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JP5551477B2 - 光源装置およびレーザ走査型顕微鏡装置 - Google Patents

光源装置およびレーザ走査型顕微鏡装置 Download PDF

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Description

本発明は、光源装置およびレーザ走査型顕微鏡装置に関するものである。
従来、フェムト秒パルスレーザを利用したCARS(コヒーレントアンチストークスラマン散乱)システムが知られている(例えば、非特許文献1および特許文献1参照。)。
非特許文献1のシステムは、ポンプ光としてフェムト秒レーザ光源からのパルスレーザ光を狭帯域化した光を使用し、ストークス光としてフェムト秒レーザ光源からのパルスレーザ光をフォトニッククリスタルファイバによって波長変換した光を使用し、2つの光を合波して標本に入射させ、標本中の分子の特定の振動を利用して、分子からCARS光を発生させ、これを検出して観察を行うものである。
特許文献1のシステムは、フェムト秒レーザ光源からのパルスレーザ光を分岐し、一方のパルスレーザ光のみをフォトニッククリスタルファイバによって波長変換した後に、各々のパルスレーザ光を周波数分散させることで周波数差を有するポンプ光とストークス光とを生成し、分子からのCARS光を検出して観察を行うものである。
これらのCARSシステムによれば、ポンプ光とストークス光とを合波したパルスレーザ光を標本に入射させることにより、CARS光画像を得ることができるとともに、同じパルスレーザ光によって標本の多光子蛍光画像を得ることができる。
加納、「応用物理75(6)」,p.682,2006
米国特許出願公開第2009/0290150号明細書
しかしながら、非特許文献1および特許文献1のシステムにおけるCARSシステムの光源装置をそのまま利用して標本の多光子蛍光観察を同時に行う場合には、得られる多光子蛍光画像が暗く、鮮明な多光子蛍光観察を行うことができないという不都合がある。
すなわち、非特許文献1のシステムは、ポンプ光を狭帯域化してパワーを削減してしまっているとともに、ストークス光は波長変換によってパワー密度を低下させてしまっているので、十分な蛍光量を得ることができない。また、特許文献1のシステムは、ポンプ光およびストークス光ともに周波数分散させているので、パワー密度が低下しており、同様にして十分な蛍光量を得ることができず鮮明な多光子蛍光観察を行うことができない。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、コントラストの高いCARS光画像を取得すると同時に、明るい多光子蛍光画像を取得することを可能にする光源装置およびレーザ走査型顕微鏡装置を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、パルスレーザ光を発生するレーザ光源と、該レーザ光源から発せられた前記パルスレーザ光から、所定の周波数差を有する2つのパルスレーザ光を生成し、生成された2つのパルスレーザ光を合波して走査型顕微鏡に入力する第1の光路と、前記レーザ光源から発せられた前記パルスレーザ光をそのまま前記走査型顕微鏡に入力する第2の光路と、これら第1の光路と第2の光路とを合流させる合波部と、前記走査型顕微鏡の走査周期に同期して、前記レーザ光源からの前記パルスレーザ光を前記第1の光路または第2の光路に時分割に切り替えて入射させる光路切替部とを備える光源装置を提供する。
本発明によれば、光路切替部の作動により、レーザ光源から発せられたパルスレーザ光を第1の光路に入射させると、入射されたパルスレーザ光から所定の周波数差を有する2つパルスレーザ光が生成され、これらのパルスレーザ光が合波された状態で走査型顕微鏡に入射される。一方のパルスレーザ光をポンプ光とし、他方のパルスレーザ光をストークス光として用いることにより、標本においてCARS光を発生させ、コントラストの高いCARS光画像を得ることができる。
一方、光路切替部の作動により、レーザ光源から発せられたパルスレーザ光を第2の光路に入射させると、入射されたパルスレーザ光はそのまま走査型顕微鏡に入射され、標本において多光子励起効果による多光子蛍光が発生する。パルスレーザ光は分散あるいは狭帯域化されることなく走査型顕微鏡に入射されるので、十分な光子密度のパルスレーザ光を標本内に集光して明るい多光子蛍光画像を取得することができる。
そして、光路切替部は走査型顕微鏡の走査周期に同期してパルスレーザ光を入射させる光路を切り替えるので、コントラストの高いCARS画像と明るい多光子蛍光画像とを同時に取得することが可能となる。すなわち、光路切替部による光路の切り替えを走査型顕微鏡による1フレーム分の走査周期ごとに行うことにより、フレームシーケンシャルにCARS画像と多光子蛍光画像とを得ることができる。また、光路切替部による光路の切り替えを走査型顕微鏡による1走査線分の走査周期ごとに行うことにより、より同時性の高いCARS光画像と多光子蛍光画像とを得ることができる。
上記発明においては、前記光路切替部が、ガルバノミラーを備えていてもよい。
このようにすることで、光路の切り替えを簡易な構成で光速に行うことができる。
また、本発明の第1の参考例は、パルスレーザ光を発生するレーザ光源と、該レーザ光源から発せられた前記パルスレーザ光を2つの光路に分岐する分波部と、該分波部により分岐された一方の光路に設けられ、前記パルスレーザ光を狭帯域化する狭帯域化機構または周波数分散させる分散調整機構と、前記分波部により分岐された他方の光路に設けられ、前記パルスレーザ光の波長を変換する波長変換部と、前記分波部により分岐されたいずれかの光路に設けられ、これら光路を通過する前記パルスレーザ光相互の光学遅延を調節する遅延調節部と、2つの光路を通過してきた前記パルスレーザ光を合波して走査型顕微鏡に入力する合波部とを備え、前記分波部が、2つの光路への前記パルスレーザ光の分岐比率を、前記走査型顕微鏡の走査周期に同期して調節可能である光源装置を提供する。
上記第1の参考例によれば、レーザ光源から発せられたパルスレーザ光が、分波部によって2つの光路に分岐される。一方の光路に分岐されたパルスレーザ光は、狭帯域化機構によって狭帯域化あるいは分散調整機構によって周波数分散され、他方の光路に分岐されたパルスレーザ光は波長変換部によって波長変換される。そして、2つのパルスレーザ光が遅延調節部によって、相互間の光学遅延を調節された状態で合波部により合波されて、走査型顕微鏡に入射される。一方のパルスレーザ光をポンプ光とし、他方のパルスレーザ光をストークス光として用いることにより、標本においてCARS光を発生させ、コントラストの高いCARS光画像を得ることができる。
この場合に、分波部が2つの光路へのパルス光の分岐比率を調節するので、2つの光路へのパルスレーザ光の分岐比率を所定の比率に設定することで、適正なポンプ光とストークス光とを生成してコントラストの高いCARS光画像を得ることができる。また、分岐比率を調節して一方の光路に入射させるパルスレーザ光の光量を増加させることにより、標本に集光させるパルスレーザ光の絶対量を増大させて明るい多光子蛍光画像を得ることができる。分岐比率の切り替えを走査型顕微鏡の走査周期に同期して行うことにより、同時性の高いCARS光画像と多光子蛍光画像とを取得することができる。
上記第1の参考例においては、前記分波部が、電気光学変調器と偏光ビームスプリッタとを組み合わせたもの、または、音響光学変調器であってもよい。
このようにすることで、電気光学変調器に加える電圧を調節することにより、偏光ビームスプリッタに入射させるパルスレーザ光の偏光方向を変化させ、偏光ビームスプリッタによる分岐比率を変化させることができる。また、音響光学変調器に入射させる音響波を変化させることで、0次光と回折光との比率を変化させ、簡易に分岐比率を調節することができる。機械的な切り替えを行わずに済み、高速に分岐比率を切り替えて、より同時性の高いCARS光画像と多光子蛍光画像とを取得することができる。
また、本発明の第2の参考例は、パルスレーザ光を発生するレーザ光源と、該レーザ光源から発せられた前記パルスレーザ光を2つの光路に分岐する分波部と、該分波部により分岐された一方の光路に設けられた音響光学チューナブルフィルタと、前記分波部により分岐された他方の光路に設けられた音響光学変調器および前記パルスレーザ光の波長を変換する波長変換部と、前記分波部により分岐されたいずれかの光路に設けられ、これら光路を通過する前記パルスレーザ光相互の光学遅延を調節する遅延調節部と、2つの光路を通過してきた前記パルスレーザ光を合波して走査型顕微鏡に入力する合波部と、前記走査型顕微鏡の走査周期に同期して、前記音響光学チューナブルフィルタを狭帯域化させる変調信号と、広帯域化させる変調信号とを切り替え、前記音響光学チューナブルフィルタを広帯域化させているときに、前記音響光学変調器を遮断する変調信号に設定する制御部とを備える光源装置を提供する。
上記第2の参考例によれば、レーザ光源から発せられたパルスレーザ光が、分波部によって2つの光路に分岐される。一方の光路に分岐されたパルスレーザ光は、音響光学チューナブルフィルタに単一周波数の変調信号を付与することにより、適正なパワーに変調された形態でそのまま導光され、多重周波数の変調信号を付与することにより、さらに狭帯域化された形態で同行される。他方の光路に分岐されたパルスレーザ光は音響光学変調器によって出力が変調されるとともに波長変換部によって波長が変換されて導光される。
CARS光観察を行う際には、音響光学チューナブルフィルタに多重周波数の変調信号を入射させて、パルスレーザ光を狭帯域化するとともに、音響光学変調器をON状態に設定して他の光路に入射されたパルス光を波長変換部に入射させ、2つの光路を通過するパルスレーザ光に所定の周波数差を設定する。これにより、一方の光路を通過したパルスレーザ光をポンプ光とし、他方のパルスレーザ光をストークス光として、2つのパルスレーザ光が遅延調節部によって、相互間の光学遅延を調節された状態で合波部により合波されて、走査型顕微鏡に入射されることにより、標本においてCARS光を発生させることができる。この場合に、ポンプ光とストークス光との比率を適正に調節して、コントラストの高いCARS光画像を得ることができる。
一方、多光子蛍光観察を行う際には、音響光学チューナブルフィルタに単一周波数の変調信号を入射させて、出力調整されたパルスレーザ光をそのまま導光させ、音響光学変調器をOFF状態に設定して、他の光路に入射したパルスレーザ光を遮断する。これにより、狭帯域化されることなく導かれたパルスレーザ光をそのまま標本に入射させ、また、周波数分散されたストークス光を遮断すので、標本中に集光するパルスレーザ光の光子密度を向上して明るい多光子蛍光画像を得ることができる。この場合においても、機械的な切り替えを行わずに済み、高速にパルスレーザ光を切り替えて、より同時性の高いCARS光画像と多光子蛍光画像とを取得することができる。
また、本発明の第3の参考例は、パルスレーザ光を発生するレーザ光源と、該レーザ光源から発せられた前記パルスレーザ光を2つの光路に分岐する分波部と、該分波部により分岐された一方の光路に設けられ、前記パルスレーザ光を狭帯域化する狭帯域化機構または周波数分散させる分散調整機構と、前記分波部により分岐された他方の光路に設けられ、前記パルスレーザ光の波長を変換する波長変換部と、前記分波部により分岐されたいずれかの光路に設けられ、これら光路を通過する前記パルスレーザ光相互の光学遅延を調節する遅延調節部と、2つの光路を通過してきた前記パルスレーザ光を合波して走査型顕微鏡に入力する合波部と、前記分波部と前記合波部との間に、前記狭帯域化機構または分散調整機構を迂回し、前記狭帯域化機構または前記分散調整機構を通過する光路とは光路長が異なる迂回光路とを備える光源装置を提供する。
上記第3の参考例によれば、分波部によって一方の光路に分岐されたパルスレーザ光が狭帯域化機構によって狭帯域化させられ、あるいは分散調整機構によって周波数分散させられることにより、ストークス光となり、他方の光路に分岐されたパルスレーザ光が波長変換部によって波長変換されることによりストークス光となる。そして光学遅延部によって相互間の光学遅延を調節された状態で合波部において合波され、走査型顕微鏡に導入されることで、標本においてコントラストの高いCARS光画像を取得することができる。
一方、上記光路のうち、狭帯域化機構または分散調整機構を有する光路に分岐された一部のパルスレーザ光は、狭帯域化機構または分散調整機構を迂回する迂回光路に入射されることにより、そのままの形態で走査型顕微鏡に入力される。迂回光路は狭帯域化機構または分散調整機構を有する光路とは光路長が異ならされているので、ポンプ光に対して時間的にずれたパルスレーザ光として走査型顕微鏡に入射される。これにより、CARS光と多光子蛍光とが時間的に分離されて発生することになり、コントラストの高いCARS光画像と、明るく鮮明な多光子蛍光画像とをより高い同時性を保ちながら取得することができる。
また、本発明は、上記いずれかの光源装置と、該光源装置からのパルスレーザ光を入射させる走査型顕微鏡とを備えるレーザ走査型顕微鏡装置を提供する。
本発明によれば、コントラストの高いCARS光画像を取得すると同時に、明るい多光子蛍光画像を取得することができるという効果を奏する。
本発明の第1の実施形態に係る光源装置およびレーザ走査型顕微鏡装置を示すブロック図である。 本発明の第2の実施形態に係る光源装置およびレーザ走査型顕微鏡装置を示すブロック図である。 本発明の第3の実施形態に係る光源装置およびレーザ走査型顕微鏡装置を示すブロック図である。 本発明の第4の実施形態に係る光源装置およびレーザ走査型顕微鏡装置を示すブロック図である。 本発明の第5の実施形態に係る光源装置およびレーザ走査型顕微鏡装置を示すブロック図である。
本発明の第1の実施形態に係る光源装置およびレーザ走査型顕微鏡装置について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係るレーザ走査型顕微鏡装置1は、図1に示されるように、本実施形態に係る光源装置2と、該光源装置2からのパルスレーザ光を入射させ標本Aを観察するための走査型顕微鏡3とを備えている。
本実施形態に係る光源装置2は、フェムト秒パルスレーザ光Lを出射する単一のレーザ光源4と、該レーザ光源4から発せられたフェムト秒パルスレーザ光Lから一定の周波数差を有する2つのパルスレーザ光L1’,L2’を生成する第1の光路5と、レーザ光源4から発せられたフェムト秒パルスレーザ光Lをそのまま通過させる第2の光路6と、これらの光路5,6を合流させる合波部7と、レーザ光源4からこれらの光路5,6へのフェムト秒パルスレーザ光Lの入射を切り替える光路切替部8とを備えている。
第1の光路5は、レーザ光源4からのパルスレーザ光Lを2つに分岐するビームスプリッタ(分波部)9と、該ビームスプリッタ9により分岐された2つのパルスレーザ光L1,L2をそれぞれ通過させる2つの光路10,11と、該2つの光路10,11を通過してきた2つのパルスレーザ光L1’,L2’を合波する導入光学系12とを備えている。
一方の光路10には、パルスレーザ光L1に周波数分散を付与する分散調整ガラス14が配置され、ポンプ光L1’(以下、ポンプ光L1’とも言う。)を生成するようになっている。他方の光路11には、フォトニッククリスタルファイバ15および分散調整ガラス16が配置され、ストークス光L2’(以下、ストークスL2’とも言う。)を生成するようになっている。
分散調整ガラス14,16は、通過したパルスレーザ光L1,L2に所定の周波数分散を付与するようになっている。
フォトニッククリスタルファイバ15は、通過するパルスレーザ光L2の周波数帯域を変更または拡大させることができる。また、フォトニッククリスタルファイバ15を通過したパルスレーザ光L2はフォトニッククリスタルファイバ15の種類および通過させるパルスレーザ光L2の条件に応じた周波数分散を持った状態となっている。また、例えば、周波数変換手段としては、フォトニッククリスタルファイバ15の代わりに、同様の機能・作用を持つ、バルク、薄膜、フィルム、フォトニック結晶構造体のいずれかを用いてもよい。
また、合波部7は、ポンプ光L1’を生成する一方の光路10の分散調整ガラス14の後段に配置された偏光ビームスプリッタである。この合波部7は、分散調整ガラス14を通過したパルスレーザ光L1’を透過させるように透過軸が設定されているとともに、後述する第2の光路6を通過してきたパルスレーザ光Lを反射して、前記光路10を通過してきたパルスレーザ光L1’と合波するようになっている。
導入光学系12には、2つの光路10,11を通過してきたパルスレーザ光L1’,L2’相互間に時間遅延を付与するパルスタイミング調節手段17と、これらのパルスレーザ光L,L1’,L2’を合波させるレーザコンバイナ18とを備えている。パルスタイミング調節手段17は、例えば、ミラー(リフレクタ)により構成される(図示略)。少なくとも2組以上のリフレクタを用いて、例えば、パルスレーザ光L2’の光路を折り返し、少なくとも2組以上のリフレクタの間隔を調節することで、パルスレーザ光L2’の光路長を変化させることができる。これによって、パルスレーザ光L2’のパルスの時間的タイミングをパルスレーザ光L1’に対してずらし、その時間遅延量を調節することができるようになっている。
第2の光路6は、レーザ光源4からのパルスレーザ光Lをそのまま導光し、第1の光路5の内、ポンプ光L1’を生成する一方の光路10に、分散調整ガラス14の後段において、偏光ビームスプリッタからなる合波部7により合流されている。第2の光路6には、λ/2板19が配置され、第2の光路6を導光されてきたパルスレーザ光Lが合波部7によって全て反射されるように、合波部7に入射する際の偏光方向を設定することができるようになっている。
光路切替部8は、所定の軸線回りに揺動可能に設けられたガルバノミラー20と、該ガルバノミラー20の揺動を制御する制御部21とを備えている。ガルバノミラー20は、揺動角度位置を異なる2つの角度位置に切り替えることにより、レーザ光源4からのパルスレーザ光Lを第1の光路5または第2の光路6のいずれかに択一的に入射させることができるようになっている。
制御部21は、後述する走査型顕微鏡3のスキャナ22によるパルスレーザ光L,L1’,L2’の走査周期と同期してガルバノミラー20に対し、揺動角の切替指令信号Sを出力するようになっている。
例えば、走査型顕微鏡3のスキャナ22によりパルスレーザ光L,L1’,L2’が、標本A上において1フレーム分走査される毎に、制御部21がガルバノミラー20の揺動角度の切替指令信号Sを出力することにより、フレームシーケンシャルにCARS光画像と多光子蛍光画像とを切り替えて取得することができる。
また、走査型顕微鏡3のスキャナ22によるパルスレーザ光L,L1’,L2’が、標本A上において1ライン分走査される毎に、制御部21がガルバノミラー20の揺動角度の切替指令信号Sを出力することにより、ラインシーケンシャルにCARS光画像と多光子蛍光画像とを切り替えて取得することができるようになっている。フレームシーケンシャルに切り替える場合と比較してラインシーケンシャルに切り替えた方が、CARS光画像と多光子蛍光画像とのより高い同時性を達成することができる。
走査型顕微鏡3は、光源装置2から入射されてきたパルスレーザ光L,L1’,L2’を2次元的に走査するスキャナ22およびレンズ群23と、スキャナ22により走査されたパルスレーザ光L,L1’,L2’を標本Aに集光する集光レンズ24と、標本Aにおいて発生し、集光レンズ24によって集光された蛍光を検出する第1の光検出器25と、標本Aを透過する方向に発生するCARS光を集光する集光レンズ26と、該集光レンズ26により集光されたCARS光を検出する第2の光検出器27とを備えている。
図中、符号28はダイクロイックミラー、符号29はステージ、符号30はミラーである。また、標本Aにおいて発生した蛍光は、集光レンズ26により集光され第2の光検出器27で検出されてもよい。また、標本Aにおいて発生したCARS光は集光レンズ24によって集光され第1の光検出器25によって検出されてもよい。
このように構成された本実施形態に係る光源装置2およびレーザ走査型顕微鏡装置1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る光源装置2によれば、レーザ光源4から発せられたパルスレーザ光Lが、光路切替部8の作動によって第1の光路5または第2の光路6に入射される。第1の光路5に入射されたパルスレーザ光Lは、ビームスプリッタ9によって2つの光路10,11に分岐され、一方が分散調整ガラス14によって所定の周波数分散が与えられてポンプ光L1’となり、他方がフォトニッククリスタルファイバ15によって周波数帯域を変化させられるとともに分散調整ガラス16によって周波数分散が付与されてストークス光L2’となる。
そして、ポンプ光L1’は合波部7を透過して導入光学系12のレーザコンバイナ18に入射される。一方、ストークス光L2’は導入光学系12に入射され、導光光学系12内のパルスタイミング調整手段17によって、ポンプ光L1’に対するタイミングを調整された後、レーザコンバイナ18によって同一光路に合波されて走査型顕微鏡3に入射される。
一方、第2の光路6に入射されたパルスレーザ光Lは、λ/2板19を通過することによって偏光方向を調整された後に合波部7に入射されることにより反射され、ポンプ光L1’と同一光路に入射される。
第1の光路5を通過したパルスレーザ光L1’,L2’が走査型顕微鏡3に入射されると、パルスレーザ光L1’,L2’がスキャナ22によって2次元的に走査され、レンズ群23および集光レンズ24によって標本A上に集光され、2つのパルスレーザ光L1’,L2’の周波数差に応じて、標本Aの集光位置においてCARS光が発生し、発生したCARS光が集光レンズ26によって集光され、第2の光検出器27により検出される。
また、第2の光路6を通過したパルスレーザ光Lが走査型顕微鏡3に入射されると、パルスレーザ光Lがスキャナ22によって2次元的に走査され、レンズ群23および集光レンズ24によって標本A上に集光されることによって、集光位置において多光子励起効果により蛍光が発生し、発生した蛍光が集光レンズ24によって集光され、ダイクロイックミラー28によってパルスレーザ光Lの光路から分岐されて第1の光検出器25により検出される。
この場合において、本実施形態に係る光源装置2およびレーザ走査型顕微鏡装置1によれば、走査型顕微鏡3のスキャナ22の走査周期に同期して制御部21が光路切替部8を作動させるので、フレームシーケンシャルに、あるいは、ラインシーケンシャルにCARS光画像および多光子蛍光画像を取得することができる。そして、このとき得られるCARS光画像と多光子蛍光画像とは、相互に影響を与えることなく、コントラストの高いCARS光画像と明るい多光子蛍光画像とを同時に得ることができるという利点がある。
なお、本実施形態においては、ポンプ光L1’およびストークス光L2’として、パルスレーザ光Lを分散調整ガラス14,16に透過させることにより周波数分散を付与したものを使用する周波数分散量調整CARSの場合を例に挙げて説明したが、これに代えて、2つの光路10,11における分散調整ガラス14,16をなくし、ポンプ光L1’の光路10にパルスレーザ光Lを狭帯域化する狭帯域化機構(図示略)を配置した場合に適用することにしてもよい。
次に、本発明の第2の実施形態に係る光源装置40およびレーザ走査型顕微鏡装置41について図2を参照して説明する。
本実施形態に係る光源装置40およびレーザ走査型顕微鏡装置41の説明において、上述した第1の実施形態に係る光源装置2およびレーザ走査型顕微鏡装置1と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態に係る光源装置40は、図2に示されるように、第1の実施形態に係る光源装置2における第2の光路6を第1の光路5の2つの光路10,11のうちのポンプ光L1’の光路10と共通化し、分波部42が、ポンプ光L1’の光路10に入射するパルスレーザ光Lの入射量を切り替えるように構成されている。
すなわち、本実施形態に係る光源装置40は、分波部42として、ビームスプリッタ9に代えて、電気光学変調器43と偏光ビームスプリッタ44とを用いている。電気光学変調器43は入射する電圧信号を調節することにより、パルスレーザ光Lの偏光方向を切り替えて、偏光ビームスプリッタ44による分岐比率を変化させることができるようになっている。
また、電気光学変調器43は、スキャナ22の走査周期に同期して制御部21から出力される切替指令信号Sによって入射する電圧信号を調節するようになっている。さらに、電気光学変調器43はレーザ光源4から出力されるパルスレーザ光Lの波長に応じて入射する電圧信号Tを調節するようになっている。
このように構成された本実施形態に係る光源装置40およびレーザ走査型顕微鏡装置41によれば、走査型顕微鏡3のスキャナ22の走査周期に同期して制御部21から出力される切替指令信号Sによって、電気光学変調器43に入射される電圧信号が切り替えられるので、スキャナ22の走査周期に同期して、偏光ビームスプリッタ44に入射されるパルスレーザ光Lの偏光方向が切り替えられ、ポンプ光L1’の光路10とストークス光L2’の光路11へのパルスレーザ光Lの分岐比率が切り替えられる。
例えば、ポンプ光L1’の光路10への分岐比率を70%、ストークス光L2’の光路11への分岐比率を30%とすることにより、一定の周波数差を有するパルスレーザ光L1’,L2’が合波された状態で走査型顕微鏡3に入射され、標本AのCARS光画像を取得することができる。また、ポンプ光L1’の光路10への分岐比率を100%、ストークス光L2’の光路11への分岐比率を0%とすることにより、ポンプ光L1’の光量を増大させて、標本Aにおける明るい多光子蛍光画像を取得することが可能となる。
このように、本実施形態に係る光源装置40によれば、走査型顕微鏡3に入射させるパルスレーザ光L1’,L2’を電気光学変調器43により切り替えるので、機械的な駆動系を設ける必要がなく、高速に切り替えることができるという利点がある。その結果、高速に駆動されるスキャナ22を有する走査型顕微鏡3においてもCARS光画像の取得と多光子蛍光画像の取得とを高速に切り替えて、2種類の観察の同時性を向上することができるという利点がある。
なお、本実施形態においても、周波数分散量調整CARSの場合を例示して説明したが、これに代えて、2つの光路10,11における分散調整ガラス14,16をなくし、ポンプ光L1‘の光路10にパルスレーザ光Lを狭帯域化する狭帯域化機構(図示略)を配置した場合に適用することにしてもよい。
次に、本発明の第3の実施形態に係る光源装置50およびレーザ走査型顕微鏡装置51について、図3を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る光源装置50の説明において、上述した第2の実施形態に係る光源装置40と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態に係る光源装置50は、図3に示されるように、第2の実施形態に係る光源装置40の電気光学変調器43および偏光ビームスプリッタ44の組み合わせに代えて、音響光学変調器52を採用している。
音響光学変調器52は、入力する変調信号を切り替えることで、音響光学結晶中において回折により発生する回折光の比率を切り替えることができるようになっている。本実施形態においては、音響光学変調器52を透過する0次光の射出方向にポンプ光L1’の光路10を配置し、回折により射出される回折光の射出方向にストークス光L2’の光路11を配置している。
例えば、変調信号を0%とすることで、ポンプ光L1’の光路10のみ0次光からなるパルスレーザ光L1を入射させ、ストークス光L2’の光路11への回折光からなるパルスレーザ光L2の入射を停止することができる。また、変調信号を30%とすることで、ポンプ光L1’の光路10に70%のパルスレーザ光L1を入射させ、ストークス光L2’の光路11に30%の回折光からなるパルスレーザ光L2を入射させることができる。
これにより、標本AにおけるCARS光の発生と多光子蛍光の発生を、機械的な駆動系を設けることなく高速に切り替えて、2種類の観察を同時に行うことができる。
この場合においても、多光子蛍光観察の場合に、ストークス光L2’を発生させないので、十分な光量のパルスレーザ光L1’を標本Aに入射させて明るい多光子蛍光画像を得ることができるという利点がある。また、CARS光観察の場合には、適正な比率のポンプ光L1’とストークス光L2’とを発生させて、コントラストの高いCARS光画像を得ることができる。
また、本実施形態においても、周波数分散量調整CARSの場合を例示して説明したが、これに代えて、2つの光路10,11における分散調整ガラス14,16をなくし、ポンプ光L1‘の光路10にパルスレーザ光Lを狭帯域化する狭帯域化機構(図示略)を配置した場合に適用することにしてもよい。
次に、本発明の第4の実施形態に係る光源装置60およびレーザ走査型顕微鏡装置61について、図4を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る光源装置60の説明において、上述した第2の実施形態に係る光源装置40と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態に係る光源装置60は、図4に示されるように、第2の実施形態に係る光源装置40の電気光学変調器43および偏光ビームスプリッタ44の組み合わせに代えて、ビームスプリッタ9による2つの光路10,11への分岐後に、ポンプ光L1’の光路10に音響光学チューナブルフィルタ62を配置し、ストークス光L2’の光路11に音響光学変調器63を配置するとともに、両光路10,11における分散調整ガラス14,16を取り除いている点において第2の実施形態に係る光源装置と相違している。
本実施形態に係る光源装置60においては、走査型顕微鏡3のスキャナ22の走査周期に同期した切替指令信号Sが、制御部21から、音響光学チューナブルフィルタ62および音響光学変調器63にそれぞれ出力されている。
音響光学チューナブルフィルタ62は、異なる所定の周波数の変調信号を入力することによって、出力するパルスレーザ光L1’の出力変調または狭帯域化を実施することができる。また、これらの周波数の変調信号を多重化して同時に入力することにより、出力変調と狭帯域化を同時に実施することができるようになっている。
また、音響光学変調器63は、所定の周波数の変調信号を入力することによって、パルスレーザ光L2’の出力のオンオフを切り替えることができるようになっている。
このように構成された本実施形態によれば、制御部21の作動により、スキャナ22の走査周期に同期して、音響光学変調器63をオフ状態とするとともに、音響光学チューナブルフィルタ62に単一の周波数の変調信号を入力することによって、音響光学チューナブルフィルタ62に出力変調のみを実施させることにより、レーザ光源4から出射されたパルスレーザ光L1に対して出力変調のみを施して走査型顕微鏡3に入射させることができる。これにより、分散を伴わない光子密度の高いパルスレーザ光L1’によって明るい多光子蛍光画像を得ることができる。
また、出力変調によって、パルスレーザ光L1’の出力を適正な値に調節して標本Aにおけるダメージの発生を抑制することができる。
この場合において、上述した第2および第3の実施形態に係る光源装置40,50およびレーザ走査型顕微鏡装置41,51と比較して、多光子蛍光観察時に、パルスレーザ光L1’の狭帯域化や周波数分散を行わないので、出力損失がほとんどなく、明るい多光子蛍光画像を得ることができるという利点がある。
また、本実施形態においても、標本AにおけるCARS光の発生と多光子蛍光の発生を、機械的な駆動系を設けることなく高速に切り替えて、2種類の観察を同時に行うことができる。
また、制御部21の作動により、スキャナ22の走査周期に同期して、音響光学変調器63をオン状態としてストークス光L2’を生成させるとともに、音響光学チューナブルフィルタ62に多重周波数の変調信号を入力することによって、音響光学チューナブルフィルタ62に出力変調および狭帯域化を実施させてポンプ光L1’を生成させることにより、標本AにおいてCARS光を発生させて、コントラストの高いCARS光画像を取得することができる。
次に、本発明の第5の実施形態に係る光源装置70およびレーザ走査型顕微鏡装置71について、図5を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る光源装置70の説明において、上述した第2の実施形態に係る光源装置40と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態に係る光源装置70は、第2の実施形態における電気光学変調器43および偏光ビームスプリッタ44に代えて、ビームスプリッタ9を配置するとともに、ビームスプリッタ9によって分岐されたポンプ光L1’の光路10に配置された分散調整ガラス14を迂回する迂回光路72をさらに設けている点で第2の実施形態に係る光源装置40と相違している。図中符号73,74は、パルスレーザ光L1の偏光方向を調整するλ/2板である。
迂回光路72は、ポンプ光L1’の光路10の分散調整ガラス14を挟んで配置された2つの偏光ビームスプリッタ75,76により形成される光路であって、複数のミラー30によって光路を折り返すことにより、分散調整ガラス14を通過する光路10と比較して光路長を長く(あるいは短く)設定している。
これにより、分散調整ガラス14を通過したポンプ光L1’と迂回光路72を通過したパルスレーザ光L1とが偏光ビームスプリッタ76によって合波される際に、2つの光路10,72を通過してきたパルスレーザ光L1.L1’が互いに重複しないように時間的にずらされるようになっている。
このように構成された本実施形態に係る光源装置70によれば、ビームスプリッタ9によってポンプ光L1’の光路10に入射されたパルスレーザ光L1は、λ/2板73によって、その偏光方向を調節されて偏光ビームスプリッタ75に入射されることにより、所定の分岐比率で分岐され、一方が分散調整ガラス14によって周波数分散を付与されてポンプ光L1’となり、他方が、迂回光路72を通過させられて時間遅延を付与される。そして、迂回光路72のパルスレーザ光L1がλ/2板74によってその偏光方向を調節されて偏光ビームスプリッタ76によりポンプ光L1’と合波される。
その後、光路10を通過したポンプ光L1’および迂回光路72を通過したパルスレーザ光L1と、光路11を通過したストークス光L2’とがレーザコンバイナ18によって合波された状態で走査型顕微鏡3に入射される。
すなわち、2つの光路10,11によって生成されたポンプ光L1’とストークス光L2’とによって標本AにおいてCARS光を発生させることができるとともに、ポンプ光L1’に対して時間的に遅延させられたパルスレーザ光L1によって標本Aにおいて多光子蛍光を発生させることができる。CARS光の発生と多光子蛍光の発生とは、パルスレーザ光L1に時間遅延を付与することにより時間的にずらされているので、相互に干渉させることなく別個独立に行わせることができる。
迂回光路72を通過したパルスレーザ光L1は分散調整ガラス14を通過しないので周波数分散を付与されず、標本A中の集光点における光子密度を向上して明るい多光子蛍光画像を得ることができる。これにより、コントラストの高いCARS光画像と明るい多光子蛍光画像とを同時に取得することができる。
また、本実施形態においても、周波数分散量調整CARSの場合を例示して説明したが、これに代えて、2つの光路10,11における分散調整ガラス14,16をなくし、ポンプ光L1‘の光路10にパルスレーザ光Lを狭帯域化する狭帯域化機構(図示略)を配置した場合に適用することにしてもよい。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、発明の主旨に基づいて種々の変更が可能である。例えば、上述した例では、検出すべき標本からの検出光(CARS光や蛍光等)を取得するための照射光として単一の波長を用いた例で示したが、検出する標本の種類や目的に応じて他種類の波長を照射光として使用するようにするとともに、異なる波長に切り替えたり、併用することで多様な検出を行うようにしてもよい。これにより、例えば、上述した非特許文献1に開示されるようなマルチプレックスCARSに適用した場合でもマルチモダルな検出が可能になるという利点がある。
L,L1,L2 パルスレーザ光
L1’ ポンプ光(パルスレーザ光)
L2’ ストークス光(パルスレーザ光)
1,41,51,61,71 レーザ顕微鏡装置。
2,40,50,60,70 光源装置
3 走査型顕微鏡
4 レーザ光源
5 第1の光路
6 第2の光路
7 合波部
8 光路切替部
10,11 光路
14,16 分散調整ガラス(分散調整機構)
15 フォトニッククリスタルファイバ(波長変換部)
17 パルスタイミング調節手段(遅延調節部)
20 ガルバノミラー
42 分波部
43 電気光学変調器
44 偏光ビームスプリッタ
52 音響光学変調器
62 音響光学チューナブルフィルタ
63 音響光学変調器
72 迂回光路

Claims (3)

  1. パルスレーザ光を発生するレーザ光源と、
    該レーザ光源から発せられた前記パルスレーザ光から、所定の周波数差を有する2つのパルスレーザ光を生成し、生成された2つのパルスレーザ光を合波して走査型顕微鏡に入力する第1の光路と、
    前記レーザ光源から発せられた前記パルスレーザ光をそのまま前記走査型顕微鏡に入力する第2の光路と、
    これら第1の光路と第2の光路とを合流させる合波部と、
    前記走査型顕微鏡の走査周期に同期して、前記レーザ光源からの前記パルスレーザ光を前記第1の光路または第2の光路に時分割に切り替えて入射させる光路切替部とを備える光源装置。
  2. 前記光路切替部が、ガルバノミラーを備える請求項1に記載の光源装置。
  3. 請求項1又は請求項2記載の光源装置と、
    該光源装置からのパルスレーザ光を入射させる走査型顕微鏡とを備えるレーザ走査型顕微鏡装置。
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