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JP6063917B2 - 外壁の耐火構造 - Google Patents

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Description

本発明は、外壁に設けられる耐火構造に関する。
都市部の建物が密集する地域では、火災が発生すれば延焼によって大きな被害が生じる可能性が高く、このような地域は防火地域や準防火地域とされ、建物はその階数や延べ面積に応じて要求される耐火性能を備えた基準による建築が義務付けられている。
耐火構造を有する外壁構造として、鉄骨下地に木毛セメント板及び石膏ボードを積層した構造が知られている。一般的に、耐火性能は材料の重量及び厚さに比例して高くなるので、厚さ25mmの木毛セメント板及び42mmの石膏ボードを用いると、耐火性能が上昇する。しかし、その反面、このような厚さの木毛セメント板や石膏ボードの重量が増大するので、施工性が悪くなる。
また、セメント系や珪酸カルシウム系の耐火材料は、自由水や結合水等の水分を多量に保持しており、加熱状態になると、この水分に起因して割れが発生することがあり、火災の際に可燃性の気体がその割れを通って屋内側に流入し、耐火性の悪化を招く。
他方、特許文献1に示すように、石膏ボード(又は木毛セメント板)の屋外側にフェノールフォームを積層し、そのフェノールフォームの外側に金属外装板を当接させてビス止めした耐火性外壁構造が提案されている。
特開2011−140834号公報
この提案のものでは、フェノールフォームの使用によって軽量化が図られるものの、そのフェノールフォームは有機材料であるので、火災時の熱に弱くて劣化するだけでなく、経年変化に伴う劣化も避けられないという問題がある。
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、外壁の耐火構造に改良を加えることにより、その耐火構造の十分な耐火性を長期間に亘り安定して確保するとともに、材料の軽量化によって施工性を高めようとすることにある。
上記の目的を達成すべく、この発明では、無機材料を使用した複数枚の無機板を外壁壁面に沿って並べ、その各無機板の少なくとも片面に気体遮蔽層を形成するようにした。
具体的には、第1の発明は、建物の外壁に設けられ、屋外側に外装材が配置された耐火構造であって、外装材の屋内側に配置され、無機質材料を含む複数枚の無機板を互いに突き合わして壁面に沿って並べてなる無機板層、上記各無機板の外面及び内面の少なくとも一方に設けられ、無機物を主成分とする不燃性塗料からなっている気体を遮蔽する気体遮蔽層と、を備えている。気体遮蔽層は、各無機板において無機板層間の積層面に相当する面に設けられている。また、無機板層は、互いに非接着状態で壁厚さ方向に2層以上積層されている。そして、壁厚さ方向に隣接する無機板層の一方における無機板同士の突き合わせ部分に位置する継ぎ目は、他方の無機板層における無機板同士の継ぎ目に対し壁面に沿った水平横方向にのみ位置ずれしていることを特徴とする。
この第1の発明では、建物の外壁に設けられる耐火構造は、複数枚の無機板を互いに突き合わして並べた無機板層を備えた構造であり、その無機板が軽量であるので、施工性を高めることができる。しかも、無機板自体の耐火性能が高いので、その厚さを薄くすることができ、薄い無機板を用いることによって施工性をさらに高めることができる。
また、各無機板の外面及び内面の少なくとも一方に気体遮蔽層が設けられているので、火災時の高温のガス(気体)が無機板を通して屋内側に流入しようとしてもそれは気体遮蔽層によって遮蔽されるようになり、耐火性能を高めることができる。この気体遮蔽層となる不燃性塗料は耐熱性があり、火災の炎に曝される部分にも使用することができる。さらに、各無機板における無機板層間の積層面に相当する面に気体遮蔽層が設けられているので、屋外側の無機板層の無機板間の継ぎ目から流入して屋内側の無機板層の無機板により遮蔽された可燃性ガスが、仮に壁面に沿った方向に移動しようとしても、そのガスは、屋内側及び屋外側の無機板層の間の積層面に設けられている気体遮蔽層によって遮蔽され、そこから屋内側に進入することが阻止され、よって耐火性能を高めることができる。
また、無機板は有機材料とは異なり、火災時の熱劣化や経年劣化が生じることもなく、また、無機板には自由水や結合水が殆ど含まれていないので、その無機板が火災時の熱によって割れることもない。よって十分な耐火性を長期間に亘り安定して確保することができる。さらに、第1の発明では、複数枚の無機板を互いに突き合わして並べた無機板層が互いに非接着状態で壁厚さ方向に2層以上積層された構造であり、その壁厚さ方向に隣接する無機板層の一方における無機板同士の突き合わせ部分に位置する継ぎ目が、他方の無機板層における無機板同士の継ぎ目に対し壁面に沿った水平横方向にのみ位置ずれしているので、仮に屋外側の無機板層における無機板同士の継ぎ目に火災時の高温のガスが進入しても、そのガスは同継ぎ目に面する屋内側の無機板層によって遮蔽され、それ以上の進入が阻止される。このことによって耐火性能を高めることができる。
第2の発明は、第1の発明において、壁厚さ方向に隣接する上記無機板層の一方の無機板同士の継ぎ目は、他方の無機板層の無機板の左右中間部に位置していることを特徴とする。
この第2の発明では、壁厚さ方向に隣接する無機板層の一方の無機板同士の継ぎ目は、他方の無機板層の無機板の左右中間部に位置しているので、仮に屋外側の無機板層における無機板同士の継ぎ目に火災時の高温のガスが進入しても、そのガスは同継ぎ目に面する屋内側の無機板層における無機板の左右中間部によって確実に遮蔽されるようになり、それ以上の進入が阻止される。このことによって第1の発明における耐火性能をさらに高めることができる。
第3の発明は、第1又は第2の発明において、各無機板は互いに同じ形状を有していることを特徴とする。
この第3の発明では、各無機板が互いに同じ形状を有していることから、耐火構造の部品点数を少なくすることができるとともに、耐火構造の施工性を高めることができる。
第4の発明は、第1〜第3の発明のいずれか1つにおいて、各無機板の外面に気体遮蔽層が設けられていることを特徴とする。
この第4の発明では、各無機板の外面に気体遮蔽層が設けられているので、屋外側から無機板を通ろうとする高温のガスを通過前に遮蔽することができる。
第5の発明は、第1〜第4の発明のいずれか1つにおいて、無機板同士の上下方向における継ぎ目は、目地テープで塞がれていることを特徴とする。
この第5の発明では、無機板同士の上下方向における継ぎ目が目地テープで塞がれていることから、特に耐火構造の上方に流れる高温ガス等の気体を適切に遮蔽することができる。
以上説明したように、本発明の外壁の耐火構造によると、複数枚の無機板が互いに突き合わされて壁面に沿って並べられた無機板層を備え、各無機板の外面及び内面の少なくとも一方に気体遮蔽層を設けたことにより、軽量の薄い無機板により施工性を高めることができる。また、火災時の高温のガスが無機板を通して屋外側に流入するのを気体遮蔽層によって遮蔽するとともに、火災時の熱劣化や経年劣化を回避することができ、これらによって耐火性能を長期間に亘り安定して確保することができる。
図1は、本発明の実施形態に係る外壁の耐火構造を分解して示す斜視図である。 図2は、外壁の耐火構造の水平断面図である。 図3は、内側無機板層及び外側無機板層における無機板同士の継ぎ目の位置ずれ状態を概略的に示す正面図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
図1及び図2は、本発明の実施形態に係る外壁の耐火構造を示し、この耐火構造は建物の外壁Wに設けられる。外壁Wは、建物の骨組みをなす横胴縁1の屋外側に配置される石膏ボード2と、この石膏ボード2の屋外側に配置される無機板層4,5と、この無機板層4,5の屋外側に配置される防水材12と、この防水材12の屋外側に配置される金属外装材13とを備え、これらは重ねられてビス(図示せず)により横胴縁1に取付固定されている。
上記石膏ボード2は、例えば厚さ12.5mmの矩形板材からなる。
防水材12は、例えばポリエチレン不織布からなる透湿性防水シートやアスファルト防水紙等からなる。
金属外装材13は、例えば建物外壁用の角波形鋼板からなる。
無機板層4,5は、壁厚さ方向の略中央部に配置されて耐火構造の要部をなすものであり、内側無機板層4及び外側無機板層5の2層からなる。これら2層の無機板層4,5は互いに同じ構造であり、例えば矩形板状の複数枚の無機板6,6,…が周縁部で互いに突き合わされ、その突き合わせ部分を継ぎ目7とした状態で壁面に沿って並べられて形成されている。
各無機板6は、無機質材料を含む板材であり、難燃性、準不燃性又は不燃性であればどのような板材でもよく、例えば火山性ガラス質複層板(大建工業(株)製の商品名「ダイライトSD」等)やケイカル板等が用いられる。この無機板6は、例えば厚さが12.5mmで、比重が0.5〜0.9のものが用いられ、施工性及び熱を伝え難い点から比重の低いものが好ましい。
そして、図3に例示するように、内側無機板層4における無機板6,6同士の突き合わせ部分に位置する継ぎ目7と、この内側無機板層4の壁厚さ方向外側に隣接する外側無機板層5における無機板6,6同士の突き合わせ部分に位置する継ぎ目7とは、壁面に沿った水平横方向(左右方向)に互いに位置ずれしており、両無機板層4,5を屋内側又は屋外側から見たときに、内側無機板層4(外側無機板層5)の無機板6,6同士の継ぎ目7は、基本的に外側無機板層5(内側無機板層4)の無機板6の左右中間部上に位置している。尚、図3では、無機板6,6,…を各々の横寸法の半分のずれ量だけずらしているが、このずれ量は変更してもよい。また、図3では、継ぎ目7の関係が明確になるように内側無機板層4及び外側無機板層5の各無機板6の1枚に斜線を加えている。無機板6の上下方向のずらしはなく、上下方向の目地については、例えばT型のジョイナーや、黒鉛含有セラミックファイバー等からなる目地テープを用いて目地を塞ぐことにより、高温ガス等の気体が遮蔽される。
さらに、内側無機板層4及び外側無機板層5における各無機板6の外面(屋外側の面)にそれぞれ気体遮蔽層9が一体的に設けられている。この内側無機板層4における各無機板6外面の気体遮蔽層9は、各無機板6において内外の無機板層4,5間の積層面に相当する面に設けられていることとなる。
この気体遮蔽層9は、例えば火災時に発生する高温の可燃性ガス等の気体が無機板層4,5や石膏ボード2を通過するのを遮蔽するためのものであり、例えば無機物を主成分とする不燃性塗料が用いられ、その塗料が塗布されて塗膜として形成される。この不燃性塗料は、例えば膨潤性の高い珪酸塩鉱物(バーミキュライトやベントナイト等)を主成分とし、アクリル樹脂やウレタン樹脂等で耐水性を持たせた塗料が好ましい。尚、気体遮蔽層9の透湿抵抗の一例を挙げると、不燃性塗料が塗布されていない火山性ガラス質複層板が0.0009m・s・Pa/ngに対して、塗布されたものは0.0033m・s・Pa/ngで、気体が透過し難いことを示している。
したがって、この実施形態に係る外壁Wの耐火構造は、複数枚の無機板6,6,…を互いに突き合わして並べた無機板層4,5が壁厚さ方向に2層積層されたものであり、その各無機板6は軽量であるので、外壁Wの施工の際に軽量の無機板6の取り扱いが容易となり、施工性を高めることができる。しかも、無機板6自体の耐火性能が高いので、その厚さを薄くすることができ、薄い無機板6を用いることによって施工性をさらに高めることができる。
また、各無機板6の外面に気体遮蔽層9が不燃性塗料の塗膜として設けられているので、火災時の高温のガス(気体)が屋外側から無機板6及び石膏ボード2を通して屋内側に流入しようとしてもそれは無機板6を通る前に気体遮蔽層9によって遮蔽されるようになり、耐火構造の耐火性能を高めることができる。
そして、2層の内側無機板層4及び外側無機板層5が壁厚さ方向に隣接し、内側無機板層4の無機板6,6同士の継ぎ目7と、外側無機板層5の無機板6,6同士の継ぎ目7とが互いに壁面に沿った方向に位置ずれしているので、仮に屋外側に位置する外側無機板層5における無機板6,6同士の継ぎ目7に火災時の高温のガスが進入しても、そのガスは同継ぎ目7に面する内側無機板層4の無機板6の中間部によって遮蔽されるようになり、それ以上の進入が阻止される。このことによって耐火構造の耐火性能をさらに高めることができる。
そのとき、上記壁厚さ方向に隣接する内側無機板層4及び外側無機板層5の各々の無機板6,6間、つまり内側無機板層4の各無機板6の外面であって両無機板層4,5間の積層面に相当する面に気体遮蔽層9が設けられているので、屋外側の無機板層5の無機板6,6間の継ぎ目7から流入して内側無機板層4の無機板6により遮蔽された上記可燃性ガスが、仮に壁面に沿った方向に移動しようとしても、そのガスは、内側無機板層4との間の積層面に設けられている気体遮蔽層9によって遮蔽され、屋内側に進入することが阻止される。このことでも耐火性能を高めることができる。
上記気体遮蔽層9は、無機物を主成分とする不燃性塗料であり、この不燃性塗料は耐熱性があるので、火災の炎に曝される部分にも使用することができる。
また、無機板6は有機材料と異なり、火災時の熱劣化や経年劣化が生じることはなく、しかも、無機板6には自由水や結合水が殆ど含まれていないので、その無機板6が火災時の熱によって割れることもなく、よって、耐火構造が長期間に亘り安定して得られ、その信頼性を高めることができる。
(その他の実施形態)
尚、上記実施形態では、無機板層4,5が壁厚さ方向に2層積層されているが、3層以上積層されていてもよい。或いは、無機板層は1層(上記実施形態の無機板層4,5の一方のみとする)であってもよい。1層の無機板層であっても、その各無機板6に設けられた気体遮蔽層9による高温ガスの遮蔽効果により耐火性能が得られるとともに、軽量で薄い無機板6による施工性の向上が図られる。
また、上記実施形態では、気体遮蔽層9が無機板6…の外面に設けられているが、無機板6の内面(屋内側の面)に設けられていてもよく、或いは無機板6の外面及び内面の両方に設けられていてもよい。要は、各無機板の外面及び内面の少なくとも一方に気体遮蔽層を設けて気体の通過を遮蔽するようにすればよい。
さらに、上記実施形態では、外壁Wの屋外側に金属外装材13を配置しているが、窯業系サイディング、木材、モルタル、金属サイディングを有する外装材であってもよい。
また、建物の構造が木造軸組構造、木造枠組構造、軽量又は重量の鉄骨構造であっても本発明を適用することができる。
本発明は、外壁の耐火構造に関して軽量の薄い無機板により施工性を高め、耐火性能の向上を図ることができるので、極めて有用である。
W 外壁
2 石膏ボード
4 内側無機板層
5 外側無機板層
6 無機板
7 継ぎ目
9 気体遮蔽層

Claims (5)

  1. 建物の外壁に設けられ、屋外側に外装材が配置された耐火構造であって、
    上記外装材の屋内側に配置され、無機質材料を含む複数枚の無機板を互いに突き合わして壁面に沿って並べてなる無機板層
    上記各無機板の外面及び内面の少なくとも一方に設けられ、無機物を主成分とする不燃性塗料からなっている気体を遮蔽する気体遮蔽層と、を備え、
    上記気体遮蔽層は、各無機板において無機板層間の積層面に相当する面に設けられており、
    上記無機板層は、互いに非接着状態で壁厚さ方向に2層以上積層されており、
    壁厚さ方向に隣接する上記無機板層の一方における無機板同士の突き合わせ部分に位置する継ぎ目は、他方の無機板層における無機板同士の継ぎ目に対し壁面に沿った水平横方向にのみ位置ずれしていることを特徴とする外壁の耐火構造。
  2. 請求項1において、
    壁厚さ方向に隣接する上記無機板層の一方の無機板同士の継ぎ目は、他方の無機板層の無機板の左右中間部に位置していることを特徴とする外壁の耐火構造。
  3. 請求項1又は2において、
    上記各無機板は互いに同じ形状を有していることを特徴とする外壁の耐火構造。
  4. 請求項1〜3のいずれか1つにおいて、
    各無機板の外面に気体遮蔽層が設けられていることを特徴とする外壁の耐火構造。
  5. 請求項1〜4のいずれか1つにおいて、
    上記無機板同士の上下方向における継ぎ目は、目地テープで塞がれていることを特徴とする外壁の耐火構造。
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