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JP5162755B2 - 結晶化ガラス及びそれを用いた光触媒部材 - Google Patents

結晶化ガラス及びそれを用いた光触媒部材 Download PDF

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本発明は、結晶化ガラス及びそれを用いた光触媒部材に関するものである。
ガラス材料は、ファイバへの線引きや薄膜化など、その形態が簡便・容易かつ安価に制御できる特性を持つが、基本的に光を伝達・透過する機能のみであり、光に対して能動的に機能を発現する光機能材料としては用いられない。結晶化ガラスは、析出結晶を選択することにより、高い透明性や広い透過波長域、さらには成型加工の容易性等のガラスの特徴に、結晶材料に固有の特性を賦与したものであり、非線形光学特性(例えば、特許文献1参照。)やイオン伝導性(例えば、特許文献2参照。)を有した全く新しい機能性材料として期待されている。
一方 酸化チタン(チタニア)は、化学的安定性に優れる、高い屈折率を有するなどといった優れた特徴を有し、近年は、電子材料、触媒材料、光触媒等に使用されている結晶材料である。特に光触媒機能は、強い酸化作用と超親水作用を利用して、工業的に様々な分野で応用されている(例えば、特許文献3、特許文献4参照。)。
前述の酸化チタンは、出発原料として用いる場合(例えば、特許文献5参照。)と、材料表面に酸化チタン膜を形成させて用いる場合(例えば、特許文献6、7参照。)あるいは微粒子を膜中に分散させる場合(例えば、特許文献8、9参照。)がほとんどであり、種々の作製法において、光触媒機能が材料に賦与されているという報告がある。概して、光触媒機能を有効に利用するためには、結晶あるいは微粒子として材料中に存在する方が高効率であり、そのため、酸化チタン膜を材料に塗布することにより光触媒能を利用する手法が主流となっている。
前述の酸化チタン膜の作製法としては、蒸着膜、あるいはスパッタ薄膜中に析出させる手法、あるいは酸化チタン含有ゾルを用いて作製した膜を熱処理することにより結晶化させる手法などがある。特に、大面積のガラスに対しては、酸化チタンをコーティング液中に分散させ、これを材料に塗布して酸化チタンの膜を形成させて光触媒能を利用している。しかし、この手法では経時変化に伴うコーティング膜の剥離により、その触媒機能が低下する。また、定期的にコーティングする必要があり、コストやメンテナンスの問題がある。つまり、経時変化という観点では、酸化チタン膜の塗布の手法では限界がある。
これに対して、ガラス全体に結晶化させた微粒子を分散させる手法では、経時変化による材料表面への変化がほとんどなく、半永久的に結晶化粒子の特徴を有することができる。しかし、一般にガラス中から選択的に酸化チタンを結晶化させることは困難とされている。なぜなら、酸化チタンはアルミナ、シリカなどといったガラス形成酸化物と、酸化チタン以外の結晶を形成するため、あるいは、酸化チタン以外の結晶がより低温で析出するためである。そのため、チタニアを析出させた結晶化ガラスの報告はほとんどない。
これまでに、ガラス中にチタニアを含む結晶化ガラスについては、1976年にコーニング社のグループがルチル型チタニアを含む結晶化ガラスについて報告している(特許文献10参照。)しかしながら、この結晶化ガラスにおいては、針状のチタニア結晶を強度の向上のために析出させており、それ自身の光触媒機能などを利用する目的ではない。また、ガラス表面に微結晶形態として析出するわけではないので、チタニア結晶の析出よる比表面積の増大は期待できない。さらに、結晶化ガラスからは、ルチル型チタニアと同時にAlが析出するという問題がある。加えて、構成成分として環境負荷の大きい酸化鉛を含む実施例もある。
一方、2007年、東北大学のグループが酸化カルシウム・酸化ビスマス・酸化ホウ素・酸化アルミニウム・酸化チタンからなるガラスを基にした、チタニア結晶だけを析出させた結晶化ガラスについて報告を行なっている。酸化ホウ素を主成分とするガラスを熱処理することにより、ルチル型あるいはアナターゼ型のチタニア結晶の析出が確認されている(例えば、非特許文献1参照。)。このガラスは、新規光触媒材料としての応用が検討されている。
特開2005−272198号公報 特開2002−109955号公報 特表平11−512337号公報 特開平10−277403号公報 特開平9−315837号公報 特開2003−93896号公報 特開平10−57817号公報 国際公開第98/03607号パンフレット 特開2001−98187号公報 米国特許第3948669号 Masaiら、アプライド フィジックス レターズ、90号 pp.081907、2007年
しかしながら、非特許文献1に記載の結晶化ガラスは、可視域における吸収が大きく、実用化を満足する透明性には満たない。結晶化ガラスの透明度を向上させることは、透明光触媒材料への応用展開に必要である。
本発明は、光触媒機能を保持しつつ、可視光領域の吸収を大幅に改善した結晶化ガラス及びそれを用いた光触媒部材を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、TiO−Bi−B−Al−RO系結晶化ガラスに、適量のSnOを含有させることによって、Alの結晶の析出を十分に防止しながらチタニア結晶だけを析出させ、しかも十分な可視光透過性を有する結晶化ガラスが得られることを見出し、本発明を提案するに至った。
すなわち本発明の結晶化ガラスは、TiO 5〜25モル%、Bi 3〜15モル%、B 45〜75モル%、Al 5〜20モル%、MgO+CaO+SrO+BaO 2〜15モル%、SnO 0.3〜1.8モル%を含有し、且つチタニア結晶が析出したことを特徴とする。
また、本発明の光触媒部材は、TiO 5〜25モル%、Bi 3〜15モル%、B 45〜75モル%、Al 5〜20モル%、MgO+CaO+SrO+BaO 2〜15モル%、SnO 0.3〜1.8モル%を含有し、且つチタニア結晶が析出した結晶化ガラスを用いてなることを特徴とする。
また、本発明の製造方法は、TiO−Bi−B−Al−RO系結晶化ガラス(Rは、Mg、Ca、Sr及びBaの群から選択された1種または2種以上を示す。)を製造する方法であって、原料組成中にSnO 0.3〜1.8モル%を含有させることを特徴とする。
本発明の結晶化ガラスは、チタニア(酸化チタン)結晶がガラス全体に析出しているため、触媒(特に好ましくは光触媒)の材料として好適に用いることができ、触媒として利用した場合に、優れた活性及び耐久性を発揮できる。結晶化ガラスの可視域の吸収は主にビスマス酸化物、あるいは、ビスマス金属由来のものと考えられるが、本発明においては、SnOを添加することにより、ビスマス元素の価数および配位状態を変化させ、それにより吸収の低減を達成することができる。
その結果、本発明の結晶化ガラスは、可視域における透明性を従来の報告に比べて向上させることができる。
また、SnOの添加に関わらず、チタニア結晶の析出が確認できることから、SnOの添加は主にビスマスによる可視光の吸収を低減するように作用しており、以前のチタニア結晶のみが析出した結晶化ガラスの特性を保持し、透明性の点からはその特性をさらに向上させるものである。
また、この結晶化ガラスを用いた光触媒部材は、自動車・鉄道・船などの輸送重機、あるいは、ビルの窓への応用が可能であり、半永久的にガラスに光触媒能を賦与することができる。
本発明において、上述したように結晶化ガラスの含有成分を限定した理由を以下に述べる。
TiOの含有割合は、5〜25モル%である。TiOの含有割合としては、10〜25モル%であることが好ましく、14〜23モル%であることがより好ましい。TiOの含有割合が5モル%未満では、得られるガラスを加熱してチタニアの結晶を析出させる際に光触媒等に使用するために十分な量の結晶が析出しなくなる。また、TiOの含有割合が25モル%を超えると、白色のチタニアの粗大な結晶がガラス中に析出して透明なガラスが得られなくなる。
Biの含有割合は、3〜15モル%である。Biの含有割合としては、5〜12モル%であることが好ましく、7〜11モル%であることがより好ましい。Biの含有割合が3モル%未満では、結晶性ガラスを成形する際に、失透して(具体的には、粗大なチタニアの結晶の析出による失透がおこるため透明な結晶性ガラスが得られなくなり)、また、得られた結晶性ガラスを加熱してチタニアの結晶を析出させた場合、所望の形状の微小結晶が得られず、透明な結晶化ガラスが得られなくなる。また、Biの含有割合が15モル%を超えると、酸化ビスマスを含む他の結晶が析出して、チタニア結晶による光触媒能を阻害する。
の含有割合は、45〜75モル%である。Bの含有割合としては、50〜70モル%であることが好ましく、50〜66モル%であることがより好ましい。Bの含有割合が45モル%未満では、結晶性ガラスを成形する際に、失透して(具体的には、粗大なチタニアの結晶の析出による失透がおこるため透明な結晶性ガラスが得られなくなり)、また、75モル%を超えると、Bの含有割合が高くなりすぎて、TiOの含有量が減少することから、結晶化ガラス中に十分な量のチタニア結晶を析出させることができず、結晶化ガラスの機能性が低下する。
Alの含有割合は、5〜20モル%である。Alの含有割合としては、6〜15モル%であることが好ましく、7〜10モル%であることがより好ましい。Alの含有割合が5モル%未満では、結晶性ガラスを成形する際に、失透し(具体的には、粗大なチタニアの結晶の析出による失透がおこるため透明な結晶性ガラスが得られなくなり)、その失透したガラスを熱処理しても粗大結晶が析出する。Alの含有割合が20モル%を超えると、Alの結晶の析出を十分に防止することができなくなる。
また、MgO+CaO+SrO+BaOの含有割合は、2〜15モル%である。MgO+CaO+SrO+BaOの含有割合としては、3〜10モル%であることが好ましく、3〜9モル%であることがより好ましい。MgO+CaO+SrO+BaOの含有割合が2モル%未満では、結晶性ガラスを成形する際に、失透して(具体的には、粗大なチタニアの結晶の析出による失透がおこるため透明な結晶性ガラスが得られなくなり)、MgO+CaO+SrO+BaOの含有割合が15モル%を超えると、結晶化ガラス中にチタニア結晶以外の他の結晶が析出し、チタニア結晶の光触媒能が阻害されることとなる。特にCaOは、クラーク数が大きく、最も入手しやすい成分であり、安価なため好ましい。
また、SnOの含有割合は、0.3〜1.8モル%である。SnOの含有割合としては、0.4〜1.5モル%であることが好ましく、0.5〜1モル%であることがより好ましい。SnOの含有割合が0.3モル%未満では、結晶化ガラスの可視光の光透過性が低く、SnOの含有割合が1.8モル%を超えると、分相して結晶化ガラスの可視光の透過率が低下する。
また、上述のように、本発明の結晶化ガラスは、TiO、Bi、B、Al、RO(RはMg、Ca、Sr及びBaの群から選択された1種又は2種以上)、及びSnOを必須成分として含有するものであるが、前記必須成分以外に他の成分を含有させてもよい。このような他の成分としては特に制限されず、ガラスを製造する際に用いられる公知の成分を適宜含有させることができる。また、このような他の成分としては、希土類金属の酸化物や遷移金属の酸化物等が挙げられる。
本発明の結晶化ガラスにおいて、チタニア結晶は、平均粒径の上限値が1000nmであることが好ましく、600nmであることがより好ましく、30nmであることが特に好ましい。また、前記平均粒径の下限値が、3nmであることが好ましく、5nmであることがより好ましい。
チタニア結晶の平均粒径が1000nmを超えると、チタニア結晶の表面積が小さくなって、光触媒機能等を十分に発揮させることができなくなる傾向にある。一方、チタニア結晶の平均粒径は、小さければ小さいほど可視光の透過率が高くなって好ましいが、上述した本発明の組成範囲において、チタニア結晶の平均粒径を3nmよりも小さくすることは製造上困難である。
また、本発明の結晶化ガラスは、表面に3〜1000nmの平均粒径を有するチタニアの微結晶が析出したことが好ましい。このような結晶化ガラスは、比表面積が増大し、光触媒として用いた場合に、より高い性能を発揮できる傾向にある。なお、上記平均粒径は、粉末X線回折測定結果からシェラーの式を用いて求めた結晶子サイズを指し、またここでいう「微結晶」とは、ナノサイズの微小な単結晶からなるものをいう。
本発明の結晶化ガラスは、チタニア結晶がアナターゼ型結晶及び/又はルチル型結晶であることが好ましい。このようにすれば、光触媒機能が発現するからである。
また本発明の結晶化ガラスは、チタニア結晶だけが析出し、それ以外の結晶(異種結晶)が析出しないことが好ましい、このようにすれば、結晶化ガラスの光触媒機能の低下を抑制することができる。
結晶化ガラスにおいて、結晶を析出させる方法は、典型的には熱処理であるが、レーザ照射等の方法であってもよく、特に限定されない。熱処理の方法としては、材料に対して、熱処理する所定の温度範囲において、温度制御でき、材料を化学的に安定に保てるのであればよく、特に限定されない。熱処理については、たとえば、電気炉、ホットプレート、白熱灯などの熱源を用いることができる。レーザ加熱に関しても、ガラスが照射領域において均一に加熱され、温度制御可能であればレーザの種類は問わない。全体を均一に、大面積材料を容易にしかも効率的に加熱する通常の熱処理法に対して、レーザ光を用いて照射領域が限定される加熱方法は、光導波路など結晶化による光波制御の機能性がある特定の位置に限定される場合には、特に効率的な加熱法となる。
レーザ加熱については、たとえば、紫外レーザやYAGレーザ、炭酸ガスレーザなど加工用のレーザを用いることができる。結晶性ガラスを結晶化させる工程(結晶化処理)において、熱処理条件は、所望の結晶相が得られる条件であれば、特に限定されない。結晶相の存在及び結晶化の程度は、X線回折により確認できる。結晶化の程度は、用途などに応じて、任意に選択することができる。ガラスの溶融ルツボはアルミナルツボであっても、白金ルツボであっても問題はない。アルミナルツボの場合においては、出発原料にアルミナを加えずに作製することができる。これは、ルツボからアルミナが溶出してくるためである。
本発明の結晶化ガラスについて、実験例を用いて詳細に説明する。
表1は本発明の実験例における原料のバッチ組成を示し、表2は、本発明の実験例で得られた結晶化ガラスの組成及びその評価結果を示す。
Figure 0005162755
Figure 0005162755
本発明の実験例は、表1のバッチ組成となるように原料を調合し、純度99.9%のアルミナ坩堝を用いて1300℃の電気炉中で40分間溶融し、160℃の金属板上に流し出し、急冷却した後、30分間アニールして結晶性ガラスを得た。次いで、この結晶性ガラスを、630℃で3時間熱処理することによって、結晶化ガラスを作製した。
結晶化ガラスの化学組成は、B及びBiについては、湿式分析法を用い、その他の成分については蛍光X線分析法を用いて求めた。結晶化ガラス中のAlはアルミナ坩堝からの混入によるものである。
結晶化ガラスの可視域(488nm)での光透過率(T%)は、分光光度計(島津製UV−3150)を用いて測定した。尚、光透過率の測定では、結晶化ガラスの厚みを1mmにし、両面を光学研磨した試料を用いた。また、析出結晶の同定は粉末X線回折装置を用いて行った。また析出結晶の平均粒径は、粉末X線回折測定結果からシェラーの式を用いて求めた。
触媒能は、アルミナ乳鉢を用いて粉砕した0.07gの結晶化ガラスの粉末試料を、10μMのメチレンブルー水溶液20g中に分散させ、暗所で18時間静置した後、吸光度(A)を測定し、更に波長365nmのブラックライトを20時間(t)照射した後も同様に吸光度(A)を測定し、以下の式に従って求めたメチレンブルーの単位表面積当たりの分解速度定数で評価した。尚、触媒能は、単位表面積当たりの分解速度定数kが大きい程優れていることを示す。また、試料の表面積(S)は、BET法によって求めた1g当たりの表面積と粉末試料重量とから算出した。
単位表面積当たりの分解速度定数 k=ln(A/A)/t/S
表2からわかるように、本発明に従う実験例No.4、No.5の結晶化ガラスは、SnOを含有しない従来例(No.1)と比べ、可視光の光透過率が高く、No.1、No.4及びNo.5の触媒能は、メチレンブルーの分解速度定数で略0.05h−1−2であり、略同等であった。
一方、実験例No.1〜3は、SnOの含有割合が低いため、可視光の透過率が低く、No.6は、SnOの含有割合が高すぎるため、結晶化ガラス中に分相が発生し、透過率が低かった。
尚、実験例1〜6は、平均結晶粒径が何れも5nmであった。
以上説明したように、チタニア結晶を含有した透明ナノ結晶化ガラスは、可視光の透明性が高く、しかも触媒能(特に光触媒能)を有するため、自動車・鉄道・船などの輸送重機、あるいは、ビルの窓にも応用が可能であり、半永久的にガラスに光触媒能を賦与することができる。従来のコーティングによる光触媒機能の賦与という作製法を、大きく変えうるため、本発明による産業界への波及効果は非常に大きいと予想される。

Claims (4)

  1. TiO 5〜25モル%、Bi 3〜15モル%、B 45〜75モル%、Al 5〜20モル%、MgO+CaO+SrO+BaO 2〜15モル%、SnO 0.3〜1.8モル%を含有し、且つ熱処理によりチタニア結晶が析出したことを特徴とする結晶化ガラス。
  2. チタニア結晶がアナターゼ型結晶及び/又はルチル型結晶であることを特徴とする請求項1に記載の結晶化ガラス。
  3. チタニア結晶のみが析出したことを特徴とする請求項1又は2に記載の結晶化ガラス。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の結晶化ガラスを用いてなる光触媒部材。
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