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JP2008006919A - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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JP2008006919A JP2006178181A JP2006178181A JP2008006919A JP 2008006919 A JP2008006919 A JP 2008006919A JP 2006178181 A JP2006178181 A JP 2006178181A JP 2006178181 A JP2006178181 A JP 2006178181A JP 2008006919 A JP2008006919 A JP 2008006919A
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Shuji Fujita
修司 藤田
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Abstract

【課題】 目標電流値と実電流値との偏差に基づいて電動モータの通電をフィードバック制御する電動パワーステアリング装置において、急激なハンドル操作に対しても良好な応答性を得る。
【解決手段】 比例積分制御部41は、補正q軸目標電流値Iq*’からq軸実電流値Iqを減算したq軸指令電流ΔIqに基づいてq軸指令電圧Vq*を計算する。比例積分制御部42は、補正d軸目標電流Id*からd軸実電流Idを減算したd軸指令電流ΔIdに基づいてd軸指令電圧Vd*を計算する。PIゲイン演算部50は、この比例積分制御部41,42における制御ゲイン(比例項ゲイン、積分項ゲイン)を、q軸実電流Iq、d軸実電流Idが大きくなるにしたがって小さい値になるように設定する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、運転者による操舵ハンドルの操舵操作をアシストするための電動モータを備えた電動パワーステアリング装置に関する。
従来から、操舵ハンドルに付与される操舵トルクを検出し、検出した操舵トルクに応じたアシストトルクを電動モータに発生させるようにした車両の電動パワーステアリング装置はよく知られている。
例えば、特許文献1の電動パワーステアリング装置においては、操舵ハンドルに加えられた操舵トルクと車速とに基づいて電動モータの目標電流値を設定し、この目標電流値と電流検出器により検出されるモータ電流値(実電流値)との偏差に基づいて、偏差が零になるように電動モータをフィードバック制御する。そして、フィードバック制御における制御ゲイン(比例ゲインおよび積分ゲイン)を、目標電流値に基づいて変更している。つまり、目標電流値が小さいほど比例ゲインおよび積分ゲインを大きく設定し、目標電流値が大きいほど比例ゲインおよび積分ゲインを小さく設定している。これにより、電動モータに小電流を流すべき場合の応答遅れを補償しようとしている。
特開2001−1917
しかしながら、特許文献1のものでは、操舵ハンドルを急激に操舵操作した場合の応答性が悪い。つまり、操舵ハンドルの急激な操舵操作を行うと、操舵トルクの急増に伴って目標電流値が増大し、これに合わせて制御ゲインが小さく設定されてしまう。このため、目標電流値と実電流値との偏差が大きくなるにもかかわらず、小さく設定された制御ゲインに基づいて電動モータの電流がフィードバック制御されることとなり、電流値を早く増大させることができず、その結果、応答性が悪くなってしまう。従って、良好な操舵フィーリングが得られない。
本発明の目的は、上記問題に対処するためになされたもので、急な操舵操作に対しても応答性のよい電動パワーステアリング装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、操舵ハンドルの操舵により転舵輪を転舵する転舵機構と、上記転舵機構に設けられ、上記操舵ハンドルの操舵操作に対して操舵アシスト力を発生する電動モータと、上記操舵ハンドルの操舵操作に応じて、上記電動モータの作動を制御するための目標電流値を算出する目標電流値算出手段と、上記電動モータに流れる電流値を検出する実電流値検出手段と、上記目標電流値算出手段により算出された目標電流値に対して、上記実電流値検出手段により検出された電動モータに流れる電流値をフィードバックして上記電動モータの通電を制御するフィードバック制御手段とを備えた電動パワーステアリング装置において、上記実電流検出手段により検出された電動モータに流れる電流値に基づいて、上記フィードバック制御手段によるフィードバック制御の制御ゲインを変更する制御ゲイン変更手段を備えたことにある。
この場合、上記制御ゲイン変更手段は、上記実電流検出手段により検出された電動モータに流れる電流値が大きいほど上記制御ゲインを小さく設定する、あるいは、上記実電流検出手段により検出された電動モータに流れる電流値が所定電流値より大きいときには、その所定電流値以下のときに比べて上記制御ゲインを小さく設定するとよい。
上記のように構成した本発明によれば、フィードバック制御手段が目標電流値に対して電動モータに流れる実電流値をフィードバックして、つまり、目標電流値と実電流値との偏差が零になるように電動モータの通電を制御する。このとき、制御ゲイン変更手段は、電動モータに流れる電流値に基づいてフィードバック制御の制御ゲインを変更する。例えば、実電流検出手段により検出された電動モータに流れる電流値が大きいほど制御ゲインを小さくする。
これにより、急な操舵操作時においては、制御ゲインが急激に減らされることがなく、応答性を高めることができる。つまり、急な操舵操作時においては、目標電流値は瞬時に増大されるものの、実電流値は制御結果として増大するものであるため、この実電流値に基づいて設定される制御ゲインは、目標電流値の変化ほどは急激に減少しない。
従って、急操舵操作時には、目標電流値と実電流値との大きな偏差と大きな制御ゲインを用いてフィードバック制御できるため応答性が良好となる。そして、このフィードバック制御により実電流値が増大すると制御ゲインが低減されるため、今度は、実電流値が目標電流値に対してハンチングしてしまうことが抑制される。
また、電動モータに流れる実電流値が小さい状況下においては、制御ゲインが大きく設定されるため、この場合においても良好な応答性を得ることができる。
これらの結果、操舵フィーリングが向上する。
この制御ゲインの変更を行うにあたっては、例えば、実電流検出手段により検出された電動モータに流れる電流値が所定電流値より大きいときには、その所定電流値以下のときに比べて制御ゲインを小さく設定するようにしてもよい。この場合、制御ゲインを切り替える所定電流値を複数設定して制御ゲインを複数段に切替設定してもよい
尚、目標電流値算出手段により算出される目標電流値は、例えば、操舵ハンドルに働く操舵トルクを検出するトルク検出手段と、車速を検出する車速検出手段との少なくとも2つの検出値に基づいて算出するとよい。
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明すると、図1は、本発明に係る電動パワーステアリング装置を示す概略図である。
この車両の電動パワーステアリング装置は、操舵ハンドル11に上端を一体回転するように接続したステアリングシャフト12を備え、同シャフト12の下端にはピニオンギヤ13が一体回転するように接続されている。ピニオンギヤ13は、ラックバー14に形成されたラック歯と噛み合ってラックアンドピニオン機構を構成する。ラックバー14の両端には、図示しないタイロッドおよびナックルアームを介して左右前輪FW1,FW2が操舵可能に接続されている。左右前輪FW1,FW2は、ステアリングシャフト12の軸線回りの回転に伴うラックバー14の軸線方向の変位に応じて左右に操舵される。
ラックバー14には、操舵アシスト用の電動モータ15が組み付けられている。電動モータ15は、三相同期式永久磁石モータ(ブラシレスモータ)である交流モータによって構成されている。電動モータ15の回転軸は、ボールねじ機構16を介してラックバー14に動力伝達可能に接続されていて、その回転により左右前輪FW1,FW2の操舵をアシストする。
ボールねじ機構16は、減速器および回転−直線変換器として機能するもので、電動モータ15の回転を減速するとともに直線運動に変換してラックバー14に伝達する。また、電動モータ15をラックバー14に組み付けるのに代えて、電動モータ15をステアリングシャフト12に組み付けて、電動モータ15の回転を減速器を介してステアリングシャフト12に伝達して同シャフト12を軸線周りに駆動するように構成してもよい。
次に、電動モータ15の作動を制御する電気制御装置について説明する。電気制御装置は、操舵トルクセンサ21、車速センサ22および回転角センサ23を備えている。操舵トルクセンサ21は、ステアリングシャフト12に組み付けられていて、操舵ハンドル11の回動操作によってステアリングシャフト12に作用する操舵トルクTを検出する。操舵トルクTは、正負の値により操舵ハンドル11の右方向および左方向の操舵時における操舵トルクの大きさをそれぞれ表す。
また、操舵トルクセンサ21をステアリングシャフト12に組み付けるのに代え、ラックバー14に組み付けて、ラックバー14の軸線方向の歪み量から操舵トルクTをそれぞれ検出するようにしてもよい。車速センサ22は、車速Vを検出して車速Vを表す検出信号を出力する。
回転角センサ23は、電動モータ15内に組み込まれたエンコーダにより構成されており、電動モータ15の回転子の回転に応じてπ/2ずつ位相の異なる2相パルス列信号と基準回転位置を表す零相パルス列信号を出力する。この回転角センサ23からの検出信号は、電動モータ15の回転角θおよび角速度ωの計算に利用される。一方、この電動モータ15の回転角θは、操舵ハンドル11の操舵角に比例するものであるので、本明細書では、この回転角θは、操舵ハンドル11の操舵角としても共通に用いられる。
また、電動モータ15の角速度ωは、操舵ハンドル11の操舵角速度に比例するものであるので、本明細書では、この角速度ωは、操舵ハンドル11の操舵角速度としても共通に用いられる。尚、この回転角センサ23の検出出力を用いるのに代えて、ステアリングシャフト12の回転角またはラックバー14の軸線方向の位置を検出するセンサを用意し、前記センサによって検出された回転角および変位量を操舵ハンドル11の操舵角として用いるとともに、それらの微分値を操舵ハンドル11の操舵角速度としてそれぞれ用いるようにしてもよい。このようにして検出された操舵角θおよび操舵角速度ωも、正負の値により、操舵ハンドル11の右方向および左方向の操舵角および操舵角速度を表す。
これらの操舵トルクセンサ21、車速センサ22および回転角センサ23は、電子制御ユニット30に接続されている。電子制御ユニット30は、CPU,ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータを主要構成部品とするとともに、電動モータ15の駆動制御回路も含む。
次に、この電子制御ユニット30について詳細に説明する。図2は、プログラムの実行によって実現される前記マイクロコンピュータの機能を表す機能ブロックを含む電子制御ユニット30の全体ブロック図である。
電子制御ユニット30は、電動モータ15の回転方向をq軸とするとともに回転方向と直交する方向をd軸とする2相回転磁束座標系で記述されるベクトル制御によって電動モータ15の回転を制御する。尚、これらのq軸およびd軸について、表現方法を換えると、d軸が電動モータ15の永久磁石による界磁方向であり、q軸がそれに直交する方向である。
電子制御ユニット30は、基本アシスト力演算部31および補償値演算部32を備えている。基本アシスト力演算部31は、操舵トルクTおよび車速Vに応じて図3の特性グラフに示すように変化する基本アシスト力Tasを記憶した基本アシスト力テーブルを有する。基本アシスト力演算部31は、操舵トルクセンサ21からの操舵トルクT及び車速センサ22からの車速Vを入力して、基本アシスト力テーブルを参照することにより基本アシスト力Tasを計算する。この場合、基本アシスト力Tasは、操舵トルクTの増加にしたがって増加するとともに車速Vの増加にしたがって減少する。
尚、図3の特性グラフは、正領域すなわち右方向の操舵トルクTおよび基本アシスト力Tasの関係についてのみ示しているが、負領域すなわち左方向の操舵トルクTおよび基本アシスト力Tasに関しては、前記図3の特性グラフを原点を中心に点対称の位置に移した関係になる。また、本実施形態では、基本アシスト力Tasを基本アシスト力テーブルを用いて計算するようにしたが、基本アシスト力テーブルに代えて操舵トルクTおよび車速Vに応じて変化する基本アシスト力Tasを定義した関数を用意しておき、同関数を用いて基本アシスト力Tasを計算するようにしてもよい。
補償値演算部32は、前記車速Vと共に、後述する電動モータ15の回転角θ(操舵ハンドル11の操舵角θに相当)および電動モータ15の角速度ω(操舵ハンドル11の操舵角速度ωに相当)を入力し、基本アシスト力Tasに対する補償値Trtを計算する。すなわち、補償値演算部32は、基本的には、操舵角θに比例して大きくなるステアリングシャフト12の基本位置への復帰力と、操舵角速度ωに比例して大きくなるステアリングシャフト12の回転に対する抵抗力に対応した戻しトルクとの和を補償値Trtとして計算する。また、前記補償値Trtは、車速Vの増加に従って増加する。尚、他の各種センサからの信号も加えて、前記補償値Trtを計算してもよい。
これらの計算された基本アシスト力Tasおよび補償値Trtは演算部33に入力される。演算部33は、基本アシスト力Tasと補償値Trtを加算し、加算結果を目標指令トルクT*としてq軸目標電流演算部34に供給する。q軸目標電流演算部34は、前記目標指令トルクT*に比例したq軸目標電流Iq*を計算する。このq軸目標電流Iq*は、前記2相回転磁束座標系で記述されるベクトル制御におけるq軸成分電流であり、電動モータ15によって発生される回転トルクの大きさを制御するものである。
電子制御ユニット30は、電動モータ15の効率化および小型高出力化のための弱め界磁制御に関係した弱め界磁制御パラメータ演算部35を備えている。弱め界磁制御パラメータ演算部35は、詳しくは後述する電動モータ15の角速度ω、電動モータ15に対するq軸指令電圧Vq*’および電動モータ15のq軸実電流Iqを入力し、第1〜第3パラメータテーブルを参照して、前記角速度ω、q軸指令電圧Vq*’およびq軸実電流Iqに応じた第1〜第3パラメータCw,Cq,Ciを計算する。これらの第1〜第3パラメータCw,Cq,Ciは、d軸目標電流演算部36に供給される。d軸目標電流演算部36は、第1〜第3パラメータCw,Cq,Ciに正の係数kを乗算して、d軸目標電流Id*(=k・Cw・Cq・Ci)を計算する。このd軸目標電流Id*は、前記2相回転磁束座標系で記述されるベクトル制御におけるd軸成分電流であり、電動モータ15の界磁を弱めるためのものである。
次に、これらの第1〜第3パラメータCw,Cq,Ciについて説明しておく。第1パラメータテーブルは、図4の特性グラフに示すように、電動モータ15の角速度ωが小さい部分では「0」を示し、角速度ωの大きい部分ではほぼ一定の正の値を示す第1パラメータCwを記憶している。言い換えれば、角速度ωが大きくなるに従って大きくなる値を示す第1パラメータCwを記憶している。したがって、この特性に従って決定される第1パラメータCwは、電動モータ15の回転速度が大きな領域で弱め界磁電流を大きくすることを意味し、電動モータ15を出力トルク重視の特性から回転速度重視の特性に変更する。また、この第1パラメータCwは、電動モータ15の回転速度が遅いとき、すなわち操舵ハンドル11の回動速度が遅いときに、無駄な弱め界磁電流が流れることを防止する。
第2パラメータテーブルは、図5の特性グラフに示すように、電動モータ15のq軸指令電圧Vq*’が小さい部分では「0」を示し、q軸指令電圧Vq*’の大きい部分ではほぼ一定の正の値を示す第2パラメータCqを記憶している。言い換えれば、q軸指令電圧Vq*’が大きくなるに従って大きくなる値を示す第2パラメータCqを記憶している。このq軸指令電圧Vqが大きいことは、詳しくは後述するq軸指令電流ΔIqが大きいこと、すなわちq軸目標電流Iq*(補正q軸目標電流Iq*’)と電動モータ15の実q軸電流Iqとの偏差が大きいことを意味し、前記偏差が大きくなるに従って電動モータ15の弱め界磁電流は大きくなる。これにより、第2パラメータCqは、車両走行中に操舵ハンドル11をゆっくりかつ小さく回動操作した場合に、前記偏差が大きなときに弱め界磁制御を行って電動モータ15の回転速度を上昇させ、前記偏差が小さなときには無駄な弱め界磁電流が流れることを防止する。
第3パラメータテーブルは、図6の特性グラフに示すように、q軸実電流Iqの小さい部分ではほぼ一定の正の値を示すとともにq軸実電流Iqの大きい部分では「0」を示す第3パラメータCiを記憶している。言い換えれば、q軸実電流Iqが大きくなるに従って小さくなる値を示す第1パラメータCiを記憶している。この第3パラメータCiは、電動モータ15の角速度ωが大きな状態で、操舵ハンドル11をさらに速く回動操作した場合に、電動モータ15による操舵アシスト力が減少制御されて、操舵ハンドル11の操舵トルクが増加することを回避する。尚、本実施形態では、これらの第1〜第3パラメータCw,Cq,Ciを第1〜第3パラメータテーブルを用いて計算するようにしたが、これらのテーブルに代えて角速度ω、q軸指令電圧Vq*’およびq軸実電流Iqに応じて変化する第1〜第3パラメータCw,Cq,Ciをそれぞれ定義した関数を用意しておき、同関数を用いて第1〜第3パラメータCw,Cq,Ciを計算するようにしてもよい。
前記計算されたq軸目標電流Iq*およびd軸目標電流Id*はq軸目標電流補正演算部37に供給される。
q軸目標電流補正演算部37は、q軸目標電流演算部34からq軸目標電流Iq*を入力し、d軸目標電流演算部36からd軸目標電流Id*を入力する。そして、q軸目標電流補正演算部37は、図7に示す補正係数テーブルを参照して、d軸目標電流Id*に対応した補正係数αを算出するとともに、q軸目標電流Iq*をその補正係数αで除算することにより、q軸目標電流Iq*を補正した補正q軸目標電流Iq*’を計算して(Iq*’=Iq*/α)、その計算結果である補正q軸目標電流Iq*’を演算部38に出力する。
この補正係数テーブルは、q軸目標電流補正演算部37に設けられており、d軸目標電流Id*の増加に従って減少する正の補正係数αを記憶している。
これにより、補正q軸目標電流Iq*’は、d軸目標電流Id*が大きくなる従ってq軸目標電流Iq*を大きくなる側に補正した値を示す。
尚、本実施形態では、補正係数αを補正係数テーブルを用いて計算するようにしたが、補正係数テーブルに代えてd軸目標電流Id*に応じて変化する補正係数αを定義した関数を用意しておき、同関数を用いて補正係数αを計算するようにしてもよい。
演算部38は、補正q軸目標電流Iq*’からq軸実電流Iqを減算し、減算結果をq軸指令電流ΔIqとして比例積分制御部(PI制御部)41に供給する。演算部39はd軸目標電流Id*からd軸実電流Idを減算し、減算結果をd軸指令電流ΔIdとして比例積分制御部(PI制御部)42に供給する。比例積分制御部41および比例積分制御部42は、q軸指令電流ΔIqおよびd軸指令電流ΔIdに基づいて、q軸実電流Iqおよびd軸実電流Idが補正q軸目標電流Iq*’およびd軸目標電流Id*にそれぞれ追従するようにq軸指令電圧Vq*およびd軸指令電圧Vd*を計算する。例えば、比例積分制御部41,42は、q軸指令電圧Vq*およびd軸指令電圧Vd*を下記比例積分演算式(1),(2)により計算する。
Figure 2008006919
Figure 2008006919
この比例積分制御部41,42が演算する上記演算式(1),(2)における制御ゲインKpq,Kiq,Kpd,Kidは、PIゲイン演算部50により設定される。このPIゲイン演算部50は、電動モータ15に流れる実電流値をあらわすq軸実電流Iqとd軸実電流Idとを後述する3相/2相座標変換部53から入力し、このq軸実電流Iqとd軸実電流Idとに基づいて制御ゲインテーブルを参照することにより、制御ゲインKpq,Kiq,Kpd,Kidを算出する。
図8から図11は、PIゲイン演算部50が記憶する制御ゲインテーブルを表す。
制御ゲインKpqは、q軸指令電圧Vq*を算出するための演算式(1)の比例項の制御ゲインを表し、図8に示す制御ゲインテーブルによりq軸実電流Iqに応じた値に設定される。本実施形態においては、制御ゲインKpqは、q軸実電流Iqが大きくなるほど小さな値に設定される。
制御ゲインKiqは、q軸指令電圧Vq*を算出するための演算式(1)の積分項の制御ゲインを表し、図9に示す制御ゲインテーブルによりq軸実電流Iqに応じた値に設定される。この制御ゲインKiqは、制御ゲインKpqと同様に、q軸実電流Iqが大きくなるほど小さな値に設定される。
また、制御ゲインKpdは、d軸指令電圧Vd*を算出するための演算式(2)の比例項の制御ゲインを表し、図10に示す制御ゲインテーブルによりd軸実電流Idに応じた値に設定される。本実施形態においては、制御ゲインKpdは、d軸実電流Idが大きくなるほど小さな値に設定される。
制御ゲインKidは、d軸指令電圧Vd*を算出するための演算式(2)の積分項の制御ゲインを表し、図11に示す制御ゲインテーブルによりd軸実電流Idに応じた値に設定される。この制御ゲインKidは、制御ゲインKpdと同様に、d軸実電流Idが大きくなるほど小さな値に設定される。
尚、q軸およびd軸における実電流Id,Iqと目標電流Iq*’,Iq*,Id*とは、正負の符号によりモータ15の回転方向を特定した電流値をあらわすが、この制御ゲインKpq,Kiq,Kpd,Kidを算出するに際しては、その大きさ(絶対値)に基づいて行われる。
尚、本実施形態では、制御ゲインKpq,Kiq,Kpd,Kidを制御ゲインテーブルを用いて算出するようにしたが、こうした制御ゲインテーブルに代えて、q軸実電流Iq、d軸実電流Idに応じて変化する制御ゲインKpq,Kiq,Kpd,Kidの値を定義した関数を用意しておき、この関数を用いて制御ゲインKpq,Kiq,Kpd,Kidを計算するようにしてもよい。
比例積分制御部41および比例積分制御部42により算出されたq軸指令電圧Vq*およびd軸指令電圧Vd*は、非干渉補正値演算部43及び演算部44,45により補正されてq軸補正指令電圧Vq*およびd軸補正指令電圧Vd*’として2相/3相座標変換部46に供給される。非干渉補正値演算部43は、q軸実電流Iqとd軸実電流Idと回転子の角速度ωとに基づいて、q軸指令電圧Vq*およびd軸指令電圧Vd*のための非干渉補正値−ω・(φa+La・Id),ω・La・Iqを計算する。尚、前記インダクタンスLa及び磁束φaは、予め決められた定数である。
演算部44、45は、q軸指令電圧Vq*およびd軸指令電圧Vd*から非干渉補正値−ω・(φa+La・Id),ω・La・Iqをそれぞれ減算して、q軸補正指令電圧Vq*’(=Vq*+ω・(φa+La・Id))およびd軸補正指令電圧Vd*’(=Vd*−ω・La・Iq)を算出する。
2相/3相座標変換部46は、q軸補正指令電圧Vq*’およびd軸補正指令電圧Vd*’を3相指令電圧Vu*,Vv*,Vw*に変換して、同変換した3相指令電圧Vu*,Vv*,Vw*をPWM電圧発生部47に供給する。PWM電圧発生部47は、3相指令電圧Vu*,Vv*,Vw*に対応したPWM制御電圧信号UU,VU,WUをインバータ回路48に出力する。インバータ回路48は、前記PWM制御電圧信号UU,VU,WUに対応した3相の励磁電圧信号Vu,Vv,Vwを発生して、同励磁電圧信号Vu,Vv,Vwを3相の励磁電流路を介して電動モータ15にそれぞれ供給する。
3相の励磁電流路のうちの2つには電流センサ51,52が設けられ、各電流センサ51,52は、電動モータ15に対する3相の励磁電流Iu,Iv,Iwのうちの2つの励磁電流Iu,Iwを検出して3相/2相座標変換部53に出力する。この3相/2相座標変換部53には、演算部54にて前記実電流Iu,Iwに基づいて計算された励磁電流Ivも供給されている。3相/2相座標変換部53は、これらの3相実電流Iu,Iv,Iwを2相実電流Id,Iqに変換する。この2相実電流値Id,Iqは、演算部38,39、PIゲイン演算部50、非干渉補正値演算部43に供給される。また、2相実電流値Iqは弱め界磁制御パラメータ演算部35にも供給される。
また、回転角センサ23からの2相パルス列信号及び零相パルス列信号は、所定のサンプリング周期で電気角変換部55に連続的に供給されている。電気角変換部55は、前記各パルス列信号に基づいて電動モータ15における回転子の固定子に対する電気角を計算して、角速度変換部56に供給する。角速度変換部56は、前記電気角を微分して回転子の固定子に対する角速度を計算する。これらの電気角および角速度が電動モータ15の回転角(操舵ハンドル11の操舵角)θおよび角速度(操舵ハンドル11の操舵角速度)ωに対応するもので、これらの回転角θおよび角速度ωは、前述した補償値演算部32、弱め界磁制御パラメータ演算部35、2相/3相座標変換部46および3相/2相座標変換部53などにも供給されて利用される。
次に、上記のように構成した実施形態の動作について説明する。運転者が操舵ハンドル11を回動操作すると、この回動操作は、ステアリングシャフト12およびピニオンギヤ13を介してラックバー14に伝達されて、ラックバー14の軸線方向の変位により左右前輪FW1,FW2が操舵される。これと同時に、操舵トルクセンサ21はステアリングシャフト12に付与される操舵トルクTを検出し、電動モータ15が電子制御ユニット30によりサーボ制御されて前記操舵トルクTに応じたアシストトルクでラックバー14を駆動するので、左右前輪FW1,FW2は電動モータ15の駆動力によりアシストされながら操舵される。
この電子制御ユニット30によるサーボ制御においては、基本アシスト力演算部31、補償値演算部32及び演算部33が、前記検出操舵トルクT、車速V、電動モータ15の回転角(操舵ハンドル11の操舵角)θ及び電動モータ15の角速度(操舵ハンドル11の操舵角速度)ωに基づいて目標指令トルクT*を計算するとともに、q軸目標電流演算部34がこの目標指令トルクT*に基づいてq軸目標電流Iq*を計算する。また、d軸目標電流演算部36が、弱め界磁制御パラメータ演算部35にて電動モータ15の角速度ω、q軸指令電圧Vqおよびq軸実電流Iqに基づいて計算された第1〜第3パラメータCw,Cq,Ciを用いて、d軸目標電流Iq*を計算する。
そして、演算部38,39、比例積分制御部41,42、2相/3相座標変換部46、PWM電圧発生部47及びインバータ回路48が、電流センサ51,52、3相/2相座標変換部53及び演算部54によってフィードバックされたd軸実電流Idおよびq軸実電流Iqを用いて、電動モータ15を制御する。この場合、PIゲイン演算部50は、d軸実電流Idおよびq軸実電流Iqに基づいて比例積分制御部41,42の制御ゲインKpq,Kiq,Kpd,Kidを設定する。また、非干渉補正値演算部43及び演算部44,45は、d,q軸間で干渉し合う速度起電力を打ち消すために比例積分制御部41,42からのq軸指令電圧Vq*およびd軸指令電圧Vd*を補正する。
以上説明した本実施形態の電動パワーステアリング装置によれば、最終的な目標電流Iq*’,Id*と実電流Id,Iqとの偏差ΔIq,ΔIdに基づいて比例積分制御部41,42により電動モータ15の指令電圧Vq*,Vd*を算出するが、この比例積分演算に使われる制御ゲインKpq,Kiq,Kpd,KidをPIゲイン演算部50により実電流Id,Iqが大きいほど小さい値になるように設定する。従って、操舵ハンドル11を急激に回動操作したときの応答性が良好となる。
つまり、急激な操舵操作時においては操舵トルクTの急増により目標電流Iq*’,Id*は急に増大するものの、実電流Id,Iqは制御結果として増大するものであるため、この実電流Id,Iqの大きさに基づいて設定される制御ゲインKpq,Kiq,Kpd,Kidは急激には減少しない。従って、電動モータ15は、目標電流Iq*’,Id*と実電流Id,Iqとの大きな偏差ΔIq,ΔIdと、大きな制御ゲインKpq,Kiq,Kpd,Kidとを用いてフィードバック制御されるため応答性が高い。
そして、このフィードバック制御により実電流Id,Iqが増大すると、それに応じてPIゲイン演算部50により制御ゲインKpq,Kiq,Kpd,Kidが低減されるため、今度は、実電流Id,Iqの目標電流Iq*’,Id*に対するオーバーシュートやこれに伴うダウンシュートが抑制され、ハンチングを防止することができる。また、ハンチング防止により、異音、振動の発生を防止することができる。
更に、電動モータ15に流れる実電流Id,Iqが小さい状況においては、制御ゲインKpq,Kiq,Kpd,Kidが大きく設定されるため、応答性を向上させることができる。
これらの結果、運転者にとって良好な操舵フィーリングが得られる。
また、本実施形態においては、電動モータ15の回転方向をq軸とするとともに回転方向と直交する方向をd軸とする2相回転磁束座標系で記述されるベクトル制御によって電動モータ15の回転が制御される。そして、このベクトル制御においては、d軸目標電流演算部36が弱め界磁制御パラメータ演算部35にて計算された第1〜第3パラメータCw,Cq,Ciに基づいてd軸目標電流Id*を計算して、電動モータ15のd軸電流を角速度ω、q軸指令電圧Vqおよびq軸実電流Iqに応じて弱め界磁制御を行っている。したがって、電動モータ15の効率化および小型高出力化が弱め界磁制御によって期待されるとともに、無駄な弱め界磁電流が流れることも回避される。
また、q軸目標電流演算部34にて計算されるq軸目標電流Iq*は、q軸目標電流補正演算部37にて、d軸目標電流Id*に応じて補正される。このq軸目標電流Iq*の補正においては、d軸目標電流Id*またはd軸実電流Idが大きくなる従ってq軸目標電流Iq*を大きくなる側に補正される。したがって、上記実施形態によれば、電動モータ15の効率化および小型高出力化のために電動モータの弱め界磁制御を行っても、電動モータ15の出力トルクが確保されるので、操舵アシスト力が不足する事態を回避することができて、運転者の操舵フィーリングの悪化を避けることができる。
さらに、本発明は上記実施形態およびその変形例に限定されることなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
例えば、上記実施形態においては、電動モータ15の電流フィードバック制御をPI制御により行っているが、積分項を省略して比例項のみを使ったP制御や、微分項をも含めたPID制御を採用してもよい。また、PI制御における制御ゲインの調整は、比例項の制御ゲインのみ、あるいは積分項の制御ゲインのみであってもよく、少なくとも1つの制御ゲインを調整するものであればよい。
また、本実施形態においては、トルクを発生するq軸電流だけでなく、d軸電流についても制御ゲインを実電流に応じて変更したが、d軸電流については、制御ゲインを変更しないものであってもよい。
更に、本実施形態においては、電動モータ15に流れる電流値Iq,Idが大きいほど制御ゲインKpq,Kiq,Kpd,Kidを小さな値に設定しているが、例えば、図12あるいは図13に示すように、実電流値Iq,Idが所定電流値より大きいときには、所定電流値以下のときに比べて制御ゲインKpq,Kiq,Kpd,Kidを小さく設定するようにしてもよい。また、図14あるいは図15に示すように、制御ゲインKpq,Kiq,Kpd,Kidを切り替える所定電流値を複数設定して、制御ゲインKpq,Kiq,Kpd,Kidを複数段に切替設定してもよい。
尚、本実施形態におけるq軸目標電流演算部34、q軸目標電流補正演算部37、d軸目標電流演算部36が本発明の目標電流値算出手段に相当し、本実施形態における電流センサ51,52、演算部54、3相/2相座標変換部53が本発明の実電流値検出手段に相当し、本実施形態における演算部38,39、比例積分制御部41,42が本発明のフィードバック制御手段に相当し、本実施形態におけるPIゲイン演算部50が本発明の制御ゲイン変更手段に相当する。
本発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置の概略図である。 図1の電子制御ユニットの詳細を示すブロック図である。 操舵トルクと基本アシスト力との関係を示す特性グラフである。 電動モータの角速度と弱め界磁制御パラメータ中の第1パラメータCwとの関係を示す特性グラフである。 電動モータのq軸指令電圧と弱め界磁制御パラメータ中の第2パラメータCqとの関係を示す特性グラフである。 電動モータのq軸実電流と弱め界磁制御パラメータ中の第3パラメータCiとの関係を示す特性グラフである。 d軸目標電流Id*と補正係数との関係を示す特性グラフである。 電動モータのq軸実電流Iqと制御ゲインKpqとの関係を示す特性グラフである。 電動モータのq軸実電流Iqと制御ゲインKiqとの関係を示す特性グラフである。 電動モータのd軸実電流Idと制御ゲインKpdとの関係を示す特性グラフである。 電動モータのd軸実電流Idと制御ゲインKidとの関係を示す特性グラフである。 変形例としての電動モータのq軸実電流Iqと制御ゲインKpq,Kiqとの関係を示す特性グラフである。 変形例としての電動モータのd軸実電流Idと制御ゲインKpd,Kidとの関係を示す特性グラフである。 他の変形例としての電動モータのq軸実電流Iqと制御ゲインKpq,Kiqとの関係を示す特性グラフである。 他の変形例としての電動モータのd軸実電流Idと制御ゲインKpd,Kidとの関係を示す特性グラフである。
符号の説明
11…操舵ハンドル、15… 電動モータ、21…操舵トルクセンサ、22…車速センサ、23…回転角センサ、30…電子制御ユニット、31…基本アシスト力演算部、34…q軸目標電流演算部、36…d軸目標電流演算部、37…q軸目標電流補正演算部、38,39…演算部、41,42…比例積分制御部、インバータ48、50…PIゲイン演算部、51,52…電流センサ、Kpq,Kiq,Kpd,Kid…制御ゲイン、FW1,FW2…左右前輪(転舵輪)。

Claims (2)

  1. 操舵ハンドルの操舵により転舵輪を転舵する転舵機構と、
    上記転舵機構に設けられ、上記操舵ハンドルの操舵操作に対して操舵アシスト力を発生する電動モータと、
    上記操舵ハンドルの操舵操作に応じて、上記電動モータの作動を制御するための目標電流値を算出する目標電流値算出手段と、
    上記電動モータに流れる電流値を検出する実電流値検出手段と、
    上記目標電流値算出手段により算出された目標電流値に対して、上記実電流値検出手段により検出された電動モータに流れる電流値をフィードバックして上記電動モータの通電を制御するフィードバック制御手段と
    を備えた電動パワーステアリング装置において、
    上記実電流検出手段により検出された電動モータに流れる電流値に基づいて、上記フィードバック制御手段によるフィードバック制御の制御ゲインを変更する制御ゲイン変更手段を備えたことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. 上記制御ゲイン変更手段は、上記実電流検出手段により検出された電動モータに流れる電流値が大きいほど上記制御ゲインを小さく設定する、あるいは、上記実電流検出手段により検出された電動モータに流れる電流値が所定電流値より大きいときには、その所定電流値以下のときに比べて上記制御ゲインを小さく設定することを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング。
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