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JP4078414B2 - 硫化ランタン焼結体およびその製造方法 - Google Patents

硫化ランタン焼結体およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に、熱電変換材料として有用な、大きな熱起電力を有する硫化ランタン焼結体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱電変換材料の応用は、多岐に亘っている。熱エネルギーを電気エネルギーに変換するクリーンエネルギー源としての利用が最も期待されるところであるが、ペルチェ効果を利用するものとして小型冷凍器、放熱板、高温槽、電熱用等が考えられ、また実現されている。
【0003】
熱起電力は、2種の電気伝導体を接合したとき2接点間の温度差ΔTにより発生する電圧Vで、それらの間にはV=αΔTの関係がある。このαのことをゼーベック係数という。この熱起電力を利用して、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する際に、熱電材料の有効性を示す指標として、電気伝導度σ、熱伝導度κを使って、式、Z=α2 σ/κ、で示される性能指数Zが用いられている。このZの値の大きい材料ほど優れた熱電材料となる。
【0004】
既に報告され、または利用されている熱電材料は多く、現在最も大きい性能指数が得られているのはBi−Te系の物質で、約3×10-3(/K)の値を示しているが、それらの物質のゼーベック係数の値は、約200(μV/K)程度である(「実用新素材技術便覧」通産資料調査会、1996、904)。
【0005】
希土類元素の硫化物は、大きなゼーベック係数を持ち、ランタノイド三二硫化物の中でもLaからNdまでの硫化物は、低温安定相である斜方晶のα相から正方晶のβ相、さらに、高温安定相である立方晶Th3 4 型のγ相へと不可逆変態し、特に、La2 3 は、373Kで+354μv・deg-1、Ce2 3 は、373Kで+574μv・deg-1のゼーべック係数を有する熱電材料であることが報告されている(ゲ・ヴェ・サムソノフ他:「硫化物便覧」、日・ソ通信社、1974、p108)。
【0006】
また、硫化ランタンLa3-x 4 およびLa−A−S系(AはCaまたはBa)において、最大2.9×10-4(/K)の性能指数が得られたことが報告されている(勝山 茂他「熱電変換シンポジウム´99論文集」、1999、56)。しかし、そこで報告されているゼーベック係数は最大値で約100(μV/K)である。なお、本発明者らは、Ce2 3 粉末の結晶構造、化学分析値、粒度分布等に関して先に発表した(J.Am.Ceram.Soc.,81,1998,145)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
熱電変換材料の上述の性能指数Zを求める式において、3種の物理的性質がその値を決定しているが、ゼーベック係数αの値は2乗でZの値を大きくすることから、このα値の大きな物質がより優れた熱電材料となり得る。そこで、本発明は、大きなゼーベック係数αを持ち、高い性能指数Zを持つ新規な材料の開発を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、La2 3 粉末を用いたCS2 ガス硫化法によりLa2 3 粉末を合成し、1023K以上の硫化温度ではβ−La2 3 (=La1014O)単相が得られること確認し、このβ相中の酸素濃度は、硫化時間を28.8ks一定とした場合、1023Kでは0.91質量%(炭素不純物濃度は0.02質量%)、1273Kでは0.18質量%となり、高温の硫化ほど酸素濃度が低下することを報告してきた(平井ら;「第124回日本金属学会春期大会講演概要」、1999、149)。
【0009】
本発明者らは、上記のCS2 ガス硫化法により合成した炭素不純物濃度が小さく、酸素濃度が一定範囲の高純度のβ相のLa2 3 末を原料として、それらを適当な圧力、温度条件において真空中で焼結することにより、焼結により生成したγ相に焼結により消滅しなかったβ相が混合した相の焼結体となり、この混合相の焼結体は、同一粉末を用いて焼結した、焼結により生成したγ相単相の焼結体より大きなゼーベック係数を持ち、原料粉末の酸素濃度と焼結温度の条件を選択することにより非常に大きなゼーベック係数を持つ硫化ランタン焼結体を作製できることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、β相のLa2 3 粉末原料の焼結体であって、結晶構造が焼結により消滅しなかったβ焼結により生成したγ相との混合相からなり、ゼーベック係数が60℃で1000(μV/K)以上の値を有することを特徴とする硫化ランタン焼結体である。
【0011】
また、本発明は、上記の硫化ランタン焼結体からなることを特徴とする熱電変換材料である。
【0012】
さらに、本発明は、酸素濃度が0.7〜1.0質量%、炭素不純物濃度が0.1質量%以下のβ相のLa2 3 粉末原料を、内面に六方晶層状型窒化ホウ素(h−BN)を被覆した炭素製型に入れ、真空中で1600〜2000Kで、γ相が生成し、かつβ相が消滅しない処理時間内で加圧焼結することを特徴とする上記の硫化ランタン焼結体の製造方法である。
【0013】
本発明の製造方法において、β相のLa2 3 粉末原料中の酸素濃度は0.7〜1.0質量%とする。このように酸素濃度範囲を規定するのは、粉末原料中の酸素濃度は、焼結体の単相化やゼーべック係数に影響を及ぼすからである。例えば、焼結温度を1973K一定とした場合、酸素濃度が0.18質量%のβ単相粉末を出発原料に用いるとγ単相の焼結体が得られ、一方、酸素濃度が0.91質量%のβ単相粉末ではγとβの混合相の焼結体が得られる。
【0014】
このような、γ相が安定な高温においてβ相のLa2 3 β相が消滅しないことは、Nd2 3 やPr2 3 の場合と同様に酸素に影響され、β相が正方晶の単位格子の中心にO2-を配位しているためと推定される。上記の酸素濃度範囲以外では、大きなゼーベック係数を得るのは困難である。
【0015】
粉末原料中の不純物炭素濃度も焼結体の単相化やゼーべック係数に影響を及ぼす。炭素不純物濃度が大きいと、炭素は焼結中に酸素と反応して気化し、酸素濃度が不足となる。粉末原料中の炭素不純物濃度は、LECO社製の同時分析装置により測定して検出されないことが望ましく、許容濃度は0.1質量%以下、より好ましくは0.08質量%以下である。
【0016】
本発明によれば、硫化ランタン焼結体のゼーベック係数の最も大きい値は19800(μV/K)、が得られる。ゼーベック係数が60℃で1000(μV/K)以上であれば、熱電材料として有用性が大きい。なお、上記の原料粉末を用いて製造した硫化ランタン焼結体であっても、その結晶構造がγ単相のものでは、333Kにおけるゼーベック係数は+392μv・deg-1であった。これは、従来の報告値(ゲ・ヴェ・サムソノフ:硫化物便覧、日・ソ通信社、1974、108)より若干増加している。また、硫化ランタン焼結体の結晶構造がβ単相のものは完全な絶縁体である。
【0017】
本発明の硫化ランタン焼結体は、高温半導体特性と大きなゼーベック係数を持ち、熱電変換材料として優れた材料である。また、硫化ランタン焼結体は、2368±30Kの高融点、優れた耐熱衝撃性と熱力学的安定性を持ち、高清浄金属溶解用耐火物としての用途や鮮やかな黄色であり、粉末はプラスチックスや塗料の顔料としての用途がある。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法において、出発原料のLa2 3 末は、La2 3 末をCS2 ガス硫化法によって製造したものを用いる。La2 3 末の粒径は70μm以下が好ましい。粒径が70μmを超える粒子が存在すると焼結性が劣化する。粒子の小さい方は、焼結性に影響しないので粒径の下限は特に限定されない。
【0019】
粉末原料中の酸素濃度は、硫化時間を一定とした場合、高温の硫化ほど酸素濃度が低下する傾向があることが知られている(前記の平井ら;「第124回日本金属学会春期大会講演概要」、1999、149)ので、硫化温度の調整により酸素濃度を調整できる。粉末原料中の酸素濃度が多い場合には焼結温度は高めとする。
【0020】
加圧焼結によりβ相およびγ相の混合相の焼結体を作製するためには、内面にh−BNを塗布して被覆した炭素製型を用いる。炭素製型の内面に塗布したh−BNは、炭素製型から炭素が不純物として焼結体に侵入するのを防ぐとともに、炭素製型から焼結体を取り外す際の離型剤としての働きがある。
【0021】
真空中、好ましくは3×10-4Pa以下の真空雰囲気中にて黒鉛製型中で1600〜2000Kまで一定の昇温速度で粉末原料を加熱し、続いて、0〜2.7ks保持して、所定の圧力、例えば、20MPa、またはそれ以下の圧力を加えながら焼結(ホットプレス)することにより緻密な焼結体を作製する。加圧焼結の際の温度条件、保持時間は、β相とγ相の混合相が形成される範囲で選択する。β相が無くならないでγ相が生成する温度領域は1600〜2000K、より好ましくは1800〜2000Kの範囲であるが、高温で長時間となるとβ相が消滅する。
【0022】
【実施例】
実施例1
純度99.99質量%、平均粒径1.77μmのLa2 3 粉末を石英ボートに乗せて電気炉中に挿入し、Ar雰囲気中で温度1073Kに加熱し、CS2 溶液中から気化させたCS2 ガスをAr搬送ガスを用いて導入し、8時間の硫化を行った。反応後の粉末は、MgOを内部標準としたX線回折法によりβ相単相であることを確認した。また、組成については、希土類金属をキレート滴定法、硫黄、炭素、酸素をLECO社製の同時分析装置により決定した。その結果それらの組成は、La2 2.830.180.02(O;0.76質量%)であった。
【0023】
このβ相のLa2 3粉末を内面をh−BNで被覆した黒鉛製型に入れ、粉末に10MPaの圧力を加えながら1973Kまで加熱し、保持することなく加熱を終了させ、焼結体を作成した。得られた焼結体は、X線回折法による構造解析からβ相とγ相の混合相であることを確認した。この焼結体を3×3×5(mm3 )に切り出して試料とし、273〜473Kにおけるゼーべック係数を測定し、60℃で19800(μV/K)の値を得た。
【0024】
実施例2
実施例1と同じ条件で作成した組成La2 2.830.180.02(O;0.76質量%)のβ相のLa2 3粉末をh−BNで内面を被覆した黒鉛製型に入れ、20MPaの圧力を加えながら1823Kまで加熱し、45分間保持して焼結体を作成した。得られた焼結体を3×3×5(mm3 )に切り出して試料とし、ゼーベック係数を測定し、60℃で7000(μV/K)の値を得た。
【0025】
実施例3
実施例1と同様のLa2 3 粉末を石英ボートに乗せて電気炉内に挿入し、Ar雰囲気中で温度1023Kに加熱し、CS2 溶液中から気化させたCS2 ガスをAr搬送ガスを用いて導入し、8時間の硫化を行った。反応後の粉末はX線回折法によりβ相単相であることを確認した。また組成については、実施例1と同じ方法で分析を行い、La2.133 0.230.01(O; 0.91質量%)の組成を得た。
【0026】
このβ相のLa2 3粉末をh−BNで内面を被覆した黒鉛製型に入れ、20MPaの圧力を加えながら1973Kまで加熱し、45分間保持して焼結体を作成した。得られた焼結体はX線回折法による構造解析からβ相とγ相の混合相であることを確認した。得られた焼結体を3×3×5(mm3 )に切り出して試料とし、ゼーベック係数を測定し、60℃で9300(μV/K)の値を得た。
【0027】
比較例1
実施例1と同じ条件で作成した組成La2 2.830.180.02(O ;0.76質量%)のβ単相のLa2 3粉末を出発試料として、h−BNで内面を被覆した黒鉛製型に入れ、20MPaの圧力を加えながら1523Kまで加熱し、45分間保持した後自然冷却し焼結体を作成した。得られた焼結体はX線回折法による構造解析からβ単相であることを確認した。焼結温度が低くγ相が生成しなかったものと推定される。この試料のゼーべック係数を測定したところ0(μV/K)であった。これは、この試料が完全な絶縁体であることの結果である。
【0028】
比較例2
実施例1と同様のLa2 3 粉末を、Ar雰囲気中で温度1173Kに加熱し、8時間の硫化を行った。その結果、それらの組成はLa2.103 0.230.06(O ;0.94質量%)であった。この粉末の炭素不純物濃度は0.18質量%であった。このβ単相のLa2 3粉末を出発試料として、h−BNで内面を被覆した黒鉛製型に入れ、20MPaの圧力を加えながら1973Kまで加熱し、45分間保持した後自然冷却し焼結体を作成した。得られた焼結体はX線回折法による構造解析からγ単相であることを確認した。粉末原料中の炭素含有量が多いと焼結処理の際に酸素と反応して気化し、結果としてγ相のみになってしまったものと推定される。この試料のゼーべック係数は392(μV/K)であった。

Claims (3)

  1. β相のLa2 3 粉末原料の焼結体であって、結晶構造が焼結により消滅しなかったβ焼結により生成したγ相との混合相からなり、ゼーベック係数が60℃で1000(μV/K)以上の値を有することを特徴とする硫化ランタン焼結体。
  2. 請求項1に記載の硫化ランタン焼結体からなることを特徴とする熱電変換材料。
  3. 酸素濃度が0.7〜1.0質量%、炭素不純物濃度が0.1質量%以下のβ相のLa2 3 粉末原料を、内面に六方晶層状型窒化ホウ素(h−BN)を被覆した炭素製型に入れ、真空中で1600〜2000Kで、γ相が生成し、かつβ相が消滅しない処理時間内で加圧焼結することを特徴とする請求項1に記載の硫化ランタン焼結体の製造方法。
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