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JP4285126B2 - 熱延鋼板の製造方法 - Google Patents

熱延鋼板の製造方法 Download PDF

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JP4285126B2 JP2003203576A JP2003203576A JP4285126B2 JP 4285126 B2 JP4285126 B2 JP 4285126B2 JP 2003203576 A JP2003203576 A JP 2003203576A JP 2003203576 A JP2003203576 A JP 2003203576A JP 4285126 B2 JP4285126 B2 JP 4285126B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、複数の圧延スタンドを有する仕上圧延機を用いて、被圧延材を仕上圧延中に変態させて変態点以下の温度で最終仕上圧延を行う熱延鋼板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ケーブル配線用素材等、特に軟質化が要求される鋼板を製造する場合においては、極低炭素鋼や中低炭素鋼を用い、熱間仕上圧延中に被圧延材の温度がAr3点以下となるようにしてオーステナイトからフェライトへ変態(γ→α変態)を完了させるフェライト域圧延(α域圧延)が行われる。
【0003】
熱間仕上圧延工程において、仕上圧延工程中に被圧延材をオーステナイトからフェライトに変態完了(γ→α変態)させるフェライト域圧延方法においては、変態により変形抵抗が大きく変化し、大幅な板厚変動や張力変動が生じやすい。したがって、変態完了位置が被圧延材の長手方向で変化しないように、所定のスタンド間に固定することが好ましい。それを実現するための方法として、仕上圧延機の各スタンドの出側に変態率計を配置して変態率を測定し、測定結果に基づき、変態完了位置が常に所定のスタンド位置になるように、圧延速度およびスタンド内冷却を制御する方法が示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
特許文献1の制御方法としては、スタンド間冷却を弱くして圧延材の温度低下を防止し、それでも制御できない場合は圧延速度制御が行われる。具体的には、これらの制御のためメインコントローラが設けられており、目標とするスタンドで変態が完了していない場合には、メインコントローラから冷却水制御部に制御信号が出力され、冷却水量がコントロールされる。それでも目標のスタンドで変態が完了していない場合には、メインコントローラから圧延速度制御部に制御信号が出力され、圧延速度がコントロールされる。
【0005】
【特許文献1】
特開平9―49017号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来技術には次のような問題がある。
【0007】
従来は圧延スタンド間冷却の冷却水量により被圧延材の変態を完了させるべき圧延スタンド間位置を制御しようとしていたが、冷却水量による制御では特に後段スタンドの高速域で応答性に問題があるなど不安定であり、また、変態率計を用いた複雑な制御が必要であった。
【0008】
また、従来は圧延スタンド間冷却を行っていたため、特に仕上前段スタンドの板厚が厚い領域で被圧延材の表層のみが温度低下し、被圧延材の表層のみ組織が粗大化して、被圧延材の厚さ方向での組織粒の不均一が起こるという問題を生じた。
【0009】
さらに、圧延スタンド間冷却を弱くしたとしても、組織の不均一性は完全には解消されず、また、弱い冷却では温度制御能力が低下してしまう。
【0010】
本発明の目的は、上記のような従来技術の問題点を解決し、被圧延材の表層のみの組織を粗大化させることなく、均一な組織が得られるように安定したフェライト域圧延を行うことのできる熱延鋼板の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するための本発明の特徴は以下の通りである。
【0012】
(1) 複数の圧延スタンドを有する仕上圧延機を用いて被圧延材を仕上圧延中に変態させて変態点以下の温度で最終仕上圧延を行う熱延鋼板の製造方法において、仕上圧延機入側で被圧延材を加熱した後、仕上圧延機において圧延スタンド間冷却を行うことなく仕上圧延するとともに、前記仕上圧延機入側での被圧延材の加熱では、被圧延材の変態を完了させるべき圧延スタンド間位置に応じて、被圧延材の加熱温度を制御することを特徴とする熱延鋼板の製造方法。
(2)複数の圧延スタンドを有する仕上圧延機を用いて被圧延材を仕上圧延中に変態させて変態点以下の温度で最終仕上圧延を行う熱延鋼板の製造方法において、予め変態を完了させたい圧延スタンド間位置を決めておき、仕上圧延機において圧延スタンド間冷却を行うことなく仕上圧延するとともに、前記仕上圧延機入側での被圧延材の加熱では、加熱装置出側から仕上圧延機入側までの被圧延材の温度降下量および仕上圧延機入側から前記の変態を完了させたい圧延スタンド間位置までの間を放冷とした場合の温度降下量を予測し、前記の変態を完了させたい圧延スタンド間位置でAr 変態点温度となるように、被圧延材の加熱温度を制御することを特徴とする熱延鋼板の製造方法。
【0013】
) 仕上圧延機入側では、被圧延材全幅を加熱する誘導加熱装置により被圧延材を加熱することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の熱延鋼板の製造方法。
【0014】
)仕上圧延機入側では、被圧延材全幅を加熱する誘導加熱装置と被圧延材エッジ部を加熱するエッジヒーターとにより被圧延材を加熱することを特徴とする(1)又は(2)に記載の熱延鋼板の製造方法。
【0015】
なお、(1)の「変態点以下の温度で最終仕上圧延を行う」とは、被圧延材温度が変態点以下の温度となった状態で、仕上圧延機の最終圧延スタンドにおける圧延を行うことを意味している。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の熱延鋼板の製造方法の実施に供する熱間圧延設備の一実施形態を示す側面図である。
【0017】
本熱間圧延設備は、スラブから粗バー1を製造する粗圧延機2と、粗圧延機下流に設置された粗バー1のエッジ部を加熱するエッジヒーター3と、エッジヒーター3の後段に設置された粗バー1の全幅を加熱する誘導加熱装置4と、エッジヒーター3および誘導加熱装置4の入側および出側に設置した粗バー1の表面温度を測定する温度計6および7と、誘導加熱装置4の下流に設置され7圧延スタンドからなり粗バー1から熱延鋼板を製造する仕上圧延機5と、仕上圧延機5の出側に設置された熱延鋼板の表面温度を測定する温度計8とを備えている。また、仕上圧延機5の入側には高圧水デスケーラー9が設置されている。
【0018】
以下、上記熱間圧延設備を用いた本発明法の一実施形態を説明する。
【0019】
本発明では、仕上圧延機において被圧延材の圧延スタンド間冷却を行うことなく仕上圧延するとともに、仕上圧延機入側での被圧延材の加熱では、被圧延材の板厚および板幅方向の全ての部位の変態を完了させるべき圧延スタンド間位置に応じて、被圧延材の加熱温度を制御する。
【0020】
つまり、仕上圧延機内の各圧延スタンド間に通常は設置されている圧延スタンド間冷却手段による被圧延材への冷却水噴射を行わず、仕上圧延中は放冷する。被圧延材の圧延スタンド間冷却を行わないのは、圧延スタンド間冷却により被圧延材の表層温度が低下して被圧延材の表層のみの組織が粗大化して組織が不均一となるのを防ぎ、また、被圧延材の温度の制御を容易にして、被圧延材の相変態する位置を所定の圧延スタンド間に設定し易くするためである。
【0021】
鋼板表面に付着したスケールを取るために仕上圧延機5の入側に設置された高圧水デスケーラー9は作動させる。これにより、粗バーの表面温度が降下するが、通常仕上圧延機5の第2圧延スタンドと第3圧延スタンドの間または第3圧延スタンドと第4圧延スタンドの間で復熱が完了するので、被圧延材の板厚および板幅方向の全ての部位の変態を完了する所定の圧延スタンド間は、これ以降の後段圧延スタンド間に設定される。すなわち、7圧延スタンドからなる本実施形態の仕上圧延機においては、上記変態を完了する所定の圧延スタンド間は、第4圧延スタンドと第5圧延スタンドの間または第5圧延スタンドと第6圧延スタンドの間または第6圧延スタンドと第7圧延スタンドの間のいずれかになる。
【0022】
図2は、熱延ライン各位置における被圧延材の板厚中央の温度変化の一例を示すグラフであり、実線が本発明例、点線が従来例である。従来は、本発明よりも高めの仕上入側温度から、圧延スタンド間冷却手段により被圧延材を冷却し、変態が完了するスタンド間位置を調整していた。これに対し、本発明では、仕上圧延では圧延スタンド間冷却を行わずに放冷するだけであるため、変態が完了するスタンド間位置の調整は、仕上圧延前に粗バーを適切な温度まで加熱する加熱量の調整により行う。
【0023】
ここで、被圧延材の温度を仕上圧延機入側で制御するには、粗バーの全幅を加熱する誘導加熱装置により加熱するのが好ましい。また、被圧延材の幅方向温度分布を均一とするには、被圧延材の全幅を加熱する誘導加熱装置および被圧延材のエッジ部を加熱するエッジヒーターにより加熱するのがさらに好ましい。なお、誘導加熱装置が粗バーの幅方向に温度制御可能なタイプのものであるならば、エッジヒーターは必ずしも必要ではない。
【0024】
本実施形態では、まず、変態を完了させたい圧延スタンド間位置を決め、誘導加熱装置出側から仕上圧延機入側までの被圧延材の温度降下量(δT1)および仕上圧延機入側から前記の変態完了位置までの間を放冷とした場合の温度降下量(δT2)を予測し、前記変態完了位置でAr3変態点温度となるように、誘導加熱装置による粗バー加熱後の目標温度を決定する。
【0025】
一方、エッジヒーターおよび誘導加熱装置による粗バーの加熱は、仕上圧延機入側の温度を調整するために行うものであるから、これらの加熱装置の入側での粗バー温度は前記粗バー加熱後目標温度以下である必要がある。すなわち、加熱温度δT(℃)は正としなければならない。したがって、粗圧延機出側温度のバラツキが±TH(℃)であるとすると、加熱温度δTは、δT≧THとなるように決定される。そして、加熱温度δTの加熱後に先に求めた粗バー加熱後の目標温度となるように、粗バー加熱前の目標温度を決定する。さらには、加熱炉抽出から粗バー加熱位置までの温度降下量(δT3)を予測し、粗バー加熱前の温度が前記加熱前目標温度となるように、加熱炉抽出温度を決定する。なお、THは通常約15℃程度である。
【0026】
そして、実際に圧延を行う際には、温度計6によりエッジヒーターおよび誘導加熱装置入側の粗バーの温度分布を測定し、予め定めた粗バー加熱前の目標温度との差を考慮して、エッジヒーターおよび誘導加熱装置により粗バーを加熱後の目標温度まで加熱する。その際、スキッドマークによる温度分布を除去するように加熱を行うことが好ましい。そして、温度計7により、エッジヒーターおよび誘導加熱装置にて加熱後の粗バーの温度分布を測定して加熱状態を確認し、圧延スタンド間冷却を行うことなく仕上圧延した後、温度計8により熱延鋼板の仕上温度を確認する。これら温度計7および温度計8による温度測定結果は、エッジヒーターおよび誘導加熱装置による加熱量へフィードバックさせてもよい。
【0027】
なお、上記において、温度計6による粗バー加熱前の温度測定結果が粗バー加熱後の目標温度よりも高くなった場合には、粗バー温度が加熱後目標温度以下となるまで、粗バーをその位置で放冷すればよい。
【0028】
以上のような温度制御を行うことにより、変態が所定の圧延スタンドとその次の圧延スタンドの間に限定されて完了するので、各圧延スタンドにおける圧延はγ域またはα域のいずれか一方で行われることになり、板厚および板幅の変動が防止できる。
【0029】
【実施例】
図1に示す本発明の熱延鋼板の製造方法の実施に供する熱間圧延設備を用い、フェライト域圧延(α域圧延)を実施して、厚さ2mm、幅1050mmの熱延鋼板を製造した。材料には、Ar3変態点が875℃である極低炭素鋼を用いた。
【0030】
本発明例では、図2の実線に示すように、仕上圧延機の第5圧延スタンドと第6圧延スタンドの間でAr3変態点温度となってこの間で被圧延材がオーステナイトからフェライトに変態完了(γ→α変態)するように、粗バーのエッジ部を加熱するエッジヒーターと粗バーの全幅を加熱する誘導加熱装置により粗バーを加熱制御した。
【0031】
図2において、まず、誘導加熱装置出側から仕上圧延機入側までの被圧延材の温度降下量(δT1)および仕上圧延機入側から変態を完了する第5圧延スタンドと第6圧延スタンドの間までの温度降下量(δT2)を予測し、それに基づいて誘導加熱装置による粗バー加熱後の目標温度を1010℃と決定した。そして、エッジヒーターと誘導加熱装置による加熱量δTを40℃とし、さらにスラブの加熱炉出側から加熱装置入側までの温度降下量(δT3)を予測して、加熱炉抽出温度を1150℃と決定した。
【0032】
そして、このようにして決定した図2の実線に示すような温度履歴となるように、エッジヒーターおよび誘導加熱装置による加熱量を調整して、本発明例の熱延鋼板の製造を行った。
【0033】
次に、従来技術による比較例として、被圧延材を仕上圧延機入側で加熱せず、圧延スタンド間冷却を行なうことにより、仕上圧延機の第5圧延スタンドと第6圧延スタンドの間で変態が完了するように温度を制御して、熱延鋼板の製造を行った。この場合の温度履歴の目標を図2に破線で併せて示した。
【0034】
図3(a)および(b)は、仕上圧延機出側に設置した板幅計および板厚計により測定した、本発明法により製造された熱延鋼板の板幅および板厚の出力結果を示しているが、板幅、板厚とも変動の少ない寸法精度のよい熱延鋼板を得ることができた。
【0035】
一方、比較例として被圧延材を仕上圧延機入側で加熱をせずに圧延スタンド間冷却を行なった場合には、図4(a)および(b)に示したように、図3に示した熱延鋼板の板幅および板厚の出力結果に比較して、板幅、板厚とも変動が大きいものとなった。すなわち、比較例では、仕上圧延機の第5圧延スタンドと第6圧延スタンドの間で変態が完了することを目標として温度制御を行ったが、圧延スタンド間冷却による温度制御が不安定なために、実際には変態完了させる圧延スタンドを固定することができず、変形抵抗が大きく変化して板幅、板厚変動が生じたものと考えられる。
【0036】
【発明の効果】
本発明により、仕上圧延機入側で被圧延材を加熱して所定の圧延スタンド間における被圧延材の温度を制御して、材料が相変態する位置を所定の圧延スタンド間に限定することができる。これにより、各圧延スタンドにおける圧延はγ域またはα域のいずれか一方で行われることになり板厚、板幅変動が防止できて寸法精度のよい熱延鋼板が得られるとともに、被圧延材の圧延スタンド間冷却を行わないことにより組織の均質化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱延鋼板の製造方法の実施に供する熱間圧延設備の一実施形態を示す側面図
【図2】本発明と比較例の熱延ライン各位置における被圧延材の板厚中央の温度変化を示すグラフ
【図3】本発明例の製造された熱延鋼板の板幅および板厚の出力結果を示すグラフ
【図4】比較例の製造された熱延鋼板の板幅および板厚の出力結果を示すグラフ
【符号の説明】
1 粗バー
2 粗圧延機
3 エッジヒーター
4 誘導加熱装置
5 仕上圧延機
6 温度計
7 温度計
8 温度計
9 高圧水デスケーラー

Claims (4)

  1. 複数の圧延スタンドを有する仕上圧延機を用いて被圧延材を仕上圧延中に変態させて変態点以下の温度で最終仕上圧延を行う熱延鋼板の製造方法において、仕上圧延機入側で被圧延材を加熱した後、仕上圧延機において圧延スタンド間冷却を行うことなく仕上圧延するとともに、前記仕上圧延機入側での被圧延材の加熱では、被圧延材の変態を完了させるべき圧延スタンド間位置に応じて、被圧延材の加熱温度を制御することを特徴とする熱延鋼板の製造方法。
  2. 複数の圧延スタンドを有する仕上圧延機を用いて被圧延材を仕上圧延中に変態させて変態点以下の温度で最終仕上圧延を行う熱延鋼板の製造方法において、予め変態を完了させたい圧延スタンド間位置を決めておき、仕上圧延機において圧延スタンド間冷却を行うことなく仕上圧延するとともに、前記仕上圧延機入側での被圧延材の加熱では、加熱装置出側から仕上圧延機入側までの被圧延材の温度降下量および仕上圧延機入側から前記の変態を完了させたい圧延スタンド間位置までの間を放冷とした場合の温度降下量を予測し、前記の変態を完了させたい圧延スタンド間位置でAr 変態点温度となるように、被圧延材の加熱温度を制御することを特徴とする熱延鋼板の製造方法。
  3. 仕上圧延機入側では、被圧延材全幅を加熱する誘導加熱装置により被圧延材を加熱することを特徴とする請求項1又は2に記載の熱延鋼板の製造方法。
  4. 仕上圧延機入側では、被圧延材全幅を加熱する誘導加熱装置と被圧延材エッジ部を加熱するエッジヒーターとにより被圧延材を加熱することを特徴とする請求項1又は2に記載の熱延鋼板の製造方法。
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