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JP2005038834A - 高分子電解質複合膜、その製造方法及びその用途 - Google Patents

高分子電解質複合膜、その製造方法及びその用途 Download PDF

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JP2005038834A JP2004173666A JP2004173666A JP2005038834A JP 2005038834 A JP2005038834 A JP 2005038834A JP 2004173666 A JP2004173666 A JP 2004173666A JP 2004173666 A JP2004173666 A JP 2004173666A JP 2005038834 A JP2005038834 A JP 2005038834A
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Abstract

【課題】
高い発電性能を示す高分子電解質複合膜、その製造方法およびその用途を提供する
【解決手段】
[1]微細孔を有する多孔質基材に、疎水部と親水部からなる高分子電解質が充填された高分子電解質複合層を有する高分子電解質複合膜であって、該高分子電解質が、固体状態において疎水部と親水部の相分離構造を形成し、かつ下式(1)
a+b≦d (1)
(式中、aは相分離構造における疎水性ドメインの大きさ(nm)、bは親水
性ドメインの大きさ(nm)、dは多孔質基材の微細孔の平均細孔直径(nm
)を表す。)
を満たすことを特徴とする分子電解質複合膜。

【選択図】なし



Description

本発明は、微細孔を有する多孔質基材に、疎水部と親水部からなる高分子電解質が充填された高分子電解質複合層を有する高分子電解質複合膜、その製造方法及びその用途に関する。
近年プロトン伝導性の高分子膜を電解質として用いた燃料電池(固体高分子電解質型燃料電池)が盛んに研究されている。固体高分子電解質型燃料電池は、低温で作動し単位面積当たりの出力が高く小型化が可能であるという特徴を有し、車載用電源等の用途に対し有力視され、その基本材料となる高分子電解質膜が種々提案されている。
例えば、高分子電解質を多孔質基材に充填した高分子電解質複合膜が提案されている(特許文献1)。
特開平6−29302号公報
しかしながら、上記の複合膜は、高分子電解質の単身膜に比し機械的強度は改善されているものの、イオン伝導度が十分ではなく、満足な発電性能が得られないといった問題があった。
したがって、本発明の目的は、高い発電性能を示す高分子電解質複合膜、その製造方法およびその用途を提供するものである。
本発明者等は、高い発電性能を示す高分子電解質複合膜を見出すべく、高分子電解質について鋭意検討を重ねた結果、高分子電解質として、固体状態において疎水部と親水部の相分離構造を形成し、かつ該相分離構造における疎水性ドメインの大きさと親水性ドメインの大きさの和が、該多孔質基材の微細孔の平均細孔直径以下であるという特定の高分子電解質を用いた高分子電解質複合膜が、高い発電性能を示すことを見出すとともに、さらに種々の検討を加え、本発明を完成した。
すなわち本発明は、微細孔を有する多孔質基材に、疎水部と親水部からなる高分子電解質が充填された高分子電解質複合層を有する高分子電解質複合膜であって、該高分子電解質が、固体状態において疎水部と親水部の相分離構造を形成し、かつ下式(1)
a+b≦d (1)
(式中、aは相分離構造における疎水性ドメインの大きさ(nm)、bは親水
性ドメインの大きさ(nm)、dは多孔質基材の微細孔の平均細孔直径(nm
)を表す。)
を満たすことを特徴とする分子電解質複合膜を提供するものである。
また本発明は、微細孔を有する多孔質基材に、疎水部と親水部からなる高分子電解質が充填された高分子電解質複合層を有する高分子電解質複合膜を製造するに当り、高分子電解質として、固体状態において疎水部と親水部の相分離構造を形成し、かつ前記式(1)を満たす高分子電解質を用いることを特徴とする高分子電解質複合膜の製造方法を提供するものである。
さらに本発明は、上記の高分子電解質複合膜を用いてなる燃料電池を提供するものである。
本発明によれば、高分子電解質として、固体状態において疎水部と親水部の相分離構造を形成し、かつ該相分離構造における疎水性ドメインの大きさと親水性ドメインの大きさの和が、多孔質基材の微細孔の平均細孔直径以下であるという特定の高分子電解質を用いることにより、高い発電性能を示す高分子電解質複合膜を提供し得る。
また本発明の高分子電解質複合膜は、高い発電性能を示すので、燃料として、水素を使用する燃料電池のみならずメタノール等のアルコールを使用する例えばダイレクトメタノール型燃料電池等の電解質膜として有利である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の高分子電解質複合膜は、高分子電解質複合層における高分子電解質が、固体状態において疎水部と親水部の相分離構造を形成し、かつ該相分離構造における疎水性ドメインの大きさa(nm)と親水性ドメインの大きさb(nm)と、該多孔質基材の微細孔の平均細孔直径d(nm)とが前記式(1)を満たすことを特徴とする。
ここで、上記の疎水性ドメインの大きさa(nm)、親水性ドメインの大きさb(nm)は、例えば、透過型電子顕微鏡、小角X線回折等により測定し得る。 なかでも前者が好ましく用いられ、この場合、具体的には、高分子電解質のみからなる膜の厚み方向に切り出した超薄切片を染色法で常法により、疎水性ドメインと親水性ドメインに染め分け、それぞれのドメインに内包される最大円の直径を、それぞれについて10個所以上測定し、それぞれの平均値を算出する。このようにして、それぞれの大きさ、すなわち疎水性ドメインの大きさa(nm)、親水性ドメインの大きさb(nm)を測定することができる。
また疎水性ドメインの大きさと親水性ドメインの大きさの和であるa+bは、上記のようにして求めた値を代入して算出しても良いし、電解質が、連続した疎水部と親水部の相分離構造を形成している場合には、染め分けた疎水性ドメインと親水性ドメインの両ドメインに内包される最大円の直径を、10個所以上測定し、その平均値を代用しても良い。前者の方法と後者の方法では、異なる値を示す場合もあるが、本発明においては、少なくとも一方の方法で求めた値が前記式(1)を満たせば良い。
なお、高分子電解質のみからなる膜は、複合膜製造時と同じ溶媒、同じ乾燥条件で製造されたものを用いることが好ましい。
疎水性ドメインの大きさと親水性ドメインの大きさの和であるa+bは、通常1〜200nm程度である。好ましくは3〜100nm程度、より好ましくは10〜80nm程度である。
また高分子電解質における親水部としては、ポリマー中のイオン交換基が導入されたセグメントが挙げられ、イオン交換基としては、例えば−SO3H、−COOH、−PO(OH)2、−POH(OH)、−SO2NHSO2−、−Ph(OH)(Phはフェニル基を表す)等の陽イオン交換基や、−NH2、−NHR、−NRR'、−NRR'R''+、−NH3 +等(R:アルキル基、シクロアルキル基、アリール基等を表す)等の陰イオン交換基が挙げられる。これらの基はその一部または全部が対イオンとの塩を形成していても良い。
また高分子電解質における疎水部としては、ポリマー中の上記のようなイオン交換基が導入されていないセグメントが挙げられる。
上記のような2種類のセグメントが、高分子電解質中に共存すると、これらが結合した形であっても、混合された形であっても、これらは化学的に異なるセグメント間の相互作用により、通常、ナノメートルのサイズでそれぞれのセグメントからなる領域すなわち疎水部からなる領域である疎水性ドメインと親水部からなる領域である親水性ドメインに相分離する。
本発明においては、これらのドメインはそれぞれ連続した相分離構造であることが好ましく、膜厚方向に平行に連続した相分離構造であることがより好ましい。
かかる相分離構造を形成する高分子電解質の代表例としては、例えば(A)主鎖が脂肪族炭化水素からなる高分子であり、スルホン酸基および/またはホスホン酸基が導入された形の高分子電解質;(B)主鎖の一部または全部の水素原子がフッ素で置換された脂肪族炭化水素からなる高分子であり、スルホン酸基および/またはホスホン酸基が導入された形の高分子電解質;(C)主鎖が芳香環を有する高分子であり、スルホン酸基および/またはホスホン酸基が導入された形の高分子電解質;(D)主鎖に実質的に炭素原子を含まないポリシロキサン、ポリホスファゼンなどの高分子であり、スルホン酸基および/またはホスホン酸基が導入された形の高分子電解質;(E)(A)〜(D)のスルホン酸基および/またはホスホン酸基導入前の高分子を構成する繰り返し単位から選ばれるいずれか2種以上の繰り返し単位からなる共重合体であり、スルホン酸基および/またはホスホン酸基が導入された形の高分子電解質;(F)主鎖あるいは側鎖に窒素原子を含み、硫酸やリン酸等の酸性化合物がイオン結合により導入された形の高分子電解質等が挙げられる。
上記(A)の高分子電解質としては、例えば、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリ(α−メチルスチレン)スルホン酸等が挙げられる。
また上記(B)の高分子電解質としては、Nafion(デュポン社の登録商標、以下同様)に代表される側鎖にパーフルオロアルキルスルホン酸を有し、主鎖がパーフルオロアルカンである高分子、炭化フッ素系ビニルモノマと炭化水素系ビニルモノマとの共重合によって作られた主鎖と、スルホン酸基を有する炭化水素系側鎖とから構成されるスルホン酸型ポリスチレン−グラフト−エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE、例えば特開平9−102322号公報)や、炭化フッ素系ビニルモノマと炭化水素系ビニルモノマとの共重合によって作られた膜に、α,β,β-トリフルオロスチレンをグラフト重合させ、これにスルホン酸基を導入して固体高分子電解質膜とした、スルホン酸型ポリ(トリフルオロスチレン)−グラフト−ETFE膜(例えば、米国特許第4,012,303号及び米国特許第4,605,685号)等が挙げられる。
上記(C)の高分子電解質としては、主鎖が酸素原子等のヘテロ原子で中断されているものであってもよく、例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリイミド、ポリ((4-フェノキシベンゾイル)-1,4-フェニレン)、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニルキノキサレン等の単独重合体のそれぞれにスルホン酸基が導入されたもの、スルホアリール化ポリベンズイミダゾール、スルホアルキル化ポリベンズイミダゾール、ホスホアルキル化ポリベンズイミダゾール(例えば、特開平9−110982)、ホスホン化ポリ(フェニレンエーテル)(例えば、J. Appl. Polym. Sci., 18, 1969 (1974) )等が挙げられる。
また上記(D)の高分子電解質としては例えば、ポリホスファゼンにスルホン酸基が導入されたもの、Polymer Prep., 41, No.1, 70 (2000) に記載の、ホスホン酸基を有するポリシロキサン等が挙げられる。
上記(E)の高分子電解質としては、ランダム共重合体にスルホン酸基および/またはホスホン酸基が導入されたものでも、交互共重合体にスルホン酸基および/またはホスホン酸基が導入されたものでも、ブロック共重合体にスルホン酸基および/またはホスホン酸基が導入されたものでもよい。ランダム共重合体にスルホン酸基が導入されたものとしては、例えば、スルホン化ポリエーテルスルホン-ジヒドロキシビフェニル共重合体が挙げられる(例えば、特開平11−116679号公報。)
また上記(F)の高分子電解質としては例えば、特表平11−503262号公報に記載の、リン酸を含有せしめたポリベンズイミダゾール等が挙げられる。
上記(E)の高分子電解質に含まれるブロック共重合体において、スルホン酸基および/またはホスホン酸基を持つブロックの具体例としては、例えば特開2001−250567号公報に記載のスルホン酸基および/またはホスホン酸基を持つブロックが挙げられる。
本発明における高分子電解質は、ブロック共重合体、グラフト共重合体であることが好ましく、なかでも上記(C)のような主鎖が芳香環を有する高分子が良く、とりわけスルホン酸基および/またはホスホン酸基が導入された形の高分子が好ましく用いられる。
本発明に使用される高分子電解質の重量平均分子量は、通常1000〜1000000程度であり、イオン交換基当量重量は、通常500〜5000g/モル程度である。
また通常の高分子に使用される可塑剤、安定剤、離型剤等の添加剤を本発明の目的に反しない範囲内で含有できる。例えば、ホスホン酸基を含有したポリマー(特開2003−282096)等は、高分子電解質と相溶し、溶出し難いので、安定剤として好ましく使用し得る。
本発明においては、上記のような高分子電解質が用いられるが、多孔質基材と組合わせるに当っては、その微細孔の平均細孔直径d(nm)との関係式である前記式(1)を満たすものが選定される。
ここで、多孔質基材の微細孔の平均細孔直径d(nm)としては、バブルポイント法(ASTM F316−86)により求めた値が好ましく用いられる。
平均細孔直径dは、通常1〜1,000,000nm程度、好ましくは30〜10,000nm程度、より好ましくは50〜1,000nm程度である。
本発明で使用される微細孔を有する多孔質基材は、高分子電解質を充填するための基材となるものであり、高分子電解質膜の強度や柔軟性、耐久性のさらなる向上のために使用される。そのため、上記使用目的を満たす多孔質状のものであれば良く、例えば多孔質膜、織布、不織布、フィブリル等が挙げられ、その形状や材質によらず用いることができる。
また耐熱性の観点や、物理的強度の補強効果を鑑みれば、脂肪族系、芳香族系高分子または、含フッ素高分子が好ましい。
ここで、脂肪族系高分子としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なおここで言うポリエチレンとはポリエチレンの結晶構造を有するエチレン系のポリマーの総称であり、例えばエチレンと他のモノマーとの共重合体をも含み、具体的には直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と称されるエチレン、α−オレフィンとの共重合体や超高分子量ポリエチレンなどを含む。またここでいうポリプロピレンはポリプロピレンの結晶構造を有するプロピレン系のポリマーの総称であり、一般に使用されているプロピレン系ブロック共重合体、ランダム共重合体など(これらはエチレンや1−ブテンなどとの共重合体である)を含むものである
芳香族系高分子としては、例えばポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリスルホン等が挙げられる。
また、含フッ素高分子としては、例えば分子内に炭素−フッ素結合を少なくとも1個有する熱可塑性樹脂が挙げられる。通常は、脂肪族系高分子の水素原子のすべてまたは大部分がフッ素原子によって置換された構造のものが好適に使用される。
その具体例としては、例えばポリトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリ(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン)、ポリ(テトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルキルエーテル)、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なかでもポリテトラフルオロエチレン、ポリ(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン)が好ましく、特にポリテトラフルオロエチレンが好ましい。また、これらのフッ素系樹脂は、機械的強度の良好さから平均分子量が10万以上のものが好ましい。
かかる多孔質基材を固体高分子電解質型燃料電池の隔膜として使用する場合、その膜厚は、通常1〜100μm、好ましくは3〜30μm、さらに好ましくは5〜20μmであり、空隙率は通常20〜98%、好ましくは40〜95%である。
多孔質基材の膜厚が薄すぎると複合化後の強度補強の効果あるいは、柔軟性や耐久性を付与するといった補強効果が不十分となり、ガス漏れ(クロスリーク)が発生しやすくなる。また膜厚が厚すぎると電気抵抗が高くなり、得られた複合膜が固体高分子型燃料電池の隔膜として不十分なものとなる。空隙率が小さすぎると固体電解質膜としての抵抗が大きくなり、大きすぎると一般に多孔質基材自体の強度が弱くなり補強効果が低減する。
次に、高分子電解質複合膜の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は、前記式(1)を満たす高分子電解質と多孔質基材とを用いる点に大きな特徴をし、高分子電解質と多孔質基材との複合化方法には、特に制限は無い。
複合化方法としては、例えば高分子電解質を溶液にし、この溶液中に多孔膜を含浸し、多孔膜を取り出した後に溶媒を乾燥させて複合膜を得る方法や、この溶液を多孔膜に塗布し、溶媒を乾燥させて複合膜を得る方法、多孔膜に減圧下でこの溶液を接触させ、その後常圧に戻す事で溶液を多孔膜空孔内に含浸させ、溶媒を乾燥させて複合膜を得る方法等が挙げられる。
ここで、高分子電解質の溶液を製造する溶媒としては、高分子電解質を溶解可能であり、その後に除去し得るものであるならば特に制限はなく、例えばN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルなどが好適に用いられる。これらは単独で用いることもできるが、必要に応じて2種以上の溶媒を混合して用いることもできる。中でも、ジメチルアセトアミド、ジクロロメタン・メタノール混合溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドが溶解性が高く好ましい。
また本発明の高分子電解質複合膜は、多層構造であっても良く、例えば(複合層/電解質層)、(電解質層/複合層/電解質層)や、これら上記層構成を重ね合わせた(電解質層/複合層/電解質層/複合層/電解質層)等も好適な態様である。
次に本発明の高分子電解質複合膜を用いた燃料電池について説明する。
燃料電池は、互いに対抗して配設されたガス拡散電極のアノード及びカソードと、両電極に接触しながらその間に介在し、イオンを選択的に通過させる高分子電解質膜からなる膜電極接合体によって構成される単位電池を、ガス流通手段を設けたセパレーターを介して交互に複数個積層され構成されている。この燃料電池において、水素、改質ガス、メタノール等の燃料がアノードに、酸素などの酸化剤がカソードに供給されることによって起こる電気化学反応を利用して、すなわち燃料が電気触媒的に酸化されると同時に酸化剤が電気触媒的に還元されて化学反応エネルギーが直接電気エネルギーに変換されることによって発電されるものである。
ここで、触媒としては、水素または酸素との酸化還元反応を活性化できるものであれば特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、白金の微粒子を用いることが好ましい。白金の微粒子はしばしば活性炭や黒鉛などの粒子状または繊維状のカーボンに担持されたものが好ましく用いられる。
集電体としての導電性物質に関しても公知の材料を用いることができるが、多孔質性のカーボン織布またはカーボンペーパーが、原料ガスを触媒へ効率的に輸送するために好ましい。
多孔質性のカーボン織布またはカーボンペーパーに白金微粒子または白金微粒子を担持したカーボンを接合させる方法、およびそれを高分子電解質シートと接合させる方法については、例えば、J. Electrochem. Soc.: Electrochemical Science and Technology, 1988, 135(9), 2209 に記載されている方法等の公知の方法を用いることができる。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
<多孔質基材>
特開平2002−309024に準じて製造した下記のポリエチレン製多孔質膜を用いた。平均細孔直径は、バブルポイント法 ASTM F316−86で求めた値を示した。
ポリエチレン製多孔質膜A:平均細孔直径d=60nm
ポリエチレン製多孔質膜B:平均細孔直径d=40nm
<高分子電解質複合膜の評価>
高分子電解質複合膜の両面に、繊維状のカーボンに担持された白金触媒と集電体としての多孔質性のカーボン織布を接合した。該ユニットの一面に加湿酸素ガス、他面に加湿水素ガスを流し発電特性を測定した。
参考例1(高分子電解質の製造例)
4,4’ジヒドロキシビフェニル(DOD) 167.59g(900mmol)とベンゾフェノン600gを加熱攪拌溶解させた後、炭酸カリウムを132.68g(960mmol)、トルエン180mlを加えて加熱し共沸脱水後、180℃でm−ジブロモベンゼン200.52g(850mmol)を添加し、続いて臭化銅(I)0.43g(3mmol)を加え、200℃、6時間保温攪拌した。反応液を冷却し、塩酸/メタノール/アセトンの重量比を(2/70/30)とした溶液中に注ぎ、析出したポリマーを濾過し、水洗、メタノール洗浄後減圧乾燥し、ポリマーa1を製造した。
続いてスミカエクセルPES5003P(住友化学工業製、水酸基末端ポリエーテルスルホン)144gと上記のポリマーa1 48gをDMAcに溶解し、続いて炭酸カリウム4.84gとデカフルオロビフェニル9.52gを加え80℃で4h攪拌した。冷却し、希塩酸に反応混合物を注いでポリマーを沈殿させた。水、メタノールで洗浄しブロック共重合体a2を得た。次いでこのa2を濃硫酸でスルホン化することにより、下記スルホン化ブロック共重合体Aを得た。
Figure 2005038834
このスルホン化ブロック共重合体Aのイオン交換容量は1.4meq/gであった。
このものは、1H-NMR測定により、a1由来部のみがスルホン化され親水部となり、PES5003P由来部は疎水部となっていることが確認された。
このスルホン化ブロック共重合体Aを用い、DMAcに25wt%の濃度に溶解した高分子電解質溶液を調製し、ガラス板上にキャスト後、80℃で常圧乾燥させた。得られた高分子電解質膜(1)を透過型電子顕微鏡で測定した結果、疎水性ドメインと親水性ドメインの大きさの和a+bは50nmであった。
参考例2 (高分子電解質の製造例)
(ポリエーテルスルホン類(b1)の合成)
窒素雰囲気下で水酸基末端のポリエーテルスルホン(住友化学工業社製スミカエクセルPES4003P)1500gを4000mlのDMAcに溶解させた。さらに炭酸カリウム13g、トルエン600mlを加え加熱撹拌してトルエンと水の共沸条件下にて脱水後、トルエンを蒸留除去した。室温まで放冷後デカフルオロビフェニル123.2gを加えて100℃まで徐々に加熱しながら反応を行った。その後、反応液をメタノールに投入して重合体を析出させて、ろ過、乾燥を行い、ポリエーテルスルホン類(b1)を得た。このポリエーテルスルホン類(b1)は、末端にノナフルオロビフェニルオキシ基が置換したポリエーテルスルホンである。
(ブロック共重合体Bの合成)
窒素雰囲気下でヒドロキノンスルホン酸カリウム96.8g(0.424mol)、4、4’−ジフロオロジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸カリウム202.9g(0.414mol)および炭酸カリウム61.6g(0.445mol)を2600mlのDMSOに溶解させた。その後トルエン500mlを加え加熱撹拌してトルエンと水の共沸条件下にて脱水後、トルエンを蒸留除去した。170℃にて7時間加熱撹拌しその後室温まで放冷しポリマー(b2)を得た。これに上記ポリエーテルスルホン類(b1)を350g加え、140℃まで徐々に加熱しながら反応を行った。その後、反応液をメタノールに投入して重合体を析出させて、ろ過、95℃で約5倍量の熱水で2回洗浄後、乾燥を行い、下記スルホン化ブロック共重合体Bを得た。
Figure 2005038834
スルホン化ブロック共重合体BのGPCによるポリスチレン換算分子量はMn=72000、Mw=390000、イオン交換容量は1.43meq/gであった。このものは、1H-NMR測定により、スルホン化されているポリマー(b2)由来部が親水部となり、ポリエーテルスルホン類(b1)由来部は疎水部となっているブロック共重合体であることが確認された。
このスルホン化ブロック共重合体Bを用い、NMPに25.5wt%の濃度に溶解した高分子電解質溶液を調製し、ガラス板上にキャスト後、80℃で常圧乾燥させた。得られた高分子電解質膜(2)を透過型電子顕微鏡で測定した結果、疎水性ドメインと親水性ドメインの和a+bは19nmであった。
参考例3 (高分子電解質の製造例)
参考例2で得たスルホン化ブロック共重合体Bと下記により合成したホスホン酸基含有ポリマーとの90:10重量比混合物を用い、NMPに27wt%の濃度に溶解した高分子電解質溶液を調製し、ガラス板上にキャスト後、80℃で常圧乾燥させた。得られた高分子電解質膜(3)を透過型電子顕微鏡で測定した結果、疎水性ドメインと親水性ドメインの和a+bは19nmであった。
(安定化添化剤 ホスホン酸基含有ポリマーの合成)
特開平10-021943記載の方法に準拠し、溶媒としてのジフェニルスルホン、炭酸カリウムの存在下、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンと4,4’−ジヒドロキシビフェニルと4,4’−ジクロロジフェニルスルホンを7:3:10のモル比にて反応させることにより、下記のランダム共重合体を調整した。
Figure 2005038834
次いで、特開2003−282096に記載の方法に準拠しこの共重合体をブロモ化、ホスホン酸エステル化、加水分解することにより、4,4’−ビフェノール由来のユニット1つに対してBrが約0.1個、ホスホン酸基が約1.7個置換された下記ホスホン酸基含有ポリマーを得た。
Figure 2005038834
実施例1〜3
ポリエチレン製多孔質膜Aをガラス板上に固定し、該多孔質膜上に参考例1〜3と同様に調製した高分子電解質溶液を滴下した。ワイヤーコーターを用いて高分子電解質溶液を多孔質膜上に均一に塗り広げ、0.3mmクリアランスのバーコーターを用いて塗工厚みをコントロールし、80℃で常圧乾燥した。その後1mol/Lの塩酸に浸漬し、さらにイオン交換水で洗浄することによって高分子電解質複合膜を得た。
このものについて、燃料電池特性評価を行い、結果を表1に示した。
比較例1
ポリエチレン製多孔質膜Bを用いる以外は、実施例1に準拠して実施することによって高分子電解質複合膜を得た。このものについて、燃料電池特性評価を行い、結果を表1に示した。
[表1]
電圧E(V) 0.8 0.6 0.4 0.2
電流値I(A/cm 2 )
実施例1 0.08 0.40 0.98 1.28
実施例2 0.20 0.89 1.40 1.70
実施例3 0.17 0.17 1.10 1.40
比較例1 0.06 0.10 0.21 0.35

Claims (3)

  1. 微細孔を有する多孔質基材に、疎水部と親水部からなる高分子電解質が充填された高分子電解質複合層を有する高分子電解質複合膜であって、該高分子電解質が、固体状態において疎水部と親水部の相分離構造を形成し、かつ下式(1)
    a+b≦d (1)
    (式中、aは相分離構造における疎水性ドメインの大きさ(nm)、bは親水
    性ドメインの大きさ(nm)、dは多孔質基材の微細孔の平均細孔直径(nm
    )を表す。)
    を満たすことを特徴とする高分子電解質複合膜。
  2. 微細孔を有する多孔質基材に、疎水部と親水部からなる高分子電解質が充填された高分子電解質複合層を有する高分子電解質複合膜を製造するに当り、高分子電解質として、固体状態において疎水部と親水部の相分離構造を形成し、かつ下式(1)
    a+b≦d (1)
    (式中、aは相分離構造における疎水性ドメインの大きさ(nm)、bは親水
    性ドメインの大きさ(nm)、dは多孔質基材の微細孔の平均細孔直径(nm
    )を表す。)
    を満たす高分子電解質を用いることを特徴とする高分子電解質複合膜の製造方法。
  3. 請求項1記載の高分子電解質複合膜を用いてなる燃料電池。
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