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JP4874088B2 - 人工肺 - Google Patents

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JP4874088B2
JP4874088B2 JP2006353280A JP2006353280A JP4874088B2 JP 4874088 B2 JP4874088 B2 JP 4874088B2 JP 2006353280 A JP2006353280 A JP 2006353280A JP 2006353280 A JP2006353280 A JP 2006353280A JP 4874088 B2 JP4874088 B2 JP 4874088B2
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Description

本発明は、人工肺に関する。
従来、人工肺としては、多数本の中空糸膜を用いてガス交換を行う構成のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この人工肺は、ハウジングと、ハウジング内に収納された中空糸膜束と、血液流入口および血液流出口と、ガス流入口およびガス流出口とを有し、各中空糸膜を介して血液とガスとの間でガス交換、すなわち酸素加、脱炭酸ガスが行われる。
ところで、このような構成の人工肺においては、血液流入口から流入した血液中に気泡が混在している場合があるが、この場合、気泡は、中空糸膜束で除去されるのが好ましい。
しかしながら、中空糸膜束は、ガス交換を効率良く行えるように設計されており、本来気泡を除去することを意図して作製されていないため、かかる中空糸膜束では気泡が十分に除去されずに、血液中に気泡が混入したまま血液流出口から流出し、人工肺の下流へ移送されてしまうという問題があった。そのため、人工肺と患者との間の血液回路(動脈ライン)には、気泡除去の目的で動脈フィルタが設けられていた。
特開平11−47268号公報
本発明の目的は、血液中の気泡が血液流出部から流出するのを防止することができる人工肺を提供することにある。
このような目的は、下記(1)〜()の本発明により達成される。
(1) ハウジングと、
前記ハウジング内に収納され、ガス交換機能を有する中空糸膜が多数本集積された中空糸膜束と、
前記各中空糸膜の内腔をガス流路として、当該ガス流路の上流側および下流側にそれぞれ設けられたガス流入部およびガス流出部と、
前記各中空糸膜の外側を血液流路として、当該血液流路の上流側および下流側にそれぞれ設けられた血液流入部および血液流出部と、
前記中空糸膜束の前記血液流出部側に設置され、血液中の気泡を捕捉する機能を有するフィルタ部材を備えた気泡除去手段とを有する人工肺であって、
前記血液流出部は、前記ハウジングの内面と前記フィルタ部材との間に形成される血液流出側開口部と、前記ハウジングから突出する管状の血液流出口とを有するとともに、前記血液流出口の前記ハウジング側端部の近傍に、流路の横断面積が増大する流路拡大部を有し、前記血液流出側開口部と前記血液流出口とが前記流路拡大部を介して連通しており、
前記フィルタ部材を通過した血液は、前記流路拡大部でその流速を減速して前記血液流出口に至るよう構成されていることを特徴とする人工肺。
(2) 前記フィルタ部材は、メッシュ状をなすものである上記(1)に記載の人工肺。
) 前記血液流出側開口部の下流側において、前記ハウジングの内面と前記フィルタ部材との間隙距離が連続的または段階的に増大している部位を有する上記(1)または(2)に記載の人工肺。
) 前記流路拡大部は、上流側の第1拡大部と、これに続く第2拡大部とを有するものである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の人工肺。
) 前記第1拡大部は、前記ハウジングの長手方向のほぼ全長に渡って形成された溝で構成されるものである上記(4)に記載の人工肺。
) 前記流路拡大部は、前記ハウジングの長手方向のほぼ全長に渡って形成された溝で構成される第1拡大部を有する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の人工肺。
前記フィルタ部材と前記ハウジングとの間には、前記フィルタ部材を通過した血液が流れる間隙が形成されているのが好ましい。
前記間隙は、その間隙距離が前記流路拡大部に向かって増大する部分を有するのが好ましい。
前記ハウジングは、円筒状をなす胴部を有し、前記血液流出口は、前記胴部の円周の接線方向に突出しているのが好ましい。
前記ハウジングは、円筒状をなす胴部を有し、前記流路拡大部は、前記胴部の内周面の周方向の一部に形成されているのが好ましい。
前記気泡除去手段は、さらに、前記気泡を構成する気体を透過し排出する機能を有する排気用中空糸膜が多数本集積された排気用中空糸膜層を備えるのが好ましい。
前記排気用中空糸膜層は、前記中空糸膜束と前記フィルタ部材との間に位置しているのが好ましい。
前記フィルタ部材は、前記中空糸膜束または前記排気用中空糸膜層の前記血液流出部側の表面に接して設けられ、該表面のほぼ全部を覆っているのが好ましい。
前記中空糸膜束を構成する中空糸膜と、前記排気用中空糸膜層を構成する中空糸膜とは、その構成材料、特性、配設条件のうちの少なくとも1つが異なるものであるのが好ましい。
前記フィルタ部材は、親水性を有するものであるのが好ましい。
前記フィルタ部材は、1枚または2枚以上のシート状のもので構成されているのが好ましい。
前記フィルタ部材の目開きは、50μm以下であるのが好ましい。
前記気泡除去手段は、さらに、気泡を構成する気体を前記ハウジング外へ排気する排気口を備える構成のものが好ましい。
本発明によれば、フィルタ部材を通過した血液が流路拡大部でその流速が減速され、よって、フィルタ部材でトラップされた気泡が血流に乗って血液流出口に至るのが防止される。すなわち、前記血液中の気泡が血液流出部から流出するのを防止することができる。
以下、本発明の人工肺を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の人工肺の第1実施形態を示す斜視図、図2は、図1中のA−A線断面図(断面側面図)、図3は、図1に示す人工肺における人工肺部の横断面図(断面上面図)、図4は、図2中の右側下部(中空糸膜束、フィルタ部材および排気用中空糸膜層の固定部)の拡大断面図である。なお、図1および図2中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」、左側を「血液流入側」または「上流側」、右側を「血液流出側」または「下流側」として説明する。
図示の実施形態の人工肺1は、血液に対しガス交換を行う人工肺部1Aと血液に対し熱交換を行う熱交換部(熱交換器)1Bとを備える熱交換器付き人工肺であり、例えば血液体外循環回路中に設置されるものである。
この人工肺1は、人工肺部1A側のハウジング2と、熱交換器1B側の熱交換器ハウジング5とを有し、これらは連結(接合)または一体化されている。まず、人工肺部1Aについて説明する。
ハウジング2は、角筒状、すなわち横断面が四角形(長方形または正方形)をなす筒状のハウジング本体(以下「角筒状ハウジング本体」と言う)21と、角筒状ハウジング本体21の上端開口を封止する皿状の第1のヘッダー(上部蓋体)22と、角筒状ハウジング本体21の下端開口を封止する皿状の第2のヘッダー(下部蓋体)23とで構成されている。
角筒状ハウジング本体21、第1のヘッダー22および第2のヘッダー23は、それぞれ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル)、スチレン系樹脂(例えば、ポリスチレン、MS樹脂、MBS樹脂)、ポリカーボネート等の樹脂材料あるいは種々のセラミックス材料、金属材料等で構成されている。角筒状ハウジング本体21に対し、第1のヘッダー22および第2のヘッダー23は、融着や接着剤による接着等の方法により液密に固着されている。
角筒状ハウジング本体21の血液流出側の下部には、管状の血液流出ポート(血液流出口)28が突出形成されている。この血液流出ポート28の角筒状ハウジング本体21(ハウジング2)側、すなわち、上流側端部の近傍には、箱状をなす流路拡大部281が設けられている。血液流出ポート28の内腔と流路拡大部281の内腔とは、連通しており、後述するフィルタ部材41を通過した血液が通過する流路を構成している。図2および図3に示すように、流路拡大部281は、この流路の横断面積が増大した部位となっている。
人工肺1では、フィルタ部材41を通過した血液は、流路拡大部281に流入したとき、連続の式に則り、流路断面積の増加率の逆数の割合で流速が減速され、この流速が減速された状態で血液は、血液流出ポート28に至る。ここで、「連続の式」とは、流体力学における質量保存の法則の式のことである。
第1のヘッダー22の上部には、管状のガス流入ポート26が突出形成されている。また、第2のヘッダー23の下部には、管状のガス流出ポート27と、管状の排気ポート(排気口)29とが突出形成されている。ガス流入ポート26は、その途中でほぼ直角に屈曲し、先端部が血液流出ポート28と平行な方向に向いている。
なお、本発明において、ハウジング2の全体形状は、必ずしも完全な直方体形状をなしている必要はなく、例えば全部または一部の角部に面取りや丸み付けがなされているものでもよく、あるいは、一部が欠損している形状、異形部分が付加された形状などでもよい。
図2〜図4に示すように、ハウジング2の内部には、ガス交換機能を有する中空糸膜31が多数本集積された中空糸膜束3と、中空糸膜束3の血液流出ポート28(血液流出部)側に設けられた気泡除去手段4としてのフィルタ部材41および排気用中空糸膜層42とが収納されている。これらの層および部材は、血液流入側から、中空糸膜束3、排気用中空糸膜層42、フィルタ部材41の順に配置されている。
図4に示すように、中空糸膜束3を構成する中空糸膜31は、そのほとんどがほぼ平行に配置されている。この場合、各中空糸膜31は、その長手方向が上下方向(鉛直方向)となるように配置されている。
なお、中空糸膜束3における中空糸膜31の配設パターン、配設方向等は、上述したもの限定されず、例えば、各中空糸膜31が水平な方向に配置された構成、中空糸膜31同士が斜めに交差する部分(交差部)を有する構成、全部または一部の中空糸膜31が湾曲して配置された構成、全部または一部の中空糸膜31が波状、螺旋状、渦巻き状または環状に配置された構成等であってもよい。
各中空糸膜31の両端部(上端部および下端部)は、それぞれ、隔壁8および9により角筒状ハウジング本体21の内面に対し固定されている(図2参照)。隔壁8、9は、例えば、ポリウレタン、シリコーンゴム等のポッティング材により構成されている。
また、中空糸膜束3は、その幅方向の両端部がそれぞれ固着部7により、角筒状ハウジング本体21の内面に対し固定(固着)されている(図3参照)。固着部7は、前記隔壁8、9と同様の材料(ポッティング材)またはその他の接着剤で構成されている。
第1のヘッダー22と隔壁8とにより、第1の部屋221が画成されている。この第1の部屋221は、中空糸膜束3と排気用中空糸膜層42との境界部に設けられた仕切部222により、中空糸膜束3側のガス流入室261と、排気用中空糸膜層42側の小空間223とに区分されている。各中空糸膜31の上端開口は、ガス流入室261に開放し、連通している。
一方、第2のヘッダー23と隔壁9とにより、第2の部屋231が画成されている。この第2の部屋231は、中空糸膜束3と排気用中空糸膜層42との境界部に設けられた仕切部232により、中空糸膜束3側のガス流出室271と、排気用中空糸膜層42側の小空間233とに区分されている。各中空糸膜31の下端開口は、ガス流出室271に開放し、連通している(図4参照)。
各中空糸膜31の内腔は、ガスが流れるガス流路32を構成している。ガス流入ポート26およびガス流入室261により、ガス流路32の上流側に位置するガス流入部が構成され、ガス流出ポート27およびガス流出室271により、ガス流路32の下流側に位置するガス流出部が構成される。
中空糸膜束3は、角筒状ハウジング本体21の内部にほぼ隙間なく充填されており、これにより、中空糸膜束3は、全体形状としてほぼ直方体の形状をなしている。
ハウジング2内の隔壁8と隔壁9との間における各中空糸膜31は、露出しており、各中空糸膜31(中空糸膜421も同様)の外側、すなわち、中空糸膜31同士の隙間に、血液が図2中左側から右側に向かって流れる血液流路33が形成されている。
血液流路33の上流側(中空糸膜束3の上流側の面側)、すなわち角筒状ハウジング本体21と熱交換器ハウジング5との連結部には、血液流入部として、上下方向(中空糸膜31の配設方向とほぼ平行な方向)に延びる帯状またはスリット状の血液流入側開口部(血液流入側空間)24が形成されている。ハウジング2の内部と熱交換器ハウジング5の内部とは、この血液流入側開口部24を介して連通する。このような構成とすることにより、熱交換部1Bから人工肺部1Aへの血液の移送を効率良く行うことができる。
血液流入側開口部24の長さ(上下方向の長さ)は、各中空糸膜31の有効長(隔壁8の下面から隔壁9の上面までの長さ)とほぼ等しい(図2参照)か、またはそれより若干短い(有効長の70%以上)のが好ましい。これにより、熱交換部1Bから人工肺部1Aへの血液の移送を効率良く行うことができるとともに、血液流路33内で血液に対するガス交換を効率良く行うことができる。
また、血液流路33の少なくとも上流側(血液流入側開口部24側)では、血液の流れの方向は、各中空糸膜31の長手方向とほぼ直交する方向である。これにより、血液流路33を流れる血液に対し、効率の良いガス交換を行うことができる。
血液流路33の下流側(中空糸膜束3の下流側の面側)においては、後述するフィルタ部材41と角筒状ハウジング本体21の内面との間に隙間(間隙)が形成され、この隙間は、フィルタ部材41を通過した血液が流れる部位であり、血液流出側開口部(血液流出側空間)25を形成している。この血液流出側開口部25と、流路拡大部281と、流路拡大部281を介して血液流出側開口部25に連通する血液流出ポート28とで、血液流出部が構成される。また、血液流出側開口部25の間隙距離tは、一定となっている。
血液流出部は、このような血液流出側開口部25を有することにより、フィルタ部材41を透過した血液が血液流出ポート28に向かって流れる空間が確保され、血液を円滑に排出することができる。
そして、血液流入側開口部24と血液流出側開口部25との間に、中空糸膜束3、フィルタ部材41および排気用中空糸膜層42と、血液流路33とが存在している。
中空糸膜31としては、例えば、多孔質ガス交換膜が用いられる。この多孔質中空糸膜としては、内径が100〜1000μm程度、肉厚が5〜200μm程度、好ましくは10〜100μm程度、空孔率が20〜80%程度、好ましくは30〜60%程度、細孔径が0.01〜5μm程度、好ましくは0.01〜1μm程度のものを用いることができる。
また、中空糸膜31の構成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチルペンテン等の疎水性高分子材料が用いられる。好ましくは、ポリオレフィン系樹脂であり、より好ましくは、ポリプロピレンであり、延伸法または固液相分離法により壁部に微細孔が形成されたものがより好ましい。
中空糸膜束3における各中空糸膜31の長さ(有効長)は、特に限定されないが、30〜150mm程度であるのが好ましく、50〜100mm程度であるのがより好ましい。
中空糸膜束3の厚さ(図2中横方向の長さ)は、特に限定されないが、10〜100mm程度であるのが好ましく、20〜80mm程度であるのがより好ましい。
中空糸膜束3の幅(図3中縦方向の長さ)は、特に限定されないが、10〜100mm程度であるのが好ましく、20〜80mm程度であるのがより好ましい。
前述したように、中空糸膜束3の下流側(血液流出部側)には、血液中の気泡を捕捉するとともに捕捉した気泡を前記血液流路外へ排出する機能を有する気泡除去手段4が設置されている。この気泡除去手段4は、フィルタ部材41と、フィルタ部材41の上流側に設置された排気用中空糸膜層42とを有している。フィルタ部材41は、血液流路33を流れる血液中に存在する気泡を捕捉する機能を有するものであり、排気用中空糸膜層42は、フィルタ部材41で捕捉された気泡を構成する気体を透過し排出する機能を有する排気用中空糸膜421(以下単に「中空糸膜421」と言う)が多数本集積されたものである。以下では、フィルタ部材41で捕捉された気泡を構成する気体を「気泡構成気体」という。
フィルタ部材41は、ほぼ長方形をなす平坦なシート状の部材(以下単に「シート」とも言う)で構成され、その縁部(4つの辺)が隔壁8、9および両固着部7により固着されることにより、ハウジング2に対し固定されている。
このフィルタ部材41は、その片面が排気用中空糸膜層42の下流側(血液流出部側)の面に接して設けられ、該面のほぼ全面を覆っている。フィルタ部材41をこのように設けることにより、フィルタ部材41の有効面積を大きくすることができ、気泡を捕捉する能力を十分に発揮することができる。また、フィルタ部材41の有効面積が大きくなることにより、たとえフィルタ部材41の一部に目詰まり(例えば血液の凝集塊などの付着)が生じたとしても、全体として血液の流れを妨げることを防止(抑制)することができる。
フィルタ部材41の形態としては、例えば、メッシュ状(網状)をなすもの、織布、不織布、あるいはこれらを組み合わせたものが挙げられるが、このなかでも、メッシュ状(網状)をなすものが好ましく、特に、スクリーンフィルタが好ましい。これにより、気泡をより確実に捕捉することができるとともに、血液が容易に通過することができる。
メッシュ状をなすフィルタ部材41の場合、その目開きは、特に限定されないが、通常は、80μm以下であるのが好ましく、15〜60μm程度であるのがより好ましく、20〜45μmであるのがさらに好ましい。これにより、血液の通過抵抗を増大させることなく、比較的細かい気泡をも捕捉することができ、気泡の捕捉効率(除去能)が高い。
フィルタ部材41の構成材料としては、例えば、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン、セルロース、ポリウレタン、アラミド繊維等が挙げられる。特に、抗血栓性に優れ、目詰まりを生じ難いという点で、フィルタ部材41の構成材料として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリウレタンを用いるのが好ましい。
また、フィルタ部材41は、親水性を有するのが好ましい。すなわち、フィルタ部材41は、それ自体が親水性を有する材料で構成されているか、または、親水化処理(例えば、プラズマ処理等)が施されていることが好ましい。これにより、人工肺1のプライミング時の気泡除去が容易になるだけでなく、気泡が混入した血液が通過する際には、気泡の通過がより困難となるため、フィルタ部材41の気泡除去能がより向上し、血液流出ポート28からの気泡の流出をより確実に防止することができる。
このようなフィルタ部材41は、シート状(特にスクリーンフィルタのようなメッシュ)のものを1枚用いても、あるいはこれを2枚以上用いてもよい。2枚以上用いる場合、各シートは、その形態、構成材料、目開き、平坦/非平坦の別、平面形状等の条件のうちの少なくとも1つが異なるものを組み合わせて用いてもよい。
フィルタ部材41とハウジング2との間には、間隙、すなわち血液流出側開口部25が形成されている(図2〜図4参照)。これにより、フィルタ部材41がハウジング2の内面に接する(密着する)ことが抑制され、フィルタ部材41を透過した血液が血液流出側開口部25内において容易に流下し、流路拡大部281を経て血液流出ポート28へ向かって円滑に流れることができる。
フィルタ部材41の平面形状は、図示の実施形態では、長方形(または正方形)をなしているが、フィルタ部材41の平面形状はこれに限らず、例えば、台形、平行四辺形、楕円形、長円形等、その形状は特に限定されない。
また、フィルタ部材41は、図示の実施形態では、平坦なシートで構成されているが、これに限らず、非平坦なもの、例えば、全部または一部が湾曲した形状のもの、波状等に変形したもの等であってもよい。
以上のような構成のフィルタ部材41を設置したことにより、血液流路33を流れる血液中に気泡が存在していたとしてもその気泡を捕捉することができ、よって、気泡が血液流出ポート28から流出するの防止することができる。これによって、従来、動脈ラインに設けられていた動脈フィルダが不要になる。
フィルタ部材41により捕捉された気泡は、当該フィルタ部材41の上流側に位置する(フィルタ部材41と中空糸膜束3との間に位置する)排気用中空糸膜層42によって血液流路33から除去される。
図4に示すように、排気用中空糸膜層42を構成する中空糸膜421は、そのほとんどが、中空糸膜束3を構成する中空糸膜31とほぼ平行に配置されている。また、各中空糸膜421の両端部(上端部および下端部)は、それぞれ、各中空糸膜31と同様に、隔壁8および9により角筒状ハウジング本体21の内面に対し固定されている(図2参照)。
これにより、各中空糸膜421および各中空糸膜31の両端部をそれぞれ、隔壁8および9により一括して固定することができる。すなわち、人工肺1を製造する製造工程数を抑制することができる。また、各中空糸膜421を角筒状ハウジング本体21の内部にほぼ隙間なく充填することができる、すなわち、角筒状ハウジング本体21に対し中空糸膜421の高い充填効率が得られる(デッドスペースが少なくなる)。よって、人工肺部1Aの小型化、高性能化に寄与する。
また、図3に示すように、排気用中空糸膜層42は、その幅方向の両端部がそれぞれ固着部7により、角筒状ハウジング本体21の内面に対し固定(固着)されている。
各中空糸膜421の内腔は、当該中空糸膜421の壁部に形成されている多数の細孔を経て流入した気泡構成気体が流れるガス流路422を構成している。
各ガス流路422(各中空糸膜421)の上端開口は、小空間223に開放し、連通している。これにより、小空間223は、各ガス流路422を上昇した気泡構成気体を一時的に貯留する気泡貯留部として機能し得る。
また、各ガス流路422の下端開口は、小空間233に開放し、連通している(図4参照)。この小空間233は、排気ポート29と連通している。
このような構成により、各ガス流路422の下端開口から流出した気泡構成気体は、小空間233を通過し、さらに排気ポート29を通過して、人工肺1(ハウジング2)から確実に排気される。これにより、血液流路33を通過する血液中の気泡が血液流出部から流出するのを防止することができる。この排気ポート29は、気泡除去手段4の一部として機能していると言うことができる。
なお、排気用中空糸膜層42を構成する中空糸膜421と、中空糸膜束3を構成する中空糸膜31とは、同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。
各中空糸膜421と各中空糸膜31とが異なるものである場合、その構成材料、特性、配設条件のうちの少なくとも1つが異なるものであるのが好ましい。
例えば、排気用中空糸膜層42の厚さ(図2中横方向の長さ)は、10〜50mm程度とすることができる。
また、排気用中空糸膜層42の幅(図3中縦方向の長さ)は、10〜80mm程度とすることができる。
また、排気用中空糸膜層42における中空糸膜421の配設パターン、配設方向等は、例えば、各中空糸膜421が水平な方向に配置された構成、中空糸膜421同士が斜めに交差する部分(交差部)を有する構成、全部または一部の中空糸膜421が湾曲して配置された構成、全部または一部の中空糸膜421が波状、螺旋状、渦巻き状または環状に配置された構成等が挙げられる。
このように諸条件が異なることにより、次のような効果を奏する。すなわち、まず第1に中空糸膜束3で血液に対して確実にガス交換が行われ、そのガス交換が行われた血液中の気泡が排気用中空糸膜層42で確実に排出される。第2に、中空糸膜束3に対しては、ガス交換に適した諸条件の選択をすることができ、排気用中空糸膜層42に対しては、排気に適した諸条件の選択をすることができ、よって、ガス交換、排気ともに高い性能を発揮することができる。第3に、ガス交換と排気との2つの性能をもつ構造のものをそれぞれ、1つのハウジング2内に無駄なく収納することができ、よって、血液流路33の間隔(充填量)を低く抑えることができる。
なお、フィルタ部材41は、排気用中空糸膜層42の下流側の面のほぼ全部を覆うように設けられている構成に限定されず、例えば、排気用中空糸膜層42の下流側の面の一部を覆い、残部は空隙を介して設置された構成であってもよい。この場合、前記空隙は、気泡貯留部として機能する。
フィルタ部材41の上流側の、気泡を含有する血液(以下、この血液を「気泡含有血液」という)中の気泡は、フィルタ部材41で捕捉される。一方、フィルタ部材41を通過し、気泡が除去された血液は、フィルタ部材41に沿って、血液流出ポート28に向って流れる。流路拡大部281に流入した血液の流速が充分減速されることにより、血液流出ポート28に向う血流が、フィルタ部材41越しにフィルタ部材41に捕捉される気泡を引き込むこと(ベンチュリ効果)を阻止する。これにより、血液中の気泡が血液流出ポート28(血液流出部)から流出するのを確実に防止することができる。
次に、熱交換部(熱交換器)1Bについて説明する。熱交換器1Bは、熱交換器ハウジング5を有している。熱交換器ハウジング5は、ほぼ円筒状をなし、その上端および下端は閉じている。熱交換器ハウジング5の内部には、血液室50が形成されている。熱交換器ハウジング5の下端(下面)には、管状の熱媒体流入ポート52および熱媒体流出ポート53が突出形成されている。また、熱交換器ハウジング5の図2中左側の下部には、管状の血液流入ポート51が突出形成されている。血液流入ポート51の内腔は、血液室50と連通している。
熱交換器ハウジング5の内部には、全体形状が筒状をなす熱交換体54と、熱交換体54の内周に沿って配置された円筒状の熱媒体室形成部材(円筒壁)55と、熱媒体室形成部材55の内側空間を流入側熱媒体室57と流出側熱媒体室58とに区分する区画壁56とが設置されている。熱媒体室形成部材55は、熱交換体54の内側に熱媒体が一旦貯留される熱媒体室を形成する機能を有するとともに、筒状の熱交換体の変形を規制する機能を有している。
熱媒体室形成部材55および区画壁56は、熱交換器ハウジング5に対し例えば融着、接着剤による接着等の方法により固定されている。熱媒体室形成部材55と区画壁56とは、別部材でも一体的に形成されたものでもよい。
また、熱媒体室形成部材55には、その壁部を貫通する上下方向に延びた帯状の開口59a、59bが形成されている。開口59aと開口59bとは、区画壁56を介して対抗する位置に配置されている(図3参照)。開口59aは、流入側熱媒体室57に連通し、開口59bは、流出側熱媒体室58に連通している。
熱交換体54としては、図2に示すような、いわゆるベローズ型熱交換体(蛇腹管)を用いることができる。このベローズ型熱交換体54は、軸方向中央部の側面にほぼ平行に形成された多数の中空環状突起を備える蛇腹形成部と、その両端(上下端)に形成され、蛇腹形成部の内径とほぼ等しい円筒部とを備えている。この熱交換体54は、ステンレス、アルミニウム等の金属材料、またはポリエチレン、ポリカーボネート等の樹脂材料により構成されている。強度、熱交換効率の面からステンレス、アルミニウム等の金属材料が好ましい。特に、熱交換体54の軸方向(中心軸)に対してほぼ直交する凹凸が多数繰り返された波状となっている金属製のベローズ管で構成されているのが好ましい。
熱交換器ハウジング5、熱媒体室形成部材55および区画壁56の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル)、スチレン系樹脂(例えば、ポリスチレン、MS樹脂、MBS樹脂)、ポリカーボネート等の樹脂材料あるいは種々のセラミックス材料、金属材料等が挙げられる。
以下、人工肺1の熱交換部1Bにおける熱媒体の流れについて、図1〜図3を参照しつつ説明する。
熱媒体流入ポート52より流入した熱媒体は、まず流入側熱媒体室57に入り、開口59aを通って熱媒体室形成部材55の外周側に流れ込み、熱媒体室形成部材55の外周のほぼ全周に広がり、熱交換体54の蛇腹の多数の凹部(中空環状突起の内側)に入る。これにより、熱媒体に接触した熱交換体54は加温または冷却される。そして、熱交換体54の外周側を流れる血液との間で熱交換(加温または冷却)が行われる。
熱交換体54の加温または冷却に供された熱媒体は、開口59bを通って流出側熱媒体室58に入り、熱媒体流出ポート53より排出される。
なお、図示の実施形態と異なり、本発明においては、熱交換部1Bは、存在しなくてもよい。
次に、本実施形態の人工肺1における血液の流れについて、図1〜図4を参照しつつ説明する。
この人工肺1では、血液流入ポート51から流入した血液は、血液室50、すなわち熱交換器ハウジング5の内周面と熱交換体54との間に流れ込み、熱交換体54の複数の中空環状突起の外面と接触して熱交換(加温または冷却)がなされる。このようにして熱交換がなされた血液は、血液室50の下流側に集まり、血液流入側開口部24を通って人工肺部1Aのハウジング2内へ流入する。
血液流入側開口部24を経た血液は、血液流路33を下流方向に向かって流れる。一方、ガス流入ポート26から供給されたガス(酸素を含む気体)は、ガス流入室261より各中空糸膜31の内腔であるガス流路32に分配され、該ガス流路32を流れた後、ガス流出室271に集積され、ガス流出ポート27より排出される。血液流路33を流れる血液は、各中空糸膜31の表面に接触し、ガス流路32を流れるガスとの間でガス交換(酸素加、脱炭酸ガス)がなされる。
ガス交換がなされた血液中に気泡が混入している場合、この気泡は、フィルタ部材41により捕捉される。フィルタ部材41にて捕捉された気泡(気泡構成気体)は、フィルタ部材41の上流側に隣接する排気用中空糸膜層42の各中空糸膜421の壁部の多数の細孔を経て、当該中空糸膜31の内腔(ガス流路422)に入る。中空糸膜31の内腔に入った気泡構成気体は、小空間233を介して排気ポート29から排出される。
以上のようにしてガス交換がなされ、気泡が除去された血液は、血液流出ポート28より流出する。
本実施形態の人工肺1において、血液と接触する面(例えば、ハウジング2の内面、熱交換器ハウジング5の内面、熱媒体室形成部材55の表面、区画壁56の表面、固着部7、隔壁8、9の血液流路33に臨む面)は、抗血栓性表面となっていることが好ましい。抗血栓性表面は、抗血栓性材料を表面に被覆し、さらには固定することにより形成することができる。抗血栓性材料としては、ヘパリン、ウロキナーゼ、HEMA−St−HEMAコポリマー、ポリHEMA等が挙げられる。
人工肺1において、血液流入ポート51から流入する血液の流量は、患者の体格、術式(手術の方式)により異なるため、特に限定されないが、一般的に、乳児から小児では、0.1〜2.0L/分程度が好ましく、中人では、2.0〜5.0L/分程度が好ましく、成人では、3.0〜7.0L/分程度が好ましい。
人工肺1において、ガス流入ポート26から供給されるガスの流量は、患者の体格、術式により異なるため、特に限定されないが、一般的に、乳児から小児では、0.05〜4.0L/分程度が好ましく、中人では、1.0〜10.0L/分程度が好ましく、成人では、1.5〜14.0L/分程度が好ましい。
また、ガス流入ポート26から供給されるガス中の酸素濃度は、手術中の患者の酸素・炭酸ガスの代謝量により異なるため、特に限定されないが、40〜100%とすることができる。
また、人工肺1の最大連続運転時間は、患者の様態、術式により異なるため、特に限定されないが、一般的に、2〜6時間程度とすることができる。また、人工肺1の最大連続運転時間は、稀に、10時間程度の長時間に及んでもよい。
<第2実施形態>
図5は、本発明の人工肺の第2実施形態を示す縦断面図(断面側面図)である。
以下、この図を参照して本発明の人工肺の第2実施形態について説明するが、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明および図示を省略する。
本実施形態は、ハウジングの形状が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
図5に示す人工肺1’は、角筒状ハウジング本体21(ハウジング2)の下流側の壁部211が、角筒状ハウジング本体21の中心軸に対して傾斜している。すなわち、人工肺1’は、角筒状ハウジング本体21の横断面積が図5中の下方(流路拡大部281)に向って漸増している。このため、角筒状ハウジング本体21の内面(壁部211)とフィルタ部材41との間に形成された間隙の間隙距離、すなわち、血液流出側開口部25の間隙距離tが流路拡大部281に向かって(下流側に向かって)漸増(増大)するものとなる。
このように間隙距離tが漸増することにより、血液流出側開口部25を流下する血液は、流路拡大部281に到達するまでの間に、その流速がさらに減速される。このように流速が緩やかに減速することにより、血液の流れに無理がなく、血液流路33内の流れの流速分布も一様であり、その結果、血液が流れる際の圧力損失を低く抑えることができる。
なお、この間隙距離tは、下流側(下方)に向かって段階的に増加してもよい。
このような血液流出側開口部25の間隙距離tが増大した部分(下方側の部分)は、血液流出側開口部25Aの流路横断面積が拡大しているものであるため、後述する第7実施形態における第1拡大部282Aと同様の機能を発揮する。
<第3実施形態>
図6は、本発明の人工肺の第3実施形態を示す平面図、図7は、図6に示す人工肺を矢印B側から見た図(左側面図)、図8は、図7中のC−C線断面図、図9は、図7中のD−D線断面図、図10は、図6中のE−E線断面図、図11は、図9中の右側上部(中空糸膜束、フィルタ部材および排気用中空糸膜層の固定部)の拡大断面図である。なお、図6、図8および図9中の左側を「左」または「左方」、右側を「右」または「右方」という。また、図6〜図8、図10および図11中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」という。また、図6〜図11中、人工肺の内側を「血液流入側」または「上流側」、外側を「血液流出側」または「下流側」として説明する。
以下、これらの図を参照して本発明の人工肺の第3実施形態について説明するが、前述した各実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明および図示を省略する。
本実施形態は、人工肺の全体形状が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
図示の実施形態の人工肺10は、全体形状(外形形状)がほぼ円柱状をなしている。この人工肺10は、内側に設けられ、前記第1実施形態の熱交換部1Bとほぼ同様の構成の熱交換部(熱交換器)10Bと、熱交換部10Bの外周側に設けられ、血液に対しガス交換を行う人工肺部10Aと備える熱交換器付き人工肺である。
人工肺1は、ハウジング2Aを有しており、このハウジング2A内に人工肺部10Aと熱交換部10Bとが収納されている。図10に示すように、人工肺部10Aと熱交換部10Bとは、ハウジング2Aと同心的に設置されている。
また、熱交換部10Bは、ハウジング2A内において、さらに、熱交換器ハウジング5Aに収納されている。この熱交換器ハウジング5Aにより、熱交換部10Bの両端部がそれぞれハウジング2Aに対し固定されている。
ハウジング2Aは、円筒状なすハウジング本体(以下「円筒状ハウジング本体」と言う)21Aと、円筒状ハウジング本体(胴部)21Aの左端開口を封止する皿状の第1のヘッダー(上部蓋体)22Aと、円筒状ハウジング本体21Aの右端開口を封止する皿状の第2のヘッダー(下部蓋体)23Aとで構成されている。
円筒状ハウジング本体21A、第1のヘッダー22Aおよび第2のヘッダー23Aは、それぞれ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル)、スチレン系樹脂(例えば、ポリスチレン、MS樹脂、MBS樹脂)、ポリカーボネート等の樹脂材料あるいは種々のセラミックス材料、金属材料等で構成されている。円筒状ハウジング本体21Aに対し、第1のヘッダー22Aおよび第2のヘッダー23Aは、融着や接着剤による接着等の方法により液密に固着されている。
円筒状ハウジング本体21Aの外周部には、管状の血液流出ポート28が形成されている。この血液流出ポート28は、円筒状ハウジング本体21Aの外周面(円周)のほぼ接線方向に突出している(図7、図10参照)。図10に示す構成では、血液流出ポート28の外側(円筒状ハウジング本体21Aの中心から遠い側)の内面(以下「外側の内面280」と言う)が円筒状ハウジング本体21Aの内周面(正確には、内周面を血液流出ポート28内に延長した面)上にあるかまたはそれより外周側に位置する。この場合、血液流出ポート28の外側の内面280と円筒状ハウジング本体21Aの内周面を血液流出ポート28内に延長した面との距離(オフセット)Cは、例えば、0.5〜4mm程度とされる。
後述する血液流出側開口部25Aは、円筒状ハウジング本体21Aと同心的な円筒状をなしており、結果として、血液流出ポート28は、血液流出側開口部25Aの円周のほぼ接線方向に突出したものとなる。これにより、血液流出側開口部25Aを通過した血液が血液流出ポート28に円滑かつ容易に流入することができる。
この血液流出ポート28の円筒状ハウジング本体21A(ハウジング2)側近傍(上流側端部近傍)、すなわち血液流出ポート28の根元部には、箱状(または溝状)をなす流路拡大部281が設けられている。血液流出ポート28の内腔と流路拡大部281の内腔とは、連通しており、後述するフィルタ部材41Aを通過した血液が通過する流路を構成している。図8および図10に示すように、流路拡大部281は、この流路の横断面積が増大した部位となっている。
人工肺1では、フィルタ部材41Aを通過した血液は、流路拡大部281に流入したとき、前記連続の式に則り、流路断面積の増加率の逆数の割合で流速が減速され、この流速が減速された状態で血液は、血液流出ポート28に至る。
第1のヘッダー22Aには、管状の血液流入ポート201およびガス流出ポート27が突出形成されている。血液流入ポート201は、その中心軸が第1のヘッダー22Aの中心に対し偏心するように、第1のヘッダー22Aの端面に形成されている。ガス流出ポート27は、その中心軸が第1のヘッダー22Aの中心と交差するように、第1のヘッダー22Aの外周部に形成されている(図7参照)。
第2のヘッダー23Aには、管状のガス流入ポート26、排気ポート(排気口)29、熱媒体流入ポート202および熱媒体流出ポート203が突出形成されている。ガス流入ポート26および排気ポート29は、それぞれ、第2のヘッダー23Aの端面の縁部に形成されている。熱媒体流入ポート202および熱媒体流出ポート203は、それぞれ、第2のヘッダー23Aの端面のほぼ中央部に形成されている。また、熱媒体流入ポート202および熱媒体流出ポート203の中心線は、それぞれ、第2のヘッダー23Aの中心線に対してやや傾斜している。
なお、本発明において、ハウジング2Aの全体形状は、必ずしも完全な円柱状をなしている必要はなく、例えば一部が欠損している形状、異形部分が付加された形状などでもよい。
図8〜図10に示すように、ハウジング2Aの内部には、その内周面に沿った円筒状をなす人工肺部10Aが同心的に配設されて(収納されて)いる。人工肺部10Aは、円筒状の中空糸膜束3Aと、中空糸膜束3Aの外周側(血液流出部側)に設けられた気泡除去手段4Aとしてのフィルタ部材41Aおよび排気用中空糸膜層42Aとで構成されている。これらの層および部材は、血液流入側から、中空糸膜束3A、排気用中空糸膜層42A、フィルタ部材41Aの順に配置(積層)されている。
図11に示すように、中空糸膜束3Aは、ガス交換機能を有する中空糸膜31が多数本集積されたものである。この中空糸膜束3Aを構成する中空糸膜31は、そのほとんどがハウジング2Aの中心軸とほぼ平行に配置されているか、またはハウジング2Aの中心軸に対し所定の角度で傾斜して配置されている。中空糸膜31がハウジング2Aの中心軸を中心に例えば螺旋状に巻かれている場合には、後者となる。
なお、中空糸膜束3Aにおける中空糸膜31の配設パターン、配設方向等は、上述したもの限定されず、例えば、各中空糸膜31がハウジング2Aの中心軸に対して垂直な方向に配置された構成、中空糸膜31がハウジング2Aの中心軸を中心に巻かれ中空糸膜31同士が斜めに交差する部分(交差部)を有する構成、全部または一部の中空糸膜31が湾曲して配置された構成、全部または一部の中空糸膜31が波状、螺旋状、渦巻き状または環状に配置された構成等であってもよい。
各中空糸膜31の両端部(左端部および右端部)は、それぞれ、隔壁8および9により円筒状ハウジング本体21Aの内面に対し固定されている(図9および図10参照)。
また、中空糸膜束3Aは、円筒状ハウジング本体21Aと熱交換部10Bとの間にほぼ隙間なく充填されており、これにより、中空糸膜束3Aは、全体形状としてほぼ円筒状の形状をなしている。これにより、同様の形状の円筒状ハウジング本体21Aに対し、中空糸膜31の高い充填効率が得られ(デッドスペースが少なく)、人工肺部10Aの小型化、高性能化に寄与する。
ハウジング2A内の隔壁8と隔壁9との間における各中空糸膜31は、露出しており、各中空糸膜31(排気用中空糸膜層42Aの中空糸膜421も同様)の外側、すなわち、中空糸膜31同士の隙間に、血液が図2中左側から右側に向かって流れる血液流路33が形成されている。
血液流路33の上流側(中空糸膜束3Aの上流側の面側)、すなわち人工肺部10Aと熱交換部10Bとの間には、血液流入ポート201から流入した血液の血液流入部として、円筒状の血液流入側開口部(血液流入側空間)24Aが形成されている。
血液流入側開口部24Aに流入した血液は、当該血液流入側開口部24Aの周方向および長手方向に沿って流れることとなり、よって、血液流入側開口部24Aの全体に行き渡る。これにより、熱交換部10Bから人工肺部10Aへの血液の移送を効率良く行うことができる。
血液流路33の下流側(中空糸膜束3Aの下流側の面側)においては、フィルタ部材41Aの外周面と円筒状ハウジング本体21Aの内周面との間に円筒状の隙間が形成され、この隙間は、フィルタ部材41Aを通過した血液が流れる部位であり、血液流出側開口部(血液流出側空間)25Aを形成している。この血液流出側開口部25Aと、流路拡大部281と、流路拡大部281を介して血液流出側開口部25Aに連通する血液流出ポート28とで、血液流出部が構成される。また、血液流出側開口部25の間隙距離tは、当該血液流出側開口部25の周方向に一定となっている。
血液流出部は、このような血液流出側開口部25Aを有することにより、フィルタ部材41Aを透過した血液が血液流出ポート28に向かって流れる空間が確保され、血液を円滑に排出することができる。
そして、血液流入側開口部24Aと血液流出側開口部25Aとの間に、中空糸膜束3A、フィルタ部材41Aおよび排気用中空糸膜層42Aと、血液流路33とが存在している。
なお、中空糸膜束3Aの厚さ(図10中径方向の長さ)は、特に限定されないが、2〜100mm程度であるのが好ましく、3〜30mm程度であるのがより好ましい。
前述したように、中空糸膜束3Aの下流側(血液流出部側)には、血液中の気泡を捕捉するとともに捕捉した気泡を前記血液流路外へ排出する機能を有する気泡除去手段4Aが設置されている。この気泡除去手段4Aは、フィルタ部材41Aと、フィルタ部材41Aの上流側に設置された排気用中空糸膜層42Aとを有している。
フィルタ部材41Aは、ほぼ長方形をなすシート状の部材(以下単に「シート」とも言う)で構成され、そのシートを円柱状に巻回して形成したものである。フィルタ部材41Aは、両端部がそれぞれ隔壁8、9で固着されることにより、ハウジング2Aに対し固定されている(図8および図9参照)。
このフィルタ部材41Aは、その内周面が排気用中空糸膜層42Aの下流側(血液流出部側)の面に接して設けられ、該面のほぼ全面を覆っている。フィルタ部材41Aをこのように設けることにより、フィルタ部材41Aの有効面積を大きくすることができ、気泡を捕捉する能力を十分に発揮することができる。また、フィルタ部材41Aの有効面積が大きくなることにより、たとえフィルタ部材41Aの一部に目詰まり(例えば血液の凝集塊などの付着)が生じたとしても、全体として血液の流れを妨げることを防止(抑制)することができる。
なお、フィルタ部材41Aの形態としては、例えば、前記第1実施形態のフィルタ部材41と同様の形態、すなわち、メッシュ状(網状)をなすもの、織布、不織布、あるいはこれらを組み合わせたものとすることができる。
また、フィルタ部材41Aの構成材料としては、例えば、前記第1実施形態のフィルタ部材41と同様の材料を用いることができる。
また、フィルタ部材41Aは、図示の実施形態では、外径がほぼ一定なものであるが、これに限定されず、例えば、一部の外径が拡径または縮径した部分を有するものであってもよい。
以上のような構成のフィルタ部材41Aを設置したことにより、血液流路33を流れる血液中に気泡が存在していたとしてもその気泡を捕捉することができ、よって、気泡が血液流出ポート28から流出するの防止することができる。
フィルタ部材41Aにより捕捉された気泡は、当該フィルタ部材41Aの上流側に位置する排気用中空糸膜層42Aによって血液流路33から除去される。
図11に示すように、排気用中空糸膜層42Aを構成する中空糸膜421は、そのほとんどが、ハウジング2Aの中心軸とほぼ平行に配置されている(中空糸膜束3Aを構成する中空糸膜31とほぼ平行に配置されている)か、またはハウジング2Aの中心軸に対し所定の角度で傾斜して配置されている。中空糸膜421がハウジング2Aの中心軸を中心に例えば螺旋状に巻かれている場合には、後者となる。
また、各中空糸膜421の両端部(上端部および下端部)は、それぞれ、各中空糸膜31と同様に、隔壁8および9により円筒状ハウジング本体21Aの内面に対し固定されている(図8および図9参照)。
なお、排気用中空糸膜層42Aにおける中空糸膜421の配設パターン、配設方向等は、上述したもの限定されず、例えば、各中空糸膜421がハウジング2Aの中心軸に対して垂直な方向に配置された構成、中空糸膜421がハウジング2Aの中心軸を中心に巻かれ中空糸膜31同士が斜めに交差する部分(交差部)を有する構成、全部または一部の中空糸膜31が湾曲して配置された構成、全部または一部の中空糸膜421が波状、螺旋状、渦巻き状または環状に配置された構成等であってもよい。
また、排気用中空糸膜層42Aの厚さ(図10中径方向の長さ)は、特に限定されないが、1〜50mm程度であるのが好ましく、1〜30mm程度であるのがより好ましい。
図9(図8も同様)に示すように、第1のヘッダー22Aと隔壁8と熱交換部10Bの熱交換器ハウジング5Aおよび熱媒体室形成部材55とにより、第1の部屋221aが画成されている。この第1の部屋221aは、中空糸膜束3Aと排気用中空糸膜層42Aとの境界部に設けられた仕切部222により、中空糸膜束3A側のガス流出室271と、排気用中空糸膜層42A側の小空間223とに区分されている。各中空糸膜31の左端開口は、ガス流出室271に開放し、連通している。
一方、第2のヘッダー23Aと隔壁9と熱交換部10Bの熱交換器ハウジング5Aおよび熱媒体室形成部材55とにより、第2の部屋231aが画成されている。この第2の部屋231aは、中空糸膜束3Aと排気用中空糸膜層42Aとの境界部に設けられた仕切部232により、中空糸膜束3A側のガス流入室261と、排気用中空糸膜層42A側の小空間233とに区分されている。各中空糸膜31の右端開口は、ガス流入室261に開放し、連通している(図11参照)。
各中空糸膜31の内腔は、ガスが流れるガス流路32を構成している。ガス流入ポート26およびガス流入室261により、ガス流路32の上流側に位置するガス流入部が構成され、ガス流出ポート27およびガス流出室271により、ガス流路32の下流側に位置するガス流出部が構成される。
また、各中空糸膜421の内腔は、当該中空糸膜421の壁部に形成されている多数の細孔を経て流入した気泡構成気体が流れるガス流路422を構成している。
各ガス流路422(各中空糸膜421)の左端開口は、小空間223に開放し、連通している。これにより、小空間223は、各ガス流路422から流出した気泡構成気体を一時的に貯留する気泡貯留部として機能し得る。
また、各ガス流路422の右端開口は、小空間233に開放し、連通している(図11参照)。この小空間233は、排気ポート29と連通している。
このような構成により、各ガス流路422の右端開口から流出した気泡構成気体は、小空間233を通過し、さらに排気ポート29を通過して、人工肺10(ハウジング2A)から確実に排気される。これにより、血液流路33を通過する血液中の気泡が血液流出部から流出するのを確実に防止することができる。
フィルタ部材41Aの上流側の、気泡含有血液中の気泡は、フィルタ部材41Aで捕捉される。一方、フィルタ部材41Aを通過し、気泡が除去された血液は、フィルタ部材41Aに沿って、血液流出ポート28に向って流れる。流路拡大部281に流入した血液の流速が充分減速されることにより、血液流出ポート28に向う血流が、フィルタ部材41A越しにフィルタ部材41Aに捕捉される気泡を引き込むこと(ベンチュリ効果)を阻止する。これにより、血液中の気泡が血液流出ポート28(血液流出部)から流出するのを確実に防止することができる。
前述したように、人工肺部10Aの内側には、熱交換部10Bが設置されている。この熱交換部10Bは、熱交換部1Bとほぼ同様の構成であるので、その説明は省略する。
また、このように人工肺部10Aの内側に熱交換部10Bが設置されていることにより、次のような効果を奏する。すなわち、まず第1に1つのハウジング2A内に人工肺部10Aおよび熱交換部10Bを効率良く収納することができ、デッドスペースが小さく、そのため、小型の人工肺10で効率の良いガス交換を行うことができる。第2に、人工肺部10Aと熱交換部10Bとが前記第1実施形態よりも近接した状態となり、熱交換部10Bで熱交換がなされた血液が人工肺部10Aに迅速に流入することができ、よって、熱交換部10Bと人工肺部10Aとをつなぐ血液流入側開口部24A(血液流路33)中の血液の充填量を最小にすることができる。第3に、熱交換部10Bで熱交換された血液が放熱あるいは吸熱されることなく迅速に人工肺部10Aに流入することができる。
次に、本実施形態の人工肺10における血液の流れについて、図8〜図11を参照しつつ説明する。
この人工肺10では、血液流入ポート201から流入した血液は、血液室50、すなわち熱交換器ハウジング5Aの内周面と熱交換体54との間に流れ込み、熱交換体54の複数の中空環状突起の外面と接触して熱交換(加温または冷却)がなされる。このようにして熱交換がなされた血液は、熱交換器ハウジング5Aの上部に形成された開口59c、血液流入側開口部24Aを順次通過して人工肺部10Aのハウジング2A内へ流入する。
血液流入側開口部24Aを経た血液は、血液流路33を下流方向に向かって流れる。一方、ガス流入ポート26から供給されたガス(酸素を含む気体)は、ガス流入室261より各中空糸膜31の内腔であるガス流路32に分配され、該ガス流路32を流れた後、ガス流出室271に集積され、ガス流出ポート27より排出される。血液流路33を流れる血液は、各中空糸膜31の表面に接触し、ガス流路32を流れるガスとの間でガス交換(酸素加、脱炭酸ガス)がなされる。
ガス交換がなされた血液中に気泡が混入している場合、この気泡は、フィルタ部材41Aにより捕捉される。フィルタ部材41Aにて捕捉された気泡(気泡構成気体)は、フィルタ部材41Aの上流側に隣接する排気用中空糸膜層42Aの各中空糸膜421の壁部の多数の細孔を経て、当該中空糸膜31の内腔(ガス流路422)に入る。中空糸膜31の内腔に入った気泡構成気体は、小空間233を介して排気ポート29から排出される。
以上のようにしてガス交換がなされ、気泡が除去された血液は、血液流出ポート28より流出する。
<第4実施形態>
図12は、本発明の人工肺の第4実施形態を示す横断面図である。
以下、この図を参照して本発明の人工肺の第4実施形態について説明するが、前述した各実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明および図示を省略する。
本実施形態は、ハウジングの対して人工肺部が偏心して収納されていること以外は前記第3実施形態と同様である。
図12に示す人工肺10’では、ハウジング2A(円筒状ハウジング本体21A)に対して人工肺部10Aが上方に偏心して配設されている。このため、円筒状ハウジング本体21Aの内周面とフィルタ部材41Aの外周面との間に形成された間隙の間隙距離、すなわち、血液流出側開口部25Aの間隙距離tが周方向に沿って下流側に向かって、つまり、流路拡大部281に向かって漸増(増大)するものとなる。この血液流出側開口部25Aでは、間隙距離tが、上方で最小間隙距離tminとなり、下方(下流側)で最大間隙距離tmaxとなる。
なお、この最大間隙距離tmax付近の血液流出側開口部25Aは、血液流出側開口部25Aの流路横断面積が拡大しているものであるため、後述する第7実施形態における第1拡大部282Aに相当し、第1拡大部282Aと同様の機能を発揮する。
このように間隙距離tが漸増することにより、血液流出側開口部25Aを通過する血液は、流路拡大部281に到達するまでの間に、その流速がさらに減速される。そして、このように流速が緩やかに減速することにより、血液の流れに無理がなく、血液流路33内の流れの流速分布も一様であり、その結果、血液が流れる際の圧力損失を低く抑えることができる。
<第5実施形態>
図13は、本発明の人工肺の第5実施形態を示す縦断面図(断面側面図)である。
以下、この図を参照して本発明の人工肺の第5実施形態について説明するが、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明および図示を省略する。
本実施形態の人工肺1は、排気用中空糸膜層42と排気ポート(排気口)29とが存在しない以外は前記第1実施形態と同様である。すなわち、本実施形態における気泡除去手段4は、フィルタ部材41で構成されている。
また、本実施形態では、排気ポート29が存在しないことから、仕切部222および232も設けられていない。
<第6実施形態>
図14は、本発明の人工肺の第6実施形態を示す縦断面図(断面側面図)である。
以下、この図を参照して本発明の人工肺の第6実施形態について説明するが、前述した第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明および図示を省略する。
本実施形態の人工肺1’は、排気用中空糸膜層42と排気ポート(排気口)29とが存在しない以外は前記第2実施形態と同様である。すなわち、本実施形態における気泡除去手段4は、フィルタ部材41で構成されている。
また、本実施形態では、排気ポート29が存在しないことから、仕切部222および232も設けられていない。
<第7実施形態>
図15は、本発明の人工肺の第7実施形態を示す縦断面図(断面側面図)、図16は、第7実施形態の人工肺における円筒状ハウジング本体の斜視図である。
以下、これらの図を参照して本発明の人工肺の第7実施形態について説明するが、前述した第3実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。また、第3実施形態と同様の構成については、図6〜図11を代用するものとする。
本実施形態の人工肺10”は、排気用中空糸膜層42A、排気ポート(排気口)29および仕切部222、232が存在せず、また、流路拡大部の構成が異なる以外は前記第3実施形態(図6〜図11)と同様である。
本実施形態における気泡除去手段4Aは、フィルタ部材41Aで構成されており、排気用中空糸膜層42Aおよび排気ポート29を有していない。また、排気ポート29が存在しないことから、仕切部222および232(図9参照)も設けられていない。
また、本実施例における流路拡大部282は、上流側の第1拡大部282Aと、これに続く第2拡大部282Bとで構成されている。これにより、血液流出ポート28からの気泡の排出防止の効果がより顕著に発揮される。
血液流出ポート28の根元部付近(上流側端部付近)において、円筒状ハウジング本体21Aの内周面に一定の幅の溝(溝状の凹部)が円筒状ハウジング本体21Aの軸方向(長手方向)に沿って形成されており、この溝が第1拡大部282Aを構成している。換言すれば、第1拡大部282Aは、円筒状ハウジング本体21Aの内径が一部(局所的に)拡大した部分である。
なお、第1拡大部282Aが円筒状ハウジング本体21Aの内周面の全周に設けられておらず、内周面の一部に局所的に設けられていることには、次のような利点がある。すなわち、第1拡大部282Aが円筒状ハウジング本体21Aの内周面の全周に設けられていると、血液流出側開口部25Aの容積が増大し、血液のプライミングボリュームが増大するが、本実施形態のように、血液流出側開口部25Aが円筒状ハウジング本体21Aの内周面の一部に設けられている場合には、プライミングボリュームの増大を抑制しつつ、前記気泡の排出防止効果を得ることができる。
第1拡大部282Aを構成する溝は、円筒状ハウジング本体21Aの軸方向(長手方向)のほぼ全長に渡って、すなわち血液流出側開口部25Aの軸方向全長に渡って形成されているのが好ましい(図16参照)。これにより、血液流出側開口部25Aの軸方向の各部で均一かつ確実に血液の流速を減速することができるからである。
このような第1拡大部282Aの存在により、血液流出側開口部25Aの間隙距離は拡大する。すなわち、血液流出側開口部25Aの第1拡大部282Aが存在していない部分における間隙距離tを基準とした場合、第1拡大部282Aが形成された部分の間隙距離t1(第4実施形態のtmaxに相当)は、前記間隙距離tよりも大きい。t1/tは、好ましくは1.05〜12程度、より好ましくは1.05〜10程度とされる。また、t1−tは、好ましくは0.05〜20mm程度、より好ましくは0.1〜10mm程度とされる。
t1/tまたはt1−tが上記のような数値範囲内であると、第1拡大部282Aによる血液流の減速が過不足なくなされ、血液流出ポート28からの気泡の排出防止効果の向上に寄与する。
ここで、フィルタ部材41Aと血液流出ポート28の外側の内面280との距離t2は、t1と前記オフセットCとの和(t1+C)となる(図15参照)。
第1拡大部282Aの幅(溝幅)は、特に限定されないが、円筒状ハウジング本体21Aの血液流出ポート28が形成されている側の側面から見たとき(図15中下方から見たとき、図16の正面から見たとき)の第1拡大部282Aの形成領域の幅(弦の長さ)をWとしたとき、Wは、円筒状ハウジング本体21Aの内径(直径)の35〜99%程度が好ましく、45〜75%程度が好ましい。Wがこのような数値範囲内であると、第1拡大部282Aによる血液流の減速が過不足なくなされ、血液流出ポート28からの気泡の排出防止効果の向上に寄与する。
一方、第2拡大部282Bは、前記第3実施形態における流路拡大部281(血液流出ポート28の根元部に形成された流路拡大部281)と同様である。
本実施形態の人工肺10”において、血液流路(中空糸膜束3Aの中空糸膜31同士の隙間)33を下流側に向かって流れる血液は、中空糸膜束3Aの各中空糸膜31の表面に接触し、ガス流路(中空糸膜31の内腔)32を流れるガスとの間でガス交換(酸素加、脱炭酸ガス)がなされ、フィルタ部材41Aに到達する。そして、中空糸膜束3Aおよびフィルタ部材41Aを順次通過し、血液流出側開口部25Aに入った血液は、血液流出側開口部25A内をその周方向に沿って第1拡大部282Aに向かって流れ、第1拡大部282Aに流入する。このとき、血液流路の幅が前述したtからt1に拡大するため、血液の流速が減速される。第1拡大部282Aに流入した血液は、さらに第1拡大部282A内をその長手方向中央部に向かって(第2拡大部282Bに向かって)流れ、第2拡大部282Bに流入する。このときも、血液の流速が減速される。その後、血液は血液流出ポート28内を流れ、ハウジング2A外へ流出する。
血液流路33を流れる血液中に気泡が混入している場合、この気泡は、フィルタ部材41Aにより捕捉される。フィルタ部材41Aにて捕捉された気泡(気泡構成気体)は、フィルタ部材41Aの上流側(内側)にある中空糸膜31の壁部に形成された多数の細孔を経て、当該中空糸膜31の内腔(ガス流路32)に入る。中空糸膜31の内腔に入った気泡構成気体は、第1の部屋221aを経てガス流出ポート27からハウジング2A外へ排出される。
なお、以上のような血液に対するガス交換、その後の血液の流れ、血液中の気泡の除去および排出の作用等については、排気用中空糸膜層を持たない他の実施形態(第5、第6、第8、第9および第10実施形態)についても同様である。
<第8実施形態>
図17は、本発明の人工肺の第8実施形態を示す横断面図である。
以下、この図を参照して本発明の人工肺の第8実施形態について説明するが、前述した第3実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明および図示を省略する。
本実施形態の人工肺1は、排気用中空糸膜層42Aと排気ポート(排気口)29とが存在しない以外は前記第3実施形態と同様である。すなわち、フィルタ部材41Aは、その内周面が中空糸膜束3Aの下流側(血液流出部側)の面に接して設けられることとなる。本実施形態では、気泡除去手段4Aは、フィルタ部材41Aで構成されている。
また、本実施形態では、排気ポート29が存在しないことから、仕切部222および232も設けられていない。
<第9実施形態>
図18は、本発明の人工肺の第9実施形態を示す横断面図である。
以下、この図を参照して本発明の人工肺の第9実施形態について説明するが、前述した第4実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明および図示を省略する。
本実施形態の人工肺1は、排気用中空糸膜層42Aと排気ポート(排気口)29とが存在しない以外は前記第4実施形態と同様である。すなわち、フィルタ部材41Aは、その内周面が中空糸膜束3Aの下流側(血液流出部側)の面に接して設けられることとなる。本実施形態では、気泡除去手段4Aは、フィルタ部材41Aで構成されている。
また、本実施形態では、排気ポート29が存在しないことから、仕切部222および232も設けられていない。
<第10実施形態>
図19は、本発明の人工肺の第10実施形態を示す横断面図である。
以下、この図を参照して本発明の人工肺の第10実施形態について説明するが、前述した第7実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明および図示を省略する。
本実施形態の人工肺100は、流路拡大部282の構成が異なる以外は前記第7実施形態(図15、図16)と同様である。
すなわち、本実施例における流路拡大部282は、前記第7実施形態で説明したのと同様の第1拡大部282Aで構成され、第2拡大部282Bに相当するものは存在しない。
第1拡大部282Aの幅Wや、t1/t、t1−tなどの好ましい値については、前記実施形態7で述べたのと同様である。
また、本実施形態では、フィルタ部材41Aと血液流出ポート28の外側の内面280との距離t2は、t1と等しく、すなわち、オフセットC(=t2−t1)は0となる(図19参照)。
以上、本発明の人工肺を図示の各実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、人工肺を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができ、また、任意の構成物が付加されていてもよい。
例えば、ハウジングおよび熱交換器ハウジングの構造や形状、各ハウジングに対するガス流入ポート、ガス流出ポート、血液流出ポート、血液流入ポート、熱媒体流入ポートおよび熱媒体流出ポート等の形成位置や突出方向については、図示の構成と異なる構成であってもよい。また、人工肺の使用時の姿勢(鉛直方向に対する各部の位置関係)も、図示の状態に限定されない。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
(実施例1)
図15および図16に示す構成の人工肺(第7実施形態)であって、円筒状ハウジング本体(外筒)および中空糸膜束のサイズが異なる3種(品種1,2,3)の人工肺を製造した。人工肺の構造の詳細は、表1に示す。
人工肺の外筒は、図15に示されるように、血液流出ポートの根元部に流路拡大部の第2拡大部が形成され、さらに図16に示されるように、外筒内周面の第2拡大部近傍に、外筒の長手方向に沿って延在する溝状の第1拡大部が形成された構造である。中空糸膜は、テルモ(株)から市販されているCapiox(「Capiox」は登録商標)RX25,RX15,RX05で使用されているもの(中空糸膜がハウジングの中心軸を中心に螺旋状に巻かれているものであることも同様)を用いた。
フィルタ部材としては、親水性を有するポリエステル製の厚さ70μmのシート状メッシュを用いた。
(実施例2)
図19に示す構成の人工肺(第10実施形態)である品種4を製造した。人工肺の構造の詳細は、表1に示す。
人工肺の外筒は、図19に示されるように、外筒内周面に外筒の長手方向に沿って延在する溝状の第1拡大部が形成されたものである。中空糸膜束を構成する中空糸膜とフィルタ部材は、実施例1と同じである。
(比較例1)
比較例の人工肺として、テルモ(株)から市販されているCapiox(「Capiox」は登録商標)RX25(品種5),RX15(品種6),RX05(品種7)を用いた。これらには、排気用中空糸膜層およびフィルタ部材は存在しない。
また、図20に示されるように、外筒の内周面の接線と血液流出ポートの外側の内面280とが一致している。つまり、比較例1の各人工肺は、流路拡大部(第2拡大部)が存在ぜず、第1拡大部も存在しない。人工肺の構造の詳細は、表1に示す。
(比較例2)
中空糸膜束の外周面に実施例1で用いたのと同じフィルタ部材を設置した以外は、比較例1の品種5と同様の人工肺(品種8)を製造した。比較例2の人工肺の条件を下記表1に示す。
Figure 0004874088
<気泡除去性能試験>
実施例1、2および比較例1、2の各人工肺(品種1〜8)に対し、次に示す気泡除去性能試験を行った。
品種1〜8の各人工肺を血液体外循環回路に組み込み、実験動物の血液(ウシ血液、ヘマトクリット値=35%、血液温度=37℃)を下記表2に示す流量で循環させた。人工肺の血液流入ポートの直前より、気泡径の異なる様々な気泡が混在する気泡を混入させ、気泡検出器により血液流出ポートから流出する血液中の気泡の量を以下に示す条件で測定した。その結果を、下記表2に示す。
気泡検出時間:1分間
気泡数:気泡検出器で測定した気泡を気泡径10μmごとの範囲に分け、それぞれの気泡の数を集計した。
Figure 0004874088
表2に示すように、実施例1および2の各人工肺(品種1〜4)は、いずれも、高い気泡除去性能を有することが確認された。特に、流路拡大部が第1拡大部および第2拡大部で構成された実施例1の各人工肺(品種1〜3)は、気泡径の大小に係わらず気泡の流出が皆無であり、気泡除去性能が極めて高いものであった。
これに対し、フィルタ部材および流路拡大部が存在しない比較例1の人工肺(品種5〜6)は、特に気泡径80μm以下の気泡の流出が著しく、実施例1、2に比べ、気泡除去性能が格段に劣るものであった。
また、流路拡大部は存在しないがフィルタ部材を設けた比較例2の人工肺(品種8)は、フィルタ部材の存在により、比較例1の品種5に比べれば気泡の流出が多少は抑制されているが、やはり、実施例1、2に比べ気泡除去性能が劣っている。
以上のことから、フィルタ部材と流路拡大部のいずれか一方のみを設けたものより、フィルタ部材と流路拡大部(特に、第1拡大部と第2拡大部を有するもの)の双方を設けた場合には、これらを組み合わせたことの相乗効果により、気泡除去性能が格段に向上することが分かった。
本発明の人工肺の第1実施形態を示す斜視図である。 図1中のA−A線断面図(断面側面図)である。 図1に示す人工肺における人工肺部の横断面図(断面上面図)である。 図2中の右側下部(中空糸膜束、フィルタ部材および排気用中空糸膜層の固定部)の拡大断面図である。 本発明の人工肺の第2実施形態を示す縦断面図(断面側面図)である。 本発明の人工肺の第3実施形態を示す平面図である。 図6に示す人工肺を矢印B側から見た図(左側面図)である。 図7中のC−C線断面図である。 図7中のD−D線断面図である。 図6中のE−E線断面図である。 図9中の右側上部(中空糸膜束、フィルタ部材および排気用中空糸膜層の固定部)の拡大断面図である。 本発明の人工肺の第4実施形態を示す横断面図である。 本発明の人工肺の第5実施形態を示す縦断面図(断面側面図)である。 本発明の人工肺の第6実施形態を示す縦断面図(断面側面図)である。 本発明の人工肺の第7実施形態を示す横断面図である。 第7実施形態の人工肺における円筒状ハウジング本体の斜視図である。 本発明の人工肺の第8実施形態を示す横断面図である。 本発明の人工肺の第9実施形態を示す横断面図である。 本発明の人工肺の第10実施形態を示す横断面図である。 比較例の人工肺における円筒状ハウジング本体の横断面図である。
符号の説明
1、1’、10、10’、10”、100 人工肺
1A、10A 人工肺部
1B、10B 熱交換部(熱交換器)
2、2A ハウジング
21 角筒状ハウジング本体
21A 円筒状ハウジング本体
211 壁部
22、22A 第1のヘッダー
221、221a 第1の部屋
222 仕切部
223 小空間
23、23A 第2のヘッダー
231、231a 第2の部屋
232 仕切部
233 小空間
24、24A 血液流入側開口部
25、25A 血液流出側開口部
26 ガス流入ポート
261 ガス流入室
27 ガス流出ポート
271 ガス流出室
28 血液流出ポート(血液流出口)
281 流路拡大部
280 外側の内面
282 流路拡大部
282A 第1拡大部
282B 第2拡大部
29 排気ポート(排気口)
201 血液流入ポート
202 熱媒体流入ポート
203 熱媒体流出ポート
3、3A 中空糸膜束
31 中空糸膜
32 ガス流路(中空糸膜の内腔)
33 血液流路
4、4A 気泡除去手段
41、41A フィルタ部材
42、42A 排気用中空糸膜層
421 中空糸膜(排気用中空糸膜)
422 ガス流路
5、5A 熱交換器ハウジング
50 血液室
51 血液流入ポート
52 熱媒体流入ポート
53 熱媒体流出ポート
54 熱交換体
55 熱媒体室形成部材
56 区画壁
57 流入側熱媒体室
58 流出側熱媒体室
59a 開口
59b 開口
59c 開口
7 固着部
8、9 隔壁
t 間隙距離
t1 間隙距離
min 最小間隙距離
max 最大間隙距離
C オフセット

Claims (6)

  1. ハウジングと、
    前記ハウジング内に収納され、ガス交換機能を有する中空糸膜が多数本集積された中空糸膜束と、
    前記各中空糸膜の内腔をガス流路として、当該ガス流路の上流側および下流側にそれぞれ設けられたガス流入部およびガス流出部と、
    前記各中空糸膜の外側を血液流路として、当該血液流路の上流側および下流側にそれぞれ設けられた血液流入部および血液流出部と、
    前記中空糸膜束の前記血液流出部側に設置され、血液中の気泡を捕捉する機能を有するフィルタ部材を備えた気泡除去手段とを有する人工肺であって、
    前記血液流出部は、前記ハウジングの内面と前記フィルタ部材との間に形成される血液流出側開口部と、前記ハウジングから突出する管状の血液流出口とを有するとともに、前記血液流出口の前記ハウジング側端部の近傍に、流路の横断面積が増大する流路拡大部を有し、前記血液流出側開口部と前記血液流出口とが前記流路拡大部を介して連通しており、
    前記フィルタ部材を通過した血液は、前記流路拡大部でその流速を減速して前記血液流出口に至るよう構成されていることを特徴とする人工肺。
  2. 前記フィルタ部材は、メッシュ状をなすものである請求項1に記載の人工肺。
  3. 前記血液流出側開口部の下流側において、前記ハウジングの内面と前記フィルタ部材との間隙距離が連続的または段階的に増大している部位を有する請求項1または2に記載の人工肺。
  4. 前記流路拡大部は、上流側の第1拡大部と、これに続く第2拡大部とを有するものである請求項1ないし3のいずれかに記載の人工肺。
  5. 前記第1拡大部は、前記ハウジングの長手方向のほぼ全長に渡って形成された溝で構成されるものである請求項4に記載の人工肺。
  6. 前記流路拡大部は、前記ハウジングの長手方向のほぼ全長に渡って形成された溝で構成される第1拡大部を有する請求項1ないし3のいずれかに記載の人工肺。
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