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JP5293971B2 - 積層セラミック電子部品、および積層セラミック電子部品の製造方法 - Google Patents

積層セラミック電子部品、および積層セラミック電子部品の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、積層セラミックコンデンサに代表される積層セラミック電子部品に関し、特に、Alを主成分とする内部電極を備えるものに関する。
図1を参照して、まず、この発明に係る積層セラミック電子部品の代表例である積層セラミックコンデンサ1について説明する。
積層セラミックコンデンサ1は、積層された複数の誘電体セラミック層3と誘電体セラミック層3間の特定の界面に沿って形成される複数の内部電極4および5とをもって構成される、積層体2を備えている。
積層体2の外表面上の互いに異なる位置には、第1および第2の外部電極8および9が形成される。図1に示した積層セラミックコンデンサ1では、第1および第2の外部電極8および9は、積層体2の互いに対向する各端面6および7上にそれぞれに形成される。内部電極4および5は、第1の外部電極8に電気的に接続される複数の第1の内部電極4と第2の外部電極9に電気的に接続される複数の第2の内部電極5とがあり、これら第1および第2の内部電極4および5は、積層方向に関して交互に配置されている。
積層セラミックコンデンサでは特に小型化が要求されるため、製造過程において、誘電体セラミックのグリーンシートと、内部電極層とを積層した後、同時に焼成する手法がとられる。近年、積層セラミックコンデンサの内部電極には、コスト削減のため、Ni等の卑金属が用いられている。
しかし、Niはセラミックとの共焼結時に非常に酸化されやすいため、焼成時の雰囲気を還元雰囲気とし、温度条件および酸素分圧を精密に制御する必要があった。結果として、材料設計に大きな制約が生じた。加えて、共焼成に伴う不均一な応力に起因するデラミネーションやクラック等の問題が懸念された。
よって、積層セラミック電子部品の設計の自由度を高めるためには、様々な金属種の内部電極が検討されることが好ましい。
たとえば、特許文献1には、Niに替わる内部電極材料としてAlを採用した積層セラミック体について述べている。ただ、Alの融点は約660℃であるため、従来の常識から考えると、セラミックが約660℃で十分に焼結できるものでなければならず、セラミック材料設計の自由度が大幅に制限されるという問題はあった。
ドイツ公開特許公報 DE19719174A1 号
しかしながら、特許文献1における積層セラミック電子部品においては、焼成温度がAlの融点である660℃よりはるかに高い1200℃であるため、Al内部電極が球状化し、十分な導電性が確保できないという問題があった。
さらに、特許文献1における積層セラミック電子部品においては、焼成雰囲気が酸素分圧10-5atmの窒素雰囲気であるため、内部電極となるAlが窒化アルミ(AlN)に変化してしまい、十分な導電性が確保できないという問題があった。
そこで、本発明の目的は、平滑性、導電性に優れるAl内部電極を備え、機械的特性および電気的特性に優れる積層セラミック電子部品を提供することにある。
すなわち本発明は、積層された複数のセラミック層と、前記セラミック層間の特定の界面に沿って形成される複数のAlを主成分とする内部電極とを備える積層体と、前記積層体の外表面上に形成された外部電極と、を含む積層セラミック電子部品であって、前記内部電極の表層部がAl23層で形成され、前記Al 2 3 層の厚みが0.0125μm以上であり、かつ前記内部電極厚みの10%以下であることを特徴とする。
本発明は、Alを主成分とする内部電極を備える積層セラミック電子部品の製造方法にも向けられる。すなわち、積層された複数のセラミックグリーンシートと、前記セラミックグリーンシート間の特定の界面に沿って形成される複数のAlを主成分とする金属成分を含む層とを備える生の積層体を用意する工程と、前記生の積層体を酸素分圧が1×10-4MPa以上である雰囲気下で600〜1000℃、好ましくは670〜1000℃の温度で焼成する工程と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、Al内部電極が平滑性かつ導電性に優れるため、機械的特性および電気的特性に優れる積層セラミック電子部品を提供することができる。
また、本発明によれば、Al内部電極の表層を構成するAl23層が様々な組成を有するセラミック層と強固に密着するため、焼成時の面方向の収縮が抑えられ、高い寸法精度を有する積層セラミック電子部品を提供することができる。
また、本発明によれば、大気中に近い酸素分圧を示す雰囲気中でかつAlの融点よりも高い温度で焼成することが可能であるため、セラミック材料設計の自由度が高まり、低コストかつ低不良率にて様々な特性を有する積層セラミック電子部品を製造することができる。
本発明の積層セラミック電子部品の例である積層セラミックコンデンサを示す図である。 本発明の実施例3における積層体のAl内部電極付近の拡大写真である。
本発明の積層セラミック電子部品は、その内部電極の主成分がAlである。この内部電極はAl単体でもAl合金でも良いが、Al合金である場合、Alの含有率が70モル%であることが好ましく、さらに好ましくは90モル%以上である。
内部電極の表層部、すなわちセラミック層と接する箇所は、Al23を主成分とする層で構成されている。これは、主として、Al内部電極の表面が酸化したことに因るものである。このAl23層が、Al内部電極の球状化による電極切れを防ぎ、Al内部電極の導電率を良好に保つ。また、このAl23層は、Al内部電極層を平滑にする作用がある。これにより、セラミック層とAl内部電極とのデラミネーションが抑制され、また積層体のクラックも防がれる。この効果を発現するには、Al23層の厚みは内部電極の厚みの0.25%以上であることが好ましい。さらに、Al23層の厚みが0.5%以上であると、上記の効果がより安定して発現される。
また、Al23層の厚みが内部電極の厚みの10%超となると、内部電極層の総厚の20%超がAl23で構成されることとなり、導電率の低下が懸念される。よって、Al23層の厚みは内部電極の厚みの10%以下であることが好ましい。
次に、本発明の積層セラミック電子部品の製造方法について、積層セラミックコンデンサを例にとり説明する。
まず、セラミック原料が用意される。このセラミック原料は、溶媒中にて必要に応じて有機バインダ成分と混合され、セラミックスラリーとされる。このセラミックスラリーをシート成形することにより、セラミックグリーンシートが得られる。
次に、Alを主成分とする内部電極がセラミックグリーンシート上に形成される。これにはいくつかの方法があり、Al粉と有機ビヒクルとを含むAlペーストを所望のパターンにスクリーン印刷する方法が簡便である。その他にも、Al金属箔を転写する方法や、真空薄膜形成法によりマスキングしながらAl膜を形成する方法もある。
このようにして、セラミックグリーンシートとAl内部電極層とが多数層重ねられ、圧着することにより、焼成前の生の積層体が得られる。
この生の積層体は、焼成炉において、所定の雰囲気・温度にて焼成される。たとえば、焼成時の酸素分圧を1×10-4MPa以上とし、焼成温度を600℃以上とした場合、Al内部電極の表面の酸化が進み、適度な厚みを有するAl23層が形成される。好ましくは、焼成温度をAlの融点以上、たとえば670℃以上に設定すると、より安定的に適度な厚みを有するAl23層が形成される。
また、たとえば、焼成温度を1000℃以下とすると、Al内部電極の球状化が効果的に防がれる。酸素分圧に関しては、工程の簡便さを考慮すると、大気圧が最も好ましい。
また、焼成工程における、室温〜TOP温度までの昇温速度を100℃/分以上とすると、セラミック材料組成や積層構造の設計等に種々の変化があっても、より確実にAl内部電極の表層にAl23層が形成されやすい。これは、Alの溶融に起因するAlの流動が大きくなる前に、表層Al23層形成およびセラミックの焼結がなされるためと考えられる。
なお、Alの融点は約660℃であるが、本発明の製造方法によれば、660℃を大きく超える温度でもセラミックとともに共焼成可能となる。これはAl内部電極の表層部に形成されたAl23層に因るものと考えられる。このため、使用するセラミックの材料組成設計にも大きな自由度が生じ、様々なアプリケーションに応用可能となる。
なお、本発明の積層セラミック電子部品におけるセラミック組成は特に限定されるものではない。チタン酸バリウム系(Ca、Sr、Zr等で置換されたものも含む)、チタン酸鉛系またはチタン酸ジルコン酸鉛系、アルミナ系ガラスセラミック、フェライト、遷移元素酸化物系半導体セラミック、など、本発明の目的を損なわない範囲で様々な材料を適用可能である。
また、本発明の積層セラミック電子部品は、積層セラミックコンデンサに限らず、積層型圧電素子、積層サーミスタ素子、積層チップコイル、セラミック多層基板など様々な電子部品に適用可能である。
[実施例1]本実施例は、6種のセラミック組成とAl内部電極との積層セラミック電子部品において、Al23層の有無および厚みによる依存性をみたものである。
まず、セラミックの主成分としてBaTiO3粉末を用意し、副成分としてBi23、CuO、B23、BaO、SiO2の粉末を用意した。これらの粉末を表1の6種類の含有比を満足するよう混合し、6種のセラミック原料を得た。
このセラミック原料それぞれに、エタノール系の有機溶剤およびポリビニルブチラール系バインダを加え、ボールミルで湿式混合し、セラミックスラリーを得た。このセラミックスラリーをシート成形し、セラミックグリーンシートを得た。
次に、セラミックグリーンシート上に、Al粉末と有機ビヒクルとを含むAlペーストをスクリーン印刷により塗布し、Alペースト層を形成した。このAlペースト塗布後のセラミックグリーンシートを、Alペースト層の引き出されている側が互い違いになるように積層し、圧着し、生の積層体を得た。
この生の積層体を大気中にて270℃にて加熱し、バインダを除去した。この後、100℃/分の昇温速度にて昇温し、大気中にて表2に示す焼成温度にて1分間焼成した。得られた積層体の両端面に低融点ガラスフリットを含有するAgペーストを塗布し、大気中にて600℃で焼き付け、これを内部電極と接続する外部電極とした。
以上のようにして得られた積層セラミックコンデンサは、長さ2.0mm、幅1.0mm厚さ0.5mmであり、セラミック層厚みは50μm、内部電極層厚みは5μm、有効層数は5であった。
得られた試料について静電容量および誘電損失(tanδ)を自動ブリッジ式測定器を用い測定した。結果を表2に示した。
また、FIB加工による断面をμ-SAMによって分析し、内部電極の断面におけるAl23を同定した。このAl23層の厚みを任意の10点において測定し、その平均値の5μmに対する比を算出した。結果を表2に示す。
表2の結果より、1−1〜1−6の6種類のセラミック組成を用いた積層体において、Al内部電極の表層部に、厚みにして0.25〜10%のAl23層が形成された試料においては、電極の球状化もなく、導通性と平滑性に優れた積層体が得られ、所望の静電容量が得られた。
一方で、酸素分圧が1×10-5MPaと低すぎる場合は、内部電極のAlが窒化したため、抵抗値が増加し、必要な導電性が得られなかった。
また、焼成温度が500℃と低かったため、Al23層の厚みの比が0.25%に満たなかった試料においては、Al内部電極の平滑性が低く、内部電極としての機能を十分に果たさなかった。
さらに、焼成温度が1100℃と高すぎて、Al23層の厚みの比が10%を超えた試料においては、抵抗値の増加により十分な導電性が得られなかった。
[実施例2]本実施例は、ある誘電体セラミック材料において、内部電極をNiからAlに変更したときの影響をみたものである。
まず、組成式100(Ba0.95Ca0.051.01TiO3+0.2Dy23+0.1MnO+0.6MgO+2.0SiO2+0.5Li2Oで表されるセラミック原料を用意した。
このセラミック原料を用い、実施例1と同じ方法において、セラミックグリーンシートを得た。並行して、Al金属粉末と有機ビヒクルとを含むAlペースト、およびNi金属粉末と有機ビヒクルとを含むNiペーストを用意した。
次に、セラミックグリーンシート上に、Alペーストをスクリーン印刷により塗布し、Alペースト層を形成した。このAlペースト塗布後のセラミックグリーンシートを、Alペースト層の引き出されている側が互い違いになるように積層し、圧着し、生の積層体を得た。同様にして、Niペーストを用いた場合の生の積層体も得た。
この生の積層体を大気中にて270℃にて加熱し、バインダを除去した。この後、100℃/分の昇温速度にて昇温し、1000℃にて1分間焼成した。このようにして、積層体の試料を得た。
以上のようにして得られた積層体は、長さが約2.0mm、幅が約1.0mm、厚みが約0.5mmあり、有効層数は5であった。Al内部電極の表層部にはAl23層が形成されていた。
ここで、積層体の一層当たりの内部電極の面積を測定し、焼成前の生の積層体における内部電極の面積に対する比、すなわち内部電極の面方向の面積収縮率を求めた。表3に示す。
さらに、セラミック層の厚みを測定し、焼成前の生の積層体における厚みに対する比、すなわちセラミックの厚み方向の収縮率を求めた。表3に示す。
Al内部電極の積層体とNi内部電極の積層体とを比較すると、Al内部電極のほうがNi内部電極よりも、内部電極が収縮しにくいことがわかった。一方で、セラミック層の厚み方向の収縮率はAl内部電極の積層体のほうが大きくなった。これは、Al内部電極が焼成時のセラミック層の面方向の収縮を拘束したためと考えられる。
以上の結果より、内部電極にAlを用いると、セラミックグリーンシートを比較的厚くしても、大容量品に適した薄いセラミック層を有する積層体を得ることができる。したがって、ピンホール不良等の低減が期待できる。よって、Al内部電極を用いた積層体は、薄層化の進む積層セラミックコンデンサとして有用である。
[実施例3]本実施例は、様々な組成を有する低温焼結用セラミック組成において、Al内部電極を有する積層体を評価したものである。
まず、表4に示す組成を満足するよう各出発原料を混合し、6種類の組成のセラミック原料、原料3−1〜3−6を得た。
このセラミック原料を用い、実施例1と同じ方法において、セラミックグリーンシートを得た。並行して、Al金属粉末と有機ビヒクルとを含むAlペースト、Ni金属粉末と有機ビヒクルとを含むNiペースト、およびCu金属粉末と有機ビヒクルとを含むCuペーストを用意した。
次に、原料3−1〜3−4によるセラミックグリーンシート上に、Alペーストをスクリーン印刷により塗布し、Alペースト層を形成した。このAlペースト塗布後のセラミックグリーンシートを、Alペースト層の引き出されている側が互い違いになるように積層し、圧着し、生の積層体を得た。同様にして、原料3−5のセラミックグリーンシートにはNiペースト、原料3−6のセラミックグリーンシートにはCuペーストを用いた場合の生の積層体も得た。積層数は、表5に示すように、それぞれ5、30、100層の3種類それぞれ用意した。
この生の積層体を大気中にて270℃にて加熱し、バインダを除去した。この後、100℃/分の昇温速度にて昇温し、表5に示す温度にて1分間焼成した。得られた積層体の両端面に低融点ガラスフリットを含有するAgペーストを塗布し、大気中にて600℃で焼き付け、これを内部電極と接続する外部電極とした。このようにして、試料を得た。
以上のようにして得られた積層体は、長さが約2.0mm、幅が約1.0mm、厚みが約0.5mmであった。一層当たりの有効面積は1.7×10-62であった。また、セラミック層一層当たりの厚みは5μmであった。Alペーストを用いた3−1〜3−4の積層体のAl内部電極の表層部にはAl23層が形成されていた。試料3−1のAl内部電極付近の拡大写真を図2に示す。
得られた6種の試料について誘電率を自動ブリッジ式測定器を用い測定した。また、5kV/mmの電圧を1分間印加したときの絶縁抵抗率logρ(Ω・m)を測定した。結果を表5に示した。
さらに、6種の試料それぞれ30個について超音波探傷試験を行い、クラックの有無を確認した。結果を表5に示した。
表5の結果より、積層数を30層以上にした場合、Al内部電極を採用することにより、クラックが大幅に抑制されることがわかった。これは、弾性率がNiやCuより低いAlの内部電極を平滑に形成できたことによるものと考えられる。
よって、Al内部電極を用いた積層体は、内部電極のパターン設計や積層構造などの設計の自由度が高く、積層セラミック電子部品に極めて有用である。
[実施例4]本実施例は、ガラスセラミックスとAl内部電極とを備える多層基板の例であり、Ag内部電極と比較したものである。
まず、43SiO2−44.9CaO−5.7B23−6.4Al23(係数はwt%)の組成を有するガラス粉末、およびAl23粉末を用意した。このガラス粉末とAl23粉末を、48:52の重量比となるよう秤量し、混合し、これをセラミック原料粉末とした。
このセラミック原料を用い、実施例1と同じ方法において、セラミックグリーンシートを得た。並行して、Al金属粉末と有機ビヒクルとを含むAlペースト、Ag金属粉末と有機ビヒクルとを含むAgペーストを用意した。
次に、上記セラミックグリーンシート上に、Alペーストをスクリーン印刷により塗布し、Alペースト層を形成した。このAlペースト塗布後のセラミックグリーンシートを、Alペースト層の引き出されている側が互い違いになるように積層し、圧着し、生の積層体を得た。同様にして、Agペーストを塗布した生の積層体も得た。このとき、一層当たりの有効面積は1.7×10-62、有効層数は5であった。
この生の積層体を大気中にて270℃にて加熱し、バインダを除去した。この後、100℃/分の昇温速度にて昇温し、表6に示す温度にて1分間焼成した。得られた積層体の両端面に低融点ガラスフリットを含有するAgペーストを塗布し、大気中にて600℃で焼き付け、これを内部電極と接続する外部電極とした。このようにして、試料を得た。
以上のようにして得られた積層体は、長さが約2.0mm、幅が約1.0mm、厚みが約0.5mmであった。また、セラミック層一層当たりの厚みは5μmであった。Alペーストを用いた積層体4−1〜4−3のAl内部電極の表層部にはAl23層が形成されていた。
得られた4種の試料4−1〜4−4について誘電率を自動ブリッジ式測定器を用い測定した。結果を表6に示した。
同様に、焼成後の積層体における内部電極の一層当たりの有効面積を測定し、焼成前の1.7×10-62に対する面積収縮率(=(焼成後の有効面積)/(焼成前の有効面積))を評価した。結果を表6に示す。
表6の結果によると、Al内部電極を用いた試料4−1、4−2、4−3の収縮率は、Ag内部電極を用いた試料4−4より小さかった。これは、Al内部電極の表層部に形成されたAl23層が内部電極とガラスセラミック層とを強固に密着させる作用があったためと考えられる。
したがって、本願のAl内部電極を有する積層体は、高い寸法精度の要求されるセラミック多層基板用の積層体として有用である。
[実施例5]本実施例は、半導体セラミックとAl内部電極とを備える積層NTCサーミスタの例であり、Ag/Pd内部電極と比較したものである。
まず、0.60Mn−0.25Ni−0.1Fe−0.05Ti(係数はモル比)の組成を有する粉末を用意し、これをセラミック原料粉末とした。
このセラミック原料を用い、実施例1と同じ方法において、セラミックグリーンシートを得た。並行して、Al金属粉末と有機ビヒクルとを含むAlペースト、Ag/Pd=7/3の金属粉末と有機ビヒクルとを含むAg/Pdペーストを用意した。
次に、上記セラミックグリーンシート上に、Alペーストをスクリーン印刷により塗布し、Alペースト層を形成した。このAlペースト塗布後のセラミックグリーンシートを、Alペースト層の引き出されている側が互い違いになるように積層し、圧着し、生の積層体を得た。同様にして、Ag/Pdペーストを塗布した生の積層体も得た。このとき、一層当たりの有効面積は1.7×10-62であり、有効層数は1であった。
この生の積層体を大気中にて270℃にて加熱し、バインダを除去した。この後、100℃/分の昇温速度にて昇温し、表7に示す温度にて1分間焼成した。得られた積層体の両端面に低融点ガラスフリットを含有するAgペーストを塗布し、大気中にて600℃で焼き付け、これを内部電極と接続する外部電極とした。このようにして、試料を得た。
以上のようにして得られた積層体は、長さが約2.0mm、幅が約1.0mm、厚みが0.5mmであった。また、セラミック層一層当たりの厚みは5μmであった。Alペーストを用いた積層体5−1〜5−3のAl内部電極の表層部にはAl23層が形成されていた。
得られた4種の試料5−1〜5−4について抵抗値を測定し、有効面積とセラミック層厚みから体積抵抗率を評価した。結果を表7に示した。
同様に、焼成後の積層体における内部電極の一層当たりの有効面積を測定し、焼成前の1.7×10-62に対する面積収縮率(=(焼成後の有効面積)/(焼成前の有効面積))を評価した。結果を表7に示す。
表7の結果によると、Al内部電極を用いた試料5−1、5−2、5−3の収縮率は、Ag/Pd内部電極を用いた試料5−4より小さかった。これは、Al内部電極の表層部に形成されたAl23層が内部電極とセラミック層とを強固に密着させる作用があったためと考えられる。
したがって、本願のAl内部電極を有する積層体は、高い寸法精度および抵抗値精度の要求される積層サーミスタ用の積層体として有用である。
[実施例6]本実施例は、磁性体セラミックとAl内部電極とを備える積層チップコイルの例であり、Ag内部電極との比較をしたものである。
まず、0.49Fe23−0.29ZnO−0.14NiO−0.08CuO(係数はモル比)の組成を有するフェライト用セラミック粉末を用意し、これに対し0.5wt%のホウケイ酸ガラスを添加、混合した。この配合粉末をセラミック原料粉末とした。
このセラミック原料を用い、実施例1と同じ方法において、セラミックグリーンシートを得た。並行して、Al金属粉末と有機ビヒクルとを含むAlペースト、Ag金属粉末と有機ビヒクルとを含むAgペーストを用意した。
次に、上記セラミックグリーンシート上に、所定の箇所に貫通孔を形成した後、Alペーストをスクリーン印刷により塗布し、Alペースト層からなるコイルパターンを形成した。このAlペースト塗布後のセラミックグリーンシートを積層し、圧着し、コイルの形成された生の積層体を得た。同様にして、Agペーストを用いた場合の生の積層体も得た。
この生の積層体を大気中にて270℃にて加熱し、バインダを除去した。この後、100℃/分の昇温速度にて昇温し、表8に示す温度にて1分間焼成した。以上のようにして得られた積層体は、長さが約1.0mm、幅が約0.5mm、厚みが約0.5mmであった。得られた積層体における、コイルの巻き数は7.5ターンであり、コイルの線幅は100μmであった。
得られた積層体の両端面に低融点ガラスフリットを含有するAgペーストを塗布し、大気中にて600℃で焼き付け、これを内部電極と接続する外部電極とした。なお、通常の積層チップコイルでは、内部電極と外部電極とのコンタクトを十分にするために、内部電極の露出面にサンドブラスト等により研磨処理を行うが、本実施例ではこの研磨処理を行わなかった。
また、Alペーストを用いた積層体6−1、6−2、6−3のAl内部電極の表層部にはAl23層が形成されていた。このようにして、評価用試料を得た。
表8のように得られた試料6−1、6−2、6−3、6−4において、それぞれ20個ずつ、両外部電極間の導通チェックを行った。導通不良個数の結果を表8に示す。
表8の結果より、Ag内部電極を用いた試料6−4では多数の導通不良が生じたにも関わらず、Al内部電極を用いた試料6−1、6−2、6−3では導通不良がみられなかった。これは、Al内部電極の表層に形成されたAl23層が内部電極とセラミック層とを強固に密着させ、Al内部電極の収縮に起因する電極引っ込みを抑えたためだと考えられる。
したがって、Al内部電極を用いることにより、外部電極形成前のサンドブラスト等の研磨処理の工程を省略することができ、かつ導通不良の潜在的な可能性を減じることができる。よって、Al内部電極を用いた積層体は積層チップコイルに非常に有用である。
[実施例7]本実施例は、圧電体セラミックとAl内部電極とを備える積層圧電素子の例であり、Ag/Pd内部電極との比較をしたものである。
まず、(Pb0.88Bi0.12){(Ni1/2Nb1/20.15Ti0.45Zr0.40}O3の組成を有する粉末を用意し、これをセラミック原料粉末とした。
このセラミック原料を用い、実施例1と同じ方法において、セラミックグリーンシートを得た。並行して、Al金属粉末と有機ビヒクルとを含むAlペースト、Ag/Pd=9/1の金属粉末と有機ビヒクルとを含むAg/Pdペーストを用意した。
次に、上記セラミックグリーンシート上に、Alペーストをスクリーン印刷により塗布し、Alペースト層を形成した。このAlペースト塗布後のセラミックグリーンシートを、Alペースト層の引き出されている側が互い違いになるように積層し、圧着し、生の積層体を得た。同様にして、Ag/Pdペーストを塗布した生の積層体も得た。
この生の積層体を大気中にて270℃にて加熱し、バインダを除去した。この後、100℃/分の昇温速度にて昇温し、表9に示す温度にて1分間焼成した。Alペーストを用いた積層体のAl内部電極の表層部にはAl23層が形成されていた。
得られた積層体の両端面に低融点ガラスフリットを含有するAgペーストを塗布し、大気中にて600℃で焼き付け、これを内部電極と接続する外部電極とした。
以上のようにして得られた積層体は、長さが約5mm、幅が約5mm、厚み約0.6mmであった。また、セラミック層一層当たりの厚みは100μmであり、有効層数は3であった。このとき、(焼成後の積層体の長さ)/(焼成前の積層体の長さ)×100を収縮率(%)とし、この結果を表9に示した。試料7−1、7−2がAl内部電極であり、試料7−3、7−4がAg/Pd内部電極である。
Al内部電極を用いた場合、Ag/Pd内部電極を用いた積層体と比較して、同じ焼成温度にも関わらず収縮率が小さいことがわかった。よって、寸法精度に優れた圧電素子を得ることが期待でき、特に厳しい寸法精度が要求される積層圧電アクチュエータ等には有用である。
また、並行して、この積層体の外部電極間に、80℃にて300Vの電圧を10分間印加し、分極処理を行った。次いで、圧電d定数を簡易的に測定したところ、全試料とも圧電d33定数にして250〜500pC/N程度の値が得られた。したがって、Al内部電極を用いても、十分な圧電特性が得られることがわかった。
本発明の積層セラミック電子部品は、積層セラミックコンデンサ、積層圧電素子、積層サーミスタ、積層チップコイル、セラミック多層基板などに応用が可能である。

Claims (7)

  1. 積層された複数のセラミック層と、前記セラミック層間の特定の界面に沿って形成される複数のAlを主成分とする内部電極とを備える積層体と、前記積層体の外表面上に形成された外部電極と、を含む積層セラミック電子部品であって、
    前記内部電極の表層部がAl23層で形成され、前記Al 2 3 層の厚みが0.0125μm以上であり、かつ前記内部電極厚みの10%以下であることを特徴とする、積層セラミック電子部品。
  2. 前記Al 2 3 層の厚みが0.025μm以上であることを特徴とする、請求項に記載の積層セラミック電子部品。
  3. 前記セラミック層の主成分がチタン酸バリウム系ペロブスカイト化合物であり、前記積層セラミック電子部品が積層セラミックコンデンサであることを特徴とする、請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品。
  4. 前記セラミック層の主成分が、チタン酸鉛系またはチタン酸ジルコン酸鉛系のペロブスカイト化合物であり、前記積層セラミック電子部品が積層圧電素子であることを特徴とする、請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品。
  5. 前記セラミック層が、Mn、Ni、Fe、Tiのうち少なくとも一種を含む金属元素の酸化物を主成分とする半導体セラミックであり、前記積層セラミック電子部品が積層サーミスタであることを特徴とする、請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品。
  6. 前記セラミック層が、SiおよびBを含むガラス成分、およびアルミナを主成分とするガラスセラミックであり、前記積層セラミック電子部品がセラミック多層基板であることを特徴とする、請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品。
  7. 積層された複数のセラミックグリーンシートと、前記セラミックグリーンシート間の特定の界面に沿って形成される複数のAlを主成分とする金属成分を含む層と、を備える生の積層体を用意する工程と、
    前記生の積層体を酸素分圧が1×10-4MPa以上である雰囲気下で600〜1000℃の温度で焼成する工程と、を備え
    前記焼成工程における、室温から焼成トップ温度までの平均昇温速度が100℃/分以上であることを特徴とする、積層セラミック電子部品の製造方法。
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