JP3956559B2 - アルデヒドの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機ホスファイトを配位子として含むロジウム錯体触媒を用いて、オレフィン性化合物に水素及び一酸化炭素を反応させてアルデヒドを製造する方法に関するものである。特に本発明は、ロジウム錯体触媒を循環使用するに際し触媒の活性低下を阻止する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ロジウムはヒドロホルミル化反応の触媒として広く用いられており、三価のリン化合物のような配位子で修飾することによって、ヒドロホルミル化反応の活性や選択性を向上させることができることは当業者に周知である。そのため、配位子として用いる3価のリン化合物について種々検討されている。中でも、高い反応性と選択性を示す有機ホスファイトを配位子とするヒドロホルミル化触媒について、近年多くの検討がなされている。
【0003】
例えば、特開昭57−123134には、フェニル環の特定部位に置換基を有するトリアリールホスファイトを配位子として用いる方法が開示されている。特開昭59−51228及び特開昭59−51230には、橋頭部にリン原子を含有する環式ホスファイトを配位子として用いる方法が開示されている。特表昭61−501268には、環状構造を持つジオルガノホスファイトを配位子として用いる方法が開示されている。特開昭62−116587には、2つのホスファイト基のうちの1つが環状構造を有する二座ホスファイトが、また、特開昭62−116535には、2つのホスファイト基が共に環状構造を有する二座ホスファイトが開示されている。特開平4−290551には、環状構造を有するビスホスファイトを配位子として用いる方法が開示されている。また、本出願人による特開平5−339207には、特定部位に置換基を有するビスホスファイト又はポリホスファイトを配位子として用いる方法が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、工業的に有機ホスファイトを配位子として用いるには、その安定性を改善することが望まれている。
すなわち、ロジウムは極めて高価なので、有機ホスファイトを含むロジウム錯体触媒を用いるオレフィン性化合物のヒドロホルミル化反応においては、反応生成液からロジウム錯体触媒を回収して循環使用するのが望ましい。しかし常法により反応生成液を蒸留して生成したアルデヒドを留出させ、ロジウム錯体触媒を含む反応媒体を蒸留塔の塔底から回収して触媒液として反応帯域に循環していると、触媒活性が漸次低下して行く。その原因の一つはロジウム錯体触媒を構成している有機ホスファイトが分解し、分解生成物が触媒を被毒したり有機ホスファイトの更なる分解を引起すためである。
【0005】
本発明者らは、ヒドロホルミル化反応においてロジウム錯体触媒を循環使用することに伴う触媒活性の低下について検討した結果、有機ホスファイトが分解して有機ホスホネートが生成し、これが触媒を被毒し、かつ有機ホスファイトの更なる分解を促進する化合物の前駆体となることを見出した。そして、この有機ホスホネートによる触媒の被毒は、ヒドロホルミル化反応の反応生成液を蒸留してアルデヒドを留去し、ロジウム錯体触媒を含む触媒液を回収して反応帯域に循環する分離工程及び循環工程で、より起り易いことを見い出した。すなわちヒドロホルミル化反応帯域のように大量の一酸化炭素及び水素が存在する場合には、有機ホスホネートはこれらと競争してロジウムに配位しなければならないので、ロジウム錯体触媒を被毒する程度は比較的軽微であるが、分離工程及び循環工程では一酸化炭素及び水素が存在しないので、有機ホスホネートは容易にロジウムに配位して触媒活性を喪失させるものと考えられる。
【0006】
本発明者らは分離工程及び循環工程における有機ホスホネートによるロジウム錯体触媒の被毒を軽減させる方法について検討した結果、分離工程において触媒液中にアルデヒドが残存するようにアルデヒドの分離を行うことにより、触媒の被毒を軽減させ得ることを見出した。これは触媒中のアルデヒドが有機ホスホネートと反応して有機ホスホネートを触媒被毒性の低い化合物に変換することによるものと考えられる。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記のような知見に基いて達成されたもので、本発明によれば、反応帯域において少くともロジウムと有機ホスファイトから成るロジウム錯体触媒の存在下にオレフィン性化合物と一酸化炭素及び水素とを反応させてアルデヒドを生成させる反応工程、反応帯域から取出した反応生成液からアルデヒドを分離してロジウム錯体触媒を含む触媒液を取得する分離工程、及び得られた触媒液を反応帯域に循環する循環工程の各工程を含むアルデヒドの製造方法において、触媒液中のアルデヒド濃度が3.0重量%以上となるように反応生成液からのアルデヒドの分離を行うことにより、触媒活性の低下を抑制することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明について詳細に説明すると、本発明におけるヒドロホルミル化反応そのものは、有機ホスファイトを配位子とするロジウム錯体触媒を用いる通常のヒドロホルミル化反応方法に従って行うことができる。
反応に用いるロジウム錯体触媒は、公知のロジウム−有機ホスファイト錯体触媒の調製法に従って調製することができる。ロジウム錯体触媒は予じめ調製して反応に用いてもよく、また反応系内でロジウム化合物と有機ホスファイトとから生成させてもよい。触媒調製に用いるロジウム化合物としては、例えば、塩化ロジウム、硝酸ロジウム、酢酸ロジウム、ギ酸ロジウム、塩化ロジウム酸ナトリウム、塩化ロジウム酸カリウムのようなロジウムの無機又は有機酸塩、アルミナ、シリカ、活性炭などの担体に担持されたロジウム金属、ロジウムジカルボニルアセチルアセトナート、ロジウム(1,5−シクロオクタジエン)アセチルアセトナートのようなロジウムのキレート性化合物、テトラロジウムドデカカルボニル、ヘキサロジウムヘキサデカカルボニル、μ,μ′−ジクロロロジウムテトラカルボニル、[Rh(OAc)(COD)]2 (CODは1,5−シクロオクタジエンを表わす。)、[Rh(μ−S−t−Bu)(CO)2 ]2 のようなロジウムのカルボニル錯化合物が挙げられる。
【0009】
配位子の有機ホスファイトとしては、トリアリールホスファイト、トリアルキルホスファイト、アルキルアリールホスファイトなど、任意の有機ホスファイトを用いることができる。また、これらのホスファト構造を同一分子内に複数個有する、ビスホスファイト、トリスホスファイトなどのポリホスファイトも用いることができる。
これらの有機ホスファイトのうち、モノホスファイトは、リン原子を含む環状構造を有していないものと、このような構造を有するものとに大別することができる。前者は下記の一般式(1)で表される。
【0010】
【化6】
P(OR1 )(OR2 )(OR3 ) ・・・(1)
【0011】
式中、R1 〜R3 は、それぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基など炭素数1〜30の炭化水素基又は炭素数5〜30のヘテロ芳香族炭化水素基を表し、これらにはヒドロホルミル化反応を阻害しない置換基が結合していてもよい。このような置換基としてはハロゲン原子や、炭素原子1〜20個を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基などが挙げられる。
【0012】
一般式(1)で表される有機ホスファイトのうちではR1 〜R3 のうちの少くとも1つが、下記一般式(2)で表される置換アリール基であるのが好ましい。
【0013】
【化7】
【0014】
式中、R4 はヒドロホルミル化反応を阻害しない置換基を有していてもよいアリール基を表すか、又は−CR9 R10R11を表す。ここでR9 〜R11は、それぞれ独立して、水素原子又はフッ素化されていてもよい炭化水素基を示す。R4 としては、イソプロピル基やt−ブチル基のような、1−位に分岐を有していて、立体障害の大きいものが好ましい。R5 〜R8 は、それぞれ独立して、水素原子又はヒドロホルミル化反応を阻害しない有機基を表す。なおR5 〜R8 のうちの隣接するものが互いに結合して縮合芳香環又は縮合複素環を形成していてもよい。
【0015】
このような有機ホスファイトのいくつかを例示すると、ジフェニル(2,4−ジタ−シャリ−ブチルフェニル)ホスファイト、ジフェニル(2−イソプロピルフェニル)ホスファイト、ビス(2−タ−シャリ−ブチル−4−メチルフェニル)フェニルホスファイト、ジフェニル(3,6−ジタ−シャリ−ブチル−2−ナフチル)ホスファイト、ビス(2−ナフチル)(3,6−ジタ−シャリ−ブチル−2−ナフチル)ホスファイト、ビス(3,6,8−トリタ−シャリ−ブチル−2−ナフチル)フェニルホスファイト、ビス(3,6,8−トリタ−シャリ−ブチル−2−ナフチル)(2−ナフチル)ホスファイト等が挙げられる。
【0016】
一般式(1)で表される有機ホスファイトとして特に好ましいのは、R1 〜R3 のすべてが一般式(2)で表される置換アリール基であるものである。このような有機ホスファイトのいくつかを例示すると、トリス(2,4−ジタ−シャリ−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−タ−シャリ−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−タ−シャリ−ブチル−4−メトキシフェニル)ホスファイト、トリス(o−フェニルフェニル)ホスファイト、トリス(o−メチルフェニル)ホスファイト、ビス(3,6−ジタ−シャリ−ブチル−2−ナフチル)(2,4−ジタ−シャリ−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(3,6−ジタ−シャリ−ブチル−2−ナフチル)(2−タ−シャリ−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(3,6−ジタ−シャリ−ブチル−2−ナフチル)ホスファイト、トリス(3,6−ジタ−シャリ−アミル−2−ナフチル)ホスファイト等が挙げられる。
モノホスファイトのうちリン原子を含む環状構造を有するものは、下記の一般式(3)で表される。
【0017】
【化8】
【0018】
式中、Zは炭素鎖中にヘテロ原子を含んでいてもよく、かつヒドロホルミル化反応を阻害しない置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表し、Yはヒドロホルミル化反応を阻害しない置換基を有していてもよい炭化水素基又はヘテロ芳香族炭化水素基を表す。
一般式(3)において、Yは前述の一般式(2)で表される置換アリール基であるのが好ましい。またZは、炭素鎖中に酸素、窒素又は硫黄原子のようなヘテロ原子を含んでいてもよいアルキレン基、アリーレン基又は両者の混成基であるのが好ましい。このような2価の炭化水素基としては、アルキレン基、アルキレンオキシアルキレン基、窒素原子にアルキル基が結合していてもよいアルキレンアミノアルキレン基、アルキレンチオアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、ビアリーレン基、アルキレンアリーレン基、アリーレンアルキレンアリーレン基、アリーレンオキシアリーレン基、アリーレンオキシアルキレン基、アリーレンチオアリーレン基、アリーレンチオアルキレン基、又は窒素原子にアルキル基が結合していてもよいアリーレンアミノアリーレン基もしくはアリーレンアミノアルキレン基などが挙げられる。
一般式(3)で表される有機ホスファイトの好ましい1例は、下記の一般式(4)で表されるものである。
【0019】
【化9】
【0020】
式中、R12及びR13は、それぞれ独立して、水素原子又はヒドロホルミル化反応を阻害しない置換基を有していてもよいアルキル基、シクロアルキル基もしくはアリール基を表し、nは0ないし4の整数を表わす。Yは一般式(3)におけると同義であり、好ましくは前述の一般式(2)で表される置換アリール基を表す。
一般式(4)において、R12及びR13の代表的なものとしては、メチル基、エチル基、フェニル基、トリル基、ベンジル基、ナフチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、トリフルオロメチル基などが挙げられる。
一般式(3)で表される有機ホスファイトの好ましい他の1例は、下記の一般式(5)で表されるものである。
【0021】
【化10】
【0022】
式中、R14はアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、又はヒドロホルミル化反応を阻害しない置換基を有していてもよいアリール基であり、その結合基はo−、m−、p−位のいずれであってもよい。またR14は、その結合しているベンゼン環と縮合して、ナフタレン環などの縮合芳香環を形成していてもよい。Yは一般式(3)におけると同義であり、好ましくは前述の一般式(2)で表される置換アリール基を表す。
一般式(3)で表される有機ホスファイトの好ましい他の別の1例は、下記の一般式(6)で表されるものである。
【0023】
【化11】
【0024】
式中、Arはヒドロホルミル化反応を阻害しない置換基を有していてもよいアリール基であり、互いに異なっていてもよい。Qは−CR15R16−、−O−、−S−、−NR17−、−SiR18R19−、−CO−などの2価の架橋基である。これらの架橋基において、R15及びR16は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、トリル基又はアニシル基を表し、R17〜R19は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。nは、それぞれ独立して、0又は1を表す。Yは一般式(3)におけると同義である。Yの好ましい例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、t−ヘキシル基、シクロヘキシル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、オクタデシル基などの炭素数1〜20のアルキル基やシクロアルキル基、及びヒドロホルミル化反応を阻害しない置換基を有していてもよいフェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基などのアリール基が挙げられる。アリール基の置換基としては、炭素数1〜20のアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノ基などやハロゲン原子が挙げられる。一般式(6)の有機ホスファイトのうちでも特に好ましいのは、下記の一般式(7)又は(8)で表されるものである。
【0025】
【化12】
【0026】
これらの式において、Q、Y及びnは前記(6)式と同一であり、R20〜R25は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基もしくはアルコキシカルボニル基、又はハロゲン原子を表す。
上記したリン原子を含む環状構造を有する有機ホスファイトのいくつかを下記の表−1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
本発明で配位子として用いる、分子内に2個以上のホスファイト構造を有するポリホスファイトは、下記の一般式(9)で表される。
【0030】
【化13】
【0031】
式中、Zは(3)式におけると同義であり、R26及びR27は、それぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などの炭素数1〜30の炭化水素基又は炭素数5〜30のヘテロ芳香族炭化水素基を表し、これらにはヒドロホルミル化反応を阻害しない置換基が結合していてもよい。このような置換基としては、ハロゲン原子や炭素原子1〜20個を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基などが挙げられる。
【0032】
R26及びR27の具体例をいくつか例示すると、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、t−ヘキシル基等の炭素数1〜20個の直鎖又は分岐のアルキル基;シクロプロピル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、アダマンチル基のような炭素数3〜20個のシクロアルキル基;フェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、メトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基、シアノフェニル基、ニトロフェニル基、クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ジメチルフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、メチルナフチル基、メトキシナフチル基、クロロナフチル基、ニトロナフチル基、テトラヒドロナフチル基等の置換基を有していてもよいアリール基;ベンジル基等のアラルキル基;ピリジル基、メチルピリジル基、ニトロピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、ベンゾフリル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンズイミダゾリル基、インドリル基等のヘテロ芳香族基等が挙げられる。
【0033】
Wは炭素鎖中に酸素、窒素、硫黄原子のようなヘテロ原子を含んでいてもよく、かつヒドロホルミル化反応を阻害しない置換基を有していてもよい(m1 +m2)価の炭化水素基を表す。m1 及びm2 は、それぞれ0〜6の数を表し、m1 +m2 は2〜6の整数を表す。なお、m1 又はm2 が2以上の数を表す場合には、複数のZ、R26及びR27はそれぞれ異っていてもよい。
【0034】
好ましくはZは前記した(4)〜(8)式で表されるものであり、R26及びR27はヒドロホルミル化反応を阻害しない置換基で置換されていてもよいアリール基である。このようなアリール基のいくつかを例示すると、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2,4−ジメトキシフェニル基、2,5−ジメトキシフェニル基、2,6−ジメトキシフェニル基、α−ナフチル基、3−メチル−α−ナフチル基、3,6−ジメチル−α−ナフチル基、β−ナフチル基、1−メチル−β−ナフチル基、3−メチル−β−ナフチル基等が挙げられる。
【0035】
Wは好ましくはアルキレン基、又は一般式(6)における−Ar−(CH2 )n−(Q)n −(CH2 )n −Ar−で表される2価の基である。このような2価基の例としては1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、1,3−ジメチル−1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基、1,5−ペンチレン、1,6−ヘキシレン基、1,8−オクチレン基、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、2,3−ナフチレン基、1,8−ナフチレン基、1,1′−ビフェニル−2,2′−ジイル基、1,1′−ビナフチル−7,7′−ジイル基、1,1′−ビナフチル−2,2′−ジイル基、2,2′−ビナフチル−1,1′−ジイル基、2,2′−ビナフチル−3,3′−ジイル基等が挙げられる。
【0036】
一般式(9)で表されるポリオルガノホスファイトのより好ましい例は、Zが一般式(6)における−Ar−(CH2 )n −Qn −(CH2 )n −Ar−で表される2価の基であり、m1 が少くとも1であり、かつWが下記の一般式(10)で表されるものである。
【0037】
【化14】
【0038】
式中、Q及びnは一般式(6)におけると同義であり、R32及びR33は、それぞれ独立して、炭素数1〜12個のアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シリル基若しくはシロキシ基、又はハロゲン原子若しくは水素原子を表す。そのいくつかを例示すると、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。また、R28〜R31は、それぞれ独立して、炭素数1〜20個のアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シリル基若しくはシロキシ基、又はハロゲン原子若しくは水素原子であり、それらの例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、2,2−ジメチルブチル基、ノニル基、デシル基、メトキシ基、エトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。また、R30とR32又はR31とR33とが互いに結合して、1,1′−ビナフチル−2,2′−ジイル基などのような、縮合環を形成していてもよい。
【0039】
一般式(10)において、R28及びR29は好ましくは炭素数3〜20個の1−位で分岐したアルキル基である。またR30及びR31は、炭素数1〜20個のアルキル基若しくはアルコキシ基であるか、又はR30とR32、R31とR33とが結合してアルキル基若しくはアルコキシ基を置換基として有していてもよいナフタレン環の一部を形成しているのが好ましい。一般式(10)で表されるWのいくつかを例示すると、3,3′−ジ−t−ブチル−1,1′−ビナフチル−2,2′−ジイル基、3,3′,6,6′−テトラ−t−ブチル−1,1′−ビナフチル−2,2′−ジイル基、3,3′−ジ−t−ブチル−6,6′−ジ−t−ブトキシ−1,1′−ビナフチル−2,2′−ジイル基、3,3′−ジ−t−ペンチル−1,1−ビナフチル−2,2′−ジイル基、3,3′,6,6′−テトラ−t−ペンチル−1,1′−ビナフチル−2,2′−ジイル基、3,3′−ジ−t−ブチル−5,5′−ジメチル−1,1′−ビフェニル−2,2′−ジイル基、3,3′,5,5′−テトラ−t−ブチル−1,1′−ビフェニル−2,2′−ジイル基、3,3′,5,5′−テトラ−t−ペンチル−1,1′−ビフェニル−2,2′−ジイル基、3,3′−ジ−t−ブチル−5,5′−ジメトキシ−1,1′−ビフェニル−2,2′−ジイル基、3,3′−ジ−t−ブチル−5,5′,6,6′−テトラメチル−1,1′−ビフェニル−2,2′−ジイル基、3,3′,5,5′−テトラ−t−ブチル−6,6′−ジメチル−1,1′−ビフェニル−2,2′−ジイル基、3,3′,5,5′−テトラ−t−ペンチル−6,6′−ジメチル−1,1′−ビフェニル−2,2′−ジイル基、3,3′−ジ−t−ブチル−5,5′−ジメトキシ−6,6′−ジメチル−1,1′−ビフェニル−2,2′−ジイル基、3,3′,5,5′−テトラ−t−ブチル−6,6′−ジクロロ−1,1′−ビフェニル−2,2′−ジイル基等が挙げられる。
【0040】
一般式(10)で表されるWのうちで最も好ましいものの一つは、R32及びR33が、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等の、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子であるものである。このようなWの例としては、3,3′−ジ−t−ブチル−5,5′,6,6′−テトラメチル−1,1′−ビフェニル−2,2′−ジイル基、3,3′,5,5′−テトラ−t−ブチル−6,6′−ジメチル−1,1′−ビフェニル−2,2′−ジイル基、3,3′,5,5′−テトラ−t−ブチル−6,6′−ジエチル−1,1′−ビフェニル−2,2′−ジイル基、3,3′,5,5′−テトラ−t−ブチル−6,6′−ジメトキシ−1,1′−ビフェニル−2,2′−ジイル基、3,3′−ジ−t−ブチル−5,5′−ジメトキシ−6,6′−ジクロロ−1,1′−ビフェニル−2,2′−ジイル基、3,3′,5,5′−テトラ−t−ブチル−6,6′−ジフルオロ−1,1′−ビフェニル−2,2′−ジイル基等が挙げられる。
一般式(9)で表されるポリホスファイトのいくつかを表−2に例示する。
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】
【表5】
【0044】
【表6】
【0045】
【表7】
【0046】
【表8】
【0047】
【表9】
【0048】
【表10】
【0049】
【表11】
【0050】
【表12】
【0051】
【表13】
【0052】
【表14】
【0053】
【表15】
【0054】
【表16】
【0055】
【表17】
【0056】
【表18】
【0057】
【表19】
【0058】
【表20】
【0059】
【表21】
【0060】
【表22】
【0061】
【表23】
【0062】
ヒドロホルミル化反応は原料のオレフィン性化合物そのものを主要な溶媒として行うこともできるが、通常は反応に不活性な溶媒を用いるのが好ましい。このような溶媒としては、トルエン、キシレン、ドデシルベンゼン等の芳香族炭化水素、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、ジ−n−オクチルフタレート等のエステル類、及び、アルデヒド縮合体等のヒドロホルミル化反応時に副生する高沸点成分混合物等、更には反応生成物であるアルデヒド自体が挙げられる。なかでも、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素もしくは反応で副生する高沸点成分混合物、又はこれらを併用するのが好ましい。
【0063】
反応帯域におけるロジウム錯体触媒の濃度は、液相1リットル中にロジウム金属として通常0.05〜5000mgである。0.5〜1000mg、特に10〜500mgであるのが好ましい。有機ホスファイトはロジウムに対し通常約0.1〜500倍モルとなるように用いられる。ロジウムに対し0.1〜100倍モル、特に1〜30倍モルとなるように用いるのが好ましい。なお有機ホスファイトはいくつかの種類を混合して用いてもよい。
【0064】
原料のオレフィン性化合物としては、分子内にオレフィン性二重結合を少くとも1個有するものであれば、任意のものを用いることができる。オレフィン性二重結合は、分子鎖の末端にあっても内部にあってもよい。また分子を構成する炭素鎖は直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよい。また分子中には反応に実質上ヒドロホルミル化反応に不活性なカルボニル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子などを含有していてもよい。オレフィン性不飽和化合物の代表的なものは、α−オレフィン、内部オレフィン、アルケン酸アルキル、アルカン酸アルケニル、アルケニルアルキルエーテル、アルケノールなどである。オレフィン性不飽和化合物のいくつかを例示すると、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、ペンテン、ヘキセン、ヘキサジエン、オクテン、オクタジエン、ノネン、デセン、ヘキサデセン、オクタデセン、エイコセン、ドコセン、スチレン、α−メチルスチレン、シクロヘキセン、および、プロピレン〜ブテン混合物、1−ブテン〜2−ブテン〜イソブチレン混合物、1−ブテン〜2−ブテン〜イソブチレン〜ブタジエン混合物等の低級オレフィン混合物、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン等の低級オレフィンの二量体〜四量体のようなオレフィンオリゴマー異性体混合物等のオレフィン類、3−フェニル−1−プロペン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、3−シクロヘキシル−1−ブテン等の炭化水素オレフィン、アクリロニトリル、アリルアルコール、1−ヒドロキシ−2,7−オクタジエン、3−ヒドロキシ−1,7−オクタジエン、オレイルアルコール、1−メトキシ−2,7−オクタジエン、アクリル酸メチル、メタアクリル酸メチル、オレイン酸メチル、オクタ−1−エン−4−オール、酢酸ビニル、酢酸アリル、酢酸3−ブテニル、プロピオン酸アリル、ビニルエチルエーテル、ビニルメチルエーテル、アリルエチルエーテル、n−プロピル−7−オクテノエート、3−ブテンニトリル、5−ヘキセンアミド等の極性基置換オレフィン類等が挙げられる。好ましくは、分子内にオレフィン性二重結合を1つだけ有するモノオレフィン系不飽和化合物が用いられる。特に好ましいのは炭素数2から20のオレフィン、なかでもプロピレン、又は、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、及びその混合物、1−オクテン、混合オクテンである。
【0065】
ヒドロホルミル化反応の反応温度は通常15〜150℃であるが、30〜130℃、特に50〜110℃の範囲が好ましい。反応圧力は通常の常圧〜200kg/cm2 Gであるが、1〜100kg/cm2 G、特に3〜50kg/cm2 Gが好ましい。反応帯域に供給するオキソガスの水素と一酸化炭素とのモル比(H2 /CO)は通常10/1〜1/10であるが、1/1〜6/1の範囲が好ましい。
【0066】
反応は連続方式及び回分方式のいずれでも行い得るが、通常は連続方式で行われる。すなわち反応帯域に触媒を含む反応溶媒、原料のオレフィン性化合物及びオキソガスを連続的に供給し、反応帯域から生成したアルデヒドを含む反応生成液を連続的に抜出し、これから少くとも生成したアルデヒドを分離したのち残存する触媒を含む反応溶媒を触媒液として反応帯域に連続的に循環する。生成アルデヒドの分離は任意の方法で行えばよいが、通常は蒸留により行われる。反応生成液からのアルデヒドの分離を蒸留により行う場合には、一般にロジウム錯体触媒が失活しやすい。特に本発明のように有機ホスファイトを配位子とするロジウム錯体触媒は活性が高いので、ヒドロホルミル化反応は前述のように比較的低温で行われることが多く、反応生成液からアルデヒドを蒸留分離する蒸留温度の方が高温となる場合があり、この場合にはロジウム錯体触媒の失活は、主としてこの蒸留工程で生起しているものと考えられる。
【0067】
従って蒸留は150℃以下、特に130℃以下で行うのが好ましい。50〜120℃で蒸留するのが最も好ましい。アルデヒドの沸点が高い場合には減圧蒸留するのが好ましい。
蒸留に際しロジウム錯体触媒が失活する主な原因の一つは、前述の如く蒸留系内にはロジウムに配位しやすい一酸化炭素や水素が存在しないのでロジウム錯体が配位不飽和な状態となり、有機ホスファイトから生成した有機ホスホネートがこれと結合してロジウムの触媒活性を喪失させるものと考えられる。その機構の詳細は不明であるが、有機ホスホネートのP−H結合がロジウム金属に酸化的付加をするか、又は有機ホスホネートの互変異性体として存在する3価のリン化合物である亜リン酸ジエステルがロジウム金属に配位するのではないかと考えられる。
【0068】
有機ホスホネートがロジウム錯体触媒を被毒する傾向は、有機ホスホネートの構造により異なるようであり、立体障害の大きい有機ホスホネートは概して被毒する作用が小さいようである。従って、例えば一般式(3)で表される有機ホスファイトから生成する一般式(11)で表される有機ホスホネートや、一般式(9)で表される有機ホスファイトから生成する一般式(12)で表される有機ホスホネートにおいて、リン原子と結合する酸素原子が結合している炭素に隣接する炭素上に置換基を有する有機ホスホネートは、被毒効果が小さいと考えられる。
【0069】
【化15】
【0070】
有機ホスファイトから有機ホスホネートが生成する機構は加水分解であると考えられる。すなわち有機ホスファイトの置換基の一つが加水分解により失われると亜リン酸ジエステルが生成し、これが互変異性により有機ホスホネートとなる。従って一般式(3)で表される有機ホスファイトからは一般式(11)で表される有機ホスホネートが生成する。一般式(12)で表される有機ホスホネートは一般式(9)で表される有機ホスファイトの単純な加水分解では生成しないが、P−O結合の切断及び再結合を経て、このような有機ホスホネートも生成するものと考えられる。もちろん一般式(9)で表される有機ホスファイトからは、一般式(12)で表されるもの以外に、次のような有機ホスホネートも生成する。
【0071】
【化16】
【0072】
また、一般式(9)の有機ホスファイトからは、次のような有機ホスホネートも生成すると考えられる。
【0073】
【化17】
【0074】
本発明では、分離工程で反応生成液からロジウム錯体触媒を含む溶液、すなわち触媒液を回収するに際し、触媒液中にアルデヒドを存在させる。アルデヒドは有機ホスホネートと反応してこれをヒドロキシアルキルホスホン酸に変化させるが、これは有機ホスホネートに比してロジウム触媒を被毒する程度が小さい。その理由は詳らかでないが、ヒドロキシアルキルホスホン酸は互変異性により3価の構造をとり得ないこと、及びP−H結合をもたないのでロジウム金属と酸化的付加による結合を形成し得ないことからして、基本的にロジウムと結合し得ないため被毒性が小さいものと考えられる。
【0075】
アルデヒドは触媒液中の有機ホスホネートに対して当モル以上存在させればよいが、通常は触媒液中に0.5重量%以上存在させ、99重量%以下とするのがよい。ここで、触媒液とは、反応生成液から生成物を取り出した後の、触媒と溶媒を含む溶液を指す。有機ホスホネートとアルデヒドとの反応を促進して有機ホスホネートをすみやかに消失させるためには触媒液中のアルデヒド濃度が高い方が好ましく、触媒液中に1重量%以上、特に3重量%以上存在させるのが好ましい。また、反応溶媒を生成アルデヒドとする場合には、触媒液中のアルデヒド濃度が高くなってもよいが、その場合、反応帯域に持込まれるアルデヒドが増加するので、アルドール縮合などの副反応を考慮すると、触媒液中のアルデヒド濃度は70重量%以下、更には50重量%以下、特に25重量%以下とするのが好ましい。
【0076】
本発明の好ましい態様の一つでは、撹拌槽型反応槽又は気泡塔型反応槽にオレフィン性化合物、オキソガス及び触媒液を連続的に供給してアルデヒドを生成させる。反応槽からは反応生成液を気液混相流で連続的に抜出し、気液分離器に導入して未反応のオキソガス及び場合によっては未反応のオレフィン性化合物からなる気相と、反応生成液からなる液相とに分離する。気相は加圧して反応槽に循環する。この循環に際しては、不純物の蓄積を防ぐため、ガスの一部を系外に排出するのが好ましい。液相は蒸留塔で蒸留して塔頂からアルデヒドを留出させ、塔底からロジウム錯体触媒と所定濃度のアルデヒドを含む触媒液を回収して反応槽に循環する。なおこの循環に際しては、アルドール縮合生成物などの蓄積を防止するため、触媒液の一部を系外に排出したり、抽出、晶析その他の手段により触媒液を精製するのが好ましい。これらの操作により失われたロジウム及び有機ホスファイトは新たに補給して、系内のロジウム及び有機ホスファイトの量はほぼ一定に維持する。
【0077】
本発明によれば長期間、通常は少なくとも1ヶ月間は触媒を更新することなく、反応を実施することができる。経済的見地からして触媒はできるだけ長期間に亘り使用するのが好ましいが、本発明によれば6ヶ月間以上の長期間に亘って触媒を連続使用することができ、所望ならば1年間以上の連続使用も可能である。本発明の方法により得られたアルデヒド類は、公知の方法、例えばUSP5550302やUSP5667644に従って、そのまま水添反応に供するか、又は二量化した後に水添反応に供することにより、ノルマルブタノール、2−エチルヘキサノール、ノニルアルコール等の可塑剤用に好適なアルコールを製造することが可能となる。
【0078】
【実施例】
以下に実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0079】
参考例1 ホスホネート(I)の合成
三塩化リン4.22g(30.7mmol)を溶解した約300mLのトルエン溶液に、3,3′,5,5′−テトラ−t−ブチル−6,6′−ジメチル−2,2′−ヒドロキシビフェニル12.37g(28.2mmol)及びトリエチルアミン9.62g(95.1mmol)を溶解したトルエン溶液約250mLを、窒素雰囲気下、0℃で1.5時間かけて撹拌しつつ滴下した。次いで70℃に昇温して1時間撹拌したのち室温まで冷却し、濾過して析出しているトリエチルアミン塩酸塩を除去した。濾液に水100mLを添加し、70℃に昇温して1時間撹拌した。分液してトルエン相を取得し、これを水で3回、引続いて飽和食塩水で3回洗浄した。無水硫酸マグネシウムで処理して脱水したのち溶媒を留去した。残渣に少量のトルエンと約50mLのアセトニトリルを加え、懸濁状態で撹拌したのち濾過した。得られた固体を減圧乾燥して、下記式で表される0,0′−3,3′,5,5′−テトラ−t−ブチル−6,6′−ジメチル−2,2′−ジイルホスホネート7.15g(収率52%)を得た。これをホスホネート(I)とする。
【0080】
【化18】
【0081】
参考例2 ロジウム−ホスホネート錯体の合成
J.Chem.Soc.,Dalton Trans.4357(1996)に記載のFaraoneらの方法に従って上記の錯体を合成した。
ロジウムジカルボニルアセチルアセトナト錯体532.5mg(2.06mmol)と、ホスホネート(I)2.00g(4.13mmol)を、乾燥トルエン250mLに溶解した。窒素雰囲気下、室温で25時間撹拌したのち、トルエンを減圧下に留去した。残渣をヘキサン100mLに溶解したのち、濾過して不溶物を除去した、濾液を減圧下に留去したのち、残渣にアセトニトリルを加え、懸濁状態として撹拌した。濾過して黄色粉末状の固体を取得した。このものは下記の構造を有すると推定される。
【0082】
【化19】
【0083】
31P−NMRによる分析の結果、主たる生成物の純度は82%であり、他に構造不明のホスホネート錯体が生成していた。主生成物のスペクトルデータは次の通りであった。
31P−NMR(162MHz,CDCl3 );δ111.2d J=197Hz(燐酸トリフェニル基準のケミカルシフト値)
1H−NMR(400MHz,CDCl3 ,23℃);δ1.39(18H,s),1.40(18H,s),1.44(18H,s)1.51(18H,s),1.94(6H,s),2.03(6H,s),7.40(2H,s),7.42(2H,s)
IR(CDCl3 )2098 2057cm-1
【0084】
実施例1
内容積100mLのステンレス製オートクレーブに、上記で合成したロジウム−ホスホネート錯体273.8mg、下記の有機ホスファイト1.0408g、トルエン25mL及びn−ブチルアルデヒド25mLを窒素雰囲気下で仕込んだ。仕込液中のロジウム濃度は500mg/L、ロジウムに対する有機ホスファイトのモル比は4、ロジウムに対する有機ホスホネートのモル比は2、アルデヒド濃度は48重量%である。オートクレーブを密閉し、撹拌しながら加熱して90℃とした。この温度で所定時間保持したときの反応液の31P−NMRによる分析結果を下記に示す。31P−NMRでは、ホスホネート錯体、ホスホネート及びホスホン酸はそれぞれ別のところにジグナルが出るので、積分比によりこれらの定量を行うことができる。
【0085】
【表24】
【0086】
【化20】
【0087】
実施例2
実施例1において、トルエンの仕込量を49.5mLとし、かつ、n−ブチルアルデヒドを0.56mL仕込んだ以外は、実施例1と同様にして反応を行わせた。この時、仕込み液中のアルデヒド濃度は1重量%である。結果を下記に示す。
【0088】
【表25】
【0089】
比較例1
実施例1において、窒素ガスをオキソガス(水素:一酸化炭素=1:1(モル比)の混合ガス)で置換し、5kg/cm2 Gの圧力下に90℃に保持した以外は、実施例1と同様にして反応を行わせた。結果を下記に示す。
【0090】
【表26】
【0091】
比較例2
実施例1において、トルエンの仕込量を50mLとし、かつn−ブチルアルデヒドを仕込まなかった以外は、実施例1と同様にして反応を行わせた。結果を下記に示す。
【0092】
【表27】
【0093】
比較例3
実施例1において、トルエンの仕込量を50mLとしてn−ブチルアルデヒドを仕込まず、かつ窒素ガスをオキソガス(水素=一酸化炭素=1:1(モル比)の混合ガス)で置換し、5kg/cm2 Gの圧力下に90℃に保持した以外は、実施例1と同様にして反応を行わせた。結果を下記に示す。
【0094】
【表28】
【0095】
参考例3
内容積200mLの上下撹拌式オートクレーブに窒素雰囲気下でジ−μ−アセタト−ビス(1,5−シクロオクタジエン)二ロジウム錯体(〔Rh(C8 H12)(μ−CH3 CO2 )〕2 )19.7mg(0.036mmol)、実施例1で用いたのと同じ有機ホスファイト312.5mg(0.292mmol)、及び参考例1で合成したホスホネート(I)141.6mg(ロジウムに対するリンのモル比=8)をトルエン60mLに溶解して仕込んだ。次いでこれにプロピレン4.53gを仕込み、オートクレーブを70℃に昇温した。水素:一酸化炭素=1:1(モル比)の混合ガスを9.3kg/cm2 Gまで圧入し、この温度、圧力でヒドロホルミル化反応を行わせた。反応中は蓄圧器から水素:一酸化炭素=1:1のガスを補給して圧力を一定に保った。3時間後にガスの吸収が認められなくなったので、オートクレーブを室温まで冷却し、オートクレーブ内のガス及び液をガスクロマトグラフィーにより分析した。その結果、プロピレンの転化率は98.0%、生成したブチルアルデヒドのイソ体に対するノルマル体の比(n/i比)は73.5であった。また、ガスの吸収量から算出したプロピレンの半減期は17.7分であった。
【0096】
参考例4
参考例3において、ホスホネート(I)の代りにホスホネート(I)とブチルアルデヒドとの反応生成物である下記のヒドロキシブチルホスホン酸エステルを324.8mg(ロジウムに対するリンのモル比=8)用いた以外は、参考例3と同様にしてヒドロホルミル化反応を行った。その結果、2.8時間でガスの吸収が認められなくなった。反応成績はプロピレン転化率98.1%、生成したブチルアルデヒドのn/i比=72.1であった。またプロピレンの半減期は14.8分であり、参考例3の結果と比較すると、ホスホネートにアルデヒドを反応させると触媒被毒作用が低下する傾向があることが示された。
【0097】
【化21】
Claims (11)
- 反応帯域において少くともロジウムと有機ホスファイトから成るロジウム錯体触媒の存在下にオレフィン性化合物と一酸化炭素及び水素とを反応させてアルデヒドを生成させる反応工程、反応帯域から取出した反応生成液からアルデヒドを分離してロジウム錯体触媒を含む触媒液を取得する分離工程、及び得られた触媒液を反応帯域に循環する循環工程の各工程を含むアルデヒドの製造方法において、触媒液中のアルデヒド濃度が3.0重量%以上となるように反応混合液からのアルデヒドの分離を行うことを特徴とする方法。
- 触媒液中のアルデヒド濃度が3.0〜70重量%となるように反応生成液からのアルデヒドの分離を行うことを特徴とする請求項1記載の方法。
- 触媒液中のアルデヒド濃度が3.0〜25重量%となるように反応生成液からのアルデヒドの分離を行うことを特徴とする請求項1記載の方法。
- アルデヒドの分離を50〜120℃で行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
- 一般式(9)において、R26及びR27がそれぞれ独立して置換基を有していてもよいアリール基であり、かつWが一般式(10)で表されるものであることを特徴とする請求項8記載の方法。
- オレフィン性化合物が、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、混合ブテン、1−オクテン及び混合オクテンよりなる群から選ばれるものであることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の方法。
- 請求項1ないし10のいずれかの方法により得られたアルデヒドを直接水添反応するか、又は二量化した後水添することによりアルコールを製造する方法。
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