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JP5059292B2 - ウイスカー発生抑制に優れたSn合金めっき - Google Patents

ウイスカー発生抑制に優れたSn合金めっき Download PDF

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Description

本発明は、SnめっきまたはSn合金めっきの技術分野に関し、特に半導体リードフレームや電子部品のコネクター端子に使用されるSnめっき銅板や銅合金板に関し、ショートの原因となるウイスカー発生を抑制するSnめっきまたはSn合金めっきの構造およびSnめっきまたはSn合金めっき構造の製造方法に関する。
半導体のリードフレームや電子機器のコネクター端子は、通常ハンダ付け性を良くするためにSn-Pb合金メッキが施されているが、近年、環境問題からPbを用いないSnめっきが求められている。
しかしながら、Snめっき表面からは、めっき後に自発的に直径数μm、長さは数μmから長いものは数mmにもなる針状のSnの単結晶であるウイスカーが発生し、短絡の問題が発生する。このウイスカーは、速いものはめっき後数日以内で発生し、遅いものはめっき後数ヶ月で発生するなど様々である。
このSnのウイスカーの成長機構は完全には理解されていないが、Snめっき層に圧縮応力が加わると、これが駆動力となってSn原子の拡散が誘発されることによりウイスカーが成長するといわれている。
従って、Snのウイスカー発生を防止するためには、Snめっき層に圧縮応力がかからないようにする方法がある。
ここで、Snめっき層に加わる圧縮応力としては、めっきによって生じるめっき残留圧縮応力、めっき後に、基板のCuとが反応してめっきとCu基板の界面にSnと銅の合金相(Cu3SnやCu6Sn5)が形成されることによる圧縮応力の発生、めっき後の曲げ加工等により発生する圧縮応力がある。
このため、圧縮応力を低減してウイスカー発生を防止する方法として、(1)めっき条件やめっき方法の検討によるめっき残留応力の低減、(2)SnとCuの合金相が基板とめっき界面にできないように銅や銅合金基板上に下地めっきを行う、(3)Snめっき後に熱処理を行うことによる残留応力緩和、がある。
(1)の方法は、例えば、特許文献1に示されるように、パルスめっきを行うことによりSnめっきの内部応力を緩和する方法がある。しかしながら、初期のめっき残留応力を低減しても、めっき後に徐々にSnと基板の銅が反応して界面にSnと銅の合金相が形成されることによる圧縮応力が発生するために、結局ウイスカーが発生する。
(2)の方法は、例えば、非特許文献1に報告されているように、DittesらはCu基板上にNiやAg下地めっきを行うことによりCuとSnの合金層形成による応力発生が抑制されウイスカー発生が抑制されることを示している。しかしながら、めっき後の残留圧縮応力が存在すればウイスカーが発生する。従って、(1)との組合せが必要となるが、めっき後に加工がなされると圧縮応力が発生するためにウイスカーが発生する。
(3)の方法は、例えば、特許文献2に示されるように、Snめっき材を180℃〜融点温度の範囲で熱処理する方法や特許文献3に示されるようにSnーCu合金めっきを227℃以上270℃以下で15分以内の熱処理を行う方法等がある。これらの方法は、熱処理により、急速に基板―めっき界面に合金相が形成されるが加熱状態にあるため、発生する圧縮応力が急速に緩和されるとともに、一端合金相ができると合金相中のSnやCuの拡散速度は非常に遅くなるため、常温に戻した時には、合金相の成長が抑制されることになり新たな応力発生が抑制される。また、加熱により応力緩和が起こった後に、加熱後の冷却によりSnとCuの熱膨張係数差により引っ張り応力が発生するため、ウイスカー発生が抑制される。しかしながら、加工による外部圧縮応力が発生するとウイスカーが発生する。
圧縮応力の低減以外にもSn合金めっきによるウイスカー防止方法が報告されている。例えば、特許文献4にはSn-Bi合金メッキ、特許文献5にはSn-Zn合金メッキ、特許文献6にはSn-Cu合金メッキ、特許文献7にはSn-Ag合金メッキについて記載されている。Sn-Cuについてはウイスカーの抑制理由については明記されていないが、Sn-BiやSn-ZnはBiやZnがSnの拡散を抑制し、Sn-AgについてはSnめっき層にAgの合金相が形成されるためにウイスカー発生が抑制されると記載されている。しかしながら、これらの方法でも完全にウイスカー発生を抑制することは困難であり、ウイスカー発生を抑制するPbフリーのSnめっきが要望されている。
特開2003−129276 特開昭57―126992 特開2003−193289 特開2004―169073 特開2003−253470 特開2000−87204 特開2002−220682 Tin Whisker Formation-Results,Test Methods and Countermeasures,IEEE(2003)pp822―826
本発明はこのような事情に着目してなされたものであって、その目的は、ウイスカーが発生することの無いSn合金メッキ及びその製造方法を提供するものである。特に、曲げ加工等の外部応力が加わってもウイスカー発生が抑制されるSn合金メッキ及びその製造方法を提供するものである。
本発明者らは、上記目的を達成するため、鋭意研究を行なった結果、本発明を完成するに至った。本発明によれば上記目的を達成することができる。
このようにして完成され上記目的を達成することができた本発明は、Sn合金メッキに係わり、それは次のような構成としたものである。
すなわち、熱処理を行うことなく作製されてなり、Cuが3wt%以上10wt%以下であるSnとCuの合金めっきの結晶粒界に形成されるSnとCuの合金相の結晶粒界に占める長さの割合が50%以上であり、且つCuのX線源を用いたX線回折法のθ−2θ法により、2θを20°〜80°まで測定することによって得られるX線回折スペクトルのSnのピークのうち、(220)面のピーク強度I(220)と(321)面のピーク強度I(321)が下式(1)を満足することを特徴とするSnとCuの合金めっきである。
[I(220)/I0(220)+I(321)/I0(321)]/[ΣI(hkl)/I0(hkl)]≧0.8 ・・・(1)
ここで、I0(hkl)は、JCPDSカード記載の(hkl)面のピーク強度、I(hkl)は測定されたSnの(hkl)面のピーク高さを示す。
請求項2は、請求項1に記載のSn合金めっきが施されてなる銅または銅合金製品である。
本発明によれば、曲げ加工等の外部応力が加わった場合においてもウイスカーが発生することの無い優れたSn合金メッキ構造及びその製造方法を提供することが可能となり、この種技術分野にすこぶる有益な貢献を果たすものである。
Snめっきからのウイスカー発生のメカニズムは完全には把握されていないが、先にも述べたとおり、めっきに作用する圧縮応力がSn原子の拡散を誘起してウイスカーが発生すると考えられている。
従来の技術では、圧縮応力の発生を防止することに注力がなされていたが、めっきに外部から曲げ加工などの機械加工が加わると圧縮応力は避けることができず、ウイスカー発生につながってしまう。
一方、本発明者らはSn原子の拡散に着目し、鋭意研究を行なった結果、SnまたはSn合金メッキの結晶粒界にSn原子の拡散速度が遅くなる合金相を形成することによりウイスカーの発生を抑制することを見出した。
すなわち、Sn原子の拡散は、Snの結晶粒内を拡散する体拡散よりはSnの結晶粒界を拡散する粒界拡散が支配的であり、SnまたはSn合金の結晶粒界がウイスカー発生に重要な役割を果たすと考えられる。従って、SnまたはSn合金の結晶粒界にSn原子の拡散を阻害する合金相を形成すれば、ウイスカーの発生を抑制できるという考えに至ったのである。
このような合金相としては、SnとCu、SnとFe、SnとNi、SnとCo等の組み合わせを挙げることができる。すなわち、具体的には、Cu6Sn5、FeSn2、FeSn、Fe3Sn2、Ni3Sn4、Ni3Sn2、CoSn2、CoSn等である。
Sn原子の拡散を十分に阻害し、ウイスカー発生を抑えるためには、結晶粒界に形成されるSn合金相の結晶粒界の長さにしめる割合が50%以上であることが好ましい。
当然ながら、これらのSn合金相の厚みは、厚い方が好ましい。Snの合金相中のSnの拡散係数は小さいが、厚みが薄いと合金相をSnの原子が突き抜けてしまい、拡散のバリアとしての効果が低くなるからである。従ってSn合金相の厚みは、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、最も好ましくは0.2μm以上とすべきある。また、Snの合金相はなるべく連続していることが好ましい。断続して、存在する場合は、合金相が切れた部分からSnが粒界拡散していくからである。従って、基板表面からめっきの表面までつながるSnめっきまたはSn合金めっきの一本の結晶粒界全体に連続的に合金相が形成されていることが最も好ましい。さらに、ウイスカーを形成するSn原子はウイスカーから数十μm以上離れたSn原子も関与していると考えられるため、粒界全部に合金相が形成されていなくても、例えば、めっきの厚み方向と垂直な方向を横切る基板表面からめっき表面に達するめっきの結晶粒界のうち、例えばめっきの厚み方向と垂直な方向の30μmの間に1本の割合で基板表面からめっきの表面まで結晶粒界全体に連続的に合金層が形成されている結晶粒界があれば良い。
このうち、Sn合金めっきがSn-Cu合金めっきの場合や、めっきする基材がCuまたはCu合金の場合は、Sn―Cu合金中のCuや基材中のCuをSnまたはSn合金めっきの結晶粒界に拡散させることによりSnとCuの合金相を結晶粒界に形成させることができる。この場合、CuまたはCu合金基材上にCu下地めっきを行っても良い。特に基材が42アロイ(Fe―Ni合金)のような銅を含まない場合には、Cu下地めっきを行うことが有効である。
Sn-Cu合金めっきの場合は、CuはSnに固溶せずSn中のCuの拡散係数が大きいため、CuはSn-Cu合金めっきの結晶粒界に析出しようとする。このため、Sn-Cu合金めっきの結晶粒界にSn-Cu合金相が析出するが、結晶粒界に合金相を析出させるためには結晶粒界の構造が影響する。すなわち、結晶粒界のエネルギーが低い場合にはSn-Cu合金の十分な析出が行われず、ウイスカー発生を抑制することができない。また、基板にCuが含まれない場合には、Cuの供給がSn-Cu合金めっき中のCuしかないため、Sn-Cu中のCu組成が低くなれば十分な合金相を結晶粒界に析出することができない。従って、Sn―Cu合金めっき中のCu組成としては、1wt%以上である必要がある。好ましくは2wt%以上であり、最も好ましくは3wt%以上である。一方、Cuが多すぎると、Sn−Cu合金めっきの結晶粒内でCu-Su合金相の析出が起こり、結晶粒界にCuが析出しなくなり、粒界にCu−Sn合金相を形成しなくなるため、10wt%以下であることが好ましい。より好ましくは9wt%、最も好ましくは8wt%以下である。
また、Cu下地めっきを行う場合は、Cuめっきの厚さを0.1μm以上にするのが好ましい。これより薄いとCuのSnめっきまたはSn合金めっき粒界への拡散が十分行われないからである。好ましくは0.2μm以上最も好ましくは0.5μm以上である。Cuの拡散は後で述べるSnまたはSn合金めっきの結晶配向性を調整することにより自発的に形成することができるが、熱処理を行うことによってさらに合金層を多く形成することができる。
熱処理を行う場合には、処理温度は100℃以上180℃以下であることが望ましい。100℃以上でないと拡散を促進する効果が得られない。また180℃以下としたのは、CuのSn結晶内を拡散する体拡散の方が優勢となり、Cuが粒界拡散する前にSnまたはSn合金めっきと基材の界面にCuとSnの合金層が形成されるため、この層がCuの粒界拡散のバリア層として働いて、Snの結晶粒界での合金相形成を阻害するからである。また、処理時間については、10分以上60分以下が好ましい。10分以下だとCuが十分拡散せず、60分以上だと、結晶粒界に析出したCu-Sn合金相が凝集を起こし、あるCu-Sn合金の結晶に集まるため、結晶粒界に析出しているCu-Sn合金の割合がかえって減少してしまうからである。
また、SnとFe、SnとNi、SnとCoの合金相を形成したい場合には、基材上にFe、Ni、Ni-P、Coの下地めっきを行い、熱処理をおこなうか、または、Sn-Niめっき、Sn-Coめっき、Sn-Feめっきを行い熱処理を行うことにより、SnまたはSn合金めっきの結晶粒界に合金相を形成することができる。当然、これらの下地めっきと合金めっきを組み合わせて熱処理を行っても良い。熱処理温度は100℃以上180℃以下であることが好ましい。100℃以下だと拡散が十分起こらず、180℃を超えると、Cuの場合と同様に界面に合金元素の拡散バリア層が形成されるため、かえって粒界に合金層が形成されない。
これらの合金相は、Focused ion beam(FIB)装置により、Ga+イオンビームをSnまたはSn合金めっきの表面から膜厚方向に当ててめっき層を削り取ってめっきの断面を形成するときにめっきの断面から放出される二次電子像を撮ることにより、その有無を調べることができる。すなわち、Ga+を照射すると、めっき断面に現れる結晶粒の結晶の方位や結晶構造の違いにより放出される二次電子の量が異なるため、結晶粒や結晶粒界に存在する合金相毎にコントラストが異なる像が得られることから、合金相の存在の有無を確認することができる。
具体的には、SnまたはSnめっきの表面を保護するために、それらの表面にカーボン蒸着膜を厚さ約2μm成膜し、その後、FIB装置のチャンハ゛ー内にサンプルを設置して真空引きした後、加速電圧30kV、ビーム径320nm、ビーム電流約3700pAのガリウムイオンをサンプル表面(蒸着面)に垂直に照射してサンプルの膜厚方向にSnめっきまたはSn合金めっき層を切断してめっきの断面を出す。さらに、切断面に平行に加速電圧30kV、ビーム径92nm、ビーム電流約1400pAのガリウムイオンを照射することにより、断面の仕上げ加工を行った後に、加速電圧30kV、ビーム径7nm、ビーム電流約2pAのガリウムイオンを断面に照射するときに断面から放出される二次電子による二次電子像(SIM像)を撮ることによって粒界に合金相が形成されているかどうか見ることができる。なお、SIM像は、サンプル表面の法線に対してサンプルを60°傾けて撮った。
このようにして合金相の有無を観察した際に、例えば、30μm幅の領域の断面に確認できる結晶粒界の長さの合計に占める合金相の形成長さの割合が50%以上あればウイスカー発生抑制効果がえられる。この合金相の形成長さの割合は好ましくは、65%以上、最も好ましくは80%以上である。
ここで、粒界の長さと粒界に析出した合金相の長さ及び合金相の比率は具体的には次のようにして求めることができる。
図1にFIBで形成したSnめっき銅板の断面写真の一例を示す。同図1の写真に示すようにSnめっきの断面にはコントラストの差によってSnの結晶粒が見えており、さらに、結晶粒界に白く見える合金相も観察されることがわかる。結晶粒界の長さと合金相の長さを画像解析により求めるために、まず、図1のSnめっき層の部分を図2のように切り取り、図2の写真の結晶粒界に生成した白く見える合金相の上に線を引き、明るさ、コントラスト、ガンマ値を調整することにより、写真の像を消して合金相上に引いた線のみが像に残るようにする。これを図3に示す。同様にして、図2の写真の結晶粒界上に合金相上に引いたのと同じ太さの線を引き写真の像を消すことにより引いた線のみが残るようにする。これを図4に示す。これらの図を画像解析により、線のピクセル数を求め、図3のピクセル数を図4のピクセル数で割ることによって結晶粒界長さに占める合金相の長さの割合を求める。図3の場合は、ピクセル数が2907、図4はピクセル数3922であったので、このSnめっき銅板の例における合金相の占める割合は74%として求められることになる。
なお、基板が銅板や銅の下地めっきがある場合には、Snめっきと銅板、Snめっきと銅下地めっきとの間にSnとCuの合金相であるCu6Sn5が形成する。この合金相とSnめっきの粒界は基板とSnめっきの界面と同等と考え、この境界には線は引かないこととする。
また、このような結晶粒界に合金相を形成するには、まず、SnまたはSn合金めっきが(220)面と(321)面に配向していることが望ましい。すなわち、CuのX線源を用いたθ―2θ法のX線回折で、2θの範囲が20°から80°まで測定したときのSnまたはSn合金めっきの結晶面のピークのうち、(220)面と(321)面のピーク強度が(1)式を満たすことが望ましい。Snの結晶面は20°から80°では11本のピークが現れる。すなわち、(200)、(101)、(220)、(211)、(301)、(112)、(400)、(321)、(420)、(411)、(312)の面である。このうち、(200)面と(400)面は同じ面なので、(400)面は省くと基本的には10個の異なる面のピークが現れる。ここで、結晶面を(hkl)で表し、JCPDS回折データカードに記載されているSnの(hkl)面のピーク強度をI0(hkl)、測定によって得られた(hkl)面のピーク強度(ピーク高さ)をI(hkl)とすると、I(hkl)/I0(hkl)/ΣI(hkl)/I0(hkl)は、(hkl)面の配向性を表す。ここで、Σは、20°から80°に現れる(400)を除く10個の結晶面についての和を表す。I(hkl)/I0(hkl)/ΣI(hkl)/I0(hkl)は、測定されたピーク強度がJCPDS回折データカードと全く同じであれば、すなわち、配向性が全く無いならば、10本のピークについて考えているので、0.1になる。従って、ある(hkl)面のピークが強く、その面に配向していれば、0.1を超え、その面のピーク強度が弱いならば、0.1より小さくなる。つまり、(1)式は、(220)面と(321)面の配向の度合いを表しており、この値が0.5以上のときにSnまたはSnめっきの結晶粒界に合金相が形成されやすくなるのである。好ましくは、0.65以上、最も好ましくは0.8以上である。
本発明の実施例、参考例および比較例について、以下説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
(参考例)
銅板をアルカノールスルホン酸を用いたSnめっき浴に浸せきし、電流密度15A/dm 2 、めっき温度30℃で厚さ10μmのSnめっきを作製した。また、銅板を硫酸Snめっき浴に浸せきし、電流密度2A/dm 2 、めっき温度15℃で厚さ10μmのSnめっきを作製した。
これらのSnめっきをFIB(SIIナノテクノロジー株式会社製:SMI9200高性能イオン顕微鏡)を用いて、めっき断面をGa+イオン照射により作製し、断面のSIM像を撮り、Snめっきの粒界を観察した。SIM像は、倍率4500倍でSnめっき層の幅30μmにわたって撮影した。このSIM像から観察される結晶粒界の長さの合計を求め、次にこのうち占める合金相が形成されている結晶粒界の長さの合計を求め、結晶粒界全体の長さの合計との比を求めた。この断面観察は任意の3カ所について行い、それぞれの箇所で求めた結晶粒界全体の長さの合計との比の平均値を算出してそれを本めっきの結晶粒界全体の長さの合計との比とした。また、合金相の結晶をFIBを使って厚さ約100nmの薄片に加工し、透過電子顕微鏡(TEM)を用いて電子線回折を行った結果得られる回折像を解析したところ、Cu6Sn5であった。このことから、Cu基板からCuがSnめっきの結晶粒界に拡散して合金相を形成したことがわかる。
アルカノールスルホン酸Snめっき浴から作製したSnめっきの合金相の結晶粒界に占める割合は90%であった。一方、硫酸Snめっき浴から作製したSnめっきの合金相の結晶粒界に占める割合は、37%であった。
また、SnめっきをCuのX線源を用いてθ―2θ法で20°から80°までX線回折を行い、Snのピークの高さを測定し、(1)式の計算を行った。このとき、アルカノールスルホン酸Snめっき浴から成膜したSnめっきは、(1)式の値が0.99であったのに対し、硫酸Sn浴から成膜したSnめっきは、(1)式の値が0.1であった。
これらのSnめっきを、温度85℃、相対湿度85RH%の恒温恒湿試験装置内に入れて500時間保持した。その後、Snめっきの表面をSEM(走査型電子顕微鏡)で、倍率100倍で観察し、めっき表面の任意の5カ所の0.5mm×1mmの領域に発生したウイスカーの本数を測定し、平均値を求めた。その結果、結晶粒界の合金相が多く生成した有機酸Snめっき浴から作製したSnめっきからはウイスカーは全く認められなかった。一方、合金相があまり形成しなかった硫酸Snめっき浴から作製したSnめっき表面からは10本のウイスカーが認められた。
以上の結果から、Snめっきの結晶が(220)面または(321)面に配向しているときにSnめっきの結晶粒界にSnとCuの合金相が多く形成され、ウイスカー発生が効果的に抑制されることがわかる。
(実施例)
アルカノールスルホン酸Snのめっき浴にアルカノールスルホン酸銅を添加し、その添加量を変えることにより、42アロイ基板上にCu組成が異なるSn-Cu合金めっきを厚さ10μm成膜した。このとき2.5A/dm 2 と5A/dm 2 の電流密度でめっきした。
めっき後にEDX(エネルギー分散型蛍光X線分析装置)によりSn―Cu合金めっき中の銅の組成を分析した。また、参考例と同様にSn-Cuめっき断面をFIBにより観察し、結晶粒界に占める合金相の割合を測定した。さらに、Sn−Cu合金めっきの配向性についてもX線回折により(1)式を用いて求めた。
さらに、参考例と同様に85℃、85RH%の恒温恒湿試験機に500時間放置し、ウイスカ発生本数をSEMで観察した(観察領域は0.5mm×1mm)。
結果を表1に示す。No.3〜6の本発明の好ましい範囲にあるSn-Cu合金めっきは、ウイスカーの発生は認められなかった。No.1,2の、Cu組成が1wt%と2wt%のものについてはコブ状の突起が数個発生した。No.7はCu組成は十分だが、Sn-Cuめっきの(220)と(321)に配向していないため結晶粒界にCuとSnの合金相が十分に形成されずに多少のウイスカーが発生した。またNo.8は、配向はしているが、Cuの量が少ないため、結晶粒界の合金相形成が十分ではなく、多少のウイスカーが発生した。
Figure 0005059292
(実施例)
2cm×10cm×厚さ0.3mmの42アロイの表面に硫酸銅めっき浴中でCuめっきを成膜したあとに、アルカンスルホン酸Snめっき液中で電流密度3A/dm 2 でSnめっきを8μmの厚さになるように成膜して、42アロイ、Cuめっき、Snめっきの3層めっきを作製した。Cuめっきの膜厚は、0μm、0.05μm、0.1μm、0.25μm、0.6μmの4種類とした。
また、同様に、42アロイの表面に硫酸銅めっき浴中でCuめっきを成膜したあとに、アルカンスルホン酸Snめっき浴にアルカンスルホン酸銅を添加した浴中で電流密度3A/dm2でめっき膜厚が8μmとなるようにめっきをおこなうことにより、42アロイ、Cuめっき、Sn-Cu合金めっきの3層めっきを作製した。Cuめっきの膜厚は、0.25μmとした。
参考例と同様にこれらのめっき材の断面をFIBで作製して断面観察することにより、粒界に生成したSn-Cuの合金相の割合を求めた。さらに、X線回折により、めっきの配向性も調査した。
これらのめっき材を90℃のL字型に曲げて、参考例と同様に85℃、85RH%、500時間の条件で恒温恒湿試験を行った。その後、L字型に曲げた内側の1mm×0.5mmの領域をSEM(倍率100倍)で観察した。
結果を表2に示す。Cuめっき層が無いものは、Cuの供給が無いために、多くのウイスカー発生が認められた。Cuめっき層の厚さが0.05μmのものは、Cuの供給が不十分であるために粒界のSn-Cu合金相形成が十分でなく、僅かにウイスカーが発生した。Cuめっき厚さが0.1μm以上のものは、0.1〜0.25ではノジュールが発生しているが、ウイスカーの発生は認められなかった。
Figure 0005059292
FIBで形成したSnめっき銅板の断面写真の一例を示す。 図1の写真より切り取ったSnめっき層の部分を示す。 図2の写真の結晶粒界に生成した合金相の上に線を引いて得られた図を示す。 図2の写真の結晶粒界上に線を引いて得られた図を示す。

Claims (2)

  1. 処理を行うことなく作製されてなり、Cuが3wt%以上10wt%以下であるSnとCuの合金めっきの結晶粒界に形成されるSnとCuの合金相の結晶粒界に占める長さの割合が50%以上であり、且つCuのX線源を用いたX線回折法のθ−2θ法により、2θを20°〜80°まで測定することによって得られるX線回折スペクトルのSnのピークのうち、(220)面のピーク強度I(220)と(321)面のピーク強度I(321)が下式(1)を満足することを特徴とするSnとCuの合金めっき。
    [I(220)/I0(220)+I(321)/I0(321)]/[ΣI(hkl)/I0(hkl)]≧0.8 ・・・(1)
    ここで、I0(hkl)は、JCPDSカード記載の(hkl)面のピーク強度、I(hkl)は測定されたSnの(hkl)面のピーク高さを示す。
  2. 請求項1に記載のSn合金めっきが施されてなる銅または銅合金製品。
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