガス流路用部材26における酸性ガスGcの流路を、中心筒12側が開口するエンベロープ状にする接着剤層30である。
前述のように、図示例の分離モジュール10は、この積層体14を、複数、積層して、中心筒12に巻回して(巻き付けて)、略円筒状のスパイラル積層体14aを形成してなる構成を有する。
以下、便宜的に、この積層体14の巻回に対応する方向を周方向(矢印y方向)、周方向と直交する方向を幅方向(矢印x方向)とする。なお、積層体14は、一般的に、矩形のシート状物であるが、周方向は、通常、積層体14(酸性ガス分離層20、供給ガス流路用部材24および透過ガス流路用部材26)の長手方向になる。
分離モジュール10において、積層体14は1層でもよい。しかしながら、図示例のように、複数の積層体14を積層することにより、酸性ガス分離層20の膜面積を大きくして、1つのモジュールで分離する酸性ガスGcの量を向上できる。なお、酸性ガス分離層20の膜面積の向上は、積層体14の幅方向の長さを長くすることでも図れる。
積層体14の積層数は、分離モジュール10に要求される処理速度や処理量、分離モジュール10の大きさ等に応じて、適宜、設定すればよい。ここで、積層する積層体14の数は、50以下が好ましく、45以下がより好ましく、40以下が特に好ましい。積層体14の積層数を、この数とすることで、中心筒12への積層体14の巻回が容易になり、加工性を向上できる。
図2に、積層体14の部分断面図を示す。前述のように、矢印xは幅方向、矢印yは周方向である。
図示例において、積層体14は、二つ折りにした酸性ガス分離層20の間に透過ガス流路用部材24を挟み込んで挟持体36とし(図4参照)、この挟持体36に、透過ガス流路用部材26を積層してなる構成を有する。この構成については、後に詳述する。
前述のように、分離モジュール10において、原料ガスGは、テレスコープ防止板16(その開口部16d)を通って、スパイラル積層体14aの一方の端面から供給される。すなわち、原料ガスGは、各積層体14の幅方向(矢印x方向)の端部(端面)に供給される。
図2に概念的に示すように、積層体14の幅方向の端面に供給された原料ガスGは、供給ガス流路用部材24を幅方向に流れる。この流れの中で、酸性ガス分離層20(促進輸送膜20a)に接触した酸性ガスGcは、原料ガスGから分離されて、酸性ガス分離層20を積層体14の積層方向に通過して(促進輸送膜20aのキャリアによって積層方向に輸送されて)、透過ガス流路用部材26に流入する。
透過ガス流路用部材26に流入した酸性ガスGcは、透過ガス流路用部材26を周方向(矢印y方向)に流れて、中心筒12に至り、中心筒12の貫通孔12aから中心筒12内に流入する。
この酸性ガスGcの流れは、接着剤層30によって規制される。すなわち、分離モジュール10においては、透過ガス流路用部材26を挟む2つの酸性ガス分離層20(促進輸送膜20a)と、透過ガス流路用部材26および酸性ガス分離層20(多孔質支持体20b)に浸透した接着剤層30とによって、面方向における接着剤層30の内側に、透過ガス流路用部材26を内包する、中心筒12側が開放するエンベロープ状の流路(空間)が形成される(図4および図5参照)。分離モジュール10は、これにより、酸性ガス分離層20を透過した酸性ガスGcが外部に流出するのを防止している。
この接着剤層30に関しては、後に詳述する。
中心筒12内に流入した酸性ガスGcは、中心筒12を幅方向に流れて、開放端12bから排出される。
また、酸性ガスGcを除去された残余のガスGrは、供給ガス流路用部材24を幅方向に流れて、スパイラル積層体14aの逆側の端面から排出され、テレスコープ防止板16(その開口部16d)を通って、分離モジュール10の外部に排出される。
供給ガス流路用部材24は、その幅方向の端部から、原料ガスGを供給され、部材内を流れる原料ガスGと、酸性ガス分離層20とを接触させる。
ここで、本発明の分離モジュール10においては、供給ガス流路用部材24の表面に、被膜28が形成される(図1では省略)。この被膜28は、フッ素系材料(フッ素系被膜)および/または珪素系材料(珪素系被膜)からなるものである。供給ガス流路用部材24は、酸性ガス分離層20の促進輸送膜20aに対面して配置される。従って、この被膜28は、促進輸送膜20aに接触して設けられる。この被膜28に関しては、後に詳述する。
このような供給ガス流路用部材24は、前述のように二つ折りされた酸性ガス分離層20のスペーサとして機能して、原料ガスGの流路を構成する。また、供給ガス流路用部材24は、原料ガスGを乱流にするのが好ましい。この点を考慮すると、供給ガス流路用部材24は、網目構造(ネット状/メッシュ状)を有する部材が好ましい。中でも、後述する樹脂材料の1以上を含有する糸で形成された網目構造が好ましい。
このような供給ガス流路用部材24の形成材料としては、十分な耐熱性および耐湿性を有するものであれば、各種の材料が利用可能である。
一例として、紙、上質紙、コート紙、キャストコート紙、合成紙などの紙材料、セルロース、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、アラミド、ポリカーボネートなどの樹脂材料、金属、ガラス、セラミックスなどの無機材料等が、好適に例示される。
中でも、樹脂材料もしくは樹脂材料を含有する材料)は好適に例示される。樹脂材料としては、具体的には、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリスルホン(PSF)、ポリプロピレン(PP)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトンおよびポリフッ化ビニリデン等が、好適に例示される。このような樹脂材料は、複数を併用してもよい。
供給ガス流路用部材24の厚さは、原料ガスGの供給量や要求される処理能力等に応じて、適宜、決定すれば良い。
具体的には、100〜1000μmが好ましく、150〜950μmがより好ましく、200〜900μmが特に好ましい。
また、供給ガス流路用部材24が、樹脂製の糸等で形成される網目構造を有する織物や不織布の場合には、その繊維径は、100〜900μmであるのが好ましい。また、繊維密度は、2〜30mg/cm2であるのが好ましい。
後に詳述するが、スパイラル型の分離モジュールにおいて、性能低下の一因として、積層体14(積層体14を積層した積層物)を中心筒12に巻回する際における、促進輸送膜20aと供給ガス流路用部材24との摺接に起因する促進輸送膜20aの損傷が例示される。
これに対して、本発明の分離モジュール10は、供給ガス流路用部材24の表面に被膜28を有することで、積層体14を中心筒12に巻回する際における、促進輸送膜20aと供給ガス流路用部材24との摺接に起因する促進輸送膜20aの損傷を防止する。
しかしながら、供給ガス流路用部材24を構成する糸(繊維)の繊維径が100μm未満の場合には、供給ガス流路用部材24の空隙率が低くなり、また、圧力損失が大きくなることから、処理効率が低下するおそれがある。従って、繊維径は100μm以上とするのが好ましい。
また、繊維径が900μm超の場合には、膜表面への繊維の押し込み量が大きくなるため、表面に皮膜28を形成しても、両者の摺接に起因する促進輸送膜20aの損傷を防止できないおそれがある。従って、繊維径は、900μm以下とするのが好ましい。
同様に、供給ガス流路用部材24を構成する糸(繊維)の繊維密度が2mg/cm2未満の場合には、供給ガス流路用部材24(皮膜28)と促進輸送膜20aとの接触面積が十分大きくならず、モジュールを巻く際に、膜表面への繊維の押し込み量が大きくなるため両者の摺接に起因する促進輸送膜20aの損傷を防止できないおそれがある。従って、繊維径は、2mg/cm2以上とするのが好ましい。
また、繊維密度が30mg/cm2超の場合には、供給ガス流路用部材24の空隙率が低くなり、流れる原料ガスGに対しての抵抗が大きくなり、処理効率が低下するおそれがある。従って、繊維密度は、30mg/cm2以下とするのが好ましい。
また、供給ガス流路用部材24の引張弾性係数は、1〜500MPaとするのが好ましい。
引張弾性係数が500MPa超の場合には、すなわち、供給ガス流路用部材24が硬いと、モジュールを巻く際に、膜表面への繊維の押し込み量が大きくなり、促進輸送膜20aを傷つけるおそれがある。従って、引張弾性係数は、500MPa以下とするのが好ましい。
また、引張弾性係数が1MPa未満の場合には、供給ガス流路用部材24が柔らかいため、酸性ガス分離膜20間でスペーサとして機能しないおそれがある、すなわち、原料ガスの流路を確保できないおそれがある。従って、引張弾性係数は、1MPa以上とするのが好ましい。
このように、供給ガス流路用部材24の繊維径、繊維密度、引張弾性係数を制御することで、製造安定性と処理性能を向上することができる。
なお、供給ガス流路用部材24の引張弾性係数は、網目構造等の構造体としての引張応力とひずみ量との関係から求められるものである。また、引張弾性係数は、供給ガス流路用部材24の表面に皮膜28が形成された状態のものであってもよい。
本発明の分離モジュール10は、促進輸送型である。そのため、酸性ガス分離層20は、促進輸送膜20aと、多孔質支持体20bとから構成される。
促進輸送膜20aは、少なくとも、供給ガス流路用部材24を流れる原料ガスGに含有される酸性ガスGcと反応するキャリア、および、このキャリアを担持する親水性化合物を含有する。このような促進輸送膜20aは、原料ガスGから酸性ガスGcを選択的に透過させる機能(酸性ガスGcを選択的に輸送する機能)を有している。
促進輸送型の分離モジュールは、高温かつ高湿での使用が必要条件である。従って、促進輸送膜20aは、高温下(例えば、100〜200℃)でも、酸性ガスGcを選択的に透過させる機能を有する。また、原料ガスGが水蒸気を含んでも、水蒸気を親水性化合物が吸湿して促進輸送膜20aが水分を保持することで、さらにキャリアが酸性ガスGcを輸送し易くなるので、溶解拡散膜を用いる場合に比べて分離効率が高まる。
促進輸送膜20aの膜面積は、分離モジュール10の大きさ、分離モジュール10に要求される処理能力等に応じて、適宜、設定すればよい。具体的には、0.01〜1000m2が好ましく、0.02〜750m2がより好ましく、0.025m〜500m2がさらに好ましい。中でも、促進輸送膜20aの膜面積は、実用的な観点から、1〜100m2が、特に好ましい。
促進輸送膜20aの膜面積を上記範囲とすることにより、膜面積に対して効率よく酸性ガスGcを分離でき、また、加工性も良好になる。
促進輸送膜20aの周方向の長さ(二つ折りする前の全長)も、分離モジュール10の大きさや分離モジュール10に要求される処理能力等に応じて、適宜、設定すればよい。具体的には、100〜10000mmが好ましく、150〜9000mmがより好ましく、200〜8000mmがさらにより好ましい。中でも、促進輸送膜20aの長さは、実用的な観点から、800〜4000mmが、特に好ましい。
促進輸送膜20aの周方向の長さを、上記範囲とすることにより、膜面積に対して効率よく酸性ガスGcを分離することができ、さらに、積層体14を巻回する際の巻きずれの発生が抑制され、加工性が容易となる。
なお、促進輸送膜の幅も、分離モジュール10の幅方向のサイズに応じて、適宜、設定すれば良い。
促進輸送膜20aの厚さも、分離モジュール10の大きさや分離モジュール10に要求される処理能力等に応じて、適宜、設定すればよい。
ここで、後に詳述するが、スパイラル型の分離モジュールにおいて、性能低下の一因として、積層体14(積層体14を積層した積層物)を中心筒12に巻回する際における、促進輸送膜20aと供給ガス流路用部材24との摺接に起因する促進輸送膜20aの損傷が例示される。
促進輸送膜20aの損傷に起因する性能低下は、促進輸送膜20aを厚くすることで、抑制できる。しかしながら、促進輸送膜20aが厚くなると、透過性能が低下するため、その分だけ、酸性ガスGcの分離性能が低下する。
これに対して、本発明の分離モジュール10は、供給ガス流路用部材24の表面に被膜28を有するので、積層体14を中心筒12に巻回する際における、促進輸送膜20aと供給ガス流路用部材24との摺接に起因する促進輸送膜20aの損傷を防止できる。すなわち、透過性能を向上するために、促進輸送膜20aを薄くしても、促進輸送膜20aの損傷に起因する性能低下を防止できる。
以上の点を考慮すると、促進輸送膜20aの厚さは、5〜150μmが好ましく、10〜120μmがより好ましい。
促進輸送膜20aの厚さを、上記範囲にすることにより、高いガス透過性と分離選択性とを実現できる。
親水性化合物はバインダとして機能するものであり、促進輸送膜20aにおいて、水分を保持して、キャリアによる二酸化炭素等のガスの分離機能を発揮させる。また、親水性化合物は、耐熱性の観点から、架橋構造を有するのが好ましい。
このような親水性化合物としては、親水性ポリマーが例示される。
親水性化合物は、水に溶けて塗布液を形成できると共に、促進輸送膜20aが高い親水性(保湿性)を有するのが好ましいという観点から、親水性が高いものが好ましい。
具体的には、親水性化合物は、生理食塩液の吸水量が0.5g/g以上の親水性を有することが好ましく、同1g/g以上の親水性を有することがより好ましく、同5g/g以上の親水性を有することがさらに好ましく、同10g/g以上の親水性を有することが特に好ましく、さらには、同20g/g以上の親水性を有することが最も好ましい。
親水性化合物の重量平均分子量は、安定な膜を形成し得る範囲で、適宜、選択すればよい。具体的には、20,000〜2,000,000が好ましく、25,000〜2,000,000がより好ましく、30,000〜2,000,000が特に好ましい。
親水性化合物の重量平均分子量を20,000以上とすることで、安定して十分な膜強度を有する促進輸送膜20aを得ることができる。
特に、親水性化合物が架橋可能基として−OHを有する場合には、親水性化合物は、重量平均分子量が30,000以上であるのが好ましい。この際には、重量平均分子量は更に好ましくは40,000以上であり、より好ましくは、50,000以上である。また、親水性化合物が架橋可能基として−OHを有する場合には、製造適性の観点から、重量平均分子量は、6,000,000以下であることが好ましい。
また、架橋可能基として−NH2を有する場合には、親水性化合物は、重量平均分子量が10,000以上であるものが好ましい。この際には、親水性化合物の重量平均分子量は、15,000以上であるのがより好ましく、20,000以上であるのが特に好ましい。また、親水性化合物が、架橋可能基として−NH2を有する場合には、製造適性の観点から、重量平均分子量は、1,000,000以下であるのが好ましい。
なお、親水性化合物の重量平均分子量は、例えば、親水性化合物としてPVAを用いる場合には、JIS K 6726に準じて測定した値を用いればよい。また、市販品を用いる場合には、カタログ、仕様書などで公称される分子量を用いればよい。
親水性化合物を形成する架橋可能基としては、耐加水分解性の架橋構造を形成し得るものが、好ましく選択される。
具体的には、ヒドロキシ基(−OH)、アミノ基(−NH2)、塩素原子(−Cl)、シアノ基(−CN)、カルボキシ基(−COOH)、および、エポキシ基等が例示される。これらの中でも、アミノ基およびヒドロキシ基が好ましく例示される。さらに、最も好ましくは、キャリアとの親和性およびキャリア担持効果の観点から、ヒドロキシ基が例示される。
親水性化合物としては、具体的には、単一の架橋可能基を有するものとしては、ポリアリルアミン、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリオルニチン、ポリリジン、ポリエチレンオキサイド、水溶性セルロース、デンプン、アルギン酸、キチン、ポリスルホン酸、ポリヒドロキシメタクリレート、ポリ−N−ビニルアセトアミドなどが例示される。最も好ましくはポリビニルアルコールである。また、親水性化合物としては、これらの共重合体も例示される。
また、複数の架橋可能基を有する親水性化合物としては、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸共重合体が例示される。ポリビニルアルコール−ポリアクリル塩共重合体は、吸水能が高い上に、高吸水時においてもハイドロゲルの強度が大きいため好ましい。
ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸共重合体におけるポリアクリル酸の含有率は、例えば1〜95モル%、好ましくは2〜70モル%、より好ましくは3〜60モル%、特に好ましくは5〜50モル%である。
なお、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸共重合体において、ポリアクリル酸は、塩であってもよい。この際におけるポリアクリル酸塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩の他、アンモニウム塩や有機アンモニウム塩等が例示される。
ポリビニルアルコールは市販品としても入手可能である。具体的には、PVA117(クラレ社製)、ポバール(クラレ製)、ポリビニルアルコール(アルドリッチ社製)、J−ポバール(日本酢ビ・ポバール社製)等が例示される。分子量のグレードは種々存在するが、重量平均分子量が130,000〜300,000のものが好ましい。
ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸塩共重合体(ナトリウム塩)も、市販品として入手可能である。例えば、クラストマーAP20(クラレ社製)が例示される。
なお、本発明の分離モジュール10の促進輸送膜20aにおいて、親水性化合物は、2種以上を混合して使用してもよい。
促進輸送膜20aにおける親水性化合物の含有量は、促進輸送膜20aを形成するためのバインダとして機能し、かつ、水分を十分に保持できる量を、親水性組成物やキャリアの種類等に応じて、適宜、設定すればよい。
具体的には、0.5〜50質量%が好ましく、0.75〜30質量%がより好ましく、1〜15質量%が特に好ましい。親水性化合物の含有量を、この範囲とすることにより、上述のバインダとしての機能および水分保持機能を、安定して、好適に発現できる。
親水性化合物における架橋構造は、熱架橋、紫外線架橋、電子線架橋、放射線架橋、光架橋等、従来公知の手法により形成できる。
好ましくは光架橋もしくは熱架橋であり、最も好ましくは熱架橋である。
また、促進輸送膜20aの形成には、親水性化合物と共に、架橋剤を用いるのが好ましい。すなわち、塗布法によって促進輸送膜20aを形成する際には、架橋剤を含む塗布組成物を用いるのが好ましい。
架橋剤としては、親水性化合物と反応し、熱架橋や光架橋等の架橋をし得る官能基を2以上有する架橋剤を含むものが選択される。また、形成された架橋構造は、耐加水分解性の架橋構造となるのが好ましい。
このような観点から、促進輸送膜20aの形成に利用される架橋剤としては、エポキシ架橋剤、多価グリシジルエーテル、多価アルコール、多価イソシアネート、多価アジリジン、ハロエポキシ化合物、多価アルデヒド、多価アミン、有機金属系架橋剤などが好適に例示される。より好ましくは多価アルデヒド、有機金属系架橋剤およびエポキシ架橋剤であり、中でも、アルデヒド基を2以上有するグルタルアルデヒドやホルムアルデヒドなどの多価アルデヒドが好ましい。
エポキシ架橋剤としては、エポキシ基を2以上有する化合物であり、4以上有する化合物も好ましい。エポキシ架橋剤は市販品としても入手可能であり、例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(共栄社化学株式会社製、エポライト100MF等)、ナガセケムテックス社製EX−411、EX−313、EX−614B、EX−810、EX−811、EX−821、EX−830、日油株式会社製エピオールE400などが例示される。
また、エポキシ架橋剤に類似する化合物として、環状エーテルを有するオキセタン化合物も、また、好ましく使用される。オキセタン化合物としては、官能基を2以上有する多価グリシジルエーテルが好ましく、市販品としては、例えばナガセケムテックス社製EX−411、EX−313、EX−614B、EX−810、EX−811、EX−821、EX−830、などが例示される。
多価グリシジルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等が例示される。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピル、オキシエチエンオキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソビトール等が例示される。
多価イソシアネートとしては、例えば、2,4−トルイレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が例示される。
多価アジリジンとしては、例えば、2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アシリジニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサメチレンジエチレンウレア、ジフェニルメタン−ビス−4,4’−N,N’−ジエチレンウレア等が例示される。
ハロエポキシ化合物としては、例えば、エピクロルヒドリン、α−メチルクロルヒドリン等が例示される。
多価アルデヒドとしては、例えば、グルタルアルデヒド、グリオキサール等が例示される。
多価アミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン等が例示される。
さらに、有機金属系架橋剤としては、例えば、有機チタン架橋剤、有機ジルコニア架橋剤等が例示される。
例えば、親水性化合物として、重量平均分子量が130,000以上のポリビニルアルコールを用いる場合には、この親水性化合物と反応性が良好で、加水分解耐性も優れている架橋構造が形成可能である点から,エポキシ架橋剤やグルタルアルデヒドが好ましく利用される。
また、親水性化合物として、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸共重合体を用いる場合は、エポキシ架橋剤やグルタルアルデヒドが好ましく利用される。
また、親水性化合物として、重量平均分子量が10,000以上のポリアリルアミンを用いる場合には、この親水性化合物と反応性が良好で、加水分解耐性も優れている架橋構造が形成可能である点から、エポキシ架橋剤、グルタルアルデヒド、および、有機金属架橋剤が好ましく利用される。
さらに、親水性化合物として、ポリエチレンイミンやポリアリルアミンを用いる場合には、エポキシ架橋剤が好ましく利用される。
架橋剤の量は、促進輸送膜20aの形成に使用する親水性化合物や架橋剤の種類に応じて、適宜、設定すればよい。
具体的には、親水性化合物が有する架橋可能基量100質量部に対して0.001〜80質量部が好ましく、0.01〜60質量部がより好ましく、0.1〜50質量部が特に好ましい。架橋剤の含有量を上記範囲とすることにより、架橋構造の形成性が良好であり、かつ、形状維持性に優れる促進輸送膜を得ることができる。
また、親水性化合物が有する架橋可能基に着目すれば、架橋構造は、親水性化合物が有する架橋可能基100molに対し、架橋剤0.001〜80molを反応させて形成されたものであるのが好ましい。
前述のように、分離モジュール10の酸性ガス分離層20において、促進輸送膜20aは、このような親水性化合物に加え、キャリアを含有する。
キャリアは、酸性ガス(例えば、炭酸ガス)と親和性を有し、かつ、塩基性を示す各種の水溶性の化合物である。具体的には、アルカリ金属化合物、窒素含有化合物および硫黄酸化物等が例示される。
なお、キャリアは、間接的に酸性ガスと反応するものでも、キャリア自体が、直接、酸性ガスと反応するものでもよい。
前者は、供給ガス中に含まれる他のガスと反応し、塩基性を示し、その塩基性化合物と酸性ガスが反応するものなどが例示される。より具体的には、スチーム(水分)と反応してOH-を放出し、そのOH-がCO2と反応することで、促進輸送膜20a中に選択的にCO2を取り込むことができる化合物であり、例えば、アルカリ金属化合物である。
後者は、キャリア自体が塩基性であるようなもので、例えば、窒素含有化合物や硫黄酸化物である。
アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、および、アルカリ金属水酸化物等が例示される。ここで、アルカリ金属としては、セシウム、ルビジウム、カリウム、リチウム、および、ナトリウムから選ばれたアルカリ金属元素が好ましく用いられる。なお、本発明において、アルカリ金属化合物とは、アルカリ金属そのもののほか、その塩およびそのイオンも含む。
アルカリ金属炭酸塩としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、および、炭酸セシウム等が例示される。
アルカリ金属重炭酸塩としては、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム、および、炭酸水素セシウム等が例示される。
さらに、アルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、および、水酸化セシウム等が例示される。
これらの中でも、アルカリ金属炭酸塩が好ましく、また、酸性ガスとの親和性が良いという観点から、水に対する溶解度の高いカリウム、ルビジウム、および、セシウムを含む化合物が好ましい。
また、キャリアとしてアルカリ金属化合物を用いる際には、2種以上のキャリアを併用してもよい。
促進輸送膜20a中に2種以上のキャリアが存在することにより、膜中で異なるキャリアを距離的に離間させることができる。これにより、複数のキャリアの潮解性の違いによって、促進輸送膜20aの吸湿性に起因して、製造時等に促進輸送膜20a同士や、促進輸送膜20aと他の部材とが貼着すること(ブロッキング)を、好適に抑制できる。
また、ブロッキングの抑制効果を、より好適に得られる等の点で、2種以上のアルカリ金属化合物をキャリアとして用いる場合には、潮解性を有する第1化合物と、第1化合物よりも潮解性が低く比重が小さい第2化合物を含むのが好ましい。一例として、第1化合物としては炭酸セシウムが、第2化合物としては炭酸カリウムが、例示される。
窒素含有化合物としては、グリシン、アラニン、セリン、プロリン、ヒスチジン、タウリン、ジアミノプロピオン酸などのアミノ酸類、ピリジン、ヒスチジン、ピペラジン、イミダゾール、トリアジンなどのヘテロ化合物類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミンなどのアルカノールアミン類、クリプタンド[2.1]、クリプタンド[2.2]などの環状ポリエーテルアミン類、クリプタンド[2.2.1]、クリプタンド[2.2.2]などの双環式ポリエーテルアミン類,ポルフィリン、フタロシアニン、エチレンジアミン四酢酸等が例示される。
さらに、硫黄化合物としては、シスチン、システインなどのアミノ酸類、ポリチオフェン、ドデシルチオール等が例示される。
促進輸送膜20aにおけるキャリアの含有量は、キャリアや親水性化合物の種類等に応じて、適宜、設定すればよい。具体的には、0.3〜30質量%が好ましく、0.5〜25質量%がより好ましく、1〜20質量%が特に好ましい。
促進輸送膜20aにおけるキャリアの含有量を、上記範囲とすることにより、促進輸送膜20aを形成するための組成物(塗料)において、塗布前の塩析を好適に防ぐことができ、さらに、促進輸送膜20aが、酸性ガスの分離機能を確実に発揮できる。
促進輸送膜20a(促進輸送膜20aを形成するための組成物)は、このような親水性化合物、架橋剤およびキャリアに加え、必要に応じて、各種の成分を含有してもよい。
このような成分としては、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)等の酸化防止剤、炭素数3〜20のアルキル基または炭素数3〜20のフッ化アルキル基と親水性基とを有する化合物やシロキサン構造を有する化合物等の特定化合物、オクタン酸ナトリウムや1−ヘキサスルホン酸ナトリウム等の界面活性剤、ポリオレフィン粒子やポリメタクリル酸メチル粒子等のポリマー粒子等が例示される。
その他、必要に応じて、触媒、保湿(吸湿)剤、補助溶剤、膜強度調整剤、欠陥検出剤等を用いてもよい。
酸性ガス分離層20は、このような促進輸送膜20aと、多孔質支持体20bとから構成される。
多孔質支持体20bは、酸性ガス透過性を有し、かつ、促進輸送膜20aを形成するための塗布組成物の塗布が可能(塗膜の支持が可能)であり、さらに、形成された促進輸送膜20aを支持するものである。
多孔質支持体20bの形成材料は、上記機能を発現できる物であれば、公知の各種の物が利用可能である。
ここで、本発明の分離モジュール10において、酸性ガス分離層20を構成する多孔質支持体20bは、単層であってもよいが、多孔質膜と補助支持膜とからなる2層構成であるのが好ましい。このような2構成を有することにより、多孔質支持体20bは、上記酸性ガス透過性、促進輸送膜20aとなる塗布組成物の塗布および促進輸送膜20aの支持という機能を、より確実に発現する。
なお、多孔質支持体20bが単層である場合には、形成材料としては、以下に多孔質膜および補助支持膜で例示する各種の材料が利用可能である。
この2層構成の多孔質支持体20bでは、多孔質膜が促進輸送膜20a側となる。
多孔質膜は、耐熱性を有し、また加水分解性の少ない材料からなることが好ましい。このような多孔質膜としては、具体的には、ポリスルフォン、ポリエーテルスルホン、ポリプロピレン、セルロースなどのメンブレンフィルター膜、ポリアミドやポリイミドの界面重合薄膜、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)や高分子量ポリエチレンの延伸多孔膜等が例示される。
中でも、PTFEや高分子量ポリエチレンの延伸多孔膜は、高い空隙率を有し、酸性ガス(特に炭酸ガス)の拡散阻害が小さく、さらに、強度、製造適性などの観点から好ましい。その中でも、耐熱性を有し、また加水分解性の少ない等の点で、PTFEの延伸多孔膜が、好適に利用される。
多孔質膜は、使用環境下において、水分を含有した促進輸送膜20aが多孔部分に浸み込み易くなり、かつ、膜厚分布や経時での性能劣化を引き起こさないために、疎水性であるのが好ましい。
また、多孔質膜は、孔の最大孔径が1μm以下であるのが好ましい。
さらに、多孔質膜の孔の平均孔径は、0.001〜10μmが好ましく、0.002〜5μmがより好ましく、0.005〜1μmが特に好ましい。多孔質膜の平均孔径をこの範囲とすることにより、後述する接着剤の塗布領域は接着剤を十分に染み込ませ、かつ、多孔質膜が酸性ガスの通過の妨げとなることを好適に防止できる。
補助支持膜は、多孔質膜の補強用に備えられるものである。
この支持膜は、要求される強度、耐延伸性および気体透過性を満たすものであれば、各種の物が利用可能である。例えば、不織布、織布、ネット、および、平均孔径が0.001〜10μmのメッシュなどを、適宜、選択して用いることができる。
補助支持膜も、前述の多孔質膜と同様、耐熱性を有し、また加水分解性の少ない素材からなることが好ましい。
不織布、織布、編布を構成する繊維としては、耐久性や耐熱性に優れる、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、アラミド(商品名)などの改質ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素含有樹脂などからなる繊維が好ましい。メッシュを構成する樹脂材料も同様の素材を用いるのが好ましい。これらの材料のうち、安価で力学的強度の強いPPからなる不織布は、特に好適に例示される。
多孔質支持体20bが補助支持膜を有することにより、力学的強度を向上させることができる。そのため、例えば、後述するロール・トゥ・ロール(以下、RtoRとも言う)を利用する塗布装置においてハンドリングしても、多孔質支持体20bに皺がよることを防止でき、生産性を高めることもできる。
多孔質支持体20bは、薄すぎると強度に難がある。この点を考慮すると、多孔質膜の膜厚は5〜100μm、補助支持膜の膜厚は50〜300μmが好ましい。
また、多孔質支持体20bを単層にする場合には、多孔質支持体20bの厚さは、30〜500μmが好ましい。
このような酸性ガス分離層20は、促進輸送膜20aとなる成分を含む液体状の塗布組成物(塗料/塗布液)を調製して、多孔質支持体20bに塗布して、乾燥する、いわゆる塗布法で作製できる。
すなわち、まず、親水性化合物、キャリア、および、必要に応じて添加するその他の成分を、それぞれ適量で水(常温水または加温水)に添加して、十分、攪拌することで、促進輸送膜20aとなる塗布組成物を調製する。
この塗布組成物の調製では、必要に応じて、攪拌しつつ加熱することで、各成分の溶解を促進させてもよい。また、親水性化合物を水に加えて溶解した後、キャリアを徐々に加えて攪拌することで、親水性化合物の析出(塩析)を効果的に防ぐことができる。
この組成物を多孔質支持体20bに塗布して、乾燥することで、酸性ガス分離層20を作製する。
ここで、組成物の塗布および乾燥は、所定のサイズに切断されたカットシート状の多孔質支持体20bに行う、いわゆる枚葉式で行ってもよい。
好ましくは、酸性ガス分離層20の作製は、いわゆるRtoRによって行う。すなわち、長尺な多孔質支持体20bを巻回してなる送り出しロールから、多孔質支持体20bを送り出して、長手方向に搬送しつつ、調製した塗布組成物を塗布し、次いで、塗布した塗布組成物(塗膜)を乾燥して、多孔質支持体20bの表面に促進輸送膜20aを形成してなる酸性ガス分離層20を作製し、作製した酸性ガス分離層20を巻き取る。
RtoRにおける多孔質支持体20bの搬送速度は、多孔質支持体20bの種類や塗布液の粘度等に応じて、適宜、設定すればよい。
ここで、多孔質支持体20bの搬送速度が速すぎると、塗布組成物の塗膜の膜厚均一性が低下するおそれがあり、遅過ぎると生産性が低下する。この点を考慮すると、多孔質支持体20bの搬送速度は、0.5m/分以上が好ましく、0.75〜200m/分がより好ましく、1〜200m/分が特に好ましい。
塗布組成物の塗布方法は、公知の方法が、各種、利用可能である。
具体的には、カーテンフローコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等が例示される。
塗布組成物の塗膜の乾燥も、公知の方法で行えばよい。一例として、温風による乾燥が例示される。
温風の風速は、ゲル膜反を迅速に乾燥させることができるともにゲル膜反が崩れない速度を、適宜、設定すればよい。具体的には、0.5〜200m/分が好ましく、0.75〜200m/分がより好ましく、1〜200m/分が特に好ましい。
温風の温度は、多孔質支持体20bの変形などが生じず、かつ、ゲル膜反を迅速に乾燥させることができる温度を、適宜、設定すればよい。具体的には、膜面温度で、1〜120℃が好ましく、2〜115℃がより好ましく、3〜110℃が特に好ましい。
また、塗膜の乾燥には、必要に応じて、多孔質支持体20bの加熱を併用してもよい。
前述のように、本発明の分離モジュール10においては、このような酸性ガス分離層20の促進輸送膜20aの表面と接する供給ガス流路用部材24の表面に、被膜28が形成される。
被膜28は、フッ素系被膜、もしくは、珪素系被膜、もしくは、フッ素系被膜と珪素系被膜の両方からなる被膜である。
本発明の分離モジュール10は、この被膜28を有することにより、促進輸送膜20aの損傷を防止し、製造安定性に優れ、かつ、目的とする性能を安定して発現する。
前述のように、スパイラル型の分離モジュールは、酸性ガス分離層20と、供給ガス流路用部材24と、透過ガス流路用部材26との積層体、もしくは、この積層体を積層してなる積層物を、中心筒12に巻回する(巻き付ける)ことで形成される。
図示例の分離モジュール10は、促進分離膜20aを内側にして酸性ガス分離層20を二つ折りにして、酸性ガス分離層20で供給ガス流路用部材24を挟持してなる挟持体36を形成し(図4参照)、この挟持体36に透過ガス流路用部材26を積層した積層体14を積層して、この積層体14の積層物を、中心筒12に巻回する。
ここで、酸性ガス分離層20と透過ガス流路用部材26とは、接着剤層30によって固定されている。これに対し、酸性ガス分離層20と供給ガス流路用部材24とは、単に、酸性ガス分離層20で供給ガス流路用部材24を挟み込んであるだけである。
そのため、中心筒12に巻回する際に、酸性ガス分離層20と供給ガス流路用部材24との位置が周方向に相対的に移動してしまう。
前述のように、供給ガス流路用部材24は樹脂製の糸等で形成される網目構造を有するのが好ましい。他方、促進輸送膜20aは、超吸水性樹脂などの親水性化合物をバインダとして用い、このバインダにキャリアを分散してなる構成を有するものであり、柔らかい場合が多い。
そのため、巻回の際の酸性ガス分離層20と供給ガス流路用部材24との相対的な移動によって、両者が摺接し、この摺接によって、促進輸送膜20aが損傷してしまう場合が有る。また、甚だしい場合には、部分的に、ほぼ完全に促進輸送膜20aが除去されて、欠陥部になってしまい、ここから、原料ガスGが漏れて分離性能が低下したり、原料ガスGを処理するために掛ける圧力が抜けてしまう場合もある(機密性の低下)。
これに対し、本発明の分離モジュール10では、供給ガス流路用部材24の表面に、フッ素系被膜および/または珪素系被膜からなる被膜28を有する。
この被膜28を有することにより、促進輸送膜20aと供給ガス流路用部材24との滑り性を良好にできる。その結果、前述のように積層体14の積層物(積層体14)を、中心筒12に巻回する際に、促進輸送膜20aと供給ガス流路用部材24とが相対的に移動して、両者が摺接しても、促進輸送膜20aが損傷することを防止できる。
そのため、本発明によれば、高い製造安定性で、機密性が高く、促進輸送膜20aの損傷に起因する性能低下、原料ガスGの漏れ、圧力の抜け等が無い、目的とする性能を有する分離モジュール10を得ることができる。
前述のように、供給ガス流路用部材24の表面を覆う被膜28は、フッ素系被膜および/または珪素系被膜である。
フッ素系被膜とは、フッ素を含有する化合物からなる被膜、もしくは、フッ素を含有する化合物を主成分(含有量が最も多い)とする被膜である。
具体的には、特に限定しないが、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロプロピレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体などを用いることができる。
また、珪素系被膜とは、有機珪素化合物からなる被膜、もしくは、有機珪素化合物を主成分とする被膜である。
具体的には、特に限定しないが、低分子ジメチルシリコーンオイル、有機変性ジメチルシリコーンオイル、アルコキシシラン、有機変性アルコキシシラン、および、これら混合物を用いることができる。
なお、被膜28は、フッ素系被膜と珪素系被膜とが混在するものであってもよい。
ここで、図2に示す例では、供給ガス流路用部材24の表面全面を覆って被膜28を形成しているが、この被膜28は、供給ガス流路用部材24の表面の全面を覆って形成される構成に限定はされず、供給ガス流路用部材24の表面の一部を被覆するものであってもよい。例えば、供給ガス流路用部材24の表面の10%以上の被覆率(面積率)で被覆するものであってもよい。
被膜28による供給ガス流路用部材24の表面被覆率が10%未満では、被膜28を有する効果を十分に得ることができず、積層体14の巻回の際に生じる促進輸送膜20aの損傷を、十分に防止することができない。
ここで、被膜28による供給ガス流路用部材24の被覆は、供給ガス流路用部材24の表面の全面に渡って均一でも良いが、前述の接着剤層30に対応する領域(厚さ方向(積層方向)に見た際に、面方向の位置が接着材層30と重なる領域)は、それ以外の領域よりも、被膜28による被覆率を高くするのが好ましい。
後に詳述するが、分離モジュール10では、透過ガス流路用部材26と、酸性ガス分離層20の多孔質支持体20b(挟持体36)とを接着し、かつ、積層体14同士を接着するために、接着剤層30が形成される。また、この接着剤層30(接着剤層30となる接着剤28)は、接着のみならず、多孔質支持体20および透過ガス流路用部材26内に浸透して、透過ガス流路用部材26内における酸性ガスGcの流路を形成する。
接着剤層30は、多孔質支持体20bや透過ガス流路用部材26よりも硬い。そのため、接着材層30に対応する領域の促進分離膜20aは、供給ガス流路用部材24との摺接による損傷が、他の領域よりも大きくなる。
そのため、接着剤層30に対応する領域では、被膜28による供給ガス流路用部材24の被覆率を高くして、促進輸送膜20aとの摺接による損傷を、より確実に防止するのが好ましい。
具体的には、接着剤層30に対応する領域は、その領域内における被膜28による促進分離膜20aの被覆率を50〜100%とするのが好ましく、80〜100%とするのが、より好ましい。
これにより、より確実に促進分離膜20aの損傷を防止することができる。
なお、本発明の分離モジュール10においては、接着剤層30に対応する領域であっても、それ以外の領域であっても、供給ガス流路用部材24の表面において、被膜28の形成部と非形成部とが、均一に分散されるように、膜28を形成するのが好ましい。
被膜28の形成部において、被膜28の厚さは、被膜28の形成材料、被膜28による供給ガス流路用部材24の表面被覆率、供給ガス流路用部材24の種類(形成材料や網目の粗さなど)、促進分離膜20aの種類(含有成分や各含有成分の量比など)等に応じて、十分な滑り性を確保できる被膜28の厚さを、適宜、設定すればよい。
具体的には、被膜28の厚さは、0.001〜1μmが好ましく、0.01〜0.5μmがより好ましい。
被膜28の厚さを、上記範囲とすることにより、供給ガス流路用部材24による促進分離膜20aの損傷を、より好適に防止できる点で好ましい。
被膜28の形成方法は、被膜の形成材料等に応じて、公知の被膜形成方法が利用可能である。
具体的には、被膜28となる材料を含有する塗料を調製して、スプレー塗布、刷毛、へら等による塗布、および、処理液への浸漬等によって、供給ガス流路用部材24の表面に目的とする被覆率となるように塗料を塗布し、乾燥することにより、被膜28を形成する方法が例示される。
積層体14には、さらに、透過ガス流路用部材26が積層される。
透過ガス流路用部材26は、キャリアと反応して酸性ガス分離層32を透過した酸性ガスGcを、中心筒12の貫通孔12aに流すための部材である。
前述のように、図示例において、積層体14は、酸性ガス分離層20を促進輸送膜20aを内側にして二つ折りにして、供給ガス流路用部材24を挟み込んだ挟持体36を有する。この挟持体36に、透過ガス流路用部材26を積層して、接着剤層30で接着することにより、1つの積層体14が構成される。
透過ガス流路用部材26は、積層体14間でスペーサとして機能して、積層体14の巻回中心(内側)に向かって中心筒12の貫通孔12aに至る、原料ガスGから分離した酸性ガスGcの流路を構成する。また、この酸性ガスGcの流路を適正に形成するために、後述する接着剤層30が浸透する必要が有る。この点を考慮すると、透過ガス流路用部材26は、供給ガス流路用部材24と同様、網目構造(ネット状/メッシュ状)の部材が好ましい。
透過ガス流路用部材26の形成材料は、十分な強度や耐熱性を有するものであれば、各種の材料が利用可能である。具体的には、エポキシ含浸ポリエステルなどポリエステル系の材料、ポリプロピレンなどポリオレフィン系材料、ポリテトラフルオロエチレンなどフッ素系の材料が、好適に例示される。
透過ガス流路用部材26の厚さは、原料ガスGの供給量や要求される処理能力等に応じて、適宜、決定すれば良い。
具体的には、100〜1000μmが好ましく、150〜950μmがより好ましく、200〜900μmが特に好ましい。
前述のように、透過ガス流路用部材26は、原料ガスGから分離されて酸性ガス分離層20を透過した酸性ガスGcの流路となる。
そのため、透過ガス流路用部材26は、流れるガスに対しての抵抗が少ないのが好ましい。具体的には、空隙率が高く、圧をかけたときの変形が少なく、かつ、圧損が少ないのが好ましい。
透過ガス流路用部材26の空隙率は、30〜99%が好ましく、35〜97.5%がより好ましく、40〜95%が特に好ましい。
また、圧をかけたときの変形は、引張試験を行ったときの伸度で近似できる。具体的には、10N/10mm幅の荷重をかけたときの伸度が5%以内であることが好ましく、4%以内であることがより好ましい。
さらに、圧損は、一定の流量で流した圧縮空気の流量損失で近似できる。具体的には、15cm角の透過ガス流路用部材26に、室温で15L/分の空気を流した際に、流量損失が7.5L/分以内であるのが好ましく、7L/分以内であるのがより好ましい。
以下、積層体14の積層方法、および、積層した積層体14の巻回方法すなわちスパイラル積層体14aの作製方法を説明する。なお、以下の説明に用いる図3〜図6では、図面を簡潔にして構成を明確に示すために、供給ガス流路部材24および透過ガス流路部材26は、端面(端部)のみをネット状で示す。
まず、図3(A)および(B)に概念的に示すように、中心筒12の延在方向と短手方向とを一致して、中心筒12に、瞬間接着剤等の固定手段34を用いて、透過ガス流路用部材26の端部を固定する。
一方で、供給ガス流路用部材24の表面に、前述のようにしてフッ素系被膜および/または珪素系被膜からなる被膜28を形成する。
次に、図4に概念的に示すように、前述のように作製した酸性ガス分離層20を、促進輸送膜20aを内側にして二つ折りにし、その間に、皮膜28を形成した供給ガス流路用部材24を挟み込む。すなわち、供給ガス流路用部材24を、二つ折りにした酸性ガス分離層20で挟持した挟持体36を作製する。なお、この際には、酸性ガス分離層20は均等に二つ折りにするのではなく、図4に示すように、一方が、若干、長くなるように、二つ折りする。
また、供給ガス流路用部材24による促進輸送膜20aの損傷を防止するために、酸性ガス分離層20を二つ折りにした谷部に、二つ折りにしたシート状の保護部材(例えば、カプトンテープなど)を配置するのが好ましい。
さらに、二つ折りにした酸性ガス分離層20の短い方の表面(多孔質支持体20bの表面)に、接着剤層30となる接着剤30aを塗布する。
ここで、接着剤30a(すなわち、接着剤層30)は、図4に示すように、幅方向(矢印x方向)の両端部近傍で、周方向(矢印y方向)の全域に延在して帯状に塗布し、さらに、折り返し部と逆側の端部近傍で幅方向の全域に延在して帯状に塗布する。
次いで、図5(A)および(B)に概念的に示すように、接着剤30aを塗布した面を透過ガス流路用部材26に向け、かつ、折り返し側を中心筒12に向けて、挟持体36を、中心筒12に固定した透過ガス流路用部材26に積層し、透過ガス流路用部材26と酸性ガス分離層20(多孔質支持体20b)とを接着する。
さらに、図5に示すように、積層した挟持体36の上面(長い側の多孔質支持体20bの表面)に、接着剤層30となる接着剤30aを塗布する。なお、以下の説明では、最初に固定手段34で中心筒12に固定された透過ガス流路用部材26と逆側の方向を、上側とも言う。
図5に示すように、この面の接着剤30aも、先と同様、幅方向の両端部近傍で、周方向の全域に延在して帯状に塗布し、さらに、折り返し部と逆側の端部近傍で幅方向の全域に延在して帯状に塗布する。
次いで、図6に概念的に示すように、接着剤30aを塗布した挟持体36の上に、透過ガス流路用部材26を積層し、酸性ガス分離層20(多孔質支持体20b)と透過ガス流路用部材26とを接着し、積層体14が形成される。
次いで、先と同様、図4に示すように、促進輸送膜20aの表面に被膜28を形成した酸性ガス分離層20で、供給ガス流路用部材24を挟み込んだ挟持体36を作製して、接着剤層30となる接着剤30aを塗布して、接着剤を塗布した側を下に向けて、最後に積層した透過ガス流路用部材26と挟持体36とを積層して、接着する。
さらに、先と同様、積層した挟持体36の上面に、図5に示すように接着剤30aを塗布して、次いで、図6に示すように、その上に、透過ガス流路用部材26を積層して、接着し、2層目の積層体14を積層する。
以下、図4〜図6の工程を繰り返して、図7に概念的に示すように、所定数の積層体14を積層する。
なお、この際においては、図7に示すように、積層体14は、上方に行くにしたがって、次第に、周方向に中心筒12から離間するように積層するのが好ましい。これにより、中心筒12への積層体14の巻回(巻き付け)を容易に行い、かつ、各透過ガス流路用部材26の中心筒12側の端部もしくは端部近傍が、好適に中心筒12に当接できる。
所定数の積層体14を積層したら、図7に示すように、中心筒12の外周面に接着剤38aを、最初に中心筒12に固定した透過ガス流路用部材26の上面の中心筒12と挟持体36との間に接着剤38bを、それぞれ、塗布する。
次いで、図7に矢印yxで示すように、積層した積層体14を巻き込むようにして、積層体14を中心筒12に巻回する(巻き付ける)。
ここで、本発明の分離モジュール10では、促進輸送膜20aの表面に10〜90%の被覆率でフッ素系被膜および/または珪素系被膜である被膜28が形成されている。そのため、この中心筒12への巻回時に、促進輸送膜20aと供給ガス流路用部材24との位置が相対的に移動して、両者が摺接しても、促進輸送膜20が損傷することを、好適に防止できる。
巻き終わったら、最外周(すなわち、最初に中心筒12に固定した最下層)の透過ガス流路用部材26に、ひき出す方向(巻き絞める方向)の張力を掛けた状態で、所定時間、維持して、接着剤30a等を乾燥させる。
所定時間が経過したら、最外周の透過ガス流路用部材26を1周した位置で超音波融着等によって固定し、固定位置よりも外方の余分な透過ガス流路用部材26を切断して、積層した積層体14を中心筒に巻回してなるスパイラル積層体14aを完成する。
前述のように、原料ガスGは、供給ガス流路用部材24の端部から供給され、酸性ガスGcは、酸性ガス分離層20を積層方向に通過して(輸送されて)、透過ガス流路用部材26に流入し、透過ガス流路用部材26内を流れて、中心筒12に至る。
ここで、接着剤30aを塗布されるのは、多孔質支持体20bであり、また、接着剤30aによって接着されるのは、網目構造の透過ガス流路用部材26である。従って、接着剤30aは、多孔質支持体20bおよび透過ガス流路用部材26内に浸透(含浸)し、両者の内部に接着剤層30が形成される。
また、接着剤層30(接着剤30a)は、前述のように、幅方向の両端部近傍で、周方向の全域に延在して帯状に形成される。さらに、接着剤層30は、この幅方向両端部近傍の接着剤30を幅方向に横切るように、中心筒12側となる折り返し部と逆側の端部近傍で幅方向の全域に延在して帯状に形成される。すなわち、接着剤層30は、中心筒12側を開放して、透過ガス流路用部材26および多孔質支持体20bの外周を囲むように形成される。また、透過ガス流路用部材26は、促進輸送膜20aによって挟まれた状態となっている。
これにより、積層体14の透過ガス流路用部材26には、中心筒12側が開放するエンベロープ状の流路が形成される。従って、酸性ガス分離層20を透過して透過ガス流路用部材26に流入した酸性ガスGcは、外部に流出することなく、透過ガス流路用部材26内を中心筒12に向かって流れ、貫通孔12aから中心筒12内に流入する。
本発明の分離モジュール10において、接着剤層30(接着剤30a)は、十分な接着力、耐熱性および耐湿性を有するものであれば、各種の公知の接着剤が利用可能である。
一例として、エポキシ樹脂、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が好適に例示される。
なお、接着剤層30となる接着剤30aは、一度塗りでもよいが、好ましくは、最初はアセトン等の有機溶剤で希釈した接着剤を塗布し、その上に、接着剤のみを塗布するのが好ましい。また、この際には、有機溶剤で希釈した接着剤は幅広に塗布し、接着剤は、これよりも狭い幅で塗布するのが好ましい。
これにより、多孔質支持体20bおよび透過ガス流路用部材26に、好適に接着剤層30(接着剤30a)を浸透させることができる。
本発明の分離モジュール10において、このようにして作製されるスパイラル積層体14aの両端部には、テレスコープ防止板(テレスコープ防止部材)16が配置される。
前述のように、テレスコープ防止板16は、スパイラル積層体14aが原料ガスGによって押圧されて、供給側の端面が入れ子状に押し込まれ、逆側の端面が入れ子状に突出する、いわゆるテレスコープ現象を防止するための部材である。
本発明において、テレスコープ防止板16は、スパイラル型の分離モジュールに用いられる公知のものが、各種、利用可能である。
図示例において、テレスコープ防止板は、円環状の外環部16aと、外環部16aの中に中心を一致して配置される円環状の内環部16bと、外環部16aおよび内環部16bを連結して固定するリブ(スポーク)16cとを有して構成される。前述のように、積層体14が巻回される中心筒12は、内環部16bを挿通する。
図示例において、リブ16cは、外環部16aおよび内環部16bの中心から、等角度間隔で放射状に設けられおり、外環部16aと内環部16bとの間で、かつ、各リブ16cの間隙が、原料ガスGもしくは残余ガスGrが通過する開口部16dとなっている。
また、テレスコープ防止板16は、スパイラル積層体14aの端面に接触して配置しても良い。しかしながら、一般的には、スパイラル積層体14aの端面全域を原料ガスの供給や残著ガスGrの排出に使用するために、テレスコープ防止板16とスパイラル積層体14aの端面とは、若干の間隙を有して配置される。
テレスコープ防止板16の形成材料は、十分な強度と、耐熱性および耐湿性を有する、各種の材料が利用可能である。
具体的には、金属材料(例えば、ステンレス(SUS)、アルミニウム、アルミニウム合金、錫、錫合金等)、樹脂材料(例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ナイロン12、ナイロン66、ポリサルフィン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル・ブタジエン・スチレン樹脂、アクリル・エチレン・スチレン樹脂、エポキシ樹脂、ニトリル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等)、およびこれら樹脂の繊維強化プラスチック(例えば繊維としては、ガラス繊維、カーボン繊維、ステンレス繊維、アラミド繊維などで、特に長繊維が好ましい。具体例としては、例えばガラス長繊維強化ポリプロピレン、ガラス長繊維強化ポリフェニレンサルファイドなど)、並びに、セラミックス(例えばゼオライト、アルミナなど)等が好適に例示される。
なお、樹脂を用いる際には、ガラス繊維等で強化した樹脂を用いてもよい。
被覆層18は、スパイラル積層体14aの周面を覆って、この周面すなわちスパイラル積層体14aの端面以外から外部への原料ガスGや残余ガスGrの排出を遮断するためのものである。
被覆層18は、原料ガスG等を遮蔽できる物が、各種、利用可能である。また、被覆層18は、筒状の部材であってもよく、線材やシート状の部材を巻回して構成してもよい。
一例として、FRP製の線材に、前述の接着剤層30に利用される接着剤を含浸して、接着剤を含浸した線材を、隙間無く、必要に応じて多重に、スパイラル積層体14aに巻き付けてなる被覆層18が例示される。
なお、この際においては、必要に応じて、被覆層18とスパイラル積層体14aとの間に、スパイラル積層体14aへの接着剤の染み込みを防止するためのカプトンテープ等のシート状部材を設けてもよい。
以上、本発明の分離用モジュール(酸性ガス分離用スパイラル型モジュール)について詳細に説明したが、本発明は上述の例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのは、もちろんである。
以下、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明の酸性ガス分離モジュールについて、より詳細に説明する。
[実施例1]
<酸性ガス分離層の作製>
ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸共重合体(クラレ社製 クラストマーAP-20)を2.4質量%、架橋剤(和光純薬社製 25質量%グルタルアルデヒド水溶液)を0.01質量%、含む水溶液を調製した。この水溶液に、1M塩酸をpH1.5になるまで添加して、架橋させた。
架橋後、キャリアとしての、40%炭酸セシウム水溶液(稀産金属社製)を炭酸セシウム濃度が5.0重量%になるように添加して、塗布組成物を調製した。すなわち、本例では、炭酸セシウムが促進輸送膜20aのキャリアとなる。
この塗布組成物を、多孔質支持体(PP不織布の表面に多孔質のPTFEを積層してなる積層体(GE社製))に塗布して、乾燥することで、促進輸送膜20aと多孔質支持体20bとからなる酸性ガス分離層20を作製した。
促進輸送膜20aの厚さは、30μmとした。
<分離モジュールの作製>
まず、図3に示すように、中心筒12に、接着剤を用いて透過ガス流路用部材26(トリコット編みのエポキシ含浸ポリエステル)を固定した。
一方、供給ガス流路用部材24は、厚さ0.5mmのポリプロピレン製ネットとした。繊維径は150μm、繊維密度は3mg/cm2、引張弾性係数は2.1MPaであった。
引張弾性係数は、JIS K 7127に準拠し、供給ガス流路用部材24を長さ50mm、幅10mmの短冊状に切り出したものを試験片として、引張試験機(オリエンテック社製 テンシロンRTC−1150A)で、引張速度10mm/minにて引張試験を行い測定した。
供給ガス流路用部材24の両面の全面に、被膜28としてフッ素系被膜(F系)を形成した。なお、被膜28は、住鉱社製のスミモールドF1を用いて、スプレー塗布によって形成した。
さらに、酸性ガス分離層20を促進輸送膜20aを内側にして二つ折りした。二つ折りは、図4に示すように、一方の酸性ガス分離層20が、若干、長くなるように行った。二つ折りした酸性ガス分離層20の谷部にカプトンテープを貼り、供給ガス流路用部材24の端部が促進輸送膜20aの膜谷部を傷つけないように補強した。
次いで、二つ折りした酸性ガス分離層20に、皮膜28を形成した供給ガス流路用部材24を挟み込んで、挟持体36を作製した。
この挟持体36の酸性ガス分離層20が短い方の多孔質支持体20b側に、図4に示すように、幅方向(矢印x方向)の両端部近傍に、周方向(矢印y方向)の全域に延在し、かつ、周方向の折り返し部と逆側の端部近傍に、幅方向の全域に延在して、高粘度(約40Pa・s)のエポキシ系樹脂からなる接着剤30a(ヘンケルジャパン社製 E120HP)を塗布した。
次いで、接着剤30aを塗布した側を下方に向けて、図5に示すように、挟持体36と中心筒12に固定した透過ガス流路用部材26とを積層し、接着した。
次いで、透過ガス流路用部材26に積層した挟持体36の酸性ガス分離層20の上面に、図5に示すように、幅方向の両端部近傍に、周方向の全域に延在し、かつ、周方向の折り返し部と逆側の端部近傍に、幅方向の全域に延在して、接着剤30aを塗布した。さらに、接着剤30aを塗布した酸性ガス分離層20の上に、図6に示すように、透過ガス流路用部材26を積層して、接着することにより、1層目の積層体14を形成した。
先と同様にして、図4に示す、表面に皮膜28を形成した供給ガス流路用部材24を酸性ガス分離層20で挾持してなる挟持体36を、もう一つ作製し、同様に、短い側の酸性ガス分離層20の多孔質支持体20b側に、同様に接着剤30aを塗布した。次いで、図5と同様に、接着剤30aを塗布した側を先に形成した1層目の積層体14(その透過ガス流路用部材26)に向けて、挟持体36を、1層目の積層体14(透過ガス流路用部材26)の上に積層し、接着した。さらに、この挟持体36の上面に、図5と同様に接着剤30aを塗布し、その上に、図6と同様に透過ガス流路用部材26を積層して、接着することにより、2層目の積層体14を形成した。
さらに、上記2層目と同様にして、2層目の積層体14の上に、3層目の積層体14を形成した。
中心筒12に固定した透過ガス流路用部材26の上に、3層の積層体14を積層した後、図7に示すように、中心筒12の周面に接着剤38aを塗布し、さらに、中心筒12と最下層の積層体14との間の透過ガス流路用部材26上に、接着剤38bを塗布した。接着剤38aおよび38bは、接着剤30aと同じ物を用いた。
次いで、図7の矢印yx方向に中心筒12を回転することで、積層した3層の積層体14を巻き込むようにして中心筒12に多重に巻き付け、積層体14を牽引する方向に張力を掛けてスパイラル積層体14aとした。
さらに、スパイラル積層体14aの両端部に、内環部16bに中心筒12を挿通して、図1に示される形状の、厚さ2cmcmのSUS製のテレスコープ防止板16を取り付けた。
さらに、テレスコープ防止板16の周面およびスパイラル積層体14aの周面に、FPR樹脂テープを巻き付けて、封止することにより、被覆層18を形成して、直径4cm、幅30cmの図1に示されるような分離モジュール10を作成した。なお、被覆層18の厚さは、5mmとした。
[実施例2]
促進輸送膜20aの厚さを70μmとした以外は、実施例1と同様にして、分離モジュール10を作成した。
[実施例3]
促進輸送膜20aの厚さを120μmとした以外は、実施例1と同様にして、分離モジュール10を作成した。
[実施例4〜6]
供給ガス流路用部材24を、繊維径250μm、繊維密度5.5mg/cm2、引張弾性係数6.0MPaのポリプロピレン製ネットとした以外は、実施例1〜3と同様に分離モジュール10を作製した。
[実施例7〜9]
供給ガス流路用部材24を、繊維径500μm、繊維密度18mg/cm2、引張弾性係数320MPaのポリプロピレン製ネットとした以外は、実施例1〜3と同様に分離モジュール10を作製した。
[実施例10]
供給ガス流路用部材24を、繊維径120μm、繊維密度2.1mg/cm2、引張弾性係数0.9MPaのポリプロピレン製ネットとした以外は、実施例2と同様に分離モジュール10を作製した。
[実施例11]
促進輸送膜20aの厚さを4μmとした以外は、実施例10と同様にして、分離モジュール10を作成した。
[実施例12]
促進輸送膜20aの厚さを160μmとした以外は、実施例10と同様にして、分離モジュール10を作成した。
[実施例13〜15]
供給ガス流路用部材24を、繊維径850μm、繊維密度29mg/cm2、引張弾性係数510MPaのポリプロピレン製ネットとした以外は、実施例10〜12と同様に分離モジュール10を作製した。
[実施例16]
供給ガス流路用部材24を、繊維径1000μm、繊維密度40mg/cm2、引張弾性係数800MPaのポリプロピレン製ネットとし、促進輸送膜20aの厚さを160μmとした以外は、実施例1と同様に分離モジュール10を作製した。
[実施例17]
皮膜28を、珪素系皮膜(Si系)とした以外は、実施例1と同様に分離モジュール10を作製した。なお、被膜28は、信越化学工業社製のKF412SPを用い、スプレー塗布によって形成した。
[比較例1]
被膜28無しとした以外は、実施例16と同様に分離モジュールを作成した。
[比較例2]
皮膜28無しとした以外は、実施例7と同様に分離モジュールを作成した。
これらの実施例および比較例毎に、5本の分離モジュール10を作製した。
[性能評価]
<気密性(製造安定性)>
作製した分離モジュール10の排出側を閉塞して、供給側から、圧力が0.34MPaとなるまでHeガスを充填して、密閉し、分離モジュール10の内部の圧力が0.3MPaに減少するまでの時間を測定した。
圧力が0.3MPaになるまでに10000秒以上かかった分離モジュール10を適正と判断して、適正な分離モジュール10が5本中、何本、有るかで評価した。評価は、以下のとおりである。
A: 5本中、適正なモジュール10が4本以上
B: 5本中、適正なモジュール10が3〜1本
C: 5本中、適正なモジュール10が0本
<分離性能>
作製した分離モジュール10に、テスト用の原料ガスGとして、H2:CO2:H2O=45:5:50(分圧比)の混合ガスを、流量2.2L/min、温度130℃、全圧301.3kPaの条件で供給した。また、中心筒12の原料ガス供給側の端部に、スイープガス供給用の貫通孔を形成して、ここから、スイープガスとして、流量0.6L/minのArガスを供給した。
分離モジュール10を透過してきたガス(酸性ガスGcおよび残余ガスGr)をガスクロマトグラフで分析し、CO2透過速度(P(CO2))を算出した。なお、透過速度の単位GPCは、『1GPU=[1×10-6cm3(STP)]/[s・cm2・cmHg]』である。
各例毎に、5本の分離モジュール10のCO2透過速度の平均値を算出して、分離性能を評価した。評価は以下のとおりである。
A: CO2透過速度の平均値が30GPU以上
B: CO2透過速度の平均値が20GPU以上30GPU未満
C: CO2透過速度の平均値が20GPU未満
<総合評価>
以下の評価規準で、分離モジュール10の性能を評価した。
A: 気密性および分離性能の評価が、共にA
B: 気密性および分離性能の評価が、一方がAで他方がB
C: 気密性および分離性能の評価が、共にB
D: 気密性および分離性能の評価に、1つでもCが有る
各分離モジュール10の諸元、および、上記評価の結果を、下記の表に示す。なお、性能評価の結果の欄における『−』は、分離モジュールの製造段階に欠陥が発生したため、評価が不可であることを示す。
上記表に示されるように、供給ガス流路用部材24の表面に被膜28を有する本発明の実施例1〜17の分離モジュール10は、いずれも、気密性および分離性能、共に、良好である。
中でも、供給ガス流路用部材24の繊維径、繊維密度が好適な範囲に入っている実施例1〜15の分離モジュール10は、気密性および分離性能の少なくとも一方が『A』評価であり、より優れた性能を発揮している。
中でも特に、供給ガス流路用部材24の繊維径、繊維密度および引張弾性係数が好適な範囲に入り、かつ、促進分離膜20aの膜厚が好適な範囲に入る実施例1〜9は、気密性および分離性能が共に『A』評価であり、特に優れた性能を発揮している。
これに対して、供給ガス流路用部材24の表面に皮膜28を有さない比較例1および2は、積層体14を中心筒12に巻回する際に、供給ガス流路部材24によって促進輸送膜20aが大きく損傷してしまったと考えられ、機密性が不十分で、かつ、分離性能の評価はできなかった。
以上の結果より、本発明の効果は明らかである。
水素ガスの製造や天然ガスの精製等に好適に利用可能である。
10 (酸性ガス)分離モジュール
12 中心筒
14 積層体
14a スパイラル積層体
16 テレスコープ防止板
16a 外環部
16b 内環部
16c リブ
16d 開口部
18 被覆層
20 酸性ガス分離層
20a 促進輸送膜
20b 多孔質支持体
24 供給ガス流路用部材
26 透過ガス流路用部材
28 被膜
30 接着剤層
30a 接着剤
34 固定手段
36 挟持体

Claims (7)

  1. 管壁に貫通孔が形成された中心筒と、
    原料ガスの流路となる供給ガス流路用部材と、
    前記供給ガス流路用部材を流れる原料ガスから酸性ガスを分離する、酸性ガスと反応するキャリアおよび前記キャリアを担持するための親水性化合物を含有する促進輸送膜を、前記供給ガス流路用部材側の面に有する酸性ガス分離層と、
    前記促進輸送膜を透過した酸性ガスが前記中心筒まで流れる流路となる透過ガス流路用部材と、
    前記供給ガス流路用部材の前記促進輸送膜側の表面に形成される、フッ素系皮膜およびケイ素系皮膜の少なくとも1つと、を有し、
    前記供給ガス流路用部材、酸性ガス分離層および透過ガス流路用部材を有する積層体を、1以上、前記中心筒に巻回してなる酸性ガス分離用スパイラル型モジュール。
  2. 前記供給ガス流路用部材は、織物または不織布であって、繊維径が100〜900μmであり、繊維密度が2〜30mg/cm2である請求項1に記載の酸性ガス分離用スパイラル型モジュール。
  3. 前記促進輸送膜の厚さが5〜150μmである請求項1または2に記載の酸性ガス分離用スパイラル型モジュール。
  4. 前記フッ素系皮膜およびケイ素系皮膜の少なくとも1つが形成された前記供給ガス流路用部材の引張弾性係数が、1〜500MPaである請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸性ガス分離用スパイラル型モジュール。
  5. 前記供給ガス流路用部材が、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトンおよびポリフッ化ビニリデンから選ばれる1種以上の樹脂を含む糸で形成された網目構造を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸性ガス分離用スパイラル型モジュール。
  6. 前記積層体は、前記促進輸送膜を内側にして二つ折りにした酸性ガス分離層で、前記供給ガス流路用部材を挟んでなる挟持体に、前記透過ガス流路用部材を積層してなる構成を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の酸性ガス分離用スパイラル型モジュール。
  7. 前記酸性ガス分離層は、前記促進輸送膜を多孔質支持体で支持してなる構成を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の酸性ガス分離用スパイラル型モジュール。
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