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JP5301799B2 - 摺動性樹脂組成物及びこれから形成された成形品 - Google Patents

摺動性樹脂組成物及びこれから形成された成形品 Download PDF

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JP5301799B2 JP2007200796A JP2007200796A JP5301799B2 JP 5301799 B2 JP5301799 B2 JP 5301799B2 JP 2007200796 A JP2007200796 A JP 2007200796A JP 2007200796 A JP2007200796 A JP 2007200796A JP 5301799 B2 JP5301799 B2 JP 5301799B2
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Description

本発明は、摺動特性に優れたポリカーボネート樹脂組成物及びこれから形成された成形品に関する。更に詳しくは耐衝撃性、耐熱性、寸法安定性及び難燃性といったポリカーボネート樹脂本来の性質を損なうことなく、摺動特性および表面外観に優れた難燃性ポリカーボネート樹脂組成物及びこれから形成された成形品に関する。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、多くの優れた材料特性を有するため、射出成形などの簡便で生産性に優れた加工法を用いながら様々な製品が作られており、非常に幅広い産業分野で利用されている。中でもOA機器や電気・電子機器分野では小型軽量化や部品点数削減の目的からも寸法精度、機械的強度、および耐熱性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂が歯車などの摺動部材に使用されるケースが増えている。しかしながら、ポリカーボネート樹脂を単独で使用したのでは摺動性が不満足であり、摺動性の改善が要求される。
例えば、ポリカーボネート樹脂にポリテトラフルオロエチレン、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル等の樹脂を摺動性改良材として添加することが報告されている(特許文献1、2参照)。しかしながら、ポリカーボネート樹脂にポリテトラフルオロエチレン樹脂を配合すると、成形加工性や衝撃強度が低下するという問題が生ずる。また、ポリテトラフルオロエチレン樹脂のようなハロゲン化合物はそれを含む成形品が廃棄物として焼却された際に、フッ酸を発生させるため、有機ハロゲン系難燃剤などと同様に現在では使用が控えられている。環境対応型材料への要求の高まりから、ポリテトラフルオロエチレン樹脂のようなフッ素系摺動剤を使用しない摺動材料が求められている。
また、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルといった摺動剤ではフッ素系摺動剤と同等の摺動特性を得ることができないばかりか、機械的強度や耐熱性、あるいは難燃性といったポリカーボネート樹脂が本来持っている特性を損なう。
一方、ポリカーボネート樹脂に、化学的、物理的に安定な潤滑剤であるシリコーンオイルを添加することも提案されている(特許文献3参照)。しかし、成形品表面のシリコーンオイルが、短時間にしみ出し消費されてしまうため、初期においては優れた摺動性を発現するものの、長期的な摺動性は不十分であり、また表面がべたつく等の問題もあり、満足できるものではなかった。また、充分な摺動性を得るためにはシリコーンオイルを多量に添加せざるを得なく、その結果、成形品表面ではシリコーンオイルが相分離することによる光沢ムラ等も生じやすく、実用上満足のいくものでは無かった。
特開昭63−213555号公報 特開平4−136065号公報 特公昭36−7641号公報
本発明は、このような事情の下、フッ素系摺動剤を使用することなく優れた摺動特性および表面外観を有し、またポリカーボネート樹脂本来の特性である衝撃強度、耐熱性、寸法安定性および難燃性を損なうことのない摺動性ポリカーボネート樹脂組成物およびそれにより形成された成形品を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成せんとして鋭意検討を重ねた結果、芳香族ポリカーボネート樹脂に(メタ)アクリル酸エステルおよび共重合可能な他の単量体、好ましくは(メタ)アクリル酸エステルのみをグラフト共重合してなるポリオルガノシロキサン、有機リン化合物系難燃剤、および含フッ素滴下防止剤を特定量添加してなる樹脂組成物が、衝撃強度、耐熱性、摺動性、および表面外観に優れることを見出し、本発明に到達した。すなわち本発明は芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、(B)アクリル変性ポリオルガノシロキサン(B成分)3.0〜7.0重量部、(C)有機リン化合物系難燃剤(C成分)4.0〜9.0重量部、および(D)含フッ素滴下防止剤(D成分)0.01〜1重量部を含有してなり、アクリル変性ポリオルガノシロキサン(B成分)が(B1)下記一般式(1)で示されるポリオルガノシロキサン(B1成分)に、(B2)(メタ)アクリル酸エステル(B2−1成分)70重量%〜100重量%および共重合可能な他の単量体(B2−2成分)0重量%〜30重量%からなる混合物(B2成分)を、B2成分/B1成分の重量比で表して5/95〜95/5の割合でグラフト共重合してなるアクリル変性ポリオルガノシロキサンであることを特徴とする難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を提供するものである。
Figure 0005301799
[式中、R、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基、又は炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基を表し、Yはビニル基、アリル基、およびγ−(メタ)アクリロキシプロピル基からなる群より選択されるラジカル反応性基、又は−SH基を持つ有機基を表す。X及びXは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は−SiR(R、Rは独立に炭素数1〜20の炭化水素基、又は炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基を表し、Rは炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、又はビニル基、アリル基、およびγ−(メタ)アクリロキシプロピル基からなる群より選択されるラジカル反応性基又は−SH基を持つ有機基を表す。)で示される基を表し、mは10,000以下の正の整数、nは1〜500の整数であり、シロキサン鎖には分岐があってもよい。]
以下、本発明の詳細について説明する。
(A成分:芳香族ポリカーボネート樹脂)
本発明でA成分として使用される芳香族ポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応方法の一例として界面重合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
ここで使用される二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンおよび9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンなどが挙げられる。好ましい二価フェノールは、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカンであり、なかでも耐衝撃性の点からビスフェノールAが特に好ましく、汎用されている。
本発明では、汎用のポリカーボネートであるビスフェノールA系のポリカーボネート以外にも、他の2価フェノール類を用いて製造した特殊なポリカーボネ−トをA成分として使用することが可能である。
例えば、2価フェノール成分の一部又は全部として、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(以下“BPM”と略称することがある)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(以下“Bis−TMC”と略称することがある)、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン及び9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下“BCF”と略称することがある)を用いたポリカーボネ−ト(単独重合体又は共重合体)は、吸水による寸法変化や形態安定性の要求が特に厳しい用途に適当である。これらのBPA以外の2価フェノールは、該ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分全体の5モル%以上、特に10モル%以上、使用するのが好ましい。
殊に、高剛性かつより良好な耐加水分解性が要求される場合には、樹脂組成物を構成するA成分が次の(1)〜(3)の共重合ポリカーボネートであるのが特に好適である。
(1)該ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分100モル%中、BPMが20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、かつBCFが20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
(2)該ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分100モル%中、BPAが10〜95モル%(より好適には50〜90モル%、さらに好適には60〜85モル%)であり、かつBCFが5〜90モル%(より好適には10〜50モル%、さらに好適には15〜40モル%)である共重合ポリカーボネート。
(3)該ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分100モル%中、BPMが20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、かつBis−TMCが20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
これらの特殊なポリカーボネートは、単独で用いてもよく、2種以上を適宜混合して使用してもよい。また、これらを汎用されているビスフェノールA型のポリカーボネートと混合して使用することもできる。
これらの特殊なポリカーボネートの製法及び特性については、例えば、特開平6−172508号公報、特開平8−27370号公報、特開2001−55435号公報及び特開2002−117580号公報等に詳しく記載されている。
なお、上述した各種のポリカーボネートの中でも、共重合組成等を調整して、吸水率及びTg(ガラス転移温度)を下記の範囲内にしたものは、ポリマー自体の耐加水分解性が良好で、かつ成形後の低反り性においても格段に優れているため、形態安定性が要求される分野では特に好適である。
(i)吸水率が0.05〜0.15%、好ましくは0.06〜0.13%であり、かつTgが120〜180℃であるポリカーボネート、あるいは
(ii)Tgが160〜250℃、好ましくは170〜230℃であり、かつ吸水率が0.10〜0.30%、好ましくは0.13〜0.30%、より好ましくは0.14〜0.27%であるポリカーボネート。
ここで、ポリカーボネートの吸水率は、直径45mm、厚み3.0mmの円板状試験片を用い、ISO62−1980に準拠して23℃の水中に24時間浸漬した後の水分率を測定した値である。また、Tg(ガラス転移温度)は、JIS K7121に準拠した示差走査熱量計(DSC)測定により求められる値である。
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、炭酸ジエステルまたはハロホルメートなどが使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメートなどが挙げられる。
前記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重合法によって芳香族ポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤などを使用してもよい。また本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂、芳香族または脂肪族(脂環族を含む)の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂、二官能性アルコール(脂環族を含む)を共重合した共重合ポリカーボネート樹脂、並びにかかる二官能性カルボン酸および二官能性アルコールを共に共重合したポリエステルカーボネート樹脂を含む。また、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
分岐ポリカーボネート樹脂は、本発明の難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の有するドリップ防止能をさらに相乗的に改善可能であるため、その使用は好ましい。かかる分岐ポリカーボネート樹脂に使用される三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、フロログルシド、または4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキジフェニル)ヘプテン−2、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、4−{4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}−α,α−ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノール、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4−ビス(4,4−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、またはトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸およびこれらの酸クロライド等が挙げられ、中でも1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましく、特に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
分岐ポリカーボネート樹脂中の多官能性化合物の割合は、芳香族ポリカーボネート樹脂全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.9モル%、より好ましくは0.01〜0.8モル%、特に好ましくは0.05〜0.4モル%である。また特に溶融エステル交換法の場合、副反応として分岐構造が生ずる場合があるが、かかる分岐構造量についても、芳香族ポリカーボネート樹脂全量中、前記した範囲であることが好適である。なお、かかる分岐構造量についてはH−NMR測定により算出することが可能である。
脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω−ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の二官能性のカルボン酸としては例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸などの直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸、並びにシクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸が好ましく挙げられる。二官能性アルコールとしては脂環族ジオールがより好適であり、例えばシクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、およびトリシクロデカンジメタノールなどが例示される。
さらにポリオルガノシロキサン単位を共重合した、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の使用も可能である。
本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法である界面重合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などの反応形式は、各種の文献および特許公報などで良く知られている方法である。
前記以外の反応形式の詳細についても、成書および特許公報などで良く知られている。
本発明の難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を製造するにあたり、芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は、特に限定されないが、好ましくは1×10〜5×10であり、より好ましくは1.4×10〜3×10であり、さらに好ましくは1.4×10〜2.4×10である。
粘度平均分子量が1×10未満の芳香族ポリカーボネート樹脂では、実用上期待される耐衝撃性などが得られない場合があり、また十分なドリップ防止能が得られないことから難燃性においても劣りやすい。一方、粘度平均分子量が5×10を超える芳香族ポリカーボネート樹脂から得られる樹脂組成物は、射出成形時の流動性に劣る点で汎用性に劣る。また成形加工温度が高くなることで本発明の特徴が十分に活かされない場合がある。
なお、前記芳香族ポリカーボネート樹脂は、その粘度平均分子量が前記範囲外のものを混合して得られたものであってもよい。殊に、前記範囲(5×10)を超える粘度平均分子量を有する芳香族ポリカーボネート樹脂は、樹脂のエントロピー弾性の向上によって、ドリップ防止能をさらに相乗的に改善可能である。かかる改善効果は、前記分岐ポリカーボネートよりもさらに良好である。より好適な態様としては、A成分が粘度平均分子量7×10〜3×10の芳香族ポリカーボネート樹脂(A−3−1成分)、および粘度平均分子量1×10〜3×10の芳香族ポリカーボネート樹脂(A−3−2成分)からなり、その粘度平均分子量が1.6×10〜3.5×10である芳香族ポリカーボネート樹脂(A3成分)(以下、“高分子量成分含有芳香族ポリカーボネート樹脂”と称することがある)も使用できる。
かかる高分子量成分含有芳香族ポリカーボネート樹脂(A3成分)において、A−3−1成分の分子量は7×10〜2×10が好ましく、より好ましくは8×10〜2×10、さらに好ましくは1×10から2×10、特に好ましくは1×10〜1.6×10である。またA−3−2成分の分子量は1×10〜1.5×10が好ましく、より好ましくは1.1×10〜2.4×10、さらに好ましくは1.2×10〜2.4×10、特に好ましくは1.2×10〜2.3×10である。
高分子量成分含有芳香族ポリカーボネート樹脂(A3成分)は前記A−3−1成分とA−3−2成分を種々の割合で混合し、所定の分子量範囲を満足するよう調整して得ることができる。好ましくは、A3成分100重量%中、A−3−1成分が2〜40重量%の場合であり、より好ましくはA−3−1成分が3〜30重量%であり、さらに好ましくはA−3−1成分が4〜20重量%であり、特に好ましくはA−3−1成分が5〜20重量%である。
また、A−3成分の調製方法としては、(1)A−3−1成分とA−3−2成分とを、それぞれ独立に重合しこれらを混合する方法、(2)特開平5−306336号公報に示される方法に代表される、GPC法による分子量分布チャートにおいて複数のポリマーピークを示す芳香族ポリカーボネート樹脂を同一系内において製造する方法を用い、かかる芳香族ポリカーボネート樹脂を本発明のA−1成分の条件を満足するよう製造する方法、および(3)かかる製造方法((2)の製造法)により得られた芳香族ポリカーボネート樹脂と、別途製造されたA−3−1成分および/またはA−3−2成分とを混合する方法などを挙げることができる。
本発明でいう粘度平均分子量は、まず、次式にて算出される比粘度(ηSP)を20℃で塩化メチレン100mlに芳香族ポリカーボネート0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t−t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量Mを算出する。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
また前記の粘度平均分子量の算出法は、本発明の樹脂組成物や該樹脂組成物から成形された成形品の粘度平均分子量測定にも適用される。すなわち、本発明においてこれらの粘度平均分子量は、塩化メチレン100mlに成形品0.7gを溶解した溶液から20℃で求めた比粘度(ηsp)を前記式に挿入して求めたものである。
(B成分:(メタ)アクリル酸エステルおよび共重合可能な他の単量体をグラフト共重合してなるアクリル変性ポリオルガノシロキサン)
本発明におけるB成分は、下記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンに(メタ)アクリル酸エステルおよび共重合可能な他の単量体、好ましくは(メタ)アクリル酸エステルのみをグラフト共重合してなるアクリル変性ポリオルガノシロキサンである。
Figure 0005301799
[式中、R,R,及びRはそれぞれ独立にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基で例示される炭素数1〜20の炭化水素基、又はこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の少なくとも一つをハロゲン原子で置換した基を表す。Yはビニル基、アリル基、およびγ−メタクリロキシプロピル基からなる群より選択されるラジカル反応性基、又はγ−メルカプトプロピル基で例示される−SH基を持つ有機基を表す。X及びXは独立に水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基、又は−SiR(R、及びRは独立にR〜Rで例示された炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基を表し、Rは炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、又はYで例示されたラジカル反応性基もしくは−SH基を持つ有機基を表す。)で示されるトリオルガノシリル基を表す。mは10,000以下の正の整数を表し、nは1〜500の整数を表す。なお、1分子中で、R〜R、Yの各々は同一でも異なっていてもよい。]
このようなアクリル変性ポリオルガノシロキサンは公知の方法で製造することができる。例えば、前記の基を有する鎖状や環状の低分子量ポリオルガノシロキサンやアルコキシシランを用いて、加水分解や重合、平衡化の手段を組み合わせることにより製造することができる。加水分解や重合、平衡化は公知の技術により、水中に分散した状態でも行うことができる。
また、(メタ)アクリル酸エステル(B2−1成分)とは、アクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル、ヒドロキシアルキルエステル、アルコキシアルキルエステルなどであり、具体的にはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−メトキシエチルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸nへキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸nラウリル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−エトキシエチルなどのメタクリル酸エステルを例示することができる。これらは1種又は2種以上組合せて使用することができ、特に、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸-2-ヒドロキシエチルが好ましい。
また、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他の単量体(B2−2成分)としては、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンのようなスチレン系化合物、アクリロニトリルやメタクリロニトリルのような不飽和ニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン化オレフィン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドなどの不飽和アミド、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸のような不飽和カルボン酸等の二重結合を1個有する単量体の他にエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の多不飽和単量体を代表例として挙げることができる。これらは2種以上使用することができる。
これら共重合可能な他の単量体の含有量は、(メタ)アクリル酸エステルとの合計量を100重量%として、30重量%以下、好ましくは28重量%以下、より好ましくは26重量%以下である。
グラフト共重合は公知の技術により行うことができる。例えば、ポリオルガノシロキサンと(メタ)アクリル酸エステル又はこれと他の単量体の混合物を水中に乳化分散し、ラジカル重合開始剤の存在下に重合させ、グラフト共重合を行うことができる。この方法で用いる乳化剤やラジカル重合開始剤は、乳化重合用として公知のものでよい。重合終了後、塩析、濾過、水洗、乾燥によりグラフト共重合体を得ることができる。なお、この乳化グラフト共重合においては、前記のようにポリオルガノシロキサンを水中に分散した状態で製造すれば、得られたポリオルガノシロキサンの乳化液をそのままグラフト共重合用原料として用いることができる。
本発明のアクリル変性ポリオルガノシロキサンはポリオルガノシロキサン(B1成分)に対し(メタ)アクリル酸エステルおよび共重合可能な他の単量体からなる混合物(B2成分)を、B2成分/B1成分の重量比で表わして5/95〜95/5、好ましくは10/90〜80/20、より好ましくは15/85〜70/30、とりわけ好ましくは20/80〜60/40でグラフト共重合したものである。この重量比において、(メタ)アクリル酸エステルおよび共重合可能な他の単量体が5未満であると、ポリカーボネートとの相溶性が不十分で機械的強度や成形品外観に難があり、95を超えると、摺動性が不十分である。
かかる(メタ)アクリル酸エステルおよび共重合可能な他の単量体をグラフト共重合してなるポリオルガノシロキサンは、例えば、日信化学(株)から「シャリーヌ」の商品名で販売されており、市場から容易に入手することもできる。
(メタ)アクリル酸エステルおよび共重合可能な他の単量体をグラフト共重合したアクリル変性ポリオルガノシロキサン(B成分)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対し、3.0〜7.0重量部、好ましくは3.2〜6.8重量部、さらに好ましくは3.4〜6.6重量部である。アクリル変性ポリオルガノシロキサン(B成分)の割合が3.0重量部未満では、摺動性の改良効果が不満足であり、7.0重量部を越えると、過剰な表面移行により外観を悪化させ、また、機械特性も低下させる可能性が有り好ましくない。
(C成分:有機リン化合物系難燃剤)
本発明のC成分として使用する有機リン化合物系難燃剤としては赤燐、有機リン酸エステル系難燃剤等を挙げることかできる。その中でも有機リン酸エステル系難燃剤が好ましく、特に下記式(2)で表される1種または2種以上のリン酸エステルが好ましい。
Figure 0005301799
(式中のXは、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビス(4−ヒドロキシジフェニル)メタン、ビスフェノールA、ジヒドロキシジフェニル、ジヒドロキシナフタレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、およびビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイドからなる群より選ばれるジヒドロキシ化合物より誘導される二価フェノール残基であり、j、k、l及びmはそれぞれ独立して0または1であり、nは0〜5の整数であり(ただし、重合度nの異なるリン酸エステルの混合物の場合はnはその平均値を表す。)、R、R、R、およびRはそれぞれ独立してハロゲン原子で置換されてもよいフェノール、クレゾール、キシレノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、およびp−クミルフェノールからなる群より選ばれるアリール基より誘導される一価のフェノール残基である。)
この中で好ましくは、上記式中のXは、ハイドロキノン、レゾルシノール、およびビスフェノールAからなる群より選ばれるジヒドロキシ化合物より誘導される二価のフェノール残基が挙げられ、j、k、l及びmはそれぞれ1であり、nは0〜3の整数であり(ただし、重合度nの異なるリン酸エステルの混合物の場合はnはその平均値を表す)、R、R、R、およびRはそれぞれ独立して1個以上のハロゲン原子で置換されてもよいフェノール、クレゾール、およびキシレノールからなる群より選ばれるアリール基より誘導される一価のフェノール残基である。更に、特に好ましくは、Xはレゾルシノールから誘導される二価のフェノール残基であり、j、k、l及びmはそれぞれ1であり、nは0または1であり、R、R、R、およびRはそれぞれ独立してフェノールまたはキシレノールから誘導される一価のフェノール残基である。かかる有機リン酸エステルの中でも、ホスフェート化合物としてはトリフェニルホスフェート、ホスフェートオリゴマーとしてはレゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)およびビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)が耐加水分解性などにも優れるため好ましく使用できる。更に好ましいのは、耐熱性などの点からレゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)およびビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)である。
本発明の有機リン化合物系難燃剤(C成分)の含有量は、A成分100重量部に対して、4.0〜9.0重量部であり、好ましくは4.8〜8.4重量部、更に好ましくは5.2〜8.0重量部である。かかる好適な組成割合によって、良好な難燃性を有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が提供される。有機リン化合物系難燃剤が上記範囲よりも少なすぎる場合には難燃効果を得ることが難しく、上記範囲を超えて多すぎる場合は、組成物の物性低下およびに耐熱性の低下による限界PV値の低下を起こす場合がある。
(D成分:含フッ素滴下防止剤)
本発明のD成分として使用する含フッ素滴下防止剤としては、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン等が例示される。
フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は極めて高い分子量を有し、せん断力などの外的作用によりPTFE同士を結合して繊維状になる傾向を示すものである。その分子量は、標準比重から求められる数平均分子量において100万〜1000万、より好ましく200万〜900万である。かかるPTFEは、固体形状の他、水性分散液形態のものも使用可能である。またかかるフィブリル形成能を有するPTFEは樹脂中での分散性を向上させ、更に良好な難燃性および機械的特性を得るために他の樹脂との混合形態のPTFE混合物を使用することも可能である。かかるフィブリル形成能を有するPTFEの市販品としては例えば三井・デュポンフロロケミカル(株)のテフロン(登録商標)6J、ダイキン化学工業(株)のポリフロンMPA FA500、F−201Lなどを挙げることができる。PTFEの水性分散液の市販品としては、旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製のフルオンAD−1、AD−936、ダイキン工業(株)製のフルオンD−1、D−2、三井・デュポンフロロケミカル(株)製のテフロン(登録商標)30Jなどを代表として挙げることができる。
混合形態のPTFEとしては、(1)PTFEの水性分散液と有機重合体の水性分散液または溶液とを混合し共沈殿を行い共凝集混合物を得る方法(特開昭60−258263号公報、特開昭63−154744号公報などに記載された方法)、(2)PTFEの水性分散液と乾燥した有機重合体粒子とを混合する方法(特開平4−272957号公報に記載された方法)、(3)PTFEの水性分散液と有機重合体粒子溶液を均一に混合し、かかる混合物からそれぞれの媒体を同時に除去する方法(特開平06−220210号公報、特開平08−188653号公報などに記載された方法)、(4)PTFEの水性分散液中で有機重合体を形成する単量体を重合する方法(特開平9−95583号公報に記載された方法)、および(5)PTFEの水性分散液と有機重合体分散液を均一に混合後
、更に該混合分散液中でビニル系単量体を重合し、その後混合物を得る方法(特開平11−29679号などに記載された方法)により得られたものが使用できる。これらの混合形態のPTFEの市販品としては、三菱レイヨン(株)の「メタブレン A3000」(商品名)、およびGEスペシャリティーケミカルズ社製 「BLENDEX B449」(商品名)などを挙げることができる。
混合形態におけるPTFEの割合としては、PTFE混合物100重量%中、PTFEが1〜60重量%が好ましく、より好ましくは5〜55重量%である。PTFEの割合がかかる範囲にある場合は、PTFEの良好な分散性を達成することができる。
本発明の含フッ素滴下防止剤(D成分)の含有量は、A成分100重量部に対して、0.01〜1重量部、好ましくは0.03〜0.8重量部、より好ましくは0.05〜0.6重量部である。D成分が0.01重量部未満では難燃効果を得ることが難しく、1重量部を超えると成形品外観が悪化し好ましくない。
(その他の添加剤)
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、通常ポリカーボネート樹脂に配合される各種の添加剤、強化剤などを配合することができる。
(リン系安定剤)
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、更にリン系安定剤を含有することが好ましい。かかるリン系安定剤は製造時または成形加工時の熱安定性を向上させ、機械的特性、色相、および成形安定性を向上させる。また紫外線劣化においても少なからず酸化劣化を伴うことから、かかる劣化の抑制にも補助的な効果を奏する。かかるリン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステルなどが例示される。
具体的にはホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−iso−プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
更に他のホスファイト化合物としては二価フェノール類と反応し環状構造を有するものも使用できる。例えば、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイトなどを挙げることができる。
ホスフェート化合物としては、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどを挙げることができ、好ましくはトリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェートである。
ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト等があげられ、テトラキス(ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトが好ましく、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトがより好ましい。かかるホスホナイト化合物は上記アルキル基が2以上置換したアリール基を有するホスファイト化合物との併用可能であり好ましい。
ホスホネイト化合物としては、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、およびベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。
上記リン系安定剤は、1種のみならず2種以上を混合して用いることができる。上記リン系安定剤の中でも、ホスファイト化合物またはホスホナイト化合物が好ましい。殊にトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトが好ましい。またこれらとホスフェート化合物との併用も好ましい態様である。
(ヒンダードフェノール系安定剤)
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、更にヒンダードフェノール系安定剤を含有することができ、かかる含有は特にその乾熱劣化の防止において効果を奏する。また紫外線劣化においても少なからず酸化劣化を伴うことからかかる劣化の抑制にも効果的である。かかるヒンダードフェノール系安定剤としては、例えば、α−トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−ジメチレン−ビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、1,6−へキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2−tert−ブチル−4−メチル6−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1,−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’−ジ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−トリ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2−チオジエチレンビス−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス2[3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、およびテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが例示される。これらはいずれも入手容易である。上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。
リン系安定剤およびヒンダードフェノール系安定剤から選ばれる少なくとも1種の安定剤は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対し、0.001〜1重量部、好ましくは0.003〜0.5重量部、より好ましくは0.005〜0.1重量部の割合で含有される。安定剤が上記範囲よりも少なすぎる場合には良好な安定化効果を得ることが難しく、上記範囲を超えて多すぎる場合は、組成物の物性低下、難燃性悪化を起こす場合がある。
(強化充填材)
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、強化フィラーとして公知の各種充填材を配合することができる。かかる充填材としては、例えば、タルク、ワラストナイト、マイカ、クレー、モンモンリロナイト、スメクタイト、カオリン、炭酸カルシウム、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラスミルドファイバー、ガラスフレーク、炭素繊維、炭素フレーク、カーボンビーズ、カーボンミルドファイバー、金属フレーク、金属繊維、金属コートガラス繊維、金属コート炭素繊維、金属コートガラスフレーク、シリカ、セラミック粒子、セラミック繊維、セラミックバルーン、グラファイト、アラミド繊維、並びに各種ウイスカー(チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、および塩基性硫酸マグネシウムなど)などが例示される。これらの強化フィラーは1種もしくは2種以上を併用して含むものであってもよい。充填材は、A成分100重量部当たり1〜50重量部の範囲が好ましい。
(光反射用白色顔料)
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は白色顔料の配合によっても、より良好な特性を有する樹脂組成物を提供する。白色顔料としては二酸化チタン(特にシリコーンなど有機表面処理剤により処理された二酸化チタン)顔料が特に好ましく、その割合はA成分100重量部に対し1〜30重量部、より好ましくは2〜20重量部が好ましい。
(ラジカル発生剤)
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、ラジカル発生剤を含有することができる。好ましいラジカル発生剤としては、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン(ジクミル)等が挙げられ、これらは日本油脂(株)製パーヘキシン25B、パークミルD、ノフマーBC等の商品名で市販されており容易に入手できる。特に溶融混練時にはラジカルの発生が極力少なく、燃焼時に有効にある程度安定したラジカルを発生するものが好ましいため、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン(ジクミル)をより好ましいラジカル発生剤として挙げることができる。難燃性が必要とされる場合、かかるラジカル発生剤により難燃性を更に向上可能である。その割合はA成分100重量部に対し0.001〜0.3重量部、より好ましくは0.01〜0.1重量部が好ましい。
(光安定剤)
また本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ{[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]}、およびポリメチルプロピル3−オキシ−[4−(2,2,6,6−テトラメチル)ピペリジニル]シロキサンなどに代表されるヒンダードアミン系の光安定剤も含むことができる。
上記光安定剤は単独であるいは2種以上の混合物を用いてもよい。光安定剤の使用量は芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して0.0005〜3重量部が好ましく、0.01〜2重量部がより好ましく、0.02〜1重量部が更に好ましい。
(他の樹脂やエラストマー)
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、他の樹脂やエラストマーを本発明の目的が損なわれない範囲で少割合使用することもできる。
かかる他の樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリメタクリレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。
また、エラストマーとしては、例えばイソブチレン/イソプレンゴム、スチレン/ブタジエンゴム、エチレン/プロピレンゴム、アクリル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、コアシェル型のエラストマーであるMBS(メタクリル酸メチル/ステレン/ブタジエン)ゴム、MAS(メタクリル酸メチル/アクリロニトリル/スチレン)ゴム等が挙げられる。
その他、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、成形品に種々の機能の付与や特性改善のために、それ自体知られた添加物を少割合配合することができる。これら添加物は本発明の目的を損なわない限り、通常の配合量である。
かかる添加剤としては、着色剤(例えばカーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、染料)、無機系蛍光体(例えばアルミン酸塩を母結晶とする蛍光体)、帯電防止剤、流動改質剤、結晶核剤、無機および有機の抗菌剤、光触媒系防汚剤(例えば微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛)、グラフトゴムに代表される衝撃改質剤、赤外線吸収剤(熱線吸収剤)、およびフォトクロミック剤が挙げられる。
(ポリカーボネート樹脂組成物の製造)
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えばA成分〜D成分、および任意に他の成分をそれぞれV型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機などの予備混合手段を用いて充分に混合した後、場合により押出造粒器やブリケッティングマシーンなどにより造粒を行い、その後ベント式二軸ルーダーに代表される溶融混練機で溶融混練、およびペレタイザー等の機器によりペレット化する方法が挙げられる。
各成分の溶融混練機への供給方法としては、(i)A成分〜D成分および他の成分はそれぞれ独立に溶融混練機に供給する方法、(ii)A成分〜D成分および他の成分の一部を予備混合した後、残りの成分と独立に溶融混練機に供給する方法が例示される。
押出機としては、原料中の水分や、溶融混練樹脂から発生する揮発ガスを脱気できるベントを有するものが好ましく使用できる。ベントからは発生水分や揮発ガスを効率よく押出機外部へ排出するための真空ポンプが好ましく設置される。また押出原料中に混入した異物などを除去するためのスクリーンを押出機ダイス部前のゾーンに設置し、異物を樹脂組成物から取り除くことも可能である。かかるスクリーンとしては金網、スクリーンチェンジャー、焼結金属プレート(ディスクフィルターなど)などを挙げることができる。溶融混練機としては二軸押出機の他にバンバリーミキサー、混練ロール、単軸押出機、3軸以上の多軸押出機などを挙げることができる。
上記の如く押出された樹脂は、直接切断してペレット化するか、またはストランドを形成した後かかるストランドをペレタイザーで切断してペレット化される。ペレット化に際して外部の埃などの影響を低減する必要がある場合には、押出機周囲の雰囲気を清浄化することが好ましい。得られたペレットの形状は、円柱、角柱、および球状など一般的な形状を取り得るが、より好適には円柱である。かかる円柱の直径は好ましくは1〜5mm、より好ましくは1.5〜4mm、さらに好ましくは2〜3.3mmである。一方、円柱の長さは好ましくは1〜30mm、より好ましくは2〜5mm、さらに好ましくは2.5〜3.5mmである。
(成形品)
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品は、通常そのペレットを射出成形して得ることができる。かかる射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体を注入する方法を含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などを挙げることができる。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。
また本発明によれば、ポリカーボネート樹脂組成物を押出成形し、各種異形押出成形品、シート、フィルムなどの形とすることもできる。またシート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法なども使用可能である。さらに特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また本発明のポリカーボネート樹脂組成物を回転成形やブロー成形などにより成形品とすることも可能である。
(表面処理)
さらに本発明の成形品には、各種の表面処理を行うことが可能である。表面処理としては、ハードコート、撥水・撥油コート、親水性コート、帯電防止コート、紫外線吸収コート、赤外線吸収コート、並びにメタライジング(蒸着など)などの各種の表面処理を行うことができる。表面処理方法としては、液剤のコーティングの他、蒸着法、溶射法、およびメッキ法が挙げられる。蒸着法としては物理蒸着法および化学蒸着法のいずれも使用できる。物理蒸着法としては真空蒸着法、スパッタリング、およびイオンプレーティングが例示される。化学蒸着(CVD)法としては、熱CVD法、プラズマCVD法、および光CVD法などが例示される。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、フッ素系摺動剤を使用せずに優れた摺動特性を有し、またポリカーボネート樹脂本来の特性である衝撃強度、耐熱性、寸法安定性及び難燃性を保持していることから、特に環境対応要求の強い電気・電子機器、事務機器等の内部機構部品に有用であり、その工業的有用性は極めて大である。
本発明者が現在最良と考える本発明の形態は、前記の各要件の好ましい範囲を集約したものとなるが、例えば、その代表例を下記の実施例中に記載する。もちろん本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
以下に実施例を挙げてさらに説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。尚、評価としては以下の項目について実施した。
[実施例1〜5、および比較例1〜8]
表1に記載の樹脂組成物を以下の要領で作成した。表1の割合の各成分を計量して、タンブラーを用いて均一に混合し、かかる混合物を押出機に投入して樹脂組成物の作成を行った。押出機としては径30mmφのベント式二軸押出機((株)神戸製鋼所KTX−30)を使用した。シリンダ−温度およびダイス温度が280℃、およびベント吸引度が3000Paの条件でストランドを押出し、水浴において冷却した後ペレタイザーでストランドカットを行い、ペレット化した。得られたペレットは120℃で6時間、熱風循環式乾燥機にて乾燥し、射出成形機[東芝機械(株)IS150EN−5Y]によりシリンダー温度280℃、金型温度70℃で試験片を成形し、下記の方法で評価を行った。
(評価方法)
(1)動摩擦係数
評価機器として(株)オリエンテック製往復動摩擦摩耗試験機AFT−15Mを使用した。直径5mmφの半球と直径5mmφ、長さ30mmφの円柱とを円断面部分で結合した先端に球面を有するピン状試験片(材質:スチール)を固定側試験片ホルダーに装着した。一方実施例および比較例の樹脂組成物より長さ150mm×幅150mm×厚さ2mmの平板状試験片(ゲートは辺の一端より幅40mm×厚み1mmのフィンゲート)を射出成形により作成し、中心部を長さ50mm×幅100mmに切削し、かかる切削試験片を往復動作する台座上に固定した。上記ピン状試験片の先端球面部分をかかる平板状試験片の切削試験片の平面部分に、ピン状試験片の円柱軸方向と平板状試験片の平面法線方向が平行となる状態で負荷荷重9.8Nの荷重をかけた状態で接触させた。かかる接触状態で、23℃、相対湿度50%RHの雰囲気中で平面内の1直線上を1往復2秒の割合で片道25mmの距離を1000回往復動作させ、ピン状試験片側に接続した容量49Nのロードセルにより1000回動作後の摩擦力を測定し、前記負荷荷重との関係より動摩擦係数を算出した。
(2)限界PV値
外径25mm、内径20mmの円筒状試験片を成形し、摩擦試験機[(株)オリエンテック製フリクトロン摩擦摩耗試験機]を用いてスラスト摩擦摩耗試験(円筒状試験片を一定荷重下で、相手材料の端面に接触、回転させる)を行った。相手材料としては、機械構造用炭素鋼(S−45C)を用い無潤滑の状態で行い、すべり速度20cm/sec(回転数167rpm)の条件下で加圧荷重を3分毎に0から500kgまで段階的に変化させて限界PV値の測定を行った。ここで言う限界PV値とは、材料の摺動表面が摩擦発熱によって変形(溶融)し、破壊する限界の加圧荷重(P)とすべり速度(V)を掛け合わせた値を示す。
(3)耐衝撃性
ISO 179に従い、ノッチ付きのシャルピー衝撃強度の測定を実施した。
(4)耐熱性
ISO 75−1および75−2に従い、荷重たわみ温度を測定した。なお、測定荷重は1.80MPaで実施した。
(5)難燃性
UL規格に従って作成した1.5mmの厚みの試験片を用いてUL規格94に基づく垂直燃焼試験により評価を行った。
(6)外観
幅50mm×長さ80mm×厚み2mmの角板を目視にて測定した。表面外観が良好なものを○、成形品表面にて相分離することによる光沢ムラ等を生じたもの、または射出成形時に成形品表面からアクリル変性ポリオルガノシロキサン成分が剥離したものを×で示した。
また、表1に記載の使用した原材料等は以下の通りである。
(A成分)
PC−1:芳香族ポリカーボネート樹脂
[帝人化成(株)製L−1225WP、粘度平均分子量22,400]
PC−2:芳香族ポリカーボネート樹脂
[帝人化成(株)製L−1225WX、粘度平均分子量19,700]
(B成分)
R−170:アクリル変性ポリオルガノシロキサン
[日信化学工業(株)製シャリーヌR−170、ポリシ゛メチルシロキサン含量70重量%]
(B成分以外)
PTFE:ポリテトラフルオロエチレン樹脂
[ダイキン工業(株)製ルブロンL−5、平均粒子径約7μm]
(C成分)
PX−200:レゾルノールビス[ジ(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート]を主成分とするリン酸エステル
[大八化学工業(株)製PX−200]
(D成分)
FA500:フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン
[ダイキン工業(株)製ポリフロンMP FA500]
(その他成分)
IRX: ホスファイト化合物
[チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製Irgafos168]
Figure 0005301799
表1における実施例と比較例との比較から、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、摺動特性、耐衝撃性、耐熱性および難燃性に優れていることが分かる。

Claims (5)

  1. 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、(B)アクリル変性ポリオルガノシロキサン(B成分)3.0〜7.0重量部、(C)有機リン化合物系難燃剤(C成分)4.0〜9.0重量部、および(D)含フッ素滴下防止剤(D成分)0.01〜1重量部を含有してなり、アクリル変性ポリオルガノシロキサン(B成分)が(B1)下記一般式(1)で示されるポリオルガノシロキサン(B1成分)に、(B2)(メタ)アクリル酸エステル(B2−1成分)70重量%〜100重量%および共重合可能な他の単量体(B2−2成分)0重量%〜30重量%からなる混合物(B2成分)をB2成分/B1成分の重量比で表して5/95〜95/5の割合でグラフト共重合してなるアクリル変性ポリオルガノシロキサンであり、かつシリコーンオイルを含有しないことを特徴とする難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
    Figure 0005301799
    [式中、R、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基、又は炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基を表し、Yはビニル基、アリル基、およびγ−(メタ)アクリロキシプロピル基からなる群より選択されるラジカル反応性基、又は−SH基を持つ有機基を表す。X及びXは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は−SiR(R、Rは独立に炭素数1〜20の炭化水素基、又は炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基を表し、Rは炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、又はビニル基、アリル基、およびγ−(メタ)アクリロキシプロピル基からなる群より選択されるラジカル反応性基又は−SH基を持つ有機基を表す。)で示される基を表し、mは10,000以下の正の整数、nは1〜500の整数であり、シロキサン鎖には分岐があってもよい。]
  2. B2−1成分がメタクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸−2−ヒドロキシエチルである請求項1に記載の難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  3. B2成分/B1成分の重量比が20/80〜60/40の割合である請求項1または2に記載の難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  4. 有機リン化合物系難燃剤が下記式(2)で表されるリン酸エステルである請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
    Figure 0005301799
    (式中のXは、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビス(4−ヒドロキシジフェニル)メタン、ビスフェノールA、ジヒドロキシジフェニル、ジヒドロキシナフタレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、およびビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイドからなる群より選ばれるジヒドロキシ化合物より誘導される二価フェノール残基であり、j、k、l及びmはそれぞれ独立して0または1であり、nは0〜5の整数であり(ただし、重合度nの異なるリン酸エステルの混合物の場合はnはその平均値を表す。)、R、R、R、およびRはそれぞれ独立してハロゲン原子で置換されてもよいフェノール、クレゾール、キシレノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、およびp−クミルフェノールからなる群より選ばれるアリール基より誘導される一価のフェノール残基である。)
  5. 前記請求項1〜4のいずれかに記載の難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物より形成された成形品。
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