JP3654351B2 - シラン変性エポキシ樹脂、その製造方法、樹脂組成物、半硬化物及び硬化物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂組成物およびその半硬化物、硬化物の製造方法に関する。本発明のエポキシ樹脂組成物は、塗料などのコーティング剤、接着剤、シーリング剤などの広範な用途に使用でき、特に絶縁コーティング剤、プリント配線基板材料、IC封止材、絶縁シール剤等として有用である。本発明のエポキシ樹脂組成物から得られる半硬化物(ゾル−ゲル硬化物)は、柔軟であり、成形加工性に富むため、成形中間材料、プリプレグ、封止剤等の中間材料として有用である。また、本発明のエポキシ樹脂組成物から得られる硬化物(完全硬化物)は、クラック等がなく、透明で高硬度である。また、密着性、電気絶縁性などに優れ、しかも耐熱性(高温で軟化せず、膨張係数が小さく、耐熱密着性)に優れる。そのため、前記の広範用途、特に電気・電子部品、自動車用部品、土木建築材料、スポーツ用具材料等の成形材料として有用である。
【0002】
【従来の技術】
従来より、エポキシ樹脂は一般に硬化剤と組み合わせた組成物として使用されており、電気・電子材料関係等の各種の分野において使用されてきた。しかしながら、近年の電気・電子材料分野の発展に伴い、エポキシ樹脂組成物の硬化物に対してより高度な性能が要求されるようになっており、特に耐熱性が高く、熱膨張性の低い材料が望まれている。
【0003】
エポキシ樹脂組成物の硬化物の耐熱性を向上させるため、例えば、エポキシ樹脂および硬化剤に加え、ガラス繊維、ガラス粒子、マイカ等のフィラーを混合した組成物を用いる方法が行われている。しかし、この方法では十分な耐熱性は得られない。また、この方法では得られる硬化物の透明性が失われ、しかもフィラーとエポキシ樹脂との界面の接着性が劣るため、伸長率等の機械的特性も不十分である。
【0004】
また、エポキシ樹脂組成物の硬化物の耐熱性を向上させる方法として、エポキシ樹脂とシリカとの複合体を用いる方法が提案されている(特開平8−100107号公報)。当該複合体は、エポキシ樹脂の部分硬化物の溶液に、加水分解性メトキシシランを加え、該硬化物を更に硬化すると共に、該メトキシシランを加水分解してゾル化し、更に重縮合してゲル化することにより得られる。しかし、かかる複合体から得られる硬化物は、エポキシ樹脂単独の硬化物に比して、ある程度耐熱性は向上するものの、複合体中の水や硬化時に生じる水、アルコールに起因して、硬化物中にボイド(気泡)が発生する。また、耐熱性を一層向上させる目的でメトキシシラン量を増やすと、ゾル−ゲル硬化反応により生成するシリカが凝集して得られる硬化物の透明性が失われて白化するうえ、多量のメトキシシランをゾル化するために多量の水が必要となり、その結果として硬化物のそり、クラック等を招く。
【0005】
また、エポキシ樹脂にシリコーン化合物を反応させたシラン変性エポキシ樹脂と、硬化剤であるフェノールノボラック樹脂とを組み合わせた組成物(特開平3−201466号公報)や、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラビスブロモビスフェノールAおよびメトキシ基含有シリコーン中間体を反応させたシラン変性エポキシ樹脂と、硬化剤であるフェノールノボラック樹脂とを組み合わせた組成物(特開昭61−272243号公報、特開昭61−272244号公報など)も提案されている。しかし、これらのエポキシ樹脂組成物の硬化物は、シリコーン化合物やメトキシ基含有シリコーン中間体の主構成単位がジオルガノポリシロキサン単位であってシリカを生成できないため、いずれも耐熱性が不十分である。
【0006】
これまでに本発明者らは、ビスフェノール型エポキシ樹脂とメトキシシラン部分縮合物とを脱メタノール反応させてなるメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を硬化してなる硬化物が、ガラス転移点を消失し、高耐熱性材料となる(特許第3077695号)ことを見出してきた。この方法では、硬化物を得るために、樹脂組成物から溶剤を揮発させるとともにメトキシシリル基をゾル−ゲル硬化、エポキシ基をエポキシ硬化させて、エポキシ樹脂―シリカハイブリッド硬化物とするが、電気・電子材料関係の用途では必須となる、半硬化状態での成型加工が難しいといった問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、耐熱性、低熱膨張性に優れ、しかもボイド、クラック等を生じないハイブリッド硬化物を収得することができ、かつ半硬化状態での成型加工が容易であるシラン変性エポキシ樹脂組成物、および当該組成物から得られる半硬化物、硬化物を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定のエポキシ樹脂と特定のメトキシシラン部分縮合物からなるメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂、およびエポキシ樹脂用硬化剤からなる組成物により、前記目的に合致したエポキシ樹脂−シリカハイブリッド硬化物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)、ノボラック型エポキシ樹脂(2)およびメトキシシラン部分縮合物(3)を脱メタノール縮合反応させて得られるメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)に関する。また、ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)、ノボラック型エポキシ樹脂(2)およびメトキシシラン部分縮合物(3)を脱メタノール縮合反応させて得られることを特徴とするメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)の製造方法に関する。さらに、前記製造方法により得られるシラン変性エポキシ樹脂(A)とエポキシ樹脂用硬化剤(B)とを含有することを特徴とするシラン変性エポキシ樹脂組成物に関する。また本発明は、当該エポキシ樹脂組成物を硬化させてなるエポキシ樹脂−シリカハイブリッド硬化物に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明中のメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂の原料であるビスフェノール型エポキシ樹脂(1)は、ビスフェノール類とエピクロルヒドリンまたはβ−メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシドとの反応により得られるものである。ビスフェノール類としてはフェノールまたは2,6−ジハロフェノールとホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、アセトフェノン、シクロヘキサノン、ベンゾフェノン等のアルデヒド類またはケトン類との反応により得られるもの;ジヒドロキシフェニルスルフィドの過酸による酸化により得られるもの;ハイドロキノン同士のエーテル化反応等により得られるものなどがあげられる。
【0011】
ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)は、メトキシシラン部分縮合物(3)との脱メタノール縮合反応により、珪酸エステルを形成しうる水酸基を有するものである。当該水酸基は、ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)を構成する全ての分子に含まれている必要はなく、これら樹脂として、水酸基を有していればよい。
【0012】
これらビスフェノール型エポキシ樹脂のなかでも、特に、ビスフェノール類としてビスフェノールAを用いたビスフェノールA型エポキシ樹脂が、最も汎用され、低価格であり好ましい。
【0013】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、一般式(a):
【0014】
【化1】
【0015】
で表される化合物である。
【0016】
本発明で用いるビスフェノール型エポキシ樹脂(1)は、エポキシ当量230g/eqを超え1000g/eq未満のものであり、数平均分子量としては460〜2000程度である。ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)がビスフェノールA型エポキシ樹脂である場合は、一般式(a)中の繰り返し単位数mの平均値は0.3〜5.8に相当する。上記エポキシ当量が230g/eq以下である場合は、メトキシシラン部分縮合物(3)と反応する当該エポキシ樹脂中の水酸基が少なくなり、そのため得られるメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)中の繰り返し単位数m=0の水酸基を持たないエポキシ化合物の割合が増加し、エポキシ樹脂―シリカハイブリッド硬化物の熱膨張率が高くなり好ましくない。一方、エポキシ当量が1000g/eq以上の場合は、ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)中の水酸基が多くなり、多官能のメトキシシラン部分縮合物(3)との反応によってゲル化を招く傾向にあるため好ましくない。尚、ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)が、エポキシ当量として上記範囲を満足する限り、繰り返し単位数mがゼロのものを含有していても差し支えない。
【0017】
本発明中のメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)の原料であるノボラック型エポキシ樹脂(2)は、ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)とメトキシシラン部分縮合物(3)の脱メタノール反応を進行させるため、双方を相溶解させる反応媒体としての役割と、半硬化物を柔軟化する役割を担う。すなわち、ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)とメトキシシラン部分縮合物(3)は相溶性が悪く、反応媒体無しにシラン変性エポキシ樹脂(A)は製造できないが、反応媒体としてノボラックエポキシ樹脂(2)を使用した場合には、有機溶剤などに比べてシラン変性エポキシ樹脂組成物の粘度が下がりすぎず、好ましい。また、一般に、得られるシラン変性エポキシ樹脂組成物は最終的には完全硬化(メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基とエポキシ樹脂用硬化剤(B)とのエポキシ基の開環・架橋反応による硬化、並びにメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)中の加水分解、縮合によるゾル−ゲル硬化が進行した状態をいう)させて、目的用途に使用されるが、電気・電子材料関係の用途に代表される特定の用途では、完全硬化する前の中間段階にて、半硬化状態で成型加工が行われたり、製品化される場合がある。このような場合には、半硬化物の状態(メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基とエポキシ樹脂用硬化剤(B)とのエポキシ基の開環・架橋反応をさせることなく、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)中の加水分解、縮合によるゾル−ゲル硬化のみを進行させた状態をいう)で十分な柔軟性が要求されるがノボラック型エポキシ樹脂(2)を所定割合で併用することにより、かかる要求性能を満足させることができる。
【0018】
また、ノボラック型エポキシ樹脂(2)を用いることにより、ビスフェノール型エポキシ樹脂に代表される2官能のエポキシ樹脂を併用した場合に問題となる、完全硬化物の熱膨張率が高くなることを防止することができるといった利点がある。ノボラック型エポキシ樹脂のフェノール核体数の平均は3〜10であることが好ましく、さらに好ましくは3〜6である。核体数が10を超えると、軟化温度が高くなりすぎるため、半硬化物に柔軟性を十分に付与することが出来ず好ましくない。核体数が3未満だと、完全硬化物の熱膨張率が高くなる傾向がある。
【0019】
本発明で使用するノボラック型エポキシ樹脂(2)は、ノボラックフェノール樹脂類とエピクロルヒドリン等のハロエポキシドとの反応で得られたものである。ノボラック樹脂類としてはノボラックフェノール樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂、ポリp−ビニルフェノール等があげられる。これらノボラック樹脂の中でも、特に、フェノールノボラック樹脂を用いたフェノールノボラック型エポキシ樹脂が、多官能エポキシでありながら比較的軟化点が低く、硬化物の熱膨張性も低いために好ましい。ノボラック型エポキシ樹脂(2)としては、構成するノボラック樹脂類の全ての水酸基がハロエポキシドでエポキシ変性されている必要はない。部分的に水酸基を残存するノボラックエポキシ樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)と同時にメトキシシラン部分縮合物(3)と脱メタノール反応するため、問題は生じないが、水酸基の含有量が少ないエポキシ樹脂であることが好ましい。これは水酸基を多数含有する場合には、ノボラック型エポキシ樹脂がシラン変性されるため、半硬化物作製の際、シラン変性されたビスフェノール型エポキシ樹脂と相互にゾル−ゲル硬化し、半硬化物の柔軟性を低下させる場合があるためである。
【0020】
フェノールノボラック型エポキシ樹脂は、一般式(b):
【0021】
【化2】
【0022】
(式中、mは1〜8の整数を表す。)で表される化合物である。
【0023】
本発明においては、ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)とノボラック型エポキシ樹脂(2)とを所定割合で併用することを必須とする。かかる併用により、柔軟で加工性に富む半硬化物(ゾル−ゲル硬化物)を容易に調製しうるという本発明の目的を達成できるからである。ここでビスフェノール型エポキシ樹脂(1)とノボラック型エポキシ樹脂(2)の使用重量比は、得られるエポキシ樹脂組成物や半硬化物の性能に大きく影響するため、(2)/(1)が0.5〜5の範囲とすることが好ましく、さらに好ましくは1〜3とされる。当該重量比が5を超えると、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)の量が少なくなりすぎるため、エポキシ樹脂―シリカハイブリッド硬化物の耐熱性が悪くなるおそれがある。当該重量比が0.5未満の場合には半硬化物に十分な柔軟性を付与することができず、また、ノボラックエポキシ樹脂(2)はビスフェノール型エポキシ樹脂(1)とメトキシシラン縮合物(3)とを相溶させる効果が低減され、反応に必要な溶剤量が増えるため好ましくない。
【0024】
メトキシシラン部分縮合物(3)としては、一般的にゾル−ゲル法に用いられているメトキシシランを部分的に加水分解、縮合したオリゴマーを使用できる。たとえば、一般式:RpSi(OCH3)4−p(式中、pは0または1の整数を示し、Rは炭素数6以下の低級アルキル基又はフェニル基を示す。)で表される化合物の部分縮合物等を例示できる。なお、pが2〜4である場合は、3次元架橋が起こらなくなるため、最終的に得られる硬化物に所望の高耐熱性を付与することが難しくなる。
【0025】
前記メトキシシラン部分縮合物(3)の具体例としては、テトラメトキシシランの部分縮合物;メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等のトリメトキシシラン類の部分縮合物があげられる。これらの中でも、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン等の部分縮合物等が、ゾル−ゲル硬化速度が大きいため好ましい。
【0026】
メトキシシラン部分縮合物(3)は、上記物質の中から1種または2種以上を適宜選択すればよいが、1分子当たりのSiの平均個数は3〜12であることが好ましい。Siの平均個数が3未満であると、ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)との脱アルコール反応の際、副生アルコールと一緒に系外に流出する有毒なメトキシシラン類の量が増えるため好ましくない。また12を超えると、ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)との相溶性が落ち、前記重量比率を超える量のノボラックエポキシ樹脂(2)や大量の有機溶剤を必要とし、目的とするメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)は得られにくい。
【0027】
特に、一般式(c):
【0028】
【化3】
【0029】
(式中、Meはメチル基を示し、nの平均繰り返し単位数は2〜7である。)で表されるテトラメトキシシランの部分縮合物、あるいは一般式(c):
【0030】
【化4】
【0031】
(式中、Meはメチル基を示し、nの平均繰り返し単位数は2〜7である。)で表されるメチルトリメトキシシランの部分縮合物が好ましい。当該部分縮合物は、脱メタノール反応において、副生メタノールとともに系外流出し得る有毒なテトラメトキシシランまたはメチルトリメトキシシランがほとんど存在せず、反応操作や安全衛生の点からも好ましい。
【0032】
本発明に記載のメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)は、ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)、ノボラック型エポキシ樹脂(2)およびメトキシシラン部分縮合物(3)を、溶剤の存在下または無溶剤下に脱メタノール縮合反応させることにより得られる。(ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)とノボラック型エポキシ樹脂(2)との水酸基当量の合計当量)/(メトキシシラン部分縮合物(3)のメトキシ基当量)(当量比)は特に制限されないが、通常は0.01〜0.8であり、好ましくは0.03〜0.5である。当量比が0.3未満であると未反応のメトキシシラン部分縮合物(3)が多くなりすぎるため、0.5を超える(化学量論的に等量に近づく)と脱メタノール反応の進行でゲル化しやすくなるため好ましくない。
【0033】
なお、ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)として平均エポキシ当量400以上の高分子量のものを使用する場合や、1分子当たりのSiの平均個数が7個以上のメトキシシラン部分縮合物(3)を使用原料とする場合には、ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)およびノボラック型エポキシ樹脂(2)の水酸基が完全に消失するまで脱メタノール縮合反応を行うと、高粘度化やゲル化を招き易い。このような場合には、脱メタノール反応を反応途中で停止させるなどの方法により、高粘度化やゲル化を防ぐ。たとえば、高粘度化してきた時点で、流出するメタノールを還流して、反応系からのメタノールの留去量を調整したり、反応系を冷却し反応を終了させる等の方法を採用できる。
【0034】
メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)の製造は、前記のように、溶剤存在下または無溶剤下で行うことができる。本発明における脱メタノール縮合反応では、反応温度は50〜130℃程度、好ましくは70〜110℃であり、全反応時間は1〜15時間程度である。この反応は、メトキシシラン部分縮合物(3)自体の重縮合反応を防止するため、実質的に無水条件下で行うのが好ましい。ところで、無溶剤下で製造されるメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)は、無溶剤で使用される用途、例えば接着剤、成形加工品、シーリング剤などの材料として、そのまま使用できる利点がある。なお、当該無溶剤用途に適用せんとして、溶剤存在下で製造されたメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)の有機溶剤溶液を減圧して脱溶剤してもよい。
【0035】
また、上記の脱アルコール縮合反応に際しては、反応促進のために従来公知の触媒の内、エポキシ環を開環しないものを使用することができる。該触媒としては、たとえば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ゲルマニウム、錫、鉛、アンチモン、砒素、セリウム、硼素、カドミウム、マンガンのような金属;これら金属の酸化物、有機酸塩、ハロゲン化物、メトキシド等があげられる。これらのなかでも、特に有機錫、有機酸錫が好ましく、具体的には、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸錫等が有効である。
【0036】
本発明におけるメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)は、その分子中にメトキシシラン部分縮合物(3)に由来するメトキシ基を有している。当該メトキシ基の含有量は、このメトキシ基は加熱処理や水分(湿気)との反応により、ゾル−ゲル反応や脱メタノール縮合して、相互に結合したハイブリッド硬化物を形成するために必要となるため、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)は通常、反応原料となるメトキシシラン部分縮合物(3)のメトキシ基の40〜95モル%、好ましくは50〜90モル%を未反応のままで保持しておくのが良い。かかるハイブリッド硬化物は、ゲル化した微細なシリカ部位(シロキサン結合の高次網目構造)を有するものである。またメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)中には、ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)やメトキシシラン部分縮合物(3)が未反応のまま含有されていてもよい。なお、未反応のメトキシシラン部分縮合物(3)は、ゾル―ゲル硬化時に加水分解、重縮合によりシリカとなり、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)と結合する。
【0037】
本発明では、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)と、潜在性エポキシ樹脂用硬化剤(B)を組み合わせてなるシラン変性エポキシ樹脂組成物として使用する。本発明のシラン変性エポキシ樹脂組成物を、各種用途へ適用するにあたっては、用途に応じて各種のエポキシ樹脂を併用することもできる。当該併用しうるエポキシ樹脂としては、本発明の構成成分として記載した前記ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)、ノボラック型エポキシ樹脂(2);フタル酸、ダイマー酸などの多塩基酸類およびエピクロロヒドリンを反応させて得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸などのポリアミン類とエピクロロヒドリンを反応させて得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸などの過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂および脂環式エポキシ樹脂などがあげられる。
【0038】
また、潜在性エポキシ樹脂用硬化剤(B)としては、通常、エポキシ樹脂の硬化剤として使用されている従来公知の潜在性硬化剤が使用できる。潜在性エポキシ樹脂用硬化剤(B)は、ノボラック樹脂系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、酸無水物系硬化剤等が例示できる。具体的には、ノボラック樹脂系のものとしては、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂、ポリp−ビニルフェノール等があげられ、イミダゾール系硬化剤としては、2-メチルイミダゾール、2-エチルへキシルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2‐フェニルイミダゾール、1-シアノエチル‐2‐フェニルイミダゾリウム・トリメリテート、2‐フェニルイミダゾリウム・イソシアヌレート等があげられ、酸無水物系硬化剤としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサクロルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチル−3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸があげられ、またその他の硬化剤としてジシアンジアミド、ケチミン化合物等があげられる。これらの中でもシラン変性エポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性を考慮すると、フェノールノボラック樹脂系硬化剤、イミダゾール系硬化剤が好ましい。
【0039】
潜在性エポキシ樹脂用硬化剤(B)の使用割合は、通常、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂組成物中のエポキシ基1当量に対し、硬化剤中の活性水素を有する官能基が0.2〜1.5当量程度となるような割合で配合して調製される。
【0040】
また、前記エポキシ樹脂組成物には、エポキシ樹脂と硬化剤との硬化反応を促進するための硬化促進剤を含有することができる。例えば、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの三級アミン類;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾールなどのイミダゾール類;トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィンなどの有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレートなどのテトラフェニルボロン塩などをあげることができる。硬化促進剤はエポキシ樹脂の100重量部に対し、0.1〜5重量部の割合で使用するのが好ましい。
【0041】
前記エポキシ樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、有機溶剤、充填剤、離型剤、表面処理剤、難燃剤、粘度調節剤、可塑剤、抗菌剤、防黴剤、レベリング剤、消泡剤、着色剤、安定剤、カップリング剤等を配合してもよい。
【0042】
前記樹脂組成物からエポキシ樹脂-シリカハイブリッド硬化物を得る為には、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂のメトキシシリル部位のゾル-ゲル硬化及びエポキシ基のエポキシ硬化を行わねばならない。しかしながら、エポキシ硬化をゾル―ゲル硬化に先行させると、エポキシ樹脂―シリカハイブリッド硬化物はゾル―ゲル硬化に起因するメタノールの発生によって、発泡やクラックを生じる。これを防ぐ為、エポキシ樹脂-シリカハイブリッド硬化物の膜厚が50μmを超える場合や、硬化剤にノボラックフェノール樹脂を用いる場合には、ゾル―ゲル硬化促進のための触媒を当該樹脂組成物中に配合する事が好ましい。ゾル―ゲル硬化触媒としては、酸又は塩基性触媒、金属系触媒など従来公知のものを挙げる事が出来るが、特にオクチル酸錫やジブチル錫ジラウレートが活性が高く、しかも溶解性に優れており好ましい。前記触媒の使用量は使用する触媒の活性、膜厚、潜在性エポキシ樹脂用硬化剤(B)の種類により適宜決めることができる。通常、使用するメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂のメトキシ基に対し、モル比率で、触媒能力の高いパラトルエンスルホン酸やオクチル酸錫などで0.01〜5モル%程度、触媒能力の低いギ酸、酢酸などで0.1〜50モル%程度使用される
【0043】
シラン変性エポキシ樹脂組成物から直接、ハイブリッド硬化物を得るには、上記エポキシ樹脂組成物を室温〜250℃で硬化させる。硬化温度は、潜在性エポキシ樹脂用硬化剤(B)によって適宜決定される。当該硬化剤(B)として、フェノール樹脂系硬化剤やポリカルボン酸系硬化剤を用いる場合には、当該硬化剤(B)以外にゾル−ゲル硬化触媒を0.1%以上併用して、150〜250℃で硬化させるのが好ましい。なぜなら、メトキシシリル部位のゾル−ゲル硬化反応ではメタノールが発生するため、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基とエポキシ樹脂用硬化剤(B)とのエポキシ基の開環・架橋反応による硬化が進行した後に、当該メタノールが発生した場合には、発泡やクラックを生じるからである。そのため、触媒を適宜に選択することによってゾル−ゲル硬化反応速度を調整する必要がある。
【0044】
シラン変性エポキシ樹脂組成物から半硬化フィルムや成形用中間材料を得るには、上記エポキシ樹脂組成物のエポキシ硬化剤(B)として、フェノール樹脂系硬化剤、ポリカルボン酸系硬化剤、イミダゾール類、ケチミン類等の潜在性硬化剤を用い、錫系のゾル−ゲル硬化触媒を配合することが好ましい。エポキシ樹脂組成物を用いて半硬化フィルムや成形用中間材料を作製するには、好ましくは50〜120℃以下で加熱することにより、エポキシ樹脂組成物中にゾル−ゲル硬化によるシロキサン結合を70%以上、好ましくは90%以上、生成させるようゾル−ゲル硬化反応を進行させる必要がある。なぜなら、メトキシシリル部位のゾル−ゲル硬化反応ではメタノールが発生するため、半硬化物作製時のゾル−ゲル硬化の進行が少ないと、これに引き続く完全硬化反応において硬化収縮やクラック、発泡が生じる可能性があるためである。
【0045】
更にこのような半硬化物は、熱成形や熱圧着の後、通常160℃以上250℃以下の温度で完全硬化させて、エポキシ樹脂−シリカハイブリッド硬化物へと導かれる。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、耐熱性、低熱膨張性に優れ、しかもボイド(気泡)等を生じず、柔軟な半硬化状態を持つため加工性に優れるエポキシ樹脂硬化物を提供することができる。また、本発明によれば、シラン変性エポキシ樹脂の製造に用いる溶剤量を低減できるため、環境負荷を低減することもできる。
【0047】
【実施例】
以下、実施例および比較例をあげて本発明を具体的に説明する。なお、各例中、%は特記なし限り重量基準である。
【0048】
実施例1(メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂の製造)
攪拌機、分水器、温度計、窒素吹き込み口を備えた反応装置に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名「エピコート1001」、エポキシ当量472g/eq、m=2.1)320gおよびノボラック型エポキシ樹脂(東都化成(株)製、商品名「エポトートYDPN−638P」、エポキシ当量177g/eq)613.9g、グリシドール80.39g、メチルエチルケトン450gを加え、90℃で溶解させた。更にポリ(メチルトリメトキシシラン)(多摩化学(株)製、商品名「MTMS-A」、平均繰り返し単位数3.5)558.2gと触媒としてジブチル錫ラウレート3.5gを加え、窒素気流下にて、100℃で3時間、分水器を用いて脱メタノール反応させた。分水器を還流管に替え、更に100℃で5時間反応させることによって、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(以下、樹脂(A−1)という)を得た。なお、仕込み時のノボラック型エポキシ樹脂(2)の重量/ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)の重量=1.92である。また、ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)とノボラック型エポキシ樹脂(2)との水酸基当量の合計/メトキシシラン部分縮合物(3)のアルコキシ当量=0.12であった。樹脂(A−1)のエポキシ当量は330g/eqであった。
【0049】
実施例2
実施例1と同様の反応装置に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名「エピコート1001」、エポキシ当量472g/eq、m=2.1)360gおよびノボラック型エポキシ樹脂(東都化成(株)製、商品名「エポトートYDPN−638P」、エポキシ当量177g/eq)502.4g、グリシドール120.6g、メチルエチルケトン250gを加え、90℃で溶解させた。更にポリ(テトラメトキシシラン)(多摩化学(株)製、商品名「MS−51」、平均繰り返し単位数4)772.4gと触媒としてジブチル錫ラウレート0.5gを加え、窒素気流下にて、100℃で1.5時間、分水器を用いて脱メタノール反応させた。分水器を還流管に替え、更に100℃で6.5時間反応させることによって、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(以下、樹脂(A−2)という)を得た。
なお、仕込み時のノボラック型エポキシ樹脂(2)の重量/ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)の重量=1.40である。また、ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)とノボラック型エポキシ樹脂(2)との水酸基当量の合計/メトキシシラン部分縮合物(3)のアルコキシ当量=0.067であった。樹脂(A−2)のエポキシ当量は350g/eqであった。
【0050】
実施例3
実施例1と同様の反応装置に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名「エピコート1001」、エポキシ当量472g/eq、m=2.1)150gおよびノボラック型エポキシ樹脂(東都化成(株)製、商品名「エポトートYDPN−638P」、エポキシ当量177g/eq)513.9g、グリシドール37.68g、メチルエチルケトン250gを加え、95℃で溶解させた。更にポリ(メチルトリメトキシシラン)(多摩化学(株)製、商品名「MTMS-A」、平均繰り返し単位数3.5)261.7gと触媒としてジブチル錫ラウレート2gを加え、窒素気流下にて、100℃で7時間、分水器を用いて脱メタノール反応させることによって、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(以下、樹脂(A−3)という)を得た。
なお、仕込み時のノボラック型エポキシ樹脂(2)の重量/ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)の重量=3.43である。また、ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)とノボラック型エポキシ樹脂(2)との水酸基当量の合計/メトキシシラン部分縮合物(3)のアルコキシ当量=0.15であった。樹脂(A−3)のエポキシ当量は310g/eqであった。
【0051】
実施例4
実施例1と同様の反応装置に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名「エピコート1001」、エポキシ当量472g/eq、m=2.1)170gおよびノボラック型エポキシ樹脂(東都化成(株)製、商品名「エポトートYDPN−638P」、エポキシ当量177g/eq)489.1g、グリシドール42.71g、メチルエチルケトン225gを加え、90℃で溶解させた。更にポリ(メチルトリメトキシシラン)(多摩化学(株)製、商品名「MTMS-A」、平均繰り返し単位数3.5)296.5gと触媒としてジブチル錫ラウレート2gを加え、窒素気流下にて、100℃で2時間、分水器を用いて脱メタノール反応させた。分水器を還流管に替え、更に100℃で6時間反応させることによって、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(以下、樹脂(A−4)という)を得た。
なお、仕込み時のノボラック型エポキシ樹脂(2)の重量/ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)の重量=2.88である。また、ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)とノボラック型エポキシ樹脂(2)との水酸基当量の合計/メトキシシラン部分縮合物(3)のアルコキシ当量=0.14であった。樹脂(A−4)のエポキシ当量は310g/eqであった。
【0052】
比較例1
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名「エピコート1001」、エポキシ当量472g/eq、m=2.1)をそのまま用いた。以下、該樹脂を樹脂(a−1)という。
【0053】
比較例2
実施例1と同様の反応装置に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名「エピコート1001」、エポキシ当量472g/eq、m=2.1)320gおよびノボラック型エポキシ樹脂(東都化成(株)製、商品名「エポトートYDPN−638P」、エポキシ当量177g/eq)613.9gを加え、80℃で溶解させた。室温まで冷却後、更にポリ(メチルトリメトキシシラン)(多摩化学(株)製、商品名「MTMS-A」、平均繰り返し単位数3.5)558.2gを混合することにより、エポキシ樹脂組成物を得た。以下、該樹脂組成物を樹脂(a−2)という。
なお、仕込み時のノボラック型エポキシ樹脂(2)の重量/ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)の重量=1.92である。また、ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)とノボラック型エポキシ樹脂(2)との水酸基当量の合計/メトキシシラン部分縮合物(3)のアルコキシ当量=0.12であった。樹脂(a−1)のエポキシ当量は330g/eqであった。
【0054】
比較例3
実施例1と同様の反応装置に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名「エピコート1001」、エポキシ当量472g/eq、m=2.1)336.0gおよびメチルエチルケトン268.8gを加え、70℃で溶解した。更にポリ(テトラメトキシシラン)(多摩化学(株)製、商品名「MS−51」、平均繰り返し単位数4)360.4gと、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.3gを加え、80℃で6時間還流反応させた後、50℃まで冷却し、メチルアルコール33.6gを加え、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(以下、樹脂(a−4)という)を得た。ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)の水酸基当量/メトキシシラン部分縮合物(3)のアルコキシ当量=0.1であった。得られたメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂溶液の硬化残分は50.8%、エポキシ当量は1400g/eq、硬化残分中に含まれるシリカ量の割合は36%であった。
【0055】
実施例5、6および比較例4〜6(シラン変性エポキシ樹脂組成物の調製とエポキシ樹脂−シリカハイブリッド半硬化物の作成)
実施例1、2および比較例1〜3で得られた各樹脂に、ノボラック型フェノール樹脂(荒川化学工業(株)製、商品名 タマノル759)をメチルエチルケトンで50%に希釈した溶液を、エポキシ当量/フェノール当量が1/1となる割合で加え、オクチル酸錫を固形分当り2%加え、エポキシ樹脂組成物とした。
【0056】
(エポキシ樹脂−シリカハイブリッド半硬化物の評価)
実施例5、6および比較例4〜6で得られた各エポキシ樹脂組成物を、フッ素樹脂コーティングされた容器(縦×横×深さ=10cm×10cm×1.5cm)に注ぎ、80℃で1時間加熱することにより、溶剤の揮発及びゾル−ゲル硬化を行い、エポキシ樹脂−シリカハイブリッド半硬化物を得た。得られた半硬化物の状態(外観、収縮、発泡、柔軟性)を以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
【0057】
(外観の評価)
○:透明。
△:曇りがある。
×:白化している。
【0058】
(収縮の評価)
○:硬化物にクラック、そりがない。
△:硬化物にそりが存在する。
×:硬化物にクラックがある。
【0059】
(発泡の評価)
○:硬化物中に気泡がない。
△:硬化物中に気泡が5つ未満存在する。
×:硬化物中に気泡が5つ以上存在する。
【0060】
(柔軟性の評価)
○:柔軟であり、成形性に富む。
×:変形させると割れる。
【0061】
【表1】
【0062】
表1から明らかなように、各実施例5、6および比較例4では、いずれも透明な半硬化物が得られた。しかし比較例5で得られた半硬化物は、エポキシ樹脂とシリカの相分離によって白化しており、しかも非常に脆いものであった。比較例6で得られた半硬化物は透明であったが、変形させると割れてしまった。
【0063】
実施例7、8および比較例7〜9(エポキシ樹脂−シリカハイブリッド硬化物の調製及び評価)
先に得られた半硬化物をさらに200℃で1時間加熱することによってエポキシ硬化させ、完全硬化物を得た。得られた完全硬化物の状態(外観、収縮、発泡、半硬化物からの重量変化)を以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
【0064】
(外観の評価)
○:透明。
△:曇りがある。
×:白化している。
【0065】
(収縮の評価)
○:硬化物にクラック、そりがない。
△:硬化物にそりが存在する。
×:硬化物にクラックがある。
【0066】
(発泡の評価)
○:硬化物中に気泡がない。
△:硬化物中に気泡が5つ未満存在する。
×:硬化物中に気泡が5つ以上存在する。
【0067】
(半硬化物からの重量変化の評価)
○:重量減少が3%未満。
△:重量変化が5%未満。
×:重量変化が5%以上。
【0068】
【表2】
【0069】
実施例7、8及び比較例9では、いずれも透明な完全硬化物が得られ、半硬化物からの重量減少もわずかであった。比較例7で得られた完全硬化物は大きく重量減少した。比較例8で得られた完全硬化物にはエポキシ樹脂とシリカの相分離によってムラ、発泡、クラックがあり、非常に脆いものであった
【0070】
(耐熱性)
実施例7、8および比較例7、9で得られた硬化フィルムを5mm×20mmにカットし、粘弾性測定器(レオロジ社製、商品名「DVE−V4」、測定条件:振幅0.5μm、振動数10Hz、スロープ3℃/分)を用いて動的貯蔵弾性率を測定して、耐熱性を評価した。測定結果を図1に示す。比較例2では完全硬化物を成形できず、評価を行うことができなかった。
【0071】
図1から明らかなように、実施例7、8および比較例9では、比較例7に比べ、硬化フィルムのガラス転移点は上昇しており、また、高温でも弾性率の低下が少なく、耐熱性に優れている。
【0072】
(線膨張性)
実施例7、8および比較例7で得られた硬化フィルムを使って、熱応力歪測定装置(セイコー電子工業(株)製、商品名 TMA120C)で、40〜100℃の線膨張率を測定した。結果を表3に示す。比較例9は測定に必要な膜厚のサンプルを調製できず、検討を行えなかった。
【0073】
【表3】
【0074】
表3から明らかなように、実施例7、8は比較例7に比べて熱膨張性が低い。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例7、8および比較例7、9で得られた硬化フィルムの耐熱性の評価結果である。
Claims (11)
- ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)、ノボラック型エポキシ樹脂(2)およびメトキシシラン部分縮合物(3)を脱メタノール縮合反応させて得られるメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)。
- ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)、ノボラック型エポキシ樹脂(2)およびメトキシシラン部分縮合物(3)を脱メタノール縮合反応させて得られることを特徴とするメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)の製造方法。
- ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)が、エポキシ当量が230g/eqを超え1000g/eq未満のビスフェノールA型エポキシ樹脂である請求項2記載のメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)の製造方法。
- ノボラック型エポキシ樹脂(2)がフェノールノボラック型エポキシ樹脂である請求項2または3記載のメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)の製造方法。
- メトキシシラン部分縮合物(3)がメチルトリメトキシシランの部分縮合物および/またはテトラメトキシシランの部分縮合物である請求項2〜4のいずれかに記載のシラン変性エポキシ樹脂(A)の製造方法。
- ノボラックエポキシ樹脂の重量/ビスフェノール型エポキシ樹脂の重量(重量比)が0.5〜5である請求項2〜5のいずれかに記載のシラン変性エポキシ樹脂(A)の製造方法。
- ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)の水酸基とノボラック型エポキシ樹脂(2)との水酸基の合計当量/メトキシシラン部分縮合物(3)のメトキシ基の当量(当量比)が、0.03〜0.5である請求項2〜6のいずれかに記載のシラン変性エポキシ樹脂(A)の製造方法。
- 請求項1に記載のメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)と潜在性エポキシ樹脂用硬化剤(B)とを含有することを特徴とするシラン変性エポキシ樹脂組成物。
- 潜在性エポキシ樹脂硬化剤(B)が、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、酸無水物、イミダゾール類、ケチミン化合物、ジシアンジアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項8に記載のシラン変性エポキシ樹脂組成物。
- 請求項8または9記載のシラン変性エポキシ樹脂組成物を50〜120℃で乾燥、ゾル−ゲル硬化させてなるエポキシ樹脂−シリカハイブリッド半硬化物。
- 請求項8〜10のいずれかに記載のシラン変性エポキシ樹脂組成物または半硬化物を室温〜250℃で完全硬化させてなるエポキシ樹脂−シリカハイブリッド硬化物。
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