(1)画像形成装置例
図1は、本発明に係る画像形成装置例の概略構成図である。
本実施例に係る画像形成装置は、電子写真方式を用いて、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4色のトナー像を重ね合わせることでフルカラー画像を得るカラープリンタである。プロセススピードは90mm/sec、一分間の印字枚数はUS−LTR紙で16枚(以下、16ppm)、一枚目プリント(First Page Out)までの時間(FPOT)は約15秒である。しかしながら、プロセススピード、一分間の印字枚数、FPOTは当然これらに限定されるものではない。
Y・C・M・Kはそれぞれイエロー・シアン・マゼンタ・ブラックの色トナー像を形成する4つの電子写真プロセスカートリッジであり、下から上に順に配列してある。各カートリッジY・C・M・Kにおいて、1は像担持体としての感光体ドラム(以下、ドラムと記す)、2は帯電手段としての帯電ローラ、3は静電潜像を顕像化するための現像手段としての現像ローラ、4はクリーニング手段としてのクリーニングブレードである。各カートリッジY・C・M・Kはこれらの機器1〜4等を一つの容器にまとめた、いわゆるオールインワンカートリッジを使用している。
カートリッジYの現像器にはイエロートナーを、カートリッジCの現像手段にはシアントナーを、カートリッジMの現像器にはマゼンタトナーを、カートリッジKの現像器にはブラックトナーを、それぞれ充填してある。
ドラム1に露光を行うことにより静電潜像を形成する光学系5が上記4色のカートリッジY・C・M・Kに対応して設けられている。光学系5としてはレーザ走査露光光学系であるレーザビームスキャナを用いている。
各カートリッジY・C・M・Kにおいて、ドラム1が矢印の反時計方向に所定の速度にて回転駆動され、その周面が、帯電ローラ2により、本例では一様に負帯電される。そして、そのドラムの帯電処理面に対して、光学系5より、画像データに基づいた走査露光がなされることにより、ドラム表面に走査露光画像に対応する静電潜像が形成される。画像データは、パーソナルコンピュータ・イメージリーダ・ファクシミリ等の外部ホスト装置105(図5)側からプリンタ側の制御回路部100に入力する。
そして、その静電潜像が現像ローラ3によりトナー像として現像される。すなわち、不図示のバイアス電源より現像ローラ3に印加される現像バイアスを、帯電電位と潜像(露後部)電位の間の適切な値に設定することで、負極性に帯電されたトナーがドラム1上の静電潜像に選択的に付着して反転現像が行われる。
このようにして、各カートリッジY・C・M・Kのドラム1には、それぞれ、イエロートナー像、シアントナー像、マゼンタトナー像、ブラックトナー像が所定の制御タイミングにて形成される。
各カートリッジY・C・M・Kのドラム1上に形成された上記の色トナー像は、各ドラム1の回転と同期して略等速で、矢印の時計方向に回転する中間転写体としてのベルト6上へ所定の位置合わせ状態で順に重畳されて一次転写される。これにより、中間転写ベルト6上にフルカラートナー画像が合成形成される。
中間転写ベルト6は、駆動ローラ7、二次転写ローラ対向ローラ14、テンションローラ8の3本のローラに懸回して張架したエンドレスベルトであり、駆動ローラ7によって回転駆動される。
各カートリッジY・C・M・Kのドラム1上から中間転写ベルト6上へのトナー像の一次転写手段としては、一次転写ローラ9を用いている。一次転写ローラ9に対して、不図示のバイアス電源より、トナーと逆極性の一次転写バイアスを印加することにより、各カートリッジY・C・M・Kのドラム1上から中間転写ベルト6に対してトナー像が一次転写される。
各カートリッジY・C・M・Kにおいて、ドラム1上から中間転写ベルト6への一次転写後、ドラム1上に残った転写残トナーは、クリーニングブレード4により除去される。本実施例においては、クリーニングブレード4として、ウレタンブレードを用いている。
上記動作を中間転写ベルト6の回転に同調して、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のカートリッジY・C・M・Kにおいて行なわせて、中間転写ベルト6上に各色の一次転写トナー画像を順次重ねてフルカラートナー画像を形成する。単色のみの画像形成(単色モード)時には、上記動作は目的の色についてのみ行われる。
また、記録材供給部となる記録材カセット10にセットされた記録材(転写材)Pは、給送ローラ11により給送される。そして、レジストローラ12により、所定の制御タイミングで、二次転写ローラ対向ローラ14に懸回されている中間転写ベルト6部分と二次転写手段としての二次転写ローラ13とのニップ部に搬送される。二次転写ローラ13には不図示のバイアス印加手段によりトナーと逆極性のバイアスが印加される。これにより、中間転写ベルト6上に形成された一次転写フルカラートナー画像が、記録材P上に一括転写される。
二次転写後に中間転写ベルト6上に残った二次転写残トナーは、中間転写ベルトクリーニング手段としてのクリーニングブレード15により除去される。本実施例においては、ドラム1のクリーニングブレード4と同様、ウレタンブレードにより中間転写ベルト6のクリーニングを行っている。
以上が、記録材にトナー像を形成する画像形成部である。記録材P上に二次転写されたフルカラートナー画像は、定着手段(定着部)としての定着装置Fを通過することで、記録材P上に溶融定着(混色)され、排紙パス16を通って排紙トレイ17に送り出されて画像形成装置の出力画像となる。
(2)定着装置F
図2は本実施例における定着装置Fの拡大横断側面模型図、図3は正面模型図、図4は縦断正面模型図である。この定着装置Fは基本的には特開平4−44075〜44083、4−204980〜204984号公報等に開示の、フィルム(ベルト)加熱方式、加圧用回転体駆動方式(テンションレスタイプ)の像加熱装置である。
20は加熱部材としての定着フィルム(以下、フィルムと記す)であり、金属製の基層上に、弾性層、離型性層を形成した、可撓性を有する、外径18mmの円筒状部材(エンドレスベルト)である。より具体的には、図6の層構成模型図のように、SUSで形成した厚さ30μmの円筒状フィルムを基層20aとし、その外周面に、弾性層20bとして、厚さ200μmのシリコーンゴム層をリングコート法により形成している。さらに、その弾性層20bの外周面に、離型性層20cとして、厚さ30μmのPFA樹脂チューブを被覆してある。
シリコーンゴム層20bには、極力熱伝導率の高い材質を用い、フィルム20の熱容量を小さくすることが、温度立ち上げの観点からは望ましい。本実施例においては、熱伝導率が約4.2×10−1W/m・Kと、シリコーンゴムとしては熱伝導率が高い部類に属する材質を用いた。このようにして形成したフィルム20の熱容量を測定したところ、28.5J/Kであった。
21は加圧部材としての加圧ローラであり、ステンレス製の芯金21aに、射出成形により厚み約3mmのシリコーンゴム層21bを形成し、その上に、厚み約40μmのPFA樹脂チューブ21cを被覆した、外径20mmの弾性ローラである。このようにして形成した加圧ローラの熱容量は204J/Kであった。
この加圧ローラ21は、芯金21aの両端部を装置フレーム30の奥側と手前側の側板31・32間に軸受部材33・34を介して回転自由に保持させて配設してある。
22は加熱体支持部材としての、横断面略半円弧状樋型の耐熱性・剛性を有するヒーターホルダ(以下、ホルダと記す)である。ホルダ22は、耐熱性の高い液晶ポリマー樹脂で形成し、後述する加熱体としての定着ヒーター(以下、ヒーターと記す)23を保持し、フィルム20の回転をガイドする役割を果たす。本実施例においては、液晶ポリマーとして、デュポン社のゼナイト7755(商品名)を使用した。ゼナイト7755の最大使用可能温度は約270℃である。フィルム20はこのホルダ22にルーズに外嵌させてある。
26は横断面下向きU字形のステーであり、ホルダ22の内側に配設してある。25はこのステー26の両端部の外方突出腕部26aにそれぞれ嵌着した端部ホルダ、24はこの端部ホルダ25と一体のフランジ部である。
加圧ローラ21の上側に、上記のフィルム20・ホルダ22・ヒーター23・ステー26・端部ホルダ25の組立て体(加熱アセンブリ)を、ヒーター23側を下向にして加圧ローラ21に並行に配列する。そして、手前側と奥側の端部ホルダ25と手前側と奥側の固定のばね受け部材27との間に加圧ばね28を縮設することで、ステー26に押し下げ力を作用させている。これにより、ホルダ22の下面のヒーター23がフィルム20を挟んで加圧ローラ21に弾性層21bの弾性に抗して圧接してフィルム20と加圧ローラ21との間に、記録材搬送方向において所定幅の定着ニップ部Nが形成される。
加圧ローラ21は定着モータMにより、図2において矢印の反時計方向に回転駆動される。この加圧ローラ21の回転駆動による該加圧ローラ21とフィルム20の外面との定着ニップ部Nにおける摩擦力で円筒状のフィルム20に回転力が作用する。その結果、該フィルム20が内面を定着ニップ部Nにおいてヒーター23の下面に密着して摺動しながら矢印の時計方向にホルダ22の外回りを回転する(加圧ローラ駆動方式)。フィルム20は、加圧ローラ21の回転周速度にほぼ対応した周速度をもった回転状態となる。手前側と奥側のフランジ24は、回転するフィルム20がホルダ22の長手に沿って手前側または奥側に寄り移動したとき寄り移動側のフィルム端部を受け止めてフィルム20の寄り移動を規制する役目をしている。フィルム20の内面には潤滑グリース(潤滑剤)が塗布され、ヒーター23・ホルダ22とフィルム20との摺動性を確保している。
プリントスタート信号に基づいて、加圧ローラ21が回転駆動され、それに伴って円筒状のフィルム20が従動回転状態になる。また、ヒーター23に通電がなされ、該ヒーター23が昇温して所定の目標温度に立ち上げられて温調される。この状態において、フィルム20と加圧ローラ21との間の定着ニップ部Nに未定着トナー像tを担持した記録材Pが導入される。定着ニップ部Nにおいて記録材Pのトナー像担持面側がフィルム20の外面に密着してフィルム20と一緒に定着ニップ部Nを挟持搬送されていく。
この挟持搬送過程において、ヒーター23の熱がフィルム20を介して記録材Pに付与され、記録材P上の未定着トナー像tが記録材P上に加熱・加圧されて溶融定着される。定着ニップ部Nを通過した記録材Pはフィルム20から曲率分離され、不図示の定着排紙ローラで排出される。
ここで、本例の画像形成装置において、記録材Pの通紙・搬送は、大小各種幅サイズの記録材の何れも記録材の幅中心を基準とする所謂「中央基準搬送」である。記録材幅は記録材の搬送方向に直交する方向の寸法である。図3・図4において、Oはその中央基準搬送線(仮想線)である。Aはヒーター23の有効加熱領域幅、Bは最大通紙幅(装置に通紙できる最大幅の記録材の通紙部領域幅)、Cは最小通紙幅(装置に通紙できる最小幅の記録材(所定の最小サイズの記録材)の通紙部領域幅)である。ヒーター23の有効加熱領域幅Aは最大通紙幅Bと同じか、少し広く設定されている。本例の画像形成装置において、最大通紙幅Bの記録材(以下、最大サイズ紙と記す)はLTRサイズ紙(215.9mm×279.4mm縦送り)である。
最大サイズ紙の幅よりも小さい幅の記録材を小サイズ紙と記す。Dは小サイズ紙を通紙した時の非通紙部領域幅(最大通紙幅Bと小サイズ紙通紙幅との差領域の幅)である。図3・図4の非通紙部領域幅Dは、装置に通紙できる最小幅の記録材を通紙した時の幅である。非通紙部領域幅Dは、通紙される小サイズ紙の幅の大小により異なる。
図5はヒーター23の構造と制御系統の説明図である。本実施例におけるヒーター23は、窒化アルミの基板上に抵抗発熱体を形成し、その上に耐圧ガラスによるガラスコートを施したセラミックヒーターである。より具体的には、このヒーター23は、記録材搬送方向と直交する方向に細長い窒化アルミ製の基板aを有する。この基板aの表面側(一方面側)に、長手に沿って、銀・パラジウム合金を含んだ導電ペーストをスクリーン印刷法によって均一な厚さの細膜状(線状或いは帯状)に塗布して抵抗発熱体bを形成してある。また、この抵抗発熱体bに対する給電用パターンとして、銀ペーストのスクリーン印刷によって、第1と第2の給電電極部c・dと延長電路部e・fを形成してある。上記の抵抗発熱体bと延長電路部e・fの保護と絶縁性を確保するために、それらの上に保護層としてガラスコートgが形成してある。抵抗発熱体bの長さ範囲がヒータ23の有効発熱領域幅Aに対応している。
また、基板aの裏面側(他方面側)には、第1の温度検知素子と第2の温度検知素子としてのメインサーミスタTH1とサブサーミスタTH2、および安全素子としてのサーモスイッチTHSが接触配設される。メインサーミスタTH1とサーモスイッチTHSは、最小通紙幅範囲の内側に対応するヒ−ター部分に配置される。サブサーミスタTH2は、小サイズ紙が通紙されたときの非通紙部に対応するヒーター部分の温度を検知するように、最小通紙幅範囲の外側(最小サイズ記録材が通過する領域外)で、最大通紙幅範囲の内側に配置される。本実施例では、最大通紙幅範囲の端部寄り位置に対応するヒーター部分に配置している。
上記のヒーター23は抵抗発熱体bを形成具備させた表面側を外側に露呈させてホルダ22に固定して支持させてあり、そのヒーター23の表面側にフィルム20の内面が接して摺動移動する。
ヒーター23の第1と第2の給電電極部c・dにはヒーター23に装着した給電用コネクタ35を介してAC電源101とトライアック102を含む給電回路から給電される。サーモスイッチTHSはこの給電回路に直列に接続してある。ヒーター23は第1と第2の給電電極部c・d間に給電されることで、抵抗発熱体bの全長部が発熱して、有効発熱領域幅Aのヒーター部分が迅速急峻に昇温する。
そのヒーターの昇温がメインサーミスタTH1とサブサーミスタTH2のそれぞれによって検知される。メインサーミスタTH1による検知温度の電気的アナログ情報がA/D変換器103に入力し、デジタル化されて、制御手段(電力制御部・搬送制御部)としての制御回路部(CPU)100に入力する。また、サブサーミスタTH2による検知温度の電気的アナログ情報がA/D変換器104に入力し、デジタル化されて、制御回路部100に入力する。
制御回路部100は、メインサーミスタTH1から入力する検知温度に関する電気的情報が所定の目標温度に対応する電気的情報に維持されるように、給電回路のトライアック102を制御して、ヒーター23への通電を制御(電力供給制御)する。この通電制御は、例えばAC電圧を位相制御または波は数数制御することにより行われる。これにより、通紙する記録材の幅サイズの大小にかかわらず、通紙部に対応するヒーター部分の温度が所定の目標温度に温調される。
サブサーミスタTH2は、小サイズ紙を通紙した場合の非通紙部に対応するヒーター部分の温度を検知するために配設してある。制御回路部100は、サブサーミスタTH2から入力する検知温度に関する電気的情報から、小サイズ紙を通紙した場合の非通紙部に対応するヒーター部分の非通紙部昇温状態をモニターしている。
サーモスイッチTHSは、制御回路部100やトライアック102の故障によりヒーターへの通電が無制御状態に陥って通電が連続化することで、ヒーター温度が許容以上の過加熱状態になったときに電路遮断する動作をする。
(3)スループットダウン制御
本実施例において、メインサーミスタTH1の検知温度に基づく、ヒーター23の目標温度温調制御は、プリント枚数を重ねることによる加圧ローラ温度の上昇を考慮し、1ジョブのプリント枚数に応じて複数の段階に変化させる。
また、小サイズ紙を通紙した場合の非通紙部昇温の対策として、サブサーミスタTH2により非通紙部の温度上昇を検知する。そして、メインサーミスタTH1とサブサーミスタTH2の温度差が所定温度(以下、スループットダウン検知温度と記す)に到達すると、スループットを低下させる制御(定着ニップ部へ進入する先行する記録材と後続の記録材の間隔を広げる制御)を行なっている。以下に詳細を述べる。
図7に、コールドスタートからの連続通紙時(複数枚の記録材を連続してプリントする場合)におけるフィルム20の温度と、加圧ローラ21の温度及び目標温度の推移を示す。ここで、コールドスタートとは、加圧ローラ21の温度が室温の状態の時からプリント動作をスタートさせた場合である。
図7のグラフ中、縦軸は温度を示し、横軸はプリント枚数を示している。加圧ローラ温度は、プリント開始から60枚目付近まで徐々に上昇し、61枚目以降は120℃付近で飽和する傾向にある。一方、フィルム温度は、プリント開始数枚で140℃付近まで一気に上昇し、その後徐々に下がっていく傾向にある。これは、加圧ローラ温度の昇温具合を考慮して、ヒーター23の温調目標温度を、Zone1→Zone2→Zone3→・・・のように、プリント枚数に応じて下げているためである。また、加圧ローラ温度が飽和し始めた60枚目以降もヒーター23の温調目標温度を下げているのは、フィルム20に比べて加圧ローラ21の熱容量が大きい為、蓄熱効果により加圧ローラ表面だけでなく内面も含めた系全体が暖まるのを想定しているからである。
以上より、ヒーター23の温調目標温度は通紙枚数に応じて、Zone1〜5のように5段階に制御されている。
図8に、従来の、小サイズ紙を通紙した際の、スループットダウン検知温度ΔTを示す。グラフ中、縦軸は温度を示し、横軸はプリント枚数(Zone)を示している。各目標温度に対して一律Δ50℃となるように、スループットダウン検知温度ΔTが設定されている。実際は、上記ヒーター23の温調目標温度になるようにメインサーミスタ値を制御するため、スループットダウン検知温度ΔTはメインサーミスタTH1とサブサーミスタTH2との温度差となる。
また、スループットダウン方法は、プリント中にサブサーミスタTH2の温度が目標温度+スループットダウン検知温度ΔTに達した場合に、次の紙の給紙を遅らせて、スループットをダウンさせる(16ppm→4ppm)。これにより、給紙タイミングを遅らせ、紙間を広げることで、非通紙部の昇温をできるだけ緩和させるようにする。
なお、上述した通紙枚数による目標温度制御、スループットダウン制御方法は、特にこれらに限定されるものではない。
しかしながら、上述したような従来の制御方法では、加圧ローラ21の温度によっては、予想を越える非通紙部昇温が発生してしまう場合がある。このような非通紙部昇温が発生した直後に、最大サイズ紙(この場合ではLTRサイズ)を通紙すると、非通紙部の昇温が発生している定着ニップ部では、記録材への熱供給が過多になる。これにより、定着ニップ部内での記録材上のトナー像がフィルム20から分離せずに、フィルム1周後に記録材上にオフセット画像として現れるホットオフセットが発生してしまう。
上述したような非通紙部昇温後の大幅紙のホットオフセットは、加圧ローラ21が暖まったZone3以降において、非通紙部の昇温がなかなか緩和されないため、顕著に発生する。反対に、加圧ローラ温度が比較的低いZone1,2では、非通紙部の昇温が比較的早く緩和されるため、ほとんど発生しない。
本実施例に係る定着装置Fでは、上述した認識に基づき、小サイズ紙を通紙した際のスループットダウン検知温度ΔT、つまり、メインサーミスタTH1とサブサーミスタTH2の温度差を通紙枚数(Zone)に応じて変更する温度制御を行なう。これにより、上記ホットオフセットを防止した装置を提供できるようになる。
以下、本発明の大きな特徴である温度制御の構成について図9〜12を参照して説明する。
図9・図10は、本実施例における、プリント枚数(Zone)に応じた、スループットダウン検知温度制御を示している。なお、図中に示されるプリント枚数は、コールド状態(加圧ローラ21の温度が室温の状態)から連続プリントした場合のプリント枚数を示している。加圧ローラ温度が暖まっていく、つまりプリント枚数が増えていくにつれて、スループットダウン検知温度ΔTが小さく、つまり、メインサーミスタTH1とサブサーミスタTH2の温度差が小さくなっていく。
また、図11は、上記温度差を従来例と比較したものである。従来例と比較すると、上記温度差は、加圧ローラ21が暖まっていく、つまりプリント枚数が増えるにつれて差が大きくなっていくのが分かる。
<実験例>
以下、本実施例の構成の定着装置と従来の加熱装置との比較実験の結果について述べる。
比較例として用いた従来の定着装置は、上述したように、プリント枚数(Zone)によらず常に一定のスループットダウン検知温度ΔT=Δ50℃でスループットダウン制御を行なうものである。上記2種類の制御の定着装置について、各Zoneのホットオフセットレベルを確認した。図12に実験結果を示す。
実験方法は、コールド状態から最大サイズ紙(LTR)の記録材を各Zoneに入るまで連続通紙し、続けて小サイズ紙(A5縦送り)を通紙し、スループットダウンモードに入るまで通紙する。その後、再び最大サイズ紙(LTR)を通紙し、オフセットレベルを確認する。
Zone1,2の時は、加圧ローラ21が暖まっていないため、何れもオフセットが発生しない。しかし、加圧ローラ温度が飽和するZone3以降は、比較例の方はオフセットが発生してしまう。一方、本実施例の方は加圧ローラ温度が暖まるにつれて、スループットダウン検知温度ΔTを小さくしているため、加圧ローラ21の昇温による非通紙部の昇温を抑制することができ、小サイズ紙通紙後の大サイズ紙のホットオフセットは発生しない。
以上、本実施例における大きな特徴である、スループットダウン制御について説明をした。
本実施例の大きな特徴は、上述した認識に基づき、小サイズ紙を通紙した際のスループットダウン検知温度ΔT、つまり、メインサーミスタTH1とサブサーミスタTH2の温度差を通紙枚数(Zone)に応じて変更する温度制御を行なうことである。即ち、前記所定の温度差が、連続プリント中のプリント枚数の増加に伴って小さくなるように設定されている。これにより、ホットオフセット防止し、小サイズ通紙における画像品位の悪化を防止した像加熱装置及び画像形成装置を提供できるようになる。
本実施例は先に説明をした実施例1に関する他の例であり、画像形成装置の構成等は実施例1におけるものと同様である。
実施例1では、小サイズ紙を通紙した際のスループットダウン検知温度ΔT、つまり、メインサーミスタTH1とサブサーミスタTH2の温度差を通紙枚数(Zone)に応じて変更することで、ホットオフセットを防止した。
しかしながら、上記非通紙部昇温時に、フィルム20の高温・高加圧環境下での連続的な回転によって、潤滑グリースの粘性劣化が生じ、更には、フィルム回転トルクの上昇による回転安定性不良(スリップ、異音)などの不具合が発生してしまう場合もある。
本現象は、特に、低速時に顕著に発生する傾向にある。なお、一般的に定着速度は、厚紙や光沢紙など、熱容量が大きな記録材や、高光沢度を要求される記録材を定着させる場合、通常の速度より遅い速度(例えば1/2速)で定着し、時間を掛けて十分に熱を与え、定着性や高光沢度を達成させるようにしている。
本実施例においては、小サイズ紙を通紙した際のスループットダウン検知温度ΔT、つまり、メインサーミスタTH1とサブサーミスタTH2の温度差を定着速度に応じて変更する。即ち、前記定着部における搬送速度を複数有しており、前記所定の温度差が前記定着部の搬送速度に応じて設定されることを特徴とする。これにより、上記フィルム回転トルクの上昇によるフィルム回転安定性不良を防止することができる。
以下、本実施例における温度制御について図13〜15を参照して説明する。図13は、本実施例における、プリント枚数(Zone)及び定着速度に応じた、スループットダウン検知温度(メインサーミスタとサブサーミスタの温度差)を示している。比較のため、従来例、実施例1の値も載せている。なお、実施例1と同様、プリント枚数は、コールド状態(加圧ローラ21の温度が室温の状態)から連続プリントした場合のプリント枚数を示している。
図13において、実施例1と同様、加圧ローラ温度が暖まっていく、つまりプリント枚数が増えていくにつれて、スループットダウン検知温度が小さく、つまり、メインサーミスタTH1とサブサーミスタTH2の温度差が小さくなっていく。また、図13・図14のように、本実施例では、定着速度が遅くなると、上記温度差が小さくなっているのが分かる。
<実験例>
以下、本実施例に係る定着装置と従来の定着装置との比較実験の結果を述べる。
比較例として用いた定着装置は、実施例1の温度制御を行なう定着装置及び、プリント枚数(Zone)、定着速度によらず常に一定のスループットダウン検知温度(Δ50℃)でスループットダウン制御を行なうものである。この3種類の制御の定着装置について、小サイズ通紙時の異音発生有無を比較した。図15に実験結果を示す。
実験方法は、各速度において、コールド状態から最大サイズ紙(LTR)の記録材を各Zoneに入るまで連続通紙し、続けて小サイズ紙(A5縦送り)をスループットダウンモードに入るまで通紙し、非通紙部が昇温した時の異音レベルを確認する。
比較例及び実施例1の構成については、定着速度が遅い時(1/2速)に異音が発生する。特に比較例の方は、加圧ローラが暖まっている時に、顕著に発生する傾向にある。
一方、本実施例においては、低速時に上記スループットダウン検知温度を小さくしているため、非通紙部の昇温を抑制することができ、定着速度、通紙枚数によらず異音は発生しない。また、実験結果には記載していないものの、実施例1で確認したホットオフセットについても、当然ながら発生しないことは確認済である。
以上、本実施例における大きな特徴である、スループットダウン制御について説明をした。
本実施例の大きな特徴は、上述した認識に基づき、小サイズ紙を通紙した際のスループットダウン検知温度ΔT、つまり、メインサーミスタTH1とサブサーミスタTH2の温度差に応じて変更することである。これにより、フィルム回転トルクの上昇による回転安定性不良(異音、スリップ)及びホットオフセットを防止し、安定した品位の像加熱装置及び画像形成装置を提供できるようになる。
本実施例は先に説明をした実施例1、2に関する他の例であり、画像形成装置の構成等は先の実施例におけるものと同様である。
実施例2では、小サイズ紙を通紙した際のスループットダウン検知温度ΔT、つまり、メインサーミスタTH1とサブサーミスタTH2の温度差を定着速度及び通紙枚数(Zone)に応じて変更する。これにより、フィルム回転トルクの上昇による回転安定性不良(異音、スリップ)及びホットオフセットを防止した。
しかしながら、定着速度が1/1速(例えば普通紙)で小サイズ紙を通紙し、続けて、定着速度が1/2速(例えば厚紙)の紙を通紙した場合、非通紙部が昇温している為に、上述したフィルムの回転安定性不良(異音、スリップ)が発生してしまうことがある。
上記不具合は、定着速度が1/1速から1/2速に変わる際の待ち時間が、一定時間以上あれば、非通紙部昇温が緩和されるため、問題とはならない。
本実施例の大きな特徴は、スループットダウン検知温度を、次に通紙する紙の種類(定着速度)に応じて変更することにより、定着速度が切り替わった直後も、上記フィルム回転トルクの上昇によるフィルム回転安定性不良を防止することである。即ち、先行する記録材の前記定着部における搬送速度と後続の記録材の前記定着部における搬送速度が異なる場合、先行する記録材を前記定着部で搬送する際の前記所定の温度差を、それぞれの搬送速度に応じて設定されている前記所定の温度差のうち小さいほうに設定することを特徴とする。
以下、本実施例における温度制御について、表3を参照して説明する。
図16は、本実施例における、連続プリント時における定着速度の切り替わりに応じた、スループットダウン検知温度(メインサーミスタとサブサーミスタの温度差)を示している。
図16において、ケース1の場合、つまり定着速度が1/1速から1/2速に変わる際のスループットダウン検知温度は、次の紙の定着速度に応じたスループットダウン検知温度を現在通紙の紙の温度に適用する。
ケース2の場合、つまり、定着速度が1/2速から1/1速に変わる際のスループットダウン検知温度は、変更しない。すなわち、次の紙のスループットダウン検知温度が前の紙よりも低い場合に、前の紙のスループットダウン検知温度を低い方にそろえるようにする。
これにより、定着速度が1/1速から1/2速に連続的に切り替わった場合における、非通紙部の昇温をできるだけ抑え、フィルム回転トルクの上昇による回転安定性不良(異音、スリップ)及びホットオフセットを防止する。
以上、本実施例1〜3について説明をした。なお、前述した実施例では、コールドスタート(加圧ローラ21の温度が室温)の状態からの連続プリントを行った場合について説明したが、特にこれに限定されるものではない。例えば、間欠プリント時は以下に示す制御を行っても実施例1から3と同様の効果が得られる。
例えば、間欠プリント時は、プリントの間隔を測定するタイマー等でプリント間隔を測定する。そして、測定結果が所定値以下の場合には、間欠プリントの枚数を連続プリント時の枚数カウントと同様にカウントし、連続プリント時と同様の温調制御を行なう。
一方、プリント間隔が所定値より大きい場合は、サーミスタTH1・TH2でヒーター23の温度を検知し、その検知結果に応じて、目標温度(Zone)を変更する。これにより、加圧ローラ21の温度上昇を抑制することが可能となり、間欠プリント時も実施例1及び2と同様の効果が得られる。
また、前述した実施例では、カラー画像形成が可能な画像形成装置を例示している。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、モノクロ画像形成が可能な画像形成装置であっても良く、該画像形成装置における定着装置に本発明を適用することにより同様の効果を得ることができる。
また、前述した実施形態では、画像形成装置としてプリンタを例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、複写機、ファクシミリ装置等の他の画像形成装置や、或いはこれらの機能を組み合わせた複合機等の他の画像形成装置であってもよい。また、記録材担持体を使用し、該記録材担持体に担持された記録材に各色のトナー像を順次重ねて転写する画像形成装置であっても良く、該画像形成装置における定着装置に本発明を適用することにより同様の効果を得ることができる。
(その他)
1)実施例の定着装置において、加熱部材としてのフィルム20は加圧ローラ駆動方式としたが、エンドレスベルト状のフィルムを駆動ローラとテンションローラによって張架して駆動ローラによって駆動する構成にすることもできる。
また、加熱部材としてのフィルム20は、ロール巻きにした長尺の有端部材にし、これを加熱体を経由させて繰り出し走行移動させる装置構成にすることもできる。
2)加熱体23はセラミックヒーターに限られるものではなく、他の各種ヒーターを使用できる。例えば鉄板等の電磁誘導発熱部材を加熱体23とすることもできる。
3)加熱体23は必ずしも定着ニップ部Nに位置していなくてもよい。たとえば、加熱体23を定着ニップ部Nよりもフィルム移動方向上流側に位置させて配設する装置構成にすることもできる。
4)フィルム20の加熱形態は内部加熱方式に限られず、外部加熱方式とすることもできるし、フィルム自体を電磁誘導発熱させる加熱方式等にすることもできる。
5)加圧部材もローラ体に限られず、回動するエンドレスベルト体等の形態にすることができる。
6)加熱部材はフィルムの形態に限られず、剛性のある円筒状部材あるいはローラ状部材の形態であってもよい。
7)像加熱装置及び画像形成装置の記録材の通紙基準は片側通紙基準であってもよい。
F・・定着装置(像加熱装置)、20・・定着フィルム(加熱用回転体)、21・・加圧ローラ(加圧用回転体)、22・・ヒーターホルダ(ガイド部材)、23・・ヒーター(加熱体、加熱手段)、N・・定着ニップ部、P・・記録材、t・・トナー像、THI・TH2・・サーミスタ(温度検知素子)、100・・制御回路部(CPU)、101・・AC電源、102・・トライアック、103・104・・トライアック