以下に、本発明の一実施形態に係る空気調和機10について説明する。空気調和機10は、室外に設定される室外ユニット20と、室内(空調室内に相当)の天井近傍に設置される室内ユニット30と、を備えており、冷房運転や暖房運転等の各種運転を実行することができる。
(1)室外ユニット
室外ユニット20は、圧縮機21と、圧縮機21の吐出側に接続されている四路切換弁22と、四路切換弁22に接続されている室外熱交換器23と、室外熱交換器23に接続されている膨張弁24と、を有している(図1参照)。
圧縮機21は、低圧のガス冷媒を吸入し圧縮して高圧のガス冷媒とした後に、高圧のガス冷媒を吐出する機構である。四路切換弁22は、冷房運転と暖房運転との切り換え時に、冷媒の流れる方向を切り換えるための弁である。四路切換弁22は、冷房運転時には、圧縮機21の吐出側と室外熱交換器23のガス側とを接続するとともに後述する室内熱交換器33と圧縮機21の吸入側とを接続する。また、四路切換弁22は、暖房運転時には、圧縮機21の吐出側と室内熱交換器33とを接続するとともに室外熱交換器23のガス側と圧縮機21の吸入側とを接続する。室外熱交換器23は、冷房運転時には冷媒の放熱器として機能し、暖房運転時には冷媒の蒸発器として機能する熱交換器である。膨張弁24は、冷房運転時には、室外熱交換器23において放熱した高圧の液冷媒を室内熱交換器33に送る前に減圧する。また、膨張弁24は、暖房運転時には、室内熱交換器33において放熱した高圧の液冷媒を室外熱交換器23に送る前に減圧する。さらに、室外ユニット20内には、室外ファン25が設けられている。室外ファン25は、室外の空気を取り込み、室外熱交換器23の熱交換後の空気を室外ユニット20外に排出するためのプロペラファンである。
(2)室内ユニット
室内ユニット30は、天井埋込型と呼ばれる型式の天井設置型の室内ユニットである。室内ユニット30は、内部に各種構成機器を収納するケーシング31と、室内ファン32と、室内熱交換器33と、複数(本実施形態では、4つ)の水平フラップ34a,34b,34c,34dと、吸込温度センサT1と、リモートコントローラ80と、を有している(図1から図6参照)。
ケーシング31は、ケーシング本体35と、ケーシング本体35の下側に配置される化粧パネル36と、から構成される。ケーシング本体35は、天井Uに形成された開口Oに挿入されて配置されている。また、化粧パネル36は、天井Uの開口Oに嵌め込まれるように配置されている(図5参照)。
ケーシング本体35は、平面視において長辺と短辺とが交互になるように形成された略8角形状の箱状の部材であって、その下面が開口している。また、ケーシング本体35の内部には、室内ファン32や室内熱交換器33等が収納されている。
化粧パネル36は、平面視が略4角形状の板状の部材である。化粧パネル36には、吹き出し口37と、吸い込み口36aとが形成されている。吹き出し口37は、室内に空気を吹き出すための開口であって、平面視において化粧パネル36の周縁部に沿うように位置している。吸い込み口36aは、室内の空気を吸い込むための開口であって、平面視において、化粧パネル36の略中央、すなわち、吹き出し口37に囲まれるように位置している。具体的には、吸い込み口36aは略4角形状の開口であり、吹き出し口37は、略4角環状の開口である。
室内ファン32は、駆動することで空気流れを生成することが可能な遠心送風機である。具体的には、室内ファン32は、吸い込み口36aを介して室内の空気をケーシング本体35内に吸い込むと共に、吹き出し口37を介して室内熱交換器33にて熱交換された後の空気をケーシング本体35内から吹き出す。また、室内ファン32は、インバータ装置(図示せず)によって回転数を変更可能なファンモータ32aを有している。ファンモータ32aの回転数が制御されることで、室内ファン32の風量制御が可能になっている。
室内熱交換器33は、冷房運転時には、冷媒の蒸発器として機能し、暖房運転時には、冷媒の放熱器として機能する熱交換器である。室内熱交換器33は、ケーシング本体35内に吸い込まれる室内の空気と冷媒との熱交換を行って、冷房運転時には、室内の空気を冷却し、暖房運転時には、室内の空気を加熱することができる。
4つの水平フラップ34a,34b,34c,34dは、化粧パネル36の4角形の各辺に対応するように位置すると共に、吹き出し口37に回動可能に設けられている。水平フラップ34a,34b,34c,34dは、吹き出し口37から室内に吹き出される空調空気の上下方向の風向角度を変更することが可能である。具体的には、水平フラップ34a,34b,34c,34dは、吹き出し口37の4角形の各辺に沿って細長く延びる板状の部材である。また、各水平フラップ34a,34b,34c,34dの長手方向の両端部は、吹き出し口37の一部を塞ぐように配置された1対の支持部39a,39bによって、長手方向の軸周りに回動可能になるように化粧パネル36に支持されている。さらに、各水平フラップ34a,34b,34c,34dは、駆動モータ38a,38b,38c,38dによって駆動されるようになっている。これにより、水平フラップ34a,34b,34c,34dは、それぞれ独立して上下方向の風向角度を変更することが可能であり、吹き出し口37に対して上下方向に往復回動することができるようになっている。
なお、吹き出し口37は、支持部39a,39bによって、化粧パネル36の4角形の各辺に対応する吹き出し口37a(第1吹き出し口に相当)、吹き出し口37b(第2吹き出し口に相当)、吹き出し口37c(第3吹き出し口に相当)及び吹き出し口37d(第4吹き出し口に相当)と、化粧パネル36の4角形の各角部に対応する吹き出し口37e、吹き出し口37f、吹き出し口37g、吹き出し口37gと、に区分される。なお、本実施形態では、図2及び図3に示すように、吹き出し口37aを覆うように水平フラップ34aが配置されており、吹き出し口37bを覆うように水平フラップ34bが配置されており、吹き出し口37cを覆うように水平フラップ34cが配置されており、吹き出し口37dを覆うように水平フラップ34dが配置されている。
吸込温度センサT1は、吸い込み口36aを通じてケーシング本体35内に吸い込まれる室内空気の温度である吸い込み空気温度(以下、吸込温度Trという)を検出する温度センサである。吸込温度センサT1は、図5に示すように、吸い込み口36aに設けられている。また、吸込温度センサT1は、検出した吸込温度Trを、後述する制御部60に送信する。
リモートコントローラ80は、ユーザが空気調和機10を遠隔操作するための装置である。リモートコントローラ80は、ユーザによって為された空気調和機10に対する各種指示を後述する制御部60に送信する。また、リモートコントローラ80には、運転開始/停止スイッチ84、風向調整スイッチ81、風量調整スイッチ82、および、手動/自動選択スイッチ83等の操作スイッチが設けられている(図6参照)。
運転開始/停止スイッチ84は、ユーザが空気調和機10の運転の開始指示あるいは停止指示を為す場合に操作するスイッチである。ユーザは、運転開始/停止スイッチ84を操作することで、空気調和機10の冷房運転や暖房運転等の各種運転を開始あるいは停止させることができる。
風向調整スイッチ81は、ユーザが風向設定指示を為す場合に操作するスイッチである。ユーザは、風向調整スイッチ81を操作することで、吹き出し口37a,37b,37c,37dから吹き出される空気の風向を、所望の風向に調整することができる。具体的には、ユーザが風向調整スイッチ81を押すことで、風向が図4に示す風向P0や風向P1に固定されたり風向が自動的に変更されたりするように、水平フラップ34a,34b,34c,34dが駆動される。
風量調整スイッチ82は、ユーザが風量設定指示を為す場合に操作するスイッチである。ユーザは、風量調整スイッチ82を操作することで、吹き出し口37から吹き出される空気の風量を、所望の風量に調整することができる。具体的には、ユーザが風量調整スイッチ82を押すことで、室内ファン32によって生成される風量が、後述する第1風量H、第2風量Mおよび第3風量Lに切り換わる。
手動/自動選択スイッチ83は、ユーザが冷房運転時におけるモード設定指示を為す場合に操作されるスイッチである。ユーザは、手動/自動選択スイッチ83を操作することで、手動制御モードまたは自動制御モードのいずれかにモード設定をすることができる。手動制御モードに設定されている場合には、冷房運転の運転開始時から、ユーザによって設定された設定温度Trs、設定風量、および、設定風向となるように、空気調和機10の各種機器が制御される。また、自動制御モードに設定されている場合には、冷房運転の運転開始から所定時間が経過するまでの期間である初期期間において、後述する初期冷房制御の制御内容に従って、空気調和機10の各種機器が制御される。
(3)制御部
制御部60は、CPU及びメモリからなるマイクロコンピュータであって、室内ユニット30および室外ユニット20の有する各種機器の動作を制御する。具体的には、図6に示すように、制御部60は、吸込温度センサT1、ファンモータ32a、駆動モータ38a,38b,38c,38d、圧縮機21、四路切換弁22および膨張弁24等の各種機器と電気的に接続されている。そして、制御部60は、吸込温度センサT1の検知結果や、ユーザによってリモートコントローラ80を介して為された各種指示に基づいて、圧縮機21等の各種機器の駆動制御を行う。
また、制御部60は、空気調和機10に冷房運転を行わせる場合、室外熱交換器23が冷媒の放熱器として機能し室内熱交換器33が冷媒の蒸発器として機能するように四路切換弁22の状態を切り換え、かつ、圧縮機21を駆動させる。また、冷房運転においては、制御部60は、吸込温度Trが設定温度Trsになるように、各種機器を制御する。すなわち、冷房運転において、吸込温度Trが設定温度Trsよりも高い場合には、圧縮機21が駆動することで冷媒回路内に冷媒が循環する上記の運転制御が行われる(以下、この運転制御が行われている状態を、冷房サーモオン状態という)。そして、吸込温度Trが設定温度Trsに達した場合には、冷媒回路内の冷媒の循環が行われないように圧縮機21が停止され、かつ、吹き出し口37から空気が吹き出されないように室内ファン32の回転が停止される制御が行われる(以下、この制御が行われている状態を、冷房サーモオフ状態という)。
さらに、制御部60は、受信部61と、風量制御部62と、風向制御部63と、を備えている。受信部61は、リモートコントローラ80から送信される各種指示を受信する。具体的には、受信部61は、リモートコントローラ80を介してユーザから為された冷房運転や暖房運転の開始指示を受信したり、風量設定指示および風向設定指示等を受信したりすることができる。また、受信部61は、ユーザから為された各種指示に基づく信号を、後述する初期冷房動作制御部65に送信する。
風量制御部62は、空気調和機10が暖房運転あるいは冷房運転を行っている場合に、リモートコントローラ80から送信される風量設定指示や吸込温度センサT1の検知結果に基づいて、ファンモータ32aの回転数を制御する。風量制御部62は、ファンモータ32aの回転数を制御することで、室内ファン32の風量を変更することができる。また、室内ファン32の風量は、ファンモータ32aの回転数が変更されることで、最も回転数が大きい第1風量H、第1風量Hの回転数よりも小さく中程度の第2風量M、第2風量Mの回転数よりもさらに小さい第3風量Lの間で変更される。
風向制御部63は、空気調和機10が暖房運転あるいは冷房運転を行っている場合に、リモートコントローラ80から送信される風向設定指示や吸込温度センサT1の検知結果に基づいて、各駆動モータ38a,38b,38c,38dを制御する。風向制御部63は、駆動モータ38a,38b,38c,38dを制御することで、各水平フラップ34a,34b,34c,34dの姿勢や動作を変更することができる。そして、各水平フラップ34a,34b,34c,34dの姿勢が変更されることで、吹き出し口37a,37b,37c,37dから吹き出される空気の風向が変更される。また、風向には、図4に示すように、空気が略水平方向に吹き出す風向である風向P0と、風向P0よりも下向きの風向P1とが含まれる。さらに、水平フラップ34a,34b,34c,34dの動作には、固定動作と、スイング動作とが含まれる。固定動作とは、駆動モータ38a,38b,38c,38dが制御されることで、水平フラップ34a,34b,34c,34dの姿勢が維持される動作のことである。また、スイング動作とは、駆動モータ38a,38b,38c,38dが駆動されることで、水平フラップ34a,34b,34c,34dの姿勢が変更可能範囲内(ここでは、風向P0と風向P1との間)で繰り返し上下に変更される動作のことである。なお、風向制御部63は、風向や動作の制御を各駆動モータ38a,38b,38c,38dに対して個別に行うことができる。
また、空気調和機10が暖房運転や冷房運転等の各種運転を行っていない場合には、各水平フラップ34a,34b,34c,34dが吹き出し口37a,37b,37c,37dを閉じた姿勢を採るように各駆動モータ38a,38b,38c,38dが制御される。以下では、説明の便宜上、水平フラップ34a,34b,34c,34dが吹き出し口37a,37b,37c,37dを閉じた姿勢を採る場合の風向角度を、風向P0cとして表すこととする(図7参照)。また、空気調和機10が暖房運転や冷房運転等の各種運転を行っている場合には、各水平フラップ34a,34b,34c,34dが吹き出し口37a,37b,37c,37dを開放した姿勢を採るように各駆動モータ38a,38b,38c,38dが制御される。なお、以下より、説明の便宜上、風向が風向P0となるように水平フラップ34a,34b,34c,34dが採る姿勢を水平吹き姿勢という。また、本実施形態では、ユーザによって自動制御モードに設定されている場合、後述する初期冷房制御が実行されている時以外の時には、水平フラップ34a,34b,34c,34dがデフォルトとして設定されている水平吹き姿勢を採るように、各駆動モータ38a,38b,38c,38dが制御される。
さらに、制御部60は、冷房運転の運転開始時に初期冷房制御を実行する初期冷房動作制御部65を備えている。初期冷房動作制御部65は、自動制御モードに設定されている場合に、初期冷房制御を実行する。
初期冷房動作制御部65は、初期冷房制御において、まず、冷房運転が開始された時から予め実験的に得られた所定時間(以下、最適時間という)が経過する時までの間の初期期間において、4つの水平フラップ34a,34b,34c,34dのうち互いに対向するように配置される2つの水平フラップが同じ姿勢を採りつつスイング動作を行う(以下、対面スイング動作という)ように風向制御部63に制御信号を送信するとともに、室内ファン32の風量が第1風量Hとなるように風量制御部62に制御信号を送信する。そして、初期冷房動作制御部65は、冷房運転が開始されてから最適時間が経過した時すなわち初期期間が終了した時に、水平フラップ34a,34b,34c,34dの対面スイング動作を停止させ、かつ水平フラップ34a,34b,34c,34dが水平吹き姿勢を採りつつ固定動作を開始するように風向制御部63に制御信号を送信するとともに、室内ファン32の風量が第1風量Hからユーザによって設定されていた設定風量となるように風量制御部62に制御信号を送信することで、初期冷房制御を終了する。
また、風向制御部63は、初期冷房動作制御部65から対面スイング動作に関する制御信号が送信されると、4つの水平フラップ34a,34b,34c,34dのうち、2つの水平フラップ(例えば、水平フラップ34a,34c;第1フラップに相当)と、他の水平フラップ(例えば、水平フラップ34b,34d;第2フラップに相当)とが互いに逆方向にスイング動作を行うように、各駆動モータ38a,38b,38c,38dを制御する。また、このとき、風向制御部63は、2つの水平フラップ(例えば、水平フラップ34a,34c)の回動方向が変化するタイミングで、他の水平フラップ(例えば、34b,34d)の回動方向を変化させる制御を行う。なお、風向制御部63は、2つの水平フラップ(例えば、水平フラップ34a,34c)と他の水平フラップ(例えば、34b,34d)とのいずれか一方のスイング動作を先に開始させることで、2つの水平フラップ(例えば、水平フラップ34a,34c)と他の水平フラップ(例えば、34b,34d)とに、異なるスイング動作を行わせている。また、本実施形態における異なるスイング動作とは、同一のスイングパターンのスイング動作を異なるタイミングで行う動作のことを意味しているが、これに限定されず、異なるスイング動作が、例えば、異なるスイングパターンのスイング動作であってもよい。
以下に、図7を用いて、初期冷房制御により水平フラップ34a,34b,34c,34dが採る姿勢について説明する。なお、図7では、水平フラップ34a及び水平フラップ34cが、水平フラップ34b及び水平フラップ34dよりも先に回動を開始しているが、これに限定されず、水平フラップ34b及び水平フラップ34dが水平フラップ34a及び水平フラップ34cよりも先に回動を開始してもよい。
風向制御部63は、まず、各駆動モータ38a,38cの駆動を制御することで、水平フラップ34a,34cが共に吹き出し口37a,37cを閉じた状態(風向P0c)から風向P0を経て風向P1へと回動する方向、つまりは、下方向に、同じ回動速度で回動する。従って、水平フラップ34a及び水平フラップ34cの風向角度は、同じタイミングで風向P0から風向P1に到達する。水平フラップ34a,34cが風向P1に達した後、水平フラップ34a,34cの回動方向は、下方向から上方向へと変化するが、このタイミングで、他の水平フラップ34b,34dが、共に吹き出し口37b,37dを閉じた状態(風向P0c)から風向P1へと回動(つまり、下方向へと回動)を開始する。そして、水平フラップ34a,34cは、上方向へと同じ回動速度で回動する一方、水平フラップ34b,34dは、下方向へと同じ回動速度で回動する。この時、水平フラップ34b,34dの回動速度は、水平フラップ34a,34cの回動速度と等しい。
このような動作が繰り返されることにより、水平フラップ34a,34cが共に下方向へと回動している場合には、水平フラップ34b,34dは共に上方向へと回動し、水平フラップ34a,34cの風向角度が同時に風向P1となったタイミングで、水平フラップ34b,34dの風向角度は、同時に風向P0となる。逆に、水平フラップ34a,34cが共に上方向へと回動している場合には、水平フラップ34b,34dは共に下方向へと回動し、水平フラップ34a,34cの風向角度が同時に風向P0となったタイミングで、水平フラップ34b,34dの風向角度は、同時に風向P1となる。
なお、以下より、説明の便宜上、初期冷房制御において、水平フラップ34a,34cあるいは水平フラップ34b,34dが同期駆動しながら上述のスイング動作(対面スイング動作)を行っている状態を対面スイング状態といい、水平フラップ34a,34b,34c,34dが水平吹き姿勢を採りかつ固定動作を行っている状態を水平吹き固定状態という。また、本実施形態では、最適時間を16分40秒としている。
(4)初期冷房動作制御部による制御動作
次に、初期冷房動作制御部65による制御動作について図8を用いて説明する。なお、上述のように、初期冷房動作制御部65は、冷房運転開始時であって、かつ、ユーザによって自動制御モードに設定されている場合にのみ、初期冷房制御を実行する。すなわち、暖房運転開始時、あるいは、冷房運転開始時であってもユーザによって手動制御モードに設定されている場合には、初期冷房動作制御部65による初期冷房制御は実行されない。
初期冷房動作制御部65は、受信部61から送信される冷房運転開始指示信号を受信した場合(ステップS1)に、初期冷房制御の実行を開始する。具体的には、室内に居るユーザによって為され冷房運転開始指示を受信した受信部61から送信される冷房運転開始指示信号を初期冷房動作制御部65が受信することで、初期冷房動作制御部65は初期冷房制御の実行を開始する。
初期冷房動作制御部65は、初期冷房制御において、まず、対面スイング動作に関する風向変更信号を風向制御部63に送信するとともに、風量変更信号を風量制御部62に送信する(ステップS2)。初期冷房動作制御部65から対面スイング動作に関する風向変更信号が送信された風向制御部63は、水平フラップ34a,34b,34c,34dの状態が対面スイング状態となるように駆動モータ38a,38b,38c,38dを制御する。また、初期冷房動作制御部65から風量変更信号が送信された風量制御部62は、室内ファン32の風量が、ユーザによって設定されている設定風量ではなく第1風量Hとなるように、ファンモータ32aの回転数を制御する。
そして、ステップS2において対面スイング動作に関する風向変更信号および風量変更信号を送信してから最適時間が経過すると(ステップS3)、初期冷房動作制御部65は、風向変更解除信号を風向制御部63に送信するとともに、風量制御部62に風量変更解除信号を送信する(ステップS4)。初期冷房動作制御部65から風向変更解除信号が送信された風向制御部63は、すべての水平フラップ34a,34b,34c,34dの状態が水平吹き固定状態となるように、駆動モータ38a,38b,38c,38dを制御する。また、初期冷房動作制御部65から風向変更解除信号が送信された風量制御部62は、ファンモータ32aを制御することで、室内ファン32の風量を、第1風量Hからユーザによって設定されている設定風量に変更する。これにより、初期冷房動作制御部65による初期冷房制御が終了する。なお、初期冷房動作制御部65は、対面スイング動作に関する風向変更信号および風量変更信号を送信してから最適時間が経過するまでは、風向変更解除信号及び風量変更解除信号を送信しない(ステップS3)。
ここで、初期冷房制御において、互いに対向するように配置される水平フラップが同期してスイング動作を行うように制御を行う理由、すなわち、対面スイング動作を採用した理由について、評価試験の結果を示す図9および図10を用いて説明する。なお、以下では、説明の便宜上、すべての水平フラップ34a,34b,34c,34dが同期してスイング動作を行っている状態、すなわち、すべての水平フラップ34a,34b,34c,34dのスイング動作が同時に開始されることですべての水平フラップ34a,34b,34c,34dが同じ姿勢を採りつつスイング動作を行っている状態を全同期スイング状態という。
図9は、試験室内に設置した室内ユニット30の水平フラップ34a,34b,34c,34dを水平吹き固定状態として空気調和機10に冷房運転を行わせた場合、試験室内に設置した室内ユニット30の有する水平フラップ34a,34b,34c,34dを全同期スイング状態として空気調和機10に冷房運転を行わせた場合、あるいは、試験室内に設置した室内ユニット30の有する水平フラップ34a,34b,34c,34dを対面スイング状態として空気調和機10に冷房運転を行わせた場合に、冷房運転を開始してから、平均室温(試験室内空間に格子状に配置した複数の温度検知センサの平均値、すなわち、試験室内のあらゆる箇所で計測した温度の平均値)が設定温度Trsに達するまで(以下、温度分布均一化期という)の時間と、空気調和機10全体で消費される消費電力と、を示している。
図10は、試験室内に設置した室内ユニット30の水平フラップ34a,34b,34c,34dを水平吹き固定状態として空気調和機10に冷房運転を行わせた場合、試験室内に設置した室内ユニット30の有する水平フラップ34a,34b,34c,34dを全同期スイング状態として空気調和機10に冷房運転を行わせた場合、試験室内に設置した室内ユニット30の有する水平フラップ34a,34b,34c,34dを対面スイング状態として空気調和機10に冷房運転を行わせた場合、あるいは、試験室内に設置した室内ユニット30の有する水平フラップ34a,34b,34c,34dを、運転開始から16分40秒が経過するまでは対面スイング状態とし16分40秒が経過した後は水平吹き固定状態として空気調和機10に冷房運転を行わせた場合に、冷房運転の運転開始時から1時間が経過するまでの間に空気調和機10全体で消費される消費電力を示している。
なお、図9および図10は、試験室内の環境をJISの冷房標準条件(外気温度DB:35℃、WB:30℃)で、十分な時間なじませた後に評価試験を行った結果である。また、図9及び図10は、設定温度Trsを27℃に設定し、設定風量を第1風量Hに設定した結果である。
室内の温度分布の測定結果から、冷房運転を開始してから平均室温が設定温度Trsに達するまでに要する時間、すなわち、温度分布均一化期の長さは、全同期スイング状態よりも水平吹き固定状態の方が短く、水平吹き固定状態よりも対面スイング状態の方が短かった(図9参照)。これにより、冷房運転の開始時には、全同期スイング状態よりも水平吹き固定状態の方が短時間で均一な温度分布を生成することができ、水平吹き固定状態よりも対面スイング状態の方が短時間で均一な温度分布を生成することができることが判明した。すなわち、対面スイング状態、水平吹き固定状態、全同期スイング状態の順に、冷房運転開始時の室内の温度分布均一化効果が高いことが判明した。
また、図9に示すように、冷房運転を開始してから平均室温が設定温度Trsに達するまでに消費される消費電力、すなわち、温度分布均一化期に消費される消費電力は、水平吹き固定状態の方が全同期スイング状態よりも約5割小さく、水平吹き固定状態よりも対面スイング状態の方が3割強小さかった。
さらに、図10に示すように、冷房運転を開始してから1時間が経過するまでに消費される消費電力は、全同期スイング状態の方が水平吹き固定状態よりも2割弱大きく、対面スイング状態の方が水平吹き固定状態よりも3割強大きかった。
これらの結果から、冷房運転を開始してから平均室温が設定温度Trsに達するまで、すなわち、温度分布均一化期には水平フラップ34a,34b,34c,34dに対面スイング動作を行わせ、平均室温が設定温度Trsに達した後、すなわち、温度分布均一化期の後の期間(以下、安定期という)には水平フラップ34a,34b,34c,34dに水平吹き姿勢を採らせてかつ固定動作行わせる場合には、温度分布均一化期および安定期に連続してすべての水平フラップ34a,34b,34c,34dに水平吹き姿勢を採らせて固定動作を行わせる場合と比較して、冷房運転が開始されてから室内の温度分布を均一にするために必要とされる時間が短くなり、かつ、消費電力が小さくなることが判明した。また、温度分布均一化期には水平フラップ34a,34b,34c,34dに対面スイング動作を行わせて、安定期には水平フラップ34a,34b,34c,34dに水平吹き姿勢を採らせてかつ固定動作を行わせる場合には、温度分布均一化期および安定期に連続して水平フラップ34a,34b,34c,34dに対面スイング動作を行わせる場合と比較して、冷房運転が開始されてから室内の温度分布を均一にするために必要とされる消費される電力が小さくなることが判明した(図10参照)。
そこで、本発明者は、冷房運転の運転開始と同時に水平フラップ34a,34b,34c,34dに対面スイング動作を開始させ、水平フラップ34a,34b,34c,34dに対面スイング動作を開始させてから所定時間(最適時間)が経過したら対面スイング動作を停止させて、水平フラップ34a,34b,34c,34dに水平吹き姿勢を採らせかつ固定動作を行わせることが、冷房運転が開始された後に、室内の温度分布を短時間で均一にし、かつ、消費電力の小さい制御であるという知見を得た。そして、本実施形態の空気調和機10においては、このような知見を利用して、初期冷房制御では、水平フラップ34a,34b,34c,34dの状態が対面スイング状態、水平吹き固定状態の順に切り換わるように水平フラップ34a,34b,34c,34dを制御する制御手法を採用することとした。
また、本評価試験では、水平フラップ34a,34b,34c,34dの状態を対面スイング状態とした場合、冷房運転を開始させてから16分40秒が経過した時点で、室内の温度分布が均一となった。このため、冷房運転の運転が開始された後に、室内の温度分部を均一にし、かつ、消費電力を小さくすることができる対面スイング動作の実行継続時間(最適時間)は、冷房運転の運転開始から16分40秒前後とすることが望ましい。なお、最適時間を16分40秒前後とする場合、その前提条件として、空気調和機10の能力が空気調和機10の設置されている部屋の空調負荷にほぼ適合している(能力過多でも能力不足でもない状態)という条件、及び、4つの水平フラップ34a,34b,34c,34dのうち互いに対向するように配置される2つの水平フラップが同期して駆動されるという条件が満たされている必要がある。
初期冷房制御として上述のような制御が採用されることで、冷房運転の開始時に、水平フラップ34a,34b,34c,34dを水平吹き固定状態、あるいは、水平フラップ34a,34b,34c,34dを全同期スイング状態とするような空気調和機10を比較して、短時間で、冷房運転開始時の室内の温度分布の均一化を図ることができる。
また、本実施形態においては、初期冷房制御における最適時間を16分40秒としているため、室内の温度分布を均一にすることができ、かつ、初期冷房制御において消費される電力量を抑えることができる。
(5)特徴
(5−1)
冷房運転時にユーザの快適性を向上させようとした場合、冷房運転が開始された後、できる限り短い時間で室内の温度分布を均一にすることが考えられる。そして、発明者は、4つの水平フラップ34a,34b,34c,34dを有する空気調和機10の室内ユニット30において、すべての水平フラップ34a,34b,34c,34dに同じタイミングでスイング動作を行わせるよりも、すべての水平フラップ34a,34b,34c,34dに水平吹き姿勢を採らせつつ固定動作を行わせる方が、冷房運転の運転開始後、短時間で、室内の温度分布を均一にすることができるという知見を得た。さらに、発明者は、すべての水平フラップ34a,34b,34c,34dに水平吹き姿勢を採らせつつ固定動作を行わせるよりも、水平フラップ34a,34b,34c,34dのうち、互いに対向するように配置される2つの水平フラップ(例えば、水平フラップ34a,34c)と、互いに対向するように配置される2つの水平フラップ(例えば、水平フラップ34b,34d)とに、異なるスイング動作を行わせる方が、冷房運転の開始後、短時間で、室内の温度分布を均一にすることができるという知見を得た。
そこで、本実施形態では、初期冷房制御において、初期期間に、水平フラップ34a,34cと水平フラップ34b,34dとが異なるタイミングでスイング動作を開始する対面スイング動作を、水平フラップ34a,34b,34c,34dに行わせている。このため、すべての水平フラップ34a,34b,34c,34dに水平吹き姿勢を採らせつつ固定動作を行わせる場合、あるいは、すべての水平フラップ34a,34b,34c,34dに同じスイング動作を行わせる場合と比較して、冷房運転が開始された後に室内の温度分布を均一にするために必要な時間を短縮することができる。
これによって、ユーザの快適性を向上させることができている。
(5−2)
本実施形態では、初期冷房動作制御部65は、初期冷房制御において、室内ファン32の風量が第1風量Hとなるように風量制御部62に風向変更信号を送信している。これにより、初期冷房制御が行われている間、室内ファン32の風量が室内ファン32の最大風量である第1風量Hとなるように、ファンモータ32aの回転数が制御される。したがって、例えば、室内ファン32の風量が第1風量Hより小さい第3風量Lとなるようにファンモータ32aの回転数が制御される場合と比較して、短時間で室内の温度分布を均一にすることができている。
(5−3)
本実施形態では、初期冷房制御の初期期間の長さ、すなわち、初期冷房制御において対面スイング動作が実行される時間として、予め実験的に得られた最適時間が採用されている。このため、空気調和機10に、初期期間の長さを予め設定しておくことができる。
(5−4)
本実施形態では、初期冷房制御において、風量を第1風量Hにして、水平フラップ34a,34b,34c,34dに対面スイング動作を行わせた後に、水平フラップ34a,34b,34c,34dの対面スイング動作を停止させ、風量を設定風量にして、水平フラップ34a,34b,34c,34dに、水平吹き姿勢を採らせて固定動作を行わせている。このため、例えば、冷房運転が開始された時に、風量を設定風量(例えば、第3風量L)として、水平フラップ34a,34b,34c,34dが水平吹き姿勢を採りかつ固定動作を行うように制御される空気調和機と比較して、室内の温度分布を均一にするために必要な時間を短縮することができ、かつ、省エネルギーを実現することができる。
(6)変形例
(6−1)変形例A
上記実施形態では、初期冷房制御において、4つの水平フラップ34a,34b,34c,34dのうち対面に位置する2つの水平フラップが同じ姿勢を採りつつスイングするように同期駆動されている。
これに代えて、初期冷房制御において、4つの水平フラップ34a,34b,34c,34dのうち、隣接する位置に配置されている2つの水平フラップが同じ姿勢を採りつつスイングするように同期駆動されてもよい。
例えば、初期冷房動作制御部65から制御信号が送信されると、風向制御部63は、4つの水平フラップ34a,34b,34c,34dのうち、2つの水平フラップ34a,34bと、他の水平フラップ34c,34dとが互いに逆方向にスイングするように、各駆動モータ38a,38b,38c,38dを制御する。また、このとき、風向制御部63は、2つの水平フラップ34a,34bの回動方向が変化するタイミングで、他の水平フラップ34c,34dの回動方向を変化させる制御を行う。
以下に、図11を用いて、本変形例における初期冷房制御により水平フラップ34a,34b,34c,34dが採る姿勢について説明する。なお、図11では、1例として、化粧パネル36の吹き出し口37fを挟んで隣り合う水平フラップ34aと水平フラップ34bとが、同じタイミングで同じ姿勢を採りながらスイング動作を行っており、吹き出し口37hを挟んで隣り合う水平フラップ34cと水平フラップ34dとが、同じタイミングで同じ姿勢を採りながらスイング動作を行っている場合を示している。しかしながら、同じタイミングで同じ姿勢を採りながらスイング動作を行う2つの水平フラップの組み合わせは、これに限定されず、吹き出し口37gを挟んで隣り合う水平フラップ34bと水平フラップ34cとが同期駆動され、吹き出し口37eを挟んで隣り合う水平フラップ34dと水平フラップ34aとが同期駆動されてもよい。また、ここでは、水平フラップ34a及び水平フラップ34bが、水平フラップ34c及び水平フラップ34dよりも先に回動を開始しているが、これに限定されず、水平フラップ34c及び水平フラップ34dが水平フラップ34a及び水平フラップ34bよりも先に回動を開始してもよい。
風向制御部63は、まず、各駆動モータ38a,38bの駆動を制御することで、水平フラップ34a,34bが共に吹き出し口37a,37bを閉じた状態(風向P0c)から風向P0を経て風向P1へと回動する方向、つまりは、下方向に、同じ回動速度で回動する。従って、水平フラップ34a及び水平フラップ34bの風向角度は、同じタイミングで風向P0から風向P1に到達する。水平フラップ34a,34bが風向P1に達した後、水平フラップ34a,34bの回動方向は、下方向から上方向へと変化するが、このタイミングで、他の水平フラップ34c,34dが、共に吹き出し口37c,37dを閉じた状態(風向P0c)から風向P1へと回動(つまり、下方向へと回動)を開始する。そして、水平フラップ34a,34bは、上方向へと同じ回動速度で回動する一方、水平フラップ34c,34dは、下方向へと同じ回動速度で回動する。この時、水平フラップ34c,34dの回動速度は、水平フラップ34a,34bの回動速度と等しい。
このような動作が繰り返されることにより、水平フラップ34a,34bが共に下方向へと回動している場合には、水平フラップ34c,34dは共に上方向へと回動し、水平フラップ34a,34bの風向角度が同時に風向P1となったタイミングで、水平フラップ34c,34dの風向角度は、同時に風向P0となる。逆に、水平フラップ34a,34bが共に上方向へと回動している場合には、水平フラップ34c,34dは共に下方向へと回動し、水平フラップ34a,34bの風向角度が同時に風向P0となったタイミングで、水平フラップ34c,34dの風向角度は、同時に風向P1となる。なお、以下では、説明の便宜上、水平フラップ34a,34bあるいは水平フラップ34c,34dが同期駆動しながら上述のスイング動作を行っている状態を対角スイング状態とう。
発明者は、暖房運転において、すべての水平フラップを同期して駆動させてスイング動作を行わせる状態である全同期スイング状態の場合、および、上述のように互いに隣接する2つの水平フラップを同期して駆動させてスイング動作を行わせる状態である対角スイング状態の場合における室内の温度分布均一化効果についての評価試験を行った結果、以下のような知見を得た。
対角スイング動作あるいは対面スイング動作が行われる場合には、全同期スイング動作が行われる場合よりも短時間で均一な温度分布を生成することが判った。また、室内の温度分布を均一にするために暖房運転を開始してから最初に暖房サーモオフ状態(暖房運転時に吸込温度Trが設定温度Trsに達することで、圧縮機21が停止され、かつ、室内ファン32の回転が停止される制御が行われる状態)となるまでに空気調和機10全体で消費される消費電力を、全同期スイング動作が行われる場合と対角スイング動作が行われる場合とで比較すると、その消費電力は、全同期スイング動作が行われる場合よりも対角スイング動作が行われる場合の方が約3割小さかった。また、室内の温度分布を均一にするために暖房運転を開始してから最初に暖房サーモオフ状態となるまでに空気調和機10全体で消費される消費電力を、全同期スイング動作が行われる場合と対面スイング動作が行われる場合とで比較すると、消費電力は、全同期スイング動作が行われる場合よりも対面スイング動作が行われる場合の方が約4割弱小さかった。このことから、室内の温度分布を均一にするためのスイング動作としては、対角あるいは対面に位置する水平フラップ34a,34b,34c,34d同士を同期駆動させる方が、全ての水平フラップ34a,34b,34c,34dを同期駆動させるよりも、消費電力が少なく、かつ、温度分布均一化効果が高いという知見を得た。
したがって、初期冷房制御において、互いに隣接する位置に配置されている水平フラップが同じタイミングで同じ姿勢を採りつつスイング動作を行う対角スイング動作が行われる場合には、すべての水平フラップが同期してスイング動作を行う全同期スイング動作が行われる場合よりも、室内の温度分布を短時間で均一にすることができ、かつ、より高い省エネルギー効果を期待することができる。
(6−2)変形例B
上記実施形態では、空気調和機10の備える室内ユニット30は、天井埋込型の室内ユニットであるが、これに限定されず、室内ユニットが、ケーシングが天井から吊されて設置される天井吊下型の室内ユニットであってもよい。
(6−3)変形例C
上記実施形態では、初期冷房制御において、冷房運転が開始されてからできる限り短時間で室内の温度分布を均一にするために、水平フラップ34a,34b,34c,34dに対面スイング動作を行わせ、かつ、室内ファン32の風量が第1風量Hとなるようにファンモータ32aが制御されている。そして、初期冷房制御の終了時には、水平フラップ34a,34b,34c,34dの対面スイング動作が停止され、すべての水平フラップ34a,34b,34c,34dが水平吹き姿勢を採りつつ固定動作を行うように制御されるとともに、室内ファン32の風量が第1風量Hから設定風量となるようにファンモータ32aが制御されている。
これに代えて、初期冷房制御において、室内の温度分布を均一にした後に、更に、室内の温度を安定させるために効率のよい制御が行われてもよい。
ここで、発明者は、上記評価試験と同様の条件で、冷房運転を開始してから平均室温が設定温度Trsに達した後、すなわち、安定期に、水平フラップ34a,34b,34c,34dの状態を水平吹き固定状態とし風量を第1風量Hとして冷房運転を行った場合に消費される消費電力と、水平フラップ34a,34b,34c,34dの状態を水平吹き固定状態とし風量を第2風量Mとして冷房運転を行った場合に消費される消費電力とを比較した結果、第1風量Hの消費電力の方が、第2風量Mの消費電力よりも小さいことを見いだした。これは、安定期においては、室内ファン32の風量として、第1風量Hの方が第2風量Mよりも熱交換効率がよいためであると考えられた。発明者は、この点に着目することで、初期冷房制御において、水平フラップ34a,34b,34c,34dの状態を対面スイング状態から水平吹き固定状態に切り換えた時から所定の時間が経過するまでは風量を第1風量Hにすることで、水平フラップ34a,34b,34c,34dの状態を対面スイング状態から水平吹き固定状態に切り換えると同時に風量をユーザによって設定されている設定風量(例えば、第2風量M)にする場合と比較して、室内の温度を安定させることができ、かつ、消費電力を抑えることができるという知見を得た。
以下に、図12及び図13を用いて、冷房運転の開始時に、水平フラップ34a,34b,34c,34dの状態が対面スイング状態から水平吹き固定状態に切り換えられた後、所定の時間が経過するまでは第1風量Hが維持される初期冷房制御が実行される空気調和機10について説明する。なお、図12(a)は、上記実施形態の初期期間及び初期期間後の期間における水平フラップ34a,34b,34c,34dの状態及び室内ファン32の風量を示す図であり、図12(b)は、本変形例の初期期間及び初期期間後の期間における水平フラップ34a,34b,34c,34dの状態及び室内ファン32の風量を示す図である。また、図12(b)では、説明の便宜上、初期冷房制御が実行される初期期間を、水平フラップ34a,34b,34c,34dによって対面スイング動作が行われる第1期間と、固定動作が行われる第2期間とに分けている。また、第1期間とは、上記実施形態の初期期間に相当する期間であって、冷房運転が開始された時から予め実験的に得られた最適時間が経過する時までの間の期間のことである。また、第2期間とは、第1期間より後の期間であって、最適時間が経過した後に、冷房サーモオン状態と冷房サーモオフ状態とが切り換わった回数が所定回数(例えば、2回あるいは3回)以上となるまでの期間のことである。さらに、本変形例では、冷房サーモオン状態から冷房サーモオフ状態に切り換わったか否かの判定は、初期冷房動作制御部65によって行われるものとする。
次に、本変形例における初期冷房動作制御部65による制御動作について説明する。(図13参照)。
初期冷房動作制御部65は、受信部61から送信される冷房運転開始指示信号を受信した場合(ステップS11)に、初期冷房制御の実行を開始する。具体的には、室内に居るユーザによって為され冷房運転開始指示を受信した受信部61から送信される冷房運転開始指示信号を初期冷房動作制御部65が受信することで、初期冷房動作制御部65は初期冷房制御の実行を開始する。
初期冷房動作制御部65は、初期冷房制御において、まず、対面スイング動作に関する風向変更信号を風向制御部63に送信するとともに、風量変更信号を風量制御部62に送信する(ステップS12)。初期冷房動作制御部65から対面スイング動作に関する風向変更信号が送信された風向制御部63は、水平フラップ34a,34b,34c,34dの状態が対面スイング状態となるように駆動モータ38a,38b,38c,38dを制御する。また、初期冷房動作制御部65から風量変更信号が送信された風量制御部62は、室内ファン32の風量が、ユーザによって設定されている設定風量ではなく第1風量Hとなるように、ファンモータ32aの回転数を制御する。
そして、ステップS12において対面スイング動作に関する風向変更信号および風量変更信号を送信してから最適時間が経過すると(ステップS13)、初期冷房動作制御部65は、水平吹き姿勢での固定動作に関する風向変更信号を風向制御部63に送信する(ステップS14)。初期冷房動作制御部65から水平吹き姿勢での固定動作に関する風向変更信号が送信された風向制御部63は、すべての水平フラップ34a,34b,34c,34dの状態が水平吹き固定状態となるように、駆動モータ38a,38b,38c,38dを制御する。これにより、各水平フラップ34a,34b,34c,34dの状態が、風向が自動的に変更されるスイング状態から風向が風向P0で維持される水平吹き固定状態に切り換わる。なお、初期冷房動作制御部65は、対面スイング動作に関する風向変更信号および風量変更信号を送信してから最適時間が経過するまでは、風向制御部63に水平吹き姿勢での固定動作に関する風向変更信号を送信しない。
ステップS14において水平吹き姿勢での固定動作に関する風向変更信号を送信した後に、冷房サーモオン状態から冷房サーモオフ状態に所定回数(例えば、2回)以上状態が切り換わったと判定した場合(ステップS15)、初期冷房動作制御部65は、風量制御部62に風量変更解除信号を送信する(ステップS16)。初期冷房動作制御部65から風量変更解除信号が送信された風量制御部62は、ファンモータ32aを制御することで、室内ファン32の風量を、第1風量Hからユーザによって設定されている設定風量に変更する。これにより、初期冷房動作制御部65による初期冷房制御が終了する。なお、初期冷房動作制御部65は、ステップS15において水平吹き姿勢での固定動作に関する風向変更信号を送信した後に、冷房サーモオン状態から冷房サーモオフ状態に所定回数(例えば、2回)以上状態が切り換わったと判定するまでは、風量制御部62に風量変更解除信号を送信しない。
このように、水平フラップ34a,34b,34c,34dの状態が対面スイング状態から水平吹き固定状態に切り換えられることで、冷房運転が開始されて室内の温度分布が均一となった後に、冷たい空気が室内の床面付近に溜まり難くすることができる。また、初期冷房制御において、水平フラップ34a,34b,34c,34dの状態を対面スイング状態から水平吹き固定状態に切り換えた時から所定の時間が経過するまで風量が第1風量Hとなるようにファンモータ32aを制御することで、例えば、水平フラップ34a,34b,34c,34dの状態を対面スイング状態から水平吹き固定状態に切り換えると同時に風量が第2風量Mとなるようにファンモータ32aが制御される場合と比較して、空気調和機10において消費される電力を抑えることができる。
(6−4)変形例D
上記実施形態では、初期冷房制御が実行される期間である初期期間の長さは、予め実験的に得られた最適時間に設定されている。
これに代えて、室内ユニット30が設置されている室内環境に応じて、初期期間の長さが決定されてもよい。例えば、過去の運転実績を学習することで、初期期間の長さが決定されてもよい。
ここで、本発明者は、上記評価試験の結果から、対面スイング状態で冷房運転を開始してから16分40秒が経過した時点と、水平吹き固定状態で冷房運転を開始してから最初に冷房サーモオン状態から冷房サーモオフ状態に切り換わる時点とがほぼ一致していることを見いだした。このため、本発明者は、水平吹き固定状態で冷房運転を開始させてから、冷房サーモオン状態から冷房サーモオフ状態に切り換わるまでに要した時間から、室内ユニット30が設置されている部屋に応じた対面スイング動作の実行継続時間、すなわち、初期期間の長さを決定することができるという知見を得た。
以下に、初期冷房制御において、初期期間の長さ、すなわち、対面スイング動作が実行される時間(上記実施形態では、最適時間に相当する時間)が、過去の運転実績に基づいて決定される空気調和機10について説明する。なお、本変形例において、制御部160以外の構成は、上記実施形態と同様の構成であるため、制御部160以外の構成については上記実施形態と同様の符号を用いて説明する。
制御部160は、CPU及びメモリからなるマイクロコンピュータであって、室内ユニット30および室外ユニット20の有する各種機器の動作を制御する。また、制御部160は、図14に示すように、受信部161と、風量制御部162と、風向制御部163と、初期冷房動作制御部165と、を備えている。なお、受信部161、風量制御部162および風向制御部163の構成は、上記実施形態と同様の構成であるため説明を省略する。
初期冷房動作制御部165は、冷房運転の運転開始時に初期冷房制御を実行する。また、初期冷房動作制御部165は、ユーザによって自動制御モードに設定されている場合に、初期冷房制御を実行する。さらに、初期冷房動作制御部165は、過去の運転実績を学習することで、初期冷房制御における対面スイング動作の実行時間(初期期間の長さ)である学習運転時間を決定する学習部166を有している。
初期冷房動作制御部165は、受信部161から冷房運転開始指示信号が送信された場合に、学習部166による学習が必要であるか否かを判定する。初期冷房動作制御部165は、学習部166によって学習運転時間が決定された時から数えて、冷房サーモオン状態と冷房サーモオフ状態とが切り換わった回数が所定回数(例えば、30回)以上となった場合に、学習部166による学習運転時間の決定が必要であると判定する。すなわち、初期冷房動作制御部165は、学習部166によって学習運転時間が決定された時から数えて、冷房サーモオン状態と冷房サーモオフ状態とが切り換わった回数が所定回数未満である場合には、学習部166による学習運転時間の決定が必要でないと判定する。そして、学習部166による学習が必要でないと判定した場合には、初期冷房制御を開始する。
初期冷房動作制御部165は、初期冷房制御において、まず、水平フラップ34a,34b,34c,34dが対面スイング動作を開始し、かつ、室内ファン32の風量が第1風量Hとなるように、風向制御部163および風量制御部162に制御信号を送信する。次に、初期冷房動作制御部165は、冷房運転が開始されてから学習部166によって決定された学習運転時間が経過した時に、水平フラップ34a,34b,34c,34dの対面スイング動作を停止させ、すべての水平フラップ34a,34b,34c,34dが水平吹き姿勢を採りつつ固定動作を開始するように風向制御部163に制御信号を送信するとともに、室内ファン32の風量が第1風量Hからユーザによって設定されていた設定風量となるように風量制御部162に制御信号を送信することで、初期冷房制御を終了する。
なお、初期冷房動作制御部165から制御信号が送信されると、上記実施形態と同様に、風向制御部163は、4つの水平フラップ34a,34b,34c,34dのうち、2つの水平フラップ(例えば、水平フラップ34a,34c)と、他の水平フラップ(例えば、34b,34d)とが互いに逆方向にスイングするように、各駆動モータ38a,38b,38c,38dを制御する。
学習部166は、初期冷房動作制御部165によって学習運転時間の決定が必要であると判定された場合に、学習運転時間を決定する。なお、学習運転時間は、学習部166によって決定される毎に記憶部(図示せず)に保存される。
また、学習部166は、全ての水平フラップ34a,34b,34c,34dを水平吹き固定状態として冷房運転が行われた場合に、冷房サーモオン状態が継続される時間、すなわち、冷房運転開始から冷房サーモオフ状態となるまでの冷房サーモオン継続時間を計測し、計測した冷房サーモオン継続時間を利用して学習運転時間を決定する。
なお、ここでは、初期冷房動作制御部165が、学習部166による学習運転時間の決定が必要であるか否かを判定し、前記判定に基づいて学習部166によって学習運転時間が決定されているが、これに限定されず、室内ユニット30が室内に設置された時に行われる試運転時にのみ学習部166によって学習運転時間が決定されてもよい。また、例えば、予め設定されている時刻(例えば、13:00)に、初期冷房動作制御部165が、学習部166による学習運転時間の決定が必要であると判定してもよい。さらに、例えば、初期冷房動作制御部165が、前回、学習部166によって学習運転時間が決定された時から所定時間(例えば、24時間)が経過している場合に、学習部166による学習運転時間の決定が必要であると判定してもよい。
次に、初期冷房動作制御部165による制御動作について図15及び図16を用いて説明する。なお、上述のように、初期冷房動作制御部165は、冷房運転開始時であって、かつ、ユーザによって自動制御モードに設定されている場合にのみ、初期冷房制御を実行する。すなわち、暖房運転開始時、あるいは、冷房運転開始時であってもユーザによって手動制御モードに設定されている場合には、初期冷房動作制御部165による初期冷房制御は実行されない。
初期冷房動作制御部165は、受信部161から送信される冷房運転開始指示信号を受信した場合(ステップS101)に、学習部166による学習運転時間の決定が必要であるか否かを判定する(ステップS102)。具体的には、室内に居るユーザによって為され冷房運転開始指示を受信した受信部161から送信される冷房運転開始指示信号を初期冷房動作制御部165が受信することで、初期冷房動作制御部165は学習部166による学習運転時間の決定が必要であるか否かを判定する。
そして、初期冷房動作制御部165によって学習運転時間の決定が必要であると判定された場合、学習部166は、学習運転時間を決定する(ステップS120)。具体的には、学習部166は、水平吹き姿勢での固定動作に関する風向変更信号を風向制御部163に送信するとともに、風量変更信号を風量制御部162に送信する(ステップS121)。また、学習部166は、水平吹き姿勢での固定動作に関する風向変更信号および風量変更信号を送信すると同時にタイマ(図示せず)のカウントをスタートさせる(ステップS122)。初期冷房動作制御部165から水平吹き姿勢での固定動作に関する風向変更信号が送信された風向制御部163は、各水平フラップ34a,34b,34c,34dの状態が水平吹き固定状態となるように駆動モータ38a,38b,38c,38dを制御する。また、初期冷房動作制御部165から風量変更信号が送信された風量制御部162は、室内ファン32の風量がユーザによって設定されている設定風量ではなく第1風量Hとなるように、ファンモータ32aの回転数を制御する。そして、学習部166は、水平吹き姿勢での固定動作に関する風向変更信号および風量変更信号を送信した後に、冷房サーモオン状態から冷房サーモオフ状態に切り換わったと判定した場合(ステップS123)、タイマで計測した冷房サーモオン継続時間と最適時間として予め設定されている時間(例えば、16分40秒)とを比較する(ステップS124)。ステップS124においてタイマで計測した時間と最適時間とを比較した結果、タイマで計測した時間が最適時間よりも短い場合、学習部166は、計測した時間を、学習運転時間に決定する(ステップS125)。また、ステップS124においてタイマで計測した時間と最適時間とを比較した結果、タイマで計測した時間が最適時間よりも長い場合、学習部166は、予め設定されている最適時間を、学習運転時間に決定する(ステップS126)。これにより、学習部166によって学習運転時間が決定される。また、学習部166は、学習運転時間を決定した後に、風量制御部162に風量変更解除信号を送信する(ステップS127)。
また、初期冷房動作制御部165は、ステップS102において学習部166による学習運転時間の決定が必要でないと判定した場合、初期冷房制御を開始する。具体的には、初期冷房動作制御部165は、対面スイング動作に関する風向変更信号を風向制御部163に送信するとともに、風量変更信号を風量制御部162に送信する(ステップS103)。初期冷房動作制御部165から対面スイング動作に関する風向変更信号が送信された風向制御部163は、水平フラップ34a,34b,34c,34dの状態が対面スイング状態となるように駆動モータ38a,38b,38c,38dを制御する。また、初期冷房動作制御部165から風量変更信号が送信された風量制御部162は、室内ファン32の風量が、ユーザによって設定されている設定風量ではなく第1風量Hとなるように、ファンモータ32aの回転数を制御する。
そして、ステップS103において対面スイング動作に関する風向変更信号および風量変更信号を送信してから学習部166によって決定された学習運転時間が経過すると(ステップS104)、初期冷房動作制御部165は、風向変更解除信号を風向制御部163に送信するとともに、風量制御部162に風量変更解除信号を送信する(ステップS105)。初期冷房動作制御部165から風向変更解除信号が送信された風向制御部163は、すべての水平フラップ34a,34b,34c,34dの状態が水平吹き固定状態となるように、駆動モータ38a,38b,38c,38dを制御する。また、初期冷房動作制御部165から風向変更解除信号が送信された風量制御部162は、ファンモータ32aを制御することで、室内ファン32の風量を、第1風量Hからユーザによって設定されている設定風量に変更する。これにより、初期冷房動作制御部165による初期冷房制御が終了する。なお、初期冷房動作制御部165は、対面スイング動作に関する風向変更信号および風量変更信号を送信してから学習運転時間が経過するまでは、風向変更解除信号及び風量変更解除信号を送信しない(ステップS104)。
このように、予め計測された時間(タイマによって計測された冷房サーモオン状態が継続される時間)を利用して初期期間の長さである学習運転時間が決定されるため、例えば、初期期間の長さが予め設定されている場合と比較して、室内ユニット30が設置されている室内環境に応じた対面スイング動作の実行時間を決定することができる。
また、本変形例では、学習部166は、タイマで計測した冷房サーモオン継続時間と最適時間として予め設定されている時間(例えば、16分40秒)とを比較して、いずれか一方の時間を学習運転時間に決定しているが、学習運転時間を決定するために最適時間と比較される対象はこれに限定されない。
ここで、本発明者は、上記評価試験の結果から、上記実施形態において対面スイング動作の実行継続時間(最適時間)とした16分40秒が、水平吹き固定状態で冷房運転を開始してから平均室温が設定温度Trsに達するまでに要した時間(温度分布均一化期)の約60%の時間とほぼ一致していることを見出した。このため、本発明者は、この点に着目することで、学習運転時間を決定するために最適時間として予め設定されている時間と比較される対象を、タイマで計測した冷房サーモオン継続時間の60%以上(60%〜100%)の時間とすることができるという知見を得た。例えば、本変形例のステップS124において、タイマで計測した時間に0.6を掛けた時間(タイマで計測した時間×0.6)と最適時間とを比較し、その結果、タイマで計測した時間に0.6を掛けた時間が最適時間よりも短い場合、学習部166が、計測した時間に0.6を掛けた時間を、学習運転時間に決定する。また、ステップS124において、タイマで計測した時間に0.6を掛けた時間と最適時間とを比較した結果、タイマで計測した時間に0.6を掛けた時間が最適時間よりも長い場合、学習部166は、予め設定されている最適時間を、学習運転時間に決定する。このようにして、学習部166によって学習運転時間が決定されてもよい。
(6−5)変形例E
図17は、試験室内に設置した室内ユニット30の有する水平フラップ34a,34b,34c,34dを対面スイング状態として空気調和機10に冷房運転を行わせた場合の温度変化の推移を示している。
上記実施形態では、初期冷房制御が実行される期間である初期期間の終了時点を、冷房運転が開始されてから予め実験的に得られた最適時間が経過した時点に設定している。
ところで、本発明者は、上記評価試験と同様の条件で、対面スイング状態で冷房運転を開始した場合に吸込温度センサT1によって検出される吸込温度Trの結果から、対面スイング状態で冷房運転を開始してから16分40秒が経過するタイミングと、吸込温度Trが設定温度Trsよりも1度低い温度(Trs−1)を下回るタイミングとがほぼ一致することを見いだした(図17参照)。発明者は、この点に着目することで、初期期間の終了時点を決定するための代替手段として、吸込温度Trによる検知結果を利用することができるという知見を得た。
以下に、初期冷房制御において、対面スイング動作が実行される時間(上記実施形態では、最適時間に相当する時間)が、吸込温度Tr及び設定温度Trsから決定される空気調和機10について説明する。なお、本変形例において、制御部260以外の構成は上記実施形態と同様の構成であるため、制御部260以外の構成については上記実施形態と同様の符号を用いて説明する。
制御部260は、CPU及びメモリからなるマイクロコンピュータであって、室内ユニット30および室外ユニット20の有する各種機器の動作を制御する。また、制御部260は、図18に示すように、受信部261と、風量制御部262と、風向制御部263と、初期冷房動作制御部265と、を備えている。なお、受信部261、風量制御部262、風向制御部263の構成は、上記実施形態と同様の構成であるため説明を省略する。
初期冷房動作制御部265は、冷房運転の運転開始時に初期冷房制御を実行する。また、初期冷房動作制御部265は、自動制御モードに設定されている場合に、初期冷房制御を実行する。さらに、初期冷房動作制御部265は、初期冷房制御において水平フラップ34a,34b,34c,34dによる対面スイング動作を停止するタイミングを決定する決定部266を有している。
決定部266は、吸込温度センサT1から送信される吸込温度Trとユーザによって予め設定されている設定温度Trsとに基づいて、初期冷房制御における対面スイング動作を停止させるタイミングを決定する。具体的には、決定部266は、吸込温度Trが設定温度Trsから1度差し引いた値以下(Tr≦Trs−1)である場合に、室内の温度分布が均一になっていると判断する。そして、決定部266は、室内の温度分布が均一になっていると判断した時を、対面スイング動作を停止するタイミング、すなわち、初期期間の終了時点に決定する。また、決定部266は、吸込温度Trが設定温度Trsから1度差し引いた値よりも高い(Tr>Trs−1)場合には、室内の温度分布が均一になっていないと判断する。なお、決定部266による室内の温度分布が均一になっているか否かの判断は、冷房運転が開始されてから初期期間の終了時点が決定されるまで、すなわち、室内の温度分布が均一になっていると判断されるまで、所定時間(例えば、20秒)毎に行われる。
また、初期冷房動作制御部165は、初期冷房制御において、まず、水平フラップ34a,34b,34c,34dが対面スイング動作を開始し、かつ、室内ファン32の風量が第1風量Hとなるように、風向制御部263および風量制御部262に制御信号を送信する。そして、初期冷房動作制御部265は、冷房運転が開始されてから決定部266によって室内の温度分布が均一になっていると判断された時に、水平フラップ34a,34b,34c,34dの対面スイング動作を停止させ、すべての水平フラップ34a,34b,34c,34dが水平吹き姿勢を採りつつ固定動作を開始するように風向制御部263に制御信号を送信するとともに、室内ファン32の風量が第1風量Hからユーザによって設定されていた設定風量となるように風量制御部262に制御信号を送信することで、初期冷房制御を終了する。
なお、初期冷房動作制御部265から制御信号が送信されると、上記実施形態と同様に、風向制御部263は、4つの水平フラップ34a,34b,34c,34dのうち、2つの水平フラップ(例えば、水平フラップ34a,34c)と、他の水平フラップ(例えば、34b,34d)とが互いに逆方向にスイングするように、各駆動モータ38a,38b,38c,38dを制御する。
次に、初期冷房動作制御部265による制御動作について図19を用いて説明する。なお、上述のように、初期冷房動作制御部265は、冷房運転開始時であって、かつ、ユーザによって自動制御モードに設定されている場合にのみ、初期冷房制御を実行する。すなわち、暖房運転開始時、あるいは、冷房運転開始時であってもユーザによって手動制御モードに設定されている場合には、初期冷房動作制御部265による初期冷房制御は実行されない。
初期冷房動作制御部265は、受信部261から送信される冷房運転開始指示信号を受信した場合(ステップS201)に、初期冷房制御の実行を開始する。具体的には、室内に居るユーザによって為され冷房運転開始指示を受信した受信部261から送信される冷房運転開始指示信号を初期冷房動作制御部265が受信することで、初期冷房動作制御部265は初期冷房制御の実行を開始する。
初期冷房動作制御部265は、初期冷房制御において、まず、対面スイング動作に関する風向変更信号を風向制御部263に送信するとともに、風量変更信号を風量制御部262に送信する(ステップS202)。初期冷房動作制御部265から対面スイング動作に関する風向変更信号が送信された風向制御部263は、水平フラップ34a,34b,34c,34dの状態が対面スイング状態となるように駆動モータ38a,38b,38c,38dを制御する。また、初期冷房動作制御部265から風量変更信号が送信された風量制御部262は、室内ファン32の風量が、ユーザによって設定されている設定風量ではなく第1風量Hとなるように、ファンモータ32aの回転数を制御する。
そして、ステップS202において対面スイング動作に関する風向変更信号および風量変更信号を送信してから決定部266によって室内の温度分布が均一であると判断されると(ステップS203)、初期冷房動作制御部265は、風向変更解除信号を風向制御部263に送信するとともに、風量制御部262に風量変更解除信号を送信する(ステップS204)。初期冷房動作制御部265から風向変更解除信号が送信された風向制御部263は、すべての水平フラップ34a,34b,34c,34dの状態が水平吹き固定状態となるように、駆動モータ38a,38b,38c,38dを制御する。また、初期冷房動作制御部265から風向変更解除信号が送信された風量制御部262は、ファンモータ32aを制御することで、室内ファン32の風量を、第1風量Hからユーザによって設定されている設定風量に変更する。これにより、初期冷房動作制御部265による初期冷房制御が終了する。なお、初期冷房動作制御部265は、対面スイング動作に関する風向変更信号および風量変更信号を送信してから決定部266によって室内の温度分布が均一であると判断されるまでは、風向変更解除信号及び風量変更解除信号を送信しない(ステップS203)。
このように、初期期間の終了時点を、吸込温度Trの検知結果に基づいて決定することで、室内の環境に応じた初期冷房制御を実行することができる。
また、本変形例では、初期期間の終了時点を、決定部266によって室内の温度分布が均一と判断された時点に決定しているが、これに限定されず、初期期間の終了時点を、予め設定されている最適時間が経過した時点、あるいは、決定部266によって室内の温度分布が均一と判断された時点のいずれか早い時点にしてもよい。また、変形例Dと本変形例とを組み合わせて、初期期間の終了時点を、変形例Dの学習運転時間の終了時点、あるいは、本変形例の室内の温度分布が均一と判断された時点のいずれか早い時点としてもよい。
さらに、上記変形例では、初期冷房制御の終了時に、水平フラップ34a,34b,34c,34dの状態が水平吹き固定状態となるように風向制御部63に制御信号が送信されるとともに、室内ファン32の風量が第1風量Hからユーザによって設定されていた設定風量となるように風量制御部62に制御信号が送信されている。これに代えて、変形例Cのように、水平フラップ34a,34b,34c,34dの状態が対面スイング状態から水平吹き固定状態に切り換えられた後、冷房サーモオン状態から冷房サーモオフ状態に所定回数(例えば、2回)以上切り換わるまでは、第1風量Hが維持される初期冷房制御が実行されてもよい。
なお、上記変形例では、吸込温度Trが設定温度Trsから1度差し引いた値以下である場合に、決定部266によって、室内の温度分布が均一になっていると判断されているが、室内の温度分布が均一であることを判断する方法はこれに限定されない。例えば、室内ユニット30の決定部266が室内の複数箇所の温度を検出する無線センサネットワークと連携して、室内の温度分布が均一になっていると判断してもよい。また、例えば、空気調和機10が室内ユニット30の設置されている室内の床面温度を検出可能な床温センサを備えている場合には、吸込温度センサT1によって検出される吸込温度Trと床温センサによって検出される床面温度とが略同一(例えば、±0.5℃)である場合に、決定部266によって、室内の温度分布が均一になっていると判断されてもよい。