JP7176714B2 - 電磁波吸収粉末、電磁波吸収組成物、電磁波吸収体および塗料 - Google Patents
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Description
更に、本発明は、上記電磁波吸収粉末を用いた電磁波吸収組成物、電磁波吸収体および塗料を提供することも目的とする。
[1]希土類元素、硫黄元素および酸素元素を含有し、X線回折スペクトルが希土類硫化物のピークを示す、電磁波吸収粉末。
[2]上記希土類元素が、軽希土類元素である、上記[1]に記載の電磁波吸収粉末。
[3]上記希土類元素が、ランタン、セリウムおよびプラセオジムからなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記[1]または[2]に記載の電磁波吸収粉末。
[4]少なくとも0.05~20GHzの周波数帯域において電磁波吸収特性を有する、上記[1]~[3]のいずれかに記載の電磁波吸収粉末。
[5]上記酸素元素の含有量が、0.10~2.00質量%である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の電磁波吸収粉末。
[6]平均粒径が、0.1~10μmである、上記[1]~[5]のいずれかに記載の電磁波吸収粉末。
[7]少なくとも0.05~20GHzの周波数帯域において、複素誘電率の虚数部の比誘電率が3.0以上かつ誘電正接が0.4以上である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の電磁波吸収粉末。
[8]上記[1]~[7]のいずれかに記載の電磁波吸収粉末と、バインダ樹脂と、を含有する電磁波吸収組成物。
[9]更に、鉄粉を含有する、上記[8]に記載の電磁波吸収組成物。
[10]上記鉄粉の含有量が、上記電磁波吸収粉末100質量部に対して、10~80質量部である、上記[9]に記載の電磁波吸収組成物。
[11]上記[8]~[10]のいずれかに記載の電磁波吸収組成物を用いて形成された電磁波吸収体。
[12]上記[1]~[7]のいずれかに記載の電磁波吸収粉末を含有する塗料。
更に、本発明によれば、上記電磁波吸収粉末を用いた電磁波吸収組成物、電磁波吸収体および塗料を提供することもできる。
本発明の電磁波吸収粉末(以下、単に「本発明の粉末」ともいう)は、希土類元素、硫黄元素および酸素元素を含有し、かつ、X線回折(XRD)スペクトルが希土類硫化物のピークを示す(図1および図4を参照)。
このような本発明の粉末は、例えば、図2~図3および図5~図6に示すように、少なくとも0.05~20GHzの周波数帯域において電磁波吸収特性を有する。
希土類元素は、+3価のイオンの最外殻電子配置がいずれもs2p6の閉殻構造になっており、性質が互いに酷似している。ランタノイドは、各元素は性質がよく似ているため、図7に示すように、周期表上では、ひとまとまりにして扱われる。
本発明の粉末が、酸素元素を含有することは、XRDスペクトルが希土類酸硫化物のピークを示すことにより、確認できる。
・X線:CuKα
・管電圧:40kV
・管電流:20mA
酸素元素の含有量は、HORIBA社製の酸素・窒素・水素分析装置EMGA-930を用いて測定される。
本発明の粉末が酸素元素を含有することは、このような測定によっても、確認することができる。
平均粒径は、SHIMADZU社製のレーザー回折式粒度分布測定装置SALD-2300を用いて測定される。
フッ素コーティングとしては、例えば、ポリフッ化ビニル(PVF)コーティング、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)コーティング、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)コーティングなどが挙げられる。
個々の粒子にフッ素系コーティングをする方法は、特に限定されず、従来公知の方法を、適宜採用できる。
本発明の電磁波吸収粉末を製造する方法(以下、便宜的に「本発明の製造方法」ともいう)は、例えば、以下の方法1~3が好適に挙げられる。ただし、本発明の製造方法は、以下の方法に限定されない。
パルスCVI(Chemical Vapor Infiltration)法を概略的に説明する。反応管内に、出発原料の粉末を設置して加熱しつつ、微量な酸素を不純物として含む反応ガス(例えば、アルゴン水素ガス)を導入する。反応管に設置された両極間に電圧を印加することにより、酸素にイオン化し、これを、出発原料の粉末中にドープする。出発原料としてγ-Ce2S3を用いた場合、その少なくとも一部が、β-Ce2S3に相変態する。
反応管内の減圧(真空引き)、反応管内へのガス導入、および、ガス導入後の保持を1パルスとし、これを繰り返すことにより、反応性の良い新しいガスを随時導入する。パルス数を変えることにより、生成物(粉末)のγ相、β相の相比を変更できる。
加熱温度は、例えば、1073~1473Kである。
両極間に印加する電圧は、例えば、2~8kVである。
1パルスごとの減圧時間は、例えば、1~10秒間である。
1パルスごと反応ガスの導入時間は、例えば、1~10秒間である。
1パルスごとの保持時間は、例えば、例えば、1~10秒間である。
CS2ガス硫化法は、出発原料として希土類酸化物(例えば、CeO2、La2O3、PrO2など)を用い、これを、CS2を用いて硫化する方法である。これにより、酸素を含む希土類硫化物(例えば、β相)の粉末が生成する。
硫化温度は、例えば、923~1373Kである。
硫化時間は、例えば、3.6~28.8ksである。
出発原料を、ロータリー炉を用いて、不純物として微量な酸素を含むArガス中で加熱することにより、出発原料を酸化する。出発原料としては、例えば、γ-Ce2S3を用いる。この場合、酸化によって、β-Ce2S3に相変態する加熱条件によって、生成物(粉末)のγ相、β相の相比を変更できる。
本発明の電磁波吸収組成物(以下、単に「本発明の組成物」ともいう)は、上述した本発明の粉末と、バインダ樹脂と、を含有する。
本発明の組成物におけるバインダ樹脂の含有量は、本発明の粉末100質量部に対して、20~150質量部が好ましく、30~120質量部がより好ましい。
本発明の電磁波吸収体は、上述した本発明の組成物を用いて形成された電磁波吸収体である。
本発明の電磁波吸収体を製造する方法は、特に限定されず、本発明の組成物に含まれるバインダ樹脂などに応じて、適宜選択される。
バインダ樹脂としてPMMAを用いる場合、例えば、本発明の組成物を混合し、得られた混合物を、ホットプレスを用いて加圧圧縮することにより、本発明の電磁波吸収体を得る方法が挙げられる。
バインダ樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、粉末および硬化前のエポキシ樹脂を含有する本発明の組成物を混合し、得られた混合物を加熱し硬化させることにより、本発明の電磁波吸収体を得る方法が挙げられる。
本発明の塗料は、上述した本発明の粉末を含有する。これにより、本発明の塗料(および、その塗膜)は、電磁波吸収特性を示す。
本発明の塗料は、更に、バインダ樹脂を含有していていもよい。バインダ樹脂としては、特に限定されず、本発明の組成物が含有するバインダ樹脂と同様のバインダ樹脂を使用できる。
本発明の塗料は、水溶性または油性の塗料であることが好ましい。このとき、本発明の塗料に含まれる本発明の粉末を構成する個々の粒子の表面は、両親媒性であることが好ましい。粒子の表面を両親媒性にする方法は、特に限定されず、従来公知の方法を適宜採用することができる。
〈電磁波吸収粉末の作製〉
出発原料として市販のγ-Ce2S3粉末(平均粒径:7μm)を用いて、パルスCVI法により、電磁波吸収粉末(以下、単に「粉末」ともいう)を作製した。
より詳細には、反応管内の両端にステンレス鋼製の陰極および陽極を設け、陰極の手前にγ-Ce2S3粉末を入れた多孔質アルミナ製の籠を置き、まず、両極間に電圧(4.5kV)を印加しながら反応管を1473Kに加熱した。次いで、反応管内の減圧(10秒間)、O2を不純物として含むAr-7%H2ガスの導入(2秒間)、および、その後の保持(10秒間)を1パルスとして、この操作を下記表1に示す回数(パルス数)だけ行ない、粉末を得た。
得られた粉末について、XRDスペクトルを測定した。測定結果を図1に示す。XRDスペクトルに示される相も下記表1に記載した。
得られた粉末について、酸素元素の含有量(酸素含有量)および平均粒径を測定した。測定結果を下記表1に示す。測定しなかった場合には下記表1に「-」を記載した(以下、同様)。
まず、得られた粉末およびバインダ樹脂を用いて、内径3mmおよび外径7mmのドーナツ状の試料(電磁波吸収体)を作製した。
バインダ樹脂としては、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)またはエポキシ樹脂を用いた。
PMMAとしては、ALDRICH社製のPoly(methyl methacrylate)型番4457461-500G(平均粒径:7μm)を用いた(以下、同様)。
エポキシ樹脂としては、TAAB EPON 812 キット(TAAB EPON 812、DDSA、MNA、DMP-30)を用いた(以下、同様)。
同軸管法では、同軸管の中心導体に高周波信号を加えると、内部空間に電界および磁界が発生する。同軸管の中心部に試料を入れたときの電界および磁界の変化により、反射量および透過量が測定される。入射量と反射量との差が電波吸収量(反射)を表し、反射量と透過量との差が電波吸収量(透過)を表す。
パルス数が増えるに従い、酸素含有量が増加する傾向が見られた。
〈電磁波吸収粉末の作製〉
出発原料として市販のLa2O3粉末(平均粒径:1μm)を用いて、CS2ガス硫化法により、電磁波吸収粉末(粉末)を作製した。
より詳細には、あらかじめ、La2O3粉末を、結晶水を除去するために、大気中で、673Kおよび3.6ksの条件で加熱した。その後、La2O3粉末を、石英ボートに乗せて電気炉内に挿入し、CS2溶液中から気化させたCS2ガスをArキャリアガスを用いて導入しながら、下記表2に示す条件(硫化温度および硫化時間)で硫化することにより粉末を得た。
得られた粉末について、XRDスペクトルを測定した。測定結果を図4に示す。XRDスペクトルに示される相も下記表2に記載した。
得られた粉末について、酸素元素の含有量(酸素含有量)および平均粒径を測定した。測定結果を下記表2に示す。
得られた粉末を用いて、試験例Iと同様にして、試料を作製し、0.05~20GHzの周波数帯域における電磁波吸収量を測定した。結果を図5~図6に示す。
硫化温度が低くなるに従い、および、硫化時間が短くなるに従い、酸素含有量が増える傾向が見られた。
試験例I~IIで作製した電磁波吸収粉末(粉末)を用いて、塗料を調製した。
具体的には、粉末を、硬化前のエポキシ樹脂中に、粉末:エポキシ樹脂=1:4の質量比で混合することにより、塗料を得た。
得られた塗料を、ヘラを用いてSUS430の板上に塗布し、電気炉内で加熱(温度:338K)することにより、塗膜を形成した。
Claims (11)
- 希土類元素、硫黄元素および酸素元素を含有し、
X線回折スペクトルが希土類硫化物のピークを示し、
前記酸素元素の含有量が、0.10質量%以上0.61質量%以下である、電磁波吸収粉末。 - 前記希土類元素が、軽希土類元素である、請求項1に記載の電磁波吸収粉末。
- 前記希土類元素が、ランタン、セリウムおよびプラセオジムからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載の電磁波吸収粉末。
- 少なくとも0.05~20GHzの周波数帯域において電磁波吸収特性を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の電磁波吸収粉末。
- 平均粒径が、0.1~10μmである、請求項1~4のいずれか1項に記載の電磁波吸収粉末。
- 少なくとも0.05~20GHzの周波数帯域において、複素誘電率の虚数部の比誘電率が3.0以上かつ誘電正接が0.4以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の電磁波吸収粉末。
- 請求項1~6のいずれか1項に記載の電磁波吸収粉末と、バインダ樹脂と、を含有する電磁波吸収組成物。
- 更に、鉄粉を含有する、請求項7に記載の電磁波吸収組成物。
- 前記鉄粉の含有量が、前記電磁波吸収粉末100質量部に対して、10~80質量部である、請求項8に記載の電磁波吸収組成物。
- 請求項7~9のいずれか1項に記載の電磁波吸収組成物を用いて形成された電磁波吸収体。
- 請求項1~6のいずれか1項に記載の電磁波吸収粉末を含有する塗料。
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