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JP3657784B2 - 可変容量形ポンプ - Google Patents

可変容量形ポンプ Download PDF

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JP3657784B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえば自動車のハンドル操作力を軽減する動力舵取装置のような圧力流体利用機器に用いる可変容量形のベーンポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
動力舵取装置用ポンプとして従来一般には、自動車用エンジンで直接回転駆動される容量形のベーンポンプが用いられている。このような容量形ポンプは、エンジン回転数に対応して吐出流量が増減するため、自動車の停車中や低速走行時に操舵補助力を大きくし、高速走行時に操舵補助力を小さくするという動力舵取装置に要求される操舵補助力とは相反する特性をもっている。したがって、このような容量形ポンプには、回転数が低い低速走行時にも必要な操舵補助力が得られる程度の吐出流量を確保できる大容量のものを用いる必要がある。しかも、回転数が高い高速走行時のためには、吐出流量を一定量以下に制御する流量制御弁が必須となる。このため、容量形ポンプでは、構成部品点数が増え、構造や通路構成が複雑で、全体の大型化やコスト高となることが避けられない。
【0003】
このような容量形ポンプの不具合を解決するために、一回転当たりの吐出流量(cc/rev)を回転数の増加に比例して減少させることが可能な可変容量形ベーンポンプが、たとえば特開昭56−143383号公報、実公昭63−14078号公報、特開平7−243385号公報等によって提案されている。これらの可変容量形ポンプによれば、容量形のような流量制御弁が不要で、また駆動馬力の無駄が防げるためエネルギ効率の面でも優れ、またタンク側への戻りもないことから油温が上昇するというようなことがなく、しかもポンプ内部での漏れや容積効率が低下するという問題も防止できる。
【0004】
このような可変容量形のベーンポンプとして動力舵取装置の油圧発生源となるベーンタイプのオイルポンプ10の一例を、図3および図4を用いて簡単に説明すると、このポンプ10は、ポンプボディを構成するフロントボディ11およびリアボディ12を備えている。このフロントボディ11は、図4から明らかなように全体が略カップ状を呈し、その内部にポンプカートリッジとしてのポンプ構成要素13を収納配置する収納空間14が形成されるとともに、この収納空間14の開口端を閉塞するようにリアボディ12が組合わせられて一体化されている。なお、このフロントボディ11には、ポンプ構成要素13の回転子であるロータ15を外部から回転駆動するためのドライブシャフト16が貫通した状態で、軸受16a,16b,16c(16bはリアボディ12側、16cは後述するプレッシャプレート20側に配設される)により回転自在に支持されている。
【0005】
17はベーン15aを有するロータ15の外周部に嵌装して配置される内側カム面17aを有し、かつこの内側カム面17aとロータ15との間にポンプ室18を形成するカムリングである。このカムリング17は、後述するように、ポンプ室18の容積を可変するように収納空間14内で空間内壁部分に嵌合状態で設けられたアダプタリング19内で揺動変位可能に配置されている。
なお、このアダプタリング19は、ボディ11の収納空間14内でカムリング17を揺動変位可能に保持するためのものであり、このアダプタリング19を省略し、カムリング17をボディ11内に直接揺動変位可能に保持させることもできる。
【0006】
20は上述したロータ15、カムリング17およびアダプタリング19によって構成されているポンプカートリッジ(ポンプ構成要素13)のフロントボディ11側に圧接して積層配置されるプレッシャプレートである。ポンプカートリッジの反対側面には、サイドプレートを兼ねる前記リアボディ12の端面が圧接され、フロントボディ11とリアボディ12との一体的な組立てによって所要の組立状態とされる。そして、これらの部材によって、前記ポンプ構成要素13が構成されている。
【0007】
これらのプレッシャプレート20と、これにカムリング17を介して積層されるサイドプレートを兼ねるリアボディ12とは、カムリング17の揺動変位用の軸支部、位置決めピンおよびシールピンとして機能する後述の揺動支点ピン21や適宜の回り止め手段(図示せず)によって、回転方向で位置決めされた状態で一体的に組付け固定されている。
【0008】
23は前記フロントボディ11の収納空間14内でその底部側に形成されるポンプ吐出側圧力室で、この圧力室23によってポンプ吐出側圧力がプレッシャプレート20に作用する。24はこのポンプ吐出側圧力室23にポンプ室18のポンプ吐出側領域18Bに開口しこのポンプ吐出側領域18Bからの圧油を導くようにプレッシャプレート20に穿設したポンプ吐出側開口である。
【0009】
25は図4に示されるようにフロントボディ11の一部に設けられたポンプ吸込ポートで、この吸込ポート25から流入する吸込側流体は、後述する制御バルブ30のバルブ孔30aを貫通してフロントボディ11内に形成されたポンプ吸込側通路25a、これに連続してリアボディ12内に形成された通路25b,25cを通り、リアボディ12の端面に開口するポンプ吸込側開口26からポンプ室18のポンプ吸込側領域18Aに供給される。
【0010】
28は前記フロントボディ11の側方に設けたプラグ28aにより開口して設けた吐出ポートである。この吐出ポート28は、上述したポンプ室18からポンプ吐出側通路24、ポンプ吐出側圧力室23、プレッシャプレート20の異なる位置に穿設した流体通路孔29、後述する第2の流体圧室37、カムリング17を付勢するばね41を収納するプラグ42によるばね室42a、フロントボディ11に形成した切欠き溝43、ボディ11内に形成した通路孔44,45,28bを介して給送されるポンプ吐出側流体圧を図示しないパワーステアリング装置(図中PSで示す)等の油圧機器に給送する。
【0011】
上述したポンプ吐出側通路(24,23,29,42a,43,44,45,28b)において、第2の流体圧室37に開口する前記流体通路孔29とカムリング17の側面部とによって開口面積を増減させ得る可変メータリングオリフィス40が形成されている。この可変メータリングオリフィス40は、カムリング17の揺動変位に伴って側壁部で通路孔29が開閉されることにより構成されている。なお、このオリフィス40を、その開閉量がポンプ吐出側の流体圧の大きさに応じて制御される適宜の形状で形成すると、カムリング17の揺動変位を所望の状態に制御でき、流量特性の多様化が図れる。
【0012】
30はフロントボディ11における収納空間14の上方に略直交して配置された制御バルブである。この制御バルブ30は、ボディ11に穿設されているバルブ孔30a内で前記ポンプ吐出側通路(24,23,29,42a,43,44,45,28b)途中に設けた可変メータリングオリフィス29上、下流側の圧力差およびばね31の付勢力で摺動動作するスプール32を備えている。そして、この制御バルブ30は、上述したカムリング17をポンプボディ11(アダプタリング19)内でロータ15に対し揺動変位させるための流体圧力制御を、後述する可変メータリングオリフィス40によって行なう。
【0013】
この制御バルブ30において、スプール32の一方室(図3中左方室)32aには、前記ポンプ吐出側の圧力室23から延設された流体通路46,47を介して、前記可変メータリングオリフィス40の上流側の流体圧が導かれている。なお、図中33はバルブ孔30a内でスプール32の左方への移動位置を流体通路47の開口端を閉塞しない位置で係止するロッド33aを有するバルブ孔30aの閉塞用プラグである。
【0014】
前記スプール32の他方室(図3の右方室)32bには、ばね31が配設されるとともに前述した可変メータリングオリフィス40の下流側の流体圧が前記吐出ポート28に至る通路途中、すなわち第2の流体圧室37から前記ボディ11、アダプタリング19間に形成される流体通路19a、ボディ11に穿設した流体通路34を介して導かれている。
前記バルブ孔30aの略中央部には、前述したように吸込ポート25に連続するポンプ吸込側通路25aが貫通して形成されており、スプール32の環状溝32cによる環状空間を通って吸込側の流体が給送される。
【0015】
前記吸込側通路25aの開口部と前記吐出側の流体通路47の開口部との間には、前記アダプタリング19とカムリング17との間に形成される後述する第1の流体圧室36に接続されるアダプタリング19の流体通路19bおよびボディ11に穿設した流体通路35が開口し、常時は図3に示すように、ランド部32dによってポンプ吸込側通路25aと連通し、吸込側の流体圧を第1の流体圧室36に導入する。また、スプール32が所定量以上右方向に移動すると、ポンプ吸込側から切り離され、ポンプ吐出側の流体圧が第1の流体圧室36に供給される。
なお、図中34aはダンパオリフィス部である。
【0016】
36,37は前記カムリング17の外周部でボディ11(アダプタリング19)の内周壁部との間で揺動支点ピン21とその略軸対称位置に設けられたシール材38とで左、右に分割形成された第1、第2の流体圧室で、上述した制御バルブ30の作動に伴って、第1の流体圧室36にはポンプ吸込側または可変メータリングオリフィス40上流側のポンプ吐出側流体圧が、第2の流体圧室37には可変メータリングオリフィス40下流側のポンプ吐出側流体圧が導入される。
ここで、カムリング17の外周壁部には、第1の流体圧室36をアダプタリング19への接触時にも確保できるような略半周程度の凹溝等を周方向に沿って形成しておくとよい。
【0017】
前記可変メータリングオリフィス40を構成する流体通路孔29は、カムリング17により塞がれることにより変化する開口面積によって、回転数が低いときには所定の流量が得られるように立ち上げ、一定よりも高くなったときに、流量を減少させ、さらに所定回転数以上では、初期流量の約半分程度の流量が得られるような構成となっている。このような流量特性を図5(a)に示す。
なお、以上のようなベーンタイプの可変容量形ポンプ10において、上述した以外の構成は従来から周知の通りであり、ここでの具体的な説明は省略する。
【0018】
以上のような構成によるベーンポンプ10によれば、ドライブシャフト16によりロータ15がベーン15aを出入りさせながら回転駆動されることにより、吸込ポート25からの作動流体である圧油を、通路25a,25b,25c、開口26を経てポンプ室18内に吸込み、かつ吐出側通路24からポンプ吐出側圧力室23に送出した後、吐出ポート28から吐出してパワーステアリング装置PS等に給送する。
【0019】
上述した制御バルブ30はポンプ吐出側通路の途中に設けた可変メータリングオリフィス40の上、下流側での差圧により作動し、ポンプ吐出側の流量の大小に応じた流体圧を、前記カムリング17の外側部での第1、第2の流体圧室36,37に対し導入することにより、カムリング17を揺動変位させ、ポンプ室18の容積を所要の大きさに保つ。
【0020】
たとえばエンジンの回転数が小さいときには、カムリング17は図3中左側に変位した状態を維持し、ポンプ室18を最大容積に保つ。その結果、ポンプ10からの吐出流量は、図5(a)において回転数の増加に伴って増大する。そして、回転数が増大し、ポンプ吐出流量が一定量以上になると、制御バルブ30の働きにより、カムリング17が図3中右側に揺動変位され、ポンプ室18の容積を減少させ、結果としてポンプ吐出流量を一定に保つ。
また、このカムリング17の揺動に伴って可変メータリングオリフィス40が徐々に閉じられることにより、カムリング17の変位量が制御され、ポンプ吐出流量を減少させるとともに、所定回転数以上では初期流量の約半分程度の流量となる。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
上述したような従来の可変容量形のベーンポンプ10において、ポンプボディ(アダプタリング19)内で揺動変位自在なカムリング17は、図3、図4および図6に示すように、前記リアボディ12とプレッシャプレート20とに設けた穴(ピン21の外径にほぼ等しい径をもつ真円の穴)12a,20aに両端部を嵌挿させて設けた揺動支点ピン21により支持されていた。そして、この揺動支点ピン21に前記カムリング17の外周壁部に形成した凹部17dを係合させることにより、カムリング17の荷重を受けている。
【0022】
なお、上述した揺動支点ピン21に対応するアダプタリング19の内周壁部にも凹部19dが形成されているが、前述したようにリアボディ12、プレッシャプレート20の穴12a,20aに軸支されているピン21の外周部と前記凹部19dの溝底との間には、図6に示すように隙間が形成されている。
【0023】
前記揺動支点ピン21は、上述したリアボディ12とプレッシャプレート20との回転方向の位置決めを行う位置決め機能をもっているが、これらに形成した穴12a,20aの同心性がずれるとピン21が正規の姿勢よりも倒れ、このピン21に支持されているカムリング17も、図6中矢印で示すようにこのピン21の姿勢に対応して他端部分が軸線方向に向かって倒れを生じるおそれがあった。
【0024】
カムリング17がこのような倒れ状態となると、可変メータリングオリフィス30および制御バルブ30によってカムリング17が揺動しようとしたときに、カムリング17の一部がリアボディ12やプレッシャプレート20に接触し引っかかりを生じて、カムリング17の揺動が円滑に行えないことがあった。このような状態となると、図5(b)中波線で示すようにポンプ10からの吐出流量が断続的に増減し、いわゆる流量のジャンピング現象を生じるおそれがあった。
【0025】
また、上述したような揺動支点ピン21において、両端の軸支部以外の部分がアダプタリング19の凹部19dと隙間を介して対向しているから、カムリング17に対して内側から荷重が作用すると、このカムリング17の外周壁部によって図6に想像線で示すように湾曲するおそれもあった。このように変形すると、この揺動支点ピン21の一部が、リアボディ12やプレッシャプレート20の穴12a,20aの内壁や縁部と摺接し、この揺動支点ピン21やカムリング17の動きが妨げられるおそれもあった。
さらに、このような揺動支点ピン21によれば、このピン21や穴12a、20aが摩耗するという問題もあった。
【0026】
また、上述した揺動支点ピン21によれば、カムリング17に作用する荷重を全て受けるために、リアボディ12とプレッシャプレート20の穴12a,20aの部分にスペース上の制約があるから、この部分に強度不足を招き易く、揺動支点ピン21の軸支部に破損などを生じるおそれもあり、ポンプの高圧化を図ることができないという問題もあった。
【0027】
さらに、上述した可変容量形ポンプ10によれば、ロータ15に対してカムリング17を偏倚した位置で揺動自在に支持し、ロータ15の一側寄りの偏った位置にポンプ室18が形成されているから、カムリング17を介して揺動支点ピン21に作用する荷重が複数の方向からアンバランスに作用することが多く、変動幅もあるため、カムリング17の支持とカムリング17の円滑な揺動動作を得ることが難しいという問題もあった。
【0028】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、カムリングの揺動支点として揺動支点ピンを用いる可変容量形ポンプにおいて、必要時に従来生じていた流量のジャンピング現象を防ぎ、ポンプからの流量特性を改善し、しかも揺動支点ピンの支持部における加工、組立性を向上させることができる可変容量形ポンプを提供することを目的とする。
【0029】
【課題を解決するための手段】
このような要請に応えるために本発明に係る可変容量形ポンプは、ベーンを有しポンプボディ内で回転自在なロータと、このロータの一側寄りの外周部との間にポンプ室を形成するように嵌装され前記ポンプボディ内で揺動支点ピンにより揺動変位可能に配置されるとともにポンプ室容積が最大となる方向に付勢されているカムリングと、前記カムリングの外周部でポンプボディとの間に分割形成される第1、第2の流体圧室とを備え、これら両流体圧室間の流体圧力差によって前記カムリングを移動変位させることによりポンプ吐出流量を可変させる可変容量形ポンプにおいて、前記揺動支点ピンを、前記ポンプボディのカムリング収納部内壁に形成した凹部により直接支持するとともに、前記カムリング収納部内壁、カムリングおよびロータとからなるポンプ構成要素を両側から挟み込むためのプレート部材に、前記揺動支点ピンの端部が遊嵌状態で挿入される略小判形状の長穴を形成したことを特徴とする。
【0030】
また、本発明に係る可変容量形ポンプは、略小判形状の長穴を、揺動支点ピンの外径寸法おいて対向しかつ前記カムリングの内周部に作用する荷重の方向に略平行する平行部を有する形状で形成したことを特徴とする。
さらに、本発明に係る可変容量形ポンプは、前記揺動支点ピンを支持する凹部を、ポンプボディ内に設けたアダプタリングの内周壁部に形成したり、前記揺動支点ピンの両端部が係入される略小判形状の長穴を、ポンプ構成要素を両側から挟み込むポンプボディの端面とプレッシャプレートとに設けたりしたことを特徴とする。
さらにまた、本発明に係る可変容量形ポンプは、ポンプボディと、前記ポンプボディに軸支されたドライブシャフトと、前記ポンプボディ内に設けられ、前記ドライブシャフトによって回転駆動されるロータと、前記ロータに径方向へ出没自在に設けられたベーンと、前記ポンプボディ内に揺動自在に設けられると共に、円環状に形成され、内周側に前記ロータおよびベーンとともにポンプ室を形成するカムリングと、前記ポンプ室内における容積が増大する領域に開口するポンプ吸込側開口と、ポンプ室内における容積が縮小する領域に開口するポンプ吐出側開口とを備えたプレート部材と、前記ポンプボディに形成された凹部と前記カムリングとの間に設けられ、このカムリングを揺動自在に支持する揺動支点ピンと、前記カムリングの外周側に設けられ、このカムリングの外周側空間を第1の流体圧室と、第2の流体圧室とに隔成するシール部材と、を備え、前記第1の流体圧室と第2の流体圧室とに導かれる液圧により前記カムリングが揺動し、前記ポンプ室の容積を変化させるベーンポンプにおいて、前記プレート部材は、前記揺動支点ピンの端部が遊嵌状態で挿入される穴部を備え、前記カムリングから揺動支点ピンへかかる荷重は、前記凹部のみで受けることを特徴とする。前記穴部は、前記カムリングへの荷重の作用方向に長尺な長穴状に形成されることを特徴とする。
加えて、本発明に係る可変容量形ポンプは、ポンプボディと、前記ポンプボディに軸支されたドライブシャフトと、前記ポンプボディ内に設けられ、円環状に形成されたアダプタリングと、前記アダプタリング内に設けられ、前記ドライブシャフトによって回転駆動されるロータと、前記ロータに径方向へ出没自在に設けられたベーンと、前記アダプタリング内に揺動自在に設けられると共に、円環状に形成され、内周側に前記ロータおよびベーンとともにポンプ室を形成するカムリングと、前記アダプタリングの内周側に形成された凹部と前記カムリングとの間に設けられ、このカムリングを揺動自在に直接支持している揺動支点ピンと、前記ポンプ室内における容積が増大する領域に開口するポンプ吸込側開口と、ポンプ室内における容積が縮小する領域に開口するポンプ吐出側開口と、前記揺動支点ピンが遊嵌状態で挿入される穴部を備えたプレート部材と、前記カムリングの外周側に設けられ、このカムリングの外周側空間を第1の流体圧室と、第2の流体圧室とに隔成するシール部材と、を備え、前記第1の流体圧室と第2の流体圧室とに導かれる液圧により前記カムリングが揺動し、前記ポンプ室の容積を変化させることを特徴とする。
【0031】
本発明によれば、カムリングを揺動変位自在に支持する揺動支点ピンの長手方向のほとんどを、ポンプボディにおけるカムリング収納部内壁に設けた凹部で支持し、この揺動支点ピンの両端部はポンプ構成要素を挟み込む両側のプレート部材に形成した略小判形状の長穴により逃げて保持することになる。
【0032】
可変容量形ポンプは油圧を吐出するベーン式のオイルポンプであって、たとえば自動車の動力舵取装置における油圧源として用いるが、これには限らない。
カムリングは、ポンプボディ内に設けた空間部内で一部が支軸部となる揺動支点ピンにより揺動可能に支持され、この揺動支点ピンを通る線分の両側に設けた第1および第2の流体圧室内の流体圧とその低圧側の流体圧室に付設した付勢手段とによって揺動動作する。
【0033】
カムリングを揺動させるための流体圧制御を行う制御バルブを用いた場合を説明したが、これに限らず、この制御バルブを省略し、たとえば圧力流体利用機器の作動に伴う負荷圧に応動してカムリングを揺動変位させるように構成したものでもよい。
【0034】
【発明の実施の形態】
図1および図2は本発明に係る可変容量形ポンプの一つの実施の形態を示し、これらの図において、前述した図3以降と同一または相当する部分には同一番号を付し、ここでの詳細な説明は省略する。なお、図1(a),(b),(c)は前述した図6と同様に、カムリング17の揺動支点ピン21を設けた部分を拡大して示したものであって、各部の位置関係が明瞭になるように実際よりも誇張して描いてある。
【0035】
本発明によれば、前述した可変容量形のベーンポンプ10において、ポンプボディ(アダプタリング19)内でカムリング17を揺動変位自在に支持するための揺動支点ピン21を、前記アダプタリング19の内周部に形成した凹部51により支持するとともに、この揺動支点ピン21の両端部を係入させる穴部を、ポンプボディ内でポンプ構成要素13を挟み込む両側のプレート部材(サイドプレートを兼ねるリアボディ12の端面とプレッシャプレート20)とに形成した略小判形状の長穴52,52によって構成している。
【0036】
すなわち、従来の揺動支点ピン21は、ポンプ構成要素13を挟み込む両側のリアボディ12の内側面とプレッシャプレート20とに形成した円形状の穴部によって支持し、アダプタリング19側の凹部では受けていなかったが、本発明はこれとは逆にアダプタリング19の凹部51で揺動支点ピン21を直接受けて支持するとともに、両端部は可動可能に構成しているのである。
【0037】
このような構成によれば、揺動支点ピン21は長手方向のほとんどが凹部51の溝底51aにより保持され、カムリング17の揺動支点、さらに第1、第2の流体圧室36,37間のシールピンとして、さらにリアボディ12とプレッシャプレート20の位置決めピンとして機能する。
【0038】
前記揺動支点ピン21の両端部が係入される長穴52,52は、カムリング17を介して作用するポンプ室18における吐出側領域18Bでの吐出圧等による荷重に対して揺動支点ピン21の端部の動きを許容できる程度の長穴として形成されている。なお、図2(b)中矢印で示すのが、この揺動支点ピン21に作用する荷重の作用方向であり、若干の変動幅をもって作用している。
たとえば揺動支点ピン21の径寸法が3φであるときに、略小判形状の長穴52の長径部を3.3mmとするとよいことが確認されている。
【0039】
勿論、この略小判形状の長穴52,52は、リアボディ12とプレッシャプレート20との回転方向の位置決めを行えるように揺動支点ピン21の外径に合わせた間隙をおいて対向する平行部52a,52bを有し、その短辺方向の寸法が決められている。
なお、これらの平行部52a,52bは、ポンプ室18の吐出側領域18Bにおける吐出圧力がカムリング17に作用する方向に延びている。
【0040】
このような構成によれば、揺動支点ピン21の長手方向のほとんどを、アダプタリング19の凹部51により支持することができるから、カムリング17の揺動支点としての機能を確保することができる。そして、従来問題であったポンプ室18におけるポンプ吐出側領域18Bでの変動している流体圧の影響によってカムリング17を介して作用する荷重にかかわらず、ピン21の倒れ等はなくなり、カムリング17を円滑に揺動変位させることができるから、流量のジャンピング現象を防止することができる。
【0041】
上述したカムリング17の揺動変位によってポンプ吐出流量を調整する流量調整域においても、カムリング17が円滑に揺動するからポンプの流量特性を安定化させることができる。
また、上述した構成によれば、揺動支点ピン21の両端部が係入される穴部がカムリング17への荷重の作用方向に長尺な長穴52,52で形成されているから、従来に比べてリアボディ12、プレッシャプレート20でのピン支持部における強度上の問題を解消することができる。さらに、これに加えて揺動支点ピン21の支持強度も増すことから、ポンプ10の高圧化を図ることができる。
【0042】
なお、本発明は上述した実施の形態構造に限定されず、各部の形状、構造等を、適宜変形、変更することは自由であり、種々の変形例が考えられる。たとえば上述した実施の形態では、可変容量形ポンプ10のポンプボディとしてフロントボディ11とリアボディ12とからなるものを例示したが、本発明はこれに限定されず、中間ボディを有する三体構造のポンプボディであってもよい。
【0043】
また、上述した実施の形態では、カムリング17を揺動変位可能に保持する環状隙間空間を、アダプタリング19との間に形成した場合を示したが、本発明はこれに限定されず、アダプタリング19を省略し、ポンプボディにおいてフロントボディ11の内周壁部あるいは中間ボディの内周壁部にカムリング17を揺動変位可能に直接保持させるように構成してもよい。
【0044】
さらに、上述した実施の形態では、ポンプボディとして設けたリアボディ12とこれに対向するプレッシャプレート20との間にロータ15およびカムリング17やアダプタリング19(ポンプボディ)を介在させた場合を説明したが、本発明はこれに限定されず、リアボディ12の内側に別部材としてサイドプレートを介在させたものであってもよい。
【0045】
また、上述した実施の形態では、揺動支点ピン21によりリアボディ12とプレッシャプレート20との回転方向の位置決めを行う場合を説明したが、本発明はこれに限定されず、適宜の位置決めピンを別に設けてもよい。
【0046】
さらに、上述した実施の形態では、可変容量形ポンプ10として制御バルブ30を用いてカムリング17の揺動変位を制御する構造のものを説明したが、本発明はこれに限定されず、制御バルブ30を省略し、圧力流体利用機器側の負荷圧によりカムリングを揺動させるタイプのものにも適用可能である。
また、上述した構成によるベーンタイプの可変容量形ポンプ10としては、上述した実施の形態における構造に限定されないことは勿論、上述した実施の形態で説明したパワーステアリング装置以外にも、各種の機器、装置に適用してもよい。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る可変容量形ポンプによれば、揺動支点ピンの支持が確実に行え、従来問題であったカムリング側から作用する荷重による揺動支点ピンの倒れや曲がり、このカムリングの倒れ等によるカムリングの揺動変位の不具合を解消することができる。
また、このような本発明によれば、カムリングの円滑な揺動変位を確保し、従来のような流量のジャンピング現象をなくし、流量特性を安定化することができる。
【0048】
また、本発明によれば、ポンプ構成要素を挟み込む両側のプレート部材における揺動支点ピンの支持部での強度上の問題を解消することができ、ポンプの高圧化が可能となる。
本発明によれば、カムリングの揺動変位動作が円滑となるように改善し、これによりポンプの流量特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る可変容量形ポンプの一つの実施の形態を示し、(a)は本発明を特徴づける揺動支点ピンの支持部構造を実際よりも誇張して描いた拡大断面図、(b),(c)は(a)のIb−Ib線、Ic−Ic線断面図である。
【図2】 (a)は本発明を採用した可変容量形ポンプの横断面図、(b)はその要部拡大図である。
【図3】 従来の可変容量形ポンプの要部構造を示す横断面図である。
【図4】 従来の可変容量形ポンプにおいて図3のにおけるIV−IV線断面図である。
【図5】 (a)は可変容量形ポンプの流量特性を示す特性図、(b)は従来の不具合を説明するための特性図である。
【図6】 従来の可変容量形ポンプにおいて、カムリングを揺動変位自在に支持する支持部を実際よりも誇張して描いた拡大断面図である。
【符号の説明】
10…ベーンタイプの可変容量形ポンプ、11…フロントボディ(ポンプボディ)、12…リアボディ(ポンプボディ、サイドプレート、プレート部材)、13…ポンプ構成要素、14…収納空間、15…ロータ、15a…ベーン、16…ドライブシャフト(回転軸)、17…カムリング、17a…カム面、18…ポンプ室、19…アダプタリング、20…プレッシャプレート(プレート部材)、21…揺動支点ピン、23…ポンプ吐出側圧力室、24…ポンプ吐出側開口となる通路、25…吸込ポート、25a,25b…ポンプ吸込側通路、26…ポンプ吸込側開口、28…ポンプ吐出ポート、28a,28b…ポンプ吐出側通路、29…可変メータリングオリフィスを構成する孔部、30…スプール式制御バルブ、31…ばね、32…スプール、32a…一方室、32b…他方室、34…流体通路、34a…ダンパオリフィス、35…流体通路、36,37…第1、第2の流体圧室、40…可変メータリングオリフィス、51…凹部、52…略小判形状の長穴、52a,52b…平行部。

Claims (6)

  1. ベーンを有しポンプボディ内で回転自在なロータと、
    このロータの一側寄りの外周部との間にポンプ室を形成するように嵌装され前記ポンプボディ内で揺動支点ピンにより揺動変位可能に配置されるとともにポンプ室容積が最大となる方向に付勢されているカムリングと、
    前記カムリングの外周部でポンプボディとの間に分割形成される第1、第2の流体圧室とを備え、
    これら両流体圧室間の流体圧力差によって前記カムリングを移動変位させることによりポンプ吐出流量を可変させる可変容量形ポンプにおいて、
    前記揺動支点ピンを、前記ポンプボディのカムリング収納部内壁に形成した凹部により直接支持するとともに、
    前記カムリング収納部内壁、カムリングおよびロータとからなるポンプ構成要素を両側から挟み込むためのプレート部材に、前記揺動支点ピンの端部が遊嵌状態で挿入される略小判形状の長穴を形成したことを特徴とする可変容量形ポンプ。
  2. 請求項1に記載の可変容量形ポンプにおいて、
    前記略小判形状の長穴を、揺動支点ピンの外径寸法おいて対向しかつ前記カムリングの内周部に作用する荷重の方向に略平行する平行部を有する形状で形成したことを特徴とする可変容量形ポンプ。
  3. 請求項1または請求項2に記載の可変容量形ポンプにおいて、
    前記揺動支点ピンを支持する凹部を、ポンプボディ内に設けたアダプタリングの内周壁部に形成したことを特徴とする可変容量形ポンプ。
  4. ポンプボディと、
    前記ポンプボディに軸支されたドライブシャフトと、
    前記ポンプボディ内に設けられ、前記ドライブシャフトによって回転駆動されるロータと、
    前記ロータに径方向へ出没自在に設けられたベーンと、
    前記ポンプボディ内に揺動自在に設けられると共に、円環状に形成され、内周側に前記ロータおよびベーンとともにポンプ室を形成するカムリングと、
    前記ポンプ室内における容積が増大する領域に開口するポンプ吸込側開口と、ポンプ室内における容積が縮小する領域に開口するポンプ吐出側開口とを備えたプレート部材と、
    前記ポンプボディに形成された凹部と前記カムリングとの間に設けられ、このカムリングを揺動自在に支持する揺動支点ピンと、
    前記カムリングの外周側に設けられ、このカムリングの外周側空間を第1の流体圧室と、第2の流体圧室とに隔成するシール部材と、を備え、
    前記第1の流体圧室と第2の流体圧室とに導かれる液圧により前記カムリングが揺動し、前記ポンプ室の容積を変化させるベーンポンプにおいて、
    前記プレート部材は、前記揺動支点ピンの端部が遊嵌状態で挿入される穴部を備え、
    前記カムリングから揺動支点ピンへかかる荷重は、前記凹部のみで受けることを特徴とする可変容量形ポンプ。
  5. 請求項4記載の可変容量形ポンプにおいて、前記穴部は、前記カムリングへの荷重の作用方向に長尺な長穴状に形成されることを特徴とする可変容量形ポンプ。
  6. ポンプボディと、
    前記ポンプボディに軸支されたドライブシャフトと、
    前記ポンプボディ内に設けられ、円環状に形成されたアダプタリングと、
    前記アダプタリング内に設けられ、前記ドライブシャフトによって回転駆動されるロータと、
    前記ロータに径方向へ出没自在に設けられたベーンと、
    前記アダプタリング内に揺動自在に設けられると共に、円環状に形成され、内周側に前記ロータおよびベーンとともにポンプ室を形成するカムリングと、
    前記アダプタリングの内周側に形成された凹部と前記カムリングとの間に設けられ、このカムリングを揺動自在に直接支持している揺動支点ピンと、
    前記ポンプ室内における容積が増大する領域に開口するポンプ吸込側開口と、ポンプ室内における容積が縮小する領域に開口するポンプ吐出側開口と、前記揺動支点ピンが遊嵌状態で挿入される穴部を備えたプレート部材と、
    前記カムリングの外周側に設けられ、このカムリングの外周側空間を第1の流体圧室と、第2の流体圧室とに隔成するシール部材と、を備え、
    前記第1の流体圧室と第2の流体圧室とに導かれる液圧により前記カムリングが揺動し、前記ポンプ室の容積を変化させることを特徴とする可変容量形ポンプ。
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