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JP2005183311A - 直接メタノール型燃料電池電極用高分子電解質、ワニス組成物および直接メタノール型燃料電池 - Google Patents

直接メタノール型燃料電池電極用高分子電解質、ワニス組成物および直接メタノール型燃料電池 Download PDF

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JP2005183311A JP2003425368A JP2003425368A JP2005183311A JP 2005183311 A JP2005183311 A JP 2005183311A JP 2003425368 A JP2003425368 A JP 2003425368A JP 2003425368 A JP2003425368 A JP 2003425368A JP 2005183311 A JP2005183311 A JP 2005183311A
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direct methanol
sulfonic acid
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Application number
JP2003425368A
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Mayumi Tsunoda
真由美 角田
Takashi Okada
敬 岡田
Toshitaka Otsuki
敏敬 大月
Kohei Goto
幸平 後藤
Yoshitaka Yamakawa
芳孝 山川
Makoto Higami
誠 樋上
Igor Rozhanski
イーゴリ ロジャンスキー
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JSR Corp
Original Assignee
JSR Corp
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Abstract

【課題】高いプロトン伝導度を有し、メタノール耐性が改良された直接メタノール型燃料電池電極用高分子電解質、直接メタノール型燃料電池電極用ワニス組成物および直接メタノール型燃料電池を提供すること。
【解決手段】直接メタノール型燃料電池電極用高分子電解質は、式(A)で表される繰り返し構成単位および式(B)で表される繰り返し構成単位を含むポリアリーレンを含有する;
【化1】
Figure 2005183311

(式(A)中、Xは単結合、電子吸引基、電子供与基、mは0〜10、kは0〜5、lは0〜4、k+l≧1。式(B)中、R1〜R8は水素原子、フッ素原子、アルキル基等、Wは2価の電子吸引性基、単結合、Tは単結合、2価の電子吸引性基、2価の電子供与性基、式(C-1)、(C-2)で表される2価の基、nは正の整数。式(C-1)、(C-2)中、R9
〜R20は、水素原子、フッ素原子、アルキル基等、Qは単結合、2価の電子供与性基、Jは単結合、アルキレン基、−O−、−CO−、−COO−等。)。
【選択図】 なし

Description

本発明は、メタノールを水素に改質せずに直接セルに供給して発電を行わせる直接メタノール型燃料電池に用いられる電極電解質用途に好適な、直接メタノール型燃料電池電極用高分子電解質、直接メタノール型燃料電池電極用ワニス組成物および直接メタノール型燃料電池に関するものである。
メタノールを水素に改質せずに直接セルに供給して発電を行わせる直接メタノール型燃料電池(DMFC)は、発電性能、取扱いの容易さ、システムの簡略性等の特徴が認められ、携帯電話、パーソナルコンピューター等のポータブル用電源として従来のリチウムイオン電池に代わる電源として注目を集めている。
一般的には、いわゆる陽イオン交換樹脂に属するポリマー、例えばポリスチレンスルホン酸などのビニル系ポリマーのスルホン化物、ナフィオン(商品名、デュポン社製)を代表とするパーフルオロアルキルスルホン酸ポリマー、パーフルオロアルキルカルボン酸ポリマーが挙げられ、このDMFC用の電解質膜としては、パーフルオロアルキルスルホン酸系のプロトン伝導膜が使用されてきた。
しかしながら、上記パーフルオロアルキルスルホン酸系の電解質膜は、メタノール透過性が高いため水分子の移動に合わせてメタノールがアノードからカソード側にリークする、いわゆるクロスオーバーが発生し、電池性能を著しく低下させる問題点がある。そのため、低濃度のメタノール水溶液として使用せざるを得ず、発電効率の大幅な低下を余儀なくされているのが現状である。実際、現行使用されているリチウムイオン電池と比較しての優位性が期待される高メタノール濃度で使用するためには、メタノール溶液に対して溶解・膨潤が改良された電解質の適用が必要不可欠となる。これまでメタノール耐性改良のアプローチとして、マトリックス中のイオン伝導ユニットの低減や架橋による膜密度向上による手法が検討されてきた。これらの手法はメタノール耐性を付与する点においては目的を達することが可能であったが、それぞれプロトン伝導度、膜の靭性低下等の問題がトレードオフとなり、トータルの物性として十分なものが得られていないところが現状である。
本発明は、上記のような従来技術を背景としてなされたものであって、高いプロトン伝導度を有し、かつメタノール耐性が改良された直接メタノール型燃料電池電極用高分子電解質を提供することを課題としている。また本発明は、前記高分子電解質を含む直接メタノール型燃料電池電極用ワニス組成物を提供すること、前記高分子電解質または前記ワニス組成物から形成された電極を有する直接メタノール型燃料電池を提供することを課題としている。
本発明は、伝導度を確保する目的でのスルホン酸基を導入し、メタノール水溶液耐性付与のために適度に疎水化されたセグメントをマトリックス中に導入することで、高いプロトン伝導度を有し、かつメタノール耐性が改良された直接メタノール型燃料電池電極用高分子電解質を提供することが可能となる。また、本発明によると高いプロトン伝導度を有し、かつメタノール耐性が改良された電極が形成できる直接メタノール型燃料電池電極用
ワニス組成物および前記高分子電解質または前記ワニス組成物から形成された電極を有する直接メタノール型燃料電池を提供することが可能となる。
本発明によれば、下記の直接メタノール型燃料電池電極用高分子電解質、直接メタノール型燃料電池電極用ワニス組成物および直接メタノール型燃料電池が提供されて、上記目的が達成される。
(1)、下記一般式(A)で表される繰り返し構成単位および下記一般式(B)で表される繰り返し構成単位を含むスルホン酸基を有するポリアリーレンを含有することを特徴とする直接メタノール型燃料電池電極用高分子電解質;
Figure 2005183311
式(A)中、Xは単結合、電子吸引基または電子供与基を示し、mは0〜10の整数を示し、mが1〜10のときはXは互いに同一でも異なっていてもよく、kは0〜5の整数を示し、lは0〜4の整数を示し、k+l≧1である。)
Figure 2005183311
(式(B)中、R1〜R8は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ素置換アルキル基、アリル基およびアリール基からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基を示し、Wは2価の電子吸引性基または単結合を示し、Tは単結合、2価の電子吸引性基、2価の電子供与性基、下記一般式(C−1)または(C−2)で表される2価の基より選ばれた少なくとも1種を示し、nは正の整数を示す。)
Figure 2005183311
(式(C−1)および(C−2)中、R9〜R20は互いに同一でも異なっていてもよく、
水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ素置換アルキル基、アリル基およびアリール基からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基を示し、Qは単結合または2価の電子供与性基を示し、Jは単結合、アルキレン基、フッ素置換アルキレン基、アリール置換アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、フルオレニリデン基、−O−、−S−、−CO−、−CONH−、−COO−、−SO−および−SO2−か
らなる群より選ばれた1種の原子または基を示す。)。
(2) 上記スルホン酸基を有するポリアリーレンがスルホン酸基を0.3〜5.0meq/gの範囲で含有することを特徴とする上記(1)に記載の直接メタノール型燃料電池電極用高分子電解質。
(3) 上記(1)に記載の一般式(A)で表される繰り返し構成単位および一般式(B)で表される繰り返し構成単位を含むスルホン酸基を有するポリアリーレンであって、スルホン酸基を0.3〜5.0meq/gの範囲で含有するポリアリーレン、水素還元触媒、水溶性非プロトン系双極子溶媒を少なくとも含有することを特徴とする直接メタノール型燃料電池電極用ワニス組成物。
(4) 電解質が上記(2)に記載の高分子電解質であり、供給メタノール溶液濃度が10重量%以上であることを特徴とする直接メタノール型燃料電池。
本発明によれば、メタノール水溶液に対する耐性が高く、かつ高いプロトン伝導度を有する直接メタノール型燃料電池電極用電解質が提供できる。
本発明によれば、メタノール水溶液に対する耐性が高く、かつ高いプロトン伝導度を有する直接メタノール型燃料電池電極が形成しうるような直接メタノール型燃料電池電極用ワニス組成物を提供することが可能になる。
本発明の高分子電解質を使用した直接メタノール型燃料電池は、高メタノール水溶液においても好適に使用することができる。
以下、本発明に係る直接メタノール型燃料電池電極用電解質、直接メタノール型燃料電池電極用ワニス組成物および直接メタノール型燃料電池について具体的に説明する。
本発明に係る直接メタノール型燃料電池電極用電解質は、下記のようなスルホン酸基を有するポリアリーレンである。
(スルホン酸基を有するポリアリーレン)
スルホン酸基を有するポリアリーレンは、下記一般式(A)で表される繰り返し構成単位と、下記一般式(B)で表される繰り返し構成単位とを含んでいる。
Figure 2005183311
式中、Xは単結合、電子吸引基または電子供与基を示し、具体的には−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF2p−(ここで、pは1〜10の
整数である)、−C(CF32−などの電子吸引基、−(CH2)−、−C(CH32
、−O−、−S−などの電子供与基が挙げられる。
なお、電子吸引性基とは、ハメット(Hammett)置換基常数がフェニル基のm位の場合、
0.06以上、p位の場合、0.01以上の値となる基をいう。
一般式(A)において、mは0〜10、好ましくは0〜8、より好ましくは0〜5の整数を示す。なお、mが1〜10のときはXは互いに同一でも異なっていてもよい。
一般式(A)において、kは0〜5の整数、lは0〜4の整数を示し、k+l≧1である。好ましくは、kは1〜4の整数、lは0〜3の整数であり、かつmは0〜5の整数である。
Figure 2005183311
一般式(B)において、R1〜R8は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ素置換アルキル基、アリル基およびアリール基からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基を示す。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、ヘキシル基などが挙げられ、メチル基、エチル基などが好ましい。
フッ素置換アルキル基としては、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基などが挙げられ、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基などが好ましい。
アリル基としては、プロペニル基などが挙げられ、
アリール基としては、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基などが挙げられる。
一般式(B)において、Wは単結合または2価の電子吸引性基を示し、2価の電子吸引性基としては上述したものと同様の基が挙げられる。
一般式(B)において、Tは単結合、2価電子吸引性基、2価の電子供与性基、下記一般式(C−1)または(C−2)で表される2価の基より選ばれた少なくとも1種の結合または基を示す。2価の電子吸引性基、2価の電子供与性基としては上述したものと同様の基が挙げられる。
Figure 2005183311
一般式(C−1)および(C−2)において、R9〜R20は互いに同一でも異なってい
てもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ素置換アルキル基、アリル基およびアリール基からなる群より選ばれた原子または基を示し、具体的には上記一般式(B)におけるR1〜R8と同様の原子または基が挙げられる。
一般式(C−1)および(C−2)において、Qは単結合または2価の電子供与性基を示し、2価の電子供与性基としては例えば−O−、−S−、−CH=CH−、−C≡C−などが挙げられる。
一般式(C−2)において、Jは単結合、アルキレン基、フッ素置換アルキレン基、アリール置換アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、フルオレニリデン基、−O−、−S−、−CO−、−CONH−、−COO−、−SO−および−SO2−からなる群より選ばれた1種の原子または基を示す。
アルキレン基、フッ素置換アルキレン基、アリール置換アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、フルオレニリデン基として具体的には、例えば、−C(CH32−、−CH=CH−、−CH=CH−CH2−、−C≡C−、−(CF2p
(ここで、pは1〜10の整数である)、−C(CF32−、下記式
Figure 2005183311
で表される基などが挙げられる。
一般式(B)において、nは正の整数であり、上限は通常100、好ましくは10〜80
である。これらの化合物の分子量はメタノール耐性に大きな影響を及ぼし、分子量が高い程、メタノール溶解性・膨潤性・透過性が低い値を示す。また、分子量が高すぎる場合には、スルホン化重合体の溶液粘度が高くなりすぎ好ましくない。
本発明で用いられるスルホン酸基を有するポリアリーレンは、上記一般式(A)で表される繰り返し構成単位を0.05〜99.95モル%、好ましくは10〜99.5モル%の割合で、上記一般式(B)で表される繰り返し構成単位を0.05〜99.95モル%、好ましくは0.5〜90モル%の割合で含有している。
上記一般式(A)で表される繰り返し構成単位と上記一般式(B)で表される繰り返し構成単位を上記割合で含有すると、スルホン酸基を有するポリアリーレンは、伝導度を保持したままメタノール水溶液に対する膨潤および溶解を抑える効果を同時に付与できる。本発明で用いられるスルホン酸基を有するポリアリーレンは、スルホン酸基を有する上記一般式(A)で表される繰り返し構成単位と、適度に疎水化されたセグメントを有する上記一般式(B)で表される繰り返し構成単位とを特定の割合で含んでいるので、メタノール水溶液耐性が高く、かつ高いプロトン伝導度を有しており直接メタノール型燃料電池用電極電解質用途に好適である。
(スルホン酸基を有するポリアリーレンの製造方法)
スルホン酸基を有するポリアリーレンは、一般式(A)の構造単位となりうるモノマーと、特定の繰り返し構造単位となりうるモノマーとを共重合させることにより合成することができる。
また、スルホン酸基を有する重合体は、スルホン酸基を含有しない一般式(A)の構造単位と、特定の繰り返し構造単位とを有するポリマーを予め合成し、この重合体をスルホン化することにより合成することもできる。
スルホン酸基を有する重合体を合成する反応条件や一般式(A)の構造単位を含むモノマーの官能基としては、特定の繰り返し構造単位として有する構造単位(重合体)を合成する際に用いられる公知の反応条件や官能基を選択することが必要である。
例えば、繰り返し構造単位(A)を有するポリエーテルケトンスルホンは、まず、4,4'−ジヒドロキシベンゾフェノンと4,4'−ジクロロジフェニルスルホンを塩基存在下、高温で反応させることにより両末端が塩素原子であるオリゴマーを合成する。次いで、2,
5−ジクロロ(4−フェノキシベンゾフェノン)とのカップリング重合をおこないポリエーテルケトンスルホン共重合体を合成した後、スルホン化することにより合成することができる。
上記の両末端が塩素原子であるオリゴマーは、例えば以下に示す方法で合成することができる。
まずビスフェノールを対応するビスフェノールのアルカリ金属塩とするために、N−メチル−2−ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、スルホラン、ジフェニルスルホン、ジメチルスルホキサイドなどの誘電率の高い極性溶媒中でリチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、水素化アルカリ金属、水酸化アルカリ金属、アルカリ金属炭酸塩などを加える。ビスフェノールとして、具体的には2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニ
ル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル
)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニルフェニル)フルオレン、2−フェニルフェノール、4,4'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、4,4'−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)ジフェニルメタン、4,4'−ビス(4−ヒドロキシ3,5−ジフェニルフェニル)ジフェニルメタン、2−フェニルヒ
ドロキノンなどが挙げられる。
通常、アルカリ金属はフェノールの水酸基に対し、過剰気味で反応させ、通常、1.1〜2倍当量を使用する。好ましくは、1.2〜1.5倍当量の使用である。この際、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、クロロベンゼン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトールなどの水と共沸する溶媒を共存させて、電子吸引性基で活性化されたフッ素、塩素等のハロゲン原子で置換された芳香族ジハライド化合物、例えば、4,4'−ジフルオロベンゾフェノン、4,4'−ジクロロベンゾフェノン、4,4'−クロロフルオロベンゾフェノン、ビス(4−クロロフェニル)スルホン、ビス(4−フルオロフェニル)スルホン、4−フルオロフェニル−4'−クロロ
フェニルスルホン、ビス(3−ニトロ−4−クロロフェニル)スルホン、2,6−ジクロ
ロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、ヘキサフルオロベンゼン、デカ
フルオロビフェニル、2,5−ジフルオロベンゾフェノン、1,3−ビス(4−クロロベンゾイル)ベンゼンなどを反応させる。反応性から言えば、フッ素化合物が好ましいが、次の芳香族カップリング反応を考慮した場合、末端が塩素原子となるように芳香族求核置換反応を組み立てる必要がある。例えば、4,4'−ジクロロベンゾフェノン、ビス(4−クロロフェニル)スルホンなどの活性芳香族ハロゲン化合物もしくは4,4'−ジフルオロベンゾフェノンと4,4'−クロロフルオロベンゾフェノン併用系での置換反応を行うことで目的の化合物が得られる。
活性芳香族ジハライドの使用量は、目的とするオリゴマーの分子量に合わせて変更することができる。
芳香族求核置換反応の前に予め、ビスフェノールのアルカリ金属塩としていてもよい。反応温度は60℃〜300℃で、好ましくは80℃〜250℃の範囲である。反応時間は15分〜100時間、好ましくは1時間〜24時間の範囲である。
ポリアリーレン系重合体は上記モノマーを触媒の存在下に反応させるが、使用される触媒は、遷移金属化合物を含む触媒系であり、この触媒系としては、(1)遷移金属塩および配位子となる化合物(以下、「配位子成分」という。)、または配位子が配位された遷移金属錯体(銅塩を含む)、ならびに(2)還元剤を必須成分とし、さらに、重合速度を上げるために、「塩」を添加してもよい。
ここで、遷移金属塩としては、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル、ニッケルアセチルアセトナートなどのニッケル化合物;塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウムなどのパラジウム化合物;塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄などの鉄化合物;塩化コバルト、臭化コバルト、ヨウ化コバルトなどのコバルト化合物などが挙げられる。これらのうち特に、塩化ニッケル、臭化ニッケルなどが好ましい。
また、配位子成分としては、トリフェニルホスフィン、2,2'−ビピリジン、1,5−
シクロオクタジエン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンなどが挙げられる
。これらのうち、トリフェニルホスフィン、2,2'−ビピリジンが好ましい。上記配位子成分である化合物は、1種単独で、あるいは2種以上を併用することができる。
さらに、配位子が配位された遷移金属錯体としては、例えば、塩化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、臭化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、ヨウ化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、硝酸ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、塩化ニッケル(2,2'−ビピリジン)、臭化ニッケル(2,2'−ビピリジン)、ヨウ化ニッケル(2,2'−ビピリジン)、硝酸ニッケル(2,2'−ビピリジン)、ビス(1,5−シク
ロオクタジエン)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスファイト)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラ
ジウムなどが挙げられる。これらのうち、塩化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、塩化ニッケル(2,2'−ビピリジン)が好ましい。
上記触媒系に使用することができる還元剤としては、例えば、鉄、亜鉛、マンガン、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、カルシウムなどが挙げられる。これらのうち、亜鉛、マグネシウム、マンガンが好ましい。これらの還元剤は、有機酸などの酸に接触させることにより、より活性化して用いることができる。
また、上記触媒系において使用することのできる「塩」としては、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、硫酸ナトリウムなどのナトリウム化合物、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、硫酸カリウムなどのカリウム化合物;フッ化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウム、硫酸テトラエチルアンモニウムなどのアンモニウム化合物などが挙げられる。これらのうち、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化カリウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウムが好ましい。
各成分の使用割合は、遷移金属塩または遷移金属錯体が、上記モノマーの総計1モルに対し、通常、0.0001〜10モル、好ましくは0.01〜0.5モルである。0.0001モル未満では、重合反応が十分に進行しないことがあり、一方、10モルを超えると、分子量が低下することがある。
触媒系において、遷移金属塩および配位子成分を用いる場合、この配位子成分の使用割合は、遷移金属塩1モルに対し、通常、0.1〜100モル、好ましくは1〜10モルである。0.1モル未満では、触媒活性が不十分となることがあり、一方、100モルを超えると、分子量が低下することがある。
また、還元剤の使用割合は、上記モノマーの総計1モルに対し、通常、0.1〜100モル、好ましくは1〜10モルである。0.1モル未満では、重合が十分進行しないことがあり、100モルを超えると、得られる重合体の精製が困難になることがある。
さらに、「塩」を使用する場合、その使用割合は、上記モノマーの総計1モルに対し、通常、0.001〜100モル、好ましくは0.01〜1モルである。0.001モル未満では、重合速度を上げる効果が不十分であることがあり、100モルを超えると、得られる重合体の精製が困難となることがある。
使用することのできる重合溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N'−ジメチルイミダゾリジノンなどが挙げられる。これらのうち、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムア
ミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N'−ジメチル
イミダゾリジノンが好ましい。これらの重合溶媒は、十分に乾燥してから用いることが好ましい。
重合溶媒中における上記モノマーの総計の濃度は、通常、1〜90重量%、好ましくは5〜40重量%である。
また、重合する際の重合温度は、通常、0〜200℃、好ましくは50〜120℃である。また、重合時間は、通常、0.5〜100時間、好ましくは1〜40時間である。
スルホン酸基を有しない共重合体にはスルホン化剤を用い、スルホン酸基導入することにより得ることができる。すなわち、このスルホン化の反応条件としては、スルホン酸基を有しない共重合体を、無溶剤下、あるいは溶剤存在下で、スルホン化剤と反応させる。
スルホン化の際に使用する溶剤としては、例えばn−ヘキサンなどの炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、
N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドの
ような非プロトン系極性溶剤のほか、テトラクロロエタン、ジクロロエタン、クロロホルム、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素などが挙げられる。
スルホン酸基を有するポリアリーレン中の、スルホン酸基量は0.3〜5meq/g、好ましくは0.5〜3meq/g、さらに好ましくは0.8〜2.8meq/gである。0.3meq/g未満では、プロトン伝導度が低くなることがあり、一方、5meq/gを超えると、親水/新メタノール性が高まり、耐水性が大幅に低下してしまうことがあるため好ましくない。
上記のスルホン酸基量は、特定の繰り返し構造単位となりうるモノマーと一般式(A)で表される繰り返し構成単位となりうるモノマーとの使用割合、さらにモノマーの種類、組み合わせを変えることにより、調整することができる。
また、このようにして得られるスルホン酸基を含有する共重合体のスルホン化前の前駆体の重合体の分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量で、1万〜100万、好ましくは2万〜80万である。1万未満では、成形フィルムにクラックが発生するなど、塗膜性が不十分であることがあり、また強度的性質にも問題がある。一方、100万を超えると、溶解性が不十分となることがあり、また溶液粘度が高く、加工性が不良になるなどの問題がある。
本発明に係るスルホン酸基を有するポリアリーレンからなる直接メタノール型燃料電池電極用高分子電解質は、粒状、膜状、繊維状などの形状で、用途に合わせて用いることができる。
また、本発明では上記スルホン酸基を有するポリアリーレンとベースポリマーとを用いて高分子電解質とすることもでき、このような高分子電解質としては上記スルホン酸基を有するポリアリーレンと、ベースポリマとが層状構成を有していもの、上記スルホン酸基を有するポリアリーレンが海成分をなし、ベースポリマが島成分をなす海島構造を有しているもの、上記スルホン酸基を有するポリアリーレンが網目構造を有し、この網目の内部にベースポリマが存在している構造であるものなどがある。
本発明に係る直接メタノール型燃料電池電極用高分子電解質は、高いプロトン伝導度を有し、かつ優れた低メタノール透過性を示すので、メタノールを原料として用いる直接メタノール型燃料電池用電解質膜として優れた特性を有しており、家庭用電源向け燃料電池、燃料電池自動車、携帯電話用燃料電池、パソコン用燃料電池、携帯端末用燃料電池、デジタルカメラ用燃料電池、ポータブルCD、MD用燃料電池、ヘッドホンステレオ用燃料電池、ペットロボット用燃料電池、電動アシスト自転車用燃料電池、電動スクーター用燃料電池等の用途に好適に使用することができる。
(直接メタノール型燃料電池電極用ワニス組成物の製造方法)
本発明に係る直接メタノール型燃料電池電極用ワニス組成物は、上記スルホン酸基を含有するポリアリーレン、水素還元触媒、水溶性非プロトン系双極子有機溶剤を含有することを特徴とし、さらに必要に応じて分散剤、炭素繊維、水から選ばれる少なくとも1つの
成分を含有することができる。
まず、本発明に係る直接メタノール型燃料電池電極用ワニス組成物に含まれる各成分について説明する。
(電解質)
本発明で用いられる電解質としては、上記スルホン酸基を含有するポリアリーレンが使用される。また、本発明で用いられる電解質には、上記スルホン酸基を含有するポリアリーレン以外の、プロトン交換基を有するポリマーを本発明の目的を損なわない範囲でブレンドすることができも、このようなプロトン交換基を有するポリマーとしては、フルオロアルキルエーテル側鎖とフルオロアルキル主鎖とから構成されるプロトン交換基を有するポリマーや、その他のスルホン化ポリアリーレンなどが挙げられる。
(水素還元触媒)
本発明で用いられる水素還元触媒としては、白金、パラジウム、金、ルテニウム、イリジウムなどの貴金属触媒が好ましく用いられる。また、貴金属触媒は合金、混合物など、2種以上の元素が含まれるものであってもよい。本発明で用いられる水素還元触媒を担持する基質としては特に限定されるものではないがカーボンブラック等の炭素繊維がある。
(カーボンブラック)
カーボンブラックとしては、オイルファーネスブラック、チャネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが、電子伝導性と比表面積の大きさから好ましいものである。
オイルファーネスブラックとしては、キャボット社製バルカンXC−72、バルカンP、ブラックパールズ880、ブラックパールズ1100、ブラックパールズ1300、ブラックパールズ2000、リーガル400、ライオン社製ケッチェンブラックEC、三菱化学社製#3150、#3250などが挙げられ、アセチレンブラックとしては電気化学工業社製デンカブラックなどの商標で市販されているものが挙げられる。
また本発明で用いられるカーボンブラックとして、天然の黒鉛、ピッチ、コークス、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、フラン樹脂などの有機化合物から得られる人工黒鉛や炭素などを用いることもできる。
これらの炭素材の形態としては、粒子状のほか繊維状も用いることができる。
(水溶性非プロトン系双極子有機溶剤)
本発明で用いられる水溶性非プロトン系双極子有機溶剤としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチル尿素、N,N'−ジメチルイミダゾリジノン、スルホラン、テトラヒドロフラン(THF)などの極性溶剤が挙げられる。溶剤は、1種単独であるいは2種以上を併用することができる。
また水溶性非プロトン系双極子有機溶剤として上記極性溶剤とアルコールとの混合物も用いることができる。アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどが挙げられ、特にメタノールが幅広い組成範囲で溶液粘度を下げる効果があり好ましい。アルコールは、1種単独であるいは2種以上を併用することができる。
水溶性非プロトン系双極子有機溶剤として上記極性溶剤とアルコールとの混合物を用いる場合には、極性溶剤が95〜25重量%、好ましくは90〜25重量%、アルコールが5〜75重量%、好ましくは10〜75重量%(但し、合計は100重量%)の組成の混
合物が用いられる。アルコールの量が上記範囲内にあると、溶液粘度を下げる効果に優れると共に塗膜の二次構造を変更することが出来るためさらにメタノール耐性を向上させることができる場合がある。
なお、ワニスの溶液粘度は、スルホン酸基を有する重合体の分子量や、ポリマー濃度にもよるが、通常、100〜100,000mPa・s、好ましくは500〜50,000mPa・sである。
(分散剤)
本発明に係る直接メタノール型燃料電池電極用ペースト組成物では、必要に応じてさらに分散剤を添加することができる。本発明で必要に応じて用いられる分散剤としては、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル硫酸エステルナトリウム塩、セチル硫酸エステルナトリウム塩、ステアリル硫酸エステルナトリウム塩、オレイル硫酸エステルナトリウム塩、ラウリルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、油溶性アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、高級アルコールリン酸モノエステルジナトリウム塩、高級アルコールリン酸ジエステルジナトリウム塩、ジアルキルジチオリン酸亜鉛等のアニオン界面活性剤;
高級アルキルアミン塩、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジウム塩、高分子量ポリエステル酸アマイドアミン塩等のカチオン界面活性剤、およびラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン等の両性界面活性剤;
高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、高級脂肪族アミンのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドのエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、グリセリンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリットの脂肪酸エステル、ソルビットの脂肪酸エステル、ソルビタンの脂肪酸エステル、砂糖の脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド等の非イオン界面活性剤などを挙げることができ、これらは1種類以上を組み合わせて用いることもでる。電極用ワニス組成物に分散剤をさらに添加すると、保存安定性がさらに優れる。
(炭素繊維)
本発明に係る直接メタノール型燃料電池電極用ペースト組成物では、必要に応じてさらに炭素繊維を添加することができる。
本発明で必要に応じて用いられる炭素繊維しては、レーヨン系炭素繊維、PAN系炭素繊維、リグニンポバー系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維等を用いることができ、好ましくは、気相成長炭素繊維である。
電極用ペースト組成物に炭素繊維をさらに添加すると、電極中の細孔容積が増加することにより、燃料ガスや酸素ガスの拡散性が向上し、また、生成する水によるフラッディング等を改善でき、発電性能が向上する。
(水)
本発明に係る直接メタノール型燃料電池電極用ペースト組成物では、必要に応じてさらに水を添加することができる。電極用ペースト組成物に水をさらに添加すると、電極用ペースト作製時の発熱および発火の危険性を低減する効果があると共に塗膜の二次構造を変更することが出来るためさらにメタノール耐性を向上させることができる場合がある。
(組成)
本発明において、水素還元触媒が担持されたカーボンブラックの使用割合は、重量比で1重量%〜20重量%、好ましくは3重量%〜10重量%であり、電解質の使用割合は、重量比で1重量%〜60重量%、好ましくは1重量%〜50重量%であり、有機溶剤の使用割合は、重量比で1重量%〜90重量%、好ましくは1重量%〜50重量%であり、必要に応じて用いられる分散剤の使用割合は、重量比で0重量%〜10重量%、好ましくは0重量%〜2重量%であり、必要に応じて用いられる炭素繊維の使用割合は、重量比で0重量%〜20重量%、好ましくは1重量%〜10重量%であり、必要に応じて用いられる水の使用割合は重量比で0重量%〜70重量%、好ましくは、5重量%〜30重量%である。
水素還元触媒が担持されたカーボンブラックの使用割合が、上記範囲未満であると、電極反応率が低下する。また、上記範囲より大きいと、電極ペーストの粘度が増加し、塗工時に塗りむらが発生する。
電解質の使用割合が、上記範囲未満であると、プロトン伝導度が低下する。さらに、バインダーとしての役割を果たせなくなり、電極を形成できない。また、上記範囲より大きいと、電極中の細孔容積が減少する。
有機溶剤の使用割合が、上記範囲内にあると電極中の細孔容積が増加し、電極形成時の塗工性に優れる。
分散剤の使用割合が、上記範囲内にあると保存安定性に優れた電極ペーストが得られる。
炭素繊維の使用割合が、上記範囲未満であると、電極中の細孔容積の増加効果が低い。また、上記範囲より大きいと、電極反応率が低下する。
水の使用割合が、上記範囲内にあると電極ペースト作製時の発熱および発火の危険性を低減できる。
(組成物の調製)
本発明に係る直接メタノール型燃料電池電極用ワニス組成物は、例えば上記各成分を所定の割合で混合し、従来公知の方法で混練することにより調製することができる。
各成分の混合順序は特定に限定されないが、例えば全ての成分を混合して一定時間攪拌を行うか、分散剤以外の成分を混合して一定時間攪拌を行った後、必要に応じて分散剤を添加して一定時間攪拌を行うことが好ましい。
(塗布)
本発明に係る直接メタノール型燃料電池電極用ワニス組成物は、電極触媒層の電極基材またはプロトン伝導膜へ塗布される。
塗布方法としては、刷毛塗り、筆塗り、バーコーター塗布、ナイフコーター塗布、スクリーン印刷、スプレー塗布などがあり、他の基材(転写基材)上に塗布して電極触媒層をいったん形成した後、電極基材またはプロトン伝導膜に転写してもよい。この場合の転写基材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のシート、または表面を離型剤処理したガラス板や金属板なども用いることができる。
電極基材としては、燃料電池に一般に用いられる電極基材が特に限定されることなく用
いられる。例えば、導電性物質を主たる構成材とする多孔質導電シートなどが挙げられ、この導電性物質としては、ポリアクリロニトリルからの焼成体、ピッチからの焼成体、黒鉛および膨張黒鉛などの炭素材、ステンレススチール、モリブデン、チタンなどが例示される。導電性物質の形態は繊維状または粒子状など特に限定されないが、繊維状導電性無機物質(無機導電性繊維)特に炭素繊維が好ましい。無機導電性繊維を用いた多孔質導電シートとしては、織布または不織布いずれの構造も使用可能である。織布としては、平織、斜文織、朱子織、紋織、綴織など特に限定されること無く用いられる。また、不織布としては、抄紙法、ニードルパンチ法、スパンボンド法、ウォータージェットパンチ法、メルトブロー法などの方法で製造されたものが特に限定されること無く用いられる。また無機導電性繊維を用いた多孔質導電シートは編物であっても構わない。
この多孔質導電シートの材料として特に炭素繊維を用いる場合、耐炎化紡績糸を用いた平織物を炭化または黒鉛化した織布、耐炎化糸をニードルパンチ法やウォータージェットパンチ法などによる不織布加工をした後に炭化または黒鉛化した不織布、耐炎化糸または炭化糸または黒鉛化糸を用いた抄紙法によるマット不織布などとして用いることが好ましい。例えば、東レ製カーボンペーパーTGPシリーズ、SOシリーズ、E−TEK社製カーボンクロスなどが好ましく用いられる。
多孔質導電シートには、導電性向上のために補助剤としてカーボンブラックなどの導電性粒子や、炭素繊維などの導電性繊維を添加することも好ましい実施態様である。
本発明の直接メタノール型燃料電池電極用高分子電解質および直接メタノール型燃料電池電極用ワニス組成物は、例えば一次電池用電解質、二次電池用電解質、直接メタノール型燃料電池電極用高分子固体電解質、表示素子、各種センサー、信号伝達媒体、固体コンデンサー、イオン交換膜などに利用可能なプロトン伝導性の伝導膜に利用可能である。
(直接メタノール型燃料電池)
本発明に係る直接メタノール型燃料電池の構成について説明する。図1は、当該直接メタノール型燃料電池の構成図である。図1に示されるように、直接メタノール型燃料電池は、燃料極1と、この燃料極1と接する上記直接メタノール型燃料電池電極用高分子電解質からなる電解質膜2と、燃料極1と対向して設けられ、電解質膜2と接する空気極3と、燃料極1および空気極3と接続された外部回路4を備えている。この電解質膜2は、上述の通り、スルホン化ポリアリーレンを包含している。
また、空気極や燃料極は白金などの金属触媒を担持したカーボン、電解質、分散剤などから形成される。
本発明の電解質膜は、優れた低メタノール透過性を示すが、プロトン伝導膜中にバリア膜を組み合わせる、プロトン伝導膜の表面に触媒層をさらに形成するなどの公知の方法を組み合わせることもできる。
また、直接メタノール燃料電池は、第1の流路11、第2の流路12、第3の流路13および第4の流路14を備えている。この第1の流路11には、燃料であるメタノール水溶液が供給される。第2の流路12からは、メタノール分の少なくなった水溶液(二酸化炭素を含む)が排出される。第3の流路13には、酸素を含む空気が供給される。第4の流路14からは、酸素の少なくなったガス(水を含む)が排出される。
ここで、直接メタノール型燃料電池において生じる反応について説明する。燃料極1では、メタノールと水とが反応して、二酸化炭素、水素イオンと電子とが生成される。水素イオンは、電解質膜2を通って空気極3に向かい、電子は外部回路4を流れる。即ち、燃料極1では、次の反応が生じる。
CH3OH + H2O → CO2 + 6H+ + 6e-
空気極3では、酸素と燃料極1からきた水素イオンと外部回路4からきた電子とが反応して水になる。即ち、空気極では、次の反応が生じる。
(3/2)O2 + 6H+ + 6e- → 3H2
全体としての反応を次のように表すことができる。
CH3OH + (3/2)O2 → CO2 + 2H2
[実施例]
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例において、スルホン酸当量、分子量、プロトン伝導度、耐メタノール水溶液性(フィルムの面積変化率)、メタノール透過性は以下のようにして求めた。
1.スルホン酸当量
得られたスルホン酸基を有する重合体の水洗水が中性になるまで洗浄し、フリーに残存している酸を除いて充分に水洗し、乾燥後、所定量を秤量し、THF/水の混合溶剤に溶解したフェノールフタレインを指示薬とし、NaOHの標準液を用いて滴定を行い、中和点から、スルホン酸当量を求めた。
2.分子量の測定
スルホン酸不含のポリアリーレン重量平均分子量は、溶剤としてテトラヒドロフラン(THF)を用い、GPCによって、ポリスチレン換算の分子量を求めた。スルホン酸基を有するポリアリーレンの分子量は、溶剤として臭化リチウムと燐酸を添加したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を溶離液として用い、GPCによって、ポリスチレン換算の分子量を求めた。
3.プロトン伝導度の測定
交流抵抗は、5mm幅の短冊状のプロトン伝導膜試料の表面に、白金線(f=0.5mm)を押し当て、恒温恒湿装置中に試料を保持し、白金線間の交流インピーダンス測定から求めた。すなわち、25℃、60℃、相対湿度80%の環境下で交流10kHzにおけるインピーダンスを測定した。抵抗測定装置として、(株)NF回路設計ブロック製のケミカルインピーダンス測定システムを用い、恒温恒湿装置には、(株)ヤマト科学製のJW241を使用した。白金線は、5mm間隔に5本押し当てて、線間距離を5〜20mmに変化させ、交流抵抗を測定した。線間距離と抵抗の勾配から、膜の比抵抗を算出し、比抵抗の逆数から交流インピーダンスを算出し、このインピーダンスから、プロトン伝導度を算出した。
比抵抗R(Ω・cm)=0.5(cm)×膜厚(cm)×抵抗線間勾配(Ω/cm)
4.耐メタノール水溶液性
(メタノール溶解および膨潤性)
メタノール水溶液に対する耐性評価は、スルホン化ポリアリーレン単体のフィルムを所定濃度(6、64重量%)のメタノール水溶液に20時間室温浸漬し、浸積前後の面積測定により行った。尚、評価フィルムは、スルホン化ポリアリーレンのNMP16重量%溶液からキャスト、150℃で乾燥、水洗により溶媒除去したフィルムを40*30mmにカットしたものをサンプルとした。
寸法変化量=(浸積後面積)/(浸積前面積)
(メタノール透過性)
メタノール透過抑制能の評価は、上記浸積試験と同様のフィルムを直径50mmのプロ
トン伝導膜試料を所定のセルにセットし、表面側から規定濃度のメタノール水溶液を供給、裏面側から減圧しながら透過液を回収する浸透気化測定装置(パーベーパレーション)により行った。すなわち、メタノール水溶液濃度10wt%、温度25℃の減圧条件下でのメタノールFluxおよび分離係数から特性評価を実施した。
メタノールFlux(g/h/m2)=回収透過液量(g)/回収時間(h)/試料面
積(m2)×透過液濃度(%)
分離係数=(透過液濃度/(100−透過液濃度))/(供給液濃度/(100−供給液濃度)
[合成例1]
(オリゴマーの調製)
撹拌機、温度計、冷却管、Dean-Stark管、窒素導入の三方コックをとりつけた2Lの三つ口のフラスコに、4,4'-ジヒドロキシベンゾフェノン(4,4'-DHBP)103.7g(0.48mol)、4,4'-ジクロロジフェニルスルホン(4,4'-DCDS)148.2g(0.52mol)、炭酸カリウム 86.9g(0.63mol)、1,3-ジメチ
ル-2-イミダゾリジノン(DMI)500mL、トルエン 200mLをとり、オイルバ
ス中、窒素雰囲気下で加熱し撹拌下150℃で反応させた。反応により生成する水をトルエンと共沸させ、Dean-Stark管で系外に除去しながら反応させると、約3時間で水の生成がほとんど認められなくなった。反応温度を150℃から徐々に180℃まで上げた。その後、反応温度を徐々に180℃まで上げながら大部分のトルエンを除去し、180℃で8時間反応を続けた後、4,4'−DCDS 9.2g(0.032mol)を加え、さら
に2時間反応した。得られた反応液を放冷後、副生した無機化合物の沈殿物を濾過除去し、濾液を4Lのメタノール中に投入した。沈殿した生成物を濾別、回収し乾燥後、DMI
500mLに溶解した。これをメタノール4Lに再沈殿し、目的の化合物180g(収
率78%)を得た。
得られた重合体のGPC(THF溶媒)で求めたポリスチレン換算の数平均分子量は13700であった。また、得られた重合体はNMP、DMAc、DMIなどに可溶で、Tgは159℃、熱分解温度は500℃であった。
得られた重合体は式(I):
Figure 2005183311
で表される構造を有することが推定される。
[合成例2]
(ポリアリーレン系共重合体の合成)
上記で得られた式(I)のオリゴマー 26.6g(1.9mmol)、2,5−ジクロロ−4'−(4−フェノキシ)フェノキシベンゾフェノン(DCPPB)36.2g(8
3.1mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド 1.67g(
2.6mmol)、ヨウ化ナトリウム 1.66g(11.1mmol)、トリフェニル
ホスフィン 8.92g(34.0mmol)、亜鉛末 13.3g(204mmol)をフラスコにとり、乾燥窒素置換した。N−メチル−2−ピロリドン 160mlを加え、
80℃に加熱し、4時間攪拌し、重合をおこなった。重合溶液をTHFで希釈し、塩酸/メタノールで凝固回収し、メタノール洗滌を繰り返し、THFで溶解、メタノールへ再沈
殿による精製し、濾集した重合体を真空乾燥し目的の共重合体 51.0g(90%)を
得た。GPC(THF)で求めたポリスチレン換算の数平均分子量は38,900、重量
平均分子量は160,000であった。
(スルホン酸基を含有するポリアリーレンの合成)
合成例2で得た共重合体50gを攪拌装置、温度計を取り付けた1000mlのセパラブルフラスコに入れ、濃度98%硫酸500mlを加え、内温を25℃に保ちながら窒素気流下で24時間攪拌した。得られた溶液を大量のイオン交換水の中に注ぎ入れ、重合体を沈殿させた。洗浄水のpHが5になるまで重合体の洗浄を繰り返した。乾燥して、56g(95%)のスルホン酸基含有重合体を得た。スルホン酸基含有重合体のGPC(NMP)で求めたポリスチレン換算の数平均分子量は45,500、重量平均分子量は176,000であった。本スルホン酸基含有重合体のスルホン酸等量は2.1meq/gであった。
本スルホン化ポリマーから作製したフィルム(膜厚50μm)のメタノールFluxは42(g/h/m2)であった。寸法変化量は1.10倍(6重量%)、1.34倍(6
4重量%)、伝導度は、0.076s/cm(60℃/80%RH)、0.029s/cm(25℃/80%RH)であった。
[比較例1]
パーフルオロアルキルスルホン酸(商品名:Nafion117(登録商標)、DuPont社製)の
キャストフィルム(膜厚180μm)のメタノールFluxは158(g/h/m2)で
あった。寸法変化量は1.28倍(6重量%)、2.18倍(64重量%)であった。伝導度は、0.090s/cm(60℃/80%RH)、0.049s/cm(25℃/80%RH)であった。
[ペーストの調製]
50mlのガラス瓶に直径10mmのジルコニアボール(商品名:YTZボール、株式会社ニッカトー製)25gを入れ、白金ルテニウム担持カーボン粒子(Pt−Ru:50重量%担持、Pt:Ru=1:1モル)1.58g、蒸留水1.35g、実施例1に記載のスルホン酸を含有するポリアリーレン 8.50g、NMP 8.10g、気相法炭素繊維(商品名:VGCF、昭和電工社製)0.43gおよび分散剤(商品名:DA234、楠本化成株式会社製)0.036gを加え、ウエーブローターで70分間攪拌し、粘度500cp(25℃)のペーストを得た。
[製膜]
カーボンペーパー上に、ペーストを白金塗布量が0.5mg/cm2になるようにドク
ターブレードを用いて製膜した。これを95℃で10分間加熱乾燥し、電極層を形成させた。
[燃料電池の作製]
実施例1のスルホン酸含有共重合体の16重量%NMP溶液をPETフィルム上でドクターブレードを用いて製膜した膜厚50μmの膜を、2枚の電極層で挟み、圧力40kg/cm2下で、160℃×15minの条件でポットプレス成形して、電極接合体を作製
した。次に、作製した電極膜接合体を2枚のチタン製の集電体で挟み、さらにその外側にヒーターを配置し、有効面積25cm2の燃料電池を組み立てた。
直接メタノール型燃料電池を示す概略図である。
符号の説明
1 燃料極(負極)
2 電解質膜
3 空気極(正極)
4 外部回路

Claims (4)

  1. 下記一般式(A)で表される繰り返し構成単位および下記一般式(B)で表される繰り返し構成単位を含むスルホン酸基を有するポリアリーレンを含有することを特徴とする直接メタノール型燃料電池電極用高分子電解質;
    Figure 2005183311
    (式(A)中、Xは単結合、電子吸引基または電子供与基を示し、mは0〜10の整数を示し、mが1〜10のときはXは互いに同一でも異なっていてもよく、kは0〜5の整数を示し、lは0〜4の整数を示し、k+l≧1である。)
    Figure 2005183311
    (式(B)中、R1〜R8は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ素置換アルキル基、アリル基およびアリール基からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基を示し、Wは2価の電子吸引性基または単結合を示し、Tは単結合、2価の電子吸引性基、2価の電子供与性基、下記一般式(C−1)または(C−2)で表される2価の基より選ばれた少なくとも1種を示し、nは正の整数を示す。)
    Figure 2005183311
    (式(C−1)および(C−2)中、R9〜R20は互いに同一でも異なっていてもよく、
    水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ素置換アルキル基、アリル基およびアリール基からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基を示し、Qは単結合または2価の電子供与性基を示し、Jは単結合、アルキレン基、フッ素置換アルキレン基、アリール置
    換アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、フルオレニリデン基、−O−、−S−、−CO−、−CONH−、−COO−、−SO−および−SO2−か
    らなる群より選ばれた1種の原子または基を示す。)。
  2. 上記スルホン酸基を有するポリアリーレンがスルホン酸基を0.3〜5.0meq/gの範囲で含有するポリアリーレンであることを特徴とする請求項1に記載の直接メタノール型燃料電池電極用高分子電解質。
  3. 請求項1に記載の一般式(A)で表される繰り返し構成単位および一般式(B)で表される繰り返し構成単位を含むスルホン酸基を有するポリアリーレンであって、スルホン酸基を0.3〜5.0meq/gの範囲で含有するポリアリーレン、水素還元触媒、水溶性非プロトン系双極子溶媒を少なくとも含有することを特徴とする直接メタノール型燃料電池電極用ワニス組成物。
  4. 電解質が請求項2に記載の高分子電解質であり、供給メタノール溶液濃度が10重量%以上であることを特徴とする直接メタノール型燃料電池。
JP2003425368A 2003-12-22 2003-12-22 直接メタノール型燃料電池電極用高分子電解質、ワニス組成物および直接メタノール型燃料電池 Pending JP2005183311A (ja)

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