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JP4894968B1 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】氷上制動性能を確保しつつ製造容易性を向上できる空気入りタイヤを提供すること。
【解決手段】この空気入りタイヤ1では、ブロック3の踏面上にてタイヤ幅方向に延在すると共に少なくとも一方の端部にて周方向主溝21に開口するサイプ4を有する。また、サイプ4が、ブロック3の縁部に位置すると共に周方向主溝21に開口する第一サイプ部41と、ブロック3の中央部に位置する第二サイプ部42とを有する。また、第一サイプ部41が、サイプ長さ方向に垂直な断面視にて直線形状を有すると共に相互に対向する一対の第一サイプ壁面411、412と、これらの第一サイプ壁面411、412にそれぞれ配置されて相互に噛み合う凸部413および凹部414とを有する。そして、第二サイプ部42が、サイプ長さ方向に垂直な断面視にてサイプ幅方向に屈曲した形状を有すると共に相互に対向して噛み合う一対の第二サイプ壁面421、422を有する。
【選択図】図4

Description

この発明は、空気入りタイヤに関し、さらに詳しくは、氷上制動性能を確保しつつ製造容易性を向上できる空気入りタイヤに関する。
スタッドレスタイヤなどの空気入りタイヤでは、氷上制動性能を向上させるために、複数のサイプを配置したブロックパターンを有している。ここで、サイプの本数を増加させると、サイプのエッジ成分が増加するものの、ブロック剛性が低下する。一般に、ブロック剛性は、氷上制動性能に影響を及ぼすため、適正に確保する必要がある。
このような課題に関する従来の空気入りタイヤとして、特許文献1、2に記載される技術が知られている。従来の空気入りタイヤでは、サイプがいわゆる三次元サイプ(立体サイプ)であり、サイプ長さ方向に垂直な断面視にてタイヤ周方向(サイプ幅方向)に屈曲した壁面形状を有している。
特許第3894743号公報 特許第4316452号公報
しかしながら、従来の空気入りタイヤでは、かかる三次元サイプを成形するために、サイプ成形金型の端部形状を三次元形状とする必要がある。かかる端部形状を形成するためのサイプ成形刃の加工は、一般に容易でない。このため、サイプ成形刃の加工を容易にして、タイヤの製造容易性を向上させるべき課題がある。
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、氷上制動性能を確保しつつ製造容易性を向上できる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、この発明にかかる空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在する複数の周方向主溝と、タイヤ幅方向に延在する複数のラグ溝と、複数の前記周方向主溝および複数の前記ラグ溝に区画されて成るブロックとを備える空気入りタイヤであって、前記ブロックが、ブロック踏面上にてタイヤ幅方向に延在すると共に少なくとも一方の端部にて前記周方向主溝に開口するサイプを有し、前記サイプが、前記ブロックの縁部に位置すると共に前記周方向主溝に開口する第一サイプ部と、前記ブロックの中央部に位置する第二サイプ部とを有し、前記第一サイプ部が、サイプ長さ方向に垂直な断面視にて直線形状を有すると共に相互に対向する一対の第一サイプ壁面と、前記第一サイプ壁面にそれぞれ配置されて相互に噛み合う凸部および凹部とを有し、且つ、前記第二サイプ部が、サイプ長さ方向に垂直な断面視にてサイプ幅方向に屈曲した形状を有すると共に相互に対向して噛み合う一対の第二サイプ壁面を有することを特徴とする。
また、この発明にかかる空気入りタイヤでは、前記第一サイプ部の凸部の高さHが0.5[mm]≦H≦3[mm]の範囲内にあることが好ましい。
また、この発明にかかる空気入りタイヤでは、前記第一サイプ部のタイヤ幅方向の長さLが1[mm]≦L≦5[mm]の範囲内にあることが好ましい。
また、この発明にかかる空気入りタイヤでは、前記第一サイプ壁面がトレッド部の平面視にて直線形状を有することが好ましい。
また、この発明にかかる空気入りタイヤでは、対向する一対の前記第一サイプ壁面が少なくとも1つの前記凸部をそれぞれ有することが好ましい。
この発明にかかる空気入りタイヤでは、サイプ端部にある第一サイプ部が、二次元形状を有する第一サイプ壁面を基調としてその一部に凹凸部を配置した構造を有するので、サイプ全体が三次元形状を有する構成と比較して、サイプ成形金型の端部形状を簡素化できる。これにより、タイヤの製造容易性が向上する利点がある。また、サイプ端部にある第一サイプ部が凹凸部を有するので、サイプ端部が凹凸部を有さない二次元形状を有する構成と比較して、凹凸部の噛み合いによりサイプの剛性が増加する。これにより、ブロック剛性が確保されて、タイヤの氷上制動性能が維持される利点がある。
図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。 図2は、図1に記載した空気入りタイヤのトレッド部を示す平面図である。 図3は、図2に記載した空気入りタイヤのブロックを示す平面図である。 図4は、図3に記載したブロックのサイプを示すI−I視断面図である。 図5は、図4に記載したサイプを示すII−II視断面図である。 図6は、図4に記載したサイプを示すIII−III視断面図である。 図7は、図4に記載したサイプの変形例を示す説明図である。 図8は、図4に記載したサイプの変形例を示す説明図である。 図9は、図4に記載したサイプの変形例を示す説明図である。 図10は、図4に記載したサイプの変形例を示す説明図である。 図11は、図4に記載したサイプの変形例を示す説明図である。 図12は、図4に記載したサイプの変形例を示す説明図である。 図13は、図4に記載したサイプの変形例を示す説明図である。 図14は、図4に記載したサイプの変形例を示す説明図である。 図15は、図4に記載したサイプの変形例を示す説明図である。 図16は、図4に記載したサイプの変形例を示す説明図である。 図17は、図4に記載したサイプの変形例を示す説明図である。 図18は、図4に記載したサイプの変形例を示す説明図である。 図19は、図4に記載したサイプの変形例を示す説明図である。 図20は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す表である。 図21は、比較例1の空気入りタイヤを示す説明図である。 図22は、比較例2の空気入りタイヤを示す説明図である。
[空気入りタイヤ]
図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。同図は、乗用車用タイヤを示している。
空気入りタイヤ1は、ビードコア11と、ビードフィラー12と、カーカス層13と、ベルト層14と、トレッドゴム15と、サイドウォールゴム16とを備える(図1参照)。ビードコア11は、環状構造を有し、左右一対を一組として構成される。ビードフィラー12は、ビードコア11のタイヤ径方向外周に配置されてタイヤのビード部を補強する。カーカス層13は、左右のビードコア11、12間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。また、カーカス層13の両端部は、ビードフィラー12を包み込むようにタイヤ幅方向外側に折り返されて係止される。ベルト層14は、積層された複数のベルト材141、142から成り、カーカス層13のタイヤ径方向外周に配置される。トレッドゴム15は、カーカス層13およびベルト層14のタイヤ径方向外周に配置されてタイヤのトレッド部を構成する。サイドウォールゴム16は、左右一対を一組として構成され、カーカス層13のタイヤ幅方向外側に配置されてタイヤのサイドウォール部を構成する。
[ブロックのサイプ構造]
図2は、図1に記載した空気入りタイヤのトレッド部を示す平面図である。図3は、図2に記載した空気入りタイヤのブロックを示す平面図である。図4は、図3に記載したブロックのサイプを示すI−I視断面図である。図5および図6は、図4に記載したブロックのサイプを示すII−II視断面図(図5)およびIII−III視断面図(図6)である。図4〜図6において、図4は、ブロックのサイプ壁面を平面視したときの様子を示している。また、図5は、ブロックの縁部におけるサイプ壁面の様子を示し、図6は、ブロックの中央部におけるサイプ壁面の様子を示している。
この空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向に延在する複数の周方向主溝21と、タイヤ幅方向に延在する複数のラグ溝22と、これらの周方向主溝21およびラグ溝22に区画されて成る複数のブロック3とをトレッド部に備える(図2参照)。例えば、この実施の形態では、3つの周方向主溝21と複数のラグ溝22とにより、4つのブロック列が形成されている。これにより、ブロック列を基調としたトレッドパターンが形成されている。
ブロック3は、複数のサイプ4を踏面に有する(図2および図3参照)。これらのサイプ4は、オープンサイプあるいはセミクローズドサイプであり、タイヤ幅方向に延在して少なくとも一方の端部にて周方向主溝21に開口する。ここでは、サイプ4の構成部分のうち、ブロック3の周方向主溝21の縁部31に位置して周方向主溝21に開口する部分を第一サイプ部41と呼び、ブロック3の中央部に位置すると共に第一サイプ部41に連通する部分を第二サイプ部42と呼ぶ。
例えば、この実施の形態では、サイプ4が、オープンサイプであり、ブロック3の踏面上にてタイヤ幅方向に延在してブロック3を横断し、ブロック3の左右の縁部31、31から周方向主溝21、21にそれぞれ開口している。したがって、1つのサイプ4が、その両端部に第一サイプ部41をそれぞれ有し、その中央部に第二サイプ部42を有している。また、左右の第一サイプ部41、41と第二サイプ部42が連通している。また、1つのブロック3が5つのサイプ4を有し、これらのサイプ4が相互に並行かつタイヤ周方向に所定間隔をあけて配列されている。
第一サイプ部41は、一対の第一サイプ壁面411、412と、凸部413および凹部414とを有する(図5参照)。一対の第一サイプ壁面411、412は、サイプ長さ方向に垂直な断面視にて直線形状を有し、相互に対向して配置される。このような、サイプ長さ方向に垂直な断面視にてサイプ深さ方向に対して屈曲しないサイプ壁面の形状を、二次元形状(平面形状)と呼ぶ。凸部413および凹部414(以下、凹凸部413、414ともいう。)は、対向する第一サイプ壁面411、412にそれぞれ配置されて相互に噛み合う。
例えば、この実施の形態では、トレッド部の平面視にて、第一サイプ部41がタイヤ幅方向に延在する直線形状を有している(図3参照)。また、1つの第一サイプ部41が、一対の第一サイプ壁面411、412と、2組の凹凸部413、414とを有している(図4参照)。また、サイプ壁面の平面視では、第一サイプ壁面411(412)が平面形状を有し、この第一サイプ壁面411(412)上に、1組目の凹部414(凸部413)と2組目の凸部413(凹部414)とがサイプ深さ方向に並べられて配置されている。したがって、ブロック踏面側とサイプ底側との双方に、凹凸部413、414がそれぞれ配置されている。また、サイプ長さ方向に垂直な断面視では、サイプ4がブロック3の踏面からタイヤ径方向に延在している(図5参照)。また、一対の第一サイプ壁面411、412が、直線形状を有し、ブロック3の踏面に対して垂直に延在している。また、凸部413および凹部414が、これらの第一サイプ壁面411、412にそれぞれ配置されている。このとき、一方の第一サイプ壁面411に凸部413が形成され、他方の第一サイプ壁面412であって凸部413に対向する位置に、凹部414が形成されている。また、上記のように、2組の凹凸部413、414がサイプ深さ方向に並べられて配置されている。
第二サイプ部42は、一対の第二サイプ壁面421、422を有する(図6参照)。これらの第二サイプ壁面421、422は、サイプ長さ方向に垂直な断面視にてサイプ幅方向に屈曲した形状を有し、相互に対向して噛み合う。このような、サイプ長さ方向に垂直な断面視にてサイプ幅方向に屈曲するサイプ壁面の形状を、三次元形状(立体形状)と呼ぶ。
例えば、この実施の形態では、トレッド部の平面視にて、第二サイプ部42がタイヤ周方向に振幅を有しつつタイヤ幅方向に延在するジグザグ形状を有している(図3参照)。また、サイプ長さ方向に垂直な断面視にて、一対の第二サイプ壁面421、422が、サイプ幅方向に振幅を有しつつサイプ深さ方向(タイヤ径方向)に延在するジグザグ形状を有している(図6参照)。また、対向する第二サイプ壁面421、422が同一方向に屈曲することにより、相互に噛み合う形状を有している。また、第二サイプ部42が、サイプ長さ方向に向かうに連れて第二サイプ壁面421、422の傾斜角度を変化させることにより、立体的な壁面形状が形成されている(図4および図6参照)。
この空気入りタイヤ1では、ブロック3がサイプ4を有することにより、ブロック3のエッジ成分が増加して、タイヤの氷上性能が向上する。また、タイヤ転動時にてブロック3に接地圧が作用すると、サイプ4が塞がって、第一サイプ部41の凹凸部413、414と第二サイプ部42の第二サイプ壁面421、422とがそれぞれ噛み合う(図示省略)。これにより、ブロック3の倒れ込みが抑制されるので、サイプ4の形成によるブロック剛性の低下が抑制される。
また、一般的なサイプは、サイプ成形金型(図示省略)により成形される。また、サイプ成形金型が立体的形状を有することにより、三次元形状を有するサイプ壁面が形成される。このとき、サイプが三次元形状の端部を有する場合には、サイプ成形金型の端部形状を三次元形状とする必要がある。しかしながら、かかる端部形状の加工は容易ではない。
この点において、この空気入りタイヤ1では、第一サイプ部41の壁面形状が第二サイプ部42の壁面形状よりも簡素なので(図4および図5参照)、サイプ成形金型の端部形状を簡素化できる。すなわち、サイプ成形金型では、第一サイプ部41を成形するための端部の形状を、第二サイプ部42を成形するための中央部の形状よりも簡素化できる。これは、第一サイプ部41が、二次元形状(平面的な壁面形状)を有する第一サイプ壁面411、412を基調とし、その一部のみに凹凸部413、414を配置した構造を有することによる。
なお、この空気入りタイヤ1では、第一サイプ部41のタイヤ幅方向の長さLが1[mm]≦L≦5[mm]の範囲内にあることが好ましい(図3参照)。これにより、サイプ成形金型の端部形状の加工が容易となる。なお、この長さLにより、第一サイプ部41の設置範囲が規定される。
また、この空気入りタイヤ1では、第一サイプ部41の凸部413の径Rが0.5[mm]≦R≦4[mm]の範囲内にあることが好ましい(図4参照)。また、第一サイプ部41の凸部413の高さHが0.5[mm]≦H≦3[mm]の範囲内にあることが好ましい(図5参照)。これらにより、凹凸部413、414が適正に噛み合うので、タイヤの氷上制動性能が向上する。
また、この空気入りタイヤ1では、第一サイプ部41のサイプ面積Saと、この第一サイプ部41における凸部413、414の配置面積の総和Spとが、0.3≦Sp/Sa≦0.7の関係を有することが好ましい(図4参照)。すなわち、凸部413は、第一サイプ部41の全面ではなく、平面的な第一サイプ壁面411(412)を残しつつ部分的に配置される。これにより、凹凸部413、414の機能を確保しつつ、サイプ成形金型の端部形状の加工を容易化できる。なお、この比Sp/Saにより、凸部413の配置密度が規定される。
[第一サイプ部の変形例]
図7〜図14は、図4に記載したサイプの変形例を示す説明図である。これらの図は、図4に記載したサイプの第一サイプ部の変形例を示している。
図4のサイプ4では、第一サイプ部41が2組の凹凸部413、414を有し、これらの凹凸部413、414が第一サイプ壁面411、412上にてサイプ深さ方向に並べて配置されている(図4および図5参照)。このとき、一方の第一サイプ壁面411に凸部413および凹部414が1つずつ配置され、他方の第一サイプ壁面412に、これらに対応する凹部414および凸部413が1つずつ配置されている(図5参照)。すなわち、対向する一対の第一サイプ壁面411、412が少なくとも1つの凸部413をそれぞれ有している。かかる構成では、ブロック3がタイヤ周方向(サイプ幅方向)のいずれの側に作用した場合にも、凹凸部413、414の噛み合いによるブロック3の倒れ込み作用が効果的に得られるので、好ましい。
しかし、これに限らず、一方の第一サイプ壁面412に2つの凸部413、413が配置され、他方の第一サイプ壁面411に2つの凹部414、414が配置されても良い(図7参照)。すなわち、凸部413のみ(凹部414のみ)が一方の第一サイプ壁面411に偏って配置されても良い。
また、図4のサイプ4では、ブロック踏面側の凸部413の高さHと、サイプ底側の凸部413の高さHとが同一に設定されている(図5参照)。しかし、これに限らず、ブロック踏面側の凸部413の高さH1がサイプ底側の凸部413の高さH2よりも大きく設定されても良い(H1>H2)(図8参照)。かかる構成では、ブロック踏面側にて凹凸部413、414の噛み合い作用が大きく得られる。これにより、倒れ込み易い踏面側におけるブロック剛性を、効果的に補強できる。
また、図4のサイプ4では、凸部413が半球形状を有している(図4および図5参照)。また、凹部414が、この凸部413に合致する半球形状を有している。しかし、これに限らず、凸部413が半楕円球形状あるいは円錐台形状を有しても良い(図示省略)。また、凸部413が半球、半楕円球あるいは円錐台を突出側の頂部とし、円柱を底部とした形状を有しても良い(図9および図10参照)。
また、図4のサイプ4では、トレッド部の平面視にて、第一サイプ部41(第一サイプ壁面411、412)が直線形状を有し、タイヤ幅方向に延在している(図3参照)。しかし、これに限らず、第一サイプ部41がタイヤ幅方向に対して傾斜して延在しても良い(図11および図12参照)。
また、図4のサイプ4では、トレッド部の平面視にて、第一サイプ部41が直線形状を有することにより、第一サイプ壁面411、412が平面形状を有している(図3および図4参照)。かかる構成では、サイプ成形金型の端部形状の加工が容易となる点で、好ましい。しかし、これに限らず、トレッド部の平面視にて、第一サイプ部41が屈曲形状あるいはジグザグ形状を有することにより、第一サイプ壁面411、412がサイプ深さ方向を折り目にして平面を折り曲げた形状を有しても良い(図13および図14参照)。ただし、サイプ長さ方向に垂直な断面視では、第一サイプ壁面411、412が屈曲部を有さずに直線形状を有している(二次元形状のサイプ壁面)。なお、かかる構成において、凸部413は、第一サイプ壁面411、412の平面部のみならず、山折り部や谷折り部にも配置され得る(図14参照)。
[第二サイプ部の変形例]
図15および図16は、図4に記載したサイプの変形例を示す説明図である。これらの図は、図4に記載したサイプの第二サイプ部の変形例を示している。
この空気入りタイヤ1では、サイプ4の第二サイプ部42が、三次元形状(サイプ長さ方向に垂直な断面視にてサイプ幅方向に屈曲した形状)の第二サイプ壁面421、422を有する(図4および図6参照)。したがって、第二サイプ部42は、二次元形状(サイプ長さ方向に垂直な断面視にて直線形状)を有する第一サイプ壁面411、412を基調として凹凸部413、414を部分的に配置した第一サイプ部41と比較して、対向する第二サイプ壁面421、422の噛み合い力が強い。
ここで、この空気入りタイヤ1では、図4の構成に限らず、第二サイプ部42が以下の構成を有しても良い(図15および図16参照)。
図15の第二サイプ部42では、第二サイプ壁面421、422が、三角錐と逆三角錐とをサイプ長さ方向に連結した構造を有する。言い換えると、第二サイプ壁面421、422が、トレッド面側のジグザグ形状と底部側のジグザグ形状とを互いにタイヤ幅方向にピッチをずらせ、該トレッド面側と底部側とのジグザグ形状の相互間で互いに対向し合う凹凸を有する。また、第二サイプ壁面421、422が、これらの凹凸において、タイヤ回転方向に見たときの凹凸で、トレッド面側の凸屈曲点と底部側の凹屈曲点との間、トレッド面側の凹屈曲点と底部側の凸屈曲点との間、トレッド面側の凸屈曲点と底部側の凸屈曲点とで互いに隣接し合う凸屈曲点同士の間をそれぞれ稜線で結ぶと共に、これら稜線間をタイヤ幅方向に順次平面で連結することにより形成される。また、一方の第二サイプ壁面421が、凸状の三角錐と逆三角錐とを交互にタイヤ幅方向に並べた凹凸面を有し、他方の第二サイプ壁面422が、凹状の三角錐と逆三角錐とを交互にタイヤ幅方向に並べた凹凸面を有する。そして、第二サイプ壁面421、422が、少なくとも第二サイプ部42の両端最外側(第一サイプ部41との接続部)に配置した凹凸面をブロック3の外側に向けている。なお、このような第二サイプ部42として、例えば、特許第3894743号公報に記載される技術が挙げられる。
また、図16の第二サイプ部42では、第二サイプ壁面421、422が、ブロック形状を有する複数の角柱をサイプ深さ方向に対して傾斜させつつサイプ深さ方向およびサイプ長さ方向に連結した構造を有する。言い換えると、第二サイプ壁面421、422が、トレッド面においてジグザグ形状を有する。また、第二サイプ壁面421、422が、ブロック3の内部ではタイヤ径方向の2箇所以上でタイヤ周方向に屈曲してタイヤ幅方向に連なる屈曲部を有し、また、該屈曲部においてタイヤ径方向に振幅を持ったジグザグ形状を有する。また、第二サイプ壁面421、422が、タイヤ周方向の振幅を一定にする一方で、トレッド面の法線方向に対するタイヤ周方向への傾斜角度をトレッド面側の部位よりもサイプ底側の部位で小さくし、屈曲部のタイヤ径方向の振幅をトレッド面側の部位よりもサイプ底側の部位で大きくする。なお、このような第二サイプ部42として、例えば、特許第4316452号公報に記載される技術が挙げられる。
[セミクローズドサイプへの適用例]
図17〜図19は、図4に記載したサイプの変形例を示す説明図である。これらの図は、サイプがセミクローズド構造を有する場合を示している。
図4に記載したサイプ4は、オープン構造を有し、ブロック3をタイヤ幅方向に横断して左右の周方向主溝21、21に開口している。また、サイプ4が、左右の端部に第一サイプ部41をそれぞれ有し、これらの第一サイプ部41、41にて周方向主溝21、21に開口している。
しかし、これに限らず、サイプ4がセミクローズド構造を有しても良い(図17〜図19参照)。例えば、図17〜図19のサイプ4は、1つの第一サイプ部41と1つの第二サイプ部42とを接続して構成されている。したがって、一方の端部が第一サイプ部41であり、他方の端部が第二サイプ部42となっている。また、サイプ4は、ブロック踏面上にてタイヤ幅方向に延在し、第一サイプ部41側の端部にて周方向主溝21に開口し、第二サイプ部42側の端部にてブロック3の中央部に終端している。このように、サイプ4は、周方向主溝21に開口する側の端部のみに、第一サイプ部41を有しても良い。
[効果]
以上説明したように、この空気入りタイヤ1では、ブロック3の踏面上にてタイヤ幅方向に延在すると共に少なくとも一方の端部にて周方向主溝21に開口するサイプ4を有する(図3参照)。また、サイプ4が、ブロック3の縁部に位置すると共に周方向主溝21に開口する第一サイプ部41と、ブロック3の中央部に位置する第二サイプ部42とを有する(図4〜図6参照)。また、第一サイプ部41が、サイプ長さ方向に垂直な断面視にて直線形状を有すると共に相互に対向する一対の第一サイプ壁面411、412と、これらの第一サイプ壁面411、412にそれぞれ配置されて相互に噛み合う凸部413および凹部414とを有する。そして、第二サイプ部42が、サイプ長さ方向に垂直な断面視にてサイプ幅方向に屈曲した形状を有すると共に相互に対向して噛み合う一対の第二サイプ壁面421、422を有する。
かかる構成では、サイプ端部にある第一サイプ部41が、二次元形状を有する第一サイプ壁面411、412を基調として、その一部に凹凸部413、414を配置した構造を有する(図4〜図6参照)。したがって、サイプ全体が三次元形状を有する構成と比較して、サイプ成形金型の端部形状を簡素化できる。これにより、タイヤの製造容易性が向上する利点がある。
また、かかる構成では、サイプ端部にある第一サイプ部41が凹凸部413、414を有するので、サイプ端部が凹凸部を有さない二次元形状を有する構成と比較して、凹凸部413、414の噛み合いによりサイプ4の剛性が増加する。これにより、ブロック剛性が確保されて、タイヤの氷上制動性能が維持される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、第一サイプ部41の凸部413の高さHが0.5[mm]≦H≦3[mm]の範囲内にあることが好ましい(図5参照)。これにより、タイヤの氷上制動性能が向上する利点がある。例えば、H<0.5[mm]となると、凹凸部413、414が噛み合い作用が得られず、十分な氷上制動性能が得られないため、好ましくない。また、3[mm]<Hとなると、対向する第一サイプ壁面411、412の間隔が広くなり過ぎるため、好ましくない。
また、この空気入りタイヤ1では、第一サイプ部41のタイヤ幅方向の長さLが1[mm]≦L≦5[mm]の範囲内にあることが好ましい(図3参照)。これにより、サイプ成形金型の端部形状の加工が容易となる利点がある。例えば、L<1[mm]となると、サイプ端部まで第二サイプ部42が延在するため、サイプ成形金型の端部形状の加工が難しくなり、好ましくない。また、5[mm]<Lとなると、第二サイプ部42の長さが短くなり、第二サイプ部42による噛み合い作用が低下するため、好ましくない。
また、この空気入りタイヤ1では、第一サイプ壁面411、412がトレッド部の平面視にて直線形状を有することが好ましい(図3参照)。これにより、サイプ成形金型の端部形状の加工が容易となる利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、対向する一対の第一サイプ壁面411、412が少なくとも1つの凸部413をそれぞれ有することが好ましい(図5参照)。かかる構成では、ブロック3がタイヤ周方向(サイプ幅方向)のいずれの側に倒れ込んだ場合にも、凹凸部413、414が適正に噛み合う。これにより、タイヤの氷上制動性能を適正に確保できる利点がある。
[性能試験および評価]
図20は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す表である。図21は、比較例1の空気入りタイヤを示す説明図である。図22は、比較例2の空気入りタイヤを示す説明図である。
この実施の形態では、条件が異なる複数の空気入りタイヤについて、氷上制動性能に関する性能試験が行われた(図20参照)。
氷上制動性能に関する性能試験では、タイヤサイズ195/65R15の空気入りタイヤがJATMA規定の適用リムに組み付けられ、この空気入りタイヤにJATMA規定の最高空気圧および最大負荷能力が付与される。そして、空気入りタイヤを装着した試験車両が凍結路面を走行し、走行速度40[km/h]からの制動距離が測定されて評価が行われる。この評価は従来例を基準(100)とした指数評価により行われ、その数値が大きいほど好ましい。ここでは、評価が100以上であれば、氷上制動性能が適性に確保されているといえる。
実施例1〜3は、図1〜4、図6および図7に記載した空気入りタイヤ1であり、実施例4は、図1〜図6に記載した空気入りタイヤ1である。これらの実施例1〜4では、サイプ4の端部が、平面形状を有する第一サイプ壁面411、412を基調として凹凸部413、414を配置して成る第一サイプ部41により構成されている。また、サイプ4の中央部が、立体形状の第二サイプ壁面421、422を有する第二サイプ部42により構成されている。
従来例の空気入りタイヤでは、サイプ全体(端部および中央部)が立体形状のサイプ壁面を有している。比較例1の空気入りタイヤでは、実施例1の空気入りタイヤ1において、第一サイプ部が凹凸部を有していない(図21参照)。比較例2の空気入りタイヤでは、実施例1の空気入りタイヤ1において、第一サイプ部が底上げされている(図22参照)。
試験結果に示すように、実施例1〜4の空気入りタイヤ1では、サイプ端部に凹凸部413、414が配置されることにより、タイヤの氷上制動性能が適正に確保されることが分かる。また、実施例1〜3を比較すると、凸部413の高さHが適正化されることにより、タイヤの氷上制動性能が向上することが分かる。また、一方の第一サイプ壁面411(412)にのみ凸部413が配置されるよりも、双方の第一サイプ壁面411、412に凸部413が配置される方が、タイヤの氷上制動性能が向上することが分かる。
以上のように、この発明にかかる空気入りタイヤは、氷上制動性能を確保しつつ製造容易性を向上できる点で有用である。
1 空気入りタイヤ、21 周方向主溝、22 ラグ溝、3 ブロック、31 縁部、4 サイプ、41 第一サイプ部、411、412 第一サイプ壁面、413 凸部、414 凹部、42 第二サイプ部、421、422 第二サイプ壁面、11 ビードコア、12 ビードフィラー、13 カーカス層、14 ベルト層、141、142 ベルト材、15 トレッドゴム、16 サイドウォールゴム

Claims (5)

  1. タイヤ周方向に延在する複数の周方向主溝と、タイヤ幅方向に延在する複数のラグ溝と、複数の前記周方向主溝および複数の前記ラグ溝に区画されて成るブロックとを備える空気入りタイヤであって、
    前記ブロックが、ブロック踏面上にてタイヤ幅方向に延在すると共に少なくとも一方の端部にて前記周方向主溝に開口するサイプを有し、
    前記サイプが、前記ブロックの縁部に位置すると共に前記周方向主溝に開口する第一サイプ部と、前記ブロックの中央部に位置する第二サイプ部とを有し、
    前記第一サイプ部が、サイプ長さ方向に垂直な断面視にて直線形状を有すると共に相互に対向する一対の第一サイプ壁面と、前記第一サイプ壁面にそれぞれ配置されて相互に噛み合う凸部および凹部とを有し、且つ、
    前記第二サイプ部が、サイプ長さ方向に垂直な断面視にてサイプ幅方向に屈曲した形状を有すると共に相互に対向して噛み合う一対の第二サイプ壁面を有することを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記第一サイプ部の凸部の高さHが0.5[mm]≦H≦3[mm]の範囲内にある請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記第一サイプ部のタイヤ幅方向の長さLが1[mm]≦L≦5[mm]の範囲内にある請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記第一サイプ壁面がトレッド部の平面視にて直線形状を有する請求項1〜3のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
  5. 対向する一対の前記第一サイプ壁面が少なくとも一つの前記凸部をそれぞれ有する請求項1〜4のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
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