JP7174514B2 - 木質耐火部材 - Google Patents
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Description
木質構造部材の耐火性を確保することを目的として、木質荷重支持部に対して耐火被覆する耐火構造が多数開発されている。なお、耐火構造には、火災終了時においても木質荷重支持部が炭化しないことが求められている。耐火被覆層は、例えばモルタル板、石膏ボード、難燃薬剤を含浸させた木質構造部材等の板材を荷重支持層に貼り付けることにより形成するのが一般的である。例えば、特許文献1には、難燃処理が施された木材からなる燃え止まり層が、木材からなる化粧材木材と木質荷重支持部との間に介設された木質構造部材が開示されている。
上記のように耐火被覆層は、火災時や火災終了時にあっては、周囲の熱が木質荷重支持部にまで伝達しない厚みを確保する必要がある。そのため、木質荷重支持部の外面に単に耐火被覆層を形成すると、木質構造部材の断面積が大きくなってしまう。よって、木質構造部材の断面積が大きくなると、供用スペース(居住空間等)の利用の自由度が制限されてしまう。そのため、耐火被覆層として、通常使用時には薄層状態を保持しながら、火災時には熱により発泡する発泡材で木質荷重支持部を被覆することで、通常使用時での部材断面積を最小限に抑えるとともに、火災発生後には発泡材が発泡することで燃え止まり層に必要な層厚さを確保することが可能な木質構造部材が開示されている。例えば、特許文献2には、木質荷重支持部と仕上げ木材層との間に、不燃材と発泡層とが積層されてなる遮熱部が介設された木質構造部材が開示されている。また、特許文献3には、木質荷重支持部と仕上げ木材層との間に、発泡層と膜状の不燃材とが積層されてなる遮熱部が介設された木質構造部材が開示されている。また、特許文献2および特許文献3では、木質荷重支持部と遮熱部とが接着剤により接着されているとともに、遮熱部と仕上げ木材層とが接着剤により接着されている。一方、発泡材の表面はフラット面ではないため、発泡材の表面に仕上げ木材層を直接接合させるのは困難であった。
前記課題を解決するために、第1の発明の木質耐火部材は、木質荷重支持部の外周面や両側外側面(木質荷重支持部の上下面や左右の側面等の対向する外側面)に耐火被覆層と仕上げ木材層が設置された木質耐火部材であって、断面視形状が矩形状、または円形状の前記木質荷重支持部と、前記木質荷重支持部の外側面に設けられる水分遮断層と、前記水分遮断層を被覆する湿式耐火被覆材からなる耐火被覆層と、前記耐火被覆層の外側に設けられた仕上げ木材層と、を備え、前記水分遮断層は、水分遮断塗膜、水分遮断シート、及び防水紙のいずれかで形成されていることを特徴とする。
かかる木質耐火部材によれば、木質荷重支持部と耐火被覆層との間に水分遮断層が形成されていて、耐火被覆層に湿式耐火被覆材を使用しているため、湿式耐火被覆材の水分が木質荷重支持部に浸透するのを防止できるために、木質荷重支持部の強度特性に及ぼす影響を抑止することができる。また、外皮部に仕上げ木材層を設置し、当該仕上げ木材層の内部側に向って耐火被覆層、木質荷重支持部を設けて、木質耐火部材を形成することで、木材を外皮部に配置し、断面中央部に木質荷重支持部を備えた木質耐火部材を実現した。また、木質荷重支持部の外周面が水分遮断塗膜、水分遮断シート、及び防水紙のいずれかで形成される水分遮断層で覆われているために、耐火被覆層の水分が木質荷重支持部に浸透することが防止されている。そのため、木材で構成される木質荷重支持部が、耐火被覆層を形成する湿式耐火被覆材の水分により強度低下や変色等が生じることがなく、構造性能および耐火性能を確保することができる。
かかる木質耐火部材によれば、木質荷重支持部の外周面や外側面に配置する耐火被覆層は、仕上げ木材層の外側面からビス留めや仕上げ木材層の内側面に接着させて固定するのではなく、木質荷重支持部の外周面に所定間隔を空けて複数の連結部材を設置し、当該連結部材の両側小口面を木質荷重支持部、及び仕上げ木材層と接着させ、木質荷重支持部と仕上げ木材層との間に耐火被覆層の設置スペースを確保し、その設置スペースに耐火被覆層を配置させた。よって、表面をフラット面とすることが困難(不均一)な耐火被覆層の外周面であっても仕上げ材を高品質に設置することができる。
このようにすれば、上述の作用効果に加えて、木質耐火部材が建物躯体と接する木質荷重支持部に沿って配置される仕上げ木材層の両側材端に耐火被覆層を配置することで、火災時において、建物躯体と木質耐火部材を構成する仕上げ木材層との間の延焼を抑制することができる。また、木質耐火部材を構成する仕上げ木材層の材端部に、仕上げ木材層に比べて圧縮剛性が低い耐火被覆層を設けることで、地震時に木質耐火部材に大変形が生じた際には耐火被覆層の露出部分が変位を吸収できるため、木質耐火部材と建物躯体との当接部における破損を防止することができる。
本発明の第一の実施形態を図1に示すとともに、第二の実施形態を図7に示し、さらに、2時間耐火性能を確保するための木質耐火部材の断面設計例を図8に示す。
以下、添付図面を参照して、本発明による木質耐火部材の各構成と、耐火性能に関する加熱実験結果と熱伝導解析結果について説明する。
第一の実施形態の木質耐火部材1は、建物の柱を構成する部材であって、図1(a)に示すように、断面視正方形を呈している。なお、木質耐火部材1の断面形状は限定されるものではなく、例えば、矩形状や円形状であってもよい。
木質耐火部材1は、木質荷重支持部2と、水分遮断層3と、耐火被覆層4と、仕上げ木材層5とを備えている。
本実施形態の仕上げ木材層5は、図1(a)に示すように、断面視枠状に配置された4枚の仕上げ板材51からなる。仕上げ板材51の端部同士は当接している仕上げ板材51同士は、必要に応じて接着材やビス等により接合してもよい。本実施形態の仕上げ板材51には、厚さ10mmのスギ板を使用する。なお、仕上げ板材51を構成する材料はスギ板に限定さえるものではない。また、仕上げ木材層5の層厚および仕上げ板材51の板厚は限定されるものではなく、適宜決定すればよいが、耐火被覆層4の発泡を妨害させない厚さρおよび密度d(例えば、ρd≦0.004)に設定するのが望ましい。仕上げ板材51は、連結部材6を介して木質荷重支持部2に支持されている。
まず、図3(a)に示すように、集成材からなる木質荷重支持部2に、連結部材6の一方端面をコンクリート・金属・木材用接着剤を使用して接着する。なお、連結部材6は、金属板31を木質荷重支持部2の外面に固定した後に、木質荷重支持部2に固定してもよい。
次に、図3(b)に示すように、木質荷重支持部2の外面に、金属板31を固定することにより水分遮断層3を形成する。金属板31は、木質荷重支持部2の外面にビス止めする。なお、金属板31には、連結部材6の位置に応じて開口(図示せず)が形成されている。金属板31は、開口に連結部材6を挿通させた状態で、木質荷重支持部2の外面に設置する。
続いて、図3(c)に示すように、水分遮断層3の外面に、発泡性耐火塗料を塗布することにより、耐火被覆層4を形成する。耐火被覆層4は、連結部材6の高さを目安に厚さを管理する。また、耐火被覆層4の層厚は、図1(b)に示すように木質荷重支持部2の柱端部で大きくなるように塗布する(断面コ字状に塗布する)。
最後に、耐火被覆層4の外面に仕上げ板材51を設置して、仕上げ木材層5を形成する(図1参照)。このとき、仕上げ板材51は、連結部材6の小口端面と間に、コンクリート・金属・木材用接着剤を塗布した後、連結部材6の小口端面に当接させて固定する。また、仕上げ木材層は、木質荷重支持部2を形成する各側面の耐火被覆層4の外側に配置し、連結部材6と接着させてもよく、凹形状に形成させた仕上げ木材層5を耐火被覆層4の外側に配置し、連結部材6と接着させてもよい。なお、仕上げ板材51の裏面(耐火被覆層4側の面)には、必要に応じて水分遮断材(水分遮断塗料や水分遮断シート等)を設置しておいてもよい。
具体的には、木質耐火部材1の実施例では、工場において木質荷重支持部2の外面に、水分遮断層3、耐火被覆層4、及び仕上げ木材層5を設けた木質部材を製作したものを建設現場に搬入し、床スラブ上または柱頭部上に建て込み、柱梁架構を構築する。または、木質荷重支持部2の外面側の耐火被覆層4まで工場で製作した木質耐火部材1の半工場品(ハーフプレキャスト製品)を建設現場に搬入し、所定位置に建て込んだ後、耐火被覆層4の外側に仕上げ木材層5を隙間なく形成しても良い。
本実施形態の木質耐火部材1によれば、木質構造部材の耐火構造を実現することで、低炭素社会に貢献することができる。また、火災時には仕上げ木材層5が外側表面から燃焼し、炭化が進むが、仕上げ木材層5と木質荷重支持部2との間に耐火被覆層4が設けられているため、木質構造部材を構成する外皮部の仕上げ木材層が燃焼して脱落しても、木質荷重支持部2を外側に水分遮断層3と耐火被覆層4による2層構造によって耐火性能を確保することで、木質荷重支持部2の燃焼および炭化を防止することができる。よって、耐火性能を備えた木質耐火部材1を構築することができ、ひいては、建築基準法を満足する耐火構造を実現することが可能となる。また、仕上げ木材層5は、連結部材6の外側小口端面に接着剤で固定されているために、仕上げ木材層の燃焼時、または炭化した段階で脱落した際には、燃焼が木質荷重支持部2に燃え移ることが防止されている。そのため、火災が発生した場合であっても、構造部材としての機能を維持することができる。
仕上げ木材層5が連結部材6を介して木質荷重支持部2に支持されているため、表面が不均一な(フラット面ではない)耐火被覆層4の外周囲においても仕上げ板材51を精度よく設置することができる。
また、木質耐火部材1は、木質荷重支持部2を含む全ての層、または耐火被覆層4までが工場で形成された工場製品であるために、耐火被覆層4や仕上げ木材層5を容易に形成することができ、かつ、本発明の木質耐火部材1を用いた建物躯体7ごとに要求される多様な耐火性能(1時間耐火や2時間耐火等)を容易に確保することができる。また、木質耐火部材1は、施工性良く、板材同士の目地部分であっても隙間なく耐火被覆材(発泡性耐火塗料、発泡性耐火板、湿式耐火被覆材)で覆うことができ、かつ木質荷重支持部2の外面側に、耐火被覆層4と仕上げ木材層5を高い品質管理の元で一体化できる。また、木質耐火部材1を短時間で大量生産できる。
また、耐火被覆層4に発泡性耐火塗料を使用することで、通常使用時には発泡性耐火塗料は未発泡状態であり、発泡性耐火塗料の層厚さは薄く、木質耐火部材1の断面寸法を小さくすることができる。また、木質荷重支持部2と耐火被覆層4との間に水分遮断層3を設けることで、耐火被覆層4を構成する湿式の耐火被覆材から放出された水分の木質荷重支持部2への浸透を防止できる。よって、木質荷重支持部2が水分に浸ることはなく、腐食や水の影響によって強度低下が生じることがなく、構造性能および耐火性能を維持することができる。なお、火災時の熱などにより木質荷重支持部2から水蒸気が発生した際には、発泡性耐火塗料に発泡障害が発生することを防止することができる。すなわち、水分遮断層3によって水蒸気が耐火被覆層4に接することが防止されているため、耐火被覆層4が水蒸気によって冷却されることを防ぐことができる。
また、木質耐火部材1は、発泡性耐火塗料のほかに、吹き付け方式による湿式耐火被覆材(例えば、吹付けロックウール)により耐火被覆層4が形成することができる。湿式耐火被覆材は水分量が40%程であり、一般的な木質部材よりも大きい。例えば、桧の柱の含水率は18%前後、桧フローリング材で15%前後、杉の柱で20~30%、杉フローリング材で15~22%程度である。そのため、湿式耐火被覆材を使用する場合には、木質荷重支持部2と耐火被覆層4との間に、水分遮断塗膜または水分遮断シートからなる水分遮断層3を設置して、木質荷重支持部2への水分の浸透を阻止し、構造性能と耐火性能を確保する。
以下、本実施形態の木質耐火部材1を模擬した木質耐火被覆柱体の加熱実験の試験体概要と、その実験結果を示す。
図4(a)に加熱実験で使用した木質耐火被覆柱体の試験体外観を示す。試験体は、断面視中央部に複数の板材を接着剤で再構成して作られる矩形断面120mm×120mmで、高さ1200mmのスギ集成材(木質荷重支持部)を配置し、そのスギ集成材の外周面に、厚さ0.3mmの金属薄板(水分遮断層)と、発泡性耐火塗料パネル(耐火被覆層)を被覆させた木質耐火被覆柱体である。発泡性耐火塗料パネルは、エポキシ系耐火塗料を型枠内に流し込み、パネル化した。なお、本性能確認実験では、火災時の熱や延焼によって発泡性耐火塗料を一様に発泡させるとともに、発泡後の発泡性耐火塗料の層厚さを明確に計測するために、発泡性耐火塗料パネルを厚さ50mmとした。金属薄板は、スギ集成材の外周面にコンクリート・金属・木材用接着剤(例えば、セメダイン株式会社製のPM165R P50ml RE-220)で接着させた。
加熱実験は、加熱炉内に試験体を設置した後、国際規格である標準加熱曲線(ISO834)に従って加熱開始2時間後に1049℃まで炉内温度を上昇させた後、加熱を停止し、木質荷重支持部の表面温度の変化を計測するとともに、24時間放置した後、耐火塗料パネルの発泡状態と、試験体の炭化状態を観察した。
また、図5に、加熱試験後の木質耐火被覆柱体について、木質荷重支持部を覆う耐火塗料パネルの発泡状況を示す。耐火塗料パネルは、発泡前の層厚さ50mmが加熱実験後にはパネル厚さが220mm程度まで一様に発泡し、発泡倍率は約4.4倍に至った。
よって、本実施形態の木質耐火部材を模擬した木質耐火被覆柱体を対象とした2時間の耐火性能実験結果によると、木質荷重支持部の外周面に水分遮断層と耐火被覆層を形成させることで、木質荷重支持部の外皮温度は木材の炭化開始温度である260℃には到達せず、木質荷重支持部が2時間の耐火性能を有することが確認された。
図6に、本実施形態の木質耐火部材1を模擬した木質耐火被覆柱体の加熱実験試験体について、定常伝熱モデルに基づく計算例を示す。
本計算例では、図6に示す定常伝熱モデルにおいて、火災温度(耐火被覆層4の外気側の温度)が1000℃の場合について、耐火被覆層4の外側面(表面)温度T1を外気温度と読み替えて1000℃とし、木質荷重支持部2の断面中央部の温度を加熱実験結果では木質荷重支持部2が炭化していなかった点を踏まえて、常温20℃とする条件のもと、木質荷重支持部の外側表面温度T2について、耐火被覆層4と木質荷重支持部2の其々の層厚さdと熱伝導率λ、及び熱伝達率αを用いて推定する。詳細には、加熱実験試験体は、水分遮断層3のモデル化は行わず、耐火被覆層4、及び木質荷重支持部2で構成される定常伝熱モデルとする。耐火被覆層4は、加熱実験結果で計測された発泡後の層厚さdを220mmとし、α=0.06W/(m2・k)とする。木質荷重支持部2は、断面中央までの層厚さとして60mmとし、λ=0.107W/(m・k)とする。
柱体各部の温度分布は、各部の温度差と、熱抵抗(熱伝達抵抗、熱伝導抵抗)の大きさが次式(式1)の関係にある。よって、以下式により木質荷重支持部2の外側表面温度T2を推定する。
1000―T2:T2―20=1/α:d/λ (式1)
1000―T2:T2―20=1/0.06:0.06/0.107
18.45T2=894
T2=48.5
上記に示すように、加熱性能実験結果を定常伝熱モデルを用いて推定される木質荷重支持部2の外側表面温度T2は、48.5℃となり、木質荷重支持部2の外周面では実験結果で確認されたように木材の炭化開始温度260℃を下回る結果となった。
上記に示す加熱性能実験とその検証結果によると、本実施形態の木質耐火部材1によれば、火災時等において、木質耐火部材1の外気の温度が1000℃にまで上昇した場合であっても、木質荷重支持部2の外周囲に水分遮断層3、耐火被覆層4を設け、耐火被覆層4を発泡させることで、火災時の熱伝導が低減され、2時間の耐火性能を有する木質耐火部材1が実現可能であることが確認できる。
第二の実施形態の木質耐火部材1は、第一の実施形態と同様に、建物の柱を構成する部材であって、図7に示すように、断面視正方形を呈している。なお、木質耐火部材1の断面形状は限定されるものではなく、例えば、正方形状や円形状であってもよい。
木質耐火部材1は、木質荷重支持部2と、水分遮断層3と、耐火被覆層4と、仕上げ木材層5とを備えている。なお、木質荷重支持部2、水分遮断層3および仕上げ木材層5の詳細は、第一の実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
本実施形態の耐火被覆層4は、外側に開口する凹部を有していることで断面視コ字状を呈している(図1(b)参照)。すなわち、耐火被覆層4は、木質耐火部材1の端部(柱端部)の厚さが、それ以外の部分に比べて大きい。なお、耐火被覆層4の断面形状は限定されるものではなく、例えば平板状であってもよい。
図8に、2時間耐火が必要な建物を対象とした木質耐火部材1の断面設計例(実施例1、実施例2)を示す。
図8(a)は実施例1であり、木質耐火部材1が断面正方形状の柱で、木質荷重支持部2が600mm×600mmである。実施例1では、木質荷重支持部2はカラマツ材で形成し、当該木質荷重支持部2から外側に向って、水分遮断層3、耐火被覆層4および仕上げ木材層5を順に積層した。水分遮断層3は防水紙等の防水シートを木質荷重支持部2の外面に貼着することにより形成した。耐火被覆層4は、発泡温度が200℃以下の発泡性耐火塗料を約2~10mm厚で塗布することにより形成した。仕上げ木材層5は、連結部材6を介して木質荷重支持部2に支持された厚さ10mmの平板を枠状に組み合わせることにより形成した。
木質荷重支持部2を形成するカラマツ材は、日本では北海道から本州北部にかけて分布する針葉樹であり、乾燥時の比重は0.53程度で、其々の強度特性として、圧縮強度Fcは45N/mm2、引張強度は85N/mm2、せん断強度8N/mm2程度である。また、カラマツ材と圧縮強度が同等のコンクリートと比較した場合、木材であるカラマツ材は、芯材の有無や乾燥状態で強度のバラツキがあるものの、コンクリートに比べて、引張強度、せん断強度ともに約10倍を上回る強度特性を示す構造材である。よって、実施例1によるカラマツ材を木質荷重支持部2に用いた木質耐火部材1は、Fc=45N/mm2程度のコンクリート柱に相当する鉛直荷重程度まで負担できる。
以上、本発明の実施形態について説明したが本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
例えば、水分遮断層3に波板を使用し、木質荷重支持部2と水分遮断層3との間に隙間を形成することで、水蒸気の逃げ道を形成してもよい。
前記各実施形態では、柱(木質耐火柱)について説明したが、木質耐火部材1の用途は限定されるものではなく、例えば、梁(木質耐火梁)であってもよい。木質耐火梁の場合、木質荷重支持部2が梁本体となり、木質荷重支持部2の上面に床スラブが設けられることが多く、床スラブ付きの木質耐火梁では、木質耐火梁を形成する矩形形状の下方側のコ型状の3面に、水分遮断層3、耐火被覆層4、仕上げ木材層5を形成する。
前記各実施形態では、仕上げ板材51として平板を使用したが、仕上げ板材51は平板に限定されるものではない。例えば、断面視コ字状の成形木材や断面視L字状の成形木材を組み合わせることにより仕上げ木材層5を形成してもよい。
2 木質荷重支持部
3 水分遮断層
4 耐火被覆層
5 仕上げ木材層
6 連結部材
7 建物躯体
Claims (3)
- 木質荷重支持部の外周面または両側外側面に耐火被覆層と仕上げ木材層が設置された木質耐火部材であって、
断面視形状が矩形状、または円形状の前記木質荷重支持部と、
前記木質荷重支持部の外側面に設けられる水分遮断層と、
前記水分遮断層を被覆する湿式耐火被覆材からなる前記耐火被覆層と、
前記耐火被覆層の外側に設けられた前記仕上げ木材層と、を備え、
前記水分遮断層は、水分遮断塗膜、水分遮断シート、及び防水紙のいずれかで形成されていることを特徴とする木質耐火部材。 - 木質荷重支持部の外周面または両側外側面に耐火被覆層と仕上げ木材層が設置された木質耐火部材であって、
断面視形状が矩形状、または円形状の前記木質荷重支持部と、
前記木質荷重支持部の外側面に設けられる水分遮断層と、
前記水分遮断層を被覆する湿式耐火被覆材からなる前記耐火被覆層と、
前記耐火被覆層の外側に設けられた前記仕上げ木材層と、
前記耐火被覆層を貫通して配置された連結部材と、を備え、
前記連結部材は、柱状あるいは板状のモルタル部材あるいは石膏ボードで形成されていることを特徴とする木質耐火部材。 - 柱または壁柱を構成する木質耐火部材であって、
前記仕上げ木材層の上端及び下端に前記耐火被覆層を配置したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の木質耐火部材。
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