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JP4268039B2 - 緩衝相間移動触媒法を用いるイオウ含有有機ケイ素化合物の製造方法 - Google Patents

緩衝相間移動触媒法を用いるイオウ含有有機ケイ素化合物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、相間移動触媒法によるイオウ含有有機ケイ素化合物の製造方法に関する。本方法は、緩衝剤を含有する水相および相間移動触媒の存在下で、スルフィドおよびイオウをシラン化合物と反応させることを含む。
イオウ含有有機ケイ素化合物は、種々の商業的用途において反応性カップリング剤として有用である。特に、イオウ含有有機ケイ素化合物は、シリカを含有するゴム加硫物をベースとするタイヤの製造における不可欠な成分になっている。イオウ含有有機ケイ素化合物は、シリカを含有するゴム加硫物の物理的特性を改良して、改良された耐摩擦性、転がり抵抗および湿潤滑り性能を有する自動車用タイヤをもたらす。イオウ含有有機ケイ素化合物は、シリカを含有するゴム加硫物に直接添加され得るし、あるいはゴム加硫物組成物へ添加する前にシリカを前処理するために用いられ得る。
イオウ含有有機ケイ素化合物の調製に関して、当該技術分野では多数の方法が記載されている。例えば、Frenchらによる米国特許第5,399,739号には、アルカリ金属アルコラートを硫化水素と反応させてアルカリ金属ヒドロスルフィドを生成し、続いてこれをアルカリ金属と反応させてアルカリ金属硫化物を提供することによるイオウ含有有機シランの製造方法が記載されている。次いで、得られたアルカリ金属硫化物をイオウと反応させてアルカリ金属ポリスルフィドを提供し、次いでこれを式X−R−Si(R(式中、Xは塩素または臭素である)のシラン化合物と最終的に反応させて、イオウ含有有機シランを生成する。
米国特許第5,466,848号、第5,596,116号および第5,489,701号には、シランポリスルフィドの調製方法が記載されている。この特許第’848号の方法は、硫化水素とナトリウムエトキシラートとの反応により硫化ナトリウムを先ず生成させることを基礎にする。次に、硫化ナトリウムをイオウと反応させて四硫化物を生成し、続いてこれをクロロプロピルトリエトキシシランと反応させて3,3’−ビス(トリエトキシシリルプロピル)四硫化物を生成する。特許第’116号は、硫化水素を使用せずに、アルコール中の金属アルコキシドを元素状態で存在するイオウと反応させるか、又は金属ナトリウムを元素状態で存在するイオウおよびアルコールと、クロロプロピルトリエトキシシランのようなハロヒドロカルビルアルコキシシランと反応させることによるポリスルフィドの調製方法を教示する。特許第’701号は、硫化水素ガスを活性金属アルコキシド溶液と接触させ、続いて反応生成物をクロロプロピルトリエトキシシランのようなハロヒドロカルビルアルコキシシランと反応させることによるシランポリスルフィドの調製方法を特許請求する。
米国特許第5,892,085号には、高純度有機ケイ素ジスルファンの調製方法が記載されている。米国特許第5,859,275号には、ビス(シリルオルガニル)ポリスルファンの製造方法が記載されている。特許第’085号および第’275号にはともに、ハロアルコキシシランをポリスルフィドと直接反応させることを含む無水法が記載されている。
米国特許第6,066,752号は、溶媒の非存在下又は中性溶媒の存在下で、イオウ、アルカリ金属およびハロゲンアルコキシシランを反応させることによるイオウ含有有機ケイ素化合物の製造方法を教示する。
最近、米国特許第6,140,524号には、分布を有する式(RO)SiCSi(RO)(式中、nは2.2≦n≦2.8の範囲である)の短鎖ポリスルフィドシラン混合物の調製方法が記載されている。この特許第’524号の方法は、アルコール溶媒中で、金属ポリスルフィド、典型的にはNaを、式(RO)SiCX(式中、Xはハロゲンである)を有するハロゲノプロピルトリアルコキシシランと反応させる。
イオウ含有有機シランの他の調製方法は、相間移動触媒法の使用に基づいて当該技術分野で教示されてきた。相間移動触媒法は、イオウ含有有機ケイ素化合物を製造する上記従来技術の方法に関連する多数の実際的な問題を克服する。これらの問題の多くは、溶媒の使用に関連する。特に、エチルアルコールの使用は、その低い引火点のために問題がある。さらに、工業的規模における上記従来技術の方法の多くに必要とされる無水条件を達成および保持することは困難である。
イオウ含有有機ケイ素化合物を製造するための相間移動触媒法は、例えば、米国特許第5,405,985号、第5,663,396号、第5,468,893号および第5,583,245号に教示されている。これらの特許は、相間移動触媒を用いるイオウ含有有機ケイ素化合物の新規調製方法を教示するが、工業規模での相間移動法の使用に伴う多数の実際的な問題が依然として存在する。例えば工業的規模で実施され得る効率的で且つ安全な反応を提供するために、イオウ含有有機シランの調製において相間移動触媒の反応性を制御する必要がある。さらに、最終生成物の安定性、外観および純度を改良する必要がある。特に従来技術の相間移動触媒法は、多量の未反応イオウ種を含有する最終生成物組成物をもたらす。これらの未反応イオウ種は、時間の経過とともに貯蔵生成物中で沈殿して、生成物スルフィド分布の変化を引き起こし得る。
生成物の品質を改良する必要性は、アルカリ金属またはアンモニウム硫化水素が相間移動触媒法における出発物質として用いられる場合、特に重要である。これらの反応において、危険で且つ臭いを生じる硫化水素は、副反応で生成される。硫化水素を少量でも含有する生成物組成物は、大規模工業的方法におけるそれらの使用を妨げる。
イオウ含有有機ケイ素化合物を製造するための相間移動触媒法の使用に関連する更なる他の問題は、有機ケイ素化合物または出発シラン反応物上のアルコキシ基と、水相反応物との加水分解により引き起こされるゲル化である。
したがって、本発明の目的は、相間移動触媒法に基づくイオウ含有有機ケイ素化合物の改良された製造方法を提供することである。
本発明の更なる目的は、より大きな安定性、純度および外観を有する最終生成物組成物をもたらす相間移動触媒法に基づくイオウ含有有機ケイ素化合物の製造方法を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、副生成物としての硫化水素を最小限にするか、又は除去するヒドロスルフィド化合物を使用する相間移動法に基づくイオウ含有有機ケイ素化合物の製造方法を提供することである。
本発明のさらなる別の目的は、相間移動法に基づくイオウ含有有機ケイ素化合物の製造方法において、出発物質または得られる生成物のゲル化を最小限にするか、又は無くすイオウ含有有機ケイ素化合物の製造方法を提供することである。
本発明は、緩衝相間移動触媒法によるイオウ含有有機ケイ素化合物の製造方法を提供する。イオウ含有有機ケイ素化合物は、リン酸アルカリ金属塩、リン酸水素アルカリ金属塩、リン酸二水素アルカリ金属塩、炭酸アルカリ金属塩、炭酸水素アルカリ金属塩またはそれらの組合せである緩衝剤を含有する水相と、臭化テトラブチルアンモニウムまたは塩化テトラブチルアンモニウムである相間移動触媒の存在下で、硫化水素ナトリウムを含むスルフィド化合物、およびイオウを、式:(RO)3−mSi−Alk−X(式中、XはCl、BrまたはIである)を有するシラン化合物と反応させる本発明の方法により調製される。
本発明の改良は、水相に緩衝剤を添加することを特徴とする。本発明は、水相のpHを制御することにより、イオウ含有有機ケイ素化合物の改良された製造方法も提供する。
本発明は、改良型方法により製造される有機ケイ素化合物も包含する。
本発明は、式:(RO)3−mSi−Alk−S−Alk−SiR(OR)3−m
(式中、Rは独立して炭素原子1〜12個の一価炭化水素であり、Alkは炭素原子1〜18個の二価炭化水素であり、mは0〜2の整数であり、nは1〜8の数である)を有する有機ケイ素化合物の製造方法において、
リン酸アルカリ金属塩、リン酸水素アルカリ金属塩、リン酸二水素アルカリ金属塩、炭酸アルカリ金属塩、炭酸水素アルカリ金属塩またはそれらの組合せである緩衝剤を含有する水相と、臭化テトラブチルアンモニウムまたは塩化テトラブチルアンモニウムである相間移動触媒の存在下で、
(A)硫化水素ナトリウムを含むスルフィド化合物を
(B)式:(RO)3−mSi−Alk−X
(式中、XはCl、BrまたはIであり、mは上記と同様である)を有するシラン化合物、およ
(C)イオウ
と反応させることを含む有機ケイ素化合物の製造方法である。
本発明に従って調製され得るイオウ含有有機ケイ素化合物の例は、米国特許第5,405,985号、第5,663,396号、第5,468,893号および第5,583,245号(これらを援用して本明細書の一部とする)に記載されている。本発明に従って調製される好ましいイオウ含有有機ケイ素化合物は、3,3’−ビス(トリアルコキシシリルプロピル)ポリスルフィドである。最も好ましい化合物は、3,3’−ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドおよび3,3’−ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドである。
発明の方法の反応工程における成分(A)として用いられるスルフィド化合物は、硫化水素ナトリウム(NaHS)を含む。NaHS化合物の具体例としては、ペンシルバニア州ピッツバーグのPPG社のNaHSフレーク(71.5〜74.5%NaHSを含有)およびNaHSリカー(45〜60%NaHSを含有)が挙げられる
本発明の方法の反応工程における成分(B)は、次式:
(RO)3−mSi−Alk−X
(Rは独立して炭素原子1〜12個の全ての炭化水素基であり得る)のシラン化合物である。したがって、Rの例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、シクロヘキシルまたはフェニルが挙げられる。好ましくは、Rはメチル基又はエチル基である。式(RO)3−mSi−Alk−Xにおいて、mは整数であり、0〜2の値を有し得る。mは好ましくは0である。Alkは、炭素1〜18個を含有する二価炭化水素基である。Alkは、例えばエチレン、プロピレン、ブチレンまたはイソブチレンであり得る。Alkは好ましくは2〜4個の炭素を含有し、最も好ましくはAlkはプロピレン基である。Xは、塩素、臭素またはヨウ素から選択されるハロゲン原子である。好ましくはXは塩素である。本発明に用いられ得るシラン化合物の例としては、クロロプロピルトリエトキシシラン、クロロプロピルトリメトキシシラン、クロロエチルトリエトキシシラン、クロロブチルトリエトキシシラン、クロロイソブチルメチルジエトキシシラン、クロロイソブチルメチルジメトキシシラン、クロロプロピルジメチルエトキシシランが挙げられる。好ましくは本発明のシラン化合物はクロロプロピルトリエトキシシラン(CPTES)である。
イオウを、構成成分(C)として本発明の方法における反応工程に添加する。本発明の反応に用いられるイオウは、元素状態で存在するイオウである。種類および形態は重要ではなく、一般的に用いられるものが含まれ得る。適切なイオウ物質の一例は、ウィスコンシン州ミルウォーキーのAldrich社の100メッシュ精製イオウ粉末である。
本発明の方法に用いられるイオウおよびスルフィド化合物の量は変わり得るが、好ましくはS/MまたはS/MHSのモル比は0.3〜5の範囲である。イオウ/スルフィド化合物のモル比は、最終生成物分布、即ち、式(RO)3−mSi−Alk−S−Alk−SiR(OR)3−mにおけるnの平均値に影響を与えるために用いられ得る。生成物の式(RO)3−mSi−Alk−S−Alk−SiR(OR)3−mにおけるnの平均値が4であることが望ましい場合、イオウ/スルフィド化合物の比の好ましい範囲は2.7〜3.2である。生成物の式(RO)3−mSi−Alk−S−Alk−SiR(OR)3−mにおけるnの平均値が2であることが望ましい場合、イオウ/スルフィド化合物の比の好ましい範囲は0.8〜1.2である。
シラン化合物(RO)3−mSi−Alk−Xは、溶媒の存在下または非存在下で、スルフィド化合物と、あるいは上記のようにスルフィド化合物およびイオウを組合せたものと反応され得る。このシラン化合物を有機溶媒中に分散させて、有機相を生成させることもできる。有機溶媒の代表例としては、トルエン、キシレン、ベンゼン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、クロロベンゼン等が挙げられる。有機溶媒が用いられる場合、好ましい有機溶媒はトルエンである。
本発明の反応を行う際、シラン化合物は好ましくは、上記のようにスルフィド化合物およびイオウを組み合わせたものと直接反応させる。
本発明の方法に用いられるシラン化合物(RO)3−mSi−Alk−Xの量は、変わり得る。適切なモル範囲の例としては、用いられるスルフィド化合物の量を基準として1/10〜10/1が挙げられる。生成物の式(RO)3−mSi−Alk−S−Alk−SiR(OR)3−mにおけるnの平均値が4であることが望ましい場合、シラン化合物(RO)3−mSi−Alk−Xは、2.0〜2.10の範囲のMスルフィド化合物のモル過剰量で用いられ、2.01〜2.06の範囲が最も好ましい。生成物の式(RO)3−mSi−Alk−S−Alk−SiR(OR)3−mにおけるnの平均値が2であることが望ましい場合、シラン化合物(RO)3−mSi−Alk−Xは、1.8〜2.10の範囲のMHSスルフィド化合物のモル過剰量で用いられ、1.9〜2.0の範囲が最も好ましい。
本発明において使用可能な相間移動触媒は臭化テトラブチルアンモニウムまたは塩化テトラブチルアンモニウムである。ましは、臭化テトラブチルアンモニウムである。特に好ましいものは、ウィスコンシン州ミルウォーキーのAldrich社の臭化テトラブチルアンモニウム(99%)である。
本方法で用いられる相間移動触媒の量は変わり得る。好ましくは相間移動触媒の量は、用いられるシラン化合物の量を基準として0.1〜10重量%、最も好ましくは0.5〜2重量%である。
相間移動触媒は、反応にいつ添加してもよい。好ましくは、相間移動触媒は、本発明の方法の反応工程前に水相に添加される。
本発明の反応は、緩衝剤を含有する水相の存在下で行われる。緩衝剤は、リ酸アルカリ金属塩、リン酸水素アルカリ金属塩、リン酸二水素アルカリ金属塩、炭酸アルカリ金属塩、炭酸水素アルカリ金属、又はそれらの組合せである。緩衝剤の例としては、NaPO、NaHPO、NaHPO、NaCO およびNaHCO 挙げられる。好ましくは、緩衝剤は、NaPO、NaCOまたはKCOから選択される。生成物の式(RO)3−mSi−Alk−S−Alk−SiR(OR)3−mにおけるnの平均値が4であることが望ましい場合、好ましい緩衝剤はNaPOである。生成物の式(RO)3−mSi−Alk−S−Alk−SiR(OR)3−mにおけるnの平均値が2であることが望ましい場合、好ましい緩衝剤はNaCOまたはKCOである。
水相に添加される緩衝剤の量は変わり得るが、一般に、MまたはMHSのモル数と等しいか、又はそれより多いモル量で添加される。
本発明の好ましい実施形態では、スルフィド化合物、相間移動触媒、緩衝剤、水および任意にイオウが一緒に混合されて、中間反応生成物を生成する。この反応は種々の温度で行われ得るが、一般的には40〜100℃の範囲で行われ得る。好ましくは、反応は65〜95℃の範囲の温度で行われる。一般に、第一工程は種々の圧力で行われ得るが、好ましくは第一工程の反応は大気圧で行われる。第一工程の反応が起こるのに必要な時間は重要ではないが、一般に5〜30分の範囲である。次いで、中間反応生成物をシラン化合物(RO)3−mSi−Alk−Xと反応させる。中間反応生成物とシラン化合物との反応が起こるのに必要な時間は重要ではないが、一般的には5分〜6時間の範囲である。
水相または中間反応生成物を作製するのに用いられる水の量は変わり得るが、好ましくは本方法に用いられるシラン化合物(III)の量を基準としている。他の出発物質中に少量の水がすでに多少存在するので、水は直接的または間接的に添加され得る。本発明の目的のためには、存在する水の総量を算定する、即ち、直接的または間接的に添加される全ての水を明らかにするのが好ましい。好ましくは、水相または中間反応生成物を作製するために用いられる水の総量は、用いられるシラン化合物の1〜100重量%であり、2.5〜70重量%の範囲がさらに好ましい。最も好ましくは中間反応生成物に関して用いられる水は、用いられるシラン化合物の量を基準として20〜40重量%の範囲である。
如何なる理論にも限定されるべきでないが、本発明者らは、相間移動触媒を用いてイオウ含有有機ケイ素化合物を調製する本方法において、水相に緩衝剤を添加することは、反応媒質のpHを制御することを助け、それにより物質生成に影響を及ぼして、硫化水素の生成または式(RO)3−mSi−Alk−SHを有するメルカプタンシランの生成などの副反応を最小限にすると考える。したがって、本発明の第二の実施形態のように、pHを制御することにより上記反応においてイオウ含有有機ケイ素化合物が生成され得る。本発明の反応に用いられる水相のpHは、上述のように緩衝剤の添加、あるいは7〜14の範囲に反応中のpHを保持するような速度および濃度でのすべての酸性または塩基性化合物の添加により制御され得る。本発明者らは、pHが生成物分布、即ち、生成物の式(RO)3−mSi−Alk−S−Alk−SiR(OR)3−mにおけるnの値に影響し得ることも見出した。生成物の式(RO)3−mSi−Alk−S−Alk−SiR(OR)3−mにおけるnの平均値が2であることが望ましい場合、好ましいpH範囲は8〜10である。生成物の式(RO)3−mSi−Alk−S−Alk−SiR(OR)3−mにおけるnの平均値が4であることが望ましい場合、好ましいpH範囲は11〜14である。
シラン化合物は、発熱反応を制御して40〜110℃の範囲に温度を保持するような速度で、上述のように水相または中間反応生成物に添加される。好ましくは、反応温度は60〜95℃に保持される。反応の進行は、シラン化合物出発物質の消費により監視され得る。触媒の量および反応温度は、完了に要する反応時間に影響を及ぼす。
反応終了時に、有機相と、水相と、恐らく、反応中に生成されるNaCl、NaHPOまたはNaHCOのような塩(または類似のカリウム塩)を含み得る沈殿固体物質とを含有する生成物の混合物が生成される。有機相は、有機シラン化合物を含有する。
本発明は、生成物の混合物からの有機シラン化合物の分離を向上させるための処理工程も含む。この分離は、上記のような成分(A)、(B)および(C)の反応に直接もたらされる有機相と水相との相分離であり得る。あるいは沈殿塩が反応中に生成される場合、塩は、相分離の前に濾過法またはデカント法によって先ず分離され得る。好ましくは水または希酸溶液が、分離前に生成物の混合物に添加される。水または希酸溶液の添加は、ある程度または全ての沈殿塩を溶解することにより、相分離を向上させ得る。この工程中に添加される水または希酸溶液の量は、用いられるシラン化合物の量の重量を基準として、10〜50重量%で変わり得る。好ましくは、添加される水または希酸溶液の量は、用いられるシラン化合物の量を基準として20〜40重量%であり、最も好ましくは25重量%〜35重量%である。希酸溶液が用いられる場合、それは、0.000001〜5、好ましくは0.01〜1の規定(N)濃度を有する一般的酸のいずれか、例えばHCl、HNO、HSO等であり得る。希酸溶液は、水へのクロロシランの添加によっても調製され得る。希酸溶液を作製するために用いられ得るクロロシランの例としては、トリクロロシラン、トリクロロメチルシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン、トリメチルクロロシランが挙げられる。好ましくは、希酸溶液を調製するために0.5〜10重量%のクロロシランが用いられ、1〜5重量%が最も好ましい。希酸溶液を作製するためにクロロシランを用いる場合、クロロシランは好ましくはトリメチルクロロシランである。
生成物の混合物への水または希酸溶液の添加後、有機相および水相を相分離することにより、有機ケイ素化合物が生成物の混合物から単離される。さらに有機ケイ素化合物を含有する有機相は、乾燥工程に供され得る。乾燥工程の一例は、真空下で有機相を処理して、存在する如何なる揮発性有機物質とともに存在し得る如何なる残留水をも除去することであり得る。この乾燥工程は、例えば5〜35mmHg(0.67〜4.65kPa)の減圧下で20〜160℃の温度に有機相を加熱することを含み得る。好ましくは、当該条件は、5〜25mmHg(0.67〜3.33kPa)で90〜120℃である。あるいは有機相の乾燥工程は、有機相中の揮発性有機物質および残留水分を除去するための薄膜ストリッパーの使用を含み得る。有機相の乾燥工程のためのさらに他の方法は、有機ケイ素化合物を含有する有機相を乾燥剤物質と接触させることであり得る。乾燥剤物質は、有機相中の微量の水を除去することが当該技術分野で公知のすべての固体物質であり得る。これらの例としては、公知のイオン性吸湿物質、例えば硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム等、またはケイ酸塩ベースの物質、例えばゼオライト、シリカ、アルミナケイ酸塩等が挙げられる。好ましい乾燥剤物質は、硫酸ナトリウムまたは硫酸マグネシウムであり、硫酸ナトリウムが最も好ましい。
乾燥された有機相は、有機ケイ素化合物の最終純度および外観のさらなる改良をもたらす本発明の追加工程に供され得る。有機ケイ素化合物を含有する有機相は、15℃未満の温度に冷却され得る。この冷却工程は、未反応イオウおよびイオウ化合物の沈殿を生じる。好ましくは有機ケイ素化合物を含有する有機相は、−20℃〜30℃の範囲の温度に、好ましくは−15℃〜15℃の範囲の温度に冷却される。次に、沈殿した未反応イオウおよびイオウ化合物は、例えば濾過によって、有機ケイ素化合物を含有する有機相から分離され得る。未反応イオウおよびイオウ化合物の除去は、イオウおよび未反応イオウ化合物の時間経過に伴うさらなる沈殿を最小限にするか、又は無くすことを本発明者らは見出した。その結果、時間経過に伴って変化しないか又は固体沈殿物を含有する生成物の組成物をもたらさない組成物を製造することにより、有機ケイ素化合物の長期貯蔵安定性が高められる。
以下の実施例は、本発明を説明するために提示される。これらの実施例は、本明細書中の特許請求の範囲を限定することを意図しない。なお、実施例1および2は参考例である。
高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)により、種々のイオウ含有有機ケイ素化合物の分布を分析した。HPLC分析のための典型的な実験条件を以下に示す:8〜9滴の反応試料を8.5gのシクロヘキサンで希釈し、次にこれを0.2μmのPTFE膜(例えば、Whatman(登録商標)のPURADISC(商標)25TF)に通してバイアル中に濾過し、濾液の10μL試料をオートサンプラーによりHPLC装置(例えば、Hewlet-Packard 1050)に注入した。移動相として96%アセトニトリルおよび4%テトラヒドロフラン(vol/vol)の混合物を用いて、Lichrosorp RP18カラム(例えばAlltech Assoc., Inc; 250mm×4.6mm、10μm)上で試料を分画した。適切な励起波長として254nmを用いて、UV吸収検出器により画分を調べた。以下に列挙される特定の経験的に評価された応答因子(RF)で各ピーク面積を割ることにより、全ての単一スルフィド種の異なるUV感度を平均した。この応答因子は、鎖中の全てのイオウ原子および元素状態で存在するイオウについての濃色性を表す。
Figure 0004268039
[比較例]
電磁撹拌棒および内部温度計を備えた100mLフラスコに、6.75gの硫化二ナトリウム(59.75%NaS、0.26%NaHS)および2.08gの元素状態で存在するイオウを76℃で投入した。次に6.25gの水を添加し、全ての固体が溶解されるまで混合物を撹拌した。次に1.00gの25%触媒水溶液(0.75gの水中に0.25gの臭化テトラブチルアンモニウム)を添加した。次に6.03gのクロロプロピルトリエトキシシランを1mLずつ注射器により添加した。20分以内に、反応温度は80℃に上がり、混合物は直ちに固化して、橙褐色ゲルを生じた。クロロプロピルトリエトキシシランをさらに添加すると、ゲルの上部に白色樹脂が生じた。
[実施例1]
電磁撹拌棒、冷却器および内部温度計を備えた100mLフラスコに、4.01gのフレークされた硫化水素ナトリウム(2.08%NaS、71.10%NaHS)、1.66gの元素状態で存在するイオウおよび7.37gの硫酸二ナトリウムを78℃で投入した。12.50gの水を添加し、全ての固体が溶解されるまで混合物を撹拌した。硫化二水素ガスの激しい生成が観察された。1.00gの25%触媒水溶液(0.75gの水中に0.25gの臭化テトラブチルアンモニウム)を添加した。次に23.75gのクロロプロピルトリエトキシシランを2mLずつ40分以内に注射器で添加した。反応温度は79℃に上昇した。発熱が低減した後、混合物を78℃の温度で撹拌し、2.75時間後にクロロプロピルトリエトキシシランが安定なレベルに到達するまで、定量ガスクロマトグラフィー分析により反応の進行を追跡した。反応混合物を室温に冷却し、20.18gの透明でほぼ無色の液体を水相の上部からピペットで採取した。高圧液体クロマトグラフィー分析は、3.11という平均イオウランクを示した。定量ガスクロマトグラフィー分析は、36.45%の未反応クロロプロピルトリエトキシシランを示した。
[実施例2]
電磁撹拌棒、冷却器および内部温度計を備えた100mLフラスコに、4.01gのフレークされた硫化水素ナトリウム(2.08%NaS、71.10%NaHS)、1.66gの元素状態で存在するイオウおよび10.45gの四ホウ酸塩二ナトリウム(Na)を76℃で投入した。12.50gの水を添加し、全ての固体が溶解されるまで混合物を撹拌した。硫化二水素ガスのわずかな生成が観察された。1.00gの25%触媒水溶液(0.75gの水中に0.25gの臭化テトラブチルアンモニウム)を添加した。次に23.75gのクロロプロピルトリエトキシシランを4分毎に2mLずつ44分以内に注射器で添加した。反応温度は78℃に上昇した。発熱が低減した後、混合物を76℃の温度で撹拌し、3時間後にクロロプロピルトリエトキシシランが安定比率レベルに到達するまで、定量ガスクロマトグラフィー分析により反応の進行を追跡した。反応混合物を室温に冷却し、22.88gの透明でほぼ無色の液体を水相の上部からピペットで採取した。高圧液体クロマトグラフィー分析は、2.53という平均イオウランクを示した。定量ガスクロマトグラフィー分析は、21.03%の未反応クロロプロピルトリエトキシシランを示した。
[実施例3]
電磁撹拌棒、冷却器および内部温度計を備えた100mLフラスコに、4.01gのフレークされた硫化水素ナトリウム(2.08%NaS、71.10%NaHS)、1.66gの元素状態で存在するイオウおよび5.51gの炭酸二ナトリウムを78℃で投入した。次に18.75gの水を添加し、全ての固体が溶解されるまで混合物を撹拌した。その後1.00gの25%触媒水溶液(0.75gの水中に0.25gの臭化テトラブチルアンモニウム)を添加した。次に23.75gのクロロプロピルトリエトキシシランを3分毎に2mLずつ33分以内に注射器で添加した。反応温度は80℃に上昇した。発熱が低減した後、混合物を79℃の温度で撹拌し、3.25時間後にクロロプロピルトリエトキシシランが安定比率レベルに到達するまで、定量ガスクロマトグラフィー分析により反応の進行を追跡した。反応混合物を50℃に冷却し、9.73gの水を添加した。形成された全ての塩が溶解されるまで混合物を撹拌した。混合物を30℃に冷却し、22.64gの透明でほぼ無色の液体を水相の上部からピペットで採取した。高圧液体クロマトグラフィー分析は、2.16という平均イオウランクを示した。定量ガスクロマトグラフィー分析は、3.46%の未反応クロロプロピルトリエトキシシランを示した。
[実施例4]
電磁撹拌棒、冷却器および内部温度計を備えた100mLフラスコに、4.01gのフレークされた硫化水素ナトリウム(2.08%NaS、71.10%NaHS)、1.66gの元素状態で存在するイオウおよび8.51gのリン酸三ナトリウムを74℃で投入した。次に12.50gの水を添加し、全ての固体が溶解されるまで混合物を撹拌した。その後1.00gの25%触媒水溶液(0.75gの水中に0.25gの臭化テトラブチルアンモニウム)を添加した。次に24.00gのクロロプロピルトリエトキシシランを3分毎に2mLずつ33分以内に注射器で添加した。反応温度は78℃に上昇した。発熱が低減した後、混合物を76℃の温度で撹拌し、2.75時間後にクロロプロピルトリエトキシシランが安定比率レベルに到達するまで、定量ガスクロマトグラフィー分析により反応の進行を追跡した。反応混合物を室温に冷却し、21.14gの透明でほぼ無色の液体を水相の上部からピペットで採取した。高圧液体クロマトグラフィー分析は、2.12という平均イオウランクを示した。定量ガスクロマトグラフィー分析は、1.66%の未反応クロロプロピルトリエトキシシランを示した。
[実施例5]
機械撹拌機、1枚のバッフル、冷却器、滴下漏斗および内部温度計を備えた1L反応器に、72.18gのフレークされた硫化水素ナトリウム(2.08%NaS、71.10%NaHS)、29.94gの元素状態で存在するイオウおよび153.00gのリン酸三ナトリウムを74℃で投入した。次に225gの水を添加し、全ての固体が溶解されるまで混合物を激しく撹拌した。次に18.00gの25%触媒水溶液(13.50gの水中に4.50gの臭化テトラブチルアンモニウム)を添加した。次に427.50gのクロロプロピルトリエトキシシランを70分以内に添加し、反応温度は82℃に上昇した。発熱が低減した後、混合物を79℃の温度で撹拌し、2.75時間後にクロロプロピルトリエトキシシランが安定比率レベルに到達するまで、ガスクロマトグラフィー分析により反応の進行を追跡した。混合物を50℃に冷却し、150gの水を添加した。混合物をさらに30℃に冷却し、別の25.0gの水を添加した。形成された全ての塩が溶解されるまで混合物を撹拌した。次に、664.65gの透明無色水相を排出した。残りの有機相を排出して、さらなる精製は行わず、419.81gの透明淡黄色液を得た。高圧液体クロマトグラフィー分析は、2.12という平均イオウランクを示した。定量ガスクロマトグラフィー分析は、0.73%の未反応クロロプロピルトリエトキシシランを示した。
[実施例6]
電磁撹拌棒、冷却器および内部温度計を備えた100mLフラスコに、4.01gのフレークされた硫化水素ナトリウム(2.08%NaS、71.10%NaHS)、4.99gの元素状態で存在するイオウおよび8.51gのリン酸三ナトリウムを76℃で投入した。次に12.50gの水を添加し、全ての固体が溶解されるまで混合物を撹拌した。その後1.00gの25%触媒水溶液(0.75gの水中に0.25gの臭化テトラブチルアンモニウム)を添加した。次に24.00gのクロロプロピルトリエトキシシランを3分毎に2mLずつ36分以内に注射器で添加した。反応温度は79℃に上昇した。発熱が低減した後、混合物を78℃の温度で撹拌し、4時間後にクロロプロピルトリエトキシシランが安定比率レベルに到達するまで、定量ガスクロマトグラフィー分析により反応の進行を追跡した。反応混合物を50℃に冷却し、9.72gの水を添加し塩化ナトリウムを溶解した。反応混合物を室温に冷却し、24.38gの橙茶色の液体を水相の上部からピペットで採取した。高圧液体クロマトグラフィー分析は、3.86という平均イオウランクを示した。
[実施例7]
機械撹拌機、1枚のバッフル、冷却器、滴下漏斗および内部温度計を備えた1L反応器に、450.00gの水を76℃で投入した。次に153.13gのリン酸三ナトリウムおよび132.63gのリン酸水素二ナトリウムを一部ずつ添加した。全ての塩が溶解されるまで混合物を激しく撹拌した。次に38.01gの硫化水素ナトリウム水溶液(0.24%NaS、45.77%のNaHS)を添加した。次に9.98gの元素状態で存在するイオウを添加し、透明暗コハク色溶液が生成されるまで、混合物を撹拌した。4.00gの25%触媒水溶液(3.00gの水中に1.00gの臭化テトラブチルアンモニウム)を添加した。次に150.00gのクロロプロピルトリエトキシシランを15分以内に添加すると、反応温度は79.5℃に上昇した。別の2.00gの25%触媒水溶液(3.00gの水中に1.00gの臭化テトラブチルアンモニウム)を添加した。発熱が低減した後、混合物を76℃の温度で撹拌し、2.5時間後にクロロプロピルトリエトキシシランが安定比率レベルに到達するまで、ガスクロマトグラフィー分析により反応の進行を追跡した。次に787.77gの透明無色水相を排出した。残りの有機相を15℃に冷却し、排出(132.01gの原料)して、濾紙(例えばワットマン(Whatman)(登録商標)1)に通してブフナー漏斗中に濾過して、127.18gの透明淡黄色液を得た。高圧液体クロマトグラフィー分析は、2.04という平均イオウランクを示した。定量ガスクロマトグラフィー分析は、0.65%の未反応クロロプロピルトリエトキシシランを示した。
[実施例8]
機械撹拌機、1枚のバッフル、冷却器、滴下漏斗および内部温度計を備えた1L反応器に、450.00gの水を76℃で投入した。102.12gのリン酸三ナトリウムおよび176.84gのリン酸水素二ナトリウムを一部ずつ添加した。全ての固体が溶解されるまで混合物を激しく撹拌した。次に38.01gの硫化水素ナトリウム水溶液(0.24%NaS、45.77%のNaHS)を添加した。次に9.98gの元素状態で存在するイオウを添加し、透明暗コハク色溶液が生成されるまで、混合物を撹拌した。4.00gの25%触媒水溶液(3.00gの水中に1.00gの臭化テトラブチルアンモニウム)を添加した。次に150.00gのクロロプロピルトリエトキシシランを15分以内に添加すると、反応温度は79.0℃に上昇した。別の2.00gの25%触媒水溶液(3.00gの水中に1.00gの臭化テトラブチルアンモニウム)を添加した。発熱が低減した後、混合物を76℃の温度で撹拌し、3時間後にクロロプロピルトリエトキシシランが安定比率レベルに到達するまで、ガスクロマトグラフィー分析により反応の進行を追跡した。次に771.09gの透明無色水相を排出した。残りの有機相を15℃に冷却し、排出(133.82gの原料)して、濾紙(例えばワットマン(Whatman)(登録商標)1)に通してブフナー漏斗中に濾過して、130.08gの透明淡黄色液を得た。高圧液体クロマトグラフィー分析は、2.05という平均イオウランクを示した。定量ガスクロマトグラフィー分析は、1.07%の未反応クロロプロピルトリエトキシシランを示した。
[実施例9]
機械撹拌機、1枚のバッフル、冷却器、滴下漏斗および内部温度計を備えた1L反応器に、450.00gの水を76℃で投入した。51.06gのリン酸三ナトリウムおよび221.05gのリン酸水素二ナトリウムを一部ずつ添加した。全ての固体が溶解されるまで混合物を激しく撹拌した。次に38.01gの硫化水素ナトリウム水溶液(0.24%NaS、45.77%のNaHS)を添加した。次に9.98gの元素状態で存在するイオウを添加し、透明暗コハク色溶液が生成されるまで、混合物を撹拌した。4.00gの25%触媒水溶液(3.00gの水中に1.00gの臭化テトラブチルアンモニウム)を添加した。次に150.00gのクロロプロピルトリエトキシシランを15分以内に添加すると、反応温度は79.0℃に上昇した。別の2.00gの25%触媒水溶液(3.00gの水中に1.00gの臭化テトラブチルアンモニウム)を添加した。発熱が低減した後、混合物を76℃の温度で撹拌し、3.5時間後にクロロプロピルトリエトキシシランが安定比率レベルに到達するまで、ガスクロマトグラフィー分析により反応の進行を追跡した。次に762.30gの透明無色水相を排出した。残りの有機相を15℃に冷却し、排出(143.04gの原料)して、濾紙(例えばワットマン(Whatman)(登録商標)1)に通してブフナー漏斗中に濾過して、141.18gの透明淡黄色液を得た。高圧液体クロマトグラフィー分析は、2.09という平均イオウランクを示した。定量ガスクロマトグラフィー分析は、2.77%の未反応クロロプロピルトリエトキシシランを示した。
[実施例10]
機械撹拌機、1枚のバッフル、冷却器、滴下漏斗および内部温度計を備えた1L反応器に、450.00gの水を76℃で投入した。次に265.26gのリン酸水素二ナトリウムを一部ずつ添加した。全ての固体が溶解されるまで混合物を激しく撹拌した。次に38.01gの硫化水素ナトリウム水溶液(0.24%NaS、45.77%のNaHS)を添加した。次に9.98gの元素状態で存在するイオウを添加し、透明暗コハク色溶液が生成されるまで、混合物を撹拌した。4.00gの25%触媒水溶液(3.00gの水中に1.00gの臭化テトラブチルアンモニウム)を添加した。次に150.00gのクロロプロピルトリエトキシシランを15分以内に添加すると、反応温度は79.0℃に上昇した。別の2.00gの25%触媒水溶液(3.00gの水中に1.00gの臭化テトラブチルアンモニウム)を添加した。発熱が低減した後、混合物を76℃の温度で撹拌し、4.5時間後にクロロプロピルトリエトキシシランが安定比率レベルに到達するまで、ガスクロマトグラフィー分析により反応の進行を追跡した。次に756.55gの透明無色水相を排出した。残りの有機相を15℃に冷却し、排出して(143.49gの原料)、濾紙(例えばワットマン(Whatman)(登録商標)1)に通してブフナー漏斗中に濾過して、140.48gの透明淡黄色液を得た。高圧液体クロマトグラフィー分析は、2.19という平均イオウランクを示した。定量ガスクロマトグラフィー分析は、11.92%の未反応クロロプロピルトリエトキシシランを示した。
[実施例11]
機械撹拌機、1バッフルおよび内部熱電対を備えたジャケット付1.5L反応器に、419.81gの水を室温で入れた。次に151.33gの固体KCO、134.85gのNaSH水溶液(45.85重量%NaSH)および34.96gのイオウ粉末を混合しながら反応器に入れた。次に反応器内容物を70℃に加熱し、70℃で5分間保持後、21.01gの25重量%臭化テトラブチルアンモニウム(TBAB)水溶液を反応器に入れて、10〜15分間混合した。次に500.02gのクロロプロピルトリエトキシシラン(CPTES)を添加漏斗により反応器に滴下した。冷却ジャケット能力と、85℃未満に反応器温度を保持するという要求とにより、CPTES添加速度を限定した。CPTESの添加後、有機相のガスクロマトグラフィー分析により測定した場合にCPTESのさらなる転化が認められないことにより確定されるように、反応が完了したと確認されるまで反応器を75℃で2〜3.5時間保持した。反応が完了した後、反応器を50℃に冷却し、水を反応器に添加して、反応器中に存在する塩を溶解した。次に撹拌を止めて、反応器の内容物を相分離させた。次に下部水相を排出すると、あとには458.9gの生成物が残った。未反応CPTESおよびその他の低沸点不純物(2.50重量%の粗生成物)を真空ストリッピングにより除去すると、あとには最終生成物((EtO)SiCHCHCH)S(x=2.12)が残った。
[実施例12]
機械撹拌機、1バッフルおよび内部熱電対を備えたジャケット付1.5L反応器に、50.56gの水を室温で入れた。次に317.8gの47.6重量%KCO水溶液、135.09gのNaSH水溶液(45.56重量%NaSH)および37.04gのイオウフレークを混合しながら反応器に入れた。次に反応器内容物を70℃に加熱し、70℃で5分間保持後、20.99gの25重量%臭化テトラブチルアンモニウム(TBAB)水溶液を反応器に入れて、10〜15分間混合させた。次に500.02gのクロロプロピルトリエトキシシラン(CPTES)を添加漏斗により反応器に滴下した。冷却ジャケット能力と85℃未満の反応器温度を保持するという要求とにより、CPTES添加速度を限定した。CPTESの添加後、有機相のガスクロマトグラフィー分析により測定した場合にCPTESのさらなる転化が認められないことにより確定されるように、反応が完了したと確認されるまで反応器を75℃で2時間〜3.5時間保持した。反応が完了した後、反応器を50℃に冷却し、水を反応器に添加して、反応器中に存在する塩を溶解した。次に撹拌を止めて、反応器内容物を相分離させた。次に下部水相を排出すると、あとには479.1gの生成物が残った。未反応CPTESおよびその他の低沸点不純物(1.77重量%の粗生成物)を真空ストリッピングにより除去すると、あとには最終生成物((EtO)SiCHCHCH(x=2.16)が残った。

Claims (3)

  1. 式:(RO)3−mSi−Alk−S−Alk−SiR(OR)3−m
    (式中、Rは独立して炭素原子1〜12個の一価炭化水素であり、Alkは炭素原子1〜18個の二価炭化水素であり、mは0〜2の整数であり、nは1〜8の数である)を有する有機ケイ素化合物の製造方法において、
    リン酸アルカリ金属塩、リン酸水素アルカリ金属塩、リン酸二水素アルカリ金属塩、炭酸アルカリ金属塩、炭酸水素アルカリ金属塩またはそれらの組合せである緩衝剤を含有する水相と、臭化テトラブチルアンモニウムまたは塩化テトラブチルアンモニウムである相間移動触媒の存在下で、
    (A)硫化水素ナトリウムを含むスルフィド化合物を
    (B)式:(RO)3−mSi−Alk−X
    (式中、XはCl、BrまたはIであり、mは上記と同様である)を有するシラン化合物、およ
    (C)イオウ
    と反応させることを含む有機ケイ素化合物の製造方法。
  2. 式:(RO)3−mSi−Alk−S−Alk−SiR(OR)3−m
    (式中、Rは独立して炭素原子1〜12個の一価炭化水素であり、Alkは炭素原子1〜18個の二価炭化水素であり、mは0〜2の整数であり、nは1〜8の数である)を有する有機ケイ素化合物の製造方法において、
    (A)臭化テトラブチルアンモニウムまたは塩化テトラブチルアンモニウムである相間移動触媒、硫化水素ナトリウムを含むスルフィド化合物、水、リン酸アルカリ金属塩、リン酸水素アルカリ金属塩、リン酸二水素アルカリ金属塩、炭酸アルカリ金属塩、炭酸水素アルカリ金属塩またはそれらの組合せである緩衝剤、およびイオウを反応させて、中間反応生成物を生成すること、
    (B)前記中間反応生成物を、式:(RO)3−mSi−Alk−X(式中、XはCl、BrまたはIであり、mは上記と同様である)を有するシラン化合物と反応させること
    を含む有機ケイ素化合物の製造方法。
  3. 式:(RO)3−mSi−Alk−S−Alk−SiR(OR)3−m
    (式中、Rは独立して炭素原子1〜12個の一価炭化水素であり、Alkは炭素原子1〜18個の二価炭化水素であり、mは0〜2の整数であり、nは1〜8の数である)を有する有機ケイ素化合物の製造方法において、
    (I)リン酸アルカリ金属塩、リン酸水素アルカリ金属塩、リン酸二水素アルカリ金属塩、炭酸アルカリ金属塩、炭酸水素アルカリ金属塩またはそれらの組合せである緩衝剤を含有する水相と、臭化テトラブチルアンモニウムまたは塩化テトラブチルアンモニウムである相間移動触媒の存在下で、
    (A)硫化水素ナトリウムを含むスルフィド化合物を
    (B)式:(RO)3−mSi−Alk−X
    (式中、XはCl、BrまたはIであり、mは前記と同様である)を有するシラン化合物、およ
    (C)イオウ
    と反応させて、生成物の混合物を生成すること、
    (II)前記生成物の混合物から前記有機ケイ素化合物を分離すること
    を含む有機ケイ素化合物の製造方法。
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