JP4559053B2 - 高サポート特性を有するシームレス手袋。 - Google Patents

Description

本発明は、横編機を用いて編成される高サポート特性を有するシームレス手袋に関する。

横編機により編成されるシームレス手袋は公知である。これら手袋は全体が平編み組織で編成されている（特許文献１）。この手袋は作業用手袋あるいはファッション手袋として広く流通している。手袋はまず小指の指袋から編み始め、薬指、中指、人差指の順に各指袋が編まれた後、小指から人差指までを一つの筒状体として四本胴を編成する。四本胴の編成の後、親指の編成が行われた後、親指と先に編まれた四本胴を一つにして五本胴が編まれた後、手首部の編成が行われて終了する。装着中に手袋がズリ落ちないように手首部分にはゴム糸がインレイ編みにより挿通され伸縮性が与えられている。
また手袋全体を弾性糸で編成した手袋もある。この手袋は非常に伸びがあるのでサイズフリーで子供から大人までが着用できる。

しかし、上記した手袋は平編み組織で編成されているため弾性糸をインレイ編成したり全体を弾性糸で編成したとしても高度の伸張性は付与できるが、高度のサポート特性を付与するには限界があった。そのため高度のサポート特性を有する手袋を得るには専ら弾性糸がゴム編み組織内にインレイされた編地を筒状に縫製する方法で製造されているのが現状であり、弾性糸が抜けないように手当する必要があるなどこの縫製作業は非常に手間がかかる煩わしいものである。

特公平７−１１１０２２号公報

この発明の課題は、高度のサポート特性を有するシームレスの横編み手袋を提供することにある。

この発明では、シームレス手袋は、指先側から履き口側に向けて、または履き口から指先側に向けて編み立てられ、各指袋、四本胴、五本胴がそれぞれ伸縮性のある弾性糸のゴム編み組織で編成されたベース編地を有し、該ベース編地内に張力を付加された状態の弾性糸がインレイされるとともに少なくとも指袋の指先側および指股部分にインレイ糸の抜け止めのためのノッティング編成が施されてなる横編機で編成された高度のサポート特性を有する。

また、ベース編地がゴムジャカード組織で編成されている。

また、指股部分が手袋を裏返した状態でフラットなマチを形成するように高密度なゴム編みにより指袋の前側部分と後側部分が編み合わされている。

また、五本胴の少なくとも親指側が減らし編成により徐々に編み幅が減少されている。

本発明の手袋では、各指袋、四本胴、五本胴がそれぞれ伸縮性のある弾性糸によってゴム編み組織で筒状に編成されており、このゴム編み組織内を張力を付加された状態の弾性糸がインレイされた状態でシームレスに編成されるとともに少なくとも指袋の指先側および指股部分にインレイ糸の抜け止めのためのノッティング編成が施されているために従来の縫製品のようにインレイ糸が抜けることがなく、弾性糸の弾性特性が縫製により阻害されることがないので高品質で、手袋装着時に高度のサポート力を付与することが可能になる。

また指先側から編み始めるために五本胴から手首に向けての成型編みを減らし編成で行うことができるので針に無理がかからず編成が容易である。

また、指股部分の編成が高密度なゴム編みにより指袋の前側部分と後側部分が編み合わされているので裏返された装着時の状態では端糸部分が内側に隠れるとともに指股部分にフラットなマチを形成することができる。

またゴムジャカード組織で編成される場合には、文字や絵柄を手袋の表面側に発現させることができる。

次に本発明の好適な実施の形態を図面と共に以下に詳細に説明する。

図１は、本実施例により編成された手袋１を示し、手袋１はベース編地が２色ゴムジャカード編成されている。本実施例に使用される横編機として例えば株式会社島精機製の製品名：ＳＷＧ−１８３ＳＷの１６ゲージが使用される。この横編機は、キャリッジには３基の編成カムを備え、前後針床間で編目の受け渡しが可能であるとともに編地の編み出し部分を引き下げるための編み出し針装置を備えている。弾性糸用給糸装置が別途編機に組み込まれ、インレイ編成される弾性糸に張力を付与した状態で給糸できるようになっている。弾性糸の張力付与は例えば針間ピッチに対して無負荷状態における弾性糸の糸長（ｍｍ）を指定することで設定することができ、例えば本実施例では針間ピッチの約半分の長さの０．６ミリが指定され、キャリッジの移動に伴い設定された量の弾性糸が針へ供給される。

インレイに使用される弾性糸は、例えばデュポン社製のＬｙｃｒａ（８００ｄｔｅｘ）を芯糸としたダブルカバードヤーンが使用され、ベース編地となるジャカード部分は伸縮性の高いウーリーナイロン（７０デニール／２）の４本取りが使用される。しかし使用する弾性糸は上記したものに限らず同じような特性を発揮できるようなものであればそれに代用できるのは言うまでもない。

図２はキャリッジの各編成カムで受け持つ編成を示したもので、先行の編成カムは弾性糸によるインレイ編成とＡ色のゴムジャカード編成、中行の編成カムはＢ色のゴムジャカード編成、後行の編成カムで編目の移し替え、を行う。先行の編成カムでは針が進出する前にインレイ糸が給糸されるように給糸タイミングが早められたインレイ用の給糸部材がＢ色用に使用される通常の給糸部材と同時に連行されて編成が行われる。

筒状に編成される手袋全体をゴム編み組織で編成するために手袋の前側部分を例えば奇数番目の針、後側部分を偶数番目の針に割り当て、前後針床のそれぞれ１本置きの針を使用し、前側部分を編成するときには後側部分の編目を後針床の針に付属させ、後側部分を編成するときには前側部分の編目を前針床に付属させるように編目の移し替えを行うことで対向する針床に空き針を常に確保でき、ゴム編みや編目の移動を可能にする。手袋はキャリッジが右進行時に前側部分を編成し、キャリッジが左進行時に後側部分を編成する。

図３に横編機上での手袋１の編成を模式的に示す。手袋１は、まず編み出し編成を行った後、小指３〜人差し指９の四指の編成へと移る。本実施例では生産性を高めるためこれら四指の編成はそれぞれ異なる給糸部材（不図示）を用いて並行に行われる。即ち、各指袋をＡ色、Ｂ色の２色からなるゴムジャカード編成を行うためにＡ色、Ｂ色用の給糸部材とインレイ用の給糸部材の計１２ケの給糸部材がそれぞれの指袋を編成するために用意される。なお図示は省略するが、指袋の編み始め箇所や指股の部分あるいは手首部の編み終わり箇所は、特開平８−１８８９４２号公報に記載されるように該部分に延びる渡り糸に結び目を形成する編成を施して編地の解れ止めを行うようにする。

編み出し編成は、図示のように小指用２３と小指以外の部分用２１をそれぞれ異なる給糸部材を使用して行う。２４は編み出し部分を捕捉する編み出し針２４を示す。各指袋と指袋との間には、その間で給糸部材を停止できるように間隔をあけて編成する。図３−ａは、編み出し編成２１，２３を行った後、小指３、薬指５、中指７、人差し指９の各指袋を編成している状態を示す。
各指袋は指先側が口を開けた所謂指切りタイプとして編成される。編成された指袋は図３−ｃで示す四本胴の編成の際に指股部分で隣接する指部の指袋同士が接合される際に編地の移動が行われるのであるが、その際、小指の指袋の移動が円滑に行えるように小指については捨て編みが２３が延長して編成される。このようにして四指の指袋の編成が終わると、図３−ｂに示すように各指袋の側端の編目同士を重ね合わせて接合する。

図４は中指７と薬指５の指袋の針床における編目の係止状態を編成時の状態で示したもので、図４−ａは各指袋の側端の編目同士を重ね合わせて接合する前の状態を示し、図４−ｂは接合後の状態を示す。図中のＦは前針床、Ｂは後針床を示す。図４−ｃは、実際の図４−ｂに対応するものであるが、実際の編目の係止状態を示す。中指７の前側部分と後側部分は表目裏目を合わせて２０ウエール程度の編目がそれぞれ係止されることになるが、図は説明の便宜上各指袋を編成する針数は少なくしている。中指７と薬指５の指袋は両端の編目同士、図では指袋の前側部分の端の表目５ｆ，７ｆ同士、指袋の後側部分の端の表目５ｂ，７ｂ同士が重ね合わされる。薬指５と小指３、人差し指９と中指７の各指袋も上記と同じように隣接する端目同士が重ね合わされて接合される（図３−ｂの状態）。

続いて親指１３の編成は四本胴１１の編成と並行して行われる。四本胴１１は人差し指９の指袋の編成に使用していた給糸部材を使用し、親指１３の指袋は中指７に使用していた給糸部材を使用する。これにより端糸の発生を抑える。親指１３の指袋が円滑に行えるように捨て編み２１は親指の部分については延長して行われる。

四本胴１１は先ずキャリッジ右進行時に前側部分のコース編成を行うが、その際、図４−ｄに示すような編成を行う。図４−ｄは四本胴の一部である図４−ｃに示す中指７と薬指５の指股部分を示すが、この指股部分では本来後針床で編まれるべきｆ，ｆの編目は前針床に針に保持させ、これら針と後側部分の編目ｒを係止する針に編糸を給糸して四本胴の最初のコース編成を行う（図４−ｄ）。図示はしないが、他の指股部分もこれと同様な編成が行われる。即ち各指股部分は３０で示すように連続する針でゴム編みが行われる。
このゴム編みは他の部分に比べ高密度に、しかも指袋の前側部分と後側部分が編み合わされることになるので裏返された装着時の状態では端糸部分が内側に隠れるとともに指股部分にフラットなマチを形成することになる。

図４−ｄに示すマチの編成を行った後は、指袋の編成と同じように後側部分、続いて前側部分がそれぞれ１本おきの針を使って繰り返しゴム編み編成される。図３−ｄは親指１３の指袋と四本胴１１の編成が終了した状態を示し、親指と四本胴との間の指股部分も他の指股と同じような方法で形成される。図３−ｅは五本胴１５の編成を示し、五本胴１５は親指側で減らし編成１９を行い、手の形状に沿う形に成型編成される。指先側から編み始めているためここでの成型編みは減らし編成で行われる。手袋自身は高い伸縮性を付与されながら編成されているが、減らし編成は増やし編成に比べ容易に行うことができる。２１は小指側で行われる減らしを示す。以後手首部１７の編成を行った後、伏目編成により解れ止めを行う。

そしてこのように編成された手袋１は横編機から外された後に指袋の編み始め箇所や指股の部分あるいは手首部の編み終わり箇所に延びる端糸部分を切断した後、裏返すことで完成する。裏返して使用することでノッティングを施した部分や端糸切断箇所が裏に隠れるため美観を損なわない。また指股部分は上記のように編成されているためマチをフラットに形成できる。また手首部１７の伏目部分がこの裏返した状態では内側にカールするので手袋装着時に該部分が肌にフィットする。

変形例としてインレイされる弾性糸の供給量を編成される指袋、四本胴、五本胴などの各部のサイズに応じて調整して手袋装着時の肌に対する着用圧を変更するようにして手袋を編成するれば更に高品質な手袋を得ることができる。更に指袋を編成する際に指先から徐々に着用圧が変更するように弾性糸の供給量を調整してもよい。

なお、上記した実施例では、指先側から編み始めたが、これに代えて履き口側から編み始め、指先側で編み終わるようにしてもよい。その場合は五本胴の減らし編成は増やし編成に置き換えられる。また指先部分は指切りタイプにでなく指先まで指袋が形成されたタイプの手袋としてもよい。上記では裏返した状態を表としたが、必ずしも裏返す必要はない。また掌側の編目サイズよりも手の甲側の編目サイズを若干大きくして編成すれば装着したときに手の甲への圧迫感を和らげることができる。また他の成型編み技術と組み合わせることで更に手にフィットする手袋とすることができるなど本発明は上記実施例に限定されることなく広く適用可能である。もちろん手袋以外に靴下等への応用も可能である。

本発明の手袋は、シームレスでかつ高度のサポート特性を有するので血行障害などマッサージ用、医療用の手袋、あるいはスポーツ用などの用途として幅広く利用できる。

本実施例により編成される手袋を示した図。 キャリッジの各編成カムで行う編成を示し図。 横編機上での手袋編成を模式的に示した図。 指袋の接合前と接合後の状態および四本胴の編成の一部を示す図。

符号の説明

１…手袋、３…小指、５…薬指、７…中指、９…人差し指、１１…四本胴、１３…親指、１５…五本胴、１７…手首部、１９，２１…減らし部、２４…編み出し針

Claims (4)

1. 指先側から履き口側に向けて、または履き口から指先側に向けて筒状に編み立てられ、各指袋、四本胴、五本胴がそれぞれ伸縮性のある弾性糸のゴム編み組織で編成されたベース編地を有し、該ベース編地内に張力を付加された状態の弾性糸がインレイされるとともに少なくとも指袋の指先側および指股部分にインレイ糸の抜け止めのためのノッティング編成が施されてなる横編機で編成された高度のサポート特性を有するシームレス手袋。
2. ベース編地がゴムジャカード組織で編成されている請求項１に記載の高度のサポート特性を有するシームレス手袋。
3. 指股部分が手袋を裏返した状態でフラットなマチを形成するように高密度なゴム編みにより指袋の前側部分と後側部分が編み合わされている請求項１または２に記載の高度のサポート特性を有するシームレス手袋。
4. 五本胴の少なくとも親指側が減らし編成により徐々に編み幅が減少されている請求項３に記載の高度のサポート特性を有するシームレス手袋。

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