本発明に係る油圧制御装置の実施例1を図1及び図2に基づいて説明する。本実施例1にあっては、その油圧制御装置を車輌の変速機の油圧制御に適用した場合について例示する。
図1の符号10は、本発明に係る油圧制御装置を示す。最初に、この油圧制御装置10が適用される本実施例1の車輌Veについて図1に基づき説明する。
この車輌Veには、内燃機関や電動機等の駆動源20と、この駆動源20の駆動力を駆動輪30に伝達する動力伝達経路とが設けられている。ここで、上記駆動源20としては、内燃機関又は電動機の内の何れか一方のみであってもよく、その双方を適宜使い分けるものであってもよい。ここでは、内燃機関を駆動源20として例示する。また、動力伝達経路には、流体伝動装置40,ロックアップクラッチ50,前後進切換え装置60,ベルト式無段変速機70等が設けられている。
上記流体伝動装置40及びロックアップクラッチ50は、駆動源20の駆動力を前後進切換え装置60に伝達するものであり、その駆動源20と前後進切換え装置60との間に並列に配置されている。この流体伝動装置40は、流体の運動エネルギにより駆動源20の駆動力を伝達し、ロックアップクラッチ50は、摩擦力により駆動源20の駆動力を伝達する。
また、上記前後進切換え装置60は、伝達された駆動源20の駆動力をベルト式無段変速機70における後述するプライマリプーリ73に伝達するものであり、図示しない遊星歯車機構,フォワードクラッチ及びリバースブレーキから構成されている。そのフォワードクラッチ及びリバースブレーキは、遊星歯車機構における回転要素の回転及び停止を作動油によりON/OFF制御するものである。
この前後進切換え装置60においては、フォワードクラッチをON,リバースブレーキをOFFにすることで車輌Veを前進走行させ、フォワードクラッチをOFF,リバースブレーキをONにすることで車輌Veを後進走行させる。
続いて、上記ベルト式無段変速機70の概略構成について説明する。このベルト式無段変速機70は、変速比を無段階に可変させて、前後進切換え装置60から伝達された駆動源20の駆動力を駆動輪30側に伝達するものである。
このベルト式無段変速機70は、所定の間隔を設けて平行に配置されたプライマリシャフト71とセカンダリシャフト72とを備えている。このプライマリシャフト71にはプライマリプーリ73が設けられており、セカンダリシャフト72にはセカンダリプーリ74が設けられている。
先ず、上記プライマリプーリ73は、プライマリシャフト71の外周に一体的に配設された固定シーブ73aと、そのプライマリシャフト71の軸線方向に摺動可能な可動シーブ73bとを備えており、これら固定シーブ73aと可動シーブ73bとの対向面間にはV字形状の溝M1が形成されている。
ここで、上記可動シーブ73b側には、この可動シーブ73bをプライマリシャフト71の軸線方向に摺動させて固定シーブ73aに接近又は離隔させるプライマリ側油圧サーボ機構75が設けられている。このプライマリ側油圧サーボ機構75は、油圧室75Aと、この油圧室75Aの油圧に応じてプライマリシャフト71の軸線方向に移動するピストン(図示略)とを備えている。このピストンは可動シーブ73bに接続されており、油圧室75Aの油圧でピストンを移動させることによって可動シーブ73bの摺動が行われる。
また、上記セカンダリプーリ74は、セカンダリシャフト72の外周に一体的に配設された固定シーブ74aと、そのセカンダリシャフト72の軸線方向に摺動可能な可動シーブ74bとを備えており、これら固定シーブ74aと可動シーブ74bとの対向面間にはV字形状の溝M2が形成されている。
ここで、上記可動シーブ74b側には、この可動シーブ74bをセカンダリシャフト72の軸線方向に摺動させて固定シーブ74aに接近又は離隔させるセカンダリ側油圧サーボ機構76が設けられている。このセカンダリ側油圧サーボ機構76は、油圧室76Aと、この油圧室76Aの油圧に応じてセカンダリシャフト72の軸線方向に移動するピストン(図示略)とを備えている。このピストンは可動シーブ74bに接続されており、油圧室76Aの油圧でピストンを移動させることによって可動シーブ74bの摺動が行われる。
このベルト式無段変速機70においては、上記プライマリプーリ73及びセカンダリプーリ74の夫々のV字形状の溝M1,M2にベルト77が巻き掛けられている。このベルト77は多数の金属製の駒と複数本のスチールリングで構成された無端ベルトであって、このベルト77を介して、プライマリプーリ73に伝達された駆動源20のトルクがセカンダリプーリ74に伝達される。
上述した流体伝動装置40,ロックアップクラッチ50,前後進切換え装置60,ベルト式無段変速機70等により動力伝達経路が構成されるが、この車輌Veにおいては、更に、ロックアップクラッチ50、前後進切換え装置60及びベルト式無段変速機70の各油圧サーボ機構75,76を制御する油圧制御装置10と、駆動源20、ロックアップクラッチ50、前後進切換え装置60、ベルト式無段変速機70及び油圧制御装置10を制御する電子制御装置(ECU)80とが設けられている。
上記電子制御装置80は、図示しない演算処理装置(CPU又はMPU)と、記憶装置(RAM及びROM)と、入出力インターフェイスとを有するマイクロコンピュータにより構成されている。
この電子制御装置80には、駆動源20の機関回転数,アクセル開度,ブレーキペダルの操作状態,スロットル開度,ベルト式無段変速機70のシフトポジション,プライマリシャフト71やセカンダリシャフト72の回転数等の検知信号が入力される。例えば、この電子制御装置80は、セカンダリシャフト72の回転数に基づいて車速を求める。
また、この電子制御装置80の記憶装置には各種データが記憶されており、例えばそのデータとしてロックアップクラッチ制御マップや変速制御マップ等が挙げられる。そのロックアップクラッチ制御マップは、車速やアクセル開度等に基づいてロックアップクラッチ50のトルク容量を設定するマップである。また、変速制御マップは、車速やアクセル開度等に基づいてベルト式無段変速機70の変速比を設定するマップである。
電子制御装置80は、これら各種データや上記検知信号等の入力信号に基づいて、駆動源20の制御信号,ロックアップクラッチ50の制御信号,前後進切換え装置60の制御信号,ベルト式無段変速機70の制御信号,油圧制御装置10の制御信号等を出力する。
例えば、この電子制御装置80は、ベルト式無段変速機70の変速比を制御することで、機関回転数を最適燃費曲線に近づけるよう制御することができる。
続いて、以上示した車輌Veの動作説明を行う。
この車輌Veにおいて、駆動源20のトルクは、流体伝動装置40又はロックアップクラッチ50の何れか一方を経由して前後進切換え装置60に伝達され、この前後進切換え装置60を経てベルト式無段変速機70のプライマリシャフト71に伝達される。そして、このプライマリシャフト71に入力されたトルクは、プライマリプーリ73,ベルト77及びセカンダリプーリ74を介してセカンダリシャフト72に伝達され、このセカンダリシャフト72から出力されることで駆動輪30に伝達される。
ここで、上記ベルト式無段変速機70においては変速制御が為される。そこで、以下においては、このベルト式無段変速機70の変速制御について詳述する。
先ず、各油圧サーボ機構75,76における夫々の油圧室75A,76Aの油圧に基づいて、プライマリプーリ73の可動シーブ73bとセカンダリプーリ74の可動シーブ74bを軸線方向に摺動させる推力を変化させる。これにより、夫々の可動シーブ73b,74bが軸線方向において逆方向に移動し、この移動量に応じて各溝M1,M2の幅が変化する。
このようにして溝M1の幅が調整されると、プライマリプーリ73におけるベルト77の巻き掛け半径と、セカンダリプーリ74におけるベルト77の巻き掛け半径との比が変化する。そして、これによりプライマリプーリ73とセカンダリプーリ74との間の回転速度の比,即ち変速比が変化する。
より具体的には、油圧室75Aの油圧が高められて溝M1の幅が狭められることにより、プライマリプーリ73におけるベルト77の巻き掛け半径が大きくなって変速比が小さくなるようにベルト式無段変速機70が変速する。一方で、油圧室75Aの油圧が低下させられて溝M1の幅が広げられることにより、プライマリプーリ73におけるベルト77の巻き掛け半径が小さくなって変速比が大きくなるようにベルト式無段変速機70が変速する。
また、この変速制御に伴って溝M2の幅が調整されると、ベルト77に作用する挟圧力が変化してベルト77の張力が変化する。そして、これによりプライマリプーリ73とセカンダリプーリ74との間で伝達されるトルクの容量が制御される。
より具体的には、油圧室76Aの油圧が高められてベルト77に作用する挟圧力が高められることによりトルク容量が大きくなる。一方で、油圧室76Aの油圧が低下させられてベルト77に作用する挟圧力が弱められることによりトルク容量が小さくなる。このように、ベルト77に作用する挟圧力の変化に伴ってベルト式無段変速機70のトルク容量が変化する。
このような変速制御やトルク容量制御は、上記油圧室75A,76A等の油圧を制御することにより行われ、かかる油圧制御を行う為に図1に示す油圧制御装置10が設けられている。以下、本実施例1における油圧制御装置10について説明する。
図2の符号10Aは、本実施例1の油圧制御装置を示す。この油圧制御装置10Aは、図2に示す如く、プライマリレギュレータバルブ(第1圧力制御弁)11と、セカンダリレギュレータバルブ(第2圧力制御弁)12と、ポンプ装置13とを備えており、これらにより3系統のオイル供給先(第1〜第3のオイル供給先91,92,93)に作動油又は潤滑油としてオイルを供給する。
ここで、本実施例1の第1オイル供給先91としては、プライマリ側油圧サーボ機構75及びセカンダリ側油圧サーボ機構76等のライン圧系の供給先が挙げられる。また、第2オイル供給先92としては、前後進切換え装置60の摩擦係合装置の係合圧を制御する油圧室(図示略)等のライン圧よりも低圧のセカンダリ圧系の供給先が挙げられる。また、第3オイル供給先93としては、前後進切換え装置60の遊星歯車機構やベルト式無段変速機70のベルト77等の潤滑用の供給先が挙げられる。
以下においては、第1オイル供給先91をライン圧供給先91と、第2オイル供給先92をセカンダリ圧供給先92と、第3オイル供給先93を潤滑オイル供給先93という。
ライン圧供給先91,セカンダリ圧供給先92,潤滑オイル供給先93には夫々ライン圧油路141,セカンダリ圧油路142,潤滑オイル油路143が接続されている。
上記ライン圧油路141は、後述するポンプ装置13における第2オイルポンプ132の吐出油路132cと連通し、且つ第1逆止弁(ライン圧逆止弁)16を介して油路144に接続されている。ここで、この油路144は、後述するポンプ装置13の第1オイルポンプ131の吐出油路131bと連通している。
また、上記第1逆止弁16は、上記ライン圧油路141に接続された油路161と,この油路161と相互に連通し且つ上記油路144に接続された油路162と、これら各油路161,162の間に設けたポート163と、このポート163を開閉する弁体164と、この弁体164を所定方向に付勢する弾性部材(図示略)とを備えている。
ここで、上記弁体164には、上記弾性部材の付勢力とライン圧油路141からの油圧に対応した押圧力とが同一方向(ここでは図2の紙面左方)に作用する一方、その反対方向(ここでは図2の紙面右方)に向けて油路144からの油圧に対応した押圧力が作用する。これが為、この弁体164に掛かる双方向の力の大小関係を制御することによって、この弁体164によるポート163の開閉動作が制御される。
次に、この油圧制御装置10Aが具備するプライマリレギュレータバルブ11について詳述する。このプライマリレギュレータバルブ11は、第1及び第2の入力ポート111,112と、第1及び第2のドレーンポート113,114と、フィードバックポート115と、信号圧ポート116とを備えている。
ここで、上記第1入力ポート111はライン圧油路141に接続され、第2入力ポート112は油路144に接続される。また、上記第1ドレーンポート113はセカンダリレギュレータバルブ12の後述する第1入力ポート121に接続され、第2ドレーンポート114はセカンダリレギュレータバルブ12の後述する第2入力ポート122に接続される。更にまた、上記フィードバックポート115は、オリフィス145aが設けられた油路145を介してライン圧油路141に接続され、信号圧ポート116はオリフィス146aが設けられた油路146に接続される。
更に、このプライマリレギュレータバルブ11には、その軸線方向に動作自在なスプール117と、このスプール117を一方の軸線方向に向けて付勢するバネ等の弾性部材118とが設けられている。
上記スプール117は、第1〜第3のランド部117a,117b,117cを有している。ここで、その第3ランド部117cには、上記弾性部材118の付勢力と信号圧ポート116からの油圧に対応した押圧力とが同一方向(ここでは図2の紙面上方)に作用する。一方、第1ランド部117aには、上記第3ランド部117cに掛かる付勢力及び押圧力とは逆方向(ここでは図2の紙面下方)に、フィードバックポート115からの油圧に対応した押圧力が作用する。
これが為、スプール117は、上記第1ランド部117aに掛かる力と上記第3ランド部117cに掛かる力との大小関係に応じて、何れか一方の軸線方向に動作する。このプライマリレギュレータバルブ11においては、そのスプール117が動作することによって、第1入力ポート111と第1ドレーンポート113との間の開度が第2ランド部117bにより制御され、第2入力ポート112と第2ドレーンポート114との間の開度が第3ランド部117cにより制御される。
次に、セカンダリレギュレータバルブ12について詳述する。このセカンダリレギュレータバルブ12は、第1及び第2の入力ポート121,122と、第1及び第2のドレーンポート123,124と、フィードバックポート125と、信号圧ポート126とを備えている。
上記第1入力ポート121はセカンダリ圧油路142と連通する油路147を介してプライマリレギュレータバルブ11の第1ドレーンポート113と接続され、第2入力ポート122は油路148を介してプライマリレギュレータバルブ11の第2ドレーンポート114に接続される。
ここで、上記セカンダリ圧油路142及び油路147と油路148とは油路149を介して接続され、更に、この油路149には第2逆止弁(セカンダリ圧逆止弁)17が設けられている。この第2逆止弁17は、その構成が前述した第1逆止弁16と同等であり、セカンダリ圧油路142からの油圧に対応した押圧力及び弾性部材(図示略)の付勢力と、油路148からの油圧に対応した押圧力との大小関係を制御することによって、セカンダリ圧油路142のオイルの油路148への流入防止と、油路148のオイルのセカンダリ圧油路142への供給とを制御している。
また、上記第1ドレーンポート123は潤滑オイル油路143を介して第3オイル供給先93に接続され、第2ドレーンポート124はドレーン油路150を介してオイルパン135側に接続される。更にまた、上記フィードバックポート125は、オリフィス151aが設けられた油路151を介してセカンダリ圧油路142に接続され、信号圧ポート126はオリフィス152aが設けられた油路152に接続される。
更に、このセカンダリレギュレータバルブ12には、プライマリレギュレータバルブ11と同様に、その軸線方向に動作自在なスプール127と、このスプール127を一方の軸線方向に向けて付勢するバネ等の弾性部材128とが設けられている。
上記スプール127は、第1〜第3のランド部127a,127b,127cを有している。ここで、その第3ランド部127cには、上記弾性部材128の付勢力と信号圧ポート126からの油圧に対応した押圧力とが同一方向(ここでは図2の紙面上方)に作用する。一方、第1ランド部127aには、上記第3ランド部127cに掛かる付勢力及び押圧力とは逆方向(ここでは図2の紙面下方)に、フィードバックポート125からの油圧に対応した押圧力が作用する。
これが為、スプール127は、上記第1ランド部127aに掛かる力と上記第3ランド部127cに掛かる力との大小関係に応じて、何れか一方の軸線方向に動作する。このセカンダリレギュレータバルブ12においては、そのスプール127が動作することによって、第1入力ポート121と第1ドレーンポート123との間の開度が第2ランド部127bにより制御され、第2入力ポート122と第2ドレーンポート124との間の開度が第3ランド部127cにより制御される。
次に、本実施例1のポンプ装置13について詳述する。
このポンプ装置13は、オイルの供給源として二つのオイルポンプ(第1オイルポンプ131及び第2オイルポンプ132)を具備しており、その夫々が図2に示す駆動軸133を介して接続された同一の駆動源により駆動されるものである。
ここで、本実施例1の駆動源としては前述した車輌Veの駆動源20を利用するが、その駆動源は、本ポンプ装置13専用の電動機等を用いてもよい。また、第1及び第2のオイルポンプ131,132の夫々に別個の駆動源を設けてもよい。更に、上記駆動軸133は、駆動源20の出力軸に直結されたものであってもよく、その出力軸とプーリやベルト又は歯車やチェーン等を介して接続されたものであってもよい。
上記第1及び第2のオイルポンプ131,132は、駆動源20の回転数に略比例して夫々吐出流量Q1,Q2を吐出する固定容量ポンプである。ここで、その第1オイルポンプ131は、その吐出流量Q1が第2オイルポンプ132の吐出流量Q2よりも多くなるように設定されたものである。また、これら第1及び第2のオイルポンプ131,132は、その夫々の吐出流量Q1,Q2を合わせた油量「Q1+Q2」が急変速時にライン圧供給先91で必要とされる油量となるように設定されている。
先ず、第1オイルポンプ131には、その吸込口側に吸込油路131aが設けられ、その吐出口側に吐出油路131bが設けられている。その吸込油路131aは、ストレーナ134を介してオイルパン135に接続され、且つドレーン油路150を介してセカンダリレギュレータバルブ12の第2ドレーンポート124に接続されている。更に、吐出油路131bは、油路144に接続されている。
また、第2オイルポンプ132には、その吸込口側に吸込油路132aが設けられている。この吸込油路132aは逆止弁(ポンプ逆止弁)136を介して油路132bに接続され、この油路132bはストレーナ134を介してオイルパン135に接続されている。その逆止弁136は、油路132bから吸込油路132aへのオイル流入を可能にし、その吸込油路132aから油路132bへのオイル逆流を防ぐものである。更に、この第2オイルポンプ132には吐出口側に吐出油路132cが設けられており、この吐出油路132cは、ライン圧油路141に接続されている。
ここで、本実施例1にあっては、第1オイルポンプ131の吐出油路131bと第2オイルポンプ132の吸込油路132aとを連通させるバイパス油路137が設けられている。また、このバイパス油路137には、その流路の開閉を行う切換え弁138が設けられている。
本実施例1の切換え弁138は、前述した電子制御装置80により開閉動作制御が為されるものとして例示し、この電子制御装置80によって、急変速時等の多量のオイルをライン圧供給先91が必要としている場合に閉状態に制御され、それ以外は開状態に制御される。
以下に、本実施例1の油圧制御装置10Aの動作説明を行う。
ここでは、ポンプ装置13の切換え弁138が開弁されており、第1オイルポンプ131の吐出油路131bと第2オイルポンプ132の吸込油路132aがバイパス油路137で連通しているものとする。
かかる状態で駆動源20の駆動力が第1及び第2のオイルポンプ131,132に伝達されると、これら第1及び第2のオイルポンプ131,132が駆動する。
これにより、第1オイルポンプ131は、ストレーナ134を介してオイルパン135からオイルを吸い込み、吐出流量Q1のオイルを吐出油路131bに吐出する。
ここで、その吐出油路131bと第2オイルポンプ132の吸込油路132aとはバイパス油路137で連通しているので、その吸込油路132aの油圧の方が油路132bの油圧よりも高くなり逆止弁136が閉弁状態となる。これが為、第2オイルポンプ132は、第1オイルポンプ131の吐出油路131bからバイパス油路137を介して流量Q2のオイルを吸い込んで吐出油路132cに吐出する。
即ち、切換え弁138が開弁されている状態においては、第1オイルポンプ131からは吐出流量「Q1−Q2」のオイルが油路144に供給され、第2オイルポンプ132からは吐出流量Q2のオイルがライン圧油路141に供給される。このライン圧油路141に供給された第2オイルポンプ132からの吐出流量Q2のオイルは、常時ライン圧供給先91に供給されている。
このように、第2オイルポンプ132の吸込油路132aには油圧の高い第1オイルポンプ131の吐出油の油圧が掛かっているので、オイルパン135から直接オイルを吸い込む場合と比して、第2オイルポンプ132は効率良くオイルを吸い込むことが可能となり、ポンプ駆動損失の低減を図ることができる。
また、ライン圧供給先91には相対的に容量の小さい第2オイルポンプ132から常時オイルが供給されるので、従来と比してポンプ駆動損失を低減することができる。
ここで、ライン圧油路141における油量Q2がライン圧供給先91での必要油量に対して不足している場合は、このライン圧油路141の油圧(ライン圧)が所定圧よりも低くなっている。これが為、プライマリレギュレータバルブ11においては、フィードバックポート115の油圧に対応した押圧力が信号圧ポート116の油圧に対応した押圧力及び弾性部材118の付勢力の合力よりも小さくなっており、スプール117が図2の紙面上方に動作した状態となる。
そして、かかるスプール117の位置により、第1入力ポート111と第1ドレーンポート113との間の開度が第2ランド部117bによって狭められると共に、第2入力ポート112と第2ドレーンポート114との間の開度が第3ランド部117cによって狭められる。
これにより、油路144の油圧が上昇し、弁体164が動作して第1逆止弁16が開弁するので、その油路144における油量「Q1−Q2」のオイルがライン圧油路141に供給される。これが為、ライン圧油路141における油量が増加して、ライン圧供給先91に油量Q1のオイルが供給される。
このように、第2オイルポンプ132の吐出流量Q2のみでライン圧供給先91の必要油量を満たせない場合としては、第2オイルポンプ132の回転数が所定回転数以下である場合や、ベルト式無段変速機70が中間変速モードにある場合等が挙げられる。中間変速とは、後述する緩変速時よりも変速速度が速く、後述する急変速時程は変速速度が速くない場合のことをいう。
ここで、第2オイルポンプ132の吐出流量Q2のみでライン圧供給先91の必要油量を満たせない場合としては、ベルト式無段変速機70が急変速モードにある場合も該当する。このような急変速時には、中間変速時よりも多量のオイルがライン圧供給先91で必要とされるので、上述した油量Q1では不足する。
これが為、電子制御装置80は、急変速モードであると判断すると切換え弁138を制御して閉弁させる。これにより、油路144には第1オイルポンプ131の吐出油路131bから油量Q1のオイルが供給され、ライン圧油路141には第2オイルポンプ132の吐出油路132cから油量Q2のオイルが供給される。ここで、その際の第2オイルポンプ132は、オイルパン135からオイルを吸い込んで吐出する。
かかる急変速時の動作は、基本的に上述した中間変速時の動作と同じである。即ち、ライン圧油路141における油量Q2ではライン圧供給先91での必要油量に対して不足しているので、プライマリレギュレータバルブ11のスプール117は図2の紙面上方に動作する。
これにより油路144の油圧が上昇するので第1逆止弁16が開弁し、その油路144における油量Q1のオイルがライン圧油路141に供給されて、ライン圧供給先91に油量「Q1+Q2」のオイルが供給される。
続いて、このライン圧油路141における油量がライン圧供給先91での必要油量を満足している場合であって、駆動源20の回転数(機関回転数)の上昇等の理由により第1及び第2のオイルポンプ131,132の吐出流量が増加している場合について説明する。
便宜上、かかる場合におけるライン圧供給先91での必要油量を、上述した中間変速モードにあってはQ1,急変速モードにあっては「Q1+Q2」,緩変速モード若しくは低・中速定常走行モード又は高速定常走行モードにあってはQ2とする。また、第1及び第2のオイルポンプ131,132の増加分の油量を夫々α1,α2とする。
尚、これまでが急変速モード下での油圧制御であり、現在又はこれからは他の変速モードや走行状態であることを電子制御装置80が判断したときには、先ず最初に、この電子制御装置80は、切換え弁138を開弁させて、吐出油路131bから油路144に油量「Q1−Q2」のオイルを供給させ、吐出油路132cからライン圧油路141に油量Q2のオイルを供給させる。これにより、上述した中間変速モードの場合と同様に、ライン圧供給先91には油量Q1のオイルが供給される。
ライン圧油路141における油量がライン圧供給先91での必要油量よりも多くなると、そのライン圧油路141の油圧の上昇に伴ってフィードバックポート115の油圧が上昇する。これが為、スプール117が図2の紙面下方に動作した状態となり、第1入力ポート111と第1ドレーンポート113との間の開度が拡げられると共に、第2入力ポート112と第2ドレーンポート114との間の開度が拡げられた状態となる。
これにより、ライン圧油路141のオイルが第1ドレーンポート113を介してセカンダリ圧油路142に供給され、セカンダリ圧供給先92へのオイル供給量が増加し、更に、油路144のオイルが第2ドレーンポート114を介して油路148に供給される。これに伴い油路144の油圧が低下して第1逆止弁16は閉弁状態になるので、この油路144からはライン圧油路141へのオイル供給は行われない。
これが為、そのライン圧油路141からは、油量Q2のオイルがライン圧供給先91に供給され、余剰油量α2のオイルがセカンダリ圧油路142に供給される。また、油路144からは、油量「(Q1+α1)−(Q2+α2)」のオイルが油路148に供給される。
ここで、第1ドレーンポート113からセカンダリ圧油路142に供給される油量α2がセカンダリ圧供給先92での必要油量に対して不足している場合は、このセカンダリ圧油路142の油圧(セカンダリ圧)が所定圧よりも低くなっている。これが為、セカンダリレギュレータバルブ12においては、フィードバックポート125の油圧に対応した押圧力が信号圧ポート126の油圧に対応した押圧力及び弾性部材128の付勢力の合力よりも小さくなっており、スプール127が図2の紙面上方に動作した状態となる。
そして、かかるスプール127の位置により、第1入力ポート121と第1ドレーンポート123との間の開度が第2ランド部127bによって狭められると共に、第2入力ポート122と第2ドレーンポート124との間の開度が第3ランド部127cによって狭められる。
これにより、油路148の油圧が上昇して第2逆止弁17が開弁するので、その油路148における油量「(Q1+α1)−(Q2+α2)」のオイルがセカンダリ圧油路142に供給される。これが為、油量「(Q1+α1)−Q2)」のオイルがセカンダリ圧油路142からセカンダリ圧供給先92に供給される。
即ち、ライン圧油路141における油量がライン圧供給先91での必要油量に対して余剰になっており、且つセカンダリ圧油路142における油量がセカンダリ圧供給先92での必要油量に対して不足している場合は、ライン圧供給先91には必要油量分の油量Q2のオイルが供給され、セカンダリ圧供給先92には油量「(Q1+α1)−Q2)」のオイルが供給される。このような場合としては、ベルト式無段変速機70が緩変速モードにある場合や低・中速定常走行モードにある場合等が挙げられる。
また、第1ドレーンポート113からセカンダリ圧油路142に供給される油量α2がセカンダリ圧供給先92での必要油量を満たしており、第1及び第2のオイルポンプ131,132の吐出流量が更に増加している場合には、セカンダリ圧油路142の油圧の上昇に伴ってフィードバックポート125の油圧が上昇し、セカンダリレギュレータバルブ12のスプール127が図2の紙面下方に動作した状態となる。
これが為、セカンダリレギュレータバルブ12においては、第1入力ポート121と第1ドレーンポート123との間の開度が拡げられると共に、第2入力ポート122と第2ドレーンポート124との間の開度が拡げられた状態となる。
かかる状態においては第2逆止弁17が閉弁状態であるので、セカンダリ圧油路142における余剰分のオイルが第1ドレーンポート123を介して潤滑オイル供給先93に供給され、更に、油路148における油量「(Q1+α1)−(Q2+α2)」のオイルが第2ドレーンポート124を介してドレーン油路150にドレーンされる。
このようなライン圧油路141における油量がライン圧供給先91での必要油量に対して余剰になっており、且つセカンダリ圧油路142における油量もセカンダリ圧供給先92での必要油量に対して余剰になっている場合としては、駆動源20の回転数(機関回転数)が高く、小容量の第2オイルポンプ132の吐出流量「Q2+α2」のみでベルト式無段変速機70が要する全必要流量を充足できる高速定常走行モードにある場合等が挙げられる。
このように小容量の第2オイルポンプ132のみでベルト式無段変速機70が要する全必要流量を充足できる場合、大容量の第1オイルポンプ131からのオイルをドレーンさせるので、この第1オイルポンプ131は無負荷となり有効にポンプ駆動損失を低減することができる。
尚、このような高速定常走行モードにおいてはポンプ装置13の切換え弁138を閉弁してもよい。かかる場合、第1オイルポンプ131から吐出流量「Q1+α1」のオイルが油路144に供給される。その油量「Q1+α1」のオイルは、プライマリレギュレータバルブ11及びセカンダリレギュレータバルブ12を介して吸込油路131aにドレーンされ、小容量の第2オイルポンプ132のみでベルト式無段変速機70が要する全必要流量を充足できるので、同じく有効にポンプ駆動損失を低減することができる。
以上示した如く本実施例1の油圧制御装置10Aは、第2オイルポンプ132の吸込油路132aとオイルパン135側の油路132bとの間に当該オイルパン135への逆流を防止する逆止弁136を設け、更に、ライン圧供給先91で多量のオイルを要しない急変速時において、第1オイルポンプ131の吐出油路131bと第2オイルポンプ132の吸込油路132aとをバイパスさせている。これが為、第2オイルポンプ132は、第1オイルポンプ131における高圧の吐出油を効率良く吸い込むことができるので、ポンプ装置13におけるポンプ駆動損失の低減が可能となる。
また、本実施例1の油圧制御装置10Aにおいては、相対的に容量の小さい第2オイルポンプ132からライン圧供給先91に常時オイルを供給し、相対的に容量の大きい第1オイルポンプ131の吐出油については、ライン圧供給先91やセカンダリ圧供給先92におけるオイルの不足、充足状態に応じて、ドレーン又はライン圧供給先91若しくはセカンダリ圧供給先92への供給を選択し得る構成となっている。これが為、駆動トルクの大きい第1オイルポンプ131の仕事量を最小限に抑えることができるので、これによってもポンプ駆動損失の低減が可能となる。
このように、本実施例1の油圧制御装置10Aは、第2オイルポンプ132が第1オイルポンプ131の吐出油を利用する等してポンプ駆動損失の低減を図ることができるので、第1及び第2のオイルポンプ131,132を効率的に使用することが可能になる。
ここで、本実施例1の油圧制御装置10Aは、多量のオイルを要する急変速時にバイパス油路137を閉弁させる構成を採っているので、第1及び第2のオイルポンプ131,132の夫々の吐出油をライン圧供給先91に供給することができる。これが為、上記第1及び第2のオイルポンプ131,132の効率化の弊害として懸念される急変速時のオイル不足という弊害の抑制が可能になる。
次に、本発明に係る油圧制御装置の実施例2を図1及び図3に基づいて説明する。本実施例2にあっても、その油圧制御装置を図1に示す車輌Veの変速機の油圧制御に適用した場合について例示する。
図3の符号10Bは、本実施例2の油圧制御装置を示す。この油圧制御装置10Bは、前述した実施例1の油圧制御装置10Aと比して以下の構成が異なる。尚、以下においては、実施例1の油圧制御装置10Aと同一の構成については同じ符号を付し、その説明を省略する。
先ず、本実施例2の油圧制御装置10Bにおいては、プライマリレギュレータバルブ11の第2ドレーンポート114がセカンダリ圧油路142に接続され、更に、第2逆止弁17が設けられていない点が異なる。また、本実施例2のセカンダリレギュレータバルブ12Bには、実施例1の第2入力ポート122が形成されておらず、第1入力ポート121と第2ドレーンポート124との間の開度が第3ランド部127cにより制御される構成となっている点が異なる。
かかる構成からなる本実施例2の油圧制御装置10Bの動作説明を行う。
ここでも、切換え弁138が開弁状態のポンプ装置13は、第1オイルポンプ131からは吐出流量「Q1−Q2」のオイルを油路144に供給し、第2オイルポンプ132からは吐出流量Q2のオイルをライン圧油路141に供給しており、このライン圧油路141に供給された第2オイルポンプ132からの吐出流量Q2のオイルが常時ライン圧供給先91に供給されている。
先ず、ライン圧油路141における油量Q2がライン圧供給先91での必要油量に対して不足している場合、本実施例2の油圧制御装置10Bは、前述した実施例1の場合と同様の動作を行う。
即ち、かかる場合であって、第2オイルポンプ132の回転数が所定回転数以下である場合や、ベルト式無段変速機70が中間変速モードにある場合等においては、ライン圧供給先91に油量Q1のオイルが供給され、セカンダリ圧供給先92へのオイルの供給は行われない。また、かかる場合であって、ベルト式無段変速機70が急変速モードにある場合においては、ライン圧供給先91に油量「Q1+Q2」のオイルが供給され、セカンダリ圧供給先92へのオイルの供給は行われない。
続いて、ライン圧油路141における油量がライン圧供給先91での必要油量を満足している場合であって、駆動源20の回転数(機関回転数)の上昇等の理由により第1及び第2のオイルポンプ131,132の吐出流量が増加している場合について説明する。
本実施例2にあっても、便宜上、かかる場合におけるライン圧供給先91での必要油量を、上述した中間変速モードにあってはQ1,急変速モードにあっては「Q1+Q2」,緩変速モード又は低・中速定常走行モード若しくは高速定常走行モードにあってはQ2とする。また、第1及び第2のオイルポンプ131,132の増加分の油量を夫々α1,α2とする。
尚、急変速モードから他の変速モードや走行状態へと切り替わる場合、本実施例2の油圧制御装置10Bは、前述した実施例1の場合と同様に電子制御装置80により切換え弁138が開弁させられ、ライン圧供給先91に油量Q1のオイルを供給する。
ライン圧油路141における油量がライン圧供給先91での必要油量よりも多くなると、実施例1の場合と同様に、スプール117が図2の紙面下方に動作した状態となり、第1逆止弁16が閉弁状態になる。
これにより、本実施例2にあっては、ライン圧油路141からは余剰油量α2のオイルがセカンダリ圧油路142に供給され、油路144からは油量「(Q1+α1)−(Q2+α2)」のオイルがセカンダリ圧油路142に供給される。即ち、セカンダリ圧油路142には油量「(Q1+α1)−Q2」のオイルが供給されている。
ここで、そのセカンダリ圧油路142における油量「(Q1+α1)−Q2」がセカンダリ圧供給先92での必要油量に対して不足している場合は、このセカンダリ圧油路142の油圧(セカンダリ圧)が所定圧よりも低くなっている。これが為、セカンダリレギュレータバルブ12Bにおいては、実施例1と同様にしてスプール127が図2の紙面上方に動作した状態となる。
かかる状態においては、第1入力ポート121と第1ドレーンポート123との間の開度が第2ランド部127bによって狭められると共に、第2入力ポート122と第2ドレーンポート124との間の開度が第3ランド部127cによって狭められる。
これが為、ライン圧油路141における油量がライン圧供給先91での必要油量に対して余剰になっており、且つセカンダリ圧油路142における油量がセカンダリ圧供給先92での必要油量に対して不足している緩変速モードや低・中速定常走行モードの場合には、ライン圧供給先91に油量Q2のオイルが供給され、セカンダリ圧供給先92に油量「(Q1+α1)−Q2」のオイルと第1及び第2のオイルポンプ131,132における更なる増加分のオイルが供給される。
また、セカンダリ圧油路142における油量「(Q1+α1)−Q2」がセカンダリ圧供給先92での必要油量を満たしており、第1及び第2のオイルポンプ131,132の吐出流量が更に増加している場合、本実施例2の油圧制御装置10Bにおいては、実施例1の場合と同様に、セカンダリレギュレータバルブ12Bのスプール127が図2の紙面下方に動作した状態となる。かかる状態においては、第1入力ポート121と第1ドレーンポート123及び第2ドレーンポート124との間の開度が拡げられる。
これが為、ライン圧油路141における油量がライン圧供給先91での必要油量に対して余剰になっており、且つセカンダリ圧油路142における油量もセカンダリ圧供給先92での必要油量に対して余剰になっている高速定常走行モードの場合には、セカンダリ圧油路142における余剰分のオイルは、第1ドレーンポート123を介して潤滑オイル供給先93に供給されると共に、第2ドレーンポート124を介してドレーン油路150にドレーンされる。ここで、ライン圧供給先91には油量Q2のオイルが供給されている。
尚、本実施例2の高速定常走行モードにおいてもポンプ装置13の切換え弁138を閉弁してもよい。
以上示した如く本実施例2の油圧制御装置10Bにあっても、前述した実施例1の油圧制御装置10Aと同様に、ポンプ駆動損失の低減を図ることができる。