JP2004346144A - エポキシ基を有するケイ素化合物及び熱硬化性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐熱性の高い硬化物を与えるエポキシ基を有するケイ素化合物を提供すること。
【解決手段】分子中にエポキシ基を有するアルコキシシランを塩基性触媒にて加水分解、縮合することを特徴とするエポキシ基を有するケイ素化合物及びこれと硬化剤を含有する熱硬化性樹脂組成物。
【選択図】なし
【解決手段】分子中にエポキシ基を有するアルコキシシランを塩基性触媒にて加水分解、縮合することを特徴とするエポキシ基を有するケイ素化合物及びこれと硬化剤を含有する熱硬化性樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の所属する技術分野】
本発明は、新規なケイ素化合物、及び各種電気・電子部品絶縁材料、積層板(プリント配線板)やFRP(繊維強化プラスチック)を始めとする各種複合材料、接着剤、塗料等に用いられる耐熱性に優れた硬化物を与える熱硬化性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
エポキシ樹脂は、耐熱性、電気特性、力学特性等に優れるため、各種の電気・電子部品、構造用材料、接着剤、塗料等の分野で幅広く用いられている。また、近年の電気・電子分野の発展に伴い、エポキシ樹脂に対する要求も高度なものとなり、特に耐熱性の向上が求められるようになってきた。
【0003】
エポキシ樹脂の耐熱性を向上させる手法としては、エポキシ樹脂中の官能基密度を上げることにより硬化物の架橋密度を高める方法や、樹脂骨格中に剛直な骨格を導入する手法といった、エポキシ樹脂自体の構造改良や、ガラス繊維、シリカ粒子やマイカ等のフィラーを充填する方法がある。しかし、このようなエポキシ樹脂自体の構造改良やフィラー等の添加による手法では充分な改善効果が得られていなかった。
【0004】
エポキシ樹脂自体の構造改良やフィラー等の添加以外の耐熱性向上手法としてはビスフェノールA型エポキシ樹脂と加水分解性アルコキシシランを脱アルコール反応させて得られるアルコキシ基を有するシラン変性エポキシ樹脂を使用する方法(特許文献1)が提案されているが、副生物として生成するアルコール、水のため硬化物にボイド等の欠陥が生じやすいという問題が指摘されている。
また、上記アルコキシ基を有するシラン変性エポキシ樹脂と同様に分子中にケイ素とエポキシ基を持った化合物として、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン及びその製造方法が提案されている(特許文献2)が、安定性向上の為には主鎖末端の水酸基及び/またはアルコキシ基をエンドキャップする工程が必要であること、さらには目的物を得るためにはあらかじめメルカプト基を導入しこれとエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物をラジカル開始剤存在下でマイケル付加反応させることによりエポキシ基を有するオルガノポリシロキサンを得るという多段階の工程が必要であり効率的ではない。また得られたエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの耐熱性には言及されていない。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−59013号公報
【特許文献2】
特開平10―324749号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の耐熱性向上の手法に依ることなく耐熱性に優れた硬化物を得ることが出来かつ安定なエポキシ基を有するケイ素化合物を効率的に提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果本発明に至った。すなわち本発明は、
(1)下記式(1a)
R1aSi(OR2)3 (1a)
(式中R1aは、エポキシ基を有する置換基を示す。R2は炭素数4以下のアルキル基を示す。)
で表されるエポキシ基を有するアルコキシケイ素化合物同士またはこれと下記式(1b)
R1bSi(OR3)3 (1b)
(式中R1bは、炭素数10以下のアルキル基、アリール基又は不飽和脂肪族残基を示す。R3は炭素数4以下のアルキル基を示す。)
で表される置換アルコキシケイ素化合物を塩基性触媒の存在下アルコキシケイ素化合物の1.4倍モル以上の水で(共)加水分解縮合させ得られることを特徴とするエポキシ基を有するケイ素化合物、
(2)式(1a)の化合物がR1aとして、炭素数3以下のグリシドキシアルキル基および/又はオキシラン基を持った炭素数5〜8のシクロアルキル基で置換されたアルキル基を有する化合物であり、式(1b)の化合物がR1bとして、炭素数6以下のアルキル基又はアリール基を有する化合物である上記(1)記載のエポキシ基を有するケイ素化合物、
(3)式(1a)の化合物同士を縮合させたエポキシ基を有するケイ素化合物であって、全ての縮合成分が式(1a)においてR1aが炭素数3以下のグリシドキシアルキル基である上記(1)記載のエポキシ基を有するケイ素化合物、
(4)式(1a)の化合物同士を縮合させたエポキシ基を有するケイ素化合物であって、全ての縮合成分が式(1a)においてR1aがオキシラン基を持った炭素数5〜8のシクロアルキル基で置換されたアルキル基である上記(1)記載のエポキシ基を有するケイ素化合物、
(5)(1)上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のエポキシ基を有するケイ素化合物、(2)硬化剤並びに必要に応じて(3)硬化促進剤及び(4)有機溶剤を含有する熱硬化性樹脂組成物、
(6)成分(1)以外のエポキシ樹脂を含有する上記(5)記載の熱硬化性樹脂組成物、
(7)上記(5)又は(6)記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物
に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する式(1a)のエポキシ基を有するアルコキシケイ素化合物中のエポキシ基を有する基R1aとしては、エポキシ基を有する置換基であれば特に制限はないが、β−グリシドキシエチル基、γ−グリシドキシプロピル基、γ−グリシドキシブチル基等の炭素数4以下、好ましくは3以下のグリシドキシアルキル基、グリシジル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘプチル)エチル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ペンチル基等のオキシラン基を持った炭素数5〜8のシクロアルキル基で置換されたアルキル基、好ましくはオキシラン基を持った炭素数5〜8のシクロアルキル基で置換された炭素数3以下のアルキル基等が挙げられる。これらの中でβ−グリシドキシエチル基、γ−グリシドキシプロピル基、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチル基が好ましい。また、R2としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等が例示されるが、反応条件の点でメチル基、エチル基が好ましい。
式(1a)の化合物の好ましい具体例としては、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0009】
また、式(1b)で表される置換アルコキシケイ素化合物としては、置換基R1bが、炭素数10以下のアルキル基、アリール基又は不飽和脂肪族残基、好ましくは、組成物の相溶性、硬化物の物性の点から炭素数6以下のアルキル基又はアリール基であり、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、デシル基等のアルキル基及びフェニル基が例示される。またR3としては、炭素数4以下のアルキル基である組み合わせの化合物が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等が例示されるが、反応条件の点でメチル基、エチル基がより好ましい。
【0010】
式(1b)の化合物として、具体的にはメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン等の(C1〜C10)アルキルトリ(C1〜C2)アルコキシシラン類、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のアリールトリアルコキシシラン類等が挙げられる。
【0011】
本発明のエポキシ基を有するケイ素化合物を得る前記縮合反応においては、式(1a)のエポキシ基を有するアルコキシケイ素化合物を必須成分とし、式(1a)の化合物単独、または必要に応じ、式(1a)の化合物と式(1b)の置換アルコキシケイ素化合物とを塩基性触媒存在下、アルコキシケイ素化合物の1.4倍モル以上の水を添加し(共)加水分解縮合させることにより得る事が出来る。水の添加量は、反応混合物中のアルコキシケイ素化合物1モルに対し通常1.4〜4.5モル、好ましくは1.4〜4モルである。1.4モル未満では耐熱性向上効果に乏しく、4.5モルより多いと生成物の保存安定性に悪影響を及ぼす。上記反応の反応条件は、使用する触媒の種類、使用量にもよるが、通常5〜140℃、好ましくは10〜120℃であり、反応時間は通常1〜12時間である。
【0012】
上記縮合反応に使用する触媒としては塩基性物質であれば特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどの無機塩基、アンモニア、トリエチルアミン、ジエチレントリアミン、n−ブチルアミン、ジメチルアミノエタノール、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなどの有機塩基を使用することが出来る。これらの中でも、特に生成物からの触媒除去が容易である点で無機塩基又はアンモニアが好ましい。触媒の添加量としては、エポキシ基を有するアルコキシケイ素化合物(1a)と置換アルコキシケイ素化合物(1b)の合計に対し、通常5×10−4〜7.5重量%、好ましくは1×10−3〜5重量%である。
【0013】
上記縮合反応は、無溶剤または溶剤中で行うことができる。溶剤としては、エポキシ基を有するアルコキシケイ素化合物及び置換アルコキシケイ素化合物を溶解する溶剤であれば特に制限はない。このような溶剤としては、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの非プロトン性極性溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が例示できる。目的とする化合物は、反応終了後、水洗等により触媒を除去した後、反応溶媒を留去することにより得ることが出来る。
【0014】
このようにして得られる本発明のエポキシ基を有するケイ素化合物の分子量は、重量平均分子量で400〜50000のものが好ましく、750〜30000のものがより好ましい。重量平均分子量で400未満の場合、耐熱性向上効果に乏しく、50000より大きい場合、組成物にした場合の相溶性の低下、粘度の上昇といった組成物としての物性が低下し好ましくない。
【0015】
本発明のエポキシ基を有するケイ素化合物は、各種用途に供されるが、通常、硬化剤と組み合わせ、熱硬化性樹脂組成物として使用される。また各種用途に適用するにあたっては、用途に応じて各種のエポキシ樹脂を併用することも出来る。
【0016】
硬化剤としては、通常、エポキシ樹脂の硬化剤として使用されている、アミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノール系化合物等を特に制限無く使用できる。使用しうる硬化剤の具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、テトラエチレンペンタミン、ジメチルベンジルアミン、ケチミン化合物、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ビスフェノール類、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)と各種アルデヒドとの重縮合物、フェノール類と各種ジエン化合物との重合物、フェノール類と芳香族ジメチロールとの重縮合物、又はビスメトキシメチルビフェニルとナフトール類若しくはフェノール類との縮合物等、ビフェノール類及びこれらの変性物、イミダゾール、3フッ化硼素−アミン錯体、グアニジン誘導体などが挙げられる。硬化剤の使用量は、組成物中のエポキシ基1当量に対して0.2〜1.5当量が好ましく、0.3〜1.2当量が特に好ましい。また、硬化剤としてベンジルジメチルアミン等の3級アミンを使用する場合の硬化剤の使用量としては、組成物中のエポキシ基を有する化合物に対し、0.3〜20重量%使用することが好ましく、0.5〜10重量%が特に好ましい。
【0017】
本発明の熱硬化性樹脂組成物中には必要により硬化促進剤を含有させることができる。使用しうる硬化促進剤の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチルー4−メチルイミダゾール、等のイミダゾール類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルフォスフィン等のホスフィン類、オクチル酸スズなどの金属化合物、第4級ホスホニウム塩などが挙げられる。硬化促進剤は、組成物中のエポキシ基を有する化合物100重量部に対して0.01〜15重量部が必要に応じ用いられる。
【0018】
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、本発明のエポキシ基を有するケイ素化合物を他のエポキシ樹脂と併用する場合、本発明のエポキシ基を有するケイ素化合物が全エポキシ化合物中に占める割合は、10重量%以上が好ましい。使用することができる他のエポキシ樹脂としては、通常、電気・電子部品に使用されるエポキシ樹脂でであれば特に制限はなく、通常フェノール性水酸基を2個以上有する化合物をグリシジル化して得ることができる。用いうるエポキシ樹脂の具体例としては、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールF、ビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、ビスフェノールF、ビスフェノールS若しくはビスフェノールK等のビスフェノール類、又はビフェノール若しくはテトラメチルビフェノール等のビフェノール類、又はハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン若しくはジ−ter.ブチルハイドロキノン等のハイドロキノン類、又はレゾルシノール若しくはメチルレゾルシノール等のレゾルシノール類、又はカテコール若しくはメチルカテコール等のカテコール類、又はジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシメチルナフタレン若しくはジヒドロキシジメチルナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類のグリシジル化物やフェノール類若しくはナフトール類とアルデヒド類との縮合物、又はフェノール類若しくはナフトール類とキシリレングリコールとの縮合物又はフェノール類とイソプロペニルアセトフェノンとの縮合物又はフェノール類とジシクロペンタジエンとの反応物又はビスメトキシメチルビフェニルとナフトール類若しくはフェノール類との縮合物のグリシジル化物等が挙げられる。これらは、市販品として若しくは公知の方法により得ることが出来る。その他EHPE−3150、セロキサイド2021(ダイセル化学工業(株)製)、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂等の脂環式エポキシ樹脂、TEPIC、TEPIC−L、TEPIC−H、TEPIC−S(いずれも日産化学工業(株)製)等の複素環式エポキシ樹脂が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いても良い。
【0019】
更に、本発明の熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じてシリカ、アルミナ、ガラスファイバー、タルク等の充填材や離型剤、顔料、表面処理剤、粘度調整剤、可塑剤、安定剤、カップリング剤等、種々の配合剤を添加することができる。
【0020】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物を、溶剤に溶解し、ワニスとして使用することも出来る。溶剤としては、組成物の各成分を溶解するものであれば特に限定されないが、例えばトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。これら溶剤の溶解したワニスを、ガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させ、加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形して本発明の硬化物を得ることも出来る。
その際溶剤は、本発明の熱硬化性樹脂組成物と溶剤の合計重量に対し溶剤の占める割合が、通常10〜70重量%、好ましくは15〜65重量%となる量使用する。
【0021】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、各成分を均一に混合することにより得られる。本発明の熱硬化性樹脂組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易にその硬化物とすることができる。例えばエポキシ基を有するケイ素化合物と硬化剤並びに必要により硬化促進剤及び配合剤とを必要に応じて押出機、ニ−ダ、ロ−ル等を用いて均一になるまで充分に混合してエポキシ樹脂組成物を得、そのエポキシ樹脂組成物を溶融後注型あるいはトランスファ−成型機などを用いて成型し、さらに80〜200℃で2〜10時間加熱することによりその硬化物を得ることができる。
【0022】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。尚、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、実施例中特に断りがない限り、部は重量部を示す。なお、実施例中の各物性値は以下の方法で測定した。
(1)重量平均分子量:GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により測定。
(2)エポキシ当量:JIS K−7236に準じた方法で測定。
【0023】
実施例1
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン94.5部、メチルイソブチルケトン94.5部、を反応容器に仕込み、80℃に昇温した。昇温後、0.1重量%水酸化カリウム水溶液21.6部を30分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、生成するメタノールを除去しながら80℃にて5時間反応させた。反応終了後、洗浄液が中性になるまで水洗を繰り返した。次いで減圧下で溶媒を除去することにより本発明のエポキシ基を有するケイ素化合物(A)66部を得た。得られた化合物のエポキシ当量は170g/eq、重量平均分子量は4000であった。本エポキシ化合物(A)の1H−NMR(CDCl3溶液)からエポキシ環のメチンピーク(3.2ppm付近)より、エポキシ環が保持されていること、及びメトキシ基のピーク(3.6ppm付近)が消失していることが確認できた。
【0024】
実施例2
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン94.5部、メチルイソブチルケトン94.5部、0.1重量%水酸化カリウム水溶液10.1部を使用した他は実施例1と同様にして反応させ、本発明のエポキシ基を有するケイ素化合物(B)67部を得た。得られた化合物のエポキシ当量は180g/eq、重量平均分子量は1500であった。本エポキシ化合物(B)の1H−NMR(CDCl3溶液)からエポキシ環のメチンピーク(3.2ppm付近)より、エポキシ環が保持されていること、及びメトキシ基のピーク(3.6ppm付近)の積分値により約93%のメトキシ基が消失していることが確認できた。
【0025】
実施例3
β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン98.6部、メチルイソブチルケトン98.6部、0.1重量%水酸化カリウム水溶液21.6部を使用した他は実施例1と同様にして反応させ、本発明のエポキシ基を有するケイ素化合物(C)67部を得た。得られた化合物のエポキシ当量は182g/eq、重量平均分子量は3500であった。本エポキシ化合物(C)の1H−NMR(CDCl3溶液)からエポキシ環のメチンピーク(3.2ppm付近)より、エポキシ環が保持されていること、及びメトキシ基のピーク(3.6ppm付近)が消失していることが確認できた。
【0026】
実施例4
β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン98.6部、メチルイソブチルケトン98.6部、0.1重量%水酸化カリウム水溶液10.1部を使用した他は製造例1と同様にして反応させ、本発明のエポキシ基を有するケイ素化合物(D)69部を得た。得られた化合物のエポキシ当量は190g/eq、重量平均分子量は1500であった。本エポキシ化合物(D)の1H−NMR(CDCl3溶液)からエポキシ環のメチンピーク(3.2ppm付近)より、エポキシ環が保持されていること、及びメトキシ基のピーク(3.6ppm付近)の積分値より約94%のメトキシ基が消失していることが確認できた。
【0027】
実施例5
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン85.1部、フェニルトリメトキシシラン7.9部、メチルイソブチルケトン93部、0.1重量%水酸化カリウム水溶液21.6部使用した他は実施例1と同様にして反応させ、本発明のエポキシ基を有するケイ素化合物(E)69部を得た。得られた化合物のエポキシ当量は190g/eq、重量平均分子量は2200であった。本エポキシ化合物(E)の1H−NMR(CDCl3溶液)からエポキシ環のメチンピーク(3.2ppm付近)より、エポキシ環が保持されていること、及びメトキシ基のピーク(3.6ppm付近)が消失していることが確認できた。
【0028】
比較例1
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン94.5部、メチルイソブチルケトン94.5部、0.1重量%水酸化カリウム水溶液9部を使用した他は実施例1と同様にして反応させ、比較用のエポキシ基を有するケイ素化合物(F)66部を得た。得られた化合物のエポキシ当量は190g/eq、重量平均分子量は1200であった。本エポキシ化合物(F)の1H−NMR(CDCl3溶液)からエポキシ環のメチンピーク(3.2ppm付近)より、エポキシ環が保持されていること、及びメトキシ基のピーク(3.6ppm付近)の積分値より約80%のメトキシ基が消失していることが確認できた。
【0029】
実施例6〜10、比較例2,3
実施例1〜5及び比較例1で得られたエポキシ基を有するケイ素化合物(A〜F)を表1に示す配合割合で均一に混合し本発明及び比較用の熱硬化性樹脂組成物を調製した。調製した組成物をアルミカップに流し込み、80℃、120℃、150℃、で逐次各2時間、更に190℃で4時間加熱することによってそれらの硬化物を得た。また得られた各硬化物にボイド等の欠陥は認められなかった。
【0030】
【表1】
【0031】
エポキシ樹脂(1):エピコート828(ジャパンエポキシレジン(株)製;エポキシ当量190g/eq)、硬化剤(2):4,4‘−ジアミノジフェニルメタン
【0032】
(耐熱性評価)
実施例6〜10及び比較例2,3で得られた硬化物を幅4mm、厚さ1mm、長さ40mmの大きさに成形し、動的粘弾性測定装置(TAインスツルメンツ社製、DMA2980、測定条件:振幅10μm、振動数10Hz、昇温速度2℃/分)を用いて動的貯蔵弾性率及び動的損失弾性率を測定し、動的粘弾性測定におけるガラス転移点の有無により耐熱性の評価を行った。なお、動的粘弾性測定におけるガラス転移点は、動的貯蔵弾性率を動的損失弾性率で除した値(以下tanδ)を温度に対してプロットした場合のピーク位置で表される。耐熱性の評価は、tanδのピークが存在する場合を「ガラス転移点有り」で耐熱性×、tanδのピークが存在しない場合を「ガラス転移点無し」で耐熱性○として評価した。また、ピークの大きさは耐熱性の優劣を示し、ピークが小さいほど耐熱性は高い。測定結果の例を図1に、反応時に添加した水のアルコキシシランに対するモル倍率(表中、加水分解水)及び耐熱性の評価結果を表2に示す。
【0033】
【0034】
図1中、比較例2,3はtanδのピークが存在し、ガラス転移点を有しているが、実施例6、7はピークが存在せずガラス転移点が消失していることを示している。また表2より、水の量が1.4倍モル未満ではガラス転移点が存在し耐熱性が低いが、1.4倍モル以上ではガラス転移点が消失し、耐熱性に優れていることが認められる。
【0035】
【発明の効果】
本発明のエポキシ基を有するケイ素化合物を使用することにより、耐熱性に優れた硬化物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は実施例6、7及び比較例2、3で得られた硬化物の動的粘弾性測定の結果を示すグラフである。縦軸は動的貯蔵弾性率を動的損失弾性率で除した値(tanδ)、横軸は温度をそれぞれ示す。
【発明の所属する技術分野】
本発明は、新規なケイ素化合物、及び各種電気・電子部品絶縁材料、積層板(プリント配線板)やFRP(繊維強化プラスチック)を始めとする各種複合材料、接着剤、塗料等に用いられる耐熱性に優れた硬化物を与える熱硬化性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
エポキシ樹脂は、耐熱性、電気特性、力学特性等に優れるため、各種の電気・電子部品、構造用材料、接着剤、塗料等の分野で幅広く用いられている。また、近年の電気・電子分野の発展に伴い、エポキシ樹脂に対する要求も高度なものとなり、特に耐熱性の向上が求められるようになってきた。
【0003】
エポキシ樹脂の耐熱性を向上させる手法としては、エポキシ樹脂中の官能基密度を上げることにより硬化物の架橋密度を高める方法や、樹脂骨格中に剛直な骨格を導入する手法といった、エポキシ樹脂自体の構造改良や、ガラス繊維、シリカ粒子やマイカ等のフィラーを充填する方法がある。しかし、このようなエポキシ樹脂自体の構造改良やフィラー等の添加による手法では充分な改善効果が得られていなかった。
【0004】
エポキシ樹脂自体の構造改良やフィラー等の添加以外の耐熱性向上手法としてはビスフェノールA型エポキシ樹脂と加水分解性アルコキシシランを脱アルコール反応させて得られるアルコキシ基を有するシラン変性エポキシ樹脂を使用する方法(特許文献1)が提案されているが、副生物として生成するアルコール、水のため硬化物にボイド等の欠陥が生じやすいという問題が指摘されている。
また、上記アルコキシ基を有するシラン変性エポキシ樹脂と同様に分子中にケイ素とエポキシ基を持った化合物として、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン及びその製造方法が提案されている(特許文献2)が、安定性向上の為には主鎖末端の水酸基及び/またはアルコキシ基をエンドキャップする工程が必要であること、さらには目的物を得るためにはあらかじめメルカプト基を導入しこれとエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物をラジカル開始剤存在下でマイケル付加反応させることによりエポキシ基を有するオルガノポリシロキサンを得るという多段階の工程が必要であり効率的ではない。また得られたエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの耐熱性には言及されていない。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−59013号公報
【特許文献2】
特開平10―324749号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の耐熱性向上の手法に依ることなく耐熱性に優れた硬化物を得ることが出来かつ安定なエポキシ基を有するケイ素化合物を効率的に提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果本発明に至った。すなわち本発明は、
(1)下記式(1a)
R1aSi(OR2)3 (1a)
(式中R1aは、エポキシ基を有する置換基を示す。R2は炭素数4以下のアルキル基を示す。)
で表されるエポキシ基を有するアルコキシケイ素化合物同士またはこれと下記式(1b)
R1bSi(OR3)3 (1b)
(式中R1bは、炭素数10以下のアルキル基、アリール基又は不飽和脂肪族残基を示す。R3は炭素数4以下のアルキル基を示す。)
で表される置換アルコキシケイ素化合物を塩基性触媒の存在下アルコキシケイ素化合物の1.4倍モル以上の水で(共)加水分解縮合させ得られることを特徴とするエポキシ基を有するケイ素化合物、
(2)式(1a)の化合物がR1aとして、炭素数3以下のグリシドキシアルキル基および/又はオキシラン基を持った炭素数5〜8のシクロアルキル基で置換されたアルキル基を有する化合物であり、式(1b)の化合物がR1bとして、炭素数6以下のアルキル基又はアリール基を有する化合物である上記(1)記載のエポキシ基を有するケイ素化合物、
(3)式(1a)の化合物同士を縮合させたエポキシ基を有するケイ素化合物であって、全ての縮合成分が式(1a)においてR1aが炭素数3以下のグリシドキシアルキル基である上記(1)記載のエポキシ基を有するケイ素化合物、
(4)式(1a)の化合物同士を縮合させたエポキシ基を有するケイ素化合物であって、全ての縮合成分が式(1a)においてR1aがオキシラン基を持った炭素数5〜8のシクロアルキル基で置換されたアルキル基である上記(1)記載のエポキシ基を有するケイ素化合物、
(5)(1)上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のエポキシ基を有するケイ素化合物、(2)硬化剤並びに必要に応じて(3)硬化促進剤及び(4)有機溶剤を含有する熱硬化性樹脂組成物、
(6)成分(1)以外のエポキシ樹脂を含有する上記(5)記載の熱硬化性樹脂組成物、
(7)上記(5)又は(6)記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物
に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する式(1a)のエポキシ基を有するアルコキシケイ素化合物中のエポキシ基を有する基R1aとしては、エポキシ基を有する置換基であれば特に制限はないが、β−グリシドキシエチル基、γ−グリシドキシプロピル基、γ−グリシドキシブチル基等の炭素数4以下、好ましくは3以下のグリシドキシアルキル基、グリシジル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘプチル)エチル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ペンチル基等のオキシラン基を持った炭素数5〜8のシクロアルキル基で置換されたアルキル基、好ましくはオキシラン基を持った炭素数5〜8のシクロアルキル基で置換された炭素数3以下のアルキル基等が挙げられる。これらの中でβ−グリシドキシエチル基、γ−グリシドキシプロピル基、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチル基が好ましい。また、R2としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等が例示されるが、反応条件の点でメチル基、エチル基が好ましい。
式(1a)の化合物の好ましい具体例としては、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0009】
また、式(1b)で表される置換アルコキシケイ素化合物としては、置換基R1bが、炭素数10以下のアルキル基、アリール基又は不飽和脂肪族残基、好ましくは、組成物の相溶性、硬化物の物性の点から炭素数6以下のアルキル基又はアリール基であり、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、デシル基等のアルキル基及びフェニル基が例示される。またR3としては、炭素数4以下のアルキル基である組み合わせの化合物が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等が例示されるが、反応条件の点でメチル基、エチル基がより好ましい。
【0010】
式(1b)の化合物として、具体的にはメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン等の(C1〜C10)アルキルトリ(C1〜C2)アルコキシシラン類、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のアリールトリアルコキシシラン類等が挙げられる。
【0011】
本発明のエポキシ基を有するケイ素化合物を得る前記縮合反応においては、式(1a)のエポキシ基を有するアルコキシケイ素化合物を必須成分とし、式(1a)の化合物単独、または必要に応じ、式(1a)の化合物と式(1b)の置換アルコキシケイ素化合物とを塩基性触媒存在下、アルコキシケイ素化合物の1.4倍モル以上の水を添加し(共)加水分解縮合させることにより得る事が出来る。水の添加量は、反応混合物中のアルコキシケイ素化合物1モルに対し通常1.4〜4.5モル、好ましくは1.4〜4モルである。1.4モル未満では耐熱性向上効果に乏しく、4.5モルより多いと生成物の保存安定性に悪影響を及ぼす。上記反応の反応条件は、使用する触媒の種類、使用量にもよるが、通常5〜140℃、好ましくは10〜120℃であり、反応時間は通常1〜12時間である。
【0012】
上記縮合反応に使用する触媒としては塩基性物質であれば特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどの無機塩基、アンモニア、トリエチルアミン、ジエチレントリアミン、n−ブチルアミン、ジメチルアミノエタノール、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなどの有機塩基を使用することが出来る。これらの中でも、特に生成物からの触媒除去が容易である点で無機塩基又はアンモニアが好ましい。触媒の添加量としては、エポキシ基を有するアルコキシケイ素化合物(1a)と置換アルコキシケイ素化合物(1b)の合計に対し、通常5×10−4〜7.5重量%、好ましくは1×10−3〜5重量%である。
【0013】
上記縮合反応は、無溶剤または溶剤中で行うことができる。溶剤としては、エポキシ基を有するアルコキシケイ素化合物及び置換アルコキシケイ素化合物を溶解する溶剤であれば特に制限はない。このような溶剤としては、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの非プロトン性極性溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が例示できる。目的とする化合物は、反応終了後、水洗等により触媒を除去した後、反応溶媒を留去することにより得ることが出来る。
【0014】
このようにして得られる本発明のエポキシ基を有するケイ素化合物の分子量は、重量平均分子量で400〜50000のものが好ましく、750〜30000のものがより好ましい。重量平均分子量で400未満の場合、耐熱性向上効果に乏しく、50000より大きい場合、組成物にした場合の相溶性の低下、粘度の上昇といった組成物としての物性が低下し好ましくない。
【0015】
本発明のエポキシ基を有するケイ素化合物は、各種用途に供されるが、通常、硬化剤と組み合わせ、熱硬化性樹脂組成物として使用される。また各種用途に適用するにあたっては、用途に応じて各種のエポキシ樹脂を併用することも出来る。
【0016】
硬化剤としては、通常、エポキシ樹脂の硬化剤として使用されている、アミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノール系化合物等を特に制限無く使用できる。使用しうる硬化剤の具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、テトラエチレンペンタミン、ジメチルベンジルアミン、ケチミン化合物、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ビスフェノール類、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)と各種アルデヒドとの重縮合物、フェノール類と各種ジエン化合物との重合物、フェノール類と芳香族ジメチロールとの重縮合物、又はビスメトキシメチルビフェニルとナフトール類若しくはフェノール類との縮合物等、ビフェノール類及びこれらの変性物、イミダゾール、3フッ化硼素−アミン錯体、グアニジン誘導体などが挙げられる。硬化剤の使用量は、組成物中のエポキシ基1当量に対して0.2〜1.5当量が好ましく、0.3〜1.2当量が特に好ましい。また、硬化剤としてベンジルジメチルアミン等の3級アミンを使用する場合の硬化剤の使用量としては、組成物中のエポキシ基を有する化合物に対し、0.3〜20重量%使用することが好ましく、0.5〜10重量%が特に好ましい。
【0017】
本発明の熱硬化性樹脂組成物中には必要により硬化促進剤を含有させることができる。使用しうる硬化促進剤の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチルー4−メチルイミダゾール、等のイミダゾール類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルフォスフィン等のホスフィン類、オクチル酸スズなどの金属化合物、第4級ホスホニウム塩などが挙げられる。硬化促進剤は、組成物中のエポキシ基を有する化合物100重量部に対して0.01〜15重量部が必要に応じ用いられる。
【0018】
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、本発明のエポキシ基を有するケイ素化合物を他のエポキシ樹脂と併用する場合、本発明のエポキシ基を有するケイ素化合物が全エポキシ化合物中に占める割合は、10重量%以上が好ましい。使用することができる他のエポキシ樹脂としては、通常、電気・電子部品に使用されるエポキシ樹脂でであれば特に制限はなく、通常フェノール性水酸基を2個以上有する化合物をグリシジル化して得ることができる。用いうるエポキシ樹脂の具体例としては、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールF、ビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、ビスフェノールF、ビスフェノールS若しくはビスフェノールK等のビスフェノール類、又はビフェノール若しくはテトラメチルビフェノール等のビフェノール類、又はハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン若しくはジ−ter.ブチルハイドロキノン等のハイドロキノン類、又はレゾルシノール若しくはメチルレゾルシノール等のレゾルシノール類、又はカテコール若しくはメチルカテコール等のカテコール類、又はジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシメチルナフタレン若しくはジヒドロキシジメチルナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類のグリシジル化物やフェノール類若しくはナフトール類とアルデヒド類との縮合物、又はフェノール類若しくはナフトール類とキシリレングリコールとの縮合物又はフェノール類とイソプロペニルアセトフェノンとの縮合物又はフェノール類とジシクロペンタジエンとの反応物又はビスメトキシメチルビフェニルとナフトール類若しくはフェノール類との縮合物のグリシジル化物等が挙げられる。これらは、市販品として若しくは公知の方法により得ることが出来る。その他EHPE−3150、セロキサイド2021(ダイセル化学工業(株)製)、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂等の脂環式エポキシ樹脂、TEPIC、TEPIC−L、TEPIC−H、TEPIC−S(いずれも日産化学工業(株)製)等の複素環式エポキシ樹脂が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いても良い。
【0019】
更に、本発明の熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じてシリカ、アルミナ、ガラスファイバー、タルク等の充填材や離型剤、顔料、表面処理剤、粘度調整剤、可塑剤、安定剤、カップリング剤等、種々の配合剤を添加することができる。
【0020】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物を、溶剤に溶解し、ワニスとして使用することも出来る。溶剤としては、組成物の各成分を溶解するものであれば特に限定されないが、例えばトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。これら溶剤の溶解したワニスを、ガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させ、加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形して本発明の硬化物を得ることも出来る。
その際溶剤は、本発明の熱硬化性樹脂組成物と溶剤の合計重量に対し溶剤の占める割合が、通常10〜70重量%、好ましくは15〜65重量%となる量使用する。
【0021】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、各成分を均一に混合することにより得られる。本発明の熱硬化性樹脂組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易にその硬化物とすることができる。例えばエポキシ基を有するケイ素化合物と硬化剤並びに必要により硬化促進剤及び配合剤とを必要に応じて押出機、ニ−ダ、ロ−ル等を用いて均一になるまで充分に混合してエポキシ樹脂組成物を得、そのエポキシ樹脂組成物を溶融後注型あるいはトランスファ−成型機などを用いて成型し、さらに80〜200℃で2〜10時間加熱することによりその硬化物を得ることができる。
【0022】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。尚、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、実施例中特に断りがない限り、部は重量部を示す。なお、実施例中の各物性値は以下の方法で測定した。
(1)重量平均分子量:GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により測定。
(2)エポキシ当量:JIS K−7236に準じた方法で測定。
【0023】
実施例1
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン94.5部、メチルイソブチルケトン94.5部、を反応容器に仕込み、80℃に昇温した。昇温後、0.1重量%水酸化カリウム水溶液21.6部を30分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、生成するメタノールを除去しながら80℃にて5時間反応させた。反応終了後、洗浄液が中性になるまで水洗を繰り返した。次いで減圧下で溶媒を除去することにより本発明のエポキシ基を有するケイ素化合物(A)66部を得た。得られた化合物のエポキシ当量は170g/eq、重量平均分子量は4000であった。本エポキシ化合物(A)の1H−NMR(CDCl3溶液)からエポキシ環のメチンピーク(3.2ppm付近)より、エポキシ環が保持されていること、及びメトキシ基のピーク(3.6ppm付近)が消失していることが確認できた。
【0024】
実施例2
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン94.5部、メチルイソブチルケトン94.5部、0.1重量%水酸化カリウム水溶液10.1部を使用した他は実施例1と同様にして反応させ、本発明のエポキシ基を有するケイ素化合物(B)67部を得た。得られた化合物のエポキシ当量は180g/eq、重量平均分子量は1500であった。本エポキシ化合物(B)の1H−NMR(CDCl3溶液)からエポキシ環のメチンピーク(3.2ppm付近)より、エポキシ環が保持されていること、及びメトキシ基のピーク(3.6ppm付近)の積分値により約93%のメトキシ基が消失していることが確認できた。
【0025】
実施例3
β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン98.6部、メチルイソブチルケトン98.6部、0.1重量%水酸化カリウム水溶液21.6部を使用した他は実施例1と同様にして反応させ、本発明のエポキシ基を有するケイ素化合物(C)67部を得た。得られた化合物のエポキシ当量は182g/eq、重量平均分子量は3500であった。本エポキシ化合物(C)の1H−NMR(CDCl3溶液)からエポキシ環のメチンピーク(3.2ppm付近)より、エポキシ環が保持されていること、及びメトキシ基のピーク(3.6ppm付近)が消失していることが確認できた。
【0026】
実施例4
β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン98.6部、メチルイソブチルケトン98.6部、0.1重量%水酸化カリウム水溶液10.1部を使用した他は製造例1と同様にして反応させ、本発明のエポキシ基を有するケイ素化合物(D)69部を得た。得られた化合物のエポキシ当量は190g/eq、重量平均分子量は1500であった。本エポキシ化合物(D)の1H−NMR(CDCl3溶液)からエポキシ環のメチンピーク(3.2ppm付近)より、エポキシ環が保持されていること、及びメトキシ基のピーク(3.6ppm付近)の積分値より約94%のメトキシ基が消失していることが確認できた。
【0027】
実施例5
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン85.1部、フェニルトリメトキシシラン7.9部、メチルイソブチルケトン93部、0.1重量%水酸化カリウム水溶液21.6部使用した他は実施例1と同様にして反応させ、本発明のエポキシ基を有するケイ素化合物(E)69部を得た。得られた化合物のエポキシ当量は190g/eq、重量平均分子量は2200であった。本エポキシ化合物(E)の1H−NMR(CDCl3溶液)からエポキシ環のメチンピーク(3.2ppm付近)より、エポキシ環が保持されていること、及びメトキシ基のピーク(3.6ppm付近)が消失していることが確認できた。
【0028】
比較例1
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン94.5部、メチルイソブチルケトン94.5部、0.1重量%水酸化カリウム水溶液9部を使用した他は実施例1と同様にして反応させ、比較用のエポキシ基を有するケイ素化合物(F)66部を得た。得られた化合物のエポキシ当量は190g/eq、重量平均分子量は1200であった。本エポキシ化合物(F)の1H−NMR(CDCl3溶液)からエポキシ環のメチンピーク(3.2ppm付近)より、エポキシ環が保持されていること、及びメトキシ基のピーク(3.6ppm付近)の積分値より約80%のメトキシ基が消失していることが確認できた。
【0029】
実施例6〜10、比較例2,3
実施例1〜5及び比較例1で得られたエポキシ基を有するケイ素化合物(A〜F)を表1に示す配合割合で均一に混合し本発明及び比較用の熱硬化性樹脂組成物を調製した。調製した組成物をアルミカップに流し込み、80℃、120℃、150℃、で逐次各2時間、更に190℃で4時間加熱することによってそれらの硬化物を得た。また得られた各硬化物にボイド等の欠陥は認められなかった。
【0030】
【表1】
【0031】
エポキシ樹脂(1):エピコート828(ジャパンエポキシレジン(株)製;エポキシ当量190g/eq)、硬化剤(2):4,4‘−ジアミノジフェニルメタン
【0032】
(耐熱性評価)
実施例6〜10及び比較例2,3で得られた硬化物を幅4mm、厚さ1mm、長さ40mmの大きさに成形し、動的粘弾性測定装置(TAインスツルメンツ社製、DMA2980、測定条件:振幅10μm、振動数10Hz、昇温速度2℃/分)を用いて動的貯蔵弾性率及び動的損失弾性率を測定し、動的粘弾性測定におけるガラス転移点の有無により耐熱性の評価を行った。なお、動的粘弾性測定におけるガラス転移点は、動的貯蔵弾性率を動的損失弾性率で除した値(以下tanδ)を温度に対してプロットした場合のピーク位置で表される。耐熱性の評価は、tanδのピークが存在する場合を「ガラス転移点有り」で耐熱性×、tanδのピークが存在しない場合を「ガラス転移点無し」で耐熱性○として評価した。また、ピークの大きさは耐熱性の優劣を示し、ピークが小さいほど耐熱性は高い。測定結果の例を図1に、反応時に添加した水のアルコキシシランに対するモル倍率(表中、加水分解水)及び耐熱性の評価結果を表2に示す。
【0033】
【0034】
図1中、比較例2,3はtanδのピークが存在し、ガラス転移点を有しているが、実施例6、7はピークが存在せずガラス転移点が消失していることを示している。また表2より、水の量が1.4倍モル未満ではガラス転移点が存在し耐熱性が低いが、1.4倍モル以上ではガラス転移点が消失し、耐熱性に優れていることが認められる。
【0035】
【発明の効果】
本発明のエポキシ基を有するケイ素化合物を使用することにより、耐熱性に優れた硬化物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は実施例6、7及び比較例2、3で得られた硬化物の動的粘弾性測定の結果を示すグラフである。縦軸は動的貯蔵弾性率を動的損失弾性率で除した値(tanδ)、横軸は温度をそれぞれ示す。
Claims (7)
- 下記式(1a)
R1aSi(OR2)3 (1a)
(式中R1aは、エポキシ基を有する置換基を示す。R2は炭素数4以下のアルキル基を示す。)
で表されるエポキシ基を有するアルコキシケイ素化合物同士またはこれと下記式(1b)
R1bSi(OR3)3 (1b)
(式中R1bは、炭素数10以下のアルキル基、アリール基又は不飽和脂肪族残基を示す。R3は炭素数4以下のアルキル基を示す。)
で表される置換アルコキシケイ素化合物を塩基性触媒の存在下アルコキシケイ素化合物の1.4倍モル以上の水で(共)加水分解縮合させて得られることを特徴とするエポキシ基を有するケイ素化合物。 - 式(1a)の化合物がR1aとして、炭素数3以下のグリシドキシアルキル基および/又はオキシラン基を持った炭素数5〜8のシクロアルキル基で置換されたアルキル基を有する化合物であり、式(1b)の化合物がR1bとして、炭素数6以下のアルキル基又はアリール基を有する化合物である請求項1記載のエポキシ基を有するケイ素化合物。
- 全ての縮合成分が式(1a)においてR1aが炭素数3以下のグリシドキシアルキル基である請求項1記載のエポキシ基を有するケイ素化合物。
- 全ての縮合成分が式(1a)においてR1aがオキシラン基を持った炭素数5〜8のシクロアルキル基で置換されたアルキル基である請求項1記載のエポキシ基を有するケイ素化合物。
- (1)請求項1〜4のいずれか1項に記載のエポキシ基を有するケイ素化合物、(2)硬化剤並びに必要に応じて(3)硬化促進剤及び(4)有機溶剤を含有する熱硬化性樹脂組成物。
- 成分(1)以外のエポキシ樹脂を含有する請求項5記載の熱硬化性樹脂組成物。
- 請求項5又は6記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
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