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JP4818400B2 - 電力用ガス遮断器 - Google Patents

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JP4818400B2
JP4818400B2 JP2009143093A JP2009143093A JP4818400B2 JP 4818400 B2 JP4818400 B2 JP 4818400B2 JP 2009143093 A JP2009143093 A JP 2009143093A JP 2009143093 A JP2009143093 A JP 2009143093A JP 4818400 B2 JP4818400 B2 JP 4818400B2
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Description

この発明は、大電流を遮断するための電力用ガス遮断器に関し、とくに電流遮断時に生じるアークの消弧能力を高めるようにした電力用ガス遮断器の構造に関する。
従来から、ピストンとパッファシリンダを相対的に動かすことにより機械的に消弧ガスの圧力を高め、この圧力が上昇した消弧ガスをアークに向けて吹付けるようにした電力用ガス遮断器は知られている(特許文献1、2参照。)。特許文献1のガス遮断器では、パッファ室の圧縮面積を小さくしてアーク側で発生した熱ガスの反力を減少させるようにしており、特許文献2のガス遮断器では、小さな操作力でパッファ室の十分な圧力上昇と十分な吹き付け時間を確保するようにしている。
特開平8−279325号公報 特開平10−149752号公報
ところで、電力用ガス遮断器においては、アークが大きくならないうちに消弧するのが望ましく、そのためには遮断初期に消弧ガスの圧力を速やかに上昇させることが必要となる。アークを素早く消弧できない場合は、パッファシリンダ側および固定接触子のアーク発生部がアークの熱により溶解して金属蒸気となり、アーク発生部位が消耗するとともに、アークの熱により消弧ガスであるSFが変質し、消弧ガスの耐絶縁性が低下するという問題がある。さらに、消弧ガスの噴射量が十分でない場合は、一度消弧したアークが再発弧するという問題もある。
上記の問題を解決するためには、遮断初期からアークに向けて噴射する消弧ガスの圧力を高めることが必要であり、またアークに向けて噴射する消弧ガスの噴射量を十分に確保する必要がある、
しかし、アークに向けて噴射する消弧ガスの噴射量を十分に確保するためには、パッファシリンダの径を大きくすることが必要となるが、単にパッファシリンダの径を大きくすると、パッファシリンダを収納する圧力容器との間隔が狭くなり、パッファシリンダと圧力容器との間の絶縁性能が低下するという新たな問題が生じる。特許文献1、2では、遮断初期にアークに向けて噴射する消弧ガスの圧力を高めることは可能であるが、遮断後期において消弧ガスの噴射量を十分に確保することができず、一度消弧したアークが再発弧する可能性がある。
そこでこの発明は、パッファシリンダを大型化することなく、アークを速やかに消弧させることができ、しかもアークが再発弧するのを防止することが可能な電力用ガス遮断器を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、パッファシリンダ側と接触可能な固定接触子を有し、遮断時には前記パッファシリンダが前記固定接触子から離れる方向に移動する電力用ガス遮断器であって、前記パッファシリンダと軸方向に移動可能に嵌合され軸方向の断面積が段階的に変化する固定ピストンと、前記パッファシリンダと前記固定ピストンとによって形成され前記パッファシリンダの前記固定ピストン側への移動により軸方向の断面積が段階的に小となる第一の圧縮室と、前記固定ピストンとの当接によって軸方向に移動可能な可動ピストンと、前記パッファシリンダの内部に設けられた周方向に延びる仕切壁と前記パッファシリンダの内面とによって形成され前記可動ピストンが軸方向に移動可能に嵌合される第二の圧縮室と、前記第二の圧縮室に収納され前記可動ピストンを前記固定ピストン側に付勢する付勢手段と、前記パッファシリンダの軸方向の移動によって圧縮された前記第一の圧縮室内の消弧ガスを前記固定接触子と前記パッファシリンダとの間に生じるアークに向けて噴射する第一のノズルと、前記可動ピストンの軸方向の移動によって圧縮された前記第二の圧縮室内の消弧ガスを前記固定接触子と前記パッファシリンダとの間に生じるアークに向けて噴射する第二のノズルと、を備えたことを特徴とする電力用ガス遮断器である。
この発明によれば、電力用ガス遮断器の遮断時には、パッファシリンダの移動によってパッファシリンダ側と固定接触子とが非接触状態となり、パッファシリンダ側と固定接触子との間にアークが発生する。パッファシリンダが移動する際には、第一の圧縮室内の消弧ガスが圧縮され、この圧縮された消弧ガスが第一のノズルからアークに向けて噴射される。また、パッファシリンダの移動時には、固定ピストンとの当接による可動ピストンの軸方向の移動によって第二の圧縮室内の消弧ガスが圧縮され、この圧縮された消弧ガスが第二のノズルからアークに向けて噴射される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電力用ガス遮断器において、前記固定ピストンは、前記可動ピストンと当接可能な大径部と前記仕切壁の内側に進入可能な小径部とを有しており、前記小径部の軸方向の長さと前記可動ピストンの軸方向の長さが同一に設定されていることを特徴としている。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の電力用ガス遮断器において、前記可動ピストンには、前記パッファシリンダの内面に接触する軸方向に延びるスカート部が形成されていることを特徴としている。
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電力用ガス遮断器において、前記付勢手段は、軸方向に弾性変形可能な圧縮コイルスプリングから構成されており、該圧縮コイルスプリングは前記パッファシリンダの端部に形成された保持ケース部に収納可能であることを特徴としている。
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の電力用ガス遮断器において、前記仕切壁の軸方向の端部には、前記可動ピストンの軸方向の動きを規制する半径方向外方に膨出するフランジが形成されており、該フランジの外周面と前記可動ピストンとの間には隙間が設けられていることを特徴としている。
請求項1に記載の発明によれば、パッファシリンダが固定ピストン側へ移動することにより第一の圧縮室の軸方向の断面積が段階的に小となるので、第一のノズルからアークへ向けて噴出する消弧ガスの圧力を速やかに上昇させることができ、アークを速やかに消弧させることが可能となる。その結果、固定接触子およびパッファシリンダのアーク発生部がアークの熱により溶解して金属蒸気となることを回避することができ、アーク熱によるパッファシリンダ側および固定接触子の消耗を抑制することができる。さらに、アークは速やかに消弧されるので、アークの熱による消弧ガスの変質を抑制することができ、消弧ガスの耐絶縁性を長期にわたり維持することができる。
また、固定ピストンとの当接による可動ピストンの軸方向の移動により、第二の圧縮室の消弧ガスを第二のノズルを介してアークに向けて噴射することができるので、遮断後期でもアークに向けて噴射する消弧ガスの噴射量を十分に確保することが可能となり、一度消弧したアークが再発弧するのを確実に防止することができる。
請求項2に記載の発明によれば、固定ピストンの小径部による第一の圧縮室の消弧ガスの圧縮と可動ピストンによる第二の圧縮室の消弧ガスの圧縮とを同時に開始することができ、第一のノズルおよび第二のノズルの両方からアークに向けて消弧ガスを噴射することができ、アークの消弧能力を高めることが可能となる。
請求項3に記載の発明によれば、可動ピストンにはパッファシリンダの内面に接触する軸方向に延びるスカート部を形成しているので、可動ピストンとパッファシリンダとのカジリを防止することができ、可動ピストンを軸方向に円滑に移動させることができる。
請求項4に記載の発明によれば、付勢手段が軸方向に弾性変形可能な圧縮コイルスプリングから構成されており、この圧縮コイルスプリングをパッファシリンダの端部に形成された保持部に収納可能としているので、可動ピストンの移動距離を長く確保することができ、第二の圧縮室の容積を大にすることができる。
請求項5に記載の発明によれば、仕切壁の端部に形成されたフランジの外周面と可動ピストンとの間に隙間を設けているので、可動ピストンに負圧が作用するのを防止することができ、第二の圧縮室内の消弧ガスの圧縮を円滑に行うことができる。
本発明の実施の形態に係わる電力用ガス遮断器の要部拡大断面図である。 図1の電力用ガス遮断器の遮断動作時の状態を示す要部拡大断面図である。 図1の電力用ガス遮断器の全体構造を示す断面図である。 図3の電力用ガス遮断器における通電状態を示す要部断面図である。 図3の電力用ガス遮断器における遮断動作時の状態を示す要部断面図である。 図3の電力用ガス遮断器における消弧ガスの圧力と破壊電圧との関係を示す特性図である。 図1の電力用ガス遮断器における第一の圧縮室の容積の変化を示す模式図である。 図1の電力用ガス遮断器における遮断初期のパッファシリンダに対する固定ピストンの位置を示す模式図である。 図8における固定ピストンの位置と消弧ガスの圧力との関係を示す特性図である。 図1の電力用ガス遮断器における遮断中期のパッファシリンダに対する固定ピストンの位置を示す模式図である。 図10における固定ピストンの位置と消弧ガスの圧力との関係を示す特性図である。 図1の電力用ガス遮断器における遮断後期のパッファシリンダに対する固定ピストンの位置を示す模式図である。 図12における固定ピストンの位置と消弧ガスの圧力との関係を示す特性図である。
つぎに、この発明の実施の形態について図面を用いて詳しく説明する。
図1ないし図13は、この発明の実施の形態を示している。図3は、電力用ガス遮断器1の全体構造を示している。電力用ガス遮断器1は、筒状の圧力容器2を有している。圧力容器2の上部には、上方に延びる中空状の碍子部3、4が設けられている。一方の碍子部3の内部には、碍子部3の頂部から圧力容器2内まで延びる棒状の導電部材5が配置されている。他方の碍子部4の内部には、同様に碍子部4の頂部から圧力容器2内まで延びる棒状の導電部材6が配置されている。圧力容器2内の圧力室7には、消弧ガスGが圧縮された状態で封入されている。消弧ガスGとしては、高い絶縁性を有するSF(六フッ化硫黄)が用いられている。
圧力容器2内には、導電部材6と接続される固定遮断部10と、導電部材5と接続される可動遮断部20が配置されている。圧力容器2の端部には、可動遮断部20を動作させるための油圧駆動装置8が取付けられている。油圧駆動装置8は、後述するパッファシリンダ21と連結されるロッド9を有している。図4および図5は、固定遮断部10と可動遮断部20の概略構造を示している。図4に示すように、固定遮断部10は、断面形状がコの字形をした筒状フレーム11の内側に設けられた固定接触子12を有している。固定接触子12は、水平方向に延びる棒状に形成されている。固定接触子12は、導電率が高くかつ融点の高い、例えば銀とタングステンとの合金から構成されている。
図1および図2は、可動遮断部20の詳細を示している。可動遮断部20は、主としてパッファシリンダ21と、固定ピストン24、可動ピストン25、第一のノズル31、第二のノズル32を有している。パッファシリンダ21は、導電性の高い円筒状の金属部材から構成されており、一端に端壁21fが形成されている。パッファシリンダ21の内面21aは、高精度に形成されており、かつ表面が非常に緻密に仕上げられている。パッファシリンダ21の内面21aには、固定ピストン24が軸方向に移動可能に嵌合されている。パッファシリンダ21の端壁21fには、固定遮断部10の固定接触子12と接触可能な可動接触子(図示略)が設けられている。この可動接触子は、遮断動作時以外は、固定接触子12の外周面と常時接触するようになっている。パッファシリンダ21の端壁21fには、複数の絶縁ノズル22が取付けられている。複数の絶縁ノズル22は、固定接触子12を中心として半径方向に変位可能となっており、固定接触子12を外周から包囲するように放射状に配置されている。
固定ピストン24は、断面積が軸方向で二段階に変化するように形成されている。固定ピストン24は、外形が大に形成された大径部24aと、外形が大径部24aよりも小に形成された小径部24bとを有している。大径部24aは、パッファシリンダ21の内面21aと接触した状態で軸方向に移動可能となっている。大径部24aの外面とパッファシリンダ21の内面21aとの間の形成される隙間は、ガス漏れが極力小となるように著しく小となっている。小径部24bは、大径部24aに連なって形成されており、外面24b1は後述する仕切壁21cの内面と接触可能となっている。
小径部24bの外面と仕切壁21cの内面との間に形成される隙間は、ガス漏れが極力小となるように著しく小となっている。固定ピストン24には、軸心Cに沿って延びる貫通穴24b3が形成されている。貫通穴24b3には、パッファシリンダ21の端壁21fから軸心Cに沿って延びるガイド軸21bが挿通されている。ガイド軸21bの外面と固定ピストン24の貫通穴24b3の内面との間の隙間は、ガス漏れが極力小となるように著しく小となっている。
固定ピストン24の大径部24aの端面24a1は、パッファシリンダ21が軸方向に移動した際には、パッファシリンダ21の端壁21fと接触するようになっている。また、固定ピストン24の小径部24bの端面24b2は、パッファシリンダ21が軸方向に移動した際には、パッファシリンダ21の仕切壁21cのフランジ21dと接触するようになっている。可動遮断部20には、第一の圧縮室26と第二の圧縮室27が形成されている。第一の圧縮室26は、パッファシリンダ21の固定ピストン24側への移動により軸方向の断面積が段階的に小となるように構成されている。
パッファシリンダ21の内部には、パッファシリンダ21の内面21aに対向し周方向に延びる仕切壁21cが形成されている。可動遮断部20には、パッファシリンダ21の内面21aと仕切壁21cとによって第二の圧縮室28が形成されている。第二の圧縮室28には、可動ピストン25が軸方向に移動可能に嵌合されている。可動ピストン25は、円板状のピストン本体25aと、ピストン本体25aから固定ピストン24側に延びる筒状の保持部25dを有している。可動ピストン25のピストン本体25aの外周部には、パッファシリンダ21の内面21aと接触する軸方向に延びる第一のスカート部25cが形成されている。同様に、可動ピストン25の保持部25dの先端外周部には、パッファシリンダの内面に接触する軸方向に延びる第二のスカート部25bが形成されている。
可動遮断部20には、可動ピストン25を固定ピストン24側に付勢する付勢手段としての圧縮コイルスプリング28が設けられている。圧縮コイルスプリング28の一端は、常時可動ピストン25のピストン本体25aと接触している。圧縮コイルスプリング28の他端は、常時パッファシリンダ21の端部に形成された保持ケース部21eの端面と接触している。圧縮コイルスプリング28は、軸方向に弾性変形可能となっており、可動ピストン25の移動により軸方向に十分圧縮された状態では、図2に示すようにパッファシリンダ21の端部に形成された保持ケース部21eに収納可能となっている。
パッファシリンダ21の仕切壁21の軸方向の端部には、可動ピストン25の軸方向の動きを規制する半径方向外方に膨出するフランジ21dが形成されている。フランジ21dの外周面と可動ピストン25の保持部25dとの間の隙間Sは、第一の圧縮室26と連通している。この隙間Sは、可動ピストン25がパッファシリンダ21の端壁21f側に移動する際に、ピストン本体25a側に負圧が作用するのを阻止するためのものである。
パッファシリンダ21の端壁21fには、パッファシリンダ21の軸方向の移動によって圧縮された第一の圧縮室26内の消弧ガスGを固定接触子12とパッファシリンダ21の端壁21fとの間に生じるアークEに向けて噴射する第一のノズル31が設けられている。同様に、パッファシリンダ21の端壁21fには、固定ピストン24との当接による可動ピストン25の軸方向の移動によって圧縮された第二の圧縮室27の消弧ガスGを固定接触子12とパッファシリンダ21の端壁21fとの間に生じるアークEに向けて噴射する第二のノズル32が設けられている。
つぎに、電力用ガス遮断器1の動作順序および作用について説明する。
図4に示すように、送電系統が正常に運用されている場合は、電力用ガス遮断器1の固定接触子12とパッファシリンダ21側の可動接触子(図示略)とは接触しており、固定接触子12と可動接触子との接触部には大電流が流れている。例えば送電系統の故障が発生した場合は、油圧駆動装置8が動作しロッド9の引張力によってパッファシリンダ21が固定ピストン24側に移動する。これにより、第一の圧縮室26の容積が縮小し、第一の圧縮室26内の消弧ガスG1の圧力が上昇する。
図6は、圧力容器2内に封入された消弧ガスGとしてのSFにおける圧力と破壊電圧との関係を示している。図6に示すように、SFの圧力が上昇することにより破壊電圧(耐絶縁性能)が高くなることがわかる。また、空気よりもSFのほうが耐絶縁性能が優れていることがわかる。図7は、パッファシリンダ21の移動量と第一の圧縮室26の軸方向の断面積との関係を示しており、パッファシリンダ21が固定ピストン24に近づくにつれて、第一の圧縮室26の軸方向の断面積が徐々に小となることがわかる。
図8および図9は、電力用ガス遮断器1の遮断初期におけるパッファシリンダ21の位置と第一の圧縮室26内の圧力との関係を示している。遮断初期では、パッファシリンダ21は位置A1まで移動しており、この時の第一の圧縮室26内は圧力P1となっている。この状態では、パッファシリンダ21の仕切壁21cのフランジ21dは、固定ピストン24の小径部24bまで到達していないので、第一の圧縮室26の容積はあまり縮小していない。したがって、第一の圧縮室26内の圧力P1は、固定ピストンの軸方向の断面積を同一として従来の電力用ガス遮断器に比べて若干高くなる程度となる。
図10および図11は、電力用ガス遮断器1の遮断中期におけるパッファシリンダ21の位置と第一の圧縮室26内の圧力との関係を示している。遮断中期では、パッファシリンダ21は位置A2まで移動しており、この時の第一の圧縮室26内は圧力P2となっている。この状態では、パッファシリンダ21の仕切壁21cのフランジ21dは、固定ピストン24の小径部24bの端面24b2の直前まで移動するので、第一の圧縮室26の容積は図8の状態に比べて大幅に縮小される。したがって、図11に示すように、第一の圧縮室26内の圧力P2は図9に比べて著しく上昇する。これにより、遮断初期から中期においては、第一の圧縮室26内の圧力が速やか上昇し、圧力上昇した消弧ガスG1が第一のノズル31からアークEへ向けて噴出される。
図12および図13は、電力用ガス遮断器1の遮断後期におけるパッファシリンダ21の移動位置と第一の圧縮室26内の圧力との関係を示している。遮断後期では、パッファシリンダ21は位置A3まで移動しており、この時の第一の圧縮室26内は圧力P3となる。この状態では、固定ピストン24の小径部24bが仕切壁21cの内側に進入するので、第一の圧縮室26の容積がさらに縮小し、第一の圧縮室26内の圧力がさらに高められる。また、遮断後期では、可動ピストン25が固定ピストン24の大径部24aの端面24a1と当接するので、可動ピストン25の移動により第二の圧縮室27の容積が縮小することになり、圧縮された消弧ガスG2が第二のノズル32からアークEへ向けて噴出される。
ここで、可動ピストン25には、パッファシリンダ21の内面21aに接触する軸方向に延びるスカート部25b、25cが形成されているので、可動ピストン25とパッファシリンダ21とのカジリを防止することができ、可動ピストン25を軸方向に円滑に移動させることができる。また、圧縮コイルスプリング28は、パッファシリンダ21の端部に形成された保持部21eに収納可能となっているので、可動ピストン25の移動距離を長く確保することができ、第二の圧縮室27の容積を大にすることができる。さらに、仕切壁21cの端部に形成されたフランジ21dの外周面と可動ピストン25との間に隙間Sを設けているので、可動ピストン25に負圧が作用するのを防止することができ、第二の圧縮室27内の消弧ガスG2の圧縮を円滑に行うことができる。
送電系統の故障の復旧が確認できると、電力用ガス遮断器1の閉動作が行われる。すなわち、電力用ガス遮断器1の閉動作によって、パッファシリンダ21が固定接触子12側に移動し、固定遮断部10と可動遮断部20とが電気的に接続される。この状態では、パッファシリンダ21の可動接触子(図示略)と固定接触子12とが完全に接触し、可動ピストン25が圧縮コイルスプリング28によって固定ピストン24側に付勢される。また、パッファシリンダ21の可動接触子(図示略)と固定接触子12とが完全に接触した状態では、圧力容器2内の消弧ガスGの一部が、第一のノズル31を介して第一の圧縮室26内に流入するとともに、第二のノズル32を介して第第二の圧縮室27内に流入する。
このように、遮断初期から中期においては、パッファシリンダ21の固定ピストン24側への移動によって第一の圧縮室26の軸方向の断面積が段階的に小となるので、第一のノズル31からアークEへ向けて噴出する消弧ガスG1の圧力を速やかに上昇させることができ、アークEを速やかに消弧させることが可能となる。その結果、固定接触子12およびパッファシリンダ21のアーク発生部がアークEの熱により溶解して金属蒸気となることを回避することができ、アーク熱によるパッファシリンダ21側および固定接触子12の消耗を抑制することができる。さらに、アークEは速やかに消弧されるので、アークEの熱による圧力容器2内の消弧ガスGの変質を抑制することができ、消弧ガスGの耐絶縁性を長期にわたり維持することができる。
また、固定ピストン24との当接による可動ピストン25の軸方向の移動により、第二の圧縮室27の消弧ガスG2を第二のノズル32を介してアークEに向けて噴射することができるので、アークEに向けて噴射する消弧ガスG2の噴射量を十分に確保することが可能となり、一度消弧したアークEが再発弧するのを確実に防止することができる。
さらに、固定ピストン24の小径部24bの軸方向の長さと可動ピストン25の軸方向の長さを同一としているので、固定ピストン24の小径部24bによる第一の圧縮室26の消弧ガスG1の圧縮と可動ピストン25による第二の圧縮室28の消弧ガスG2の圧縮とを同時に開始することができ、第一のノズル31および第二のノズル32の両方からアークEに向けて消弧ガスG1、G2を同時に噴射することができ、アークEの消弧能力を高めることが可能となる。
以上、この発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、固定ピストン24には、大径部24aと小径部25bを形成し、軸方向の断面積を2段階で変化させるようにしているが、3段階またはそれ以上とする構造にしてもよい。
1 電力用ガス遮断器
8 油圧駆動装置
10 固定遮断部
12 固定接触子
20 可動遮断部
21 パッファシリンダ
21c 仕切壁
21d フランジ
24 固定ピストン
24a 大径部
24b 小径部
25 可動ピストン
25b、25c スカート部
26 第一の圧縮室
27 第二の圧縮室
28 圧縮コイルスプリング(付勢手段)
31 第一のノズル
32 第二のノズル
C 軸心
E アーク
G 消弧ガス
S 隙間

Claims (5)

  1. パッファシリンダ側と接触可能な固定接触子を有し、遮断時には前記パッファシリンダが前記固定接触子から離れる方向に移動する電力用ガス遮断器であって、
    前記パッファシリンダと軸方向に移動可能に嵌合され軸方向の断面積が段階的に変化する固定ピストンと、
    前記パッファシリンダと前記固定ピストンとによって形成され前記パッファシリンダの前記固定ピストン側への移動により軸方向の断面積が段階的に小となる第一の圧縮室と、
    前記固定ピストンとの当接によって軸方向に移動可能な可動ピストンと、
    前記パッファシリンダの内部に設けられた周方向に延びる仕切壁と前記パッファシリンダの内面とによって形成され前記可動ピストンが軸方向に移動可能に嵌合される第二の圧縮室と、
    前記第二の圧縮室に収納され前記可動ピストンを前記固定ピストン側に付勢する付勢手段と、
    前記パッファシリンダの軸方向の移動によって圧縮された前記第一の圧縮室内の消弧ガスを前記固定接触子と前記パッファシリンダとの間に生じるアークに向けて噴射する第一のノズルと、
    前記可動ピストンの軸方向の移動によって圧縮された前記第二の圧縮室内の消弧ガスを前記固定接触子と前記パッファシリンダとの間に生じるアークに向けて噴射する第二のノズルと、
    を備えたことを特徴とする電力用ガス遮断器。
  2. 前記固定ピストンは、前記可動ピストンと当接可能な大径部と前記仕切壁の内側に進入可能な小径部とを有しており、前記小径部の軸方向の長さと前記可動ピストンの軸方向の長さが同一に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の電力用ガス遮断器。
  3. 前記可動ピストンには、前記パッファシリンダの内面に接触する軸方向に延びるスカート部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電力用ガス遮断器。
  4. 前記付勢手段は、軸方向に弾性変形可能な圧縮コイルスプリングから構成されており、該圧縮コイルスプリングは前記パッファシリンダの端部に形成された保持ケース部に収納可能であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電力用ガス遮断器。
  5. 前記仕切壁の軸方向の端部には、前記可動ピストンの軸方向の動きを規制する半径方向外方に膨出するフランジが形成されており、該フランジの外周面と前記可動ピストンとの間には隙間が設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の電力用ガス遮断器。
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