JP4633210B2 - 手術用顕微鏡装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は手術用顕微鏡装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
(1)脳神経外科における脳腫瘍摘出術では、手術用顕微鏡の観察下で実施される所謂、マイクロサージャリが中心となっている。特開平9−24052号公報は、マイクロサージャリにおいて、脳腫瘍を確実に摘出するために腫瘍位置の認識にあたって蛍光観察を用いる方法を開示している。
【0003】
(2)また、特願平10−248672号は、術前に診断用に実施されるCTスキャンやMRIの画像情報を基に3次元画像データを構築し、手術における患者頭部と、顕微鏡観察位置の空間的相関を取り、前記3次元画像データを基に手術の支援を行なう“ナビゲーション装置”を提案している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記した特開平9−24052号公報に開示されている技術によれば、観察状態での腫瘍位置を確実に認識することは可能であるが、得られるのはあくまでもその時(摘出途中での)の観察表面での腫瘍露出面に関する情報のみである。したがって腫瘍全体の情報(見えない奥行き情報)はあくまでも術前情報に頼らざるを得ない。
【0005】
また、特願平10−248672号では、腫瘍全体のイメージが術中にその観察点における断層画像情報として得られるが、手術用顕微鏡の3次元的な観察面において焦点位置の断層画像情報しか得られないので、手術の進行に伴い、術者がその断層画像情報を基に腫瘍位置を判断して認識しなければならない。
【0006】
さらに、上記した従来技術を組み合わせたとしても上記の問題を解決することはできず、術者がお互いに断片的な画像情報を組み合わせて腫瘍位置を判断して、認識しなければならない。
【0007】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、その目的とするところは、術者が容易に術中における手術の進行状況を把握し、より確実、安全な手術を行なうことができる手術用顕微鏡装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る手術用顕微鏡装置は、実体顕微鏡光学系を有する顕微鏡と、前記顕微鏡の観察位置を検出して、術部の診断画像との位置関係を演算する位置演算手段と、顕微鏡観察部位の蛍光観察像を撮影して蛍光観察画像を取得する蛍光撮影手段と、顕微鏡観察部位の照明光観察像を撮影して照明光観察画像を取得する照明光撮影手段と、蛍光画像観察モードと照明光観察モードとを設定可能な表示モード設定手段と、前記表示モード設定手段の設定状態に基づいて、前記位置演算手段で検出された観察位置に対応する診断画像と、前記蛍光撮影手段により取得された蛍光観察画像と、前記照明光撮影手段による照明光観察画像と、を重畳して表示する表示手段と、を具備する。
【0009】
また、本発明の第2の態様に係る手術用顕微鏡装置は、実体顕微鏡光学系を有する顕微鏡と、前記顕微鏡の観察位置を検出して、術部の診断画像との位置関係を演算する位置演算手段と、前記位置演算手段で検出された観察位置に対応する診断画像を、左右視差を有する2つの画像信号に分割する画像分割手段と、顕微鏡観察部位の蛍光観察像を立体撮影して蛍光観察画像を取得する蛍光撮影手段と、顕微鏡観察部位の照明光観察像を撮影して照明光観察画像を取得する照明光撮影手段と、蛍光画像観察モードと照明光観察モードとを設定可能な表示モード設定手段と、前記表示モード設定手段の設定状態に基づいて、前記左右画像に分割された診断画像と、前記照明光撮影手段により取得された各々の前記蛍光観察画像と、前記照明光撮影手段による照明光観察画像と、を重畳して表示する表示手段と、を具備する。
【0010】
また、本発明の第3の態様に係る手術用顕微鏡装置は、本発明の第1または第2の態様に係る手術用顕微鏡装置において、前記表示モード設定手段の設定状態に基づいて、照明系に関して配置された照明光切り替えフィルタ、及び観察光学系に関して配置された観察光切り替えフィルタ、の光軸上への移動を制御して前記蛍光撮影手段による撮影と、前記照明光撮影手段による撮影とを切り替えるフィルタ駆動制御部をさらに具備する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0012】
(第1実施形態)
以下に本発明の第1実施形態を説明する。ここでは術部の位置を検出可能な位置検出手段を備えた手術用顕微鏡における蛍光画像観察装置の構成について説明する。
【0013】
図1は、術部の位置を検出可能な位置検出手段を備えた手術用顕微鏡の構成をを示している。この構成は本出願人による特願平10−319190に記載されているのでここでは簡単に説明する。1は手術用顕微鏡であり、術者8が患者7の術部を観察するための観察光学系を構成する鏡体2を備えている。鏡体2には発光指標3が設けられている。
【0014】
4はデジタイザであり、受信部材としての2台のCCDカメラ5a、5bと、これらのカメラを支持するためのカメラ支持部材6を具備している。デジタイザ4はCCDカメラ5a、5bにより、鏡体2の発光指標3を検出して顕微鏡の観察位置を検出する光学式位置検出手段としての機能を有する。
【0015】
図2は手術用顕微鏡1の照明系の構成を示し、図3は手術用顕微鏡1の観察光学系の構成を示す図である。図2は図3の位置Aから見たときの構成図である。
【0016】
図2に示される照明系は、光源9と、光源9から発せられた照明を患者7の術部Pに導くため、集光レンズ10、照明レンズ12、ビームスプリッタ13を備えている。
【0017】
照明光切替えフィルタ11は、術部Pに対する照明光を透過する照明光透過フィルタ11aと、蛍光を誘発する励起光のみを透過する励起光透過フィルタ11bと、これら2つのフィルタを切り替える切り替え機構としての駆動用モータ11cを有し、術部Pに対する照明光切替え手段となっている。さらに、術部Pで反射される光を観察するために、対物レンズ14と、ズーム光学系15と、ビームスプリッタ16とが設けられている。
【0018】
また、図3に示される観察光学系は、ズーム光学系15L、15Rに加えて、ビームスプリッタ16L及び16Rと、接眼レンズ17L及び17Rとを備えている。術部Pからの像はビームスプリッタ16Lで撮影系を構成するレンズ18L、ミラー20L、撮像素子21Lへと到達する。
【0019】
観察光切替えフィルタ19Lは、術部Pに対する照明光を透過する照明光透過フィルタ19L1と、励起光及び照明光を遮断する遮断フィルタ19L2と、これら2つのフィルタを切り替える切り替え機構としての駆動用モータ19L3を有し、術部Pに対する観察光切替え手段となっている。
【0020】
図4は手術用顕微鏡1全体の機能ブロック図である。図4において、モータ11c及びモータ19L3は、蛍光画像観察用の入力スイッチ(表示モード設定手段)22の信号に基づいて、これらモータを同時に制御可能なフィルタ駆動制御部23に接続されている。フィルタ駆動制御部23は、照明光切替えフィルタ11の照明光透過フィルタ11aと、観察光切り替えフィルタ19Lの照明光透過フィルタ19L1とが同時に光軸上に位置するように、モータ11c、モータ19L3を制御する機能をもつ。さらにフィルタ駆動制御部23は、照明光切り替えフィルタ11の励起光透過フィルタ11bと、観察光切替えフィルタ19Lの遮断フィルタ19L2とが同時に光軸上に位置するように、モータ11c、モータ19L3を制御する機能をもつ。この制御により、一定時間の蛍光観察状態から、図示しないタイマ回路により通常の(可視域)観察状態に移行させることができる。
【0021】
さらに映像信号処理部28には撮像素子21Lが接続されている。この撮像素子21Lは、図示しない駆動処理回路と、映像信号生成回路とから構成される。メモリ(記憶手段)29は、蛍光画像観察の入力スイッチ22の信号に基づき動作可能であり、映像信号処理部28を介して映像信号化された信号を2値化処理する図示しない2値化処理回路と、画像メモリとから構成される。
【0022】
さらにワークステーション(以下WSと呼ぶ)25には、発光指標3が設けられている手術用顕微鏡1の使用時の倍率や焦点距離等の情報を伝達可能な鏡体制御部26と、発光指標3を検出することで術部Pの位置を検出可能なデジタイザ24と、モニタ27と、ミキサー30とが接続されている。ここで、上記した鏡体制御部26は、手術用顕微鏡1の倍率、焦点情報を検知可能である。倍率、及び焦点情報が変更されると、鏡体制御部26からWS25にこれら情報が伝達され、WS25は、これとデジタイザ24からの位置情報を加味して手術位置に対応した術前画像を選び出す。上記したデジタイザ24とWS25とは位置演算手段を構成する。
【0023】
ミキサー30は、WS25、映像信号処理部28、メモリ29のそれぞれに接続され、WS25、映像信号処理部28、メモリ29のそれぞれから伝達される映像信号を重畳する機能をもち、重畳された映像信号を鏡体外部のモニタ31に表示することが可能である。上記ミキサー30とモニタ31とは表示手段を構成する。
【0024】
上記した構成において、手術用顕微鏡の観察位置の検出は、手術用顕微鏡に設けられた発光指標3をデジタイザ24により検出し、検出された発光指標3との位置相関をWS25により演算処理することにより行う。これにより、WS25内に記憶されている患者の診断画像としての術前2次元断層画像との相関をとることができる(このような装置はナビゲーション装置と呼ばれている)。
【0025】
図5は本発明の作用を説明するためのチャート図である。照明光による像と蛍光像を同時に撮影する方法は、特開平9−24052号公報に詳細に開示されているので、ここでは本発明の特徴的部分のみを以下に示す。
【0026】
蛍光画像観察の入力スイッチ22をONの状態にする(A1)と、フィルタ駆動制御部23がモータ11c及びモータ19L3を制御して(A2−1)、照明光切替えフィルタ11の励起光透過フィルタ11bと、観察光切替えフィルタ19Lの遮断フィルタ19L2とを同時に光軸上に位置させる。
【0027】
この状態で蛍光撮影(A3−1)が行なわれる。すなわち、照明光切替えフィルタ11の励起光透過フィルタ11bを通過した光は術部Pに照射されて蛍光を誘発する。観察光切替えフィルタ19Lの遮断フィルタ19L2で照明光と励起光を遮断し、術部Pで誘発された蛍光検出像のみがミラー20Lで反射され、撮像素子21Lに入射する。
【0028】
撮像素子21Lに入射された蛍光検出像は、映像信号処理部28で映像信号化され、メモリ29及びミキサー30に入力される。メモリ29に入力された映像信号は2値化処理(A4)された後、さらにミキサー30に入力されて蛍光観察画像としてモニタ31に表示される。
【0029】
そしてフィルタ駆動制御部23により、モータ11c、モータ19L3を制御して、照明光切替えフィルタ11の照明光透過フィルタ11aと、観察光切り替えフィルタ19Lの照明光透過フィルタ19L1とを同時に光軸上に位置させると、術部Pには照明光が照射されてその像が撮像素子21Lに入射される。この照明光は映像信号処理部28で処理されてミキサー30に入力される。
【0030】
上記の処理と並行して、デジタイザ24により検出した発光指標3に基づいて求められた術部Pの観察位置情報(A2−2)と、鏡体制御部26からWS25に伝達される手術用顕微鏡1の倍率と焦点情報と、に適合した術前2次元画像を、WS25に予め記録されたものの中から選択して(A3−2)、ミキサー30に入力する。
【0031】
ミキサー30は、映像信号処理部28から入力された照明光による映像と、メモリ29により2値化された蛍光像と、WS25より選択されて入力された術前画像を合成(重畳)する(A5)。
【0032】
この状況においては、フィルタ駆動制御部23により照明光路では照明光透過フィルタ11aが、撮影光路では照明光透過フィルタ19L1が選択され、撮像素子21Lでは通常の可視域の画像が撮影されており、術者が現在観察している術部の観察画像に、上記蛍光観察による腫瘍位置と、WS25で選択された術前2次元断層画像による腫瘍位置が重畳されてモニタ31に表示される。
【0033】
図6は蛍光観察像と術前2次元断層画像との合成について説明するための図である。
【0034】
図6の頭部全体像41のうち術部としての腫瘍全体像42において、術中の処置位置(腫瘍露出部44)である曲面から得られた蛍光像による平面画像(蛍光観察像)45aと、WS25が顕微鏡観察位置として選択した術前2次元断層画像45bとを合成してモニタ上31に表示することができる。
【0035】
この時、術者が焦準操作を行なって焦点中心位置をBからCへ移動すれば、その観察中心(焦点深度中心)をデジタイザ24及びWS25により検出して対応する断層画像を選択し、前記蛍光観察画像と合成することができる。蛍光観察を終了するためには、術者は入力スイッチ22をオフにする事でこれらの重畳表示は実施されてなくなる。
【0036】
上記した第1実施形態によれば以下の効果を有する。顕微鏡観察位置における診断画像としての断層画像を表示するだけでは実際の処置部位が平面でないために一致し難いが、本実施形態の構成を用いれば、蛍光観察画像に、現在の処置位置に関する焦準操作による断層画像が重ねて表示されるので、手術の進行具合や、その先の腫瘍の状況が視覚的に確認できるようになる。
【0037】
また、蛍光観察画像を術前2次元断層画像と重ねて表示する事により、術前の断層画像に従って手術を進めていても、術中の蛍光観察画像により位置の補足修正について術者が認識できるので修正が容易に行える。
【0038】
また、入力スイッチ操作により重畳観察を行なうモードを設定できるため、必要に応じて選択的に重畳観察を行うことが可能となる。また、WSからの断層画像について、腫瘍部の外形のみを強調させたい場合には、蛍光観察画像とで表示色を異ならせることにより、術者が容易に識別する事が可能になる。
【0039】
(第2実施形態)
以下に本発明の第2実施形態を説明する。図7及び図8に第2実施形態に関する構成を示す。左右の術部観察像の処理は、同様であるのでここでは左側のみについて説明する。
【0040】
照明光または励起光を術部に照射し、その像を撮像素子21Lが得る構成は第1実施形態と同様である。撮像素子21Lは、映像信号化する映像信号処理部35Lに接続され、映像信号処理部35Lから出力される信号は左側メモリ36Lに入力される。左側メモリ36Lは画像を2値化する機能を有し、その信号は複数の映像を重ね合わせることのできる左側ミキサー37Lに入力される。左側ミキサー37Lと右側ミキサー37Rの出力信号は3Dコンバータ39に入力されて3次元映像化され、これによって映像を3Dモニタ40に映し出すことができる。
【0041】
また、左側映像信号処理部35Lと右側映像信号処理部35Rの出力信号は3Dコンバータ39に入力されて3Dコンバータ39で3次元映像化され、3Dモニタ40に表示することができる。
【0042】
WS25は、3次元の映像を、左右の視差のある画像に分割処理できる左右画面分割手段38に入力可能であり、左側の映像を作成して左側ミキサー37Lに入力する。左側ミキサー37Lは左側モニタ34Lに接続されている。さらに、接眼レンズ17Lに左側モニタ34Lの映像を導くため、レンズ33Lとビームスプリッタ32Lを有している(図7参照)。
【0043】
上記した構成において、蛍光を励起し、その蛍光像が左右の撮像素子21L及び21Rに至る過程は第1実施形態と同様である。撮像素子21L及び21Rに入力された映像の処理は同様であるのでここでは左側の処理のみについて説明する。撮像素子21Lで得られた蛍光像は左側映像信号処理部35Lに入力されて映像信号化され、左側メモリ36Lと3Dコンバータ39に入力される。
【0044】
また、WS25に記録されている術前断層画像情報に基づく立体画像情報を左右の視差のある画像に分けるために、術前断層画像が左右画面分割手段38に入力される。左右画面分割処理手段38で作られた左側の画像は、左側ミキサー37Lにおいて、左側映像信号処理部35Lからの信号を2値化する処理を行う左側メモリ36Lからの信号と重ね合わされる。
【0045】
左側ミキサ37Lから出力された合成画像は、3Dコンバータ39及び左側モニタ34Lに入力される。3Dコンバータ39では左側ミキサ37L及び右側ミキサ37Rからの映像を3次元構築して3Dモニタ40に映し出すことができる。
【0046】
また、左側モニタ34Lに入力された光は、レンズ33L及びズームスプリッタ32Lを介して接眼レンズ17Lに導かれる。
【0047】
以上により、照明光による術部Pの観察像と、術部Pに対する励起光照射による蛍光観察像と、術前画像による3次元画像とを術者の視野内及び3Dモニタ40に同時に映し出すことが可能となる。この場合、図10に示すような腫瘍の3次元的外形図(腫瘍3次元画像47)に対して、蛍光観察画像による現在の処置断面情報が3次元で重畳され、腫瘍全体における現在の進行状況が確認できる。図10において、外形は位置検出機能により構成され、点線は蛍光画像による術部立体映像を示している。
【0048】
上記した第2実施形態によれば、顕微鏡観察における光学観察像に重畳されているために、腫瘍全体に対する術部Pの現在の処置位置、進行状況を3次元的に知ることができ、今後の処置を進めるべく方向もより正確に認識できる。術前の断層画像による全体外形との位置のずれが生じている事も認識でき、その補正も立体観察により詳細な補正が可能になり、より安全性の高い手術を行う環境を提供できる。
【0049】
(第3実施形態)
以下に本発明の第3実施形態を説明する。ここでは第2実施形態と異なる点のみについて説明する。図9は第3実施形態の構成を示す図である。映像信号処理部35Lに入力された照明光による像の信号は、左側ミキサー37Lに入力される。第3実施形態では左側ミキサー37Lは左側視野内表示コントローラ48Lに接続されている。この左側視野内表示コントローラ48Lは、特願平10−248672号の図1で説明される視野内表示装置(視野内表示コントローラと鏡筒部)の構成要素である視野内表示コントローラと同様のものである。第3実施形態では、顕微鏡観察視野の一部に、第2実施形態の表示を顕微鏡観察視野とは別の画像表示として表示、観察する実施形態となっている。
【0050】
上記した構成において、左側映像信号処理部35Lに入力された照明光による像の信号は左側ミキサー37Lに入力される。左側ミキサー37Lでは、照明光による顕微鏡像と、励起光による蛍光画像と、術部位置に応じて選択された術前画像とが合成され、左側視野内表示コントローラ48Lに入力される。左側視野内表示コントローラ48Lに入力された映像は、視野内表示装置により、視野内表示像として表示され、顕微鏡像には術部の照明光による像のみが可視となる。
上記した第3実施形態によれば、第2実施形態の効果に加えて次のような効果がある。照明光による顕微鏡像では図11に示すように、術者が確認できない腫瘍露出部101を、重畳された上記視野内表示像と比較することにより認識することができる。また、顕微鏡画像100を、術前画像及び蛍光観察画像で遮ることなくかつ邪魔にならずに腫瘍の3次元形状と腫瘍全体における術部の位置を把握することができる。
【0051】
(付記)
なお、上記した具体的な実施形態から以下のような構成の発明が抽出される。
【0052】
1. 実体顕微鏡光学系を有する顕微鏡と、
前記顕微鏡の観察位置を検出して、術部の診断画像との位置関係を演算する位置演算手段と、
顕微鏡観察部位の蛍光観察像を立体撮影して蛍光観察画像を取得する蛍光撮影手段と、
前記蛍光観察画像を記憶するための記憶手段と、
前記位置演算手段で検出された観察位置に対応する診断画像を、左右視差を有する2つの画像信号に分割する画像分割手段と、
前記記憶された各々の蛍光観察画像と、前記左右画像に分割された診断画像を、術部の観察像に重畳して表示する表示手段と
を具備することを特徴とする手術用顕微鏡装置。
【0053】
2. 実体顕微鏡光学系を有する顕微鏡と、
前記顕微鏡の観察位置を検出して、術部の診断画像との位置関係を演算する位置演算手段と、
顕微鏡観察部位の蛍光観察像を立体撮影して蛍光観察画像を取得する蛍光撮影手段と、
前記蛍光観察画像を記憶するための記憶手段と、
任意の表示モードを設定可能な表示モード設定手段と、
前記位置演算手段で検出された観察位置に対応する診断画像を、左右視差を有する2つの画像信号に分割する画像分割手段と、
前記表示モード設定手段の設定状態に応じて、前記記憶された各々の蛍光観察画像と、前記左右画像に分割された診断画像を、術部の観察像に重畳する重畳手段と、
各々の画像を表示するモニタ部を備えた鏡筒部と、
を具備することを特徴とする手術用顕微鏡装置。
【0054】
3. 1.または2.において、前記蛍光撮影手段は、照明光路及び撮影光路に設けられた波長制限用のフィルタ駆動制御部を含む。
【0055】
4. 2.において、前記鏡筒部は、左右の表示モニタと、投影光学系と、顕微鏡部の各々の観察光路上に、前記投影光学系からの光路を重畳するプリズムとを有する。
【0056】
5. 2.において、前記鏡筒部は、左右の表示モニタと、投影光学系と、顕微鏡部の各々の観察光路上に、前記投影光学系からの光路と、顕微鏡観察用の光路の一部とを切り替えるプリズムとを有する。
【0057】
6. 実体顕微鏡光学系を有する顕微鏡と、
前記顕微鏡の観察位置を検出して、術部の断層画像との位置関係を演算する位置演算手段と、
顕微鏡観察部位の蛍光観察像を撮影して蛍光観察画像を取得する蛍光撮影手段と、
前記位置演算手段で検出された観察位置に対応する断層画像と、前記蛍光撮影手段により取得された蛍光観察画像とを重畳して表示する表示手段と
を具備することを特徴とする手術用顕微鏡。
【0058】
7. 実体顕微鏡光学系を有する顕微鏡と、
前記顕微鏡の観察位置を検出して、術部の断層画像との位置関係を演算する位置演算手段と、
顕微鏡観察部位の蛍光観察像を撮影して蛍光観察画像を取得する蛍光撮影手段と、
前記蛍光観察画像を記憶するための記憶手段と、
前記位置演算手段で検出された観察位置に対応する断層画像と、前記記憶手段に記憶された蛍光観察画像とを、術部の観察像に重畳して表示する表示手段と
を具備することを特徴とする手術用顕微鏡装置。
【0059】
8. 実体顕微鏡光学系を有する顕微鏡と、
前記顕微鏡の観察位置を検出して、術部の断層画像との位置関係を演算する位置演算手段と、
顕微鏡観察部位の蛍光観察像を撮影して蛍光観察画像を取得する蛍光撮影手段と、
前記蛍光観察画像を記憶するための記憶手段と、
任意の表示モードを設定可能な表示モード設定手段と、
前記表示モード設定手段の設定状態に応じて、前記位置演算手段で検出された観察位置に対応する断層画像と、前記記憶手段に記憶された蛍光観察画像とを、術部の観察像に重畳して表示する表示手段と
を具備することを特徴とする手術用顕微鏡装置。
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、蛍光撮影手段により撮影された蛍光観察像と、位置演算手段により検出された観察位置に応じて選択された診断画像とを重畳させて表示するようにしたので、術者は、摘出すべき腫瘍の状況を正確に認識することができる。これによって術者はより正確に摘出術が行なえ、かつ摘出操作に専念できる。また、腫瘍部分だけを確実に摘出する事ができ、低侵襲の目的をも達成する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る手術用顕微鏡1の構成を示す図である。
【図2】手術用顕微鏡1の照明系の構成を示す図である。
【図3】手術用顕微鏡1の観察光学系の構成を示す図である。
【図4】手術用顕微鏡1全体の機能ブロック図である。
【図5】本発明の作用を説明するためのチャート図である。
【図6】蛍光観察像と術前2次元断層画像との合成について説明するための図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る観察光学系の構成を示す図である。
【図8】手術用顕微鏡1全体の機能ブロック図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る手術用顕微鏡1全体の機能ブロック図である。
【図10】腫瘍の3次元的外形図である。
【図11】本発明の第3実施形態の効果を説明するための図である。
【符号の説明】
1 手術用顕微鏡
2 鏡体
3 発光指標
4 デジタイザ
5a、5b CCDカメラ
6 カメラ支持部材
7 患者
8 術者
11c モータ1
19L3 モータ2
21L 撮像素子
22 蛍光画像観察の入力スイッチ
23 フィルタ駆動制御部
24 デジタイザ
25 ワークステーション(WS)
26 鏡体制御部
27 モニタ
28 映像信号処理部
29 メモリ
30 ミキサ
31 モニタ
Claims (3)
- 実体顕微鏡光学系を有する顕微鏡と、
前記顕微鏡の観察位置を検出して、術部の診断画像との位置関係を演算する位置演算手段と、
顕微鏡観察部位の蛍光観察像を撮影して蛍光観察画像を取得する蛍光撮影手段と、
顕微鏡観察部位の照明光観察像を撮影して照明光観察画像を取得する照明光撮影手段と、
蛍光画像観察モードと照明光観察モードとを設定可能な表示モード設定手段と、
前記表示モード設定手段の設定状態に基づいて、前記位置演算手段で検出された観察位置に対応する診断画像と、前記蛍光撮影手段により取得された蛍光観察画像と、前記照明光撮影手段による照明光観察画像と、を重畳して表示する表示手段と、
を具備することを特徴とする手術用顕微鏡装置。 - 実体顕微鏡光学系を有する顕微鏡と、
前記顕微鏡の観察位置を検出して、術部の診断画像との位置関係を演算する位置演算手段と、
前記位置演算手段で検出された観察位置に対応する診断画像を、左右視差を有する2つの画像信号に分割する画像分割手段と、
顕微鏡観察部位の蛍光観察像を立体撮影して蛍光観察画像を取得する蛍光撮影手段と、
顕微鏡観察部位の照明光観察像を撮影して照明光観察画像を取得する照明光撮影手段と、
蛍光画像観察モードと照明光観察モードとを設定可能な表示モード設定手段と、
前記表示モード設定手段の設定状態に基づいて、前記左右画像に分割された診断画像と、前記照明光撮影手段により取得された各々の前記蛍光観察画像と、前記照明光撮影手段による照明光観察画像と、を重畳して表示する表示手段と、
を具備することを特徴とする手術用顕微鏡装置。 - 前記表示モード設定手段の設定状態に基づいて、照明系に関して配置された照明光切り替えフィルタ、及び観察光学系に関して配置された観察光切り替えフィルタ、の光軸上への移動を制御して前記蛍光撮影手段による撮影と、前記照明光撮影手段による撮影とを切り替えるフィルタ駆動制御部をさらに具備する請求項1または2に記載の手術用顕微鏡装置。
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