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JP3736232B2 - ポリオレフィン系樹脂組成物 - Google Patents

ポリオレフィン系樹脂組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂組成物に関する。さらに詳細には、ポリオレフィン系樹脂へのアンチブロッキング剤である高分子微粒子の分散が良好で、フィルムにした場合、透明性、透視感や白斑点(ボイドともいう)発生がないこと等のフィルムの外観および耐ブロッキング性等の取扱い性のバランスに優れるポリオレフィン系樹脂組成物およびその組成物からなるポリオレフィン系樹脂フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリオレフィン系樹脂からなるポリオレフィン系樹脂フィルムは透明性や機械的特性等の物性が優れるために、食品包装用材料や繊維包装用材料等に使用される。しかし、ポリオレフィン系樹脂フィルムは耐ブロッキング性が不充分であり、フィルムを重ね合わせると互いに密着し、包装時の作業性が低下する。
【0003】
ポリオレフィン系樹脂フィルムの耐ブロッキング性を向上させるため、ポリオレフィン系樹脂にアンチブロッキング剤として微粉状もしくは微粒子状の無機物質を用いたポリオレフィン系樹脂組成物が報告されている。例えば、特公昭48−14423号公報には珪酸マグネシウムを主成分とする微粒子を、特公昭52−16134号公報にはゼオライト粉末を用いたポリオレフィン系樹脂組成物及びその組成物からなるフィルムが報告されている。
【0004】
しかし、これらのポリオレフィン系樹脂組成物はアンチブロッキング剤である微粉状もしくは微粒子状の無機物質とポリオレフィン系樹脂の親和性が不十分であるため、その組成物を用いてフィルムを成形すると無機物質を核としてボイドが発生し、フィルムの透明性が悪化するという問題を有している。また、無機物質が硬いため、フィルム同士を擦りあわせた時に傷が発生する、即ち、フィルムの耐傷つき性も悪いという問題を有している。
【0005】
これらの微紛状もしくは微粒子状の無機物質に替えて、アンチブロッキング剤として高分子微粒子を用いたポリオレフィン系樹脂組成物が報告されている。例えば、特開昭57−64522号公報には粒径3〜40μmの架橋構造を有し、かつ融点を有しない高分子微粉体を、特開平5−214120号公報には平均粒径が0.5〜7μmである不活性有機高分子架橋粒子を、また、特開平6−107868号公報には平均粒径0.4〜7μmのアクリル系単量体とスチレン系単量体とを主成分として共重合している重合体の架橋粒子を用いたポリオレフィン系樹脂組成物及びその組成物からなるフィルムが報告されている。しかし、これらの高分子微粒子には、その微粒子とポリプロピレン系樹脂との界面の親和性が不十分であるため、フィルムにボイドが発生し透明性を悪化させるという問題点がある。
【0006】
一般に、アンチブロッキング剤である高分子微粒子は、ポリオレフィン系樹脂に分散しにくく、凝集しやすい性質がある。このためポリオレフィン系樹脂に高分子微粒子を添加してフィルムを製造する際に、凝集物が分散せず、その凝集物に起因する白斑点が発生し、フィルムの外観が悪化し、また、フィルムへの印刷時にインク飛びが発生する等の問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明における課題は、ポリオレフィン系樹脂へのアンチブロッキング剤である高分子微粒子の分散が良好で、フィルムにした場合、透明性、透視感や白斑点発生がないこと等のフィルムの外観および耐ブロッキング性等の取扱い性のバランスに優れるポリオレフィン系樹脂組成物およびその組成物からなるポリオレフィン系樹脂フィルムを提供することにある。
【0008】
【発明を解決するための手段】
本発明者らはかかる実状に鑑み、鋭意検討した結果、ポリオレフィン系樹脂及びアンチブロッキング剤である特定量の揮発成分を含有する高分子微粒子からなるポリオレフィン系樹脂組成物を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を解決するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、
ポリオレフィン系樹脂(成分A)100重量部と揮発成分を0.10〜8重量%含む高分子微粒子アンチブロッキング剤(成分B)0.05〜2重量部未満を含有してなるポリオレフィン系樹脂組成物に係るものである。
また、本発明は、上記ポリオレフィン系樹脂組成物からなるフィルムに係るものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明で使用するポリオレフィン系樹脂(成分A)とは、オレフィン系単量体の単独重合体または共重合体もしくはこれらの混合物であり、オレフィン系単量体とはエチレン及びα−オレフィンであり、α−オレフィンとしては、例えばプロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1等が挙げられる。
【0011】
ポリオレフィン系樹脂としてはポリプロピレン系樹脂が好ましく、ポリプロピレン系樹脂とは、プロピレン単量体の単独重合体または共重合体もしくはこれらの混合物であり、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体もしくはこれらの混合物が挙げられる。プロピレンと他のオレフィンとの共重合体としては、例えばプロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体等が挙げられる。
【0012】
ポリプロピレン系樹脂としては、結晶性プロピレン単独重合体及び/又は結晶性プロピレン共重合体を含むポリプロピレン系樹脂が好ましい。
結晶性とは、結晶性プロピレン単独重合体または結晶性プロピレン共重合体に含まれる冷キシレン(20℃キシレン)可溶部(CXS)の量により決めることができる。冷キシレン可溶部(CXS)が多いとアモルファス部分が多く、結晶性が低いことを示し、冷キシレン可溶部(CXS)が少ないとアモルファス部分が少なく、結晶性が高いことを示す。冷キシレン可溶部(CXS)は30重量%以下が好ましく、より好ましくは20重量%以下であり、特に好ましくは15重量%以下である。
【0013】
より好ましいポリプロピレン系樹脂としては、結晶性プロピレン単独重合体、及び、エチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1の中から選ばれた少なくとも1種類以上の単量体の含有量が2重量%以下である結晶性プロピレン共重合体である。
【0014】
本発明で使用するポリオレフィン系樹脂のメルトフローメート(MFR)は、0.1〜20g/10分のものが加工性及びフィルム物性の点で好ましく、0.5〜10g/10分のものがより好ましい。
【0015】
また、本発明で使用するポリオレフィン系樹脂には、本発明の目的及び効果を損なわない範囲において、必要に応じてポリエチレン、ポリブテン−1、スチレン系樹脂、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム等のポリオレフィン系重合体を添加しても良い。
【0016】
本発明で使用する高分子微粒子(成分B)は、特に限定はないが、芳香族モノビニル化合物、アクリル酸エステル化合物、メタアクリル酸エステル化合物、モノまたはジカルボン酸およびジカルボン酸無水物、シアン化ビニル化合物、アクリルアミド化合物、イオン性モノマー等の単量体を少なくとも1種類以上、付加重合させたものが挙げられる。
【0017】
具体的には、芳香族モノビニル化合物としてはスチレン、α−メチルスチレン等が挙げられ、アクリル酸エステル化合物としてはメチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が挙げられ、メタアクリル酸エステル化合物としてはメチルメタアクリレート、2−エチルヘキシルメタアクリレート等が挙げられ、モノまたはジカルボン酸およびジカルボン酸無水物としてはアクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等が挙げられ、シアン化ビニル化合物としてはアクリロニトリル、メタアクリロニトリル等が挙げられ、アクリルアミド化合物としてはアクリルアミド、メタアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタアクリルアミド等が挙げられ、イオン性モノマーとしてはアクリル酸ナトリウム、メタアクリル酸ナトリウム、スチレンスルフォン酸ナトリウム等が挙げられる。好ましくは、スチレン、メチルアクリレート、メチルメタアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタアクリレートである。
【0018】
付加重合方法としては、例えば、一般的な懸濁重合法、マイクロサスペンジョン重合法、分散重合法、乳化重合法、ソープフリー重合法、シード重合法等を用いてることができる。なかでも乳化重合法、分散重合法、ソープフリー重合法、シード重合法がフィルム物性の点で好ましい。
【0019】
本発明で使用する高分子微粒子は、上記単量体を重合する際に少なくとも1種類以上の架橋剤を併用して重合した架橋された高分子微粒子であっても良い。高分子微粒子の重合の際に用いる事のできる架橋剤としては、分子中に重合性二重結合を含む官能基を2個以上有するものが挙げられる。このような架橋剤の具体例としては、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタアクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、アリルアクリレート、アリルメタアクリレート等が挙げられる。このような架橋された高分子微粒子は、ポリオレフィン系樹脂フィルム成形時における混練、シート形成、延伸の各工程において、その形状をある程度保持する点において好ましい。
【0020】
本発明で使用する高分子微粒子としては、一般的に平均粒子径が0.5〜15μmのものが使用できる。好ましくは0.8〜10μm、さらに好ましくは1.0〜8.0μmである。
【0021】
本発明で使用する高分子微粒子に用いられる揮発成分は、特に限定はなく、例えば、通常、溶媒として用いられるものを挙げることができる。具体的には水、アルコール類、飽和炭化水素類、芳香族炭化水素類、ケトン類、アルデヒド類、有機酸エステル類及びエーテル類、またはこれらの混合物が挙げられる。アルコール類としてはメタノール、エタノール、プロパノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール等が挙げられ、飽和炭化水素類としてはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等が挙げられ、芳香族炭化水素類としてはベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられ、ケトン類としてはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられ、アルデヒド類としてはアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられ、有機酸エステル類としては酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸オクチル、酪酸メチル、メタクリル酸メチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル等が挙げられ、エーテル類としてはイソプロピルエーテル、ブチルエーテル、アミルエーテル、テトラヒドロフラン、アニソール等が挙げられる。好ましくは水、メタノール、エタノール、プロパノール、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレンであり、特に好ましくは水である。
【0022】
本発明で使用する高分子微粒子に含まれる揮発成分の量は0.10〜8重量%である。揮発成分の量が0.10重量%未満である場合、高分子微粒子の分散が不充分なことがあり、90重量%を超えた場合、高分子微粒子とポリオレフィン系樹脂の混合物を溶融押出しする際に、混合物が押出機スクリューへ食い込みにくくなったり、押出された樹脂が発泡したりするため、溶融押出しができなくなることがある。
【0023】
本発明で使用する高分子微粒子に含まれる揮発成分の濃度の調整方法としては、特に限定はなく、例えば下記のような方法が挙げられる。
▲1▼高分子微粒子を重合する際に用いる溶媒または洗浄液もしくはその溶媒を揮発成分として、高分子微粒子中に所定の濃度で残存させる方法。
▲2▼高分子微粒子を重合する際に用いる溶媒または洗浄液もしくはその溶媒を揮発成分として、高分子微粒子中に高濃度で残存させ、揮発成分を乾燥、除去して所定の濃度に調整する方法。揮発成分を乾燥、除去する方法としては、例えばスプレードライヤー、ナウタードライヤー、オーブン乾燥器等を用いる方法が挙げられる。
▲3▼高分子微粒子を重合する際に用いる溶媒または洗浄液もしくはその溶媒を揮発成分として、高分子微粒子中に高濃度で残存させ、ポリオレフィン系樹脂粉と混合し、揮発成分を乾燥、除去して所定の濃度に調整する方法。混合および揮発成分の乾燥、除去する方法としては、例えばヘンシェミキサー、タンブラーミキサー、ナウタードライヤー等を用いる方法が挙げられる。
▲4▼高分子微粒子を重合する際に用いる溶媒または洗浄液もしくはその溶媒をろ過、乾燥等により完全に除去した後、別途、揮発成分を高分子微粒子に添加して所定の濃度に調整する方法。
【0024】
本発明で使用する高分子微粒子に含まれる揮発成分の役割、ポリオレフィン系樹脂への分散に関する作用機構は明らかではないが、揮発成分は高分子微粒子同士の隙間又は高分子微粒子内部に存在し、ポリオレフィン系樹脂と混合、溶融混練される際に加熱され、揮発成分が揮発、蒸発し、高分子微粒子間に隙間ができ、高分子微粒子同士がほぐれ凝集することなく、ポリオレフィン系樹脂へ分散すると考えられる。
【0025】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物において、ポリオレフィン系樹脂(成分A)と揮発成分を0.10〜8重量%含む高分子微粒子(成分B)の配合割合は、ポリオレフィン系樹脂(成分A)100重量部に対して、揮発成分を0.10〜8重量%含む高分子微粒子(成分B)を0.05〜2重量部未満であり、好ましくは0.05〜1.5重量部である。
【0026】
揮発成分を0.10〜8重量%含む高分子微粒子の配合量が0.05重量部未満である場合、フィルムの耐ブロッキング性が不充分なことがあり、また、2重量部以上である場合、ポリオレフィン系樹脂と高分子微粒子アンチブロッキング剤を含有してなるマスターバッチを用いる方が効率的である。
【0027】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物の配合方法としては、ポリオレフィン系樹脂と揮発成分を0.10〜8重量%含む高分子微粒子が均一に混合される方法であれば良く、例えば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー等を用いて混合する方法等が挙げられる。
【0028】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物には、本発明の目的と効果を損なわない範囲において、公知の添加剤、例えば酸化防止剤、中和剤、滑剤、無滴剤、帯電防止剤、造核剤等を併用しても良い。これらの添加剤の配合は、ポリオレフィン系樹脂組成物の各成分を配合、混合する時に適宜配合することができる。
【0029】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、各成分の配合後、または各成分と添加剤の配合後、公知の方法、例えば押出機を用いてペレット化することもできる。この場合、押出機の設定温度は通常180〜280℃であり、好ましくは200〜250℃である。
【0030】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、フィルムの製造に好適に用いられる。フィルムの製造方法としては、特に限定はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、ポリオレフィン系樹脂組成物を溶融混練し、シート状に押出した後、冷却し、次いで加熱しながら少なくとも一軸方向に延伸してフィルムにする方法等が挙げられる。
【0031】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物からなるフィルムの厚みとしては、特に限定はなく、通常1〜200μmであり、好ましくは5〜100μmであり、更に好ましくは8〜50μmである。
【0032】
以下、実施例、および比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例によって特に限定を受けるものではない。なお、本発明の詳細な説明および実施例中の各項目の測定値は、下記の方法で測定した。
【0033】
1.高分子微粒子に含まれる揮発成分量測定(単位:重量%)
試料約5gをヤマト化学株式会社製 DP32型 真空定温乾燥器を用いて、0.1kPaまで減圧し、110℃で1時間乾燥し、乾燥後、室温まで放冷し、0.01gのオーダーまで測定可能な電子天秤を用い、下式より求めた。
揮発成分量(重量%)={(乾燥前重量−乾燥後重量)/乾燥前重量}×100
なお、本発明で使用したポリプロピレン系樹脂はMFRが2.3g/10分であり、CXSが3.0重量%であるプロピレンポリマー粉であり、このプロピレンポリマー粉に含まれる揮発成分量は0重量%であった。
【0034】
2.フィルム物性
(1)ヘイズ(単位:%)
ASTM D−1003に準拠して測定した。
(2)拡散透過光度(LSI)(単位:%)
東洋精機(株)社製LSI試験機(±0.4°〜1.2°の散乱透過光を受光)により測定した。LSI値を透視感の尺度とした。
(3)耐ブロッキング性(単位:MPaまたはkg/12cm2):120mm×30mmのフィルムを用いて、フィルム同士を重ね合わせ、500g/40mm×30mmの荷重下で60℃、3時間状態調整を行なった。その後、23℃、湿度50%雰囲気下に30分以上放置し、状態調整を行なった後、せん断引張試験機を用いて200mm/分の速度で引張り試験を行い、フィルムの剥離に要する強度を測定した。一つの試料につき、4回測定を行い、その平均値を算出して、フィルムの耐ブロッキング性の値とした。
【0035】
(4)白斑点個数:(単位:個/25cm2
目視でフィルムの任意の5cm×5cmの領域にある約0.2〜1mmの大きさの白斑点の個数を求めた。この操作を2回繰り返して平均値を求めた。
【0036】
実施例1
(a)高分子微粒子の合成
攪拌機および還流冷却器付きの耐圧ガラス容器にメタノール380重量部、イオン交換水20重量部、スチレン34重量部、2−エチルヘキシルアクリレート60重量部、55%ジビニルベンゼン11重量部、ヒドロキシプロピルセルロース2.5重量部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート2重量部を仕込み、均一に溶解後、容器を密閉し、90℃にて10時間重合した。次いで、メタノール200重量部、スチレン48重量部、55%ジビニルベンゼン4重量部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1重量部の混合溶液を60℃にて20分間かけて添加後、さらに60℃で4時間重合し、高分子微粒子の有機溶媒スラリーを得た。この有機溶媒スラリーより一部サンプリングして微粒子の粒径を測定したところ平均粒径1.2μmであった。
【0037】
続いて、このスラリーに加圧スチームを吹き込み、蒸発してくるメタノール・水混合物をコンデンサーで回収した。重合液温度が99℃に到達したところでスチームの吹き込みを終了し、高分子微粒子の水スラリーを得た。さらに定性ろ紙No.1を用いて得られた水スラリーを吸引ろ過し、揮発成分量72重量%の高分子微粒子のウェットケーキを得た。
【0038】
(b)高分子微粒子に含まれる揮発成分量の調整
前記(a)で得られた揮発成分量72重量%の高分子微粒子を約500g秤量し、これを精密恒温器(ヤマト科学株式会社製DF61型)に入れ、温度120℃で5時間乾燥した。得られた高分子微粒子に含まれる揮発成分量は、0.14重量%であった。
【0039】
(c)ポリオレフィン系樹脂組成物のペレット化
成分Aである前記プロピレンポリマー粉(MFR=2.3g/10分)100重量部に対して、成分Bである揮発成分を0.14重量%含む高分子微粒子0.3重量部と、中和剤としてステアリン酸カルシウム0.1重量部、酸化防止剤としてBHT(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)0.2重量部、およびIrganox1010(チバスペシャリティーケミカルズ社製)0.2重量部をヘンシェルミキサーで混合した後、押出機を用いて220℃で造粒し、ペレット化した。表1にペレットにおけるポリオレフィン系樹脂と高分子微粒子の配合量を示した。
【0040】
(d)延伸フィルムの作製
前記(c)で作製したポリオレフィン系樹脂組成物のペレット、樹脂温度260℃で溶融押出を行い、60℃の冷却ロールで急冷させ、厚さ0.8mmのシートを得た。このシートを予熱後、縦延伸機のロール周速差により延伸温度145℃で縦方向に5倍延伸し、さらにテンター式延伸機にて延伸温度157℃で横方向に8倍延伸した。続いて、165℃で熱処理を行い、厚さ20μmのフィルムとした後、片面コロナ処理を施した。フィルム物性を表2に示した。
【0041】
実施例2
(b)高分子微粒子に含まれる揮発成分量の調整
実施例1(a)記載の揮発成分量72重量%の高分子微粒子を約500g秤量し、これを精密恒温器(ヤマト科学株式会社製DF61型)に入れ、温度110℃で7時間乾燥した。得られた高分子微粒子に含まれる揮発成分量は、1.8重量%であった。
【0042】
(c)ポリオレフィン系樹脂組成物のペレット化
実施例1(c)と同様の方法でペレット化した。表1にペレットにおけるポリオレフィン系樹脂と高分子微粒子の配合量を示した。
【0043】
(d)延伸フィルムの作製
実施例1(d)と同様の方法でフィルムを製膜した。フィルム物性を表2に示た。
【0044】
実施例3
(b)高分子微粒子に含まれる揮発成分量の調整
実施例1(a)記載の揮発成分量72重量%の高分子微粒子を約500g秤量し、これを精密恒温器(ヤマト科学株式会社製DF61型)に入れ、温度100℃で3.5時間乾燥した。得られた高分子微粒子に含まれる揮発成分量は、8重量%であった。
【0045】
(c)ポリオレフィン系樹脂組成物のペレット化
実施例1(c)と同様の方法でペレット化した。表1にペレットにおけるポリオレフィン系樹脂と高分子微粒子の配合量を示した。
【0046】
(d)延伸フィルムの作製
実施例1(d)と同様の方法でフィルムを製膜した。フィルム物性を表2に示た。
【0047】
実施例4
(b)高分子微粒子に含まれる揮発成分量の調整
実施例1(a)記載の揮発成分量72重量%の高分子微粒子をそのまま使用した。
【0048】
(c)ポリオレフィン系樹脂組成物のペレット化
成分Aであるプロピレンポリマー粉(MFR=2.3g/10分)100重量部に対して、成分Bである揮発成分を72重量%含む高分子微粒子1.1重量部とした以外は、実施例1(c)と同様の方法でペレット化した。表1にペレットにおけるポリオレフィン系樹脂と高分子微粒子の配合量を示した。
【0049】
(d)延伸フィルムの作製
実施例1(d)と同様の方法でフィルムを製膜した。フィルム物性を表2に示た。
【0050】
比較例1
(a)高分子微粒子の合成
実施例1と同様の方法で高分子微粒子を合成した。続いて、実施例1と同様に加圧スチームを吹き込み、蒸発してくるメタノール・水混合物をコンデンサーで回収した。重合液温度が99℃に到達したところでスチームの吹き込みを終了し、高分子微粒子の水スラリーを得た。さらに定性ろ紙No.1を用いて得られた水スラリーを吸引ろ過し、揮発成分量45重量%の高分子微粒子のウェットケーキを得た。
【0051】
(b)高分子微粒子に含まれる揮発成分量の調整
前記(a)の揮発成分量45重量%の高分子微粒子をナウタードライヤーに投入し、スチームによりジャケット温度134℃に調整し、内部を667Pa(約5Torr)まで減圧して均一に攪拌しながら乾燥した。内部の試料の温度が120℃になった時点で乾燥を終了した。得られた高分子微粒子に含まれる揮発成分量は、0.08重量%であった。
【0052】
(c)ポリオレフィン系樹脂組成物のペレット化
実施例1(c)と同様の方法でペレット化した。表1にペレットにおけるポリオレフィン系樹脂と高分子微粒子の配合量を示した。
【0053】
(d)延伸フィルムの作製
実施例1(d)と同様の方法でフィルムを製膜した。フィルム物性を表2に示た。
【0054】
比較例2
(b)高分子微粒子に含まれる揮発成分量の調整
実施例1(a)記載の揮発成分量72重量%の高分子微粒子100重量部に対して水を1302重量部添加した。得られた高分子微粒子の揮発成分量は、98重量%であった。
【0055】
(c)ポリオレフィン系樹脂組成物のペレット化
実施例1(c)と同様の方法でペレット化しようとした際、ポリオレフィン系樹脂粉と高分子微粒子の混合物が揮発成分のためにしっとりした状態になり、押出機のシリンダーへの食い込み不良が発生した。また押出機のダイス部分で樹脂が発泡しストランドが切れ、樹脂の状態が不安定になりペレット化できなかった。表1にポリオレフィン系樹脂と高分子微粒子の配合量を示した。ペレットが得られなかったためフィルムに加工できなかった。
【0056】
表1および2から分かるように、実施例1〜4は白斑点発生が少なく、外観が優れたフィルムを与えたのに対して、本発明の要件である高分子微粒子に含まれる揮発成分量が少なかった比較例1は白斑点発生が多く、外観が好ましくないフィルムを与え、高分子微粒子に含まれる揮発成分量がの多かった比較例2はペレットおよびフィルム加工ができなかった。また、実施例1〜4は、透明性(Haze)、透視感(LSI)および耐ブロッキング性においても問題はなかった。
【0057】
【発明の効果】
本発明記載のポリオレフィン系樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂へのアンチブロッキング剤である高分子微粒子の分散が良好であり、また、その組成物からなるフィルムは物性が優れるため食品包装用、繊維包装用等、広範囲な用途のフィルムに好適に使用できる。
【0058】
【表1】
ポリオレフィン系樹脂ペレットにおけるポリオレフィン系樹脂と高分子
微粒子の配合量
Figure 0003736232
【0059】
【表2】
フィルム物性
Figure 0003736232

Claims (4)

  1. ポリオレフィン系樹脂100重量部と揮発成分を0.10〜8重量%含む高分子微粒子アンチブロッキング剤0.05〜2重量部未満を含有してなることを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物。
  2. 高分子微粒子アンチブロッキング剤に含まれる揮発成分が0.10〜8重量%であり、その平均粒子径が0.5〜15μmであることを特徴とする請求項1記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
  3. 請求項1又は2記載のポリオレフィン系樹脂組成物を用いてなることを特徴とするポリオレフィン系樹脂フィルム。
  4. 請求項1又は2記載のポリオレフィン系樹脂組成物を少なくとも一軸方向に延伸して得られることを特徴とするポリオレフィン系樹脂フィルム。
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