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JP3817081B2 - 有機el素子の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は有機EL(Electro Luminescence)素子に関し、特に長期にわたって安定した発光特性を維持する有機EL素子製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機EL素子は、例えば図4に示すように、光透過性を有する基板1上に陽極2を形成し、その上に有機化合物からなる正孔注入層3、正孔輸送層4、発光層5、電子注入層6を順次積層し、その上に陰極7を形成した積層構造体8からなっている。
【0003】
基板1としては、例えば透明なガラス、石英、サファイアまたは有機フィルムが用いられ、陽極2は例えばインジウム錫酸化物(ITO)が用いられる。
また陰極7には電子の放出エネルギが小さい、例えばアルカリ金属やアルカリ土類金属を基本とした反応性の高い合金が用いられている。
このような有機EL素子は、積層構造体8が大気に晒されているため、特に陰極7は大気に含まれる湿気によって酸化され、発光特性を劣化させる。
【0004】
そこで、特開平9−148066号公報においては、図5(A)に示されるように、積層構造体8を気密容器9で封止し、更に気密容器9の内部に乾燥剤10を入れたり、特開平8−111286号公報では、図5(B)に示されるように、積層構造体8の表面をSiO2 またはSi3 4 の保護膜11で覆ったり、また特開平10−144468号公報では積層構造体8を樹脂膜で覆って大気と遮断するようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前述した気密容器で封止する方法は気密容器を設けたことにより厚みが厚くなると共に重量も重くなる。
またSiO2 やSi3 4 の保護膜で覆う方法は、素子のリペア(障害素子をレーザ等によって焼断させてオープン状態にする)時や製造作業時等において物がぶつかることによる傷の発生を防止するために膜厚を厚くする必要があるが、膜厚を厚くすると残留応力が増して基板を反らせたりクラックが発生して特性を劣化させ、また膜厚を厚くすると成膜時間が長くなる。
【0006】
また樹脂で覆う方法は水分の遮断が十分でなく、性能的に問題がある。
本発明は水分によって発光特性が劣化されないようにした有機EL素子の製造方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前述した課題を解決するために、請求項1の発明においては、基板上に少なくとも陽極、有機発光層および陰極を順次形成し、前記陽極、有機発光層および陰極からなる積層構造体の表面上に封止膜を形成し、障害素子がある場合、該障害素子をレーザリペアによって焼断させてオープン状態して成る有機EL素子の製造方法であって、
前記封止膜として、前記積層構造体の表面上に気相成長法によって無機パッシベーション封止膜を形成し、該無機パッシベーション封止膜の上に樹脂からなる樹脂封止膜を成膜し、
前記樹脂封止膜は、前記レーザリペアによって前記無機パッシベーション封止膜に傷が発生したとき、当該無機パッシベーション封止膜を保護するためのものである。
【0013】
請求項2の発明においては、前記樹脂封止膜の上に更に気相成長法によって形成された無機パッシベーション封止膜を成膜する。
【0014】
請求項3の発明においては、基板上に少なくとも陽極、有機発光層および陰極を順次形成し、前記陽極、有機発光層および陰極からなる積層構造体の表面上に封止膜を形成し、障害素子がある場合、該障害素子をレーザリペアによって焼断させてオープン状態して成る有機EL素子の製造方法であって、
前記封止膜として、前記陽極、有機発光層および陰極からなる積層構造体の表面上に樹脂からなる樹脂封止膜を成膜し、該樹脂封止膜の上に気相成長法によって形成された無機パッシベーション封止膜を成膜し、
前記樹脂封止膜は、前記無機パッシベーション封止膜を前記レーザリペアの際の膜破壊から保護するためのものである。
【0015】
請求項4の発明においては、前記無機パッシベーション封止膜の上に更に樹脂からなる樹脂封止膜を成膜する。
【0016】
請求項5の発明においては、前記無機パッシベーション封止膜は、プラズマCVD法により成膜される窒化シリコン封止膜とする。
【0017】
また、請求項6の発明においては、前記プラズマCVD法による窒化シリコン封止膜の成膜時の原料ガスがシランガスと窒素ガスのみとする。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図1を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施例の断面図である。
図1において、基板1、陽極2、正孔注入層3、正孔輸送層4、発光層5、電子注入層6、陰極7、および積層構造体8は図4の従来例で説明した通りである。
【0019】
第1の実施例では、積層構造体8の表面上に窒化シリコン(SiNx )からなる窒化シリコン封止膜20を設け、更に窒化シリコン封止膜20の表面上に樹脂からなる樹脂封止膜21を設ける。
【0020】
すなわち、図1に示すように、透明なガラス基板1上に透光性のITOからなる陽極2を図示しない電極パターンを形成するように蒸着する。その上に、銅フタロシアニンからなる正孔注入層3、TPD(トリフェニルアミン誘導体)からなる正孔輸送層4、Alq3 (アルミキレート錯体)からなる発光層5、Li2 O(酸化リチウム)からなる電子注入層6を順次、蒸着する。さらに、この上に蒸着によって、Alからなる陰極7を陽極2の電極パターンと対向するようにパターニングする。こうして得られたガラス基板1上の積層構造体8を大気に曝すことなく、プラズマCVD(Chemical Vapour Deposition)のチャンバ内に移送、配置して、SiNx (窒化ケイ素)からなる窒化シリコン封止膜20をその表面に成膜する。
【0021】
本実施例においては、プラズマCVD法に用いる原料ガスとしてSiH4 (シラン)ガス及びN2 (窒素)ガスのみを用い、各々の流量を10sccm及び200sccmとし、RFパワーを10W、チャンバ内温度を120℃、チャンバ内圧力を0.9Torrとした。得られた膜厚は約2μmであった。
【0022】
上記した実施例において得られた有機EL素子の窒化シリコン封止膜の被膜平面方向の残留応力を測定したところ、成膜直後で0.06×109 dyn/cm2 、充分に時間を経過した後にあっても−0.17×109 dyn/cm2 と小さいものであった。ただし、正の値を圧縮応力、負の値を引っ張り応力とする。この有機EL素子を、それぞれ室温及び高温高湿(60℃、95%)下に500時間放置した後であっても、封止膜にクラックや剥離を発生せず、有機EL素子としての発光動作も安定していた。
【0023】
上述したプラズマCVD法を用いて成膜した窒化シリコン封止膜20の上に、例えばフッ素系やシリコン系の樹脂をスピンコート、デイッピング等の方法を用いて樹脂封止膜21を成膜する。
【0024】
このように積層構造体8の上に窒化シリコン封止膜20を成膜し、更にその上に樹脂封止膜21を成膜することによって、水分は窒化シリコン封止膜20によって遮断され、傷の発生については樹脂封止膜21によって保護される。
【0025】
図2は本発明の第2の実施例の断面図を示す。第1の実施例では積層構造体8の上に窒化シリコン封止膜20を、更に窒化シリコン封止膜20の上に樹脂封止膜21を成膜していたが、第2の実施例では積層構成体8の上に樹脂封止膜21を成膜し、その上に窒化シリコン封止膜20を成膜させている。
【0026】
このように積層構造体8の上に樹脂封止膜21を、更にその上に窒化シリコン封止膜20を成膜することによって、第1の実施例に比べて、欠陥画素のレーザリペアの際に、レーザ強度に誤りがあっても膜破壊が生じにくいという利点がある。
【0027】
なお、欠陥画素のレーザリペアとは、本出願人による特願平9−145871にも記載されるようにマトリクス表示装置における欠陥画素の対策に関するものであり、欠陥画素が存在すると、その点に駆動電流が集中するため欠陥画素が存在するライン上の他の画素に流れる駆動電流が減少し、ライン上の他の画素が暗くなるという問題を解決するために、透明基板側から欠陥画素に対してレーザ光線を集束させ、電極ラインを切断しないように欠陥画素のみを焼ききるものである。
【0028】
第1の実施例の場合は、レーザリペアを行う際に集束焦点を誤ると、強度の劣る窒化シリコン膜にレーザが照射されて破壊し、水分の遮断が不充分になる恐れがあるが、第2の実施例の場合においては、強度的に優れる樹脂膜にレーザが照射されるため、窒化シリコン膜の破壊は防がれる。
一方、外部衝突などに対する耐久性は、外表面に樹脂膜が成膜される第1の実施例の方が優れている。
【0029】
図3(A)(B)はそれぞれ本発明の第3および第4の実施例の断面を示している。
図3(A)に示すように、第3の実施例では、図2の第2の実施例で説明した窒化シリコン封止膜20の上に更に樹脂封止膜21′を成膜させている。
このように樹脂封止膜21′を成膜することにより、窒化シリコン封止膜20が外部からの衝突などによる損傷を無くすことができる。
【0030】
また図3(B)に示すように、第4の実施例では図1の第1の実施例で説明した樹脂封止膜21の上に更に窒化シリコン封止膜20′を成膜させている。
なお第4の実施例の窒化シリコン封止膜20′に代えてカバーガラスで封止するようにしてもよい。このように構成することによって機械的な強度は強くなる。しかしフレキシブルな基板などには対応できなくなる。
【0031】
なお、上述した実施例においては、水分の遮断を行うための封止膜として、プラズマCVD法により形成される窒化シリコン膜を用いたが、これに限られることはなく、スパッタ法、真空蒸着法などの気相成長法により形成される水分の遮断性に優れた無機パッシベーション膜であれば適用可能である。例えば、SiO2 、Al2 3 、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)等を適用することができる。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、積層構造体の上に無機パッシベーション封止膜および窒化シリコン封止膜を形成するようにしたので、残留応力の少なく、水分の遮断が充分な有機EL素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例の断面図である。
【図2】本発明の第2の実施例の断面図である。
【図3】本発明の第3および第4の実施例の断面図である。
【図4】有機EL素子の断面図である。
【図5】従来例の説明図である。
【符号の説明】
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 電子注入層
7 陰極
8 積層構造体
20,20′ 窒化シリコン封止膜
21,21′ 樹脂封止膜

Claims (6)

  1. 基板上に少なくとも陽極、有機発光層および陰極を順次形成し、前記陽極、有機発光層および陰極からなる積層構造体の表面上に封止膜を形成し、障害素子がある場合、該障害素子をレーザリペアによって焼断させてオープン状態して成る有機EL素子の製造方法であって、
    前記封止膜として、前記積層構造体の表面上に気相成長法によって無機パッシベーション封止膜を形成し、該無機パッシベーション封止膜の上に樹脂からなる樹脂封止膜を成膜し、
    前記樹脂封止膜は、前記レーザリペアによって前記無機パッシベーション封止膜に傷が発生したとき、当該無機パッシベーション封止膜を保護するためのものである
    ことを特徴とする有機EL素子の製造方法。
  2. 前記樹脂封止膜の上に更に気相成長法によって形成された無機パッシベーション封止膜を成膜するようにしたことを特徴とする請求項1記載の有機EL素子の製造方法。
  3. 基板上に少なくとも陽極、有機発光層および陰極を順次形成し、前記陽極、有機発光層および陰極からなる積層構造体の表面上に封止膜を形成し、障害素子がある場合、該障害素子をレーザリペアによって焼断させてオープン状態して成る有機EL素子の製造方法であって、
    前記封止膜として、前記陽極、有機発光層および陰極からなる積層構造体の表面上に樹脂からなる樹脂封止膜を成膜し、該樹脂封止膜の上に気相成長法によって形成された無機パッシベーション封止膜を成膜し、
    前記樹脂封止膜は、前記無機パッシベーション封止膜を前記レーザリペアの際の膜破壊から保護するためのものである
    ことを特徴とする有機EL素子の製造方法。
  4. 前記無機パッシベーション封止膜の上に更に樹脂からなる樹脂封止膜を成膜するようにしたことを特徴とする請求項3記載の有機EL素子の製造方法。
  5. 前記無機パッシベーション封止膜は、プラズマCVD法により成膜される窒化シリコン封止膜であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の有機EL素子の製造方法。
  6. 前記プラズマCVD法による窒化シリコン封止膜の成膜時の原料ガスがシランガスと窒素ガスのみからなることを特徴とする請求項5記載の有機EL素子の製造方法。
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