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JP5221969B2 - 操舵システム - Google Patents

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JP5221969B2 JP2008021361A JP2008021361A JP5221969B2 JP 5221969 B2 JP5221969 B2 JP 5221969B2 JP 2008021361 A JP2008021361 A JP 2008021361A JP 2008021361 A JP2008021361 A JP 2008021361A JP 5221969 B2 JP5221969 B2 JP 5221969B2
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Description

本発明は、車両の操舵を補助する電動力付与手段を含む操舵システムに関するものである。
車両の操舵システムは、電動機が操舵トルクの大きさに応じた補助トルクを発生し、この補助トルクをステアリング系に伝達して、運転者が操舵する操舵力を軽減する電動力付与手段を含んでなる。このような電動力付与手段においては、操舵トルクと車速によって定まるベース信号を、ステアリング系のイナーシャ(慣性)とダンピング(粘性)によって補償し、この補償された信号を目標電流として電動機を制御する。
従来、電動力付与手段におけるダンピング、イナーシャ、および、ベース信号の各特性は、ベーステーブル、ダンパテーブル、および、事実上微分特性を備えるイナーシャテーブルを用いて演算される。
ここで、操舵トルク、車速および電動機角速度の関数である各テーブルの設定方法について検討する。ベーステーブルは、車速が速くなるほどゲインを低くし、かつ、不感帯を大きくして、マニュアルステアリング領域を大きくとって路面情報を運転者に与え、車速の増大に応じてしっかりとした操舵トルクの手応え感を付与すると共に、中低車速域では、イナーシャテーブルを使って、電動機の慣性や粘性による操舵の応答遅れを改善してすっきりした操舵フィーリングを付与する必要がある。
また、ダンピング制御では、高速走行時に路面反力が低下することから、電動機の速い回転速度での動きを抑制制御して、操舵フィーリングに安定感を与えるようにしている。そのために、ダンピング制御は、ダンピングゲインに対応する補償値で、目標電流を減衰または増幅する補正を行う。
このように構成される電動力付与手段において、車両の運転者に対する操舵フィーリングの更なる向上を図るため、例えば特許文献1には、自動変速機のシフトポジション(走行レンジ)に対応して、電動力付与手段を駆動する電動機の目標電流の特性を変更する技術が開示されている。
特開平08−216901号公報(段落0020〜段落0022参照)
しかしながら、例えば車両の旋回中に、自動変速機がギアチェンジする場合、エンジントルクの、駆動輪への伝達が遮断されるため、駆動輪の駆動力がなくなる、いわゆる駆動力抜けが発生する。
そして、駆動力抜けが発生すると、転舵輪に対する路面反力が減少して、キングピン周りのモーメントが小さくなり、運転者はハンドル抜け感を覚える。
例えば特許文献1に開示される技術は、旋回中の車両の駆動力抜けに伴って発生する、例えばハンドル抜け感などの違和感を軽減できないという問題がある。
そこで本発明は、旋回中の車両の駆動力抜けに伴って発生する違和感を軽減できる操舵システムを提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、旋回していることを検出する旋回検出手段を備える車両の操舵システムであって、電動機が発生する補助トルクを転舵輪のステアリング系に伝達する電動力付与手段と、前記補助トルクを演算するとともに、当該補助トルクを発生するように前記電動機を制御する制御信号を演算する操舵制御手段と、前記車両のエンジンから変速機を介して駆動輪に伝達される駆動力が遮断されたことを検出する駆動力遮断検出手段と、前記車両が旋回していることを前記旋回検出手段が検出している場合に、前記駆動輪に伝達される駆動力が遮断されていることを前記駆動力遮断検出手段が検出したとき、前記電動機が発生する補助トルクが小さくなるように前記制御信号を補正する補正手段と、を備え、前記操舵制御手段は、前記制御信号の基準となるベース信号を演算するベース信号演算部と、前記電動機の角速度に基づいてダンパ補償値を演算するダンパ補償信号演算部と、を含み、前記ベース信号から前記ダンパ補償値を減算するように補償して前記制御信号を演算し、前記変速機には、当該変速機で設定される変速比を検出するとともに、検出した変速比を前記補正手段に通知する変速比検出手段が備わり、前記補正手段は、前記車両が旋回していることを前記旋回検出手段が検出している場合に、前記駆動輪に伝達される駆動力が遮断されていることを前記駆動力遮断検出手段が検出したとき、前記ベース信号を減少するように補正すること、および/または、前記ダンパ補償値を大きくするように補正し、前記駆動輪に伝達される駆動力が遮断されていることを前記駆動力遮断検出手段が検出したときに前記変速比検出手段が検出している変速比が大きいほど、前記ベース信号の補正量、および/または、前記ダンパ補償値の補正量、を大きくすることを特徴とした。
請求項1に係る発明によると、操舵制御手段は、車両の旋回と、エンジンから駆動輪に伝達される駆動力の遮断を検出することができ、車両が旋回している場合に、エンジンから駆動輪に伝達される駆動力が遮断されたとき、電動機が発生する補助トルクが小さくなるように制御信号を補正することができる。
また、車両が旋回している場合に、エンジンから駆動輪に伝達される駆動力が遮断されたとき、操作子の回転速度に基づいて演算されるダンパ補償値を大きくすること、および/または、制御信号の基準となるベース信号を減少することで、補助トルクを小さくすることができる。
また、駆動輪に伝達される駆動力が遮断されていることを駆動力遮断検出手段が検出したときに、変速比検出手段が検出している変速比が大きいほど、ベース信号、および/または、ダンパ補償値を大きく補正して、補助トルクを小さくすることができる。
また、請求項に係る発明は、前記エンジンには、エンジントルクを検出するとともに、検出したエンジントルクを前記補正手段に通知するエンジントルク検出手段が備わり、前記補正手段は、前記エンジントルク検出手段が検出する前記エンジンのエンジントルクが大きいほど、前記ベース信号の補正量、および/または、前記ダンパ補償値の補正量、を大きくすることを特徴とした。
請求項2に係る発明によると、エンジントルクが大きいほど、ベース信号、および/または、ダンパ補償値を大きく補正して、補助トルクを小さくすることができる。
また、請求項3に係る発明は、旋回していることを検出する旋回検出手段を備える車両の操舵システムであって、電動機が発生する補助トルクを転舵輪のステアリング系に伝達する電動力付与手段と、前記補助トルクを演算するとともに、当該補助トルクを発生するように前記電動機を制御する制御信号を演算する操舵制御手段と、前記車両のエンジンから変速機を介して駆動輪に伝達される駆動力が遮断されたことを検出する駆動力遮断検出手段と、前記変速機に備わって、当該変速機で設定される変速比を検出するとともに、検出した変速比を補正手段に通知する変速比検出手段と、を備え、前記補正手段は、車両が旋回していることを前記旋回検出手段が検出している場合に、前記駆動輪に伝達される駆動力が遮断されていることを前記駆動力遮断検出手段が検出したとき、前記電動機が発生する補助トルクが小さくなるように、前記変速比検出手段が検出している変速比の大きさに基づいて前記制御信号を補正する補正量の大きさを決定することを特徴とした。
本発明によれば、旋回中の車両の駆動力抜けに伴って発生する違和感を軽減できる操舵システムを提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、適宜図を参照して詳細に説明する。
図1は本実施形態に係る操舵システムを適用した4輪の車両の全体概念図であり、図2は電動力付与手段の構成図である。
図1に示すように、本実施形態に係る操舵システム100は、転舵輪である前輪1(1L、1R)を転舵させる操向ハンドル3による操舵を電動機4で補助する電動力付与手段110、電動力付与手段110を制御する操舵制御ECU(操舵制御手段)130を含んで構成されている。
さらに、車両Vには後輪2(2R、2L)が備わる。
電動力付与手段110は、図2に示すように操向ハンドル3が設けられたメインステアリングシャフト3aと、シャフト3cと、ピニオン軸7とが、2つのユニバーサルジョイント(自在継手)3bによって連結され、また、ピニオン軸7の下端部に設けられたピニオンギア7aは、車幅方向に往復運動可能なラック軸8のラック歯8aに噛合し、ラック軸8の両端には、タイロッド9、9を介して左右の前輪1L、1Rが連結されている。この構成により、電動力付与手段110は、操向ハンドル3の操作時に車両V(図1参照)の進行方向を変えることができる。
なお、ピニオン軸7はその上部、中間部、下部を軸受3d、3e、3fを介して、図示しないステアリングギアボックスに支持されている。
また、電動力付与手段110は、操向ハンドル3による操舵力を軽減するための補助操舵力(補助トルク)を電動力として付与する電動機4を備えており、この電動機4の出力軸に設けられたウォームギア5aが、ピニオン軸7に設けられたウォームホイールギア5bに噛合している。
すなわち、ウォームギア5aとウォームホイールギア5bとで減速機構が構成されている。また、電動機4の回転子と電動機4に連結されているウォームギア5a、ウォームホイールギア5b、ピニオン軸7、ラック軸8、ラック歯8a、タイロッド9、9などにより、ステアリング系が構成されている。
電動機4は、複数の界磁コイルを備えた固定子(図示せず)とこの固定子の内部で回動する回転子(図示せず)からなる3相ブラシレスモータであり、電気エネルギーを機械的エネルギー(P=ωT)に変換するものである。
ここで、ωは電動機4の角速度であり、Tは電動機4の発生トルクである。また、発生トルクTと実際に出力として取り出すことができる出力トルクT との関係は、次式(1)によって表現される。
=T−(cdθ/dt+Jθ/dt)i ・・・(1)
ここで、iはウォームギア5aとウォームホイールギア5bとの減速比である。
(1)式より、出力トルクT と電動機回転角θとの関係は、電動機4の回転子の慣性モーメントJと粘性係数cとによって規定され、車両特性や車両状態に無関係である。
ここで、操向ハンドル3に加えられる操舵トルクをTs、減速機構を介して倍力された電動機4の発生トルク(補助トルク)によりアシストするアシスト量Aの係数を、例えば、車速Vの関数として変化するk(V)とする。この場合、A=k(V)×Tsであるから、路面負荷であるピニオントルクTpは、次式(2)のように表される。
Tp=Ts+A
=Ts+k(V)×Ts ・・・・・・・(2)
これより、操舵トルクTsは、次式(3)のように表現される。
Ts=Tp/(1+k(V)) ・・・・・・・(3)
したがって、操舵トルクTsは、ピニオントルクTp(負荷)の1/{1+k(V)}倍に軽減される。例えば、車速V=0のときにk(0)=2ならば、操舵トルクTsは、ピニオントルクTpの1/3の軽さに制御され、車速V=100km/hのときに、k(100)=0ならば、操舵トルクTsは、ピニオントルクTpと等しくなり、マニュアルステアリングと同等のしっかりとした重さの操舵トルクの手応え感に制御される。すなわち、車速Vに応じて操舵トルクTsを制御することにより、低速走行時には軽やかに、高速走行時にはしっかりと安定した操舵トルクの手応え感が付与される。
また、アシスト量Aは、電動機4の発生トルク(補助トルク)によりアシストされる量であって、電動機4の発生トルク(補助トルク)が大きいほど、アシスト量Aは大きくなる。
また、電動力付与手段110は、電動機4を駆動する電動機駆動回路23と、レゾルバ25と、ピニオン軸7に加えられるピニオントルクTを検出するトルクセンサSと、トルクセンサSの出力を増幅する差動増幅回路21と、車両V(図1参照)の速度(車速)を検出する車速センサSとを備えている。
そして、操舵システム100(図1参照)の操舵制御ECU130は、電動力付与手段110の機能部である電動機4を駆動制御する後記する電動力付与手段制御部130a(図3参照)を有している。
電動機駆動回路23は、例えば、3相のFETブリッジ回路のような複数のスイッチング素子を備え、電動力付与手段制御部130a(図3参照)からのDUTY(DU、DV、DW)信号を用いて矩形波電圧を生成し、電動機4を駆動するものである。
また、電動機駆動回路23は図示しないホール素子を用いて3相の電動機電流I(IU、IV、IW)を検出する機能を備えている。
レゾルバ25は、電動機4の電動機回転角θを検出し、角度信号θを出力するものであり、例えば、磁気抵抗変化を検出するセンサを図示しない回転子の周方向に等間隔の複数の凹凸部を設けた磁性回転体に近接させたものがある。
トルクセンサSは、ピニオン軸7に加えられるピニオントルクTを検出するものであり、ピニオン軸7の軸方向2箇所に逆方向の異方性となるように磁性膜が被着され、各磁性膜の表面に検出コイルがピニオン軸7に離間して挿入されている。
差動増幅回路21は、検出コイルがインダクタンス変化として検出した2つの磁歪膜の透磁率変化の差分を増幅し、トルク信号Tを出力するものである。
舵角センサ26は、前輪1の転舵角を検出するセンサで、例えば、ラック軸8の動作量を検出するラック位置センサで構成される。舵角センサ26は操舵制御ECU130と信号線で接続され、ラック軸8の動作量を検出信号として操舵制御ECU130に入力する。
車速センサSは、車速を単位時間あたりのパルス数として検出するものであり、車速信号VSを出力する。
そして、操舵制御ECU130、電動機駆動回路23および各センサにはバッテリなどの電源から電力が供給され(図示せず)、駆動する。
図1に戻って、本実施形態に係る車両Vには、エンジン10と、駆動輪である前輪1の間に介在し、エンジン10の駆動力を前輪1に伝達する、例えば有段の自動変速機として構成される変速機11と、変速機11を制御する変速機制御装置11aが備わる。
さらに、エンジン10は、エンジントルクを検出する、エンジントルクセンサ10a(エンジントルク検出手段)を備える。
なお、図1はFF(Front engine Front wheel drive)車を例示しており、FR(Front engine Rear wheel drive)車の場合、後輪2が駆動輪となり、変速機11は、エンジン10の駆動力を後輪2に伝達するように構成される。
変速機制御装置11aは、操舵制御ECU130と信号線で接続され、例えば変速機11に備わる図示しないギアポジションセンサで、変速機11で選択されるギアポジションを検出して電気信号などに変換し、操舵制御ECU130に入力する機能を有する。
変速機11で選択されるギアポジションは、ギアポジションごとに変速比が設定されていることから、変速機11は、ギアポジションを選択することで、変速比を設定することになる。そして、変速機11で選択されるギアポジションを検出する変速機制御装置11aは、変速機11で設定される変速比を検出することになる。さらに、変速機制御装置11aは、検出した変速比を変換した電気信号を操舵制御ECU130に入力することで、操舵制御ECU130にギアポジション(変速比)を通知する。
さらに変速機制御装置11aは、変速機11がギアチェンジ中であることを検出し、例えば電気信号などの変速信号として、操舵制御ECU130に入力する機能を有する。
このように、変速機制御装置11aを備えることで、本実施形態に係る操舵制御ECU130は、変速機11で選択されるギアポジションを検出できるとともに、変速機11がギアチェンジ中であることを検出できる。
変速機11がギアチェンジ中のとき、変速機11はエンジン10が発生する駆動力を前輪1に伝達することができない。すなわち、エンジン10から変速機11を介して前輪1に伝達される駆動力は、ギアチェンジ中の変速機11に遮断される。したがって、操舵制御ECU130は、変速機11がギアチェンジ中であることを検出することで、エンジン10から前輪1に伝達される駆動力が遮断されていることを検出できる。
エンジントルクセンサ10aは、操舵制御ECU130と信号線で接続され、エンジン10のエンジントルクを電気信号などの信号に変換して操舵制御ECU130に入力(通知)する。
次に、図3、図4を参照しながら操舵制御ECUの機能を説明する。図3は操舵システムの操舵制御ECUの概略構成図、図4の(a)は、べーステーブルに格納されているベース信号の特性関数を示すグラフ、(b)は、ダンパテーブルの特性関数を示すグラフである。
操舵制御ECU130は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備えるマイクロコンピュータおよび周辺回路などから構成され、例えばROMに格納されるプログラムによって制御される。
図3に示すように操舵制御ECU130は、電動力付与手段110(図2参照)を制御する電動力付与手段制御部130a、及び補正判定部70を備えている。
電動力付与手段制御部130a、及び補正判定部70は、例えば、操舵制御ECU130を制御するプログラムに組み込んだソフトウェアロジックで構成することができるが、これに限定されず、ハードウェアロジックによって構成してもよい。
(電動力付与手段制御部)
まず、図3を参照しながら適宜図2を参照して電動力付与手段制御部130aについて説明する。
電動力付与手段制御部130aは、ベース信号演算部51と、ダンパ補償信号演算部52と、イナーシャ補償信号演算部53と、Q軸(トルク軸)PI制御部54と、D軸(磁極軸)PI制御部55と、2軸3相変換部56と、PWM変換部57と、3相2軸変換部58と、電動機速度算出部67と、励磁電流生成部59とを備える。
なお、加算器61、62、64、65、積算器71、72については後記する。
3相2軸変換部58は、電動機駆動回路23が検出する電動機4の3相電流IU、IV、IWを、電動機4の回転子の磁極軸であるD軸と、このD軸に対して電気的に90度回転した軸であるQ軸との2軸に変換するものであり、Q軸電流IQは電動機4の発生トルクTに比例し、D軸電流IDは励磁電流に比例する。電動機速度算出部67は、レゾルバ25が出力する電動機4の角度信号θを微分演算して角速度信号ωを生成する。励磁電流生成部59は、電動機4の励磁電流の目標信号を生成するが、必要に応じD軸電流IDとQ軸電流IQとをほぼ等しくすることにより、弱め界磁制御を行うことができる。
ベース信号演算部51は、トルク信号Tと車速信号VSとから出力トルクT の目標信号である出力信号IMの基準となるベース信号Dを生成する。この信号生成は、予め実験測定などによって設定されたべーステーブル51aをトルク信号Tと車速信号VSとに基づいて参照することによって求められる。べーステーブル51aは、あらかじめ実験測定などによって設定し、例えばベース信号演算部51を構成するソフトウエアロジックにデータとして組み込んでおけばよい。
また、ベース信号演算部51をハードウエアロジックで構成する場合、例えばベース信号演算部51に記憶部を備え、テーブルデータ形式で記憶しておけばよい。
ベース信号演算部51(図3参照)は、図4の(a)に示すように、トルク信号Tの値が小さいときはベース信号Dがゼロに設定される不感帯N1が設けられ、トルク信号Tの値がこの不感帯N1よりも大きくなるとゲインG1で直線的に増加する特性を備えている。また、ベース信号演算部51は、所定のトルク信号Tの値で出力はゲインG2で増加し、さらにトルク信号Tの値が増加すると出力が飽和する特性を備えている。
また、一般に車両は、走行速度に応じて路面の負荷(路面反力)が異なるため、車速信号VSによりゲインが調整される。車速ゼロの据え切り操作時が最も負荷が重く中低速では比較的負荷が軽くなる。このため、ベース信号演算部51は、車速V(車速信号VS)が大きく高速になるにしたがってゲイン(G1、G2)を低く、かつ、不感帯N1を大きく設定して、マニュアルステアリング領域を大きくとって路面情報を運転者に与える。すなわち、車速V(車速信号VS)の増大に応じてしっかりとした操舵トルクTsの手応え感が付与される。このとき、マニュアルステアリング領域においてもイナーシャ補償がなされることが必要である。
図3に戻り、ダンパ補償信号演算部52は、ステアリング系が有する粘性を補償するため、また車両V(図1参照)が高速走行時に、ステアリング系の中立点への収斂性が低下する際に、これを補償するステアリングダンパ機能を有するために設けられるものであり、角速度ωに対応するダンパテーブル52aを参照することによってステアリングダンパ機能を実現する。ダンパテーブル52aは、あらかじめ実験測定などによって設定し、例えばダンパ補償信号演算部52を構成するソフトウエアロジックにデータとして組み込んでおけばよい。
また、ダンパ補償信号演算部52をハードウエアロジックで構成する場合、例えばダンパ補償信号演算部52に記憶部を備え、テーブルデータ形式で記憶しておけばよい。
図4の(b)に示すように、ダンパテーブル52aの特性関数は、電動機4の角速度ωが増加するほど、ダンパ補償値Iが直線的に増加し、所定速度でダンパ補償値Iが急激に増加する特性を備えている。
また、車速信号VSの値が高いほどゲインを大きくして、電動機4の角速度ω、すなわち、転舵速度に応じて電動機4の出力トルクT を減衰させている。言い換えれば、車速信号VSの値が高いほど、路面反力が小さくなることから、モータの速い動きを大きく制動して安定性を出すために、ダンパ補償信号演算部52は、電動機4の角速度ωを抑制制御している。このステアリングダンパ効果により、操向ハンドル3の中立点への収斂性を向上させ、車両V(図1参照)の走行を安定化させることができる。
再び図3に戻り、加算器61は、ベース信号演算部51が演算するベース信号Dからダンパ補償信号演算部52の出力信号であるダンパ補償値Iを減算するものである。すなわち、操舵制御ECU130は、ベース信号Dからダンパ補償値Iを減算するように補償する。
そして、加算器62は、加算器61の出力信号とイナーシャ補償信号演算部53の出力信号とを加算して出力信号(制御信号)IMとするものである。
ここで、ダンパ補償値Iをベース信号Dから減算する(減衰補正)とは、電動機4の回転方向と逆方向へ補正することを意味する。
したがって、通常操舵時のように、操舵トルクの方向と電動機4(図1参照)の回転方向が同じ場合には減算となるが、転舵輪である前輪1(図1参照)に発生するセルフアライニングトルク(SAT)によって、操向ハンドル3(図1参照)が中立位置に戻されるような、操舵トルクの方向と電動機4の回転方向が逆方向の場合には加算になる。
さらに、横風、路面の段差などにより、操向ハンドル3が動かされる場合も、加算になる。
イナーシャ補償信号演算部53は、ステアリング系の慣性による影響を補償するものであり、イナーシャテーブル53aを参照することによって、入力されるトルク信号Tに対応した出力信号を出力することができる。イナーシャテーブル53aは、あらかじめ実験測定などによって設定し、例えばイナーシャ補償信号演算部53を構成するソフトウエアロジックにデータとして組み込んでおけばよい。
また、イナーシャ補償信号演算部53をハードウエアロジックで構成する場合、例えばイナーシャ補償信号演算部53に記憶部を備え、テーブルデータ形式で記憶しておけばよい。
また、イナーシャ補償信号演算部53は、電動機4の回転子の慣性による応答性の低下を補償している。言い換えれば、電動機4は正回転から逆回転に、または、逆回転から正回転に回転方向を切り替える際、慣性によってその状態を持続させようとするので直ぐには回転方向が切り替わらない。そこで、イナーシャ補償信号演算部53は、電動機4の回転方向の切り替わりが操向ハンドル3の回転方向が切り替わるタイミングに一致するように制御している。このようにして、イナーシャ補償信号演算部53は、ステアリング系の慣性や粘性による操舵の応答遅れを改善してすっきりした操舵フィーリングを付与している。
また、FF車やFR車、RV(Recreation Vehicle)やセダンなどの車両特性や車速、路面などによって異なる操舵特性に対して、実用上十分な操舵フィーリングが付与される。
加算器62の出力信号IMは、電動機4のトルクを規定する電流の目標信号である。
加算器64は加算器62の出力信号IMからQ軸電流IQを減算し、偏差信号IEを生成する。Q軸(トルク軸)PI制御部54は、偏差信号IEが減少するように、P(比例)制御およびI(積分)制御を行う。
加算器65は、励磁電流生成部59の出力信号からD軸電流IDを減算するものである。D軸(磁極軸)PI制御部55は、加算器65の出力信号が減少するようにPI帰還制御を行う。
2軸3相変換部56は、Q軸(トルク軸)PI制御部54の出力信号VQとD軸(磁極軸)PI制御部55の出力信号VDとの2軸信号を3相信号UU、UV、UWに変換する。PWM変換部57は、3相信号UU、UV、UWの大きさに比例したパルス幅のON/OFF信号(PWM(Pulse Width Modulation)信号)であるDUTY信号(DU、DV、DW)を生成する。
なお、2軸3相変換部56およびPWM変換部57には、電動機4の角度信号θが入力され、回転子の磁極位置に応じた信号が出力される。
(補正判定部)
本実施形態に係る操舵制御ECU130は、車両V(図1参照)が旋回中に、変速機11がギアチェンジをした場合に、エンジントルクセンサ10aが検出するエンジントルクと、変速機制御装置11aが検出する、変速機11で選択されるギアポジションに基づいて、ベース信号演算部51が演算するベース信号Dを補正するベース補正ゲインD、及びダンパ補償信号演算部52が演算するダンパ補償値Iを補正するダンパ補正ゲインIを演算する。
そのため、操舵制御ECU130には、補正判定部70が備わる。
補正判定部70は、エンジン10に備わるエンジントルクセンサ10aからの信号が入力され、エンジントルクを検出するエンジントルク検出部70aと、変速機11に備わる変速機制御装置11aからの信号が入力され、変速機11で選択されるギアポジションを検出するギアポジション検出部70bと、を含んで構成される。
前記のように、変速機制御装置11aは、変速機11がギアチェンジ中のときに変速信号を発生する機能を有することから、ギアポジション検出部70bは、変速機11がギアチェンジ中であることを検出することができる。
このように、補正判定部70に備わるギアポジション検出部70bは、変速機制御装置11aから入力される信号に基づいて、変速機11で選択されるギアポジション(変速比)を検出することから、ギアポジション検出部70b、及び変速機制御装置11aが、請求項に記載の変速比検出手段となる。
また、ギアポジション検出部70bは、変速機11がギアチェンジ中であることを検出できるが、前記したように、変速機11のギアチェンジ中を検出することで、エンジン10から駆動輪である前輪1(図1参照)に伝達される駆動力が遮断されていることを検出できる。すなわち、ギアポジション検出部70bは、変速機制御装置11aから入力される信号に基づいて、エンジン10から前輪1に伝達される駆動力が遮断されていることを検出できる。
このことから、ギアポジション検出部70b、及び変速機制御装置11aは、請求項に記載の駆動力遮断検出手段となる。
さらに、車両V(図1参照)の旋回を検出するため、補正判定部70には、旋回検出部70cが備わる。
旋回検出部70cには、舵角センサ26が出力する、ラック軸8(図2参照)の動作量が検出信号として入力され、旋回検出部70cは、ラック軸8の動作量に基づいて前輪1の転舵角を算出する。そして、前輪1が中立位置から転舵していることで、車両Vの旋回中を検出する。
このことから、舵角センサ26、及び旋回検出部70cが、車両Vの旋回を検出する旋回検出手段になる。
なお、車両Vの旋回中を検出する方法は限定されるものではない。
例えば、車両Vに図示しないヨーレートセンサを備え、車両Vのヨーレートを検出することで、車両Vの旋回中を検出する構成であってもよい。
もちろん、これらを組み合わせて、車両Vの旋回を検出する構成であってもよい。
また、補正判定部70には、エンジントルク検出部70aに入力されるエンジントルクと、ギアポジション検出部70bに入力される、変速機制御装置11aからの信号に基づいて、ベース信号Dを補正するベース補正ゲインD、及びダンパ補償値Iを補正するダンパ補正ゲインIを演算する、補正ゲイン演算部70dが備わる。
操舵制御ECU130は、補正ゲイン演算部70dが演算するベース補正ゲインDを、ベース信号演算部51が演算するベース信号Dに積算器72で積算して、ベース信号Dを補正する。さらに、操舵制御ECU130は、補正ゲイン演算部70dが演算するダンパ補正ゲインIを、ダンパ補償信号演算部52が演算するダンパ補償値Iに積算器71で積算して、ダンパ補償値Iを補正する。
そして、例えば、ベース補正ゲインDを0より大きく1以下の値とし、ダンパ補正ゲインIを1以上の値とすることで、ベース信号Dを減少するように補正でき、ダンパ補償値Iを大きくするように補正できる。
このことから、補正判定部70と積算器71、72が、請求項に記載の補正手段となり、ダンパ補償値Iを大きくするように補正すること、及びベース信号Dを減少するように補正することで、電動機4が発生する補助トルクが小さくなるように、制御信号である出力信号IMを補正する。
ベース補正ゲインDは、本実施形態においては、車両V(図1参照)に固有の値としてあらかじめ設定される値であり、例えばエンジン10(図1参照)のエンジントルクと、変速機11(図1参照)で選択されるギアポジション(変速比)に対応した値として演算することが考えられる。
図5の(a)は、エンジントルクとギアポジションとベース補正ゲインの関数の一例を示すグラフである。
なお、図5の(a)においては、前提として、変速機11で選択されるギアポジションが1速(以下、ローギアと称する)に近づくほど、変速機11で設定される変速比が大きくなり、変速機11で選択されるギアポジションが5速(以下、ハイギアと称する)に近づくほど、変速機11で設定される変速比が小さくなる。
本実施形態において、図5の(a)に示すように、エンジントルクが大きくなるほど、ベース補正ゲインDは小さくなる特性を有する。
さらに、同じエンジントルクの場合、変速機11で選択されるギアポジションがローギアに近づくほど、すなわち、変速機11で設定される変速比が大きくなるほど、ベース補正ゲインDは小さくなる特性を有する。
これは、エンジン10(図3参照)のエンジントルクが大きく、かつ変速機11(図3参照)で設定される変速比が大きいほど、駆動輪である前輪1(図1参照)の駆動力が大きくなり、それに伴ってSATが大きくなることによる。
車両V(図1参照)の旋回中は、SATに抗して転舵するステアリング系をアシストするため、SATが大きいほど、電動機4(図1参照)がステアリング系に伝達する補助トルク(アシスト量)を大きくするように制御される。
そして、例えば駆動力抜けが発生して、補助トルクに抗するSATが小さくなると、ステアリング系に伝達される補助トルクがハンドル抜け感となって、運転者が違和感を覚える。
したがって、例えば駆動力抜けが発生する場合、エンジントルクが大きく、かつ変速機11で設定される変速比が大きいほど(変速機11で選択されるギアポジションがローギアに近いほど)、SATの減少量が大きくなり、SATの減少に伴って発生するハンドル抜け感も強くなる。
このように発生する強いハンドル抜け感を軽減するため、エンジントルクが大きいほどベース補正ゲインDを小さくし、かつ変速機11で設定される変速比が大きいほどベース補正ゲインDを小さくして、ベース信号演算部51(図3参照)が演算するベース信号Dを大きく補正する。
換言すると、エンジン10(図1参照)のエンジントルクが大きいほどベース補正ゲインDの減少率を大きくして、ベース信号Dの補正量を大きくする。さらに、変速機11で設定される変速比が大きいほどベース補正ゲインDの減少率を大きくして、ベース信号Dの補正量を大きくする。
このように、エンジン10(図1参照)のエンジントルクが大きいほど、かつ変速機11で設定される変速比が大きいほど、電動機4(図1参照)が発生する補助トルクの補正量を大きくし、ハンドル抜け感を効果的に軽減する。
ダンパ補正ゲインIは、本実施形態においては、車両V(図1参照)に固有の値としてあらかじめ設定される値であり、例えばエンジン10(図1参照)のエンジントルクと、変速機11(図1参照)で選択されるギアポジションに対応した値として演算することが考えられる。
図5の(b)は、エンジントルクと、変速機で選択されるギアポジションと、ダンパ補正ゲインの関数の一例を示すグラフである。図5の(b)においても、前提として、変速機11(図1参照)で選択されるギアポジションが1速(ローギア)に近づくほど、変速機11で設定される変速比が大きくなり、変速機11で選択されるギアポジションが5速(ハイギア)に近づくほど、変速機11で設定される変速比が小さくなる。
本実施形態において、図5の(b)に示すように、エンジントルクが大きくなるほど、ダンパ補正ゲインIは、大きくなる特性を有する。
さらに、同じエンジントルクの場合、変速機11で選択されるギアポジションがローギアに近づくほど、すなわち、変速機11で設定される変速比が大きくなるほど、ダンパ補正ゲインIは大きくなる特性を有する。
ダンパ補正ゲインIがこのような特性を有することで、エンジン10(図3参照)のエンジントルクが大きいほどダンパ補償値Iの補正量が大きくなり、かつ変速機11(図3参照)で設定される変速比が大きいほどダンパ補償値Iの補正量が大きくなる。そして、SATが小さくなって発生するハンドル抜け感を効果的に軽減できる。
なお、図5の(a)に示される、エンジントルクとギアポジションとベース補正ゲインDの関数、及び図5の(b)に示される、エンジントルクとギアポジションとダンパ補正ゲインIの関数は、一例を示したものであって、ベース補正ゲインD、及びダンパ補正ゲインIの特性を限定するものではない。
ベース補正ゲインD、及びダンパ補正ゲインIは、変速機11で選択されるギアポジションに対応するグラフで示される特性とすればよく、例えば1速から4速のギアポジションを有する変速機11であれば、4本のグラフからなる特性とすればよい。
さらに、ベース補正ゲインD、及びダンパ補正ゲインIは一定値としてもよく、車両V(図1参照)に要求される特性に応じて、好適なベース補正ゲインD、及びダンパ補正ゲインIを設定すればよい。
補正ゲイン演算部70d(図3参照)が、ベース補正ゲインDを演算する方法は限定されるものではないが、例えば、エンジン10(図1参照)のエンジントルクと、変速機11(図1参照)で選択されるギアポジションに対応するベース補正ゲインDを、あらかじめ実験測定などによって設定してベース補正ゲインテーブル70e(図3参照)を作成し、補正判定部70を構成するソフトウエアロジックにデータとして組み込んでおけばよい。
また、補正判定部70をハードウエアロジックで構成する場合、補正判定部70に記憶部を備え、テーブルデータ形式で記憶しておけばよい。
同様に、補正ゲイン演算部70dが、ダンパ補正ゲインIを演算する方法は限定されるものではないが、例えば、エンジン10(図1参照)のエンジントルクと、変速機11(図1参照)で選択されるギアポジションに対応するダンパ補正ゲインIを、あらかじめ実験測定などによって設定してダンパ補正ゲインテーブル70f(図3参照)を作成し、補正判定部70を構成するソフトウエアロジックにデータとして組み込んでおけばよい。
また、補正判定部70をハードウエアロジックで構成する場合、補正判定部70に記憶部を備え、テーブルデータ形式で記憶しておけばよい。
図6は、操舵制御ECUが、旋回中の車両に発生するハンドル抜け感を軽減するように電動力付与手段を制御するステップを示すフローチャートである。図6を参照して、操舵制御ECU130が旋回中の車両V(図1参照)に発生するハンドル抜け感を軽減するように電動力付与手段110(図1参照)を制御するステップを説明する(適宜、図1〜図5参照)。
操舵制御ECU130は、補正判定部70の旋回検出部70cによって、車両Vが旋回中か否かを判定し(ステップS1)、車両Vが旋回中でない場合は(ステップS1→No)、処理をしないが、車両Vが旋回中の場合は(ステップS1→Yes)、制御をステップS2に進める。
前記したように、操舵制御ECU130は、旋回検出部70cに、舵角センサ26から入力されるラック軸8の動作量に基づいて、車両Vが旋回中か否かを判定できる。
車両Vが旋回中の場合(ステップS1→Yes)、操舵制御ECU130は、変速機11がギアチェンジ中でなければ(ステップS2→No)、処理をしないが、変速機11がギアチェンジ中のときは(ステップS2→Yes)、制御をステップS3に進める。
操舵制御ECU130の補正判定部70のギアポジション検出部70bには、変速機制御装置11aから変速信号が入力されることから、操舵制御ECU130は、補正判定部70のギアポジション検出部70bに入力される変速信号を検出することで、変速機11がギアチェンジ中であることを判定できる。
前記したように、変速機11がギアチェンジ中のとき、変速機11はエンジン10が発生する駆動力を前輪1に伝達することができず、駆動力抜けが発生する。したがって、補正判定部70は、変速機11がギアチェンジ中のときは、ベース信号D、及びダンパ補償値Iを補正する必要があると判定する。そこで、操舵制御ECU130は、変速機11がギアチェンジ中のときは(ステップS2→Yes)、補正判定部70によって、ベース補正ゲインD、及びダンパ補正ゲインIを演算する(ステップS3)。
すなわち、補正判定部70の補正ゲイン演算部70dは、ベース補正ゲインテーブル70eを参照して、変速機11がギアチェンジする前に変速機11で選択されていたギアポジションと、エンジントルク検出部70aに入力されるエンジントルクに対応したベース補正ゲインDを演算する。
さらに補正判定部70は、ダンパ補正ゲインテーブル70fを参照して、変速機11がギアチェンジする前に変速機11で選択されていたギアポジションと、エンジントルク検出部70aに入力されるエンジントルクに対応したダンパ補正ゲインIを演算する。
このため、補正判定部70のギアポジション検出部70bは、変速機11がギアチェンジする前に変速機11で選択されていたギアポジションを、変速機制御装置11aから入力される信号で検出しておく機能を有する。
このことにより、操舵制御ECU130の補正ゲイン演算部70dは、変速機11のギアチェンジによって前輪1に伝達される駆動力が遮断されていることを検出した場合に、ギアポジション検出部70bが検出している変速比が大きいほど、ベース信号Dの補正量、及び、ダンパ補償値Iの補正量を大きくすることができる。
そして、操舵制御ECU130は、補正判定部70が演算したベース補正ゲインDでベース信号Dを補正し、ダンパ補正ゲインIでダンパ補償値Iを補正する(ステップS4)。
すなわち、操舵制御ECU130は、ベース信号演算部51が生成するベース信号Dに、積算器72でベース補正ゲインDを積算する。
さらに操舵制御ECU130は、ダンパ補償信号演算部52が演算するダンパ補償値Iに、積算器71でダンパ補正ゲインIを積算する。
このように、電動力付与手段110を制御するステップを、例えば操舵制御ECU13を制御するプログラムにサブルーチンとして組み込み、定期的(例えば、100msecなど、所定の時間間隔)に実行する構成とすればよい。
なお、電動力付与手段110を制御するステップにおいては、図6のステップS1とステップS2の実行順序を入れ替えてもよい。
このように、本実施形態に係る操舵システムは、旋回中の車両において変速機がギアチェンジする場合であっても、ギアチェンジ中に発生する駆動力抜けに伴うハンドル抜け感を軽減することができ、運転者が覚える違和感を軽減できるという優れた効果を奏する。
さらに、エンジントルクの大きさ、及び変速機で選択されるギアポジション(変速比)に対応した補正ゲインを演算して、電動機が発生する補助トルクを補正することができ、車両の走行状態に対応して好適にハンドル抜け感を軽減できるという優れた効果を奏する。
なお、本実施形態においては、ダンパ補償値I(図3参照)をダンパ補正ゲインI(図3参照)で補正すること、及び、ベース信号D(図3参照)をベース補正ゲインD(図3参照)で補正することを同時に行う構成としたが、これらの補正の少なくとも一方を行う構成としてもよい。
すなわち、車両V(図1参照)が旋回中の場合に、変速機11(図1参照)がギアチェンジ中のとき、補正ゲイン演算部70d(図3参照)が、ダンパ補償値Iを補正するダンパ補正ゲインIを演算し、積算器71(図3参照)でダンパ補償値Iに積算する構成としてもよい。
または、車両V(図1参照)が旋回中の場合に、変速機11(図1参照)がギアチェンジ中のとき、補正ゲイン演算部70d(図3参照)がベース信号Dを補正するべース補正ゲインDを演算し、積算器72(図3参照)でベース信号Dに積算する構成としてもよい。
また、前記の説明は、自動変速機で構成される変速機を備える車両を例にしているが、手動変速機で構成される変速機を備える車両(以下、MT車と称する)に本実施形態を適用することもできる。
MT車では、トランスミッションのギアチェンジをする場合、運転者はクラッチペダルを踏み込む操作が必要となる。
そして、運転者がクラッチペダルを踏み込む操作をすると、エンジントルクの、駆動輪への伝達が遮断されて、駆動力抜けが発生する。
そこで、MT車の場合、例えば運転者がクラッチペダルを踏み込んだことを検出するセンサを備え、MT車の操舵システムを制御する操舵制御ECUは、クラッチペダルが踏み込まれたことを検出したときに、電動機が発生する補助トルクを補正する構成とすることで、MT車に本実施形態を適用することができる。
さらに、操向ハンドル3(図1参照)と転舵輪である前輪1(図1参照)が機械的に接続される電動力付与手段110(図1参照)を例にしたが、操向ハンドル3と前輪1が機械的に接続されない、いわゆるステアバイワイヤによる電動力付与手段にも本実施形態を適用できる。
また、本実施形態に係る電動力付与手段110(図1参照)は、操向ハンドル3(図1参照)に入力される操舵トルクの大きさに対応した補助トルクを発生するものであるが、これは限定されず、操向ハンドル3の操舵角と転舵輪である前輪1(図1参照)の転舵角(実舵角)との差に対応して補助トルクを発生する電動力付与手段にも、本実施形態を適用できる。
また、本実施形態において、エンジントルクは、エンジン10(図1参照)に備わるエンジントルクセンサ10a(図1参照)で検出する構成としたが、エンジン10の駆動力を駆動輪である前輪1に伝達する図示しないクラッチ機構の油圧や、例えば操舵制御ECU130が算出する油圧指令値に基づいて、エンジントルクを算出する構成としてもよい。
本実施形態に係る操舵システムを適用した4輪車両の全体概念図である。 電動力付与手段の構成図である。 操舵システムの操舵制御ECUの概略構成図である。 (a)は、べーステーブルに格納されているベース信号の特性関数を示すグラフ、(b)は、ダンパテーブルの特性関数を示すグラフである。 (a)は、エンジントルクとギアポジションと、ベース補正ゲインの関数の一例を示すグラフ、(b)は、エンジントルクと、変速機で選択されるギアポジションと、ダンパ補正ゲインの関数の一例を示すグラフである。 操舵制御ECUが、旋回中の車両に発生するハンドル抜け感を軽減するように電動力付与手段を制御するステップを示すフローチャートである。
符号の説明
1(1L、1R) 前輪(駆動輪)
3 操向ハンドル
4 電動機(ステアリング系)
5a ウォームギア(ステアリング系)
5b ウォームホイールギア(ステアリング系)
7 ピニオン軸(ステアリング系)
8 ラック軸(ステアリング系)
8a ラック歯(ステアリング系)
9 タイロッド(ステアリング系)
10 エンジン
10a エンジントルクセンサ(エンジントルク検出手段)
11 変速機
11a 変速機制御装置(駆動力遮断検出手段、変速比検出手段)
26 舵角センサ(旋回検出手段)
51 ベース信号演算部
52 ダンパ補償信号演算部
70 補正判定部(補正手段)
70a エンジントルク検出部
70b ギアポジション検出部(駆動力遮断検出手段、変速比検出手段)
70c 旋回検出部(旋回検出手段)
70d 補正ゲイン演算部
71、72 積算器(補正手段)
100 操舵システム
110 電動力付与手段
130 操舵制御ECU(操舵制御手段)
ベース信号
ベース補正ゲイン
I ダンパ補償値
ダンパ補正ゲイン
V 車両

Claims (3)

  1. 旋回していることを検出する旋回検出手段を備える車両の操舵システムであって、
    電動機が発生する補助トルクを転舵輪のステアリング系に伝達する電動力付与手段と、
    前記補助トルクを演算するとともに、当該補助トルクを発生するように前記電動機を制御する制御信号を演算する操舵制御手段と、
    前記車両のエンジンから変速機を介して駆動輪に伝達される駆動力が遮断されたことを検出する駆動力遮断検出手段と、
    前記車両が旋回していることを前記旋回検出手段が検出している場合に、前記駆動輪に伝達される駆動力が遮断されていることを前記駆動力遮断検出手段が検出したとき、前記電動機が発生する補助トルクが小さくなるように前記制御信号を補正する補正手段と、を備え
    前記操舵制御手段は、
    前記制御信号の基準となるベース信号を演算するベース信号演算部と、前記電動機の角速度に基づいてダンパ補償値を演算するダンパ補償信号演算部と、を含み、前記ベース信号から前記ダンパ補償値を減算するように補償して前記制御信号を演算し、
    前記変速機には、
    当該変速機で設定される変速比を検出するとともに、検出した変速比を前記補正手段に通知する変速比検出手段が備わり、
    前記補正手段は、
    前記車両が旋回していることを前記旋回検出手段が検出している場合に、前記駆動輪に伝達される駆動力が遮断されていることを前記駆動力遮断検出手段が検出したとき、前記ベース信号を減少するように補正すること、および/または、前記ダンパ補償値を大きくするように補正し、
    前記駆動輪に伝達される駆動力が遮断されていることを前記駆動力遮断検出手段が検出したときに前記変速比検出手段が検出している変速比が大きいほど、前記ベース信号の補正量、および/または、前記ダンパ補償値の補正量、を大きくすることを特徴とする操舵システム。
  2. 前記エンジンには、
    エンジントルクを検出するとともに、検出したエンジントルクを前記補正手段に通知するエンジントルク検出手段が備わり、
    前記補正手段は、
    前記エンジントルク検出手段が検出する前記エンジンのエンジントルクが大きいほど、前記ベース信号の補正量、および/または、前記ダンパ補償値の補正量、を大きくすることを特徴とする請求項に記載の操舵システム。
  3. 旋回していることを検出する旋回検出手段を備える車両の操舵システムであって、
    電動機が発生する補助トルクを転舵輪のステアリング系に伝達する電動力付与手段と、
    前記補助トルクを演算するとともに、当該補助トルクを発生するように前記電動機を制御する制御信号を演算する操舵制御手段と、
    前記車両のエンジンから変速機を介して駆動輪に伝達される駆動力が遮断されたことを検出する駆動力遮断検出手段と、
    前記変速機に備わって、当該変速機で設定される変速比を検出するとともに、検出した変速比を補正手段に通知する変速比検出手段と、を備え、
    前記補正手段は、
    車両が旋回していることを前記旋回検出手段が検出している場合に、前記駆動輪に伝達される駆動力が遮断されていることを前記駆動力遮断検出手段が検出したとき、前記電動機が発生する補助トルクが小さくなるように、前記変速比検出手段が検出している変速比の大きさに基づいて前記制御信号を補正する補正量の大きさを決定することを特徴とする操舵システム。
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