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JP4976221B2 - 可変容量型ベーンポンプ - Google Patents

可変容量型ベーンポンプ Download PDF

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Description

本発明は、例えば車両のパワーステアリング装置に適用される可変容量型ベーンポンプの改良に関する。
例えば車両のパワーステアリング装置に適用される従来の可変容量型ベーンポンプとしては、例えば以下の特許文献1に記載されたものが知られている。
この可変容量型ベーンポンプは、ほぼ有底円筒状に形成されたフロントボディの内部収容空間の内周面に嵌着されたアダプタリングと、該アダプタリングの内周側に揺動可能に収容配置されたカムリングと、該カムリングの内周側に回転自在に収容配置され、径方向に沿って放射状に形成されたスロット内にベーンを出没自在に収容するロータと、該ロータとカムリングとが摺接するプレッシャプレートと、を備え、前記フロントボディの収容空間の一端側開口はリアボディによって閉塞されている。
前記カムリングとロータは互いの中心が偏心した状態で配置され、両者の間には各ベーンによって複数のポンプ室が隔成されている。そして、フロントボディの内底面には、前記各ポンプ室の容積が増大する領域(吸入領域)に開口し、該吸入領域のポンプ室に吸入圧を導入する吸入ポートが形成されている一方、リアボディの内側面には、前記各ポンプ室の容積が減少する領域(吐出領域)に開口し、該吐出領域からの吐出圧が導入される吐出ポートが形成されている。
さらに、前記アダプタリングの内周面とカムリングの外周面との間には所定の空間が形成され、該空間はアダプタリングの内周面に軸方向に沿って嵌着されたシール部材によって第1流体圧室と第2流体圧室の二つの圧力室に隔成されている。また、第2流体圧室側には、カムリングを第1流体圧室側へ付勢する付勢部材が配設され、この付勢部材の付勢力によってカムリングは常時第1流体圧室側に付勢されている。つまり、カムリングは、第1流体圧室の内圧と第2流体圧室の内圧及び前記付勢部材の付勢力とのバランスに基づいて揺動位置が制御されている。
また、前記ベーンポンプには、該ポンプの吐出圧を直接的に制御する圧力制御弁が設けられており、この圧力制御弁によって第1流体圧室には、通常、ポンプ吸入圧(低圧)が導入され、ポンプ吐出圧が所定値を超えた場合のみ、該ポンプ吐出圧(高圧)が導入されるようになっている。一方、前記プレッシャプレートの円周方向の所定位置には、前記吸入ポートと第2流体圧室を連通させる導入通路が軸方向に沿って貫通形成されており、かかる導入通路を介して第2流体圧室には前記ポンプ吸入圧が導入されるようになっている。
この導入通路は、前記プレッシャプレートの軸方向に沿って貫通形成され、一端側が前記吸入ポートに開口しつつ他端側がカムリングの内側面に臨む貫通孔と、前記プレッシャプレートの内側面(カムリングとの対向端面)に切欠形成され、一端側が前記貫通孔と連通しつつ他端側が第2流体圧室に臨む切欠溝と、から構成されており、前記ポンプ吸入圧の一部が前記吸入ポートから前記貫通孔に導入され、前記切欠溝を介して第2流体圧室へ導入されるようになっている。
かかる構成から、ポンプ吐出圧が所定値より低い場合には、前記圧力制御弁による圧力制御が行われないことから、第1、第2流体圧室がともに低圧となってほぼ平衡状態となるため、カムリングは前記付勢部材の付勢力によって第1流体圧室側に保持される。一方、ポンプ吐出圧が所定値を超えた場合には、第1流体圧室が高圧となるため、かかる油圧が第2流体圧室の低圧及び付勢部材の付勢力に抗してカムリングが第2流体圧室側に揺動制御される。
したがって、このベーンポンプは、前記各流体圧室にそれぞれ導入される油圧のバランスによってカムリングの揺動位置を制御し、該揺動位置制御に基づいてポンプの吐出圧を変化させることにより、かかるポンプの省エネ化を図っている。
特開2003−74479号公報
しかしながら、従来の可変容量型ベーンポンプにあっては、前記導入通路が前記吸入ポート付近に設けられていて、かつ、この導入通路は前記カムリングの内側面に臨んで設けられていることから、特にポンプの回転数が高く吸入時の作動油の流速が速くなった場合に、この作動油の流れによって前記導入通路内に負圧が発生してしまい、かかる負圧によって前記導入通路近傍に滞留した油が吸い取られてしまう。
具体的には、前記カムリング及びロータとプレッシャプレートとの間にはごく僅かな軸方向隙間があり、該隙間にはカムリングやロータの摺動を潤滑する油膜が形成されているが、前述のような負圧によってかかる潤滑油膜のうち前記切欠溝に臨むカムリングの内側面に形成された潤滑油膜が吸い取られてしまう。
したがって、前記切欠溝付近のカムリングとプレッシャプレートとの摺接面間にいわゆる油膜切れが生じ、該油膜切れの生じた部分においては充分な潤滑作用が得られず、この油膜切れを生じたカムリングの内側面において凝着摩耗が発生してしまうおそれがあった。
本発明は、このような技術的課題に着目して案出されたものであって、カムリングとプレッシャプレートとの摺接面間の潤滑を妨げることなく第2流体圧室に吸入圧を導入し得る可変容量型ベーンポンプを提供するものである。
請求項1に記載の発明は、ポンプボディの内部に形成された収容空間内に収容配置され、径方向へ出没自在に設けられた複数のベーンを収容しつつ駆動軸によって回転駆動されるロータと、該ロータの外周側に揺動可能に設けられ、隣接する前記各ベーンとロータと共に複数のポンプ室を画成するカムリングと、前記収容空間の軸方向一端側の周壁に嵌着固定され、前記カムリング及びロータが摺接するプレッシャプレートと、該プレッシャプレートに設けられ、前記複数のポンプ室のうち前記ロータの回転に伴い容積が増大する領域である吸入領域に開口するように形成された吸入ポートと、前記カムリングの外周側であって径方向一方側に形成されて該カムリングの偏心量を制御する第1流体圧室及びその他方側に形成された第2流体圧室と、前記第1流体圧室に導入される作動油の圧力を制御する圧力制御手段と、前記収容空間の軸方向他端側に開口形成され、外部から導入された作動油を前記ポンプ室側へ導く吸入通路と、一端側が前記吸入通路に開口形成されると共に、他端側が前記第2流体圧室に開口形成され、前記吸入通路のポンプ吸入圧を前記第2流体圧室へ導く導入通路と、を備え、前記導入通路を、前記吸入通路から前記カムリングの内周側を通って前記プレッシャプレートの前記吸入通路から遠い軸方向端面側へと開口するように設けられた第1導入部と、該第1導入部の終端部から前記プレッシャプレートの軸方向反対側へと折り返すかたちで該プレッシャプレートの内部を通じて前記第2流体圧室へ直接開口するように設けられた第2導入部と、によって構成すると共に、前記第1導入部を、前記吸入通路と前記吸入領域に係るポンプ室とを連通する第1吸入孔と、前記吸入領域に係るポンプ室と、前記プレッシャプレートの吸入ポートと、前記プレッシャプレートに貫通形成されて前記吸入ポートと前記プレッシャプレートの前記吸入通路から遠い軸方向端面側とを接続する第2吸入孔と、によって構成したことを特徴としている。
この発明によれば、前記導入通路を、前記吸入通路から遠く離間した位置で第2流体圧室に連通するように延長形成したことにより、かかる導入通路近傍における従来のような負圧現象の発生を防止することができ、該導入通路近傍に滞留した油、特に前記カムリングの摺動面に形成される潤滑油膜を吸い取ってしまうおそれがない。さらには、この導入通路を第2流体圧室に直接開口させたことにより、該第2流体圧室に導入されるポンプ吸入圧がカムリングの摺動面を流動することがないため、このポンプ吸入圧の流動によってカムリングの摺動面に形成された潤滑油膜が取り去られてしまうおそれもない。これによって、カムリングの摺動面の油膜を維持することができ、該カムリング摺動面の油膜切れによる凝着摩耗の発生が防止される。
また、特に、前記導入通路を前記吸入通路から前記カムリングの内周側を通る長尺状に延長形成して、前記吸入通路から第2流体圧室までの流路長さが長く確保したことにより、該第2流体圧室に導入されるポンプ吸入圧の脈圧を減衰することができる。これによって、前記ポンプ吸入圧をより安定した状態で第2流体圧室に導入することができる。
請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明において前記カムリングをアダプタリング内周に収容する構成としたものであって、この発明によっても、前記請求項1に記載の発明と同様の作用効果を奏することができる。
請求項3に記載の発明は、前記吸入通路から前記カムリングの内周側を通るように配設された前記導入通路の一部を、前記各ポンプ室のうち容積が増大する領域に位置するポンプ室によって構成したことを特徴としている。
この発明によれば、前記導入通路の一部をポンプの既存の構成を利用して構成したことにより、該導入通路全体を新たに形成する場合に比べて加工工数の低減化が図れる。
請求項4に記載の発明は、前記圧力制御手段を、前記ポンプハウジングの内部に形成されたバルブ収容室内に進退移動可能に設けられたスプールと、該スプールの軸方向一端側に設けられ、前記吐出ポートの下流側に設けられたメータリングオリフィスの上流側の圧力が導入される高圧室と、前記スプールの軸方向他端側に設けられ、前記メータリングオリフィスの下流側の圧力が導入される中圧室と、前記スプールの軸方向中間部に設けられ、前記吸入通路に接続された低圧室と、を有する圧力制御弁として構成し、前記導入通路を、前記圧力制御弁の低圧室を通るように配設したことを特徴としている。
この発明によれば、前記導入通路を、前記収容空間の外周側を通るように配設したことにより、前記カムリングの内周側を通る流路レイアウトと比較して前記導入通路の流路長さを長く確保することができるため、より高い前記脈圧減衰効果が得られる。そして、特に、前記導入通路を、前記圧力制御弁の低圧室を通るように配設したことから、該導入通路を前記圧力制御弁と交差して配設することが可能となり、装置の大型化を抑制することができる。
請求項5に記載の発明は、前記プレッシャプレートを前記吸入通路に対して前記カムリングより遠く離間して配設し、前記導入通路の一端側を、前記吸入通路から前記カムリングの内周側を通って前記プレッシャプレートの前記吸入通路から遠い軸方向端面側に開口する第1導入部によって構成すると共に、前記導入通路の他端側を、前記第1導入部に開口し、前記プレッシャプレートの前記吸入通路から遠い軸方向端面に切欠形成された切欠溝と、該切欠溝に開口し、前記プレッシャプレートの内部を軸方向に貫通する貫通孔と、を有する第2導入部によって構成したことを特徴としている。
この発明によれば、前記貫通孔の位置を適宜選択することにより、前記第2流体圧室への開口位置を自由に選択することができ、前記導入通路の流路レイアウトの自由度の向上が図れる。
請求項6に記載の発明は、前記導入通路の途中にオリフィス部を設けたことを特徴としている。
この発明によれば、前記オリフィス部のダンピング効果により、前記第2流体圧室へ導入されるポンプ吸入圧のさらなる静圧化が図れる。
請求項7に記載の発明は、前記貫通孔にオリフィス部を設けたことを特徴としている。
この発明によれば、前記オリフィス部のダンピング効果により、前記第2流体圧室へ導入されるポンプ吸入圧のさらなる静圧化が図れる。
以下、本発明に係る可変容量型ベーンポンプの各実施の形態を図面に基づいて詳述する。なお、本実施の形態は、この可変容量型ベーンポンプを、従来と同様に車両のパワーステアリング装置に適用したものを示している。
図1〜図5は本発明の第1の実施の形態を示し、この可変容量型ベーンポンプは、図1及び図2に示すように、フロントボディ2とリアボディ3とを突き合わせてなるポンプボディ1と、該ポンプボディ1の内部に形成された収容空間10内に嵌着固定された円環状のアダプタリング4と、該アダプタリング4のほぼ楕円形の空間内に揺動支点ピン5を中心として揺動自在な円環状のカムリング6と、該カムリング6の内周側に回転自在に配置され、前記ポンプボディ1内に挿通された駆動軸7に連結されたロータ8と、を備えている。
前記カムリング6は、図2に示すように、軸方向幅が前記アダプタリング4よりも若干小さく形成され、前記ロータ8に対して偏心した状態で収容空間10内に配置されていると共に、前記揺動支点ピン5及びこれとほぼ対向した位置に配設されたシール部材9を介して第1流体圧室P1と第2流体圧室P2を隔成している。
前記ロータ8は、図1に示すように、ほぼ円盤状に形成され、前記カムリング6とほぼ同じ軸方向幅を有しており、該カムリング6と共に軸方向両側面がリアボディ3と収容空間10においてフロントボディ2の底部2a側に配置された焼結材からなる円盤状のプレッシャプレート11によって僅かな軸方向隙間Cを介して挟持状態に配置されている。
また、前記ロータ8は、図外のエンジンによって駆動軸7が回転駆動されると図2の矢印方向(反時計方向)に回転するようになっていて、外周部には、円周方向の等間隔位置に放射方向に沿ったスロット8aが複数形成されている。この各スロット8a内には、複数のベーン12がそれぞれカムリング6の内周面方向へ放射状に出没自在に保持されている。また、前記各スロット8aの内周側端部には、ほぼ円形状の背圧室8bが連続一体に設けられている。
そして、前記カムリング6とロータ8の間に形成される空間内には、隣接する二枚のベーン12によって複数のポンプ室13が画成されており、カムリング6を、前記揺動支点ピン5を支点として揺動させることによって、前記各ポンプ室13の容積を増減させるようになっている。
前記第2流体圧室P2内には圧縮コイルばね14が配置されていて、この圧縮コイルばね14によってカムリング6が第1流体圧室P1側へ、すなわちポンプ室13の容積が最大になる方向へ常時付勢されている。
また、図1及び図2に示すように、前記ロータ8の回転に伴いポンプ室13の容積が漸次拡大する吸入領域Aにおけるリアボディ3のロータ8側の内側面3aには、ほぼ円弧状の第1吸入ポート15が切欠形成されている。この第1吸入ポート15は、その中央部に、リアボディ3内に形成された吸入通路16に開口する第1吸入孔15aが貫通形成され、図外のリザーバタンクに接続される吸入パイプ17を介して前記吸入通路16内に導入された作動油を、前記第1吸入孔15aを介して各ポンプ室13に供給するようになっている。
さらに、前記リアボディ3の内側面3aのほぼ中央位置には、駆動軸7の一端部を軸支する凹部3bが形成されていると共に、この凹部3bの底部側には、前記吸入通路16に連通する還流通路18が形成されている。この還流通路18は、リアボディ3の内側面3aとロータ8のリアボディ3側の外側面8cとの間の軸方向隙間Cから漏出して前記凹部3b内に流入した作動油を、吸入通路16へ還流して第1吸入孔15aを介して再び第1吸入ポート15へと導入するようになっている。
一方、図1〜図5に示すように、前記ロータ8の回転に伴い各ポンプ室13の容積が漸次縮小していく吐出領域Bにおけるプレッシャプレート11のロータ8側の内側面11aには、ほぼ円弧状の第1吐出ポート19と、これに連通する複数の吐出孔20が形成されている。そして、前記ポンプ室13から吐出された作動油は、前記第1吐出ポート19及び各吐出孔20を介してフロントボディ2の底部2aに切欠形成された圧力室21へと導入され、さらにポンプボディ1に形成された図外の吐出通路を通じて吐出されることにより、図外のパワーステアリング装置の油圧パワーシリンダに送られることとなる。
また、前記プレッシャプレート11の内側面11aにおける第1吸入ポート15と対向する位置には、該第1吸入ポート15とほぼ同形状の第2吸入ポート22が切欠形成されている。この第2吸入ポート22には、その中央部に、フロントボディ2内に形成されたリリーフ通路23に開口する第2吸入孔22aが貫通形成され、後述する圧力制御弁30のリリーフバルブ50から前記リリーフ通路23を介して還流された作動油を、前記第2吸入孔22aを介して吸入側の各ポンプ室13へ供給するようになっている。
一方、前記リアボディ3の内側面3aにおける第1吐出ポート19と対向する位置にも、図1に示すように、この第1吐出ポート19とほぼ同形状の第2吐出ポート24が切欠形成されている。
このように、前記リアボディ3及びプレッシャプレート11の各内側面3a,11aに、前記第1、第2吸入ポート15,22及び第1、第2吐出ポート19,24をそれぞれ軸方向にほぼ対称に設けることによって、前記各ポンプ室13の軸方向両側の圧力バランスが保たれている。
また、前記プレッシャプレート11の中心位置には、駆動軸7が挿通する貫通孔26が形成されていると共に、フロントボディの底部2aには、駆動軸7の他端側を軸支する軸孔2bが前記貫通孔26と同軸となるように軸方向に沿って貫通形成されている。これらの貫通孔26及び軸孔2bは、共に駆動軸7の外径よりも若干大きい内径に設定されており、該貫通孔26及び軸孔2bの内周面と駆動軸7の外周面との間には、プレッシャプレート11の内側面11aとロータ8の内側面8dの間の軸方向隙間Cから漏出した作動油が流入する筒状油通路27が形成されている。
さらに、前記軸孔2bの軸方向のほぼ中央位置には、内側面に環状溝28aを有するシール部材28が配設され、軸孔2bの内周面と駆動軸7の外周面との間がシールされている。そして、前記フロントボディ2の底部2aには、一端側が前記シール部材28の環状溝28aに臨設され、他端側が前記リリーフ通路23に接続する還流通路29が軸孔2bとほぼ平行に形成されており、これによって前記筒状油通路27内に流入した作動油を、前記環状溝28aを介してリリーフ通路23へと還流させて、第2吸入孔22aを通じて再び第2吸入ポート22へと導入している。
また、フロントボディ2の上端側の内部には、ポンプの吐出圧を制御する圧力制御弁30が、前記駆動軸7と直交する方向に設けられている。この圧力制御弁30は、図2に示すように、フロントボディ2内に形成された弁孔31内に摺動自在に収容されたスプール弁32と、該スプール弁32を図中左方向に付勢して弁孔31のプラグ33に当接させるバルブスプリング34と、前記プラグ33とスプール弁32の先端部との間に形成され、図外のメータリングオリフィスの上流側の油圧、つまり前記圧力室21内の作動油が導入される高圧室35と、前記バルブスプリング34を収容し、前記メータリングオリフィスの下流側の油圧が導入される中圧室36と、を備えており、前記中圧室36と高圧室35の両圧力差が所定以上になるとスプール弁32がバルブスプリング34のばね力に抗して図中右方向に移動するようになっている。
前記第1流体圧室P1は、前記スプール弁32が図2中の左側に位置するときは、第1流体圧室P1と弁孔31とを連通する連通路38を介してスプール弁32の外周側に画成された低圧室37に接続されている。この低圧室37内には、図1に示すように、前記吸入通路16から分岐して形成された低圧通路39を介して吸入通路16からの低圧が導入される。
そして、前記各室35,36の差圧によってスプール弁32が図2中の右側に摺動した場合には、前記低圧室37が漸次遮断され、前記高圧室35と連通して高圧な作動油が導入されることとなる。すなわち、前記第1流体圧室P1内には、低圧室37の油圧と前記メータリングオリフィスの上流側の油圧とが選択的に供給されるようになっている。
なお、前記スプール弁32内部に配設されたリリーフバルブ50は、前記中圧室36の圧力が所定以上に達したとき、つまり前記油圧パワーシリンダ内の圧力が所定以上に達したときに、これ開放してこの作動油を前記リリーフ通路23へ逃がすようになっている。
一方、前記第2流体圧室P2には、図1に示すように、前記吸入通路16からカムリング6及び第1、第2流体圧室P1,P2を迂回してプレッシャプレート11側へと回り込むように配設され、該プレッシャプレート11を介してかかる第2流体圧室P2に直接開口する導入通路40によって常時吸入側の油圧(低圧)が導入されるようになっている。
この導入通路40は、前記第1吸入孔15a、前記吸入領域Aのポンプ室13及び第2吸入孔22aによって構成され、カムリング6の内周側を通って該カムリング6及び両流体圧室P1,P2を迂回するように延設された第1導入部41と、プレッシャプレート11に形成され、前記第1導入部41の終端部から軸方向反対側へ折り返すようにしてプレッシャプレート11側、つまり、カムリング6の吸入通路16から遠い方の軸方向端面側から第2流体圧室P2に開口する第2導入部42と、から構成されている。
前記第2導入部42は、プレッシャプレート11の内部にほぼ軸方向に沿って貫通形成され、一端側が第2流体圧室P2に直接開口する貫通孔であって極小径のオリフィス部を成す小径孔43と、プレッシャプレート11の外側面11bの所定範囲に切欠形成され、前記小径孔43と第2吸入孔22aを連通させる切欠溝である連通溝44と、によって構成されている。
前記小径孔43は、図1、図3及び図4に示すように、前記第2吸入孔22aの外周側近傍であって、かつ、第2流体圧室P2に直接開口する所定の位置に設けられていると共に、一端側から他端側に向かって中心方向へ若干傾斜するように設けられている。
前記連通溝44は、図5に示すように、前記第2吸入孔22a近傍の所定範囲に周方向に沿ってほぼ円弧状に形成され、径方向において第2吸入孔22aと前記小径孔43に跨るように設けられている。また、この際、前記連通溝44は、小径孔43に対して完全にオーバーラップするような範囲に設定され、該小径孔43の他端部がこの連通溝44の底部に開口するようになっている。
また、前記プレッシャプレート11の内側面11aには、図3及び図4に示すように、前記吸入領域Aにおいて前記各背圧室8bと対向する位置に、所定の周方向長さを有するほぼ円弧状の吸入側背圧溝45が切欠形成されている。この吸入側背圧溝45は、その両端部に前記圧力室21と連通する連通孔45aがそれぞれ貫通形成され、該各連通孔45aを介して圧力室21内の作動油の一部を各背圧室8bに供給している。
一方、同内側面11aの前記吐出領域Bにおいても、前記各背圧室8bに臨む位置に、前記吸入側背圧溝45とほぼ同形状の吐出側背圧溝46が、吸入側背圧溝45に対してほぼ対称(図3中上下対称)となるように、該吸入側背圧溝45と同一円周上に切欠形成されている。この吐出側背圧溝46にも、圧力室21に連通する絞り孔46aが軸方向に沿って穿設され、該絞り孔46aを介して圧力室21内の作動油の一部を各背圧室8bに供給するようになっている。
なお、前記プレッシャプレート11の内側面11aには、図3に示すように、前記吸入側背圧溝45及び吐出側背圧溝46と前記貫通孔26との径方向間に円環状の潤滑溝47が切欠形成されていて、この潤滑溝47によってロータ8とプレッシャプレート11との摺接が効果的に潤滑されるようになっている。
また、前記フロントボディ2の底部2a内面には、図1に示すように、環状のシール保持溝が切欠形成されており、このシール保持溝には、ゴム材料からなるシール部材48が嵌着保持されている。このシール部材48は、前記プレッシャプレート11の外側面11bにおいて、前記第2吸入孔22aの外周域の内外を吸入側に連通する低圧領域と吐出側に連通する高圧領域に隔成し、該シール部材48によって囲まれた内側の前記低圧領域に前記リリーフ通路23から導入される油圧(低圧)を作用させる一方、前記シール部材48の外側の前記高圧領域に、前記圧力室21から導入される油圧(高圧)を作用させるようになっている。
以上のような構成から、前記可変容量型ベーンポンプにおいては、プレッシャプレート11が、その外側面11bに作用する油圧によってアダプタリング4、カムリング6及びロータ8全体をリアボディ3側へと押し付けることにより、該プレッシャプレート11及びリアボディとアダプタリング4、カムリング6及びロータ8との各軸方向隙間Cを縮小し、該各軸方向隙間Cによる前記各ポンプ室13内の作動油の漏出が極力低減されている。
そして、このように前記各軸方向隙間Cを縮小させることにより、プレッシャプレート11及びリアボディ3は、カムリング6及びロータ8と摺接することとなることから、プレッシャプレート11とカムリング6及びロータ8の軸方向間、並びにリアボディ3とカムリング6及びロータ8の軸方向間には、僅かな前記各軸方向隙間Cを介して潤滑油膜が形成され、かかる潤滑油膜によって前記摺接による各部品の摩耗が抑制されている。
ここで、前記可変容量型ベーンポンプでは、ポンプの吸入圧である前記吸入側の油圧(低圧)を第2流体圧室P2に導入する際に、前記吸入通路16から前記第1吸入孔15aを介して前記吸入領域Aのポンプ室13に導入された作動油の一部を、前記第2吸入孔22aを通じて前記連通溝44へと導き、該連通溝44から前記小径孔43を介して第2流体圧室P2に導入する構成としている。
したがって、この実施の形態によれば、前記導入通路40を、前記吸入通路16から遠く離間した位置において第2流体圧室P2に連通するように延長形成したことにより、かかる導入通路40近傍における従来のような負圧現象の発生を防止することができ、該導入通路40近傍に滞留している作動油、この場合はカムリング6の内側面に形成された潤滑油膜を吸い取ってしまうおそれがない。
さらには、前記導入通路40を第2流体圧室P2に直接開口する構成としたことにより、該第2流体圧室P2に導入される吸入側の油圧がカムリング6の摺動面上を流動することがないため、この吸入側の油圧が導入通路40を流動する際に前記カムリング6摺動面に形成された潤滑油膜が取り去られてしまうおそれもない。
これによって、前記カムリング6の摺動面の油膜を確実に維持することができ、該カムリング6の摺動面の油膜切れによる凝着摩耗の発生を防止できる。そして、この結果、カムリングの良好な揺動作用を得ることができる。
また、特に、前記導入通路40を前記吸入通路16からカムリング6の内周側を通る長尺状に延長形成し、吸入通路16から第2流体圧室P2までの流路長さを長く確保したことにより、該第2流体圧室P2に導入される吸入側の油圧の脈圧を減衰させることが可能となる。そして、さらに、この導入通路40の終端部には、前記小径孔43を設ける構成を採用したことにより、該小径孔43のダンピング効果によって第2流体圧室P2に導入される油圧のさらなる静圧化が図れる。
これにより、特にポンプ高回転時における吸入側の油圧に生じる脈動やキャビテーションによる影響を第2流体圧室P2に及ぼすおそれがなく、より安定した油圧を第2流体圧室P2に導入することができる。
また、前記第1導入部41を、前記第1吸入孔15a、前記吸入領域Aのポンプ室13及び第2吸入孔22aといったポンプの既存の構成を利用して構成したことから、かかる第1導入部41を別途設ける場合に比較して加工工数の低減化が図れ、これによって製造コストの高騰化を抑制することができる。
また、前記第2導入部42を、前記プレッシャプレート11の内部を軸方向に貫通する前記小径孔43と、プレッシャプレート11の外側面11bに切欠形成された連通溝44と、によって構成したことから、小径孔43の位置を適宜選択することで、第2流体圧室P2への開口位置を自由に選択できる。これによって、この第2導入部42の流路レイアウトの自由度の向上が図れる。
図6〜10は本発明の第2の実施の形態を示し、基本的な構成は前記第1の実施の形態と同様であり、異なるところは、前記連通溝44を廃止し、前記小径孔43のプレッシャプレート11中心方向への傾きを大きく設定すると共に前記第2吸入孔22aに開口する前記リリーフ通路23のフロントボディ2径方向の長さを延長させることによって小径孔43の他端側をリリーフ通路23に直接開口させ、前記第2導入部42をリリーフ通路23と小径孔43によって構成したものである。
また、前記小径孔43については、その一端側開口位置がプレッシャプレート11の円周方向に沿ってポンプの回転方向反対側へ若干ずらして設定され、図7に示すように、該小径孔43の一端側が第2流体圧室P2においてより径方向幅の大きな位置に開口するようになっている。
したがって、この実施の形態によれば、前記第1の実施の形態と同様の作用効果が奏せられるのは勿論のこと、前記第2導入部42の一部をポンプの既存の構成である前記リリーフ通路23によって構成したことから、プレッシャプレート11に前記小径孔43を貫通形成するのみで前記導入通路40を形成することが可能となる。そして、この場合、前記導入通路40はプレッシャプレート11にドリル加工を施すのみによって容易に形成できることから、該導入通路40の形成に要する加工工数のさらなる低減化が図れる。これによって、前記導入通路40の形成に伴う製造コストの高騰化をより一層抑制することができる。
さらに、前記小径孔43の一端側を第2流体圧室P2においてより径方向幅の大きな位置に開口させたことにより、該第2流体圧室P2内により多くの作動油を導入することが可能になる共に、かかる小径孔43の長さをより長く確保することが可能となる。この結果、作動油の導入効率を低下させることなく小径孔43によるダンピング効果を向上させることができる。
図11〜図14は本発明の第3の実施の形態を示し、基本的な構成は前記第1の実施の形態と同様であり、前記導入通路40のレイアウト(構成)を変更したものである。なお、本実施の形態を説明するにあたり、便宜上、前記第1の実施の形態と同様の部材及び部位については、該第1の実施の形態と同じ名称及び符号を付して説明する。
すなわち、この実施の形態に係る可変容量型ベーンポンプには、図11及び図12に示すように、前記収容空間10の周壁に、前記圧力制御弁30の低圧室37をプレッシャプレート11の内側面11a側の軸方向端部外周面に臨ませる極細の貫通孔である小径孔51が貫通形成されている。
また、前記プレッシャプレート11の内側面11a側の軸方向端部外周縁には、図11〜図14に示すように、その円周方向の所定位置に、断面ほぼ矩形状の連通溝52がプレッシャプレート11の前記外周縁から径方向に沿って切欠形成されている。この連通溝52は、その径方向幅Dが対向するアダプタリング4の径方向幅dよりも若干大きく形成され、前記小径孔51と第2流体圧室P2とを連通させている。
そして、前記導入通路40は、図11に示すように、前記第1導入部41が前記収容空間10の外周側を通ってカムリング6及び第1、第2流体圧室P1,P2を迂回するように延設され、プレッシャプレート11に形成された第2導入部42を介して軸方向反対側へ折り返すようにしてカムリング6の吸入通路16から遠い方の軸方向端面側から第2流体圧室P2に開口するように設けられている。
すなわち、前記第1導入部41は、前記吸入通路16に開口する前記低圧通路39と、この低圧通路39を介して前記吸入通路16に連通する前記圧力制御弁30の低圧室37と、この低圧室37に開口する前記小径孔51と、によって構成される一方、前記第2導入部42は、前記小径孔51と第2流体圧室P2とを連通させる連通溝52によって構成されている。
したがって、この実施の形態によれば、前記第1の実施の形態と同様の作用効果が奏せられるのは勿論のこと、前記導入通路40を、前記収容空間10の外周側を通るように配設したことから、前記第1の実施の形態のようなカムリング6の内周側を通る流路レイアウトと比べて該導入通路40の流路長さを長く確保することが可能となる。この結果、かかる導入通路40による前記脈圧減衰効果のさらなる向上が図れる。
さらに、前記第1導入部41を、前記圧力制御弁30の低圧室37を通るように配設したことから、該第1導入部41と圧力制御弁30とを交差して配設することが可能となるため、この導入通路40の形成に伴うポンプ装置の大型化を抑制することができる。
しかも、この第1導入部は、前記フロントボディ2に前記小径孔51を追加工するのみで形成できるため、前記導入通路40の配設に伴う製造コストの高騰化の抑制に寄与できる。
一方、前記第2導入部42についても、前記プレッシャプレート11の外周側から該プレッシャプレート11の内側面11aの外周縁部に切欠加工を施すのみによって形成できるため、前記導入通路40の配設に伴う製造コストの高騰化を抑制することができる。
本発明は、前記各実施の形態の構成に限定されるものではなく、前記導入通路40のレイアウトや長さについては、ポンプ装置の仕様や大きさなどによりそれぞれ自由に変更することができる。
すなわち、前記導入通路40は、前記カムリング6の内周側及び収容空間10の外周側を通ってカムリング6及び第1、第2流体圧室P1,P2を迂回するような長尺状に形成され、かつ、カムリング6の軸方向端面を通ることなく第2流体圧室P2に直接開口するように設けられていれば、どのような流路レイアウトであっても本発明の主となる作用効果を奏することができる。
また、前記第3の実施の形態においては、前記収容空間10の周壁に前記圧力制御弁30の低圧室37からアダプタリング4の外周面に臨む貫通孔を形成すると共に、該貫通孔と第2流体圧室P2とを連通させる極細の小径孔をアダプタリング4の内部に径方向に沿って形成することによって前記導入通路40を構成してもよく、この場合、前記貫通孔及び小径孔はいずれも孔あけ加工のみによって形成することができるため、該導入通路40の形成に要する加工工数の低廉化に寄与できる。
本発明に係る可変容量型ベーンポンプの第1の実施の形態を示し、本発明の主要部を説明するポンプの軸方向断面図である。 図1のA−A線断面図である。 同実施の形態を示す可変容量型ベーンポンプのプレッシャプレートの正面図である。 図3のB−B線断面図である。 同実施の形態を示す可変容量型ベーンポンプのプレッシャプレートの背面図である。 本発明に係る可変容量型ベーンポンプの第2の実施の形態を示し、本発明の主要部を説明するポンプの軸方向断面図である。 図6のC−C線断面図である。 同実施の形態を示す可変容量型ベーンポンプのプレッシャプレートの正面図である。 図8のD−D線断面図である。 同実施の形態を示す可変容量型ベーンポンプのプレッシャプレートの背面図である。 本発明に係る可変容量型ベーンポンプの第3の実施の形態を示し、本発明の主要部を説明するポンプの軸方向断面図である。 図11のE−E線断面図である。 同実施の形態を示す可変容量型ベーンポンプのプレッシャプレートの正面図である。 図13のF−F線断面図である。
符号の説明
1…ポンプボディ
6…カムリング
7…駆動軸
8…ロータ
9…シール部材
10…収容空間
11…プレッシャプレート
12…ベーン
13…ポンプ室
16…吸入通路
30…圧力制御手段(圧力制御弁)
40…導入通路
P1…第1油圧力室
P2…第2油圧力室

Claims (4)

  1. ポンプボディの内部に形成された収容空間内に収容配置され、径方向へ出没自在に設けられた複数のベーンを収容しつつ駆動軸によって回転駆動されるロータと、
    該ロータの外周側に揺動可能に設けられ、隣接する前記各ベーンとロータと共に複数のポンプ室を画成するカムリングと、
    前記収容空間の軸方向一端側の周壁に嵌着固定され、前記カムリング及びロータが摺接するプレッシャプレートと、
    該プレッシャプレートに設けられ、前記複数のポンプ室のうち、前記ロータの回転に伴い容積が増大する領域である吸入領域に開口するように形成された吸入ポートと、
    前記カムリングの外周側であって径方向一方側に形成されて該カムリングの偏心量を制御する第1流体圧室及びその他方側に形成された第2流体圧室と、
    前記第1流体圧室に導入される作動油の圧力を制御する圧力制御手段と、
    前記収容空間の軸方向他端側に開口形成され、外部から導入された作動油を前記ポンプ室側へ導く吸入通路と、
    一端側が前記吸入通路に開口形成されると共に、他端側が前記第2流体圧室に開口形成され、前記吸入通路のポンプ吸入圧を前記第2流体圧室へ導く導入通路と、を備え、
    前記導入通路を、前記吸入通路から前記カムリングの内周側を通って前記プレッシャプレートの前記吸入通路から遠い軸方向端面側へと開口するように設けられた第1導入部と、該第1導入部の終端部から前記プレッシャプレートの軸方向反対側へと折り返すかたちで該プレッシャプレートの内部を通じて前記第2流体圧室へ直接開口するように設けられた第2導入部と、によって構成すると共に、
    前記第1導入部を、前記吸入通路と前記吸入領域に係るポンプ室とを連通する第1吸入孔と、前記吸入領域に係るポンプ室と、前記プレッシャプレートの吸入ポートと、前記プレッシャプレートに貫通形成されて前記吸入ポートと前記プレッシャプレートの前記吸入通路から遠い軸方向端面側とを接続する第2吸入孔と、によって構成したことを特徴とする可変容量型ベーンポンプ。
  2. 前記導入通路の第2導入部を、一端が前記第1導入部へと開口形成され、前記プレッシャプレートの前記吸入通路から遠い軸方向端面に切欠形成された切欠溝と、一端が前記切欠溝へと開口形成され、他端が前記第2流体圧室へと開口する貫通孔と、によって構成したことを特徴とする請求項1に記載の可変容量型ベーンポンプ。
  3. 前記導入通路の途中にオリフィス部を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の可変容量型ベーンポンプ。
  4. 前記貫通孔にオリフィス部を設けたことを特徴とする請求項に記載の可変容量型ベーンポンプ。
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