JP4097353B2 - 光走査型タッチパネル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、表示画面上での指示物の位置を光学的に検出する光走査型タッチパネルに関する。
【0002】
【従来の技術】
主としてパーソナルコンピュータ等のコンピュータシステムの普及に伴って、コンピュータシステムにより情報が表示される表示装置の表示画面上を人の指または特定の指示物により指示することにより、新たな情報を入力したり、コンピュータシステムに対して種々の指示を与えたりする装置が利用されている。
【0003】
パーソナルコンピュータ等の表示装置の表示画面に表示された情報に対してタッチ方式にて入力操作を行う場合には、その表示画面上での接触位置(指示位置)を高精度に検出する必要がある。このような座標面となる表示画面上の指示位置を検出する方法の一例として、光学的な位置検出方法が、特開昭62−5428号公報等に提案されている。この方法は、表示画面の両側枠に光再帰性反射体を配置し、角度走査したレーザ光線のこの光再帰性反射体からの反射光を検知し、指またはペンによって光線が遮断されるタイミングから指またはペンの存在角度を求め、求めた角度から三角測量の原理にて位置座標を検出する。この方法では、部品点数が少なくて検出精度を維持でき、指,任意のペン等の位置も検出できる。
【0004】
このような走査光により位置検出を行う光走査型タッチパネルは、一般的に表示画面の外側に設けられた光再帰性反射体と、レーザ光等の光を出射する発光素子、出射された光を角度走査するポリゴンミラー等の光走査部、及び、その走査光の光再帰性反射体による反射光を受光する受光素子を含む複数の光学ユニットとを備えており、各光学ユニットにおいて、発光素子からの光を光走査部にて走査させ、その走査光の光再帰性反射体での反射光を再び光走査部で反射させ、その反射光を受光素子に受光させる構成を有している。その走査光の経路に指,任意のペン等の指示物が存在する場合には、光再帰性反射体での反射光が受光素子に受光されない。そこで、各光学ユニットにおける光走査部の走査角度及び受光素子での受光結果に基づいて、それらの指示物の位置を検出することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような光走査型タッチパネルにあっては、光再帰性反射体の光再帰性反射特性が指示物の位置検出のS/N比に大きな影響を与えるが、この光再帰性反射特性は光の入射角に応じて変化する。よって、1種類の光再帰性反射特性を有する光再帰性反射体を用いている従来の光走査型タッチパネルでは、走査光の入射角によって光再帰性反射特性が悪くなることがあり、指示物の位置検出のS/N比が低くなるという問題がある。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、光再帰性反射特性が異なる複数の光再帰性反射体を設けることにより、指示物の位置検出のS/N比を向上できる光走査型タッチパネルを提供することを目的とする。
【0007】
本発明の他の目的は、走査光の入射角が略0度になるように光再帰性反射体を構成することにより、指示物の位置検出のS/N比を向上できる光走査型タッチパネルを提供することにある。
【0008】
本発明の更に他の目的は、光再帰性反射体を保護する保護材を設けることにより、水分,粉塵等による光再帰性反射特性の劣化を防止できて、指示物の位置検出のS/N比を向上できる光走査型タッチパネルを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る光走査型タッチパネルは、所定領域の外側に設けた光再帰性反射体と、前記所定領域と実質的に平行である面内で光を角度走査する光走査部及び該光走査部による走査光の前記光再帰性反射体での反射光を受光する受光部を有する複数の光学ユニットとを備え、前記所定領域に指示物で形成される走査光の遮断位置を走査角度に対応した前記受光部の受光出力に基づいて検出する光走査型タッチパネルにおいて、前記光再帰性反射体は、光再帰性反射特性が異なる複数の光再帰性反射体を組み合わせて構成し、前記光再帰性反射体の表面に、前記光再帰性反射体を保護する保護材を設け、前記保護材の表面に光反射防止処理を施し、前記光再帰性反射体への走査光の任意の入射角に対して、前記保護材の光反射防止処理を最適化してあることを特徴とする。
【0010】
請求項1の光走査型タッチパネルにあっては、光再帰性反射特性が異なる複数の光再帰性反射体を組み合わせており、例えば、光走査において入射角が小さい領域には入射角が小さい場合に最も強い光再帰性反射特性を有する光再帰性反射体を設け、光走査において入射角が大きい領域には入射角が大きい場合に最も強い光再帰性反射特性を有する光再帰性反射体を設けている。よって、入射角に応じて最適な光再帰性反射特性を有することができ、指示物の位置検出のS/N比の向上を図れる。
また請求項1の光走査型タッチパネルにあっては、光再帰性反射体を保護する保護材を設けており、光再帰性反射体が水分,粉塵等から保護される。
さらに請求項1の光走査型タッチパネルにあっては、保護材の表面に光反射防止処理を施しており、保護材の表面での反射による光量低下を抑制して、指示物の位置検出のS/N比の向上を図れる。
しかも請求項1の光走査型タッチパネルにあっては、光再帰性反射体での任意の入射角に対して、保護材の光反射防止処理を最適化しており、保護材の表面での反射による光量低下を抑制して、指示物の位置検出のS/N比の向上を図れる。
【0011】
請求項2に係る光走査型タッチパネルは、所定領域の外側に設けた光再帰性反射体と、前記所定領域と実質的に平行である面内で光を角度走査する光走査部及び該光走査部による走査光の前記光再帰性反射体での反射光を受光する受光部を有する複数の光学ユニットとを備え、前記所定領域に指示物で形成される走査光の遮断位置を走査角度に対応した前記受光部の受光出力に基づいて検出する光走査型タッチパネルにおいて、前記光再帰性反射体の一部は、走査光の入射角が実質的に0度になるように、その入射面を傾斜させ、前記光再帰性反射体の表面に、前記光再帰性反射体を保護する保護材を設け、前記保護材の表面に光反射防止処理を施し、前記光再帰性反射体への走査光の任意の入射角に対して、前記保護材の光反射防止処理を最適化してあることを特徴とする。
【0012】
請求項2の光走査型タッチパネルにあっては、光再帰性反射体への入射角が実質的に0度になるようにしており、光走査において入射角が大きい領域にあっても入射角が小さい場合に最も強い光再帰性反射特性を有する光再帰性反射体を設けて、指示物の位置検出のS/N比の向上を図れる。
また請求項2の光走査型タッチパネルにあっては、光再帰性反射体を保護する保護材を設けており、光再帰性反射体が水分,粉塵等から保護される。
さらに請求項2の光走査型タッチパネルにあっては、保護材の表面に光反射防止処理を施しており、保護材の表面での反射による光量低下を抑制して、指示物の位置検出のS/N比の向上を図れる。
しかも請求項2の光走査型タッチパネルにあっては、光再帰性反射体での任意の入射角に対して、保護材の光反射防止処理を最適化しており、保護材の表面での反射による光量低下を抑制して、指示物の位置検出のS/N比の向上を図れる。
【0013】
請求項3に係る光走査型タッチパネルは、請求項1または2において、前記保護材は、走査光の向きを変える偏向機能を有することを特徴とする。
【0014】
請求項3の光走査型タッチパネルにあっては、保護材は、走査光の向きを変える偏向機能を有しており、保護材によって光再帰性反射体に対する入射角を調整して、指示物の位置検出のS/N比の向上を図れる。
【0015】
請求項4に係る光走査型タッチパネルは、指示物によりタッチするための目標区域として規定された平面の範囲である長方形の一辺の両端の外側に設けた発光素子及び受光素子を夫々有する複数の光学ユニットと、前記長方形の一辺を除く三辺の外側に設けた光再帰性反射体とを備え、前記発光素子から出射された光に基づく走査光の前記光再帰性反射体での反射光を前記受光素子にて受光する光走査型タッチパネルにおいて、前記光再帰性反射体は、光再帰性反射特性が異なる複数の光再帰性反射体を組み合わせて構成し、前記光再帰性反射体の表面に、前記光再帰性反射体を保護する保護材を設け、前記保護材の表面に光反射防止処理を施し、前記光再帰性反射体への走査光の任意の入射角に対して、前記保護材の光反射防止処理を最適化してあることを特徴とする。
【0016】
請求項4の光走査型タッチパネルにあっては、光再帰性反射体を保護する保護材を設けており、光再帰性反射体が水分,粉塵等から保護される。
さらに請求項4の光走査型タッチパネルにあっては、保護材の表面に光反射防止処理を施しており、保護材の表面での反射による光量低下を抑制して、指示物の位置検出のS/N比の向上を図れる。
しかも請求項4の光走査型タッチパネルにあっては、光再帰性反射体での任意の入射角に対して、保護材の光反射防止処理を最適化しており、保護材の表面での反射による光量低下を抑制して、指示物の位置検出のS/N比の向上を図れる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。図1は、本発明の光走査型タッチパネルの基本構成を示す模式図である。
【0022】
図1において参照符号10は、パーソナルコンピュータ等の電子機器におけるCRTまたはフラットディスプレイパネル(PDP,LCD,EL等),投射型映像表示装置等の矩形状の表示画面であり、本実施の形態ではPDP(プラズマディスプレイ)の表示画面として構成されている。
【0023】
例えば指,ペン等である指示物Sによりタッチするための目標区域として規定された平面の範囲であるこの長方形の表示画面10の一つの短辺(本実施の形態では右側の辺)の両隅の外側には、発光素子,受光素子,ポリゴンミラー,各種のレンズ等を含む光学系を内部に有する光学ユニット1a,1bがそれぞれ設けられている。
【0024】
また、表示画面10の右側の辺を除く3辺、つまり、上下両側の辺及び左側の辺の外側には光再帰性反射体としての再帰性反射シート7が、筐体8に固定された態様で設けられている。本発明では、この再帰性反射シート7は、光再帰性反射特性が異なる2種類の再帰性反射シート7a,7bを組み合わせて構成されている。入射角が小さくなる領域(左側の辺の全域及び上下両側の辺の光学ユニット1a,1bに近い右側の領域)には、入射角が小さい場合に最も強い光再帰性反射特性を有する低入射角用の再帰性反射シート7aが設けられ、入射角が大きくなる領域(上下両側の辺の光学ユニット1a,1bから遠い左側の領域)には、入射角が大きい場合に最も強い光再帰性反射特性を有する高入射角用の再帰性反射シート7bが設けられている。これらの再帰性反射シート7a,7bの詳細については後述する。
【0025】
図2は、光学ユニット1a,1bにおける光学系の構成及び光路を示す斜視図である。両光学ユニット1a,1bは同じ光学系を有している。光学ユニット1a,1bは、赤外線レーザ光を出射するレーザダイオード(LD)からなる発光素子11と、発光素子11からのレーザ光を平行光にするためのコリメーションレンズ12と、再帰性反射シート7(7a,7b)からの反射光を受光するフォトダイオード(PD)からなる受光素子13と、受光素子13への入射光を制限するためのスリット14aを有するスリット板14と、発光素子11からのレーザ光を角度走査するための例えば4角柱状のポリゴンミラー15と、アパーチャ16aによりコリメーションレンズ12からポリゴンミラー15への投射光を制限すると共に、ポリゴンミラー15を介した再帰性反射シート7(7a,7b)からの反射光を受光素子13側へ反射するアパーチャミラー16と、アパーチャミラー16での反射光を集束させるための集光レンズ17と、ポリゴンミラー15を回転させるモータ18と、これらの各光学部材を取付け固定するための光学ユニット本体19とを備える。
【0026】
発光素子11から出射されたレーザ光は、コリメーションレンズ12にて平行光にされ、アパーチャミラー16のアパーチャ16aを通過した後、ポリゴンミラー15の回転によって表示画面10と実質的に平行である面内を角度走査されて再帰性反射シート7(7a,7b)に投射される。そして、再帰性反射シート7(7a,7b)からの反射光が、ポリゴンミラー15及びアパーチャミラー16にて反射された後、集光レンズ17で集束されてスリット板14のスリット14aを通って、受光素子13に入射される。但し、走査光の経路に指示物Sが存在する場合には投射光が遮断されるため、反射光が受光素子13に入射されることはない。
【0027】
各光学ユニット1a,1bには、各発光素子11を駆動する発光素子駆動回路2a,2bと、各受光素子13の受光量を電気信号に変換する受光信号検出回路3a,3bと、各ポリゴンミラー15の動作を制御して各光学ユニット1a,1bにおける光走査開始を同期させる走査同期制御回路4とが接続されている。また、参照符号5は指示物Sの位置,大きさを算出すると共に、装置全体の動作を制御するMPUであり、6はMPU5での算出結果等を表示する表示装置である。
【0028】
MPU5は、発光素子駆動回路2a,2bに駆動制御信号を送り、その駆動制御信号に応じて発光素子駆動回路2a,2bが駆動されて、各発光素子11の発光動作が制御される。受光信号検出回路3a,3bは、各受光素子13での受光信号をMPU5へ送る。MPU5は、各受光素子13からの受光信号に基づいて、指示物Sの位置,大きさを算出し、その算出結果を表示装置6に表示する。なお、表示装置6は表示画面10を兼用することも可能である。
【0029】
このような本発明の光走査型タッチパネルにおいては、図1に示されているように、例えば光学ユニット1bに関して説明すると、光学ユニット1bからの投射光は、受光素子13に入射する位置から図1上で反時計方向回りに走査され、再帰性反射シート7(7a)の先端部分で反射される位置(Ps)に至って実質的な走査開始位置になる。そして、指示物Sの一端に至る位置(P1)までは再帰性反射シート7(7a)により反射されるが、指示物Sの他端に至る位置(P2)までの間は指示物Sによって遮断され、その後の走査終了位置(Pe)に至るまでは再帰性反射シート7(7a,7b)により反射される。
【0030】
次に、本発明の特徴部分をなす再帰性反射シート7について説明する。図3は、本発明の光走査型タッチパネルの主要部の構成を示す模式図である。再帰性反射シート7は、前述したように、低入射角用の再帰性反射シート7aと高入射角用の再帰性反射シート7bとで構成されており、図3に示すように、入射角が0度から30度の領域には低入射角用の再帰性反射シート7aが設けられ、入射角が30度を超える(最大60度)の領域には高入射角用の再帰性反射シート7bが設けられている。
【0031】
図4は、両再帰性反射シート7a,7bにおける光再帰性反射特性を示すグラフである。図4において、横軸は入射角(度)、縦軸は反射光糧(μW)を表しており、●−●は低入射角用の再帰性反射シート7aの光再帰性反射特性、○−○は高入射角用の再帰性反射シート7bの光再帰性反射特性を示している。図4から、低入射角用の再帰性反射シート7aは入射角が増加するにつれて光再帰性反射特性が低下し、高入射角用の再帰性反射シート7bは入射角が50度程度まで増加するにつれて光再帰性反射特性が上昇し、入射角が約30度である場合に、両再帰性反射シート7a,7bの光再帰性反射特性が一致することが分かる。よって、図3に示すように、入射角が0度から30度までの領域では低入射角用の再帰性反射シート7aを使用し、入射角が30度より大きい領域では高入射角用の再帰性反射シート7bを使用することにより、指示物Sの位置検出のS/N比を向上することが可能である。
【0032】
図5は、両再帰性反射シート7a,7bの境界部分の拡大図である。この境界部分では、光走査順序が早い方の再帰性反射シート7aが遅い方の再帰性反射シート7bの上方になるように両再帰性反射シート7a,7bが重なり合っている。よって、境界部分で両再帰性反射シート7a,7bを重ね合わせているので、この境界部分において反射光を検出できなくなる事態を防止できる。このような境界部分の構成は、走査光のビームサイズが小さい場合には特に必要である。なお、境界部分で隣合う再帰性反射シート7a,7bの間に空隙が生じないようにしておけば良く、図6に示すように両再帰性反射シート7a,7bが接するような境界部分の構成であっても良い。
【0033】
なお、上述した例では、光再帰性反射特性が異なる2種類の再帰性反射シート7a,7bの組合せにて光再帰性反射体を構成したが、光再帰性反射特性が異なる3種類以上の再帰性反射シートを組み合わせて光再帰性反射体を構成しても良いことは勿論である。
【0034】
図7,図8は、本発明の他の光走査型タッチパネルの主要部の構成を示す模式図,断面図である。図7,図8において、図3,図5と同一部分には同一番号を付している。この例では、筐体8の溝8aにガイドされ、再帰性反射シート7(7a,7b)を覆うように、フッ素テフロン系樹脂からなる保護カバー21が設けられている。
【0035】
このような保護カバー21を設けることにより、再帰性反射シート7(7a,7b)が水分,粉塵等に対して保護されるので、水分,粉塵等の付着による再帰性反射シート7(7a,7b)の特性の劣化を防止することが可能である。
【0036】
このような保護カバー21をほとんど全ての光が通過して再帰性反射シート7(7a,7b)から十分な光量の反射光が得られるように、保護カバー21の表面には反射防止処理を施しておくことが好ましい。図9は、この反射防止処理を示す断面図であり、例えば、再帰性反射シート7(7a,7b)の光入射面に反射防止膜22が形成されている。このような反射防止処理を施しておくことにより、走査光の保護カバー21表面での反射を防止でき、その反射に伴う再帰性反射シート7(7a,7b)での反射光のレベル低下を抑制でき、S/N比の向上につながる。
【0037】
このような反射防止処理(反射防止膜22の形成)にあって、反射防止膜22での走査光の光路長がλ/4(λ:走査光の波長)になるように反射防止膜22の膜厚を制御することにより、任意の入射角に対して反射防止特性を最適に設定することができる。よって、S/N比が低い(反射光量が少ない)入射角に対する反射防止特性が最適化するように、例えば図4に示すような特性を有する低入射角用の再帰性反射シート7aを使用する場合にその反射光量が少なくなる15〜30度の入射角の範囲で反射防止特性の最適化を図るようにした場合、その入射角での指示物Sの位置検出のS/N比を向上することが可能である。
【0038】
図10は、本発明の更に他の光走査型タッチパネルの主要部の構成を示す模式図、図11は、図10の部分拡大図である。図10,図11において、図7,図8と同一部分には同一番号を付している。この例では、走査光の入射角が大きくなる(30度を超える)領域にあっては、入射角が略0度になるように傾斜させて複数の低入射角用の再帰性反射シート7aを設けている。これらの各再帰性反射シート7aは、5〜6mm程度のピッチで列状に配設された各支持材23で固定されている。なお、入射角が小さい(30度以下)領域における構成は、図7,図8に示した例と同じである。
【0039】
このような例では、本来であれば入射角が大きくなるような領域においても、再帰性反射シート7(7a)への入射角を略0度にでき、指示物Sの位置検出のS/N比を向上することが可能である。
【0040】
図12は、本発明の更に他の光走査型タッチパネルの主要部の構成を示す模式図、図13は、図12の部分拡大断面図である。図12,図13において、図7,図8と同一部分には同一番号を付している。この例では、光再帰性反射体としてすべての領域において低入射角用の再帰性反射シート7aが設けられており、入射角が大きくなる(30度を超える)領域にあって、低入射角用の再帰性反射シート7aの上面を、光の偏向機能を有する偏向機能付き保護カバー24で覆っている。この偏向機能付き保護カバー24は、例えばプリズムシートを使用できる。なお、入射角が小さい(30度以下)領域における構成は、図7,図8に示した例と同じである。
【0041】
このように構成した場合には、本来であれば入射角が大きくなるような領域においても、図13に示すように偏向機能付き保護カバー24によって、再帰性反射シート7(7a)への入射角を略0度にでき、指示物Sの位置検出のS/N比を向上することが可能である。
【0042】
最後に、本発明の光走査型タッチパネルによる指示物Sの位置,大きさの算出動作について説明する。図14は、光走査型タッチパネルの実施状態を示す模式図である。但し、図14では光学ユニット1a,1b、再帰性反射シート7(7a,7b),表示画面10以外の構成部材は図示を省略している。また、指示物Sとして指を用いた場合を示している。
【0043】
MPU5はポリゴン制御回路4を制御することにより、光学ユニット1a,1b内の各ポリゴンミラー15を回転させて、各発光素子11からのレーザ光を角度走査する。この結果、再帰性反射シート7からの反射光が各受光素子13に入射する。このようにして各受光素子13に入射した光の受光量は受光信号検出回路3a,3bの出力である受光信号として得られる。
【0044】
なお、図14において、θ00,φ00は走査基準線から各受光素子までの角度を、θ0,φ0は走査基準線から再帰性反射シート7(7a,7b)の端部までの角度を、θ1,φ1は走査基準線から指示物Sの基準線側端部までの角度を、θ2,φ2は走査基準線から指示物Sの基準線と逆側端部までの角度をそれぞれ示している。
【0045】
表示画面10上の走査光の光路に指示物Sが存在する場合には、光学ユニット1a,1bから投射された光の指示物Sからの反射光は各受光素子13に入射されない。従って、図14に示されているような状態では,走査角度が0°からθ0までの間では光学ユニット1a内の受光素子13には反射光は入射されず、走査角度がθ0からθ1までの間ではその受光素子13に反射光が入射され、走査角度がθ1からθ2までの間ではその受光素子13に反射光が入射されない。同様に、走査角度が0°からφ0までの間では光学ユニット1b内の受光素子13には反射光は入射されず、走査角度がφ0からφ1までの間ではその受光素子13に反射光が入射され、走査角度がφ1からφ2までの間ではその受光素子13に反射光が入射されない。
【0046】
次に、このようにして求めた遮断範囲から、指示物S(本例では指)の中心位置(指示位置)の座標を求める処理について説明する。まず、三角測量に基づく角度から直交座標への変換を説明する。図15に示すように、光学ユニット1aの位置を原点O、表示画面10の右辺,上辺をX軸,Y軸に設定し、基準線の長さ(光学ユニット1a,1b間の距離)をLとする。また、光学ユニット1bの位置をBとする。表示画面10上の指示物Sが指示した中心点P(Px,Py)が、光学ユニット1a,1bからX軸に対してθ,φの角度でそれぞれ位置している場合、点PのX座標Px,Y座標Pyの値は、三角測量の原理により、それぞれ以下の(1),(2)式のように求めることができる。
Px(θ,φ)=(tanφ)÷(tanθ+tanφ)×L …(1)
Py(θ,φ)=(tanθ・tanφ)÷(tanθ+tanφ)×L …(2)
【0047】
ところで、指示物S(指)には大きさがあるので、検出した受光信号の立ち上がり/立ち下がりのタイミングでの検出角度を採用した場合、図16に示すように、指示物S(指)のエッジ部の4点(図16のP1〜P4)を検出することになる。これらの4点は何れも指示した中心点(図16のPc)とは異なっている。そこで、以下のようにして 中心点Pcの座標(Pcx,Pcy)を求める。Pcx,Pcyは、それぞれ以下の(3),(4)式のように表せる。
Pcx(θ,φ)=Pcx(θ1+dθ/2,φ1+dφ/2)…(3)
Pcy(θ,φ)=Pcy(θ1+dθ/2,φ1+dφ/2)…(4)
【0048】
そこで、(3),(4)式で表されるθ1+dθ/2,φ1+dφ/2を上記(1),(2)式のθ,φとして代入することにより、指示された中心点Pcの座標を求めることができる。
【0049】
なお、上述した例では、最初に角度の平均値を求め、その角度の平均値を三角測量の変換式(1),(2)に代入して、指示位置である中心点Pcの座標を求めるようにしたが、最初に三角測量の変換式(1),(2)に従って走査角度から4点P1〜P4の直交座標を求め、求めた4点の座標値の平均を算出して、中心点Pcの座標を求めるようにすることも可能である。また、視差、及び、指示位置の見易さを考慮して、指示位置である中心点Pcの座標を決定することも可能である。
【0050】
ところで、各ポリゴンミラー15の走査角速度が一定である場合には、時間を計時することにより走査角度の情報を得ることができる。図17は、受光信号検出回路3aからの受光信号と、光学ユニット1a内のポリゴンミラー15の走査角度θ及び走査時間Tとの関係を示すタイミングチャートである。ポリゴンミラー15の走査角速度が一定である場合、その走査角速度をωとすると、走査角度θ及び走査時間Tには、下記(5)式に示すような比例関係が成り立つ。
θ=ω×T …(5)
【0051】
よって、受光信号の立ち下がり,立ち上がり時の角度θ1,θ2は、それぞれの走査時間t1,t2と下記(6),(7)式の関係が成り立つ。
θ1=ω×t1 …(6)
θ2=ω×t2 …(7)
【0052】
従って、ポリゴンミラー15の走査角速度が一定である場合には、時間情報を用いて、指示物S(指)の遮断範囲及び座標位置を計測することが可能である。
【0053】
また、本発明の光走査型タッチパネルでは、計測した遮断範囲から指示物S(指)の大きさ(断面長)を求めることも可能である。図18は、この断面長計測の原理を示す模式図である。図18において、D1,D2はそれぞれ光学ユニット1a,1bから見た指示物Sの断面長である。まず、光学ユニット1a,1bの位置O(0,0),B(L,0)から指示物Sの中心点Pc(Pcx,Pcy)までの距離OPc(r1),BPc(r2)が、下記(8),(9)式の如く求められる。
OPc=r1=(Pcx2 +Pcy2 )1/2 …(8)
BPc=r2={(L−Pcx)2 +Pcy2 }1/2 …(9)
【0054】
断面長は距離と遮断角度の正弦値との積で近似できるので、各断面長D1,D2は、下記(10),(11)式に従って計測可能である。
【0055】
なお、θ,φ≒0である場合には、sindθ≒dθ≒tandθ,sindφ≒dφ≒tandφと近似できるので、(10),(11)式においてsindθ,sindφの代わりに、dθまたはtandθ,dφまたはtandφとしても良い。
【0056】
【発明の効果】
以上のように、本発明では、光再帰性反射特性が異なる複数の光再帰性反射体を組み合わせるようにしたので、入射角に応じて最適な光再帰性反射特性を有することができ、指示物の位置検出のS/N比の向上を図ることが可能である。
【0057】
また、光走査における入射角が大きい領域において光再帰性反射体への入射角が実質的に0度になるようにしたので、本来は入射角が大きい領域にあっても入射角が小さい場合に最も強い光再帰性反射特性を有する光再帰性反射体を設けることができ、指示物の位置検出のS/N比の向上を図ることが可能である。
【0058】
また、光再帰性反射体を保護する保護材を設けるようにしたので、光再帰性反射体を水分,粉塵等から保護することが可能である。
【0059】
また、保護材の表面に光反射防止処理を施すようにしたので、保護材の表面での反射による光量低下を抑制して、指示物の位置検出のS/N比の向上を図ることが可能である。
【0060】
また、光再帰性反射体での任意の入射角に対して、保護材の光反射防止処理を最適化するようにしたので、保護材の表面での反射による光量低下を抑制して、指示物の位置検出のS/N比の向上を図ることが可能である。
【0061】
また、保護材が、光の向きを変える偏向機能を有するようにしたので、保護材によって光再帰性反射体に対する入射角を調整して、指示物の位置検出のS/N比の向上を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光走査型タッチパネルの基本構成を示す模式図である。
【図2】光学ユニットにおける光学系の構成及び光路を示す斜視図である。
【図3】本発明の光走査型タッチパネルの主要部の構成を示す模式図である。
【図4】2種類の再帰性反射シートの光再帰性反射特性を示すグラフである。
【図5】2種類の再帰性反射シートの境界部分の拡大図である。
【図6】2種類の再帰性反射シートの境界部分の拡大図である。
【図7】本発明の他の光走査型タッチパネルの主要部の構成を示す模式図である。
【図8】本発明の他の光走査型タッチパネルの主要部の構成を示す断面図である。
【図9】保護カバーの反射防止処理を示す断面図である。
【図10】本発明の更に他の光走査型タッチパネルの主要部の構成を示す模式図である。
【図11】図10の部分拡大図である。
【図12】本発明の更に他の光走査型タッチパネルの主要部の構成を示す模式図である。
【図13】図12の部分拡大断面図である。
【図14】光走査型タッチパネルの実施状態を示す模式図である。
【図15】座標検出のための三角測量の原理を示す模式図である。
【図16】指示物及び遮断範囲を示す模式図である。
【図17】受光信号と走査角度と走査時間との関係を示すタイミングチャートである。
【図18】断面長計測の原理を示す模式図である。
【符号の説明】
1a,1b 光学ユニット
5 MPU
7 再帰性反射シート
7a 低入射角用の再帰性反射シート
7b 高入射角用の再帰性反射シート
8 筐体
10 表示画面(座標面)
11 発光素子
13 受光素子
15 ポリゴンミラー
21 保護カバー
22 反射防止膜
23 支持材
24 偏向機能付き保護カバー
S 指示物
Claims (4)
- 所定領域の外側に設けた光再帰性反射体と、前記所定領域と実質的に平行である面内で光を角度走査する光走査部及び該光走査部による走査光の前記光再帰性反射体での反射光を受光する受光部を有する複数の光学ユニットとを備え、前記所定領域に指示物で形成される走査光の遮断位置を走査角度に対応した前記受光部の受光出力に基づいて検出する光走査型タッチパネルにおいて、
前記光再帰性反射体は、光再帰性反射特性が異なる複数の光再帰性反射体を組み合わせて構成し、
前記光再帰性反射体の表面に、前記光再帰性反射体を保護する保護材を設け、
前記保護材の表面に光反射防止処理を施し、
前記光再帰性反射体への走査光の任意の入射角に対して、前記保護材の光反射防止処理を最適化してあることを特徴とする光走査型タッチパネル。 - 所定領域の外側に設けた光再帰性反射体と、前記所定領域と実質的に平行である面内で光を角度走査する光走査部及び該光走査部による走査光の前記光再帰性反射体での反射光を受光する受光部を有する複数の光学ユニットとを備え、前記所定領域に指示物で形成される走査光の遮断位置を走査角度に対応した前記受光部の受光出力に基づいて検出する光走査型タッチパネルにおいて、
前記光再帰性反射体の一部は、走査光の入射角が実質的に0度になるように、その入射面を傾斜させ、
前記光再帰性反射体の表面に、前記光再帰性反射体を保護する保護材を設け、
前記保護材の表面に光反射防止処理を施し、
前記光再帰性反射体への走査光の任意の入射角に対して、前記保護材の光反射防止処理を最適化してあることを特徴とする光走査型タッチパネル。 - 前記保護材は、走査光の向きを変える偏向機能を有する請求項1または2記載の光走査型タッチパネル。
- 指示物によりタッチするための目標区域として規定された平面の範囲である長方形の一辺の両端の外側に設けた発光素子及び受光素子を夫々有する複数の光学ユニットと、前記長方形の一辺を除く三辺の外側に設けた光再帰性反射体とを備え、前記発光素子から出射された光に基づく走査光の前記光再帰性反射体での反射光を前記受光素子にて受光する光走査型タッチパネルにおいて、
前記光再帰性反射体は、光再帰性反射特性が異なる複数の光再帰性反射体を組み合わせて構成し、
前記光再帰性反射体の表面に、前記光再帰性反射体を保護する保護材を設け、
前記保護材の表面に光反射防止処理を施し、
前記光再帰性反射体への走査光の任意の入射角に対して、前記保護材の光反射防止処理を最適化してあることを特徴とする光走査型タッチパネル。
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