JP4337175B2 - 高分子電解質およびイオン交換体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水処理装置や電解槽、透析装置、燃料電池などに好適に使用できる高分子電解質およびその製造方法、さらにはそれを用いたイオン交換体に関する。
【0002】
【従来の技術】
高分子電解質は、イオン交換基を含む高分子として、その物性や機能などの面から注目されており、たとえば、表面改質や界面活性化、水溶化、イオン交換の機能を利用して、表面処理などのコーティング前処理や樹脂の親水化処理などに利用されたり、界面活性剤や増粘剤、イオン交換樹脂、イオン交換膜、イオン交換繊維などの用途に用いられたりしている。
【0003】
中でも、イオン交換機能に着目したイオン交換体としての利用には、これまで様々な試みがなされており、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、スチレン−ジビニルベンゼン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、フェノール樹脂、パーフルオロビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)などの高分子を用いた例が報告されている。
【0004】
このうち、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体を用いたイオン交換体は、安価であり、電解質濃縮による食塩製造、酸などのイオン性物質の分離や回収、脱塩などを目的とする水処理や食品製造に用いられている。また、パーフルオロビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体などのフッ素系樹脂を用いたイオン交換体は、高価ではあるが、耐酸・アルカリ性、耐酸化性、耐熱性、耐溶剤性に優れているため、食塩電解による苛性ソーダ製造や固体高分子型燃料電池の陽イオン交換膜など、高濃度の塩素やアルカリ、高温酸化雰囲気といった過酷な条件での使用がなされている。
【0005】
しかしながら、上記のようなフッ素系樹脂を用いると、高温での含水率が低下し、イオン伝導度が低下するといった問題があり、また、これらを用いた固体高分子型燃料電池が自動車用途に用いられるためには、安価である必要もある。
【0006】
そこで、安価で、しかも耐酸・アルカリ性、耐溶剤性に優れ、高温や酸化雰囲気にも耐えられ、燃料電池に用いることが可能なイオン交換膜として、PES、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルイミド(PEI)、PPS、PEEK、ポリフェニレンオキシド(PPO)などの耐熱性エンジニアリングプラスチックにイオン交換基を導入したイオン交換膜を用いることが検討されている。このうち、PESやPSF、PPSなどの芳香族含硫黄高分子は、耐熱性や耐薬品性、成型性に加えて機械的強度にも優れているため、膜素材として好適に用いられている。また、PES、PSFなどへのイオン交換基導入については、「先端高分子材料シリーズ2高性能芳香族系高分子材料」((社)高分子学会編、丸善(株))に記載があり、また、スルホン酸基を導入した例についてはWO97/05191号公報が知られている。
【0007】
しかしながら、上述した従来の芳香族含硫黄高分子にイオン交換基を導入した高分子電解質は、安価ではあるものの、耐酸・アルカリ性や耐酸化性、耐熱性、耐溶剤性に関して不十分であり、高濃度の塩素やアルカリ、高温酸化雰囲気といった過酷な条件では、十分な性能が得られないという問題があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記した従来の問題を解決し、耐酸・アルカリ性や耐酸化性、耐熱性、耐溶剤性に優れた高分子電解質およびその製造方法、さらにそれを用いたイオン交換体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明は、ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンにイオン交換基が導入されており、イオン交換基がスルホン酸基であり、イオン交換容量が、0.1〜5meq/gの範囲内にある高分子電解質を特徴とするものである。
【0010】
また、ベースポリマと、ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンとを含み、かつ、前記ベースポリマにイオン交換基が導入されており、イオン交換基がスルホン酸基であり、イオン交換容量が、0.1〜5meq/gの範囲内にある高分子電解質を特徴とするものである。
【0011】
ここで、上記のベースポリマが、フッ素系ポリマであることも好ましく、ベースポリマが、下記構造式(A)および/または(B)で表される構造単位を含んでいることも好ましい。
【0012】
【化7】
【0013】
【化8】
【0014】
m、n:0〜10の整数
また、上記のベースポリマを用いる場合に、ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンの含有量が、高分子電解質全体に対して10〜80重量%の範囲内にあることも好ましい。
【0015】
さらに、ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンが細孔を有する多孔膜形状を有し、ベースポリマが前記細孔内部に存在していることも好ましい。
【0016】
また、ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンに含まれるスルフィド基(−S−)、スルホキシド基(−SO−)およびスルホン基(−SO2−)の硫黄原子の平均の酸化度Xを(−SOX−)の形で表したときのXが、0.8〜2.0の範囲内にあることも好ましい。
【0017】
さらに、ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンが、下記構造式(C)、(D)および(E)からなる群から選ばれる少なくとも1つで表される構造単位を含んでいることも好ましい。
【0018】
【化9】
【0019】
【化10】
【0020】
【化11】
【0021】
Ar1、Ar2、Ar3:炭素数6〜24のアリーレン基。
【0022】
さらに、ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンが細孔を有する多孔膜形状を有し、ベースポリマが前記細孔内部に存在している高分子電解質の製造方法において、ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンを第1の溶媒に溶解して得た溶液と、ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンを凝固可能な第2の溶媒とを接触させて、ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンを多孔膜形状に製膜する高分子電解質の製造方法も好ましい。
【0027】
また、上記の高分子電解質を含んでいるイオン交換体も好ましく、このイオン交換体が粒状、繊維状および膜状からなる群から選ばれるいずれか1つの形状を有していることも好ましい。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明の高分子電解質は、ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンにイオン交換基が導入されており、イオン交換基がスルホン酸基であり、イオン交換容量が、0.1〜5meq/gの範囲内にあることを特徴としている。本発明においては、ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンを用いているので、耐酸・アルカリ性や耐酸化性、耐熱性、耐溶剤性が改善された高分子電解質を得ることができる。
【0030】
また、ベースポリマと、ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンとを含み、かつ、前記ベースポリマにイオン交換基が導入されており、イオン交換基がスルホン酸基であり、イオン交換容量が、0.1〜5meq/gの範囲内にあっても、上記特性が改善された高分子電解質を得ることができる。
【0031】
上記のイオン交換基は、スルホン酸基である。特に、高分子電解質をイオン交換膜やイオン交換繊維、イオン交換樹脂に用いる場合には、上記のイオン交換基がスルホン酸基であると、イオン交換性能が向上し、さらに、耐熱性や耐酸化性も向上する。
【0032】
高分子電解質に含まれるイオン交換基は、必要量を適宜導入すればよいが、高分子電解質をイオン交換樹脂やイオン交換繊維、イオン交換膜として用いる場合には、イオン交換容量(meq/g:イオン交換基のミリ当量/高分子電解質重量)が、0.1〜5meq/gの範囲内にあることが必要である。イオン交換量が0.1meq/gを下回ると、イオン交換能力が不十分となりやすく、5meq/gを超えると、親水性が高まって高分子電解質がゲル状になりやすく、膜や繊維などの形態を付与しにくくなる。
【0033】
ここで、イオン交換容量とは以下に示す方法により算出した値をいう。
【0034】
高分子電解質を1〜2g秤量する(質量:wg)。
【0035】
この高分子電解質に0.1N−NaOHを100ml加えて24時間攪拌する。
【0036】
次いで、高分子電解質を取り出し、0.1N−HClで滴定する(滴定量:aml)
イオン交換容量(meq/g)を計算式:1,000×(0.01−0.001×a)/wにて算出する。
【0037】
上記の、ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンに含まれるスルフィド基(−S−)、スルホキシド基(−SO−)およびスルホン基(−SO2−)の硫黄原子の平均の酸化度を(−SOX−)の形で表したときのXは、0.8〜2.0の範囲内にあると好ましく、1.2〜2.0の範囲内にあるとより好ましく、1.6〜2.0の範囲内にあるとさらに好ましい。Xが0.8を下回ると耐酸・アルカリ性や耐酸化性、耐熱性、耐溶剤性が不十分となりやすい。また、硫黄原子の酸化度を考慮すると、Xが2.0を超えることはないと考えられる。
【0038】
ここで、酸化度Xとは以下の方法により算出される値をいう。
【0039】
元素分析により高分子電解質の硫黄と酸素の含有量を求める(それぞれ、SW、OWとする)。
【0040】
高分子電解質のイオン交換容量の値を用いてスルホン酸基に由来する硫黄と酸素の高分子電解質中の含有量を求める(それぞれ、SS、OSとする)。
【0041】
さらに、ベースポリマを用いる場合には、NMR法を用いてエーテル基に由来する酸素の高分子電解質中の含有量を求める(OEとする)。
【0042】
上記の各値から、スルフィド基、スルホキシド基およびスルホン基に由来する硫黄と酸素との原子数比を求め、Xを算出する(((OW−OS−OE)/16)/((SW−SS)/32)を計算する)。
【0043】
また、ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンが、下記構造式(C)、(D)および(E)からなる群から選ばれる少なくとも1つで表される構造単位を含んでいると好ましい。
【0044】
【化13】
【0045】
【化14】
【0046】
【化15】
【0047】
Ar1、Ar2、Ar3:炭素数6〜24のアリーレン基
中でも、アリーレン基が下記構造式で表される構造単位を含んでいると好ましい。
【0048】
【化16】
【0049】
また、上記の中では、(1)、(4)、(5)、(7)が特に好ましい。
【0050】
さらに、下記構造式で表される構造単位を含んでいるポリフェニレンスルフィドスルホン(PPSS)やポリフェニレンスルホン(PPSO)も好ましい。
【0051】
【化17】
【0052】
これらのポリマは、PESやPSFなど従来用いられてきたポリスルホンと異なり、主鎖にエーテル結合を含まないので、耐酸・アルカリ性や耐酸化性、耐熱性、耐溶剤性に特に優れており好ましい。
【0053】
また、上記のようにベースポリマを用いる場合は、ベースポリマがフッ素系ポリマであると、耐酸・アルカリ性や耐酸化性、耐熱性、耐溶剤性が向上し好ましい。特に、ベースポリマが下記構造式(A)および/または(B)で表される構造単位を含んでいると好ましい。
【0054】
【化18】
【0055】
【化19】
【0056】
m、n:0〜10の整数
中でも、mが0〜3の範囲内にあり、かつ、nが1〜5の範囲内にあると、イオン交換性能を高めることができるので好ましい。
【0057】
また、構造式(A)で表される構造単位の数が構造式(B)で表される構造単位の数に対して0.1〜1,000の範囲内にあると好ましく、1〜500の範囲内にあるとさらに好ましい。上記の値が0.1を下回るとイオン交換能力が不十分となりやすく、また、1,000を超えると親水性が高まって高分子電解質がゲル状になりやすく、膜や繊維などの形態を付与しにくくなる。
【0058】
また、ベースポリマが、分子中に芳香環や架橋構造を含んでいると、耐酸・アルカリ性や耐酸化性、耐熱性、耐溶剤性が向上し好ましい。
【0059】
さらに、ベースポリマを用いる場合において、ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンの含有量が、高分子電解質全体に対して10〜80重量%の範囲内にあると好ましく、20〜60重量%の範囲内にあるとより好ましい。上記の含有量が10重量%を下回ると、十分な耐酸・アルカリ性や耐酸化性、耐熱性、耐溶剤性を得にくく、また、80重量%を超えると、イオン交換能力が不十分となりやすい。
【0060】
高分子電解質の形態は、粒状や膜状、繊維状など、用途に合わせて選択するとよいが、表面積を増加させてイオン交換能力を高めやすい膜形状とすると特に好ましい。
【0061】
また、ベースポリマを用いて高分子電解質を得る場合には、ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンと、ベースポリマとが層状構成を有していると好ましく、また、ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンが海成分をなし、ベースポリマが島成分をなす海島構造を有していることも好ましい。さらに、ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンが網目構造を有し、この網目の内部にベースポリマが存在している構造であることも好ましい。
【0062】
また、ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンが細孔を有する多孔膜形状を有し、ベースポリマがこの細孔内部に存在している構造であると、膜の表面積を増大させ、イオン交換能力を高めることができ好ましい。この場合、上記多孔膜の一方の表面付近にのみベースポリマが存在する非対称構造とすることも好ましい。
【0063】
本発明の高分子電解質に用いられる高分子の数平均分子量は、5,000〜1,000,000の範囲内にあることが好ましく、10,000〜200,000
の範囲内にあるとより好ましい。数平均分子量が5,000を下回ると、耐酸・アルカリ性や耐酸化性、耐熱性、耐溶剤性が不十分となる傾向があり、1,000,000を超えると、溶媒に溶けにくくなるなどして、高分子電解質を製造するうえで困難を伴いやすくなる。
【0064】
また、本発明の高分子電解質は、耐溶剤性に優れるものであるが、特に、極性非プロトン性溶媒に実質的に溶解しないことが好ましい。
【0065】
次に、本発明の高分子電解質の製造方法について述べる。
【0066】
本発明の高分子電解質は、イオン交換基を導入する工程を含む方法により製造されるが、その他に、形態を付与する工程や酸化反応を行う工程、ベースポリマを付加する工程などを必要に応じて適宜選択し製造することができる。これらの各工程は、必要とする形態や、導入するイオン交換基の特性、用いるベースポリマの性質などによって、様々に組み合わせて行うことができ、また、その順序についても任意に行うことができる。
【0067】
まず、イオン交換基を導入する工程であるが、本工程は、ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンに対して行ってもよいし、ベースポリマに対して行ってもよい。たとえば、スルホン酸基を導入する場合には、濃硫酸やクロロスルホン酸、三酸化硫黄−トリエチルホスフェート、トリメチルシリルクロロサルフェートなどのスルホン酸基導入剤を用いると好ましい。
【0068】
次に、形態を付与する工程であるが、本工程では、目的に応じて粒状や繊維状、膜状の形状を付与する。いずれも、溶融状態や溶液状態のポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンなどを、間欠的または連続的に口金から押し出すことにより粒状や繊維状、膜状に成型することができるが、特に、膜状に製膜する場合には、多孔膜形状とすることが好ましく、湿式製膜法を用いると製造も簡便であり好ましい。すなわち、ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンを第1の溶媒に溶解して得た溶液と、ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンを凝固可能な第2の溶媒とを接触させて、ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンを多孔膜形状に製膜する方法が好ましい。
【0069】
この場合、上記の第1の溶媒に溶解して得た溶液と第2の溶媒とを接触させる方法としては、たとえば、第1の溶媒に溶解して得た溶液を基材上に塗布した後に、この基材上の上記溶液に第2の溶媒を塗布などにより接触させる方法を用いることができる。このようにして基材上に多孔膜を形成する方法を用いると、多孔膜の膜厚や、細孔の密度や大きさ、空孔率などを調整したり、多孔膜の機械的強度を高めることができ好ましい。
【0070】
また、第1の溶媒に溶解して得た溶液を第2の溶媒中に直接吐出したり、第1の溶媒に溶解して得た溶液を塗布した基材を第2の溶媒中に浸漬したり、第1の溶媒に溶解して得た溶液を基材上に塗布した後に第2の溶媒をスプレー塗布したりすることもできる。
【0071】
第1の溶媒としては、ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンを溶解することができるものであれば用いることができるが、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、p−クロロフェノール、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、m−クレゾール、ジクロロ酢酸およびジメチルイミダゾリジノンからなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒を含むものであれば、溶解性が増し好ましい。
【0072】
基材としては、膜形状を維持しうるものであれば好ましく用いることができるが、特に、水処理装置や電極反応装置、透析装置、電池、燃料電池、電解槽などに用いる場合には、電気電導性が高く、かつ、イオンやガス、電解液に対する透過性も高いことが求められるため、導電性多孔体をシート状にしたものを用いることが好ましく、導電性を有する炭素繊維シートを用いると特に好ましい。
【0073】
なお、この基材は、ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンの含有量を算出したり、イオン交換容量など高分子電解質の物性を測定する場合には、高分子電解質には含めない。
【0074】
第2の溶媒としては、ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンを凝固可能な溶媒であれば用いることができるが、上記第1の溶媒と実質的に混和しうるものであれば好ましい。特に、水、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルおよび酢酸イソブチルからなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒を含むものであれば、凝固を効率的に行うことができ好ましい。
【0075】
また、第2の溶媒は、第1の溶媒に合わせて適宜選択されるものであるが、第1の溶媒にN−メチルピロリドンを用いた場合には、第2の溶媒として水を用いると特に好ましい。
【0076】
次に、酸化工程であるが、本工程は必要に応じて行う。すなわち、ポリアリーレンスルホンや、スルホン基の含有量が多いポリアリーレンスルフィドスルホンを用いる場合は、溶媒などに溶解しにくく、膜形状などの形態を付与することが困難であるため、スルホン基の含有量が比較的少ないポリアリーレンスルフィドスルホンを所望の形状とした後に、分子中に含まれるスルフィド基を酸化して、ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンを得ることが好ましい。
【0077】
特に、下記構造式(F)で表される構造単位を含むポリアリーレンスルフィドスルホンのスルフィド基を酸化する方法を用いると好ましい。
【0078】
【化20】
【0079】
Ar4、Ar5:炭素数6〜24のアリーレン基
この場合、アリーレン基がフェニレン基であると、安価であり、耐酸・アルカリ性や耐酸化性、耐熱性、耐溶剤性に優れるため特に好ましい。
【0080】
上記の酸化は、過酢酸、過安息香酸、過プロピオン酸、過ブチリック酸、過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム、塩素、臭素、硝酸およびペルオキシ一硫酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の物質を酸化剤として用いると好ましい。中でも、ペルオキシ一硫酸を用いると酸化反応を効率よく行うことができるので好ましい。
【0081】
次に、ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンにベースポリマを付加する工程であるが、本工程は、たとえば上記の湿式製膜法を用いる場合は、ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンを第1の溶媒に溶解して得た溶液にベースポリマを溶解させたり、ベースポリマの微粒子を分散させた分散液を混合したりすることにより行うことができる。また、第2の溶媒にベースポリマを溶解したり、ベースポリマの微粒子を分散させたりして得たものを、上記の第1の溶媒に溶解して得た溶液に接触させて行うこともできる。さらに、ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンを多孔膜の形状とした後に、ベースポリマの溶液やベースポリマの微粒子を分散させた液を塗布したり、含浸させたりして行うこともできる。
【0082】
さて、上記の各工程のうち、イオン交換基を導入する工程以外の工程は、必要に応じて行われる工程であり、たとえば、形態を付与する工程を省略して、溶液状で高分子電解質として用いることもできる。
【0083】
また、上記の各工程を行う順序についても、製造の容易性や性能向上を達成するために、任意に行うことができる。
【0084】
たとえば、上記した構造式(F)で表される構造単位を含むポリアリーレンスルフィドスルホンにあらかじめイオン交換基を導入し、ついで膜状や繊維状の形態を付与した後に、分子中に含まれるスルフィド基を酸化することにより高分子電解質を得ることができる。
【0085】
また、上記した構造式(F)で表される構造単位を含むポリアリーレンスルフィドスルホンに膜状や繊維状の形態を付与した後に、イオン交換基を導入し、その後に分子中に含まれるスルフィド基を酸化することにより高分子電解質を得ることができる。
【0086】
さらに、上記した構造式(F)で表される構造単位を含むポリアリーレンスルフィドスルホンに含まれるスルフィド基を酸化してポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンとした後、イオン交換基を導入することにより高分子電解質を得ることができる。
【0087】
また、上記した構造式(F)で表される構造単位を含むポリアリーレンスルフィドスルホンに膜状や繊維状の形態を付与した後に、分子中に含まれるスルフィド基を酸化してポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンとし、その後にイオン交換基を導入することにより高分子電解質を得ることができる。
【0088】
さらに、上記した構造式(C)で表される構造単位を含むポリアリーレンスルフィドに、あらかじめイオン交換基を導入した後に、分子中に含まれるスルフィド基を酸化することにより高分子電解質を得ることができる。
【0089】
また、上記した構造式(C)で表される構造単位を含むポリアリーレンスルフィドに含まれるスルフィド基をあらかじめ酸化した後に、イオン交換基を導入することにより高分子電解質を得ることができる。
【0090】
さらに、上記した構造式(C)または(F)で表される構造単位を含むポリアリーレンスルフィドスルホンに膜状や繊維状の形態を付与した後に、分子中に含まれるスルフィド基を酸化してポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンとし、その後にベースポリマを付加することにより高分子電解質を得ることができる。
【0091】
また、上記した構造式(C)または(F)で表される構造単位を含むポリアリーレンスルフィドスルホンに膜状や繊維状の形態を付与した後に、ベースポリマを付加し、その後分子中に含まれるスルフィド基を酸化してポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンとすることにより高分子電解質を得ることができる。
【0092】
さらに、上記した構造式(C)または(F)で表される構造単位を含むポリアリーレンスルフィドスルホンに膜状や繊維状の形態を付与した後に、分子中に含まれるスルフィド基を酸化してポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンとし、その後イオン交換基を導入して、次にベースポリマを付加することにより高分子電解質を得ることができる。
【0093】
また、上記した構造式(C)または(F)で表される構造単位を含むポリアリーレンスルフィドスルホンに膜状や繊維状の形態を付与した後に、分子中に含まれるスルフィド基を酸化してポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンとし、その後ベースポリマを付加して、次にイオン交換基を導入することにより高分子電解質を得ることができる。
【0094】
さらに、上記した構造式(C)または(F)で表される構造単位を含むポリアリーレンスルフィドスルホンに膜状や繊維状の形態を付与した後に、イオン交換基を導入し、その後分子中に含まれるスルフィド基を酸化してポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンとした後、ベースポリマを付加することにより高分子電解質を得ることができる。
【0095】
また、上記した構造式(C)または(F)で表される構造単位を含むポリアリーレンスルフィドスルホンに膜状や繊維状の形態を付与した後に、イオン交換基を導入し、その後ベースポリマを付加して、次に分子中に含まれるスルフィド基を酸化してポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンとすることにより高分子電解質を得ることができる。
【0096】
さらに、上記した構造式(C)または(F)で表される構造単位を含むポリアリーレンスルフィドスルホンに膜状や繊維状の形態を付与した後に、ベースポリマを付加し、その後分子中に含まれるスルフィド基を酸化してポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンとした後、イオン交換基を導入することにより高分子電解質を得ることができる。
【0097】
また、上記した構造式(C)または(F)で表される構造単位を含むポリアリーレンスルフィドスルホンに膜状や繊維状の形態を付与した後に、ベースポリマを付加し、その後イオン交換基を導入して、次に分子中に含まれるスルフィド基を酸化してポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンとすることにより高分子電解質を得ることができる。
【0098】
本発明の高分子電解質は、耐酸・アルカリ性、耐酸化性、耐熱性、耐溶剤性などに優れ、かつ、安価であり、イオン交換体として好適に使用できる。また、このイオン交換体に粒状や繊維状、膜状などの形態を付与すると好ましく、これにより、イオン交換樹脂やイオン交換繊維、イオン交換膜として好適に用いることが可能となる。このイオン交換体は、たとえば、水処理装置のイオン交換樹脂やイオン交換膜として好適に使用することができ、また、電極反応装置や透析装置、電池などのイオン交換膜としても好適に使用することができる。特に、電解槽のイオン交換膜や燃料電池のイオン交換樹脂やイオン交換膜として使用すると好ましい。また、たとえば、燃料電池がアノードガス拡散層、アノード触媒層、イオン交換膜、カソード触媒層、カソードガス拡散層を含んでいる固体高分子型燃料電池である場合には、そのイオン交換膜として、また、アノード触媒層やカソード触媒層に添加するイオン交換樹脂として好適に用いることができる。さらに、この燃料電池を自動車に用いると特に好ましい。
【0099】
【実施例】
(実施例1)
東レ・フィリップスペトローリアム(株)製のポリフェニレンスルフィドスルホン(PPSS)を、N−メチルピロリドン(NMP)に溶解した。この溶液を、東レ(株)製カーボンペーパーTGP−H−060(厚み0.2mm)上に塗布し、ただちに水中に浸漬して湿式製膜し、PPSSの多孔膜を作成した。この多孔膜にイオン交換樹脂溶液であるアルドリッチ(株)製ナフィオン5重量%溶液を含浸、乾燥させてイオン交換膜を作成した。このイオン交換膜のスルホン酸基以外の硫黄原子平均酸化度は1.0であり、イオン交換容量を測定したところ、0.5meq/gであった。また、このイオン交換膜をFenton試薬(H2O2−FeCl2)に浸漬したが、膜に異常はなく耐酸化性に優れたイオン交換膜であった。
(実施例2)
実施例1と同様にしてPPSSの多孔膜を作成し、この多孔膜をデュポン(株)製オキソンにより、スルフィド基を酸化してスルホン基としたのち、ナフィオン5重量%溶液を含浸、乾燥させてイオン交換膜を作成した。このイオン交換膜のスルホン酸基以外の硫黄原子平均酸化度は、1.8であり、イオン交換容量を測定したところ、0.5meq/gであった。また、このイオン交換膜をFenton試薬、塩酸、水酸化ナトリウムなどに浸漬したが膜に異常はなく、耐酸化性、耐酸・アルカリ性、耐熱性、耐溶剤性に非常に優れたイオン交換膜が得られた。
(実施例3)
実施例1と同様にPPSSの多孔膜を作成し、この多孔膜をオキソンにより、スルフィド基をスルホン基とする酸化反応を2回行ったのち、ナフィオン5重量%溶液を含浸、乾燥させてイオン交換膜を作成した。このイオン交換膜のスルホン酸基以外の硫黄原子平均酸化度は2.0であり、イオン交換容量を測定したところ、0.5meq/gであった。また、このイオン交換膜をFenton試薬、塩酸、水酸化ナトリウムなどに浸漬したが膜に異常はなく、耐酸化性、耐酸・アルカリ性、耐熱性、耐溶剤性に非常に優れたイオン交換膜が得られた。
(実施例4)
メタノール中に浸漬して湿式製膜したほかは、実施例1と同様にしてPPSSの多孔膜を作成し、この多孔膜にナフィオン5重量%溶液を含浸、乾燥させてイオン交換膜を作成した。このイオン交換膜のスルホン酸基以外の硫黄原子平均酸化度は1.0であり、イオン交換容量を測定したところ、0.5meq/gであった。このイオン交換膜をFenton試薬に浸漬したが、膜に異常はなく耐酸化性に優れたイオン交換膜であった。
(実施例5)
i−プロピルアルコール中に浸漬して湿式製膜したほかは、実施例1と同様にしてPPSSの多孔膜を作成し、この多孔膜にナフィオン5重量%溶液を含浸、乾燥させてイオン交換膜を作成した。このイオン交換膜のスルホン酸基以外の硫黄原子平均酸化度は1.0であり、イオン交換容量を測定したところ、0.4meq/gであった。このイオン交換膜をFenton試薬に浸漬したが、膜に異常はなく耐酸化性に優れたイオン交換膜であった。
(実施例6)
PPSSをジメチルホルムアミドに溶解したほかは、実施例1と同様にしてイオン交換膜を作製した。このイオン交換膜のスルホン酸基以外の硫黄原子平均酸化度は1.0であり、イオン交換容量を測定したところ、0.4meq/gであった。このイオン交換膜をFenton試薬に浸漬したが、膜に異常はなく耐酸化性に優れたイオン交換膜であった。
(実施例7)
ナフィオン5重量%溶液をスプレー塗布して湿式製膜したほかは、実施例1と同様にしてイオン交換膜を作成した。このイオン交換膜のスルホン酸基以外の硫黄原子平均酸化度は1.0であり、イオン交換容量を測定したところ、0.4meq/gであった。このイオン交換膜をFenton試薬に浸漬したが、膜に異常はなく耐酸化性に優れたイオン交換膜であった。
(実施例8)
ナフィオン5重量%溶液に同重量のNMPを加え、加熱して溶媒を重量が半分になるまで蒸発除去し、ナフィオンのNMP溶液を作成した。このNMP溶液とPPSSのNMP溶液とを混合し、カーボンペーパー上に塗布し、すぐさま水中に浸漬して湿式製膜し、イオン交換膜を作成した。このイオン交換膜のスルホン酸基以外の硫黄原子平均酸化度は1.0であり、イオン交換容量を測定したところ、0.4meq/gであった。このイオン交換膜をFenton試薬に浸漬したが、膜に異常はなく耐酸化性に優れたイオン交換膜であった。
(実施例9)
酢酸ブチル中に浸漬して湿式製膜したほかは、実施例8と同様にしてイオン交換膜を作成した。このイオン交換膜のスルホン酸基以外の硫黄原子平均酸化度は1.0であり、イオン交換容量を測定したところ、0.4meq/gであった。このイオン交換膜をFenton試薬に浸漬したが、膜に異常はなく耐酸化性に優れたイオン交換膜であった。
(実施例10)
実施例1と同様に、PPSSをNMPに溶解した。この溶液を、外径1.18mm、内径0.8mmの口金から水中に吐出して湿式製膜し、PPSSの多孔中空糸膜を作成した。この多孔中空糸膜にナフィオン5重量%溶液を含浸、乾燥させてイオン交換膜を作成した。このイオン交換膜のスルホン酸基以外の硫黄原子平均酸化度は1.0であり、イオン交換容量を測定したところ、0.5meq/gであった。また、このイオン交換膜をFenton試薬に浸漬したが、膜に異常はなく耐酸化性に優れたイオン交換膜であった。
(実施例11)
実施例10と同様にPPSSの多孔中空糸膜を作成した。この多孔中空糸膜をオキソンにより、スルフィド基を酸化してスルホン基としたのち、ナフィオン5重量%溶液を含浸、乾燥させてイオン交換膜を作成した。このイオン交換膜のスルホン酸基以外の硫黄原子平均酸化度は1.8であり、イオン交換容量を測定したところ、0.5meq/gであった。また、このイオン交換膜をFenton試薬、塩酸、水酸化ナトリウムなどに浸漬したが膜に異常はなく、耐酸化性、耐酸・アルカリ性、耐熱性、耐溶剤性に非常に優れたイオン交換膜が得られた。
(実施例12)
東レ・フィリップスペトローリアム(株)製のポリフェニレンスルフィドスルホン(PPSS)を、N−メチルピロリドン(NMP)に溶解した。ついで、スルホン酸基導入剤として濃硫酸を用いてスルホン酸基導入反応を行った。得られたスルホン酸導入ポリフェニレンスルフィドスルホンを精製し、再度NMPに溶解してキャスト製膜し、イオン交換膜を作成した。このイオン交換膜のスルホン酸基以外の硫黄原子平均酸化度Xは1.0であり、イオン交換容量を測定したところ1.0meq/gであった。また、このイオン交換膜をFenton試薬に浸漬したが、膜に異常はなく耐酸化性に優れたイオン交換膜が得られた。
(実施例13)
実施例12において得られたイオン交換膜に、さらにデュポン(株)製オキソンにより酸化処理してスルフィド基をスルホン基としイオン交換膜を得た。このイオン交換膜のスルホン酸基以外の硫黄原子平均酸化度Xは1.8であり、イオン交換容量を測定したところ1.0meq/gであった。また、このイオン交換膜を塩酸、水酸化ナトリウム、Fenton試薬に浸漬したが、膜に異常はなく耐酸化性、耐酸・アルカリ性、耐熱性、耐溶剤性に優れたイオン交換膜が得られた。
(実施例14)
スルホン酸基導入剤として、クロロスルホン酸を用いたほかは、実施例12と同様にして得たイオン交換膜に、さらにデュポン(株)製オキソンによる酸化反応を2回行いイオン交換膜を得た。このイオン交換膜のスルホン酸基以外の硫黄原子平均酸化度Xは2.0であり、イオン交換容量を測定したところ1.0meq/gであった。また、このイオン交換膜をFenton試薬に浸漬したが、膜に異常はなく耐酸化性に優れたイオン交換膜が得られた。
(実施例15)
PPSSをNMPに溶解した後、キャスト製膜を行った。得られた膜にスルホン酸基導入剤として、三酸化硫黄−トリエチルホスフェートを用いてスルホン酸基導入反応を行った。さらに、デュポン(株)製オキソンを用いて酸化反応を行いイオン交換膜を得た。このイオン交換膜のスルホン酸基以外の硫黄原子平均酸化度Xは1.9であり、イオン交換容量を測定したところ0.8meq/gであった。また、このイオン交換膜をFenton試薬に浸漬したが、膜に異常はなく耐酸化性に優れたイオン交換膜が得られた。
(実施例16)
PPSSをNMPに溶解して、湿式製膜により細孔を有する多孔膜を作成した。この多孔膜に、デュポン(株)製オキソンを用いて酸化反応を行った後、スルホン酸基導入剤としてトリメチルシリルクロロサルフェートを用いてスルホン酸基導入反応を行いイオン交換膜を得た。このイオン交換膜のスルホン酸基以外の硫黄原子平均酸化度Xは2.0であり、イオン交換容量を測定したところ1.2meq/gであった。また、このイオン交換膜をFenton試薬に浸漬したが、膜に異常はなく耐酸化性に優れたイオン交換膜が得られた。
(比較例1)
ポリフェニレンスルフィド(PPS)をNMPに溶解したほかは、実施例1と同様にしてイオン交換膜を作成した。このイオン交換膜のスルホン酸基以外の硫黄原子平均酸化度Xは0、イオン交換容量は0.3meq/gであり、耐酸化性に劣ったイオン交換膜であった。
(比較例2)
ポリスルホンであるAmoco(株)製UdelをNMPに溶解したほかは、実施例1と同様にしてイオン交換膜を作成した。このイオン交換膜のスルホン酸基以外の硫黄原子平均酸化度Xは2.0、イオン交換容量は0.4meq/gであり、耐酸化性に劣ったイオン交換膜であった。
(比較例3)
PPSをNMPに溶解したほかは、実施例12と同様にしてイオン交換膜を作成した。このイオン交換膜のスルホン酸基以外の硫黄原子平均酸化度Xは0、イオン交換容量は1.1meq/gであり、耐酸化性に劣ったイオン交換膜であった。
(比較例4)
ポリスルホンであるAmoco(株)製UdelをNMPに溶解したほかは、実施例13と同様にしてイオン交換膜を作成した。このイオン交換膜のスルホン酸基以外の硫黄原子平均酸化度Xは2.0、イオン交換容量は1.1meq/gであったが、Fenton試薬に浸漬したところ、膜が損傷を受け、耐酸化性に劣ったイオン交換膜であった。
【0100】
【発明の効果】
本発明によれば、従来の芳香族含硫黄高分子にイオン交換基を導入した高分子電解質やそれを用いたイオン交換膜に比べて、耐酸・アルカリ性、耐熱性、耐酸化性、耐溶剤性により優れ、特に高濃度の塩素やアルカリ、高温酸化雰囲気といった過酷な条件でのイオン交換性能に優れ、かつ、従来のフッ素系イオン交換膜に比べて安価である高分子電解質やそれを用いたイオン交換体を提供することができる。
Claims (12)
- ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンにイオン交換基が導入されており、イオン交換基がスルホン酸基であり、イオン交換容量が、0.1〜5meq/gの範囲内にあることを特徴とする高分子電解質。
- ベースポリマと、ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンとを含み、かつ、前記ベースポリマにイオン交換基が導入されており、イオン交換基がスルホン酸基であり、イオン交換容量が、0.1〜5meq/gの範囲内にあることを特徴とする高分子電解質。
- ベースポリマが、フッ素系ポリマである、請求項2に記載の高分子電解質。
- ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンの含有量が、高分子電解質全体に対して10〜80重量%の範囲内にある、請求項2〜4のいずれかに記載の高分子電解質。
- ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンが細孔を有する多孔膜形状を有し、ベースポリマが前記細孔内部に存在している、請求項2〜5のいずれかに記載の高分子電解質。
- ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンに含まれるスルフィド基(−S−)、スルホキシド基(−SO−)およびスルホン基(−SO2−)の硫黄原子の平均の酸化度Xを(−SOX−)の形で表したときのXが、0.8〜2.0の範囲内にある、請求項1〜6のいずれかに記載の高分子電解質。
- 請求項6に記載の高分子電解質の製造方法であって、ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンを第1の溶媒に溶解して得た溶液と、ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンを凝固可能な第2の溶媒とを接触させて、ポリアリーレンスルフィドスルホンおよび/またはポリアリーレンスルホンを多孔膜形状に製膜することを特徴とする高分子電解質の製造方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の高分子電解質を含むことを特徴とするイオン交換体。
- 粒状、繊維状および膜状からなる群から選ばれるいずれか1つの形状を有している、請求項10に記載のイオン交換体。
- 請求項10または11に記載のイオン交換体を有していることを特徴とする燃料電池。
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